秘湯探訪失踪事件~恩讐がいあいあと殺意を運ぶ夏の文字数
●水着を着用せよ
「いいなぁ……」
虻須・志郎(第四の蜘蛛・f00103)がグリモアベースでぼやいてる。
「水着、いいなぁ……」
ちなみにこの男はコンテストに出場してはいない。なので深い意味はない。
「温泉、いいなぁ……」
本題はこちらだ。夏といえば温泉だ。異論は認める。
「えー今回の予知は、寂れた田舎の夏祭りで観光客が神隠しに遭う、らしい」
らしいとは? それは未然に防げないのかと猟兵が質問する。
「それがまた面倒でな……いわゆる呪いの様なもので、楽しい感情に反応するんだ」
つまり楽しいという感情を発露して、呪いを猟兵に集めろというのか? と続く。
「そうだ。だから先ずは――UDC組織が押さえた近くの温泉宿で宴会をしてくれ」
経費は勿論組織持ちだ、こんなに嬉しい事はな――ちょっと待て、と誰かが言う。
「……ああ、水着は着用してな。全裸は逮捕だ逮捕」
余りおいたが過ぎると呪いが発動しないそうだ。なのでマナーは守れと続ける。
「別に温泉に固執しなくていいぞ。風光明媚な露天風呂じゃないからな」
源泉かけ流しの銭湯みたいなもんだ、と志郎は続ける。料理もそこそこ、場内にはゲームスポットもあるが、年代物のアーケードゲームと卓球くらいしかない。地方の寂れた温泉宿だ、盛り上げるなら適当に何か持ち込んでも構わないだろう。
「で、宴会の翌日には件の夏祭りに参加――その時点で事件が起きているかもしれない」
そうなったら直ちに失踪者を救出すべく動いて欲しいと志郎は言う。
「ていうのも今回の黒幕な……捕まえた人間を改造してUDC化しちまうんだ」
俺みたいにな、と……敵は邪教の信徒。捕らえた生贄に文字通り邪神を降ろすのだ。
「だから――他にも捕らわれている一般人がいたら、救出してくれ」
よろしく頼む、と志郎は頭を下げた。
ブラツ
ブラツサスペンス劇場です。
2時間くらいの尺を予定しています。嘘です。
以下詳細になります。よろしくお願いします。
アドリブや連携がOKな方は文頭に●とご記載下さい。
特定の方と連携を希望される場合は何がしかの識別子をお願いします。
第1章は寂れた温泉宿で宴会を楽しんで下さい。
温泉に浸かる際は水着着用必須、混浴の可/不可は指定が無ければ分けます。
料理はそこそこなので腕に覚えのある方は料理を振舞うのも良いでしょう。
アクティビティは卓球とレトロゲームしかありません。場外移動は不可です。
レトロゲームはゴリラに掴まった女を助けるゲームと、
バイクで障害物競走と、ヤンキーが横スクロールで喧嘩するゲームです。
携帯ゲームなどの持ち込みは可です。暇ならガチャでも回せばいいでしょう。
第2章は夏祭りに参加し、発生した呪いや失踪事件を調査して下さい。
電波はかろうじで届くのでネットを使った調べものや、
祭りに参加している一般客から情報を収集したり、足で調査しましょう。
第3章は集団戦、マガツ型量産邪神UDCが相手です。
道中で失踪した一般人を見つけたら、それを保護しつつ脱出ないし、
邪教施設の破壊をお願いします。一般人の記憶は消しますので、
存分に大暴れしてもらえればと思います。
第1章は7/26(金)8:30よりプレイングを募集します。
それ以前に頂いたものは流れる場合がありますので、予めご注意ください。
第2章以降は幕間情報をご確認頂ければ幸いです。各章からの参戦も大歓迎です。
それではよろしくお願いいたします。
第1章 日常
『山奥秘境隠れ家的温泉宿』
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POW : 美味しい料理に御満悦コース
SPD : 卓球に遊具にアクティビティコース
WIZ : 温泉にサウナ、岩盤浴のリフレッシュコース
👑5
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黒鵺・瑞樹
【WIZ】
よし、温泉に行こう(即決)
どうせこの後疲れる事(仕事)があるんだから、今ぐらいまったりのんびりしとく。
でも温泉に入る前に宿内を一通り見てまわるぐらいはしておく。
悲しい事に避難経路とか事前確認しておかないと安心できないタイプでな…。
よしこれで大丈夫だな。
水着は普通にシンプルにハーフパンツタイプ。風呂入る時は髪を入れないように纏めるぐらいか。
十分温泉堪能したら適当にぶらぶら散策、ごろごろ昼寝。
●寂れた宿に眠るモノ
その温泉宿は山の中腹にある一見何の変哲もない古民家風の宿だった。
「よし、温泉に行こう」
黒鵺・瑞樹(辰星月影写す・f17491)は即決した。どうせこの後疲れる事(仕事)があるんだから、今ぐらいまったりのんびりしとく。しかし心配性な性格がただで温泉に入る事を許してくれない。先ずは宿の全景、周りは林の様だ。軽トラックが一台とあれは窯場だろうか、煙突が建った小さな小屋が見える。源泉掛け流しとは言え、ちゃんとお湯を出さなければならないのは普通の銭湯などと一緒。わざわざ窯場が設けられている所から、相当古い建物なのだろうと推測される。
「へぇ……薪に重油か、随分クラシックな事で」
ひょいと小屋を覗き込めば燃料に使うであろう重油が入ったドラム缶と、燃焼用の廃材が目に入る。まあ宿とは離れた位置だし、直接危ない事にはならないだろうと判断し、瑞樹はその場を後にした。
宿は二階建て、そこまで広くない玄関に木彫りの熊や蜂の巣の置物、階段は目の前と一階の廊下の突き当りの二か所、廊下には温泉の入口であろう更衣室が。二階は客室が幾つか、それぞれそこまで広くはないスペースで点在している。というか本当に何も無い。無さすぎる。むしろこんな所しか手配出来なかったUDC組織の懐事情が心配だ。知った事では無いが。
「――よし、これで大丈夫だな」
いざとなれば壁ごとぶち破ればいい。余程の事が起きなければ、であるが。それ以上は心配のしようが無いと、瑞樹は更衣室に向かい、温泉へ飛び込んだ。
「やー貸し切りだ。これは極楽」
髪を纏めてざぶんと湯に浸かる瑞樹。ハーフパンツのゆったりとした生地がふわりと揺蕩い、広い浴槽で全身を伸ばす。源泉掛け流しと謳われているこの温泉、施設自体は本当に古すぎるくらいだが、手入れは充分に行き届いている様だ。古めかしいタイル張りの浴槽は何度も目地を補修しているのだろう、幾つか膨らんでいる箇所もあるが、お湯が漏れたり割れたりする事も無い。掃除も丁寧に行っているのだろうか、所々色褪せてはいても水垢一つ付いてはいなかった。
「成程、長く続けられてるだけの事はある」
使い手が心を込めて手入れをすれば、道具もそれに応えてくれる。そんなに賑わっていない様に見えて、意外と常連客などがいるのかもしれない。
「景色は何と言うか、間違ってる気もするけどな」
風光明媚の欠片も無い富士山をバックに、瑞樹は一時の安らぎを堪能した。
上がったら軽く散歩でもしようか。うん、そうしよう。
飽きたらごろごろ、昼寝でもすればいい。
大成功
🔵🔵🔵
七瀬・麗治
●
※()内は闇人格ロードの台詞です。
楽しいと呪い。相反する要素だが、これが神隠しにどう繋がるんだろうな?
野郎連中と風呂に入っていると、部活の合宿を思い出すな。
よく先輩や顧問の悪口で盛り上がったもんだ。そして多少の猥談。
(おい、まさか貴様だけで楽しむつもりではあるまいな?)
ちっ、せっかくいい気持ちで飲み食いしていたのに、五月蠅い奴め……。
「卓球でもやるか。人を集めよう」
オルタナティブ・ダブルを使用し、ロードを実体化。
シングルスか? それともダブルス?
この古いゲームも味わいがあって面白そうだな。
「よし、ここで画面端に追い込んでカツアゲだ」
部屋を行き来し、漫画やゲームを貸し借りして深夜まで楽しもう。
霧島・クロト
●
【WIZ】
やすませろ というかやすみください……
え、この見た目で風呂入れるのかってェ……?
俺、このスーツの下一応インナー装備してるだけで生身ふつーにあるんだけど。
(バイザー部分は取れねぇからそこは曇るのはしゃーねーが)
日頃の……ってか最近すごい勢いで溜まった疲れを温泉ですげぇのんびりする方向で癒したいんだわ。
……俺の場合こうでもしねェと休み取れない自営業でもあるしさァ……。
(若干の悲哀を感じながら疲れを取るその姿には哀愁があったとかなかったとか)
※混浴でも別に大丈夫ですが異性のハプニングには比較的ノーリアクションです
茜谷・ひびき
●
こういう宿も案外風情を感じるぜ
明日は忙しくなりそうだし、今日はゆっくりさせてもらうか
食事やレトロゲームも気になるが、せっかくだからしっかりと温泉に行きてぇな
立派な温泉じゃなくても、アパートの風呂よりは広いしのびのび出来るし
サーフパンツに着替えたらゆっくり温泉に浸かろう
(混浴はどちらでもOKです)
こういう所ってお湯の温度もなかなかのものだったりするよな……
日々の疲れをしっかり癒したいし体もほぐしておきたいな
気が済むまでは浸かろうか
風呂上がりは牛乳が飲みたいが……売ってるかな
なければ自販機で適当に水とかを買おう
そのあとは夜風にのんびり当たったりして過ごそうかな
……ちょっと年寄りくさいかな
テン・オクトー
●
やっぱり掛け流しの温泉は一度入っておきたいな。
ホカホカさっぱりしたら…他の猟兵さん達に食べてもらえそうなおつまみでも作ってみるね。
白い割烹着を身にまとい、山の幸で山菜の胡麻和え、さっぱり揚げ、魚の串焼き、キノコの汁物、郷土味噌を使った野菜焼き等々。
もぐもぐ、うんまあまあいける。誰でも食べれるようにしておくね〜。
普段来ないような楽しげな場所で、温泉入って、料理作れて食べてもらえたら、すごく楽しいな。
すごく楽しんだから…今日のノルマは達成かな?
●たのしいだんしかい
「やすませろ というかやすみください……」
「おい、何か聞こえなかったか……?」
「気のせいだろ。それより早く入ろうぜ」
七瀬・麗治(悪魔騎士・f12192)と茜谷・ひびき(火々喰らい・f08050)は自前の水着に着替えると、早速温泉へと向かった。そこで信じられないモノを目にする事になる。
「おい、あれ……」
サイボーグが湯舟で舟を漕ぐ……どころか、バイザーを曇らせたまま潜水と浮上を繰り返していたのだ。その横で一人のケットシーがあわあわしながら、麗治とひびきに目を潤ませて助けを求めている(様な気がした)。
「大丈夫か、霧島君?」
名前を呼ばれた霧島・クロト(機巧魔術の凍滅機人・f02330)は面を上げると、バイザーを拭きつつ麗治に返す。
「ああ……日頃の……ってか最近すごい勢いで溜まった疲れを温泉ですげぇのんびりする方向で癒したいんだわ」
「相当参ってる様だな、霧島さん」
掛湯をして同じく湯船に浸かったひびきがクロトを尋ねる。一応リラックスする事が目的とは言え、この後は戦いが控えている。これ程迄のダメージを受けているとなれば、同じ猟兵として心配になるのも当然だ。
「……俺の場合こうでもしねェと休み取れない自営業でもあるしさァ……」
「これはまさか、タ○ダアワー」
自営業、鯛焼き屋の事だろうが恐らくそれだけではない。猟兵達の間でまことしやかに語られるサムライエンパイアで実施中の一大作戦。その戦いにグリモア猟兵として参加しているのであれば、どれ程の負荷が掛かっているかは最早語るまでも無いだろう。いや本当にヤバいって。
「何、それ?」
「知っているのか七瀬さん!?」
いつの間にか横でくつろぐテン・オクトー(ケットシーのシャーマン・f03824)とひびきが麗治に問う。歴戦の猟兵がここまで疲弊するのだ。どう考えてもただ事では無い。
「うん、一部のグリモア猟兵が今それで大変らしい」
曰く、あと二日ぐらいでどうにかしないと、何やかんやでお館様が復活して8月中猟兵は阿鼻叫喚の地獄絵図を味わいかねないと。しかもその結果が生放送で大本営発表されるとか何とか。想像するだけで背後の背筋もぞっとする。連休なんてファンタジーだよ。
「まるで甦る悪夢だね……」
「だったら、そっとしておこうぜ」
「む せ る」
「大丈夫、これまで飽きる程戦っているんだ。きっと勝つさ」
ゆっくりと揺蕩うクロトの健闘を祈り、三人もそれぞれくつろぎ始めた。
「しかし、こういう所ってお湯の温度もなかなかのものだったりするよな……」
ひびきが大きく伸びをして、ぷかぷかとサーフパンツが水面に浮かぶ。意外と広い浴槽は猟兵達がくつろぐには十分、やけに熱い温泉も今は心地よい。
「ああ、温いという事は無い。その分疲れも取れるだろう」
猟兵稼業は過酷そのもの、癒しの時間はとても貴重だ。それにこうして野郎同士で駄弁っているのは、懐かしき部活の合宿を思い起こさせる。麗治にとって紛れもなく大事な記憶。あの時も苦しい練習を耐えてから浴びるシャワーや風呂は、至福の一時だった。仲間と馬鹿話をしながら、時には先輩の悪口なんか言ったりして――幸いここにそういう先輩はいないが。くしくしと髭をほぐすオクトーもリラックスして、熱い温泉に心が高鳴る。
「こうも熱いと、すぐホカホカになっちゃうね」
「ホカホカといえば、ここは混浴もあるそうだな」
オクトーの素直な感想に被せる麗治、何がどうホカホカなんだよと苦笑するひびき。お兄さん達のちょっと大人なジョークに顔を赤らめて、ざばんとオクトーは立ち上がった。
「の、のぼせそうだから! ボク、晩御飯のお手伝いをしてくるよ!」
翡翠色のサーフパンツからボタボタと水滴を落として脱衣場へ向かうオクトーを見送り、残る二人は男らしい話題で盛り上がる。
「――俺は気が済むまで浸かろうか。広い風呂は貴重だから」
ゆっくり体もほぐしたいし、霧島さんも心配だしな、とひびきはしばらく温泉に浸かる事を麗治に告げた。
「――オレは先に上がるよ。ゲームスポットで気晴らしでもしてる」
気が向いたら来いよ、と誘いの言葉を掛けて麗治は温泉から上がった。
(おい、まさか貴様だけで楽しむつもりではあるまいな?)
ちっ、せっかくいい気持ちで飲み食いしていたのに、五月蠅い奴め……。湯上りのアイスにコーヒー牛乳、こんな所じゃなければ口に出来ないレトロな逸品を堪能していた矢先、突如脳裏に“ロード”の言葉が響いた。それは麗治に取付いたUDCだ。あるいは麗治が一人になったタイミングを見計らって、奴は目を覚ましたのだろうか。
「とりあえず、ゲームでもやるか……」
選んだのはドット絵の角刈りがヤンキーやチンピラを薙ぎ倒して進む横スクロールアクションだ。確か運動会の奴がかなりカオスだった記憶があるが、これはそのオリジン、第一作目だろう。
(貴様、私にもそれをやらせろ)
ゆらりと影が伸びてもう一人の麗治が――“ロード”がその姿を現す。
「出来るのか? 邪魔だけはするなよ……」
チャリンとコインを入れてゲームスタート。学ランの雑魚キャラをレバーをガチャガチャいじりながらブッ飛ばす。
『おい、全然攻撃が当たらないぞ!』
下手糞め――いつの間にか囲まれてボコボコにされかかったロードを助けて、チンピラを画面端へと追いやる。余りにもレトロなゲーム、チープな電子音がバシバシと鳴り響き、チリンチリンと敵からコインが落ちる。
「よし、ここで画面端に追い込んでカツアゲだ」
『こうか? ええい……ああもう!』
スルリとロードの攻撃を躱すチンピラが背後から奇襲をかける。実戦だったらこんな事は無いのにと向きになるロードを横目で見て、何だか面白そうだからと麗治はしばらく付き合う事にした。
「――この見た目で風呂入れるのかってェ……?」
うわぁ!? 湯舟の中で突然再起動したクロトに驚き、隣のひびきが跳ねる。
「あァ……そうじゃないか」
ざばんと水飛沫を上げて立ち上がったクロトが洗い場へ向かう。その姿は殆ど生身……というか、頭部のバイザー以外は至って普通の人そのものだった。
「サイボーグって奴は、水中でも大丈夫なのか?」
ガシガシと長い白髪をシャンプーで洗うクロトの、引き締まった五体と漆黒のインナーを見てひびきが尋ねる。
「……俺、このスーツの下一応インナー装備してるだけで生身ふつーにあるんだけど」
意外、あのメカメカしいバトルスーツからは想像だにしない解答。よく見れば端子らしき傷跡がちらほらと目に映るが、確かに全身は生身そのものだ。
「だからさァ、疲れるのは生身の人間と同じって訳。サイボーグだからってちっとは容赦してくれよなァ……」
ブツブツと呟きながら手際よく全身を洗うクロト。大分生身の部分がほぐれたのだろうか、随分とその手際が軽やかだ。
「た、大変なんだな……」
若干の悲哀を感じながら疲れを取るその姿には哀愁が滲み出る。
「……折角だ、上がったら軽く遊んでいかないか?」
何か遊ぶ場所あるみたいだし、とひびきはクロトを誘う。
「……余り人数いなければな」
一体何があったのだろうと訝しみつつ、温泉を上がったひびきはクロトとゲームスポットへ向かった。
「で、卓球だァ……?」
『そうだ、しかもダブルスだ』
シュッシュッとラケットで素振りをするロードを見て、何でこいつはこんなに元気なんだと他の三人が呆れる。ゲームスポットに着いたひびきとクロトは、浴衣姿でハッスルする同じ顔の二人を見て、何があったか尋ねた所――巻き込まれた。
「……ユーベルコード使ってもいいのか?」
「……大丈夫だ、増える事以外特に何も出来ない」
貴様今なんと! などと騒ぐロードをスルーして、大の男が四人で猟兵卓球を始めようとラケットを構える。
『猟兵卓球……』
「知っているのかロード?」
訳知り顔でドヤるロードに麗治が尋ねる。というか嫌な予感しかしない。
『うむ、負けた方がジュースとかをおごる』
それ只の罰ゲームじゃ――突っ込もうとした矢先、先行のひびきが白球を飛ばした。それも尋常じゃない速さで。
「負けたら牛乳おごってもらうぜ!」
「俺はフルーツ牛乳な」
チカチカと眼球のセンサが明滅して白球の軌道を解析するクロト。この戦いは残念ながら尋常ではない領域へ突入した。
「もぐもぐ、うんまあまあいける」
白い割烹着を身に纏い、オクトーは手際よく調理を進める。先ずは山の幸で山菜の胡麻和え。幸い材料は冷蔵庫に沢山あった。後は焼き物と揚げ物と汁物と、板前さんを手伝ってちょろちょろと動き回る。
「他の猟兵さん達に食べてもらえそうなおつまみになるかなぁ?」
続いてさっぱり揚げを。夏野菜をふんだんに使った、最早主菜といってもいいような逸品だ。じゅうじゅうと音を立てて上がる野菜をさっと取り出して、油がきつくならないように注意する。
「誰でも食べれるようにしておこう」
魚の串焼きは獲れたての鮎。今年は天気が余りよろしくない為か比較的小ぶりの形ばかりだが、大人でも子供でも食べやすいサイズだし丁度いいだろう。
「普段来ないような楽しげな場所で、温泉入って」
郷土味噌を使って地場の野菜を焼く。バーベキューみたいでちょっと楽しい。ほんのりと焼ける味噌の香りが芳しい。
「料理作れて食べてもらえたら、すごく楽しいな」
だからノルマは達成だよね? とゲームスポットで仁義なき死闘が繰り広げられてる事も露知らず、キノコの汁物を器に選り分けてオクトーは満足げに笑うのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
響・夜姫
●
混浴可
デッデッデーン。(火のサスペンス劇場なあれ)
「逮捕された」
温泉は裸で入る筈。げせぬー。(水着を着る)
水着を着た後はゆったりたっぷりのーんびり。
冷やしたお酒を桶から取り出して、「……またしても逮捕された」
そういえば。UDCアースでは、飲んだらいけなかった。
冷えた瓶牛乳を取り出して、ぷはー。
「ごくらくごくらく。ぷぇー」
連れてきたバディペットのおんせ……宇宙ペンギン(紐ビキニ着用)も同じような顔。
ちゃんと岩盤浴まで楽しんでから宴会に行く。
きっとペンギンが何か芸をする。
ゲームは負けた。ぐぬぬー。
紗我楽・万鬼
●
解りやすよ志郎の旦那…
あっしも会場で飯食うだけでしたからね
ま温泉は行ってきますね!
