●夏の海
雲ひとつ無く晴れ渡った蒼穹は、見上げればどこまでも透き通り、無限の広さを持つように思えた。じりじりと太陽は照り付け地上の砂浜を熱し、じっとしていても汗が体を伝うような暑い空気が身を包む。
それと同時に視界の果てまで広がる海が奏でる潮騒が耳をくすぐり、そして独特な潮の香りが鼻腔を突く。
海、広大なる自然。しかしこれは実は天然の物ではない、、人工物だ。猟兵達がスペースシップワールドと呼称する世界。そこに住まう人々は、母なる海より生まれ、父なる大地で育ち、そしてその全てに別れを告げ未知なる宙へと翔けた。幾星霜の年月が流れ、彼らは既知領域にあった海をその星ごと全て失った。そんな彼らがこの場を作りだしたのは、それは血に刻まれた郷愁の念ゆえか。
過去の記録等から今も伝承されている、海水浴、砂浜での遊びといったレジャーやアクティビティを楽しむ人々の姿がそこにはあった。季節は夏。冷たき星々の海を翔ける鋼鉄の船の中にも、夏はやってくるのである。
●夏休みを共に
「お手すきの猟兵の皆さん。夏休みにしませんか?」
グリモアベースの一角で、一人の少年が声を上げる。真月・真白(真っ白な頁・f10636)である。
夏休み? 怪訝な顔を浮かべる猟兵達を前に真白は、本体である本を開くことなくビニール袋に収めつつ言葉をつづける。
「スペースシップワールドの超巨大ビーチリゾート船で水着コンテストが行われるのはご存知ですよね? ヘブンズピーチ号というその船を始め、スペースシップワールドにはいくつかのリゾート船が存在しています」
そうしたリゾート船群は観光産業も発達し、彼の世界では多くの人々が遊びに赴くのだという。
猟兵達は日々襲い来るオブリビオンと戦い続けている。それは夏だとしても変わりない事であるが、それだけはやがて潰れてしまうだろう。頃合いを見て息抜きをしたり、大事な仲間や人と戦いの無いひと時を過ごす事もまた大切な事だ。
「今回ご案内するのは、ヘブンズピーチ号内ですが水着コンテストの会場とはまた別のビーチです。人工的に作られた海ですが、天然のそれと遜色無いですよ」
海に入って泳ぐもよし、砂浜で砂と戯れるもよし、日焼けにいそしむも良しだ。近くには売店やレンタルショップも存在し、水着や浮輪、ボートといった道具を借りたり、軽飲食を行うことも出来る。また、希望者にはバーベキューセットも貸し出しているそうだ。
「夏の季節を再現する為に、気候はやや暑い程度になっているそうですから、水着や薄着で常時過ごしても問題ないですよ」
言いながら本体である本を収めたビニール袋の口をしっかりと閉じる真白は転移の準備を始め、笑顔で語りかけた。
「皆さんが貴重な夏休みの『物語(おもいで)』を記される事を願っています」
えむむーん
閲覧頂きありがとうございます。えむむーんと申します。
●シナリオの概要
このシナリオは【日常】の章のみでオブリビオンとの戦闘が発生しないため、獲得EXP・WPが少なめとなります。
スペースシップワールドに存在する、水着コンテストの会場となる超巨大ビーチリゾート船「ヘブンズピーチ号」にて羽を伸ばしていただくシナリオとなります。
人工的に作り上げられたこの海では、晴天の下、夏を感じさせる気候が保たれており、水着や薄手の服装で過ごしてもなんら問題が無い状態になっています。
●このシナリオ限定のギミック
服装指定。
前述の通り、戦闘も無く海で遊ぶ事の出来る状況です。なのでリプレイ内におけるキャラクターの恰好は、プレイングで指定された姿を採用いたします。
こんなデザインの水着or服だ、こんな遊び道具を持っている等書いて頂けると助かります。
アクティビティ。
水着や海で遊ぶ道具は一通り現地で借りる事が出来ます。もちろんグリモア猟兵の転送で運べる手荷物程度のものはご持参いただくことも出来ます。
他にも一般的な海の家のような、焼きそばやラーメンと言った食事やかき氷やアイス。お茶やジュースなども冷やしてお待ちしております。
更にバーベキューセットも借りる事が出来るようになっております。
この他にも公序良俗に反しない物で海で遊ぶためのものならある程度は揃っていると思われます。
真白。
危険が無いので、皆さんをお連れした後、真月・真白も現地にいます。本体である本をビニール袋に入れて、ビーチチェアで横になっております。これは背景の一部であり、参加者様のプレイングでお声をかけられない限りはリプレイに登場いたしません。
●合わせ描写に関して
示し合わせてプレイングを書かれる場合は、それぞれ【お相手のお名前とID】か【同じチーム名】を明記し、なるべく近いタイミングで送って頂けると助かります。
それ以外の場合でも私の独断でシーン内で絡ませるかもしれません。お嫌な方はお手数ですがプレイングの中に【絡みNG】と明記していただけるとありがたいです。
それでは皆さまのプレイングをおまちしております、よろしくお願いします!
