夏だ! 海だ! 西瓜割りだ!
「連日暑い日が続いているが、君たち猟兵はいかがお過ごしか?」
顔を赤く染めたグリモア猟兵の望月・秀(沈着冷静な仕事人間・f14780)は、集まった猟兵たちに時候の挨拶らしきものを述べた。もう見るからに暑そうな黒尽くめで、露出は目と耳と頬の一部という有様の彼は、やはり暑いようで目の脇を汗が流れていく。
普段は快適な温度、湿度に保たれているグリモアベースだが、あまりの暑さで配管の一部が故障したらしい。隅で小さな扇風機が首を振っている。
猟兵たちからは、脱いだら? と言う声も聞こえるが、秀は忍者のアイデンティティを守るとかなんとか言って脱ごうとしない。
同じ空間にいる猟兵たちも、だんだん暑さが堪えてきた。
「こんな所に長時間、大人数が詰めている場合ではない。早急に依頼内容を説明しよう」
秀は「簡潔に言おう」と言い、「キマイラフューチャーで西瓜割りに参加」と続け、「以上」と締めた。彼はそのまま猟兵たちを送り出そうとしたが、さすがに簡潔にも程があるだろうという事になった。
「キマイラフューチャーで太古の遊び『西瓜割り』が行われる。『西瓜割り』とは、目隠し状態のチャレンジャーが周囲のアドバイスを頼りに、手にした棒で西瓜を割る遊びだ。チャレンジャーは前もって体を回転させ、平衡感覚を狂わせておく必要がある。ちなみにこの『チャレンジャーの回転』は、西瓜割り推進協会の公式ルールには存在しないが、あったほうが面白いという理由で今回の遊びには採用されている。基本的に善人であるキマイラたちは虚偽のアドバイスなどしないだろうが、チャレンジャーは視界ゼロ、平衡感覚ゼロだ。思わぬ方向に進んだり、棒を振り下ろす恐れがある。周囲は注意が必要だ。君たち猟兵に求められているのは、見物キマイラの度肝を抜くインパクト重視の西瓜割りだ。彼らは変わったことが大好きだ。盛大に割ってくれ。割った後の西瓜はスタッフがおいしくいただくので安心して欲しい」
普段より格段に早口な秀は、棒を構える仕草や振り下ろす仕草を添え、猟兵たちに長広舌をふるう。だんだんと暑さに茹だってきた猟兵たちも、ぼんやりとした頭でひたすら相槌を打つ。
「西瓜割り会場は炎天下の砂浜だ。ここと暑さは変らないだろうが、直射日光の分ここよりキツイかもしれない。熱中症には十二分に気をつけてくれ。水分補給と塩分補給を怠るな。近くに救護設備があるらしいが、はしゃぎ過ぎてぶっ倒れたキマイラで埋まることが予想される。肌が弱い者は日焼け止めや日傘も忘れるな。過度の日焼けは火傷と相違ない。更に、人ある所にオブリビオン、というわけで最高に盛り上がった辺りでオブリビオンが襲撃してくるだろう。もしかしたら、君たちはまだ目隠しをしていたり、目を回しているかもしれない。しかし、まぁ、大丈夫だろう君たちなら。上手いことやってくれ」
長台詞に息を切らした秀は、猟兵たちにぞんざいな信頼を寄せ、太陽照りつける砂浜へと送り出した。
こふ
●マスターより
マスターのこふです。よろしくお願いします。
今回はキマイラフューチャーのギャグです。キマイラフューチャーで開催される西瓜割りで西瓜を割り、盛り上がった所で襲いかかってくるオブリビオンを撃退するシナリオです。
みなさま熱中症にご注意ください。
●補足
第1章 普通の西瓜割りではツマラナイ、こともないですが、せっかくなので猟兵にしかできない西瓜割りをどうぞ。西瓜は無数にありますので、西瓜無双もできます。
もちろん失敗しても構いません。見当違いの方向に進んだり、勢いよく振り下ろした先に西瓜がない、というのも西瓜割りの醍醐味です。
第1章 日常
『コンコン西瓜割り大会!』
|
POW : 目を回しても気合で叩き割る
SPD : 目が回る前に素早く叩き割る
WIZ : 目が回るのが落ち着いてから叩き割る
👑5
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴
|
病院・玖珠理
このような場だ、医者の出番もあろう…!
此れより治療を開始するッ
UC:見境なき医師団により手数を確保だ
良いか、熱中症かも、と思ったらもう症状は始まっている!
引きずってでも治療所に叩き込め、日陰を用意しろ、スポーツドリンクは冷たくするな、内臓を冷やす。ぬるいくらいが丁度いい。冷却は保冷剤を太い血管のある場所に当てろ、それから体を濡らしてから扇げ。(医術、救助活動)
あとはスポーツドリンクを配っておけ。配る分は良く冷やしておけよ
そうでなければ普通は受け取らんし飲まん。特にキマイラ連中には気を配れよ、個体差が激しいからな。ああ、あと子供は気にしろ。…オレじゃない!
よし、わかったな?行け、オレの医師団!