温泉は後で堪能するとして
宴会ならば一席伺いますよ!
さぁ皆様今な噺を御聞きなさって
廃墟へ肝試しに行った男二人
与作と佐吉のこんな会話がありやした
「なぁ佐吉さっきから人外の足音がするんだが」
「怖い事云うな与作、それよりあの影嘴に見えるぞ」
「ひぃっ今羽根が降ってこなかったか?」
「怖い怖い、見ろよ鏡だ何か写って…ぎゃー!」
おお恐ろしい鏡に映ったのは人間ではなかった!
闇夜に浮かぶ奇妙な頭部、たてがみ、手足を持った…シャーマンズゴースト!
「「ああなんだ俺達か、驚いた」」
安心して二人と一羽は何処かへ還っていきましたとさ
御粗末!
ヘスティア・イクテュス
●
あら、温泉に入って夏祭りで楽しんでって良いわね
何より経費がUDC組織持ちなのが良いわ!
温泉はどうせ水着着用なら混浴の方でいこうかしら?
サービスよ
志郎、ほらぼやいてたでしょ?美女の水着見て何か感想はないかしら?
温泉良いわね…
サムライエンパイア辺りきな臭いし、今のうちに英気を養わないとね
無論お風呂上りはコーヒー牛乳でね
その後の料理も楽しみね
山奥なら山の幸かしら?
この時期だと鮎ね鮎。塩焼きとか
メイスン・ドットハック
●
【WIZ 】
温泉とはいいものじゃのー
せっかくじゃし、堪能させて貰うとしようかのー
新調した水着に着替えて温泉をとっくり味わう
宝石の身体であるクリスタリアンに温泉の効能が効くかどうかは興味があるところではあるが、あまり気にせずに浸かる
今回はシンプルな水着で敢えて路線を決めてみたが、色とりどりの水着を見て思うところがあったようで、来年があるのなら、もう少し凝った水着にしようと他の水着を見て思考を張り廻らせている
これから邪神と戦うにはあまりにリラックスした姿を見せる
●秘湯失踪事件~少女達は見てしまった
デッデッデーン(BGM)
一人の少女がバスタオルを被されて連行されている。
「げせぬー」
そう呟く響・夜姫(真冬の月の夢・f11389)は客室へ向かわされ、ペンギンがひょこひょことその後を付いていた。
「一体何が……」
「んー……多分水着を忘れたんじゃろー」
後から更衣室に入ったヘスティア・イクテュス(SkyFish団船長・f04572)とメイスン・ドットハック(ウィザード級ハッカー(引き籠り)・f03092)はその様子を見送って、自前の水着に着替えた。先日のコンテストで用意した逸品、黒に鮮やかなスカイブルーのラインが映える競泳水着のヘスティアに、濃紺一色のシンプルな競泳水着のメイスン。SSW出身らしい実用的かつ可愛らしいデザインだ。
「サービスよ。志郎、ほらぼやいてたでしょ?」
デッデッデーン(BGM)
美女の水着見て何か感想はないかしら? と混浴の温泉へ躍り込んだヘスティアが見たものは、バスタオルを被されて連行される哀れな猟兵の姿だった。
「あー、そういうことかのー」
同じグリモア持ちならではの痛し痒しが何となくわかっちゃったメイスンがそれを見て頷く。要するにあれだ、大人の事情って奴だ。
「解りやすよ志郎の旦那……あっしも会場で飯食うだけでしたからね」
そりゃあ一風呂浴びても罰は当たりやせんでしょうが……不意に声が背後から、紗我楽・万鬼(楽園乃鬼・f18596)がウンウン頭を振りながら黒髪を揺らす。
「やーこれは失敬お嬢さん方、手前は通りすがりの噺屋。ここで一つ小噺をと行きたい所でありますが、今はお客人を一名連れて参った次第で」
更にその後ろから夜姫が可愛らしい水着で現れる。鮮やかなパレオがひらりと舞って、花とフリルをあしらったアラビアンな雰囲気の赤いビキニが色気を醸し出す。
「温泉は裸で入る筈。こんな仕打ち、のまねばやってられぬわー」
手にした桶から冷酒を出したその手を万鬼が掴んで、折角のアルコールは早速取り上げられた。
「あっしじゃなけりゃ、本当にレッツゴー豚箱だった所でござい」
それは勘弁願いたい。召喚されるのはポリスメンじゃなくて邪神の筈だ。
「それでは皆様ごゆっくり。後程宴の席でお会いしやしょう」
ぴしゃりと戸を閉め万鬼が出て行く。まあ温泉が目的だしと、三人はそのまま広い湯舟へと向かった。
デェェェェン(BGM)
「何、あれ……」
振り返るとその先に紐ビキニを着用したペンギンが湯気をバックに立っていた。
「夜姫……またペット持ち込み」
「違う、あれは装備」
「そんなメタな……まあ、大丈夫じゃろー」
隕石とか落ちてくるシナリオじゃないし。掛湯をしてメイスンは早速湯船に浸かる。結晶化した身体が水中できらきらと煌き、浴槽の白いタイルと相まって一層の美しさを引き立てた。
「クリスタリアンに温泉の効能が効くかどうかは興味がある――」
でも、まあいいかのー。あまり気にしても仕方が無いし、少なくともデスクワークばかりで固まった関節がじんわりと解れている様な感じはしているのだから。
「ああ、温泉良いわね……」
ざぶんと肩まで一気に浸かったヘスティアは、全身を伸ばしてその熱さを堪能する。小うるさい執事AIも無くのんびりと、ややはしたなくも文句は言われない。
「効能は美肌、関節痛、あと……」
古めかしいパネルにUDCアースの文字で書かれた温泉の効能を確かめながらリラックス。このままずっと休みなら良かったのに、サムライエンパイア辺りもきな臭い。今のうちに英気を養わないとね――ひょこひょこ歩き回るペンギンを眺めながら、ヘスティアは微睡んだ。
「ゆったりたっぷりのーんびり――はぁ」
他にも岩盤浴があるらしい。こんな寂れた感じなのに随分と立派な設備があるんだなと、湯船で立ち上がって浴場を眺める夜姫。
「……うーむ」
今回はシンプルな水着で敢えて路線を決めてみたが、あんな派手な色味もいいんじゃないか。きょろきょろとその場を回る夜姫を眺めて、次の水着の案を練るメイスン。来年はもう少し凝った水着にしようかと思考を廻らせて。
「それじゃ、さっと洗って出ちゃおうかしら」
急にスラリと伸びた長い手足が飛沫を上げてヘスティアが立ち上がる。もう十分温泉は楽しんだという雰囲気で、
「僕はせっかくじゃし、堪能させて貰うとしようかのー」
しばらくは温まると、メイスンは湯船で手を振る。
「私は岩盤浴ー」
ひょいと立ち上がった夜姫もヘスティアに続いて洗い場へ。
「これから邪神と戦うにはあまりにリラックスし過ぎな……」
まあ、楽しめって言われとるしのー。メイスンは手足を伸ばして、再び湯船でゆったりと温泉に浸かり始めた。
「ごくらくごくらく。ぷぇー」
冷えた牛乳を一気飲みして溜め息を吐く夜姫。それに続いてペンギンも息を吐いた。岩盤浴は脱衣場を抜けた先にあるらしい。水分も多少取って気合も十分、ペンギンと連れ立ってひょこひょことそちらへ向かう。
「私はもういいかな、十分リラックス……」
うとうとと睡魔がヘスティアを襲う。纏めた髪を解いてドライヤーを掛けながら、座り込んでいる内に眠りそうだ。
「……コーヒー牛乳貰ったら、ちょっと寝よ」
まだ夕飯と宴会がある。山奥なら山の幸かしら? 宇宙船の中じゃ滅多に見られない物ばかりで、何より経費がUDC組織持ち! 飲み放題で食べ放題よ――期待に胸を高鳴らせて、ヘスティアは浴衣に着替える。旅館によくあるシンプルな白と紺の古めかしいスタイル。そういえば浴衣も用意しなきゃ……。
「浴衣かのー。まだ考えても無いのー」
がらりと戸を開けてメイスンも脱衣場へ。軽く水を飲んだら同じく、鏡台の前で髪を乾かし始める。
「……こんなのんびり出来るなんて、あの頃は考えられなかったものね」
二人とも5か月前のSSW終戦まで、自らの世界で戦っていたのだ。戦いしかなかったのだ。それが今や異世界でバケーションめいた一日を楽しむ。先日も復興した宇宙船でコンテストなんかも開かれた。
「こっちの世界も落ち着けばいいんだがのー」
ブローを終えてさっと着替えたメイスン。こうやってゆったりした日だけが続いて引き篭もれれば、こんなに嬉しい事は無いのじゃが。
「まあ、仕事は明日からだもの、今くらいはいいじゃない」
にこりと笑って再び髪を纏めたヘスティアはもう一本コーヒー牛乳を手に取って、飲み干す。
「……よく飲むのー」
「経費は組織持ちだもん。飲まなきゃ損よ」
補給は取れる時に迅速かつ最大限。しかしこれが後に悲劇をもたらすとは、誰も気がつかなかったのだ……。
「おなかいたい」
はぁ、と溜息をつくメイスン。既に宴会は始まっている。夕飯も配膳された。
「メカなら治せるんじゃが、流石に人はのー」
「いや美味、美味」
小鉢の胡麻和えを早速食べ尽くす夜姫。ここに宇宙モンゴリアンデスワームは絶対に存在しない。それだけで食が進むというもの。メイスンはうなだれるヘスティアを横目に見ながら、器用にお好み焼きを捌いて口に入れる。
「それ……何処で……」
「頼んだら出てきたんじゃー」
UDCアースも中々やるのー、と焼き立てのお好み焼きを満足げに食すメイスン。
「うう……鮎、折角鮎の塩焼きがあるのに」
ヘスティアの目の前には小ぶりながら香ばしい香りを漂わせるアユの塩焼きが並ぶ。食べられない訳じゃない、しかし無理な補給が多少内蔵に負荷をかけたのは致し方ない。
『こんな事もあろうかと』
不意にヘスティアが身に着けた端末が唸る。アベルからのコールだ。
『既に薬は手配しておきました。UDC組織謹製の』
「それ本当に大丈夫なんでしょうね!?」
さあ? とすっとぼけるアベル。気が付けばふらりと男が――万鬼がその手に楽器の印の丸薬を持って現れる。
「大丈夫、何せ元々軍用。効果は抜群って奴ですぜ」
そう言うと丸薬をヘスティアに渡し、特設のステージを見据える。
「さて――そろそろあっしの出番ですね。では行きやしょう」
ステージで廻って踊るペンギンと入替る様に万鬼が座布団と扇子を手に、その中央に正座して深々と礼をした。
――さぁ皆様今な噺を御聞きなさって
しん、と宴席が静まり返る。噺屋特有の間の取り方、呼吸を読んでしゃんと語れば、途端に空気は万鬼のもの。すうと息を吸って、万鬼は語りを続ける。
――ある真夏の夜の出来事、丁度今日みたいな宴がありまして
興が乗りそのまま廃墟へ肝試しに行った男が二人
与作と佐吉のこんな会話がありやした
「なぁ佐吉、さっきから人外の足音がするんだが」
「怖い事云うな与作、それよりあの影嘴に見えるぞ」
右へ左へ、面をくるくると表情を変える万鬼。
シャーマンらしく役を降ろしたか、らしい声色が恐れを抱かせる。
「ひぃっ! 今羽根が降ってこなかったか?」
頭を振って何かから避ける様に、ばさりと広げた扇子を鏡に見立てて。
「怖い怖い――見ろよ鏡だ、何か写って……ぎゃー!」
おお恐ろしい、鏡に映ったのは人間ではなかった!
闇夜に浮かぶ奇妙な頭部、たてがみ、手足を持った……シャーマンズゴースト!
「「ああなんだ俺達か、驚いた」」
安心して二人と一羽は何処かへ還っていきましたとさ。
――御粗末!
ぱらぱらと疎らに拍手が起こって、深く礼をして下座へ下がる万鬼。
「江戸時代にUDCっておったのかのー」
「そういう話じゃないってば!」
「ペンギンがいつの間にかあっちに……」
すっかり体調を戻したヘスティアがメイスンに突っ込みを入れて、噺屋とコラボして嘴役で出演してたペンギンを羨ましそうに眺める夜姫。
再び騒がしさを取り戻す宴席。これだけ盛り上げればきっと気が付くだろう。
本当に怖い、邪神の輩が。
大成功
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月守・咲凛
【ワンダレイ】のネージュさん、尾守さん、九重さん、メンカルさんと一緒に参加。
こんよくーです。みんなで一緒に入れるのは良いですねー。
性別の違いというのがあんまり良く分かっていないので、一応決まりらしいからと水着を着ていますが、他のメンバーと尾守さんに特に区別なく話しかけたりくっついたり、はしゃぎながら温泉を楽しみます。
宴会も楽しみにしているのですが、遊び過ぎてすぐに体力が尽きてしまい、半分眠ったまま、眠くないのです、起きてるのです、と頭をグラグラ揺らしながらみんなの後をついて回ります。
寝かし付けられたらあっさり眠ります。
メンカル・プルモーサ
●【ワンダレイ】で参加。
温泉…温泉…(わくわくしている)…たまにはのんびりするのもいいよね…とはいえ、混浴だから水着は必要か……
水着に着替えて露天風呂に入るよ……うーん、温まる……
……(夜野を見て、男女比を見て)……これ、もしや夜野がハーレム…いや、夜野はおかーさんだから実質問題なしか……
……ん、咲凛が眠そう……途中で寝ちゃったら背負って移動しよう……
宴会もだけど、お祭りも楽しみだね……屋台とかもだけど……成り立ちとか謂れも気になるなぁ…パンフレットとかには書いてないかな……
ん、面白そうなの……?行ってみようか……
九重・桜花
●【ワンダレイ】のみんなと一緒に参加だよ!
温泉でのんびりしようかな?あ、水着着用なら混浴でも大丈夫!(水着コンテスト時のビキニを持参)
「ん〜、気持ちいい〜♪」
ボク肩が凝りやすいから、こういう所でリフレッシュ出来るのは嬉しいな〜
この後も宴会があるみたいだし、思う存分満喫しないとね♪(楽しそうにはしゃぐ咲凛ちゃんを微笑ましげに見つつ)
夜野さんが調べてくれたお祭りの情報も、色々あって楽しそう。
「賛成!こういうのって実際に見てこそ楽しめるものが多いもんね♪」
尾守・夜野
●【ワンダレイ】の皆と。
(皆と混浴の温泉入る約束してるけど俺、数日前に転んで腹怪我してんだよなぁ。
まぁ湯治になっていいか)
軽く考えて水着でいざ露天風呂へ!