炎天下の砂浜に降り立った病院・玖珠理は、砂浜を埋め尽くすキマイラ達に渋い顔をした。彼らは容赦なく輝く太陽の下、帽子も被らずにはしゃいでいる。
その時、会場の中心から打撃音と歓声が聞こえた。ちょうど誰かが棒を振り下ろしたのだろう。しかし、何故か西瓜は丸いまま天高く打ち上がり、玖珠理の方へ飛んできた。
難なくキャッチした玖珠理は、西瓜を脇に置いて叫ぶ。
「此れより治療を開始するッ」
目前に医師がずらりと並んだ。玖珠理は次々と指示を出す。
患者のために日陰を用意しろ。症状が軽い者にはスポーツドリンクを渡せ。内臓を冷やすからぬるくしろ。保冷剤を太い血管のある場所に当てて冷却しろ。首や脇の下だ。それから体を濡らして扇げ。症状が重い者は、早急に救護設備に運び込め!
「良いか、熱中症かも、と思ったらもう症状は始まっている! 引きずってでも治療所に叩き込め! 行け、オレの医師団!」
医師が走り出す。彼らはどこからかタープテントを搬入し、簡易治療所を作り上げた。さらに、台車に載せた大きな保冷ボックスも運び込む。
その間、玖珠理は目についたキマイラを片っ端から診察、熱中症と思しき者は問答無用で治療所に放り込んだ。中では医師が待ち構え、彼らの治療にあたる。
猟兵の登場にキマイラ達は湧いた。更に、彼は医者だと言う。ワンダホー! 盛り上がるキマイラ達は診察の列に並んだり、手伝いと称してうちわを振り回したりと忙しい。
玖珠理は治療だけでなく、予防も忘れない。彼は走り回る医師にさらなる指示を出す。
「余ったスポーツドリンクを配っておけ。良く冷やしておけよ。ぬるいスポーツドリンクなんか普通は受け取らんし、飲まん。特にキマイラ連中には気を配れよ、個体差が激しいからな」
キマイラの子どもを診察をしながら「あと、子どもを気にかけろ」と言った玖珠理に、スッとスポーツドリンクが差し出された。
「オレじゃない!」
彼はずり落ちてきた白衣の袖をまくり、怒鳴る。彼の側に置かれた西瓜が時間差で割れ、玖珠理の瞳によく似た鮮やかな赤を見せた。
成功
🔵🔵🔴
カタリナ・エスペランサ
「はーっはっはっはっは! アタシこそ海辺のスーパースターこと、そうアタシだよ!!」
《楽器演奏》の音楽も合わせて派手な《パフォーマンス》しながら《空中浮遊》《空中戦》の三次元戦闘テクを活かして上空に舞い上がり――頭を揺らし過ぎないよう気を付けて目が回るの軽減しつつ――UC【スカイステッパー】でアクロバティック急降下。
「さぁてフィニッシュ! 盛大に痺れさせてあげるっ!」
着地と同時に《範囲攻撃》《属性攻撃》、無数に放ったダガーで見栄え重視の雷エフェクトと共に配置スイカを同時に真っ二つにして〆。
「アタシの力はまだまだこんなものじゃないよ! ほらほら、次のスイカ持って来ーい!」
※アドリブ・共演歓迎です。
キマイラでごった返す西瓜割り会場に、突然アップテンポな音楽が流れ出す。皆がなんだどうしたと周囲を見回す中、カタリナ・エスペランサの声が高らかに響き渡った。
「はーっはっはっは! アタシこそ海辺のスーパースターこと、そうアタシだよ!」
上だよ! という声に促され、皆は空を見上げる。太陽を背負ったカタリナが何もないはずの空中を蹴り、舞っていた。長い三つ編みの金髪がキラキラと輝く。
キマイラたちから歓声が上がる。誰もが彼女に釘付けだ。
ド派手なパフォーマンスで魅せながら上昇したカタリナは、両手を広げると今度はアクロバティックに急降下を開始した。彼女はできるたけ頭を固定して目が回るの軽減しつつも、西瓜割りルールに則り、クルクルと大回転しながら地上へ向かう。
キマイラたちから悲鳴じみた声が上がる。猟兵相手に心配は無用と知りつつも、やっぱり心配なのだ。
彼らのハラハラをよそに、カタリナは両手をクロスさせた状態で難なく着地する。雷が走ると同時に両手を振り抜き、手にしていた無数のダガーを放った。
「さぁてフィニッシュ! 盛大に痺れさせてあげるっ!」
紫電を纏って飛んだダガーは、並んだ西瓜それぞれのど真ん中に命中する。一呼吸分の後、西瓜は上下真っ二つに割れた。
会場は爆発したかのような大歓声に包まれた。大勢のキマイラが素晴らしい西瓜割りを見せてくれた猟兵に駆け寄り、褒め称える。
「アタシの力はまだまだこんなものじゃないよ! ほらほら、次のスイカ持って来ーい!」
色白の頬を赤く染めたカタリナは、照れ隠しにわざと横柄な態度で次の西瓜を要求した。
成功
🔵🔵🔴
ルク・フッシー
【やすらぎの館】で参加します
アドリブ歓迎します
えっと…ボク、スイカ割りは初めてで…しかも、パフォーマンスをしないといけないんですね…
……こ、この人混みの中で…(人見知りしてくらくらする)
えーと…まずは目隠しして、それから回転しないと…大筆を砂浜に突き刺し、支えにしてぐるぐると回ります
…うっ、めまいが…(よたよた)
…うう……上手く歩けないですけど、キマイラの皆さんの指示を信じて大筆を振り下ろします
(筆を振った拍子に塗料が飛び散り、なんとなく現代アートっぽくなる)
スイカ割りの成否はおまかせします
ルーク・アルカード
【やすらぎの館】で参加。
ステシから外れない程度にアドリブ歓迎。
【心情】
スイカ割り初めてだけど楽しみだな。
頭の乗せて打ち抜いたりする遊びって聞いた。
【割り方】
目隠ししてグルグル。
ちょっと目が回ってフラフラするけれど、大丈夫。
目が見えない暗いところでいっぱいお仕事もしてたし。
指示に従って木刀を持ってスイカへ全力移動。
スイカの前まで来たら一閃。
食べやすいサイズまで斬っておこう。
サンディ・ノックス
【やすらぎの館】(ルクさん、ルークさん)で参加
アドリブ歓迎
パフォーマンスは不慣れだけど
噂に聞いたスイカ割りを実際にやれる知的好奇心が満たされたり、
可愛らしい旅団の知り合いとここに来れた嬉しさで明るい雰囲気を振りまけていたらいいな
目隠し、棒を地面に立てて額を付けて回転、少しふらつきながら棒を投げ捨て何も持たずにスイカに向かう
何も持ってないぞと指摘されるかもしれないけど聞こえてないフリ
スイカの前に着いたら【怪力】に任せて素手でスイカを粉砕!
同行の二人が挑戦しているときは声をできるだけ張って応援
声が細いから通らないかもしれないけど気にしない
方向指示の醍醐味は観客のキマイラにあげるつもり、俺は言わない
同じ旅団の仲間であるルク・フッシー、ルーク・アルカード、サンディ・ノックスの三人は、連れ立って西瓜割り会場に現れた。人見知りであるルクとルークは、楽しげではあるものの、周囲の人だかりに少しばかり縮こまっている。残るサンディは、可愛らしい二人と共に来られた嬉しさでいつになくウキウキとしていた。
三人とも西瓜割りをするのは初めてだ。慎重派の彼らは念には念を入れ、ルールのおさらいをする事にした。
「えっと……まずは目隠しをして、それから回転」
「そうだね。そして、観客の方向指示に従って西瓜を割る」
確認し合うルクとサンディ。突然「西瓜割りとは、頭に西瓜を乗せて打ち抜く遊び」という情報がルークからもたらされ、ルクが涙目になる一幕もあったが、概ねルールの合意に至ったようだ。
三人は、ジャンケンで順番を決め、一番手はルークとなった。
目隠しをしたルークは、声援を背にグルグルと回転した。少しふらついた彼が木刀を構えた途端、観客から我先に声が飛ぶ。
「『前前前ー』『右だよ』『二時の方向っぽい』『四歩進んで!』」
皆が皆、自分を基準に喋るため、指示が全然一致しない。
ルークには、目が見えない程の暗所で仕事をした過去がある。更に彼は鼻が効く。彼は全力で駆け出すと、その勢いのまま木刀を一閃する。衝撃で浮いた西瓜は、食べやすいサイズにカットされ、予め用意されていた皿に順序良く並んだ。
割れんばかりの拍手と食べやすさを絶賛する声を受け、赤く染まった顔をマフラーに埋めたルークが戻って来る。サンディに褒められ、更にマフラーに埋まった彼と入れ替わるように、緊張した面持ちのルクが歩み出た。
ルクは集まる視線にくらくらしながらも、震える手で目隠しをする。そして、大筆を支えにしてグルグルと回転した。目眩に襲われた彼がよたよたと歩く姿に、観客は使命感に駆られたらしい。方向指示と応援の声がより一層大きくなる。
右往左往しながらも、大多数がGOサインを出すポイントに到達したルクは、大筆を振り下ろした。塗料が飛び散る音と感嘆の声、そして大量のシャッター音が上がる。
全く手応えのなかったルクが半泣きで目隠しを外すと、そこには素晴らしいアートが出現していた。翼の生えた西瓜が見果てぬ旅へと飛び立つ瞬間を捉えたと思しき絵画。芸術家を褒め称える声と大量のスマホが奏でるシャッター音。キョトンとしていた彼は、握手やサイン、ツーショットを求めるキマイラ達に囲まれ、慌てふためいた。
注目を浴びるのは本意ではないが、サンディはルクを助け出すため、中央に歩み出て棒を大きく振る。
「噂に聞いた西瓜割り、やってもいいかな?」
新たなる挑戦者に観客は沸き立つ。その隙に人混みから抜け出したルクは、サンディに手を振って感謝を伝えると、ペコリと一礼して観客席に戻った。ルークに労われ、照れるルクを見てサンディは微笑む。
彼は目隠しをすると棒を地面に立て、そこに額を付けて回転した。正統派の西瓜割りに沸き立った観客は、少しふらついた彼が棒を投げ捨てた様に動揺し、興奮の声を上げる。
サンディはそのまま西瓜に歩み寄り、拳を握る。まさかと息を呑む観客の予想通り、拳は振り下ろされ、西瓜は粉砕された。
嵐のような大歓声を背に観客席に戻るサンディに、ルクとルークは称賛の声をかける。謙遜するサンディに、二人は応援への感謝を告げた。自分の細い声は届かないと思い込んでいた彼は目を見開く。
「ちゃんと聞こえてました」
「うれしかったよ」
不意を突かれたサンディは、その日一番の笑顔を二人に向けた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第2章 集団戦