「おぅ!皆早いな
やばけりゃ入らんて
…確かに肩凝りとかに効きそうだ」
囮とかどうでも良くなって満喫する
「ふぅ…そういや夜には宴会らしいな
ここの料理は何だろな
俺としては血とか扱ってると嬉しいんだが(出るわけない)料理に風土ってかなりでるよな
ここいらって風呂以外に有名なのあるのかね?」
式を放ち、明日の屋台の情報から近所の面白そうなのとか片っ端から集める
「お?ほう…なんか、ここらに面白そうなのあるらしいぜ
明日いってみねぇ?」
ネージュ・ローラン
【ワンダレイ】で参加。
水着コンテストの水着で温泉に入ります。
温泉は疲れに効いて癒されますね。
混浴なのは水着でも少し恥ずかしいですが。
楽しい感情に反応するとのことなので、依頼のことは一旦置いておきましょうか。
せっかく皆さんと一緒ですので温泉に浸かりながらお話しましょう。
咲凛さんも桜花さんもメンカルさんも水着姿とても可愛いです。
夜野さんも格好良く似合っていますが、傷に滲みたりしませんか?
咲凛さんは疲れて寝てしまいそうなので、お部屋に連れて行って眠るまで付き添いましょう。
たまにはこうしてゆっくりするのも良いですね。
夜野さんが調べてくれたお祭りも楽しみです。
●Wonderful Days
「こんよくーです」
「温泉……温泉……」
水着に着替えた月守・咲凛(空戦型カラーひよこ・f06652)とメンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)は、浴場の戸を開けて中へと駆けこむ。
「ちょっと咲凛……走ったら危ない……」
制するメンカルも内心温泉にわくわくしている。天然の源泉掛け流し、見た目はちょっと広い銭湯の様な感じでも、入ってみればその違いは分かるだろう。
「みんなで一緒に入れるのは良いですねー」
メンカルに掛け湯をされてはしゃぐ咲凛、ざっと流して湯舟に飛び込む。ちょっと熱い気もするけれど、疲れた体には心地よい。
「……たまにはのんびりするのもいいよね……」
ふぅ、と息を吐いて手足を伸ばす。眼鏡を外したせいかぼやける視界に微睡んで、メンカルはこくりと舟を漕ぎ始めた所、大声で目を覚ます事になる。
「おぅ! 皆早いな」
脇腹に透明なラップを撒いて尾守・夜野(墓守・f05352)がガラリと戸を開ける。それに続く様に九重・桜花(花吹雪・f10723)とネージュ・ローラン(氷雪の綺羅星・f01285)も。色とりどりの水着が湯気の中に咲いた花の様に揺れて、途端に景色が華やいだ。
「ん〜、気持ちいい〜♪」
「うーん、温まる……」
ざぶんと次々湯舟に飛び込む女性陣達。普段戦い通しの身体だ。折角の休める機会、だらりと四肢を伸ばしてひと時の安らぎに身を委ねた。
「みんな、寝ちゃダメーです」
湯舟の中でぽかぽかと桜花を叩く咲凛。フリルをあしらった黄色い水着がひらひら舞って、元気の良いひよこみたいだ。
「だってボク、肩が凝りやすいから」
うーんと伸びをして胸を揺らす桜花。そうでしょうね、と無言でそれを睨む二人にきょとんと不思議そうな顔をする咲凛。
「こういう所でリフレッシュ出来るのは嬉しいな〜」
はしゃぐ咲凛にわざとらしく湯を掛けて、再び湯船に肩まで浸かる桜花。
「しかし……これ、もしや夜野がハーレム……」
いや、夜野はおかーさんだから実質問題なしか。美少女達に囲まれながら、それを意識しているのかしていないのか、ぐったりと湯舟に身体を沈めた夜野をちらりと覗いて、メンカルもぐったりと肩を沈めた。
「――温泉は疲れに効いて癒されますね」
メンカルの隣でネージュも息をつく。混浴なのは水着でも少し恥ずかしいけれど、せっかく皆さんと一緒。温泉に浸かりながらお話しましょうと声を掛ける。
「たまにはこうして、ゆっくりするのも良いですね」
「うん……しかし改めて桜花を見ると……」
年は殆ど一緒なのに、解せぬ。きっとこの前に入っていた三人がいたら全く同じ事を言うだろう。神は不公平だ、と。
「フフ……でも、咲凛さんも桜花さんもメンカルさんも、水着姿とても可愛いですよ」
黄色いフリルのビキニを纏った咲凛、同じ様に白いフリルをあしらったビキニスタイルのメンカル。桜花も真っ赤なチェック柄に小さいフリルと胸を強調したビキニ。ネージュの水着はメンカルとは対照的な深い黒にリボンとふわりとしたフリルが――フリル率高いな。
「夜野さんも格好良く似合っていますが、傷に滲みたりしませんか?」
「やばけりゃ入らんて……確かに肩凝りとかに効きそうだ」
話を振られた夜野が片手を上げて言葉を返す。南国風の派手なデザインのハーフパンツに、傷口を隠す様に大きく張られたガーゼの上を防水用のラップが包み込む。数日前に転んで脇腹を怪我していたのだ。これで血が滲みない様に気を使ったが、それ以上に湯加減が良い――くたびれた全身の血行が瞬く間に生き返り、固くなった関節をじんわりと解していくのが身体で感じられる。
「心配してくれてありがとな――って、おい咲凛、大丈夫か?」
夜野がふと顔を前に向ければ、ぶくぶくと泡を立てて沈みそうな咲凛の姿が。
「眠くないのです、起きてるのです」
大丈夫なのです、とあくまで健在を誇る咲凛だがどう見ても眠そうだ。
「この後も宴会があるみたいだし、思う存分満喫しないとね♪」
「宴会」
「その前に身体を洗いましょう」
「洗う」
うとうとと上下に首を振る咲凛を連れて、ネージュが一緒に洗い場へ向かった。
「そうか、夜は宴会か……ここの料理は何だろな」
「多分山の幸とか、そういうのだと思うよ?」
広い湯舟ならでは、楽しそうに足をバタバタさせながら語る桜花。何でも廊下で採れたての山菜や鮎が運ばれているのを見たそうだ。
「俺としては血とか扱ってると嬉しいんだが」
まあ出るわけ無いだろうと夜野が続ける。グールドライバーに鮮血は必需品、新鮮な血液が手に入るのならば味わってみたいと赤い瞳を歪ませて。
「ボクと山に入って蛭でも獲ってくる?」
「それは血を吸う奴だ。料理に風土ってかなりでるもんな。流石に蛭は無いだろ」
呆れた口調で桜花に返す夜野。ともあれ、この地域の名物尽くしならばそれはとても楽しみだ。別に血液のみで生きているわけではないのだから。そして何かを思いついたように、夜野がぼそりと呟いた。
「そういや、ここいらって風呂以外に有名なのあるのかね?」
「起きているのです……」
ぐったりとした咲凛の髪を乾かして、ネージュが柔らかく微笑んだ。
「咲凛さんはもう、寝てしまいそうですね」
「それじゃあ私も……手伝う……」
着替え終えたメンカルがネージュから咲凛を受けて、丁寧に髪を解かし始めた。
「咲凛、お祭りは明日だから……今日は休もう」
「まだ終わらんのです……私は……」
グラグラと身体を揺らして、遂に咲凛は意識を失った。着替えさせたし、後は部屋まで運ぼうかと咲凛を背負うメンカルが脱衣場を出ようとした時、ネージュが静かに声を掛ける。
「メンカルさん、私も手伝いますから」
口元に人差し指を当てて、小走りでメンカルに近づくネージュ。
「仰け反って落ちちゃいそうですし」
やけに重いと感じたのはそのせいか――ネージュに咲凛の背中を押さえて貰い、二人が脱衣場を出ようとした時、後ろから大きな声が聞こえた。
「二人ともー! 宴会の席は取っておくからねー!」
静かにして、とジェスチャーを桜花に。宴会が楽しみなのは二人も一緒なのだから、今はこの子をゆっくり休ませてあげようと静かに部屋へと戻った。
「よし、戻ってきたな……と。何々」
夜野が放った式が持ち帰った情報には、明日の屋台、祭りの内容、この山の地図があった。
「焼きそば、たこ焼き、お好み焼き――ケバブ」
ケバブ。最近よく見るよなぁと溜息をつく二人。ここならではの面白い屋台は無いものだろうかと、ちりばめられた情報に目を凝らす。
「ただいま……咲凛はネージュが寝かしつけてる」
やや眠そうなメンカルが宴席に合流し、再度祭りの見どころを探す。メンカルの分析力があれば、更に効率よく面白そうな事を発見出来るだろう。しかし見つけた情報は、彼らを猟兵に戻さざるを得ないものだった。
「ここのお祭り……鎮魂の祭事だって……」
元々ここへ訪れたのは、その祭りの最中に姿を消した一般人の調査と救出だ。
「この山……防空壕、だったみたい」
そしておあつらえ向けにこの山の出自が語られる。防空壕――厳密にいえば山中に構築された、旧大戦時の軍事施設に等しい。
「途端にきな臭くなったね……」
溜め息をつく桜花。出来れば明日知りたかったが、知ってしまったからには後戻りは出来ない。
「お待たせしました、と――何かありましたか?」
ぱたぱたとネージュが浴衣の裾を揺らして席に着く。ほのかに漂ったシャンプーの香りが、もう一度四人を宴の空気へ引き戻した。
「ああ止め止め、もう囮とか調査とかいいから祭りだ、祭り」
小噺が終わって喧噪を取り戻した宴席で、夜野が力強く宣言する。
「流石に職務放棄は――じゃないよね、楽しまなきゃ」
楽しまなきゃ呪いは発動しない。だったら全力でそうするべきだと桜花が続く。
「ええ。夜野さんが調べてくれたお祭り、楽しみです」
ネージュも、決して後ろ暗いだけではない祭りに思いを馳せて、メンカルに向き直る。彼女が一番、深い情報を知っているから。
「……そうね。おすすめは川魚のつかみ取り……」
「賛成! こういうのって実際に見てやってこそ楽しめるものが多いもんね♪」
夜野が調べた情報から一番山っぽいものを読み上げたメンカル。それに続いた桜花の言が、明日の予定を決定づけた。
「お? いいじゃねえか。他にもここらに面白そうなのあるらしいぜ」
それは川魚のつかみ取りから程近い場所にあるラフティングスポット。
「明日いってみねぇ? 水着があれば参加出来るみたいだし」
ワイワイと賑わう席、そして夜は過ぎて朝を迎える。
「宴会は、ねえ宴会は!?」
ぐっすりよく寝た咲凛は朝一番、ネージュと桜花に当たる。
「宴会はね、うん」
大丈夫よ、今日もまだあると思うし……仕事終われば。
「えーんーかーいー!」
この分なら呪いは充分発動してしまうだろう。
これだけ祭りを、宴を楽しみにしている子がいるのだから。
大成功
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第2章 冒険
『神隠し伝説を追え!〜怪異は祭囃子と共に〜』
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POW : 山を直接散策して少女の手がかりを探す
SPD : 少女の足取りと言い伝えについて村民に聞き込みを行う
WIZ : 現地の神隠し伝説や迷信について書物やネットで調べる
👑11
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※第2章は幕間追加後にプレイングを募集します。ご注意ください。
●魔の山の胎動
行われる夏祭りは至ってシンプルに、慰霊の祭事の後、日が沈む頃に先祖を祀った灯篭を川に流すというものだった。元来は戦没者の鎮魂の為の儀式だったが、時間の経過と共に先祖の慰霊の為の催しと混ざったらしい。
山道は険しく、屋台は神社周りの開けた道にちらほらとあるが、日が出ている間は他にも川魚の手掴み体験や川下りのアクティビティを楽しむ事が出来る。また上の方へ進めば大きな橋が架かっており、そこからバンジージャンプも出来るそうだ。
猟兵の懸念、楽しいと呪いと相反する要素がどの様にして神隠しに繋がるのか?
更には旧軍の防空壕があったという要所――何かが隠されているのではないか?
謎は深まるばかり――そして、正午ごろに事件は起こる。
必死の形相で往来を行き来する若い男女。話を聞いてみると11歳の娘が急に姿を晦ましたらしい。周りの人に聞いても『しばらくすれば戻ってくる』『慌てなくてもよくある事』『誰かと遊んでるだけだろう』と、まともに取り合ってくれない。
果たして、これが神隠しだろうか。
山を直接調べてもいいし、詳しい聞き込みをしても、ネットで外部の情報を仕入れてもいい。放っておけば、少女が邪神の犠牲となる事は確実なのだから、急ぎ調べなければ。
※プレイングは現時点より受け付けます。締切は初回プレイング失効に合わせます。
霧島・クロト
●
あー、休めた(首ぐりぐり回しつつ)
って早々に案件かァ。……人攫いにしちゃちょっと穿ち過ぎだよなァ
【氷戒装法『貪狼の双星』】で物理的に人手を追加。
聞き込みや手掛かりからの【情報収集】は基本だよなァ。
一応変な痕跡もねーか【視力】【暗視】辺り使いつつ注視。
コピーの俺とは互いに連絡を取り合いながらも情報を絞り込んでく。
移動手段使えそうならバイクも積極的に。
祭りの中ならマナー的に浴衣着とくべきだろ
(※びっくりすることに白地の浴衣である)
「神隠しっつーと神秘的に聞こえるけどまー、なァ」
「……改造されてなんとかなるっつーのは天文学的確率だしな」
黒鵺・瑞樹
【SPD】
民俗学専攻の学生風に【変装】【演技】して、フィールドワークを装い、村民に伝承の聞き込みして【情報収集】する。
元々そういった話は興味あったしそこそこ不自然にはならないようにできるはず。
一応【コミュ力】で頑張る。些細な話も聞き洩らさないよう【聞き耳】を立てる。
話を聞いて不自然な場所や事柄についての判断は【第六感】頼りにはなってしまうが性があるまい。
おかしな場所がわかったら【目立たない】よう【存在感】を消し調査。
鍵は【鍵開け】で対応。
わかった事は他の猟兵達と情報共有する。
メイスン・ドットハック
【WIZ】
何か久しぶりに調査みたいなことをするのー
なら、久方ぶりに電脳ハッカーとして仕事をするとするかのー
【ハッキング】【情報収集】を駆使してネット上から情報を集めることに徹底する
セキュリティが硬い所は【鍵開け】【ハッキング】【暗号作成】を使って作成したツールを駆使して突破していく
またUC「井の中の蛙、大海を知らず」を発動して、AI「ノーキンくん」を呼び出して自身の補助をさせて、効率上昇させて、作業を進めていく
あとは少女が姿を確認された監視カメラなどを【ハッキング】して、そこから【情報収集】して足跡を発見していくなどの、地道な作業をしていく
アドリブ絡みOK
茜谷・ひびき
アドリブ連携歓迎
いよいよ事件発生か
生贄を出す訳にはいかねぇな、捜索を頑張るか
……女の子の親御さん達も心配だろうし
消えた少女の特徴や山の様子について【情報収集】したならすぐに山に入ろう
怪しいのはやっぱり防空壕か?