『フルーティートリオ』
|
POW : スイカ怪人・ウェポン
【スイカ兵器】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD : レモン怪人・ジェノサイド
【レモン攻撃】を発動する。超高速連続攻撃が可能だが、回避されても中止できない。
WIZ : リンゴ怪人・リフレクション
対象のユーベルコードに対し【リンゴ】を放ち、相殺する。事前にそれを見ていれば成功率が上がる。
👑7
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴
|
最高に盛り上がる西瓜割り会場に、突然泣き声が響き渡った。何事かと周囲を見渡すと、スイカ頭のオブリビオンが、果肉を根こそぎ食べられた西瓜の皮に縋って号泣している。そして、それをレモン頭とリンゴ頭のオブリビオンが必死で慰めていた。
「おお、兄弟! なんという姿に……!」
「泣くんじゃない」
「そんなに泣いては兄弟が悲しもう」
突然始まった愁嘆場に、おもしろい事が大好きなキマイラ達は困惑しつつも興味津々だ。数名がスマホを向ける。
フルーティーな香り漂う怪人トリオは、西瓜割りに興じるキマイラ達をキッと睨み付けた。
「よくも兄弟を!」
「敵討ちだ!」
「そうだそうだ!」
戦いの気配に、キマイラ達は蜘蛛の子を散らすように一目散に走り去る。しかし、彼らを守るように猟兵達が前に出た途端、怒涛の勢いで戻ってきた。皆、猟兵の戦いぶりを見ようと我先に観客席に座る。
西部劇で丸い草が転がるように、対峙する怪人と猟兵の間を西瓜がゴロゴロと転がった。
キマイラ達の声援を受けて、猟兵と怪人トリオの戦いが今、始まる。
カタリナ・エスペランサ
「……キミたちは一つ勘違いをしているよ」
夏のテンションで僅かに真の姿も解放され、四枚に増えた翼を背に広げて。
「その西瓜はこの夏に彩を添える為に自ら身を差し出したんだ。その証拠に彼は最期まで自分の運命から逃げなかった」
「そして次はキミたちの番だ。今を生きる者を脅かす怪人よ、骸の海に還るがいい!」キリッ!
ダガーの切っ先を突き付けて格好を付ければ、そこからは普通に戦闘に突入。
「――いやレモン攻撃って何!?」
【レモン怪人・ジェノサイド】には【シーフズ・ギャンビット】を発動。上衣を吹っ飛ばされて清楚系の水着が露わになりつつ、身軽になった分と羞恥心で加速して敵を滅多切りにします。
※アドリブ・共闘歓迎です。
晴天の砂浜で西瓜割りという圧倒的『夏』のテンション。カタリナ・エスペランサは四枚に増えた翼を大きく広げた。太陽を背負ったその姿は、神々しささえ感じさせる。
「……キミたちは一つ勘違いをしているよ」
「なにぃ!」
「その西瓜は、この夏に彩を添える為に自らを差し出したんだ」
「なん……だと……」
「その証拠に、彼は最期まで自分の運命から逃げなかった」
まさに『愕然』といった様相で、先程まで縋り付いていた西瓜の皮を見つめるスイカ怪人。観客も衝撃の事実にざわつく。カタリナは周囲の動揺を物ともせず、ダガーの切っ先を怪人トリオに突き付けた。
「そして次はキミたちの番だ。今を生きる者を脅かす怪人よ、骸の海に還るがいい!」
あまりに格好良くキマッたため、一瞬会場が無音になる。しかし、カタリナが焦る前に空気がビリビリ震える程の大歓声が巻き起こった。黄色い声援が降り注ぐ中、怪人トリオは悔しそうに震える。
「小癪な! レモン攻撃を喰らえ!」
「――いや、レモン攻撃って何!?」
腹を立てたレモン怪人が、レモンの輪切りを手裏剣のように飛ばす。超高速で向かってくるレモンの輪切りをカタリナは身を捩って避けた。しかし、攻撃は一回ではない。連続して襲い来る輪切りは、ついに彼女の上衣を切り裂いた。衣服の隙間から清楚系の水着がチラチラ見える。普通の水着姿より扇情的なその姿に、観客から悲鳴じみた歓声が上がった。
羞恥心で真っ赤になったカタリナは、潔く上衣を脱ぎ捨て身軽になると、目にも留まらぬ速さで腕を振るう。飛び交うレモンの輪切りは、彼女のダガーで次々と細切れになった。
その様に悪態をつこうとしたレモン怪人の目前に、突然カタリナが現れる。そのあまりの速さに、レモン怪人は悲鳴を上げる事さえできず輪切りにされた。
会場が大きな拍手で包まれる中、スイカ怪人とリンゴ怪人が大慌てで輪切りのレモンに駆け寄る。彼らが輪切りを積み重ねると、なんとズレズレのレモン怪人が復活した。
「雑ぅ!」
倒したはずの怪人の復活に怒るよりも、その適当さに驚いたカタリナのツッコミが炸裂し、客席がドッと沸いた。
成功
🔵🔵🔴
ルク・フッシー
【やすらぎの館】で参加
アドリブ可
「えっ、あの怪人、食べられるんですか…?」
サンディさんはスイカ怪人割りをするんですね…では、ボクはリンゴ怪人を担当します
サンディさんから、大人の余裕を感じます…かっこいい…!
ボクも観客の皆さんに、魅せる戦いを心がけます…緊張します、けど
【花宴描画】、生成した色とりどりの花びらを集めてアサガオ、ひまわり、ハイビスカスなど、夏らしい花を形作ります
で、それらをリンゴ怪人の周囲で舞うように動かし、攻撃します
花びらには【斬属性】を宿してあり、リンゴが触れれば切り裂かれ、後にはウサギの形に切れたリンゴが残るイメージです
全方位からの攻撃なら、相殺も難しいと思います…!
サンディ・ノックス
【やすらぎの館】で参加
うーん、同族の果物が食べられて悲しく思うのはわかるよ
でもなんで出てきちゃったの?君たちも食べられちゃうよ
(本心。声に出す場合は穏やかな表情、穏やかな声)
せっかくだしスイカを割ろう
今日は西瓜割り大会だから鞘に収めたままの黒剣で殴る
スイカ兵器の癖を見極めるため回避重視
最初は慎重すぎるくらいに避けてある程度攻撃の特徴がわかったらギリギリ危ない避け方に切り替えて時々カウンターをする
観客にスリルある戦闘を提供したいからね
あまり引き延ばしても中だるみになりそうだしUC解放・宵で勝負を決める
重視するものはスイカ兵器が重視していそうなものにして攻撃をぶつけ合おう
「さ、西瓜割りの時間だよ」
ルーク・アルカード
【やすらぎの館】で参加
【心情】
お野菜は嫌いだけれど、フルーツは大好き。
リンゴ甘くて美味しいよね。
スイカも美味しい。
レモンはすっぱいけれどレモン味のお菓子美味しいもの。
二人ともそれぞれ相手するなら僕はレモンかな。
【戦闘】
攻撃速度は速いけれども僕も負けてないよ。
『武器受け』で攻撃を捌いて反撃。
武器に『吸血』させて『生命力吸収』し、『武器改造』。
やりやすい形にする。
ある程度見切ったら、ユーベルコードを発動させて輪切りにしちゃうね。
サンディ・ノックスはフルーティートリオを前に、不思議そうに首をかしげる。
「うーん、同族の果物が食べられて悲しいのはわかるよ。でも、なんでわざわざ出てきちゃったの?」
このままだと君達も食べられちゃうよ? 穏やかな表情と声で不穏な事を言われ、飛び上がって慄く怪人達をルク・フッシーとルーク・アルカードが興味深そうに見つめる。
「えっ、あの怪人、食べられるんですか……?」
「リンゴもスイカも甘くて美味しいよね。レモンはすっぱいけれど、レモン味のお菓子は好き」
「レモンは輪切りにして、はちみつに漬けると美味しいですよ」
「ああ、はちみつレモンだね。俺は紅茶に入れて、はちみつレモンティーにするのが好きだな」
「美味しそう……」
怪人そっちのけで盛り上がる三人。好機と見たか、震えていたスイカ怪人が手を挙げる。その途端、どこからともなくスイカ兵器が現れ、スイカのタネを連射した。サンディはタネを鞘に収めたままの黒剣で弾き落とし、薄く微笑む。
「せっかくの西瓜割り大会だし、俺はスイカを割ろう」
サンディから二人はどうする? と問われたルクとルークは顔を見合わせた。遠慮し合う二人をサンディは優しく促す。
「では、ボクはリンゴ怪人を担当します」
「それなら僕はレモンかな」
頷いたサンディはスイカ怪人に向かって一歩踏み出す。彼はスイカ怪人の攻撃の癖を見極めるため、回避に重点を置いて立ち回った。最初は大きく余裕を持って避けていた攻撃が、徐々に当たりそうになっていく。ギリギリの避け方に観客はハラハラドキドキで、応援の声が段々大きくなる。時々、スイカのタネを跳ね返すカウンター攻撃が炸裂し、その度会場は大いに沸いた。
観客を考えた戦闘をするサンディにルクは尊敬の眼差しを送る。
「かっこいい……! これが大人の余裕ってやつですね……!」
ルクはサンディのように『魅せる戦い』を心がけようと決めた。緊張して震える手で大筆を強く握ると、周囲に塗料性の花びらを創り出した。色とりどりの花びらはヒラヒラと舞いながらアサガオ、ひまわり、ハイビスカスなどの夏らしい花の形となり、リンゴ怪人の周囲に浮かぶ。その幻想的な様に、観客はうっとりとした視線を送った。
舞い踊るように動く花々は、ゆっくりとリンゴ怪人に迫る。慌てたリンゴ怪人は、気迫の籠もった掛け声と共に無数のリンゴを発射した。しかし、花に触れたリンゴはキレイに皮をむかれ、観客席に飛ばされる。観客たちはホームランボールをキャッチするからのように、挙って手を伸ばした。
唸るリンゴ怪人を美しい花々と大盛りあがりの観客の声が囲む。ゆっくりとリンゴ怪人を覆い尽くした花が溶けるように消えた後には、うさぎ型にむかれたリンゴだけが残っていた。