それ以外にも怪しい集団が潜めそうな所を重点的に探そう
少女の持ち物なんかも落ちてないか探したいな
子供の足跡なんかもあれば怪しいかもしれねぇ
兎にも角にも山に少女と邪教の信徒がいるのは間違いないだろうし
その二つの痕跡を探そう
山の中でも【情報収集】は忘れずに
【野生の勘】に頼る必要も出るかもしれねぇな
他の猟兵とも積極的に情報を交換出来ればと思う
こういう時は人手が必要だからな……
●隠された悪意
いつの間にか宿の一室に展開された電脳ユニットがチカチカとランプを点灯させている。本来ならば大掛かりな装置を用意したい所だが、出先故に仕方が無い――メイスン・ドットハック(ウィザード級ハッカー(引き籠り)・f03092)は呼び出した情報処理AI『ノーキンくん』に自らの端末でアクセスしながら、必要な作業ルーチンを入力していく。
「何か久しぶりに調査みたいなことをするのー」
うだるような暑さから避けるべく、自らの知識をフルに発揮すべく選んだ手段は電脳魔術師のお家芸。かろうじで繋がるネットワークから間に並列処理装置を走らせて、更に膨大なルーチンワークを処理する事で、ここ数年この辺りで起こった未解決事件を一掃しようという魂胆だ。
「回線が細くても、太い所に噛ませれば必要な情報だけ拾えるからのー」
自身は既に入手した行方不明の少女の映像から、リアルタイムで稼働している近辺の監視カメラの記録を漁り、直近の行動を把握する。しかし。
「こんな田舎じゃ、流石にカメラは無いか……ん?」
最後に確認が取れたのは近場の駅の監視カメラ。それでもここから車で30分は掛かる位置にある上に、映像は昨日のものだ。
「……この辺りから出ていったわけでは無さそうだのー」
だが想定内だ。こうして外堀を埋められれば、その内本命の情報が手に入る。狩りは我慢比べ、焦った相手の尻尾がちらりと見えれば、そこから追い立てればいい。
チカチカと明滅するランプを目にやり、メイスンは再び電脳ハッカーとしての作業に没頭した。
「あー、休めた」
「そうだな。まさか猟兵卓球の最後、二つに分かれたあの人が一つになって」
「炎となったとかなァ――そーいうユーベルコードだったかアレ?」
びっくりするほど真っ白な浴衣を着た霧島・クロト(機巧魔術の凍滅機人・f02330)は、茜谷・ひびき(火々喰らい・f08050)とゆったり参道を歩く。ひびきは宿の地味目な浴衣をそのまま着ていた。無論二人とも直に戦えるように装備は持っているが。
「ま、いよいよ事件発生か。生贄を出す訳にはいかねぇな、捜索を頑張るか」
「あァ、早々に案件かよ……。人攫いにしちゃちょっと穿ち過ぎだよなァ」
それは休息の為じゃない。仕事の為だ。十分英気を養い余暇を楽しんだ二人だ、呪詛の対象となるには十分だろう。だが不幸にも事件は既に発生してしまった。消えた少女の足取りを追い、二人は事件現場まで足を伸ばした所だった。
「聞き込みや手掛かりからの情報収集は基本だよなァ」
「こういう時は人手が必要だからな……ある程度情報が固まったら俺は山に入ろう」
ブン、と今度はクロトが超常の力で『もう一人の自分』を呼び起こし、そのまま三人は屋台が並ぶ賑やかな広場へ出る。とは言え寂れた山村の催しだ。派手なイルミネーションなどは無く、年季を感じさせるテントに出店が所狭しと並ぶくらい。テントの間には細い下りの道が――ラフティングやら魚の掴み取りをする小川に繋がっているのだろうか、妙に小綺麗な看板が横に刺さっていた。
「一旦ばらけるか……ってありゃあ」
ご同業か? クロトの視界に入ったのは学生めいたラフな格好をした黒鵺・瑞樹(辰星月影写す・f17491)の姿があった。
「や、丁度いい所に」
にこやかな笑みを浮かべ、旅先で偶然出会った友人の様に瑞樹は続ける。
「わかった事は共有しないとね――」
話の内容は事件について。周りに潜んでいるだろう邪教徒に警戒しつつ、四人は涼みながら言葉を交わした。
「へー、ここにはそんな伝承があるんですね。ミジャグジ様的な奴か」
瑞樹は人の好さそうな笑顔で、野良仕事を終えただろう地元民の老人に話を聞いている。民俗学専攻の学生――元々興味はあったし、何より怪しまれにくい。こういった土地ならば詳らかになってない話の一つや二つ、転がっていても不自然では無いだろうし。
「そういえば洞窟もあるんですよね。そういう所から始まったんでしょうか?」
洞窟――防空壕があるという情報は聞いている。それが大昔より存在していて、古の時代から何かに使われているのだとしたら、この村自体がそもそも忌わしい何かに囚われていたとも考えられる。しかし返ってきた答えは予想外だった。
「え、防空壕はほぼ封鎖されているし、そんな昔は使われてすらいないですって」
大昔は倉庫として使われた事くらいはあるだろうが、そもそも無理に使うような場所ではないそうだ。昔の戦争で手付かずだったそこに人の手が入ったのはかれこれ80年ほど前だという。
「……ありがとうございます。あ、最後に」
ぺこりと一礼して老人に、不意の質問を放つ瑞樹。本当に聞きたいのはこの話だ。
「ここ生贄信仰って、あります?」
「――で、そんなものは無いってさ。あの雰囲気じゃ本当だろ。露骨に嫌な顔されたし」
両手を上げて降参めいたポーズ。おどけながら瑞樹は話を締めた。
「俺は防空壕の方へ行こうと思う。誰か一緒に行くか?」
「それなら俺が行こうか。もう一人はバイクで峠を攻めるぜ」
瑞樹の提案にクロトが参加する。土地神的な奴じゃないなら、探るべきは秘された人工の洞窟ってのは分かり易い。合わせてこの山自体を外側から見られれば、防空壕の規模も分かるだろう。
「攻めてどうするんだ。それじゃ俺は足で山の中を探ろう」
ひびきはその足で直接山の中を探るという。道の無い所に痕跡が残されているかもしれないからだ。何も無ければそれはそれでいい。防空壕はここから離れた先にある観光用の洞穴、峠道は宿へ戻って大回り、参道から外れた先の獣道――猟兵達はばらけて、調査を再開した。
「んー……これ、ドラマの撮影かのー?」
宿の中、広げた電脳端末に囲まれたメイスンは『ノーキンくん』が提示した映像資料に目を通す。どうやらバンジージャンプが出来る巨大な橋でのやり取りだが、背後の山の所々にぼつぼつと大穴が開いている。
「これが一体何なのじゃー……んん?」
直前にハッキングで漁った旧軍の軍事施設の非公開見取り図、現在の防空壕体験ツアーのパンフレット原紙、そしてこのドラマに映っている大穴……配置が全て違う。
「これ本当にここの山なのかのー……って、ノーキンくんがそう言ってるし」
じゃあこの穴は後から拵えたものだというのか? であれば何の為に。
「……少女が最後に目撃された位置は」
この謎の大穴から徒歩でおよそ30分かそこら。目撃情報は45分前。今から追えばまだ間に合うかもしれない。猟兵なら更に短縮出来るだろう。メイスンは仲間へ直ちに連絡を取った。
「あァ、よーく見えるぜ。これがフェイクだってのか……」
木々に隠されてはいるものの、サイボーグの探査能力ならば丸裸も同然。同時に奥から怪しげな熱源反応が見えた。メイスンが提供した情報を基に、バイクで峠道から山間を調査していた方のクロトが、苦虫を食んだような表情で山間を眺める。
「あの辺りはひびきが近い。連絡を取って回ってもらうか」
端末を操作し状況を伝え終えたクロト――本来の防空壕に紛れて、邪教徒の秘密施設が建造されてたとあれば、その痕跡もある筈だと再びバイクを走らせて。道無き道の奥を目指す。
「神隠しっつーと神秘的に聞こえるけどまー、なァ」
人造の施設に人造の邪神か、全て人の手による犯行。どう考えても碌なものじゃ無い。
「……改造されてなんとかなるっつーのは天文学的確率だしな」
間に合うならば救出を。それが出来るのは自分達、猟兵だけなのだから。
「ああ、分かった。丁度それらしき遺留品を見つけた所だ」
クロトからの連絡を受けたひびきは、藪で見つけた少女のものらしき安っぽいアクセサリを手に取りながら、フェイクの防空壕を目指す。端末は組織からの貸し出しだ。ついでに地図アプリもあるし、方位を迷う事は無いだろう。
「……っと、早速かよ」
不意に視界の隅で動くものが。作業着を着た二人組の男が、哨戒する様に周辺をうろついている。丁度防空壕の方角――このままでは嫌でも鉢合わせしてしまう。
「あの位なら黙らせて中に入ればいいか。それじゃ」
行くぜ。朱殷の刻印が熱を帯びる。瞬間、脱兎の如く飛び出したひびきが、男達を制圧するのに時間はそう掛からなかった。定時連絡が尽きれば敵も異変に気付くだろう。そうなる前に防空壕へ。ここから先は時間との戦いだ。
「っと、この先は立ち入り禁止ですか」
防空壕体験のツアーはその全容を知らしめる事は無かった。安全上の都合で一部の区画しか一般開放されていないそうだ。
「この先はァ、何があるんですかねェ」
クロトが訝し気にツアーの先導に質問する。どうやら戦時中に秘された諸々が眠っている可能性があり、危険だから入り口辺りしか入れないのだとか。
「成程ねぇ。それにしても、蟻の巣穴みたいだな」
意外と洞窟型防空壕の岩肌はしっかりと整っており、そこかしこに別の部屋へ繋がる通路が張り巡らされている。そして目を凝らしてよく見れば、天然の悍ましい虫達の姿が蠢いているのが分かった。
「あっちにゃ蝙蝠かァ……こりゃ本当に、何も無いな」
危険な人工物があれば野生動物達がこんなにのんびりとたむるする事も無いだろう。事実クロトの探知能力では、そういった類の物は見当たらなかった。
「ありがとう。それじゃあここから先は……好きにやらせて貰おう」
ぼそりと呟いた瑞樹はクロトとそのまま防空壕を出る振りをして――再び中へと入る。係員の姿も見えないし、誰もいない事は既に確認済みだ。猟兵の技能があれば、一般人を撒くことぐらい容易い。足音を殺し、気配を隠し、暗がりの中を徐々に進んでいく。
「……この扉、奥は分かるか?」
「何々――こいつは面倒そうだ」
止められた防空壕の最奥部、スキャンしてみれば細長い空洞が、通路らしきものが探知出来た。人一人がかろうじで通れる通路。奇襲されたらひとたまりも無い
「まあ二人いるし大丈夫だろ……っと」
がちゃり、と施錠が解放される。慣れた手つきで道具を仕舞った瑞樹が、クロトに合図した。そして端末を確認したクロトが、予想通りの結果を告げる。
「さっき貰った地図データと照合したが、恐らくこの先が開けた例の隠し拠点だなァ」
「悪の組織らしい場所だな。まあ、今日で店仕舞して貰うけど」
明かりの無い細い通路を、前後を庇う様に二人の猟兵が進む。
仕掛けも細工も見破った。ここから先は、狩りの時間だ。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
紗我楽・万鬼
●
嗚呼慰霊祭なんですね
屋台ありゃ志朗の旦那の土産に…って
バンジーたぁ大胆な慰霊ですね!
旧軍の防空壕怪しいですねえ何処でしょ
手始めにスマホで此の田舎と防空壕について情報漁り
後は地元民の証言が欲しい所
なら今な噺は如何でしょ
『狐につままれる』何て言葉ありますねぇ
狐は化かすんですよ
例えば地元民の前に親しい方がふらり姿見せ
雑談がてら防空壕関連の話題織り交ぜ聞き出すんですよ
ま詳しい場所と纏わる噺聞けりゃ上出来ですかね
後はいつの間にか親しい人は何処かへ消えてあれれと
正に狐につままれるですね!
て事で騙り招いた化け狐達で情報収集
防空壕探し当てた後も一緒に調査ですかね何か在りやした?
娘さんの痕跡もありゃ良いですね
ヘスティア・イクテュス
●
アベルをネットに繋げて放置。そっちの情報収集は頼むわよ
アベルが調べてる間にわたしは直接情報収集の二面作戦で
浴衣(お任せ)を着て
お祭りの会場をふらふらと歩いて怪しい場所を探してみるわ
観光客の人からも話してる内容を盗み聞きしたり
そうね、どこか肝試しに使えそうなスポットを探してるってそういう場所がないか聞いてみたり…
さぁ、時間もあまりないだろうし
急いで突入といきましょうか
●
「嗚呼慰霊祭なんですね。屋台ありゃ志朗の旦那の土産に……って、バンジーたぁ大胆な慰霊ですね!」
「いやバンジージャンプは慰霊じゃないんじゃ」
紗我楽・万鬼(楽園乃鬼・f18596)とヘスティア・イクテュス(SkyFish団船長・f04572)は並んで屋台を練り歩く。目的はお祭りではない、消えた少女の情報を探る為だ。
「アベル、現場はわたし達で回るから、ネットの方はお願い」
『承知しました。幸いエキスパートがいらっしゃいますし』
5分もあれば片付くでしょう、とサポートAIのアベルは嘯く。既にオンライン状態のアベルは種々の情報をかき集めて整理している所だ。
「手前のスマホにも防空壕の噺は届いてますからね。いやあ事実は奇なりと言いましょう、まさかの偽物が誰知らず拵えられたなんて……」
万鬼はからからと笑い声を上げてヘスティアに続く。既に敵のアジトは凡そ判明している所、しかしどうやってそこへ少女が攫われたのかが分からない。
「本当ならもしもしポリスメンでしょうけど、相手が相手だし――」
スラリと伸びた手足がシンプルな浴衣に映える。長身の猟兵二名が歩く様は嫌が応にも目を引いて、すれ違い様に通る人々のため息が漏れる。
「せめて地元民の証言が欲しい所。なら今な噺は如何でしょ?」
ストンと神社の階段に飛び乗って、万鬼は大きな声を上げた。
――『狐につままれる』何て言葉ありますねぇ。
急に噺を、万物語が開演する。ただのお話じゃあない。耳に入れば寄って目にもと黒山の人だかりが。ざわざわと一帯の誰も彼もが境内で繰り広げられるエチュードに耳を傾ける。
「やっぱり、ユーベルコードって怖いわね」
『凄いわね、ではなく?』
そのやり取りを少し離れた所から見渡すヘスティア。アベルと他愛の無い言葉を交わすが、目的はそれではない。
「……こういう時に寄ってかない奴とかいるでしょ」
『いますね。目の前に』
わたしの事じゃない! とむくれるヘスティア。だが言いたい事は分かる。こういう時に大勢と全く違う動きを見せる者がいれば、大体怪しい奴だ。
「鳥居の下に一人、作業着の男が。物色しているみたいね」
『――承知しました。マークしましょう』
衛星カメラならばある程度追う事は出来る。ただやり過ぎると、一般社会に影響が出るから程々にと、アベルはリンクした衛星の機能を間借りして、男を追い始めた。
「後はあの客の中に誰かいるかしらね……」
万鬼の噺はまだ終わらない。人だかりも増えてきた。
――てなわけで男が帰れば、そこには油揚げが。
適当にでっち上げた噺でも、超常の力であれば心を奪うのは容易い。
「……そういやぁ皆さん、この辺りには防空壕があるそうで」
不意に万鬼が観客へ話を振る。地元民ならば知らぬ訳が無い。その反応だけでまずは何処の者かを選別する。
「防空壕って言やあ土を掘ったのが一般的でしょうが、こういう山には洞窟の中に拵えた頑丈なものもあるんでしょうねぇ」
ほぼパンフレットに書いてある通りだが、それを聞いてうんうんと頷く観客達。
「やっぱり、爆弾で焼かれてあわれ命を落とした方とか――」
そして少々センシティブな内容に踏み込む。だが返ってきた答えは意外だった。
「え、その防空壕は全く使われなかったって?」
じゃあ誰が、何の為にそんな場所を作ったんでやしょうと質問する万鬼に、先頭の老人が告げる。
「ああ、使う前に戦争が終わっちまったと。成程それは良かった……」
回答になっていない。防空壕は目的があって作られている筈。今の管理者は一体。
「で、観光資源として自治体――いや村の金持ちが勝手に運営してるですって?」
成程、そういう輩が邪教徒を引き込んだかと万鬼は手を打つ。
ありがとうございやした。続きはまたの機会に。
『お待たせしました。最新の防空壕見取り図です』
既に中へ入った猟兵、引き続きネットから調査をする猟兵の情報を受けたアベルからヘスティアへ、現状のアップデートが行われる。
「蟻の巣穴みたい。私達も行きましょう万鬼、時間もあまりないだろうし――急いで突入といきましょうか」
「合点承知! 正に狐はあの中に……あいつですかい?」
作業着の男を追うヘスティアと万鬼は、そのまま防空壕の方へと進んでいた。
知らない別の入り口だ……しかし引き返す猶予はない。
化かした狐を成敗すべく、二人は闇の中へと足を運んだ。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
月守・咲凛
【ワンダレイ】のメンカルさん、ネージュさん、尾守さん、九重さんと一緒に参加。
子供が拐われたのは許せないのです!お姉ちゃんとしては助けなければなのです。
仲間が聞き込みをしているのを首を傾げながら聞いています。
どうやら違和感を感じているようなので、レーダーでその人たちの動きをマーキングしておきます。不審な移動、特に山道の奥や防空壕の位置に進もうとするような動きがあったら仲間に連絡して、上空から追跡します。
目的地っぽい物に近付いたらレーダーの索敵対象を『人間』に変更、こんな山奥にこんなに人が居るのはおかしいのです!ってなったら、その人の頭をポコンとやってそのまま突入します。
九重・桜花
●【ワンダレイ】のみんなと一緒に参加だよ。
とうとう怪異が…事件解決のためにも、頑張らないとだね。
【POW】聞き込みは他のみんなに任せて、直接山の調査に。実際に探してこそ見えてくるものもあると思うし、何か見つかればいいけど…
もし調査中にこの件の首謀者やその手先から妨害があったら即座に迎撃、あわよくば捕まえて知ってることを問いただしてみようかな。
メンカル・プルモーサ
【ワンダレイ】で参加。
ふむ…ふむ?何か反応がおかしい……『見つかる』じゃなくて『戻ってくる』…『どこかで』じゃなくて『誰かと』?
……そう言う反応をする程に同じケースの前例が複数ある…?
周囲の地元民に聞き込み…祭りの日にこう言ったことは良くあるのか
良くあるなら子供が戻ってきたときの状況と反応を…コミュ力で情報収集…
その間に…一応ネットに繋がるか…なら、自己判断型伝令術式【ヤタ】を使ってこの近辺で子供が絡む…特に遊び相手になる…怪異や神さまの伝承の情報を収集させておくよ…
後、防空壕についてもなにかオカルト的な話がないか聞き込んでおこう…繋がるかも知れない
調べた情報は皆に伝えるよ……
尾守・夜野
【ワンダレイ】で参加。
(メンカルめ。ハーレムだの母だの好き放題言いやがって)「はぁ…こっちだけ反応してたら気まずくなるじゃねぇか…」
俺は親?を当たろうか。
…ちょいと昨日の愚痴も出てくるが。
対人なら「俺」より「僕」だね。
会う時には変わっているよ。
「おや?
何か困ったことがあったのかい?
僕でよければ力になるよ」
いなくなった状況、女の子の格好、名前、彼らとの関係を話の中で聞き出そう(優しさ、コミュ力、情報収集)
…嘘、言ってない事があると嫌だからね。
何気なく警戒はしとくよ。
嘘つきは嘘を見抜く物さ(騙し討ち)
集めた情報は旅館の部屋に戻ってから皆の所にUCのゲートに腕と顔だけだして手紙か何かで渡そう
ネージュ・ローラン
【ワンダレイ】で参加。
ついに怪異が発生しましたね。
気持ちを切り替えて調査しますよ!