ほっと息を吐いたルクに盛大な拍手が降り注ぐ。
観客に頭を下げるルクに背を向け、ルークは敵の事だけを見ていた。彼の生い立ちは戦闘中の余所見を許さない。
凄まじい速度でレモンの輪切りが飛んでくる。しかしルークも負けていない。飛び交う輪切りを難なく避け、刀の柄を取り出す。一見ただの刀身が欠けた刀に見えるため、それを見たレモン怪人はバカにしたような口笛を吹いた。
しかし、そんな事は全く気にしないルークは刀の柄を胸に押し当てた。微かに眉根を寄せた彼が刀の柄を引き離すと、まるで胸から引き抜かれたかのように血色の刀身が現れた。使用者の血で刀身を形作る妖刀が彼の血を吸い、彼の望み通りの刀身を作り出したのだ。彼は向かってきた輪切りを妖刀で受け止めると簡単に捌き、反撃に移った。
一連のかっこいい所作に、息を詰めて見つめていた観客から大きな息が漏れる。熱っぽい視線を注がれるルークは、少し居心地が悪そうだ。赤いマフラーを引き上げ、口元を隠した彼は呼吸を止める。妖刀を構え重心を落とした瞬間、彼の姿が掻き消えた。
音速で動いた彼の姿が再び観客の目に映る頃、レモン怪人は見事な輪切りとなって積み重なっていた。大歓声を背に、ルークはマフラーに隠された口をほころばせる。
「はちみつレモン、楽しみ」
二人が敵を倒した事を横目で確認し、サンディも敵を倒す事にした。あまり引き延ばしてもおもしろくない。彼は鞘に収めたままの黒剣を構えた。
「さ、西瓜割りの時間だよ」
「なにを〜!」
躍起になったスイカ怪人が巨大なスイカのタネを飛ばしたが、サンディの黒剣に簡単に打ち返される。轟音を立てて飛んだタネはスイカ兵器を貫き、大空の彼方へ飛んでいった。
腰を抜かしたスイカ怪人に黒剣が振り下ろされる。いい音を立てて、スイカが割れた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『怪人アルパカスプラッシュ』
|
POW : シンクロナイズドポージング
【量産怪人アルパカマッスルブラザーズ】が現れ、協力してくれる。それは、自身からレベルの二乗m半径の範囲を移動できる。
SPD : 水も滴るいい体
全身を【力ませて筋肉を鋼の如き硬度】に変える。あらゆる攻撃に対しほぼ無敵になるが、自身は全く動けない。
WIZ : アルパカウォータースライダー
戦場全体に、【ウォータースライダー】で出来た迷路を作り出す。迷路はかなりの硬度を持ち、出口はひとつしかない。
👑7
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
スイカだけでなく、リンゴやレモンも美味しくいただいた猟兵とキマイラ達。あれだけ山積みになっていたスイカもその数を減らし、もう間もなく西瓜割り大会も閉幕だろうと誰もが思っていた。
その時、海が引いた。皆の視線の先、海の向こうから大波が押し寄せる。逃げ出そうと腰を浮かしたキマイラ達が大波を指差し、次々と叫んだ。
「『サーファーだ!』『うわ、めっちゃムキムキ!』『え、まって、意外とかっこよくない?』『波乗り上手!』『あれ怪人?』」
大波は、意外と緩やかに西瓜割り会場に到達した。大波を乗りこなしていた筋骨隆々のアルパカは、ゆっくりとボードから降りるとボディービルダーのようにポーズをキメた。
フロント・ダブル・バイセップス。サイド・チェスト。バック・ラット・スプレッド。次々キマる素晴らしいポーズに、キマイラ達から掛け声が上がる。
「『キレてるね〜!』『ナイスバルク!』『いいね、仕上がってる!』『プロポーションおばけ!』『チョモランマ!』」
砂浜から一転、浅瀬の海に姿を変えた会場の中心で一通りポーズをキメたアルパカは濡れた毛をかきあげ、猟兵達をビシッと指差した。
「フェェェェ」
アルパカの背後で映画のオープニングのように波が弾ける。
さあ、西瓜割り大会はおしまいだ。続けて始まるのはサーフィン大会でもボディービル大会でもない。怪人との最後の戦いだ。猟兵達は武器を構え、怪人アルパカスプラッシュと対峙した。
カタリナ・エスペランサ
「むっ、これは中々デキる怪人と見た!」
対抗心に淡く輝く四翼から羽を舞い散らせつつ、軽やかな宙返りと共に敵前に降り立ち。
序盤は敵の攻撃を《見切り》《武器受け》で捌き、ダガーの斬撃とシューズの蹴技、羽弾の《零距離射撃》を《早業》で織り交ぜて立体的な《空中戦》を展開。
敵のUC使用に対しては【失楽の呪姫】で自己強化。《パフォーマンス》の為なら代償も気合いで耐える!