居なくなってしまった子の事を中心に、村民に聞き込みを行なって手掛かりを探しましょう。
『よくある事』という話が果たして普通に遊んでいるだけという意味なのか、少し引っかかりますね……。
何か事情を知っていたりしないでしょうか。
強気に問いかけていきます。
もし彼らに何か怪しいところがあれば【静なる舞台】でこっそり様子を窺ってみましょう。
●Advent
「子供が拐われたのは許せないのです! お姉ちゃんとしては助けなければなのです」
「そうだね。それに何かおかしな気も……」
月守・咲凛(空戦型カラーひよこ・f06652)とメンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)は参道で聞き込みを続けながらとぼとぼと歩く。子供が一人行方不明になっているのだ。にも拘らず当事者以外がここまで平然としていられるのは何故なのだろうか。
「……『見つかる』じゃなくて『戻ってくる』……『どこかで』じゃなくて『誰かと』?」
地元民らしき老人達は一様にそう返してくる。よくある事の一言で済ませていいのだろうか、何か反応がおかしいと詳しい聞き込みを続けるメンカルを見上げて、少しでも力に成ろうと咲凛は超常を発現した。
「索敵対象――防空壕周辺の人物、レーダーアクティベート」
腕時計状の端末を撫でれば、正面に透明のディスプレイが表示されて、不可視のレーダー波が咲凛から放たれる。周辺探査開始――幸い防空壕周辺のマップ情報は共有されている。ここに向かう人間がいれば、一早く異常を感知できるだろう。
「怪異、伝承――そういった類があるのなら……一応、調べておくか」
自作の精霊AIにサポート作業を命令したメンカルは引き続き、二人で聞き込みを続ける。ついでに防空壕でのオカルトな話も――こういった調査は手数が大事だ。如何なる内容だろうと、何かの足掛かりにはなる筈だ。今ならいなくなった者を見つけさえすればまだ間に合う。予知にあった人体改造などさせるものかと、二人の猟兵は獲物を探し、その深みへと更に進んでいくのだった。
「先程聞こえたのですが、こういう事はよくあるのでしょうか?」
ネージュ・ローラン(氷雪の綺羅星・f01285)は二人から離れた所で、神社の境内に集まった人々から話を聞いていた。超常で姿を隠し、噺屋の講談を聞いていた人々の反応を伺っていたのだ。その上で何か引っかかる物言いをした何人かに、改めて話を伺っていたのだ。そして聞こえてきたのが、こういう事はよくあるという不可解な一節。
よくある事……ならば、普通に遊んでいるだけでしょっちゅうこういう事があるというのだろうか。何か事情を知っているのであれば、そこから糸口が見つかるかもしれない。
「ふむ、日が沈む前にはいつも戻ってくる……いつもとは、一体?」
一時的な行方不明は、それこそ遥か昔では無くここ数年の出来事らしい。そもそも慰霊の祭りも防空壕も昔からあったとはいえ、季節になる度こういった事が必ず起こるわけでは無かった。それ以上に、いなくなるのは他所から来た人ばかりだという。
「土地勘が無いからそうなったとでも――」
ではこの村ぐるみで仕組まれているのだろうか。であればUDC組織が既に目星をつけていてもおかしくはないだろう。ここ数年、大きく変わった事は無いかとネージュは聞いてみる。
「成程、防空壕の所有者が変わったのですね」
やはりここに帰結する。こうなれば直接乗り込むのが得策か――ネージュは一旦旅館へ戻り、仲間と合流する事にした。闇雲に追いかけるよりは、ここから先はまとまった方がいいだろう。
「おや? 何か困ったことがあったのかい? 僕でよければ力になるよ」
大事な娘を失って狼狽える両親らしき人物に尾守・夜野(墓守・f05352)が問いかける。先程はハーレムだの母だの好き放題言われて色々と大変だった事をおくびにも出さず、今は目の前の事件を解決すべく力を使う。こういう時は『僕』の方がいいだろう。
「ふむ……川を見に行って戻ってこなかったと。格好は水色のワンピースに麦わら帽子ね……」
典型的なありきたりのシチュエーション。ちょっと目を離した隙にいなくなったと。それ以外変わった事や、隠し事が無いか探りを入れるものの、両親らしき二人からの返答は至って普通の物だった。
「ありがとう。僕も探してみるよ」
わざとらしく声を上げる。そういう事をされて困る奴がいれば反応もあるだろうが――一人、作業着を着たおじさんがちらりと夜野の方を見て、さっと林の方へ姿を消した。
「――あれかい」
追いかけてもいいが一旦は旅館へ戻ろう。仲間と情報を合わせて、まとまって動く方がいい。
「山だー!」
しかしただ一人、山に向かった九重・桜花(花吹雪・f10723)は更に藪を掻き分けて進む。防空壕が怪しいというのは何となく聞いていたし、実際怪しい奴もいるっぽい。とうとう怪異が発現したのだ――事件解決のためにも、頑張らなければ。
「ねえねえ、ここに何があるんだい?」
不意を打つ様に目の前の作業着の男の肩を叩く。無論こんな所にいたいけな少女がいきなり現れるとはありえない。幸いその男は猟兵を知らないのだろう――邪教徒だったとしても一般人なら、桜花の姿を見ても超常の存在であるとは分からない。男はそのまま桜花の手を掴み、無理やり引っ張って行こうとするが――桜花は全く動かない。
「痴漢は重罪だよ、おじさん」
くるりと、桜花を掴んだ手首を返す。そのまま地面に押し付けて無力化……そしておじさんが地に伏せたと同時に、桜花の背後にうっすらと魔法陣が浮かび上がった。
「大丈夫か桜花!? あと、そのおじさん」
大丈夫よ、と親指を立てた桜花を見て安堵する夜野。咲凛のレーダーが防空壕周辺に来た桜花を捉え、夜野の能力で四人とも纏めて転移したのだった。
「このおじさんが邪教徒ですか。成敗するのです!」
ブンブンと腕を振るう咲凛の背後で、メンカルが淡々と状況を検分する。
「……多分、邪教徒。だけど一般人みたい……私達の事、分からないみたいだし」
収集・解析した情報をアルゴスの目で確かめながら、目の前の哀れなおじさんに目を向ける。
「……あるいは、お金で雇われた三下、って奴?」
「これがこの世界の三下ですか。成程、そういうお顔をしてますね」
ネージュが冷たく言い放つ。何にせよいたいけな少女を平然と拉致しようとしたのだ。碌な輩で無い事は明白だ。
「……それじゃああんた、防空壕の入り口って分かるか? 分かるよな」
組み伏せられたおじさんの顎を取り、夜野が詰める。失踪からそれなりに時間が経過した。早く助けに行かなければ、予知通りの悲劇が起こるのだとしたら、のんびりしていられる状況では無い。
「……うん、オカルトも伝承も無いね。それに被害届も、殆ど出てない」
殆ど、というのも昔は対処していたのだろうが、余りにも頻発してその日の内に解決するものだから、真面目に取り合わなくなってしまったのだろう。
「こんな田舎で人員も少ないんだろうが……もちっと真面目にやってもらいたい所だ」
メンカルの報告にため息を吐いた夜野がおじさんを睨み言葉を続ける。
「――あまり時間も無いんだ、連れてってくれるよな?」
「そうだよ。連れてかないと痴漢の現行犯で訴えるんだからね!」
凄味を利かす夜野に桜花が続く。とうとう観念したおじさんは拘束されたまま、五人を秘密の防空壕入口へと連れて行ったのだ。
「ここが入り口ですかー」
岩肌の隙間、遠目にはただの岩壁にしか見えないその場所は、やや回り込む様に進む事で、防空壕へと続く入り口を露わにした。
「多少暗いですが……この位なら大丈夫そうですね」
ネージュが岩肌を撫でながらゆっくりと進む。視界が全く見えない訳でもないし、壁伝いに進めば逸れる事も無いだろう。そして蟻の巣の様に細長い通路を抜けると、幾つもの道が交差した分帰路があった。
「……じゃ、案内して貰おうか?」
夜野が拘束されたおじさんを小突いて、更に先へと進む。
まだ何も出てきてはいないが、その先の気配は尋常ではない。
失踪した少女を救うべく、五人は洞穴を更に進んだ。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
響・夜姫
んー。探索はちょっと苦手。
楽しい感情に引き寄せられる……絶望に変わる落差が何かを生む、とか?
・POW
両親に名前を聞いておこう。
「山育ち。探索は任せて」
女の子は勿論、山を歩き回って『怪しい痕跡』も探す。
不自然な足跡や獣道、残留物。なんでもいい。
【第六感】を頼りに歩き、時々薔薇を地面に挿して微量の【生命力吸収】。吸収量が多かったら女の子がいるかもしれないので、重点的に探す。
見つけたら【手をつなぐ】。
「じゃあ。神社に……」
……。
神社。ひょっとして、一番怪しいのでは?
信仰として地域に根付く怪異。よくあるパターン。
「んー。人のいる所に戻ろう」
とりあえず。猟兵と合流が優先、かなー。
七瀬・麗治
●
始まったか、『神隠し』の計画が……! 白昼堂々、大胆なものだな。
まずはUDC-Phoneにインストールしたアプリを起動させ、組織のデータベースから
現地の伝承や、土着の信仰について<情報収集>。
続いて人目につかない場所で【カルマハウンド】を召喚。
殺人や呪いの儀式が行われるときに発生する「業」を嗅ぎ分ける
猟犬を放ち、自身も神社や防空壕などを調査に出かける。
調べる範囲が広いため、移動にはバイクを利用しよう。
猟犬とは感覚を共有するので、離れ過ぎないように注意だ。
「楽しい」と「呪い」が引っかかるんだよな。
神社で遊んでいて、連れて行かれた?
それとも、灯籠流しの線から考えて川へ……?
テン・オクトー
●
魚釣りじゃなくて、手掴みで取れるの?すごーい!
初体験に楽しくはしゃぐ。
行方不明者が出た!?
でも周りの人の反応が気にしてなさすぎで変だね。普通もっと心配しそうなのに…。何か知ってるのかな?
SPD
志郎さんが言ってた。捕まった人はUDC化される可能性があるって。それならば救出が大優先。UCも使いつつ足で探すね。間に合うといいのだけど。
改めて考えると、楽しい感情だと呪いが発動ってどういう事なんだろうね。行方不明になった少女も何かしら楽しんでたのかな?その辺りから情報や足取りの手掛かり掴めないだろうか。
●真実の扉
「んー。探索はちょっと苦手」
「白昼堂々、大胆なものだな」
「志郎さんが言ってた。捕まった人はUDC化される可能性があるって……にしても」
川べりで三人の猟兵が言葉を交わす。響・夜姫(真冬の月の夢・f11389)と七瀬・麗治(悪魔騎士・f12192)、テン・オクトー(ケットシーのシャーマン・f03824)は山間では無く、少女が姿を消したという水場を調べていた。最後に姿を見せたのがここならば、手掛かりはきっと残っている筈だ。
「魚釣りじゃなくて、手掴みで取れるの、すごーい!」
調査しながら魚を獲るオクトーは、はしゃぎながら泳ぎ回る魚を追い掛ける。
「改めて考えると、楽しい感情だと呪いが発動ってどういう事なんだろうね」
「楽しい感情に引き寄せられる……絶望に変わる落差が何かを生む、とか?」
「「楽しい」と「呪い」が引っかかるんだよな。ここで遊んでいて、連れて行かれた?」
特に魚類に執着の無い二人は岩場に腰を下ろして考え事を。呪いの発動条件、楽しいという感情が呪いに変わる、そういった呪いの類ならば、子供が狙われたというのもよく分かる。それに感情は化け物が喰らう食料の様な物――特にこの世界の化け物は。であればそういった気の持ち様が呪いに繋がるというのは、分からない話ではない。
「山は見てきたけど、防空壕にみんな向かった」
はぁ、とため息を吐く夜姫。山育ちゆえ足を使った調べ物をまず行ったが、十分人出はいるし、何より探索自体はそれほど得意では無いのだ。無理に混ざらず人手が足りない所へ向かおうと、先に川場へ降りてきたのだ。
「神社は、信仰とかその類の怪異は、無いみたい」
「確かに現地の伝承や、土着の信仰については――何も無い様だ」
その合間に神社も調べたが、夜姫の聞き込みと麗治の調査の結果もそれほど芳しくなかった。端末のアプリからUDC組織のデータベースを検索したが、目ぼしいものは見つからず――むしろその結果が、今回の事件は人為的なもので、ここ最近始まった事象である事を裏付けたのだ。
「行方不明になった少女も何かしら楽しんでたのかな?」
ビチビチと跳ねる魚を両手で抱えて、オクトーがひょっこり顔を出す。
「それに周りの人の反応が気にしてなさすぎで変だね。普通もっと心配しそうなのに……」
首を傾げるオクトーは借りてきたクーラーボックスに魚を仕舞うと、その上にちょこんと座った。それなりにアクティビティが充実しているのに、寂れてるとは言え人はいるにも拘らず、失踪した少女に対しての興味が薄すぎる。
「――そう感じる様に仕向けられているのかも、しれないな」
麗治が端末を閉じて話を続ける。呪いにはそういった、認識を阻害する類の物もあると。
「と……見つけたか、矢張り」
「うん。多分一緒だね」
「男同士で秘密の会話。嫌いじゃないわ」
麗治とオクトーはそれぞれの超常で、探知用の眷属を放っていたのだ。山間の防空壕の入り口は押さえた。だがそこまで少女を運べば必ず人目に付く。であれば、川場のどこかに同じ防空壕の入り口があってもおかしくない。その推論を基に、二人は姿の無い眷属を放ち、隠された入り口を探っていたのだ。
「流石にバイクはきついか……だが丁度いいものがあるな」
麗治は川べりにちょこんと立てかけてあるカヌーを見やり、口元を歪ませた。
「まさかの川下りー!」
「いっち、いっち、いっちにー」
小さな櫂を脇に抱えてはしゃぐオクトーと夜姫。麗治は一際大きい櫂を上手に捌いて、ゆったりとした川の流れにカヌーを走らせる。眷属が見つけた秘密の入り口は、川場に直結した見難い場所にあった。ぼたぼたと水が垂れ落ちる岩場の影に隠されたそこに、飛沫を上げて進むカヌーの舳先を滑り込ませる。
「ここから少女の気配が……それに」
眷属が感じ取った「業」が一際強く感じられた。少女かどうかまでは分からないが、この先にろくでもないモノは必ずある。三人はカヌーを降りて、その洞穴の中を進んだ。
「……うん、変な力があるみたい」
夜姫も同じく、触れた地面より悪しき何事かを感じ取った。
「そうだね、この扉――どう考えても怪しいよ」
暗がりを見上げたオクトーの視線の先には、古めかしい金属の扉が。その横には木彫りの重々しい表札めいた札が掛けられている。
「零號実験棟」
旧大戦の時の施設だろうか、一番離れの使われてない防空壕に見えたそこは、最初から悍ましい実験施設だったのかもしれない。
「……行こうか」
武器を携え麗治が一歩前へ。ぎぃと重々しい音が響き扉が開く。
埃と腐臭に塗れた気味の悪い臭いが広がる。
その先には、闇の先には何が待ち受けているのだろうか。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第3章 集団戦
『マガツアリス』
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POW : 古き神々の意志
【邪神「第零の蟻」】を召喚し、自身を操らせる事で戦闘力が向上する。
SPD : 呪われし鉤爪
【異様に膨れた両腕の鉤爪】が命中した対象を切断する。
WIZ : 軍隊蟻の行進
いま戦っている対象に有効な【悍ましき妖虫】(形状は毎回変わる)が召喚される。使い方を理解できれば強い。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴
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※第3章は幕間追加後にプレイング募集期間を告知します。ご注意ください。
●プロジェクト・マガツ
埃と腐臭に塗れた薄暗く細い通路の先へ進むと、開けた合流地点と大型の車両が一台、悠々と入れそうな巨大な扉が目に入る。重々しい施錠が何重にも施され、扉の横には配電盤めいた制御装置が備え付けられていた。
制御装置には[開⇔閉]と記された大きなダイヤルが。迷う所ではない、ダイヤルを開へ回す。堆積した埃を撒きながら、ゆっくりと大きな金属扉が開かれて――扉の奥、暗がりの中で徐々に慣れた目を凝らすと、見えてきたものは人一人が入りそうな巨大な金属のカプセル。それらは規則正しく整然と並び、天辺には大きなパイプがはめ込まれていた。
そのパイプを辿ると、地面に穿たれた巨大な大穴に繋がっていた。まるで巨大な蟻の巣……時折、鼓動の様にパイプが脈打っている。それは生物の内臓の様な――消化器官の様な蠢き方だった。
不意に金属カプセルが開いた。その中から現れたのは――邪神、UDC、蟻の姿の怪物。そのどれもが正しく、ただ一つ足りていない。それはごく在り来たりな、人の服を着ていたのだ。それが指し示す推論の帰結は――かつて人だったという事。
そして悲鳴が聞こえた。少女の声。恐怖に怯え、助けを求める声。揺さぶられた感情の反転、それが齎す不可逆の精神エネルギー……邪神共が恐怖を糧とするならば、これ以上ない餌だろう。そして精神を絞り尽くされた人だった物は、怪物に作り替えられる。ここはその工場という事か?