「矛盾のエピソードは嫌いじゃないよ。ただアタシの矛はレパートリー豊富でね!」
守護を貫く黒雷、終焉招く劫火、魔神の権能を武器に宿した《属性攻撃》《鎧無視攻撃》《鎧砕き》を連打。手を変え品を変え、派手に鮮やかに攻め立てます。
※アドリブ・共闘歓迎!
「むっ、これは中々デキる怪人と見た!」
波を避けて上空に舞い上がっていたカタリナ・エスペランサは、軽やかな宙返りと共に敵前に降り立った。淡く輝く羽根が会場の熱気で舞い上がる。
ダガーを構え、対峙したカタリナに向けて、怪人アルパカスプラッシュは凄まじい速度で臭いツバを飛ばす。カタリナは最小限の動きで避けると、そのまま舞うように怪人に襲いかかった。ダガーの斬撃。シューズの蹴技。羽弾の射撃。上空から矢継ぎ早に繰り出される攻撃は怪人から余裕を奪う。
追い詰められた怪人は一声鳴いて、フロント・ダブル・バイセップス――いわゆる両腕の力こぶを見せつけるポーズを取った。鋼の如き硬度を誇る筋肉は、あらゆる攻撃を無効化する。観客達は猟兵の活躍を願いながらも、その見事な筋肉を褒め称えずにはいられない。飛び交う怪人への掛け声を気にも留めず、カタリナは不敵に微笑む。
「矛盾のエピソードは嫌いじゃないよ。ただ、アタシの矛はレパートリー豊富でね!」
カタリナの白い足を『守護を貫く黒雷』が覆う。闇を切り裂く稲妻の如く一蹴りが跳ね返されるや否や、今度は『終焉招く劫火』が彼女の四翼を覆った。大きく羽ばたいた翼から赤々と燃える羽根が弾丸のように放たれる。同時に、彼女は『魔神の権能』が宿るダガーを構え、高速で突撃した。弾かれる羽根。押し返されるダガー。しかし、攻撃は止まらない。手を変え品を変え、雷を纏い炎を舞わせ、恐るべき速度と威力で攻め立てる。その攻撃の派手さ、鮮やかさは観客の視線を釘付けにした。
大歓声と大声援を背に、カタリナは気合を入れ直す。力の代償として口から零れ落ちる血を乱暴に拭うと、怪人にニヤリと笑いかけた。
「まだまだ行くよ。ただ突っ立ってても芸がないんじゃないの?」
「フェ、フェェン」
ピンと立っていた怪人の耳が後ろに伏せる。黒い瞳が潤んだように見えた。
大成功
🔵🔵🔵
サンディ・ノックス
【やすらぎの館】で参加
へぇ、意外とカッコいい
水着が黒いから引き締まった体の線がくっきり見えるのかな
褒めながら抜剣、力任せに斬りかかる
敵のUCで戦場がウォータースライダーになっても慌てず
せっかくだから滑ろうか?と二人を誘う
障害の中で戦うよりアトラクションを楽しみながら戦うと思ったほうが夏の思い出らしいよね
降りるのは最後
「後ろから見ているから大丈夫。危なくなったら助けるよ」
二人なら問題は起きないと思ってる
滑りながら【解放・星夜】を発動
水晶を小人型にしてルクさんのUCと共に敵に向かわせる
目隠ししようとしたり大袈裟に動き回らせたりして気を引く
終わったあと二人にお礼
一緒に居られて楽しかったよ、ありがとう
ルク・フッシー
【やすらぎの館】で参加です
あぅ、 強そうな怪人ですね…た、逞しい…(びくびく)
怯えつつも大筆を振るい、絵の具の誘導弾を放ち怪人の視界を塞ぎます
ウォータースライダーの迷路になったらビックリしますけど、サンディさんの提案には賛同します
思い出…サンディさんとルークさんが一緒なら…こわくない…かも…
降りる順番は2人目
自分の尻尾と大筆を抱きしめ、悲鳴をあげながら滑ります
滑りながらも息を合わせて、【連射塗装】により電撃属性の誘導弾で怪人を取り囲んで、一斉に攻撃します
ぜーはー、ぜーはー…
…ふぅ…えっと、ボク1人じゃ戦うどころじゃなかったと思います…
ボクと一緒に居てくれて、ありがとうございます(にこっ)
ルーク・アルカード
やすらぎの館】で参加。
【心情】
おっきくて力も強そう。
やるなら正面以外から不意を打たないとな。
うぉーたーすらいだぁ?
凄く楽しそう。一番前がいいな。
迷路も楽しいし、お水の流れる滑り台早くて楽しい。
※耳と尻尾は動きますが、表情の変化はないです。
【戦闘】
二人が注意を引いてくれている間に後方からユーベルコードで攻撃。
【他】
最後に全身ずぶ濡れになっちゃったからブルブルと体を震って水切り。
塗れちゃうと何故かよくやっちゃう。
サイド・チェストをキメる怪人アルパカスプラッシュに相対したルク・フッシー、ルーク・アルカード、サンディ・ノックスの三人は、のんびりと感想を言い合った。
「あぅ、 強そうな怪人ですね……た、逞しい……」
「おっきくて力も強そう。やるなら正面以外から不意打ちだね」
「へぇ、意外とカッコいい。水着が黒いから、引き締まった体の線がくっきり見えるのかな」
びくびくと怯えるルク。いち早く倒し方を考えるルーク。目にした事象について考察をするサンディ。三人は一人一人の性格が出た感想に視線で笑い合うと、それぞれ動き出す。
ルクは怯えつつも大筆を振るい、絵の具の誘導弾を放つ。同時に、サンディは剣を抜き放ち、力任せに斬りかかった。怪人は大げさに飛び退きサンディの剣を避けたが、その先で炸裂した誘導弾の塗料を頭から被る。その間ルークは気配を消し、目をこする怪人の背後に回り込んだ。彼が音速の攻撃を仕掛けた瞬間、敵の身体が鋼の如き硬度に変化する。硬い音を立てて、刀が跳ね返された。
あらゆる攻撃を無効化できるが、その代わりに全く動けない怪人を三人が取り囲む。長期戦も辞さない構えの三人に、怪人は情けない鳴き声を上げた。
「フェェン」
突然、足元の水が盛り上がる。意思を持ったかのように動く水は、瞬く間にウォータースライダーを作り出した。三人はあれよあれよと言う間に高所へと運ばれ、気づいた時にはウォータースライダーの入り口に立っていた。囲い込み、追い詰めたはずの怪人の姿はどこにも見えない。
慌てるルクと警戒するルークにサンディは、せっかくだから滑ろうと声をかける。
「『障害の中で戦う』と思うより『アトラクションを楽しみながら戦う』と思った方が、『夏の思い出』らしいよね」
いつも通りの穏やかな笑顔と声で、後ろから見ているから大丈夫、危なくなったら助けるよ、と言うサンディに二人は肩の力を抜く。
「思い出……サンディさんとルークさんが一緒なら……こわくない……かも……」
「うぉーたーすらいだぁだっけ? 凄く楽しそう」
三人乗りの浮き輪を見つけてきたサンディに促され、ルクとルークは浮き輪に座る。希望通りにルークが一番前、ルクが真ん中だ。サンディが浮き輪を押しやり、水流に乗って動き出したところで、素早く一番後ろに飛び乗った。
水飛沫を上げ、猛スピードで滑り落ちる浮き輪。ルクは尻尾と大筆を抱きしめ、悲鳴をあげる。しかし、それには恐怖だけでなく、微かに喜色も混じっていた。ルークは表情こそ変わらないものの、尻尾が激しく振られ、耳がピンと立ち好奇心一杯である様が見て取れる。サンディはウォータースライダーはもちろんだが、何よりも二人が楽しんでいる様を見るのがとても楽しかった。
大いに楽しんでいた彼らは、滑り落ちる先に怪人の姿を見つけ気を引き締める。サンディは青く輝く水晶を召喚、小人型にした。続けて、ルクの大筆から発射された絵の具の誘導弾が水晶の小人を乗せて怪人に向かう。
数人の小人が怪人の真上から飛び降り、目を塞ぎにかかった。残りの小人は、怪人の身体の上を大袈裟に動き回る。くすぐったさから身を捩る怪人が目に張り付いた小人をつまみ上げた頃には、周囲をルクの誘導弾がぐるりと取り囲んでいた。
息を呑む間もなく、電撃属性の誘導弾が一斉に突っ込んでくる。焦った怪人は凄まじい速度で臭いツバを飛ばすも、撃ち落とせたのは数機のみ。大量の塗料を被り、ビリビリと感電した怪人が悲鳴を上げた。
その時、三人の乗った浮き輪がウォータースライダーの出口からポンと飛び出す。
ルークは音速で抜刀、跳躍しすると怪人が気づくより早く斬りかかった。ルークの着地と同時に、斬撃の衝撃で浮き上がった怪人の水着が裂け、身体から刈り取られた良質の毛が舞う。毛のなくなった身体は非常にほっそりとしていた。硬い筋肉に見えていたのは、水着に押し込められた大量の毛だったのだ。残った頭の毛は未だモフモフしており、その衝撃的な被り物感に会場は爆笑の渦に包まれる。
サマーカット状態の怪人は、声もなく倒れ込む。激しい水飛沫が上がったその後には、その姿は跡形もなく消えていた。
全身ずぶ濡れのルークは、ブルブルと体を震って水を落とす。濡れると何故かよくやっちゃうな、と考える彼に、浮き輪から降りた二人が歩み寄る。肩で息をするルクはにっこり笑い、サンディは穏やかに微笑んだ。
「……ふぅ。……えっと、ボク1人じゃ戦うどころじゃなかったと思います。ボクと一緒に居てくれて、ありがとうございます」
「俺の方こそ。一緒に居られて楽しかったよ、ありがとう」
「僕も。……ありがと」
礼を言う二人に、ルークも尻尾を振って応えた。微笑み合う三人に暖かな拍手が降り注ぐ。
水が徐々にひきはじめ、元の姿を取り戻す西瓜割り会場を猟兵達の活躍を称える歓声が満たした。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