やるべき事は三つある。一つは要救助者の確保、閉じたカプセルを開いて無事な人を救い出す。ただ……間に合わないかもしれない。それでもやらなければ、猟兵の超常ならば癒す事すら可能かもしれないのだから。一つは敵対勢力の排除。遠慮はいらない、要救助者を巻き込まない様に速やかに敵を倒す事だ。最後にこの施設の破壊。残す必要は無い、可能であればデータを取るべきだろうが、持ち主は既に判明していて組織の手も伸びているだろう。であれば、何かが起こる前にこんな所は破壊するべきだ。
喜びの心を恐怖に変えて怪物へと転ずる悍ましき儀式。
カプセルの数はざっと30はくだらない。続々とカバーを開いて表に出る怪物。
この地獄を塗り替える、それが猟兵達に与えられた使命だ。
※プレイング一次募集期間は本日から8/10(土)8:30迄です。
※邪教徒はUDC職員が確保しますので、戦闘と救出に注力して頂き大丈夫です。
メイスン・ドットハック
【WIZ】
手遅れの者も多いようじゃのー
残念じゃけど、それなら破壊してやるのが救いという奴よのー
大規模電脳魔術の準備の間に、ユーベルコード「紫色の賢者の石」を発動し飛行型宝石獣と宝石地竜を召喚
軍隊蟻ごと、宝石地竜の巨体で踏み潰し、雷のブレスで敵の妖虫を一掃する
さらに軍隊蟻の形状が変わったら、飛行型宝石獣が電脳兵器であるミサイルやマシンガンを召喚して、撃ち砕いていく
そしてシステムに【ハッキング】【情報収集】した情報を下に作成した電脳ウィルスプログラムを、電脳魔術の電波に乗せて発信
マガツアリスのシステムに重大なエラーを起こさせるようにして機能停止を狙う
行動不能の隙に破壊を狙ってもよし
アドリブ絡みOK
●解放
「手遅れの者も多いようじゃのー」
カプセルを開き這い出る怪人を見やり、メイスン・ドットハック(ウィザード級ハッカー(引き籠り)・f03092)は溜め息をつく。
「――可能な限り助けてやりたい所じゃがのー」
これ以上被害を増やさない為にも、破壊してやるのが救いという奴よのー。
カチリ、と端末を起動する。薄緑の発光する電脳魔法陣が周囲に形成されて、それらがカバラの秘術の様に樹形図状の魔法陣を――小型の端末を続々と生み出す。
「カーヴァンクル、ヴァフニール……ここは任せる」
一際大きい枝葉の魔法陣から宝石獣と宝石地竜が召喚されて、空間を飛び回る。それらは電子の魔獣なれど頑強、生まれたての量産邪神如きでは相手にもならない。
「……さて」
破壊を始めるとするかの―。この施設を掌握して、全てを開放する為の戦いが始まった。
メインサーバーへの侵入は容易かった。かなり古臭い言語体系だが、蓄積され洗練された電脳魔術の前には半裸の原始人も同然。それだけにこの施設がかなり昔から稼働していた事が伺える。
「はあ、感情検知による選定かのー。道理でこういう時に発生すると」
祭りの様に大規模な感情のうねりがあれば、目の前のパイプの先に繋がる何かが反応を起こし、生贄としてそういった人間を攫ってくる。古くからこの様な祭り事を行っていたという記録は無かったが、成程――手書きの文書時代から既に改竄されていた可能性があるか。あまりにも悍ましい種明かしに、されどメイスンは淡々と作業を進める。
「反転した恐怖の感情を糧に、邪神の魂を空っぽになった肉体に憑依させると」
一方召喚された獣と竜は激しく荒れ狂い、立ち塞がる怪人との大立ち回りを演じていた。竜が歩めばその足が怪人を蹴散らして、獣が羽ばたけばミサイルとマシンガンの雨が怪人を空から襲う。ふらふらと歩む怪人の群れに竜が雷のブレスを、飛び回る獣はひたすらに電脳火器を召喚して火線を緩めない。その戦いぶりはメイスンの静かな怒りを体現しているかのようであった。
「――施術時間は3時間弱、終われば記憶を消されて野に放たれるじゃと」
それが転じてしばらくすれば戻ってくる、か。しかも邪神を降ろされた当の本人はその事を覚えていない。突然この型の邪神が現れるのは、そういった絡繰りがあったという事か? あるいはここでの事象については、なのだろうか。
「まあ、それも今日でお終いじゃがのー」
一通りの調査と管理者権限の全解放を行ったメイスンは、即席のプログラムを走らせる。それはマガツアリスの製造を止めて、機能停止を狙うもの。その効果があったのか、召喚獣と戦う怪人どもの動きが途端に鈍くなる。そしてそこいら中に建てられているカプセルに付いていたランプが一斉に消灯して、その機能を失った。
「後はこの施設そのものじゃがのー」
ぶちまわすのは後にするけー。大立ち回りを続ける召喚獣を見やり、メイスンは更なるプログラムの深淵を覗き始めた。
大成功
🔵🔵🔵
黒鵺・瑞樹
趣味悪…。
この手の輩に趣味のいいも悪いも無いがな。
救助も大事だが、変えられてしまった彼らを…少しでも排除しよう。
人としてもう生きられないのだから。
右手に胡、左手に黒鵺の二刀流。
【存在感】を消し【目立たない】ように移動、【奇襲】【暗殺】のUCシーブズギャンビッドで攻撃。
さらに動きの制限を狙って【マヒ攻撃】、かつ【傷口をえぐる】でよりダメージ増を狙う。
相手の物理攻撃は【第六感】【見切り】で回避。
回避しきれなものは黒鵺で【武器受け】からの【カウンター】を叩き込む。
それでも喰らってしまうものは【呪詛耐性】【激痛耐性】でこらえる。
数を減らせたら救助支援。最後に施設の破壊にはUCを全力で。
●激情
「趣味悪……。ま、この手の輩に趣味のいいも悪いも無いがな」
黒鵺・瑞樹(辰星月影写す・f17491)はするりとナイフを抜いて闇に紛れる。救助も大事だが、変えられてしまった彼らを……少しでも排除しよう。
「人としてもう、生きられないのだから」
それはヤドリガミ故の感傷か。歳月を経て人の身を得た己にしてみれば、与えられるべき年月を奪われ邪神の道具とされる所業を許せる訳が無い。
「地獄はここで……終わらせよう」
もう一振り、業物の打刀を音も無く抜いて、瑞樹は戦場へ舞い降りる。
怪人は徒党を組む事も無くバラバラに、猟兵が目に付けば襲い掛かるという極めて単調な行動を取っていた。ならばその背後を取るのは容易い。ギチギチと姦しい音を立てた直後、その喉笛をナイフが掻き切る。仲間の異常に気が付いた頃にはもう遅い――次の獲物へ地を這うような姿勢から刀の一閃、腰から胸にかけて両断された本体が、尚も生き足掻こうと両腕をばたつかせるが、文字通りの虫の息。続いて背後に寄った怪人の鉤爪を両の刃で受け止めて、その腹を思い切り蹴り飛ばす。
「遅いし、弱い。まだろくに力も発揮出来ない様だな」
生まれたて、自分をどう動かせばよいかも分からない。ただオブリビオンとして受肉させられて、本能のままに猟兵を襲う哀れな存在。それでも放置しておけばやがて、市井にその凶刃を向ける事になる。
「しかしオブリビオンは何故、猟兵が分かりそれを襲うというのだ……?」
その答えはここでは出ないだろう。しかし不意に脳裏を過ぎった疑問が一瞬の隙を生み、傍に控えた怪人の突撃を許してしまう。
「……まあ、威勢だけは一人前のつもりかな!」
それを耐えて、逆手に持ったナイフが頸椎を貫く。即死――そうだ、最初から全てこうすべきだった。痛みを感じる間も与えずに、淡々と、一人残らず……。
この施設に拵えられた悍ましい邪神の降臨装置、群がる怪人の群れを闇より払って、瑞樹は中央に鎮座するパイプ塗れの薄気味悪い機械の前へと到達した。
「これを、破壊すればいいんだな」
黒塗りの大きなナイフを手に、破壊すべき弱点を見定める。道具故、その機能を失えば文字通りガラクタと化すだろう。
「これが何モノかを吸い上げているのか……?」
視線の先には細長いチューブの束が。その中をカエルの卵の様な気味の悪い物体が続々と流れている。是非も無し――瑞樹の一閃がその束を切り裂いて、中身が地面へとばら撒かれる。それはしばらくすると、虚空に消えた。
「成程……オブリビオンか」
古の邪神召喚施設だったのだろうか。
ナイフを握る手に力が籠る。これが済めば、人が邪神化する事も無いだろう。
成功
🔵🔵🔴
七瀬・麗治
●
※()内は闇人格ロードの台詞です。
「……こちら七瀬。当該UDCの製造工場を発見した」
ひどい業の匂いだ。鼻が曲がりそうだ。だが……戦わねば。
おい、仕事の時間だぞ。いつまでも寝てるんじゃあない!
【オルタナティブ・ダブル】を発動。
実体化したロードに黒剣を投げ渡し、自分は被験者の保護に。
オレも、彼女らと同じ被験体だった。一歩間違えれば、オレも
あのような存在になっていただろう……。
生存者に声を掛け、<怪力>で運び出す。
ロードは襲い来る敵UDCを迎え撃つ。力任せに斬りつけ<鎧砕き>。
<グラップル>で掴みかかり、寄生体で変異した手の鉤爪で
肉体を引き裂く。
(ハァッハッハァー!! もっと私を楽しませろ!!)
●双極
「……こちら七瀬。当該UDCの製造工場を発見した」
当該地区担当の職員へ直ちに通報。現在地はGPSで把握出来るだろう……三下は彼らに任せればいい。後は。
(ひどい業の匂いだ。鼻が曲がりそうだ。だが……戦わねば)
七瀬・麗治(悪魔騎士・f12192)は目の前の惨状に顔を歪め、その行いに怒りを覚える。これは人の所業ではない……悪魔の所業だ。
「おい、仕事の時間だぞ。いつまでも寝てるんじゃあない!」
『フン、とうの昔に準備など出来ておるわ。貴様こそ出遅れるなよ?』
ロードが、もう一人の自分がゆらりと影より実体化する。腕を組んでこの様子を睥睨する姿はその名の如く王者の風格。だがその表情は憮然としたものだった。
『……醜いな』
「ああ」
『……滅ぼさねばな』
「ああ、頼んだぞ」
任せよ。投げ渡された黒剣を受け取りロードが駆ける。目の前には怪人の群れが。
ロードと別れた麗治はそのまま被験者の保護に向かう。かつての己の様な悲劇を、僅かでも防ぐ為に。
「おい、大丈夫か! 起きろ!」
頼む、無事でいてくれ。カプセルのカバーを無理やり引き剥がし、中で朦朧とする若い女性を拾い上げる。オレも同じ様な被験体だった。一歩間違えれば、オレもあのような存在になっていただろう……。
眼下でロードと戦いを繰り広げる怪人を見やり、かつての可能性を思う。だからこそ、ここにいる人達を一人でも多く助けなければ――!
幸い救助を目的として動いている仲間もいれば、システム自体は電子的にも物理的にもほぼダウンさせられているようだ。
「しっかりしろ。絶対に助け出す……だから」
諦めるな、オレ達が付いてると励まして、未だ眠る女性を抱えたまま、麗治は次のカプセルへ向かった。
『ハァッハッハァー!! もっと私を楽しませろ!!』
手にした黒剣が怪人を外殻ごと砕いて致命の一撃を与える。振り回される漆黒の暴力は止まる事無く、次々と群がる怪人達を片っ端から薙ぎ倒していった。
『そんな爪でぇ! 私を倒せると思ったか貴様! 笑わせるなぁ!』
振りかざされた鉤爪を黒剣受け止めて怪人を制し、その足を踏みつける。
『鉤爪とはなぁ! こうやって使うのだッ!』
ぐらりと左腕が変容――UDC寄生体がその姿を変えて、巨大な爪を形成する。大きく振りかぶったその一撃が怪人の頭部をぺしゃんこに潰して、背後より奇襲を掛ける別の怪人を振り向き様に蹴り飛ばす。
『そんな半端な力で私を倒そうなどと、思い上がりも甚だしい!』
哄笑を上げるロードが止まる事無く暴力を開放する。最早怪人が幾ら束になろうと止める事は出来ない。事態は徐々に猟兵達の方へ傾きつつあった。
成功
🔵🔵🔴
紗我楽・万鬼
胸糞悪い防空壕ですねぇ
まぁ無駄口より急ぎやしょうか
聞き手は居ても居なくても、あっしは只騙るだけ
救助者に敵共。手が足りませんね
ならば今な噺は如何ですかい
蜘蛛ってのは良く怪異に例えられますねぇ
何せ便利ですから。何がって?
8本の脚で壁や天井何のその
吐く糸は足場作成に獲物足止め自由自在
でも小さいのが難点?何言ってるんです
怪談は都合の悪い所を改変するもんですよ
脚の先に手を付けた、人の子サイズの蜘蛛妖怪を沢山招きましょうや
さぁお前さん等、やる事多いですよ
カプセル詰めの人々を救出保護
敵は蜘蛛糸で拘束しちまいやしょうね
何なら他の猟兵方々の盾に成っても構いませんよ
あっしは拘束した敵や施設を禍槍で破壊しましょうか
●蜘蛛
「胸糞悪い防空壕ですねぇ」
腐臭漂う悍ましい空間を紗我楽・万鬼(楽園乃鬼・f18596)がゆらりと歩む。
「――まぁ無駄口より急ぎやしょうか」
どうやら時間は余り無いらしい。失踪騒ぎがあったのは一人だが、他にも捕まった人々がいる可能性は十分にある。ならばやる事は一つ、万鬼は禍々しい槍を地に突立てて小噺を語る。
――聞き手は居ても居なくても、あっしは只騙るだけ。
救助者に敵共。手が足りませんね。
ならば今な噺は如何ですかい。
ぎょろりと、それに気づいた怪人達が万鬼を睨む。
――ああ、ああ。よござんす。そこな貴方、蜘蛛って知ってるかい。
蜘蛛ってのは良く怪異に例えられますねぇ。
何せ便利ですから。何がって?
ふらふらと声のする方へ足を向ける怪人。その背後には降ろされた邪神が、まるで怪人を繰り人形の様にわちゃわちゃと蠢く脚で操って。
――まぁ聞きなすって。蜘蛛ってのはねえ。
8本の脚で壁や天井何のその。
吐く糸は足場作成に獲物足止め自由自在。
でも小さいのが難点? 何言ってるんです。
怪談は都合の悪い所を改変するもんですよ。ねぇ。
ぐちゃりと、何かが頭上より落ちる。漆黒の艶の無い肌、真紅の複眼。
かの老人ならば苦笑するだろうか。これはアレとは違う。だが、紛れもなく怪異。
――脚の先に手を付けた、人の子サイズの蜘蛛妖怪を沢山招きましょうや。
それらがいつの間にか天井に、塊となって蠢いていた。
「さぁお前さん等、やる事多いですよ」
槍を眼前に掲げて、声高らかに指示を飛ばす万鬼。
「カプセル詰めの人々を救出保護。敵は蜘蛛糸で拘束しちまいやしょうね」
旦那のアレとは大分成りが違いますがね、やれる事はそう変わらない。それに。
「蟻が蜘蛛に勝ちたければまあ、南米辺りならまだしも」
ここにいる小物が果たして、これらに勝てますかな。さぁ、さぁ。
「さぁ、悪童どもに仕置きの時間と参りましょ」
びゅんと蜘蛛から無数の糸玉が放たれた。それらは怪人の目の前で網と化しその動きを拘束する。そして天井から舞い降りた蜘蛛の群れは、片端から怪人を蹂躙した。
「零番目と言いましたか。なら他の番号もいるんでしょうねえ」
槍を担いで辺りを見渡す万鬼。メインサーバーは陥落、オブリビオンの種らしき物の搬送路も半壊、ならば自分はと電源装置を探している内に奇妙なメモを見つける。
「ふむ。三番健在、四番失踪、六番移動、七番移動――ですか」
あっしの知ってる四番は元気にやってますって。ぼそりと呟き万鬼はようやく見つけた配電盤らしき構造物の前に立つ。
「もっともお前さん達の敵として、でしょうがね」
ガツンと一撃、目の前の配電盤を串刺しにする。ただでさえ薄暗い施設の証明が落ちて、続いて非常電源が入るが――振動を続けていた幾つかの機械はその動きを完全に止めてしまう。これ以上、怪人が製造される事は無くなっただろう。
「さあて、後は救出の手伝いにでも参りましょうかね」
石突きを地面に突立てて、カプセルのカバーを一心不乱に剥がそうとする蜘蛛を見やる。あのままで下手に目覚めちゃ寝覚めが悪いだろうから。
成功
🔵🔵🔴
響・夜姫
●連携可
やっぱり。探索よりも、戦闘の方が、やりやすい。
「救出して、敵を倒して、施設を壊す。しんぷる」
カプセルに【気絶攻撃】用の銃弾を撃ち込んで破壊、救出。
出てきた奴、手遅れそうな人にも気絶弾撃ちこんでとりあえず確保、外の方へ退避させる。
ほんとにダメだったら。後で慈悲の一撃を。あげなきゃ、だし。
カプセル全部壊し終えたら、戦闘開始。
「さー。地獄をたのしめー」
…私は楽しくない、けど。
施設ごと破壊するつもりで、【誘導弾/2回攻撃/一斉発射/範囲攻撃】で手当たり次第にまきしまむどら…ふぁいやー。
「ごーれつ、よひめぱんち」
残った敵にはビームキックで追撃。キックは銃から出る。
女の子、無事だと良いけど。
テン・オクトー
●
行方不明になった少女は大丈夫かな?間に合った?
それ以前の方々は…蟻の姿の人は無理そうかな…?
ボクは敵対勢力の排除と破壊をするね。
邪神の考える事は理解できないし、理解したいとも思わないけれど…こんな事って必要な事なの?
ただ命を奪うだけでなく、恐怖させ、あまつさえ体までいじって…。人としての尊厳をここまで蔑ろにするなんて酷いや。
ボクがここで出来る事は…ここを跡形なく破壊する!
POW
パイプやらカプセルやらを武器で破壊していく。
邪魔してくる輩がいればそれに対しても攻撃。もし…元、人だとしても戻せないのなら心を鬼にして。
助けれる方々を助け終わったら、この施設を丸ごと【UC】で破壊。
ヘスティア・イクテュス
●
わたしとしてはこんな施設破壊しつくして
邪教徒達に地獄のような目に合わせたい
…ところだけど、優先順位をはき違えるべきではないわね
ティターニアによる全力移動…
閉じたカプセルを開けて助けられる人は一人でもね
それとアスを展開ね
急ぐ必要があるなら手は必要でしよ?
散布されたナノマシンで癒す事ができるならいいのだけど…
戦闘は他の人に任せたわ
終わったら、後は施設の破壊かしら?
ミスティルテインをフルパワー、全力全壊。全てをぶち壊すわ
最後は犠牲になった、助けられなかった人達が安らかに眠れるよう祈りを…
●逆襲
「行方不明になった少女は大丈夫かな? 間に合った?」
テン・オクトー(ケットシーのシャーマン・f03824)は手にしたランタンを掲げて、薄暗い空間を照らす。視線の先には蠢く怪人の群れが。
「女の子、無事だと良いけど」
響・夜姫(真冬の月の夢・f11389)は愛用の二丁拳銃をくるくると回しながら、左右に立ち並ぶカプセルを眺める。結構な数だし、中の人がどれだけ助けられるかも分からない。
「わたしとしてはこんな施設破壊しつくして、邪教徒達に地獄のような目に合わせたい……ところだけど」
光を放つ妖精の羽根を広げたヘスティア・イクテュス(SkyFish団船長・f04572)は憤る気持ちを押さえながら、やるべき事、為すべき事を見定める。
「優先順位をはき違えるべきではないわね」
「うん。救出して、敵を倒して、施設を壊す。しんぷる」
がちゃり、と照星を左のカプセルの列に定めて夜姫が続く。淡々とした語り口ながらも、その奥に秘めた想いはヘスティアと同じ義憤。
「……ほんとにダメだったら。後で慈悲の一撃を。あげなきゃ、だし」
「……蟻の姿の人は、無理そうかな?」
多分ね、とヘスティアがオクトーへ返して。これで状況と目的は把握した。それ以上語らず、三人の猟兵は仕事を開始した。
「……こんな事って必要な事なの?」
怪人の群れに飛び込んだオクトーはフレイルを振り回しながら、最早助からない人だった者達へ最後の一撃を浴びせ続ける。囲まれようと振り回した鉄球は、怪人達を迂闊には飛び掛からせない威力があった。懐に、顔面に、容赦なく叩き込まれる一撃が怪人を吹き飛ばして、そのままぶち当たった機械が火花を飛ばす。
「ただ命を奪うだけでなく、恐怖させ、あまつさえ体までいじって……」
人としての尊厳をここまで蔑ろにするなんて酷いや。だから、ボクがここで出来る事は……ここを跡形なく破壊する! 誓った怒りを胸に秘め、オクトーはひたすら怪人と、周りの設備を破壊し続けた。
「まずはカプセルの中に」
列をなして鎮座するカプセルへ中の者を気絶させる特殊弾頭を打ち込む夜姫。穿たれた金属のカバーに喰いついて、弾頭から即効性の麻酔ガスを流し込む代物だ。これならば傷つける事無く、安全にカバーを開けられる。
「さて、何が出るか」
ガチャリ。中で蟻の怪人が眠っていた。正直恐怖な絵面だが戸惑っている場合ではない。ここは戦場――心を鬼にして、もう片方の拳銃で、その息の根を止める。
「……ごめんね」
間に合わなくて。もう一つの拳銃が火を噴いて、怪人の頭が爆ぜる。続いて次のカプセルへ手を伸ばして――こっちはまだ人の形を保っていた。管が繋がれ所々の肉体が変化を見せてはいるが、どうにかなるかもしれないと夜姫は思った。
「とりあえず、外へ」
幸い暴れている怪人どもは眼下で他の猟兵と戦っている。この辺りのカプセルは全て無力化しているし、暫くは大丈夫だろう。休む間もなく、夜姫は解放作業を続けた。
「ティターニア、スロットルマキシマム。プログラム再現……アス、お願いするわ。これ以上、被害が広まる前に――!」
妖精の羽根を更に広げてヘスティアは加速する。背後にはロバの様なプログラム生命体が現れて、その燐光がメディカルナノマシンを広域展開。幸い大まかな諸元は別の猟兵から手に入れていた。これならば邪神に侵食された人達を救う事が出来るかもしれない。
「戦闘は他の人に任せたわ。今はやれる事を、最大限やるだけよ!」
治癒を主体とする超常の力を持つ者は意外にも少ない。猟兵の仕事は基本、戦闘が多いからだ。だがこうした力こそが、世界を救う為に必要だという事はヘスティアはその身をもって知っている。
「――オロチウイルス程じゃないわ。だから必ず」
必ず助ける。間に合うならば、その手を決して離したりはしない。妖精は舞う、この狂った世界から人々を開放する為に。
「――いた。ヘスティア」
最後のカプセル、最初に失踪したと報を受けていた少女をついに発見した夜姫。身体の変質は始まっているものの、その輪郭は人そのものだ。まだ大丈夫だと信じて、その生命を仲間に託した。
「了解よ夜姫、アス! こっちはこれで最後!」
夜姫が解放した人々はこれまで3名。この一人を合わせて4名だ。残りは皆、既に怪人と化していたか、殻となったカプセル――既に活動している怪人達だ。宙を舞うヘスティアがその方角へティターニアを吹かして、一瞬で距離を縮める。
「ちょっと! こっちも危ない――かも!」
施設破壊の為に力を蓄えているオクトーからの悲鳴。流石にいつまでも力を押さえて対抗出来る手勢では無い様だ。
「分かった。じゃ、後はよろしく」
「うん。こっちも直ぐに合流するわ」
到着したヘスティアと入れ替わる様に夜姫がふわりと戦場へ降りた。
「さー。地獄をたのしめー」
重ねた二丁拳銃が十字を象り、その背後からサバーニャが――十字型浮遊戦闘端末群がずらりと姿を現す。
「……私は楽しくない、けど」
ぱーてぃーたいむだ。まきしま(検閲が入りました)ふぁいやー。先行したサバーニャがその先端からビームを放ち、渦を巻くような陣形で怪人達へと迫りくる。オクトーへ向かい殺到していた怪人達が弾き飛ばされ、再びバラバラに。
「……こっちにも、来た」
止むを得ない。二丁拳銃をホルスターに仕舞い、夜姫は両腕を前に突き出す。
「別に寿命とかは減らない、けど……」
猟兵タイム。Go! Let's Go!
「……烈」
何かが聞こえた様な……ぐるりとその腕を回せば、ふわりと浮かび上がった夜姫の周りに無数の砲門が束となって姿を現す。
「ごーれつ、よひめぱんち」
爪先を敵の方へ向け、スカートを覆い隠す様に密集した砲門がその牙を怪人へと向ける。ぱんち。ぱん……いや、え? 何? などと思った事だろう。首を傾げる怪人。しかし放たれたのは円錐状に重なった赤色の無数のビーム。それが一直線に発射される。
「……ちゃーじ」
地面を穿つ強烈な一撃が、直線状に居並んだ怪人を巻き込んで爆発。辺りの不明な装置を巻き込んで、木っ端みじんに吹き飛ばした。ぱんちじゃないじゃん。
「何、あれ……」
『恐らくですがユーベルコードでしょう。必殺技――』
そんなの分かるわよ! アベルのボケだかツッコミだかに怒声を浴びせるヘスティア。ただでさえ胸糞悪い空間にいるのだ。下手に触れれば癇癪が爆発する。
『安心して下さい。お嬢様のミスティルティンもチャージ済みです』
いつでもどうぞ、とアベルが涼やかに続ける。
「流石ね。それじゃ――わたしも行くわよ」
上空からオクトーと夜姫が吹き飛ばした怪人の列に向けて、施設の装置も巻き込む様に照準を調整する。
『照準補正完了。反動は推力プラス5で受けます』
「固定よろしく。それじゃ、全力全壊」
全てぶち壊すわ。背後には救助出来た4人の少年少女が眠っている。幸いタロスも健在、バリアで彼彼女らを護ってくれるだろう。カチリとトリガーを引くと同時に、ヘスティアの感情を体現した様な巨大なビームの渦が、大地を舐めるように照射された。
「――流石にここを崩すのはもう少し後、だから」
『ええ。必要なモノを全力で破壊出来る様、調整しました』
抉られた施設に赤黒い跡。人だった者は断末魔を上げる事無く、光の渦に飲み込まれた。後はこちら側の大まかな機材を破壊するだけ。
「ありがとう夜姫さん、ヘスティアさん!」
ブンブンとフレイルを頭上で回してその威力を高めるオクトー。最早邪魔は無い。
「ここを埋めるのはまだだけど、念の為に壊せるものは全て――」
破壊する。大地に叩き付けられたフレイルはそこを中心に、奈落のような穴を生み出した。それに飲み込まれ沈んでいく装置群……そして。
「……これは、もしかして」
連なったパイプの中央から伸びていたであろう巨大な穴は、その下に太古の魔法陣らしき威容を隠していた。
「ここから、邪神を呼び出していたんだね」
ならば、後はこれを破壊すればいい。
三人の猟兵は奈落を見据え、その手に力を込めた。
全てを終わらせる為に。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
月守・咲凛
【ワンダレイ】のメンカルさん、ネージュさん、尾守さん、九重さんと一緒に参加。
まだです、まだ諦めません!
「必ず助けます、信じて下さい!」
と、身体を作り変えられた人達に抱き付きながら【だっこ大好き】を発動、動けなくなった所を【ダメージイレーサー】に取り込んで身体を元に戻します。
本人が自分の元の姿を人間だと認識していれば、身体を作り変えられたダメージは消えて元に戻る筈なのです。
戦闘は仲間に任せて救助を優先します。仲間が攻撃を受けているのを見たらアジサイユニットでガードしますが、自分の守りはかなり疎かになっています。
「頼まれました!」尾守さんが飛ばしてきた人はそのままダメージイレーサーにポイします。
メンカル・プルモーサ
【ワンダレイ】で参加…ん…これなら私は時間稼ぎだね…そう言うのは得意だから任せて…
……その前に……人工精霊AI【ヤタ】を制御装置に放ってデータを集めさせておくね……後々の治療に使えるかも知れない……
【夜飛び唄うは虎鶫】を召喚……援護射撃しつつ咲凜や夜野を庇うように飛ばすよ…【面影映す虚構の宴】による霧の幻影や【世界鎮める妙なる調べ】による誘眠等を用いてマガツアリスに対し時間を稼いでいく
……避難と回復が終わればこっちの番…
…桜花に合わせて【精霊の騒乱】で氷の嵐を放って一掃する……ヤタの方はどれぐらいデータ取ってきてくれたかな……
九重・桜花
【ワンダレイ】のみんなと一緒に参加だよ。
人間を怪物に改造する…許せないね。これ以上犠牲者が出る前になんとかしないと!
みんながカプセルから大丈夫な人たちを救出してる間の時間稼ぎを担当。メンカルちゃんが動きを止めた奴を中心に、夜野さんや咲凛ちゃんのカバーをしつつ一体一体確実に仕留めていこう!
向こうの仕事が終わったら次はこっちの番。メンカルちゃんとネージュさんに合わせて【エレメンタル・ファンタジア】で氷の竜巻を放ち、残存勢力を一掃するよ!
ネージュ・ローラン
【ワンダレイ】で参加。
なんて非道な……。
一刻も早くなんとかしなければ!
救助は夜野さんや咲凛さんに任せました!
これ以上犠牲を増やさない為に、まずは無事な人達からオブリビオンを引き離しましょう。
目立つようにクルリと空中で【ダンス】しながら敵の前へ飛び出し、引きつけながら施設の奥へと進みます。
敵の数は多いですがオブリビオンや召喚された妖虫の攻撃もギリギリで【見切り】回避しようとします。
救助が終わり、巻き込む心配が無くなったなら一気に倒してしまいましょう。
桜花さんのタイミングに合わせてわたしも【エレメンタル・ファンタジア】で氷の竜巻を起こします。
周囲の機器も壊してしまうかもしれませんが構いませんよね。
尾守・夜野
【ワンダレイ】で行動
どんな術理に従って姿を作り替えているかなんてわからないが… パイプが原因なら…!
「助けに来た!
カプセルを外す!
蓋に当たったりしたら危ないからじっとしててくれ!」
と叫びつつUCを使おう。
取り込み、パイプから【カプセルを外す】
ついでに動かないでいてくれる救助者、動けない暫定敵も取り込むだろうが…
敵と見られる…人の形をなくした者は月守の方に飛ばしておこう。
まだ助かる可能性があるかもしれんし
「月森!………頼んだ」
外に声を聞かず、抵抗していた奴らが残されるはず
【存在感】を放ち注目を集め、動きを止めて、抵抗出来ないほどの【早業】で再度UC発動 取り込んだら中の俺が対処や説明するはず
●救出
「人間を怪物に改造する……許せないね」
「本当に……なんて非道な。一刻も早くなんとかしなければ!」
時間は少し前へと遡る。左右に並ぶカプセルの列の内、右側のカプセルを一瞥出来る位置へと移動した【ワンダレイ】の面々――九重・桜花(花吹雪・f10723)とネージュ・ローラン(氷雪の綺羅星・f01285)は、眼下に立ち並ぶ異様なカプセルを眺めながら、怒りを露わにしていた。人を人とも思わぬ所業、邪教徒とは言えそれが人の手により行われていたという事実。そのどれもが到底許せるものでは無かった。
「うん。これ以上犠牲者が出る前になんとかしないと!」
「そうです、まだ諦めません!」
「……ん……これなら私は時間稼ぎだね」
月守・咲凛(空戦型カラーひよこ・f06652)とメンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)が二人に続く。未だ改造途中であれば助け出す事も可能な筈――一縷の希望に全てを賭け、各々がやるべき事を見定めて、眼下の怪人とカプセルを見比べる。
「……そう言うのは得意だから任せて……」
「ああ。どんな術理に従って姿を作り替えているかなんてわからないが……」
ぼそりと呟いたメンカルに尾守・夜野(墓守・f05352)が返す。じろりと怪人を睨みながら、その根源を辿る事が出来れば――恐らく被害は防げるだろう。
「あのパイプが原因なら……!」
先ずはアレを仕留めればいい。古式銃に弾丸を装填して、夜野が跳ぶ。
「必ず助けます、信じて下さい!」
それに続いて咲凛が背中の翼を広げ、一大救出作戦が始まった。
「……さて」
初動で止まったメインサーバーから吸い上げられた情報は既にメンカルの元へ。矢張りというか、バックアップが幾つか未だに息を吐いているようだ。だが既に経路は管理者権限で妨害され、装置は物理的に残ったエネルギーで、微弱な脈動を繰り返しているだけに過ぎない。
ならば、とメンカルは人工精霊AI【ヤタ】を生きている制御装置に放って更にデータを集める。人に邪神を憑依させるという情報があれば、後々の治療に使えるかも知れないからだ。手に入れたデータは仲間達へ逐次送信――自分達以外にも見知った顔が同じことをするかもしれない。いや、するだろう。手段は出来るだけ多く確保すべきと、メンカルはAIに指示を飛ばしながら、更にタブレットに指を滑らせて数多の術式を起動する。
「全力の奴は無理……でも」
仲間の援護くらいは出来るだろう。呼び出したコードは三つ、本来ならば一軍すら相手に出来る真の超常――だが今回ばかり本命はまだ使えない。本命はこの後だ。
「我が従僕よ、集え、出でよ――」
ナイトハウンズ・アクティベート。エンハンスド・エコー――紡がれた術式が機械の猟犬を飛翔させ、救出作業へ向かう夜野と咲凛の後を追う。
「記憶よ、戯れ、演じよ……旋律よ、響け、唄え――」
ブート・クロノス。シルバームーン・ドライブ――続けて放たれた呪文が、怪人達の動きを容赦なく阻害する。
「……これで時間は稼げる……筈」
仲間達へのバックアップを一通り終えたメンカルは、続けてAIが集めた情報の解析に移った。今は僅かでも時間が惜しい。
「よーし、それじゃあこっちも作戦開始だよ!」
手にした魔法剣の切先を怪人に向けて、桜花が戦場を駆ける。既にメンカルが動きを阻害した輩だ。まるで重りを付けた様な鈍い動き。これならば労せず首を獲る事も容易い。くるりと向きを変え、怪人の背後を取る桜花。右斜め上に魔法剣を大きく振り被る。
「本当なら助けてあげたい……けれど」
こうなっては手の施しようも無い。ならばこそ一思いに――苦しまずに終わらせてやるのがせめてもの情け。一刀の下、ごろんと地面に転がる怪人の首を見やり――それでも、憐みの気持ちが沸き上がっても、この世界に生ける者達の為に止まるわけにはいかないと再び魔法剣を構える。しかし敵も夜野と咲凛の動きに気付いたか、桜花を背にしてぞろぞろとカプセルの方へ戻る一群が目に入る。
「そうは……させません!」
その前に立ちはだかったのはネージュ、空を舞う軌跡が光を放ち、ひらりと棚引く薄布が怪人達の注意を引き付ける。その姿は戦場に舞い降りた天女の如く。
「確かにあなた達はもう救えないかもしれません……ですが」
まるで風の精霊の様なステップで、手にした宝杖から氷の礫を放つ。その動きを見て、怪人達が一様に己の身体から眷属を生み出し、放つ。
「だからと言って他の助けられる人達を、みすみす放っておく事など出来ません!」
礫が怪人の身体から放たれた悍ましい虫の群れを悉く圧殺し、潰された肉体から緑色の液体が飛散した。礫は止まる事無く、その勢いは怪人の進行を止める事になる。
「そうだよ! だから絶対に邪魔は――させない!」
精霊の加護を受けた桜花の魔法剣が長大な氷の刃を形成する。ふわりと桃色のツインテールが揺れて、その動きに合わせて氷の剣が背後から怪人を左右に両断した。
「桜花さん! 敵の進軍はこちらで止めます。だから!」
「分かったよ! 大丈夫……ボクだって、猟兵さ!」
ネージュのステップが氷の礫と、新たに氷の帳を怪人の前に降らせる。絶対にカプセルの元へは辿り着かせないという強い意志。そして桜花が、ぎこちなくその場で惑う怪人へ必殺の一撃を繰り出して――救助作戦へ向かう仲間を守る鉄壁の迎撃陣を構築した。ここは自分達が必ず食い止めると心に秘めて。
「助けに来た! カプセルから出す!」
中で眠る人に届く様、夜野が大声を張り上げながら、カプセルの天辺にある邪神の種が流し込まれるパイプを外さんと、接合部を古式銃で撃ち貫く。立ち上る硝煙と共に溜まった気体が勢いよく噴き出すが、それも直ちに止まって――邪神の種が送られない事をしっかりと確認した。
「蓋に当たったりしたら危ないからじっとしててくれ!」
再びの大声と共に巨大な魔法陣が――それこそが夜野の超常、触れた無抵抗の対象を取り込んで、自身の他人格が住まう精神世界へと運び込むのだ。中に入れば別人格の自分が状況を説明して、何とか取り繕ってくれるだろう、多分。
「じっとしていてくれ……いいな?」
ガツンとカプセルの蓋を外して、中を確かめる。どうやらまだ人の形を保っているようだ……これならばと、魔法陣の中へその人を放り込んだ。
「多少乱暴だが……済まない、耐えてくれ!」
そうやって次々とパイプを撃ち、カプセルの蓋を剥がし、救えそうな者だけを次々と魔法陣の中へと入れる。しかしカプセルの中身は無事な人だけでは決して無い。
「こいつは――月森!」
中より現れたのは最早人の身を捨てさせられた異形の存在。纏った衣服がかろうじで人だった頃の片鱗を残してはいるが、それは既に人間の範疇から逸脱した――邪神を降ろされた怪人であった。しかしその瞳は虚ろ、敵意は見られない。
「………頼んだ、お前だけが頼りだ」
奥歯を噛み締め、無理やりカプセルからそれを引き剥がす夜野。剥がされた先――夜野の背後には呼ばれた咲凛がちょこんと立っていた。
「頼まれました! 大丈夫だよ――お姉ちゃんに任せて!」
ブンと空間が軋む音と共に、咲凛の髪の結晶体に小さな魔法陣が浮かび上がる。
「さあ、大丈夫だから。恐くないからね……」
異形と化した人間だった怪人を咲凛は優しく抱きしめる。その祈りが通じたか、ふらりと怪人が表を上げて、不思議そうに咲凛の顔を覗き込んだ。
「ここまで来れば……後は」
咲凛は怪人の手を取って、頭の魔法陣へそっと触れさせる。その途端小さな魔法陣に大柄な怪人の全身が吸い込まれて、その姿を消した。それこそが咲凛の超常。吸い込まれた先はあらゆる肉体的ダメージを癒す魔力空間、本人が人である事を忘れてさえいなければ、きっと元に戻す事が出来る筈だと信じて送り込む。
「――さあ、まだです。順番にこっちへ運ぶのです!」
引き続きカプセルをこじ開けて人々を救い出す夜野の後を追って、咲凛も救出に奔走した。仲間の援護のお陰で救い出した人々がそれぞれの魔法陣へと吸い込まれ、救出劇も終盤を迎える事になる。
「これで……終わりか……?」
夜野がこじ開けたカプセルの中、その殆どで人の姿を保っている者はいなかった。人の意識を持つ怪人も片手で数えられる程。それでも尚、合わせて8人の生命を救う事が出来た。メンカルのサポートで辛くもカプセルの中の怪人の抵抗を排除し、夜野の魔法陣に放り込んだ軽傷の救助者も、手に入れた情報で施術の進行を止める事が出来るだろう。
「……後はここを、壊すだけ……」
端末を閉じたメンカルが、そのまま月を象った杖をかざして、巨大な魔法陣を形成する。魔法陣に注ぎ込まれた魔力が精霊と呼応して、眼前に巨大な氷柱が形作られた。
「全部は無理だった。けど……助かる命は、助けられた」
「そうだよ。ボク達はやれる事をやったんだ。だから後は――」
「二度とこんな事を起こさない様、ここの全てを破壊――ですね」
むしろ人の形を捨てさせられた存在すら、奇跡的に戻す事が出来たのだ。既に邪神と化していた救えぬ命もあったが、それだって表の世界に放つ事なく、ここで全てを終わらせられたのだ。何も悲観すべき事だけではない。
「そうさ。『俺の世界』にいる奴らだって、何もしなければ死んでいたんだ」
夜野が悲しそうに佇む咲凛の頭を撫でて、戦いの爪跡が残るカプセルの列を睨んだ。
「派手にやってくれ、ここが崩れない程度にな」
「了解! じゃあ行くよ、メンカルちゃん、ネージュさん!」
桜花の一言と共に三人が放った精霊魔術――氷柱がバリバリと音を立てて、巨大な氷の竜巻を形成した。正に破壊の渦、周囲を氷結させつつ益々勢力を拡大していく。
「周囲の機器も壊してしまうかもしれませんが、構いませんよね?」
「……大丈夫。ヤタが必要なデータは全て、取ってきてくれた」
ネージュの質問に淡々と返すメンカル。そのデータとは邪神化した人間を元の姿へ戻す為の術。人体改造をリバースエンジニアリング出来るかもしれない最後の希望。
「だったら遠慮はいりませんね――では!」
「世の理よ、騒げ、暴れろ。汝は天変、汝は動地。魔女が望むは安寧破る元素の乱……」
そしてそのまま、荒れ狂え! ネージュの号令、メンカルの呪文と、桜花の一言で氷の竜巻がカプセルの列を粉々に砕き、氷結した空間が崩れそうな岩壁を固めて崩落を押し止める。これで邪神が降ろされた怪人が製造される事は金輪際無くなった。
「これで暫くは大丈夫かな……後は」
「後は、あれなのです」
不意に咲凛が頭を上げる。その視線の先には、岩場に埋もれた巨大な魔法陣。
「最後にあれを、壊すのです!」
これ以上あんな悲劇を生み出さない為に。少女の瞳は決意に燃えていた。
「ああ、アイツを壊そうぜ――」
夜野が静かに同意する。諸悪の根源、その魔法陣を睨んで。
救われなかった魂の無念を、今ここで晴らす為に。
成功
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茜谷・ひびき
アドリブ連携歓迎
ここが敵の本拠地か
こういうの、本当に吐き気がするぜ
だから全部ぶっ壊す
俺はとにかく敵の撃破と施設の破壊をするか
【ブラッド・ガイスト】で右手を殺戮捕食態に変えたらそれで敵をぶち抜くぞ
【鎧砕き】や【怪力】も乗せてついでに空になったカプセルや設備も壊せたらいいな
邪神や妖虫が呼び出されたらそれごとぶっ飛ばすぜ
敵の攻撃には【野生の勘】で対応するが、こちらも多少の怪我は厭わない
傷は相手の【生命力吸収】で何とか出来る
最悪【捨て身の一撃】したって構わない
それよりも無事な人を助け出さないといけないからな
もし救出の人手が足りてなさそうならそちらにも回る
戦う時もその人達を巻き込まないよう気を付けよう
霧島・クロト
無駄かも、しれねェが、まだ、間に合いそうな奴を護りながら立ち回るか。
【氷戒装法『貪狼の狩人』】を【高速詠唱】。
機動力を確保して、主武器は『凍滅の顎』での射撃戦を主体。
至近距離に来られる前に【見切り】、
【視力】【暗視】でカプセル内の状況を確認しつつ救助軸に走る。
攻撃自体は氷の【属性攻撃】と【鎧砕き】【部位破壊】【マヒ攻撃】【呪殺弾】で氷の魔弾を作成、
【フェイント】かけつつ波動で強化して撃ち込む。近寄らせるモンかよ。
カプセルは【メカニック】辺りの知識使って素早く開けて、出来る限り声を掛けてく感じで。
「――自分を、見失うんじゃねぇ。その身体も、その心も、『お前』自身の物だろ!?」
※アドリブ・連携可
●終局
「こういうの、本当に吐き気がするぜ」
腐臭が漂い、左右のカプセルの列は仲間達が解放の為に動いている。残るは中央――うねうねとパイプが無造作に飛び出ている悍ましい装置の真裏にあるカプセルの列だ。茜谷・ひびき(火々喰らい・f08050)は武骨な鉄塊剣を肩に担いで、一歩前へと進み出る。
「ああ――本当に」
忌々しい光景だ。何れこんな場所へ足を踏み入れる事もあるだろうとは思っていたが、実際に目にすると湧き上がる感情はマグマの様に煮えたぎり、されど氷の様に冷徹に、霧島・クロト(機巧魔術の凍滅機人・f02330)自らが成すべき事を思考する。
「無駄かも、しれねェが、まだ、間に合いそうな奴を護りながら立ち回るか」
とりあえずは目の前だなァ。氷の精霊が宿った巨大な拳銃を抜いて、クロトもひびきに続く。
「そうだな。それが終わったら――」
全部、ぶっ壊す。ひびきの体に刻まれた刻印が熱を帯びて、真紅の紋様を浮かび上がらせる。それが血管の様に伸びて鉄塊剣と結合すれば――殺戮捕食態、発揮された超常の異能は怒りの感情のままに、鉄塊剣の地獄の業火を解き放った。
「血はそこら中にある。ガス欠にはならねえだろうが、まァ」
綺麗に死なせてやれや。俺も努力する。『貪狼』の加護を――ってな。クロトが口にした力ある言葉が、対照的に全てを凍てつかせる冷気をクロトに纏わせる。氷戒装法――貪狼星の加護がクロトの肉体を更に強化して。
そして怒れる炎と氷の道を塞ぐ様に、ぞろぞろと異形の怪人が群れを成して、前に後ろにと二人を囲い込む。
「今更引かねえよ。なァ」
「ああ。少しはちゃんと見える様になったし――」
血の気が武装に引かれたか、落ち着いた様子で怪人を一瞥するひびき。
「ここは任せて、霧島さんは早くカプセルの方へ」
はいよ、と一言。その瞬間にクロトは氷の弾丸と化した。貪狼の加護が絶対零度を放射して、バキバキと進路上に広がるのは氷の道。その上を滑る様に駆け抜けつつ、手にした拳銃が氷の魔弾を幾つも吐いて、命中した怪人の部位ごと氷結粉砕――元からそこには何もなかった様に、ぽっかりと大穴が開いた。
「よそ見してんじゃ……無ぇ!」
クロトに気を取られた怪人達に、灼熱の鉄塊剣が引導を渡す。ごうんと振られた巨大な質量は、刀身に纏う炎がまるで怪人を喰らう様にとぐろを巻いて、攻撃と捕食を同時に完遂する。
「今は無事な人を救出するのが優先だ――だから」
邪魔する奴は容赦しねえぞ。再び地に叩き付けた鉄塊剣を反動で持ち上げて、横薙ぎに振り回す。伸びた炎が触手の様に怪人へと喰らいついて、その生命を奪い獲る。故に殺戮捕食態、増幅されたひびきの衝動が、思いが力となって、有象無象の怪人達を叩き伏せる。
「さあ来いよ、全部纏めて相手してやるぜ!」
その叫びの呼応して……邪神が、妖虫が、悍ましき者共が一斉に、地獄を担ぐひびきへ襲い掛かった。
「っと……この辺りはまだ無事かァ」
視覚デバイスの暗視能力でカプセル内の救助者の体温が未だ無事である事を確認したクロトは、続いてカプセルの構造をスキャンする。
「成程ねぇ。中で暴れても外へ出れねえ様に、か」
やけに頑丈に作ってやがるな、まるで棺桶だ……。ざっと眺めて破断点を特定し、黒手袋のガジェット――貪狼の牙を剥く。手にしたのはバールの様なもの。単純だが、サイボーグの膂力があれば、こんな物をこじ開けるのは非常に容易だ。
「さァて……こっちは仕事中だ、邪魔すンな」
不意に片手の拳銃が再び氷を吐く。呪われた弾丸が辺り一面を氷結地獄と化し、背後より近寄った怪人は無残にも氷の彫像となった。
「――悪ィが仕事には優先順位ってのがあるんだ。本当に」
済まねえが、お前らを葬るのは最後だ。そう自分に言い聞かし、慣れた手つきで次々とカプセルをこじ開けていく。中から現れたのは人の姿をした者、既に人ならざるモノ――無事なのは精々2人がいい所か。そして意識を失った救助者に声を掛け覚醒を促す。あと少しだ。今ならばまだ、引き返せる。
「――自分を、見失うんじゃねぇ。その身体も、その心も、『お前』自身の物だろ!?」
「……これで、終わりだッ!」
怪人の背後の幻影ごと、地獄の一撃がその命脈を断つ。周りには焼き尽くされた妖虫の死骸が転がって、ひびきが繰り広げた凄惨な戦いを嫌が応にも想起させた。
「――悪ィ、遅くなった」
「その分だと……二人ですか」
二人の救助者を抱えたクロトが、地獄を担いだひびきに迎えられる。灼熱と冷気が混ざり、霧掛かった様に強烈な湿気に覆われて、クロトのバイザーを曇らせる。
「じゃ、後はあれですよね。仲間は皆、準備が出来てますよ」
「……分かった。こいつらを置いたら、すぐ混ざるわ」
淡々と語りながら歩くクロト。その表情は読み取れない。
「……俺も同じだよ、霧島さん」
怪物の起こす事件に巻き込まれ、異形の異能を手に入れた自身も、一歩間違えればここにいる怪人と同じ様になっていたかもしれない。だからこそ、この戦いに終止符を――ひびきは一先ず、仕上げを待つ仲間の元へと歩みを進めた。
「まー、あの大穴を塞ぐのと、魔法陣の分解が必要じゃのー」
「……大丈夫、大体情報は解析したから……」
メイスンとメンカルがそれぞれの陣を展開して、地の底の魔法陣に接続しその力を奪う。ただ地の底に埋めるだけでは、何らかのきっかけで再び動き出すとも分からないからだ。術式を強制的に組み替えれば、後は発動印を崩せば良いだけ。
「あんなものが、他にもあるのかな?」
「あったらまた、壊せばいいでしょ」
「破壊……破壊……」
オクトーが再びフレイルに力を込める。これまで散々耐えた分、目の前の装置だった物を砕いてやると息巻いていた。その傍らでヘスティアが超大型ビーム砲を、その先には夜姫の浮遊端末が増幅装置として展開する。即席の対艦兵装クラスのビーム。魔法陣の中心に照準を合わせて、発射の時を待つ。
「さて、今度こそ本当に店仕舞いだ」
「ああ。これで終わりにするぜ」
「暖気は充分……いつでも行ける」
うぞうぞと地を這っていたパイプを須らく両断した瑞樹は、攻撃地点にマーキングを施す。そこに目掛けて麗治とひびきが渾身の攻撃を繰り出せば、如何に頑強な岩盤だろうと瞬く間に砕けるだろう。
「大丈夫、助けた人は必ず救います!」
「後は任せて、さあボクらもやろう!」
「ええ。精霊達も暴れ足りないみたいですし」
「救助者の安全は任せろ、派手にやってくれ!」
咲凛は皆が助けた救助者の治療を、夜野は回復した救助者の確保を。戦いに回れない二人の思いを受けて、桜花とネージュが一層奮起する。次は加減などしなくていい、全身全霊を込めた精霊魔法の神髄を、ここに見せてやらんと力が入る。
「では行きやしょうか、オチがまさか落とし穴なんてねえ」
「安心しろ、何も這い寄っちゃ来ねェから」
最後に万鬼とクロトが大穴の縁に立ったまま、奥で妖しく光を放つ魔法陣を見据えて、己の得物に力を込めた。
「それじゃ、ぶちまわすけー」
メイスンが端末を軽くタップすると、奔る電脳の煌きが空間を伝って魔法陣を侵食する。今回は二人掛かり――蒸気魔導の技術で強化された古代魔法破壊プログラムは、瞬く間に魔法陣の術式を侵食し、その光を奪っていく。
「じゃあ続いていくよ!」
「……増幅開始、ふぃーばーたいむ」
「何よそれ、死ぬほど痛い奴かしら?」
『照準固定、発射します』
オクトーが放った最大の一撃が魔法陣の真上の装置を木っ端微塵に破壊して、その衝撃が真下の岩盤をバラバラと崩落させる。それに合わせて放たれた特大のビームの渦が、魔法陣が刻まれた穴奥の大地をバラバラに破砕する。
「……それじゃ、準備はいいな?」
「ああ。全力でいくぞ……!」
「こっちも、焼き尽くしてやる――!」
瑞樹が指定したのは砕けた魔法陣の外縁部分。魔力が浸食して、それが怪異を呼び寄せる危険があるからだ。それらをひびきの炎で焼き清め、麗治が全力で放った巨大な黒剣がコンパスの様に綺麗に抉り抜いた。
「精霊よ、麗しき氷の精霊よ」
「今一度私達に、力を貸して!」
ゴウと吹いた風が強烈な冷気を運んで、再び氷の竜巻が形作られる。それはバラバラに砕かれた魔法陣だった物らを一様に飲み込んだ。
「……お待たせ、手伝う……」
世の理よ、騒げ、暴れろ――メンカルが呼び起こした氷の精霊は、凍てついた息吹を彼方より吹き下ろして、竜巻に飲み込まれた塊を一つの物体へと変えてしまう。
「……コイツで、仕舞いだッ!」
放たれた弾丸は氷の魔弾。貪狼が塊に亀裂を入れて――そして粉々に、砕け散らせる。これでもう、再構成など二度と出来ない。
「では最後にお呼びするのは……あっしの可愛いワンコでござい」
万鬼が呼び出した灼熱の地獄の獣が、最後に砕けた氷の粒を、雲散霧消させる――文字通り、跡形も無くなった。
「終わったか、ならば後は――」
「大丈夫です! こっちも終わったのです。これで助けた人は皆」
皆、無事に人として帰れるだろう。邪神の意識が発露しなかった事が幸いだった。
それならば肉体の異物として、咲凛の能力で排除する事が出来るから。
「そうか。それじゃあこっちに移して……とっとと帰ろうぜ」
後は組織が何とかするだろう。救助者を自身の魔法陣へ移しながら夜野が呟く。
祭りのあと、外では花火が上がっているのか大きな炸裂音が聞こえてきた。
この分なら、暴れたこちらの音もそこまで目立っていないだろう。
「ま、俺はとにかく休みてェ……」
誰かが言ちる。もう1日ぐらいあの温泉宿には泊まれる筈だ。
今度こそゆっくりと、疲れを取ればいい。
失踪した少女を始め、助けられた救助者は全部で14名。
倒された怪人の数は――数え切れない。
だが、猟兵達の伸ばした手が、14もの生命を救ったのは事実だ。
そして流された呪詛を清めて、儀式の再発の阻止も出来た。
猟兵は人々の明日を守ったのだ。それはこれからも、続いていく。
大成功
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