第1章 日常
『猟兵達の夏休み』
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POW : 海で思いっきり遊ぶ
SPD : 釣りや素潜りに勤しむ
WIZ : 砂浜でセンスを発揮する
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ケイス・アマクサ
「夏だ! 海だ! 褌だ!!!」
【服装】
褌に法被だ!!
【行動】
ナミル・ダグイール(f00003)と同行
まーナミルは海の家で~とか肉が~とか言ってるだろうから、とりあえずは海に放り込む。
おっと、準備運動忘れずにな!!
あの毛がもふもふナミルのことだ。
濡れたら毛がぺたーとしてきっと面白い姿になるだろうなぁ!!!
そんなナミルを見てこう言ってやるんだ……
「誰だお前は!?」
ってな……おいやめろ褌引っ張るな尻に食い込む!!!!
あとは、ナミルのご機嫌取りにバーベキューで肉でも焼いてやるか。あいつの口に肉と酒を次々放り込んでやるさ。
「おらっ食え!飲め!お前の腹をパンパンにしてやる!!!」
アドリブ・他絡みも大歓迎
ナミル・タグイール
ケイス・アマクサ(f01273)と同行
水着全身絵のジャラジャラ付き水着
海はきれいだけど、入ると毛皮がふにゃっちゃうにゃ。
だからケイスと海の家でマッタリするにゃ!
なんで準備運動してるにゃ?行かないデスにゃ?
ぎにゃー!(放り込まれて大変な見た目になる猫)
…許さないにゃ!ケイスも濡れろにゃ!
フンドシ掴んで海にびったんびったんしてやるにゃー!【怪力】
プンプンしながら毛繕いにゃ。ひどい目にあったデスにゃー。
…バーベキューも出来るにゃ?やりたいにゃ!
いっぱいお肉焼いてデスにゃ!
野菜なんて挟まないにゃ。肉に肉肉にゃー!
そしてお酒にゃ!
肉とお酒いっぱいで幸せにゃー!
酔うとヒャッハーな猫
アドリブ・他絡みも大歓迎
●浜辺に降り立つは漆黒と銀
「夏だ!」
「夏にゃ!」
「海だ!」
「海にゃ!」
「褌だ!」
「ふんど……いや何でにゃっ!?」
そう言って隣の連れへ突っ込みを入れたのはナミル・タグイール(呪飾獣・f00003)だ。キマイラということでその全身は体毛に覆われているが、それでもなおメリハリ女性らしい美しさを保つその体は、大胆なビキニを纏っている。普通の男ながら思わず見とれてしまうだろう。
それだけではない、彼女の身体を彩るその体毛。闇を思わせるその漆黒は艶やかでかつもふもふだった。男女を問わずそのもふもふに魅せられ、撫でたい、もふりたいという衝動に駆られながら、後ろ髪を引かれながら通り過ぎていくのを、果たして当の彼女は気づいているのだろうか。
彼女を飾り立てるアクセサリーもまた注目を集めていた。様々な装身具を、まるでジャラジャラと音がなりそうなほど身に着けている。そしてそれは、どれもが偽りない本物の黄金なのだ。
そんな良い意味でビーチの注目を引く彼女だが、もしここに魔術や呪術の類を得手とするものがいれば、彼女を見て顔を引きつらせることだろう。美しい彼女のその体には、無数の呪いが複雑に絡みついているのだから。
そんなナミルの突っ込みに首を傾げたのはケイス・アマクサ(己が罪業の最果て・f01273)だ。太陽の恵みを受けて美しく輝く銀色の毛並みは、引き締まったその肉体を包み込んでいる。法被を肩にかけていはいるが、その逞しい肉体美を彼は惜しげも無く晒していた。そして下は褌である。
狼の容貌から除く金色の双眸。ギラリと輝くそれは、彼を知らぬ者からすれば恐怖を覚えるかもしれない。ただ、勝手知ったる間柄であるナミルにとっては、その瞳に純粋な疑問の色のみがある事が分かった。
「何でって何がだ?」
「なんで海に褌履いてきてんのデスにゃ!?」
「海だからに決まってるだろ」
「えー……? 褌って下着じゃないデスにゃ?」
「ふ、甘い、甘いぞナミル」
ナミルの疑問はもっともだ。褌、それは帯状の布を下腹部から股間にかけて巻き付ける事で局部を覆い隠す、一部地域の伝統的な下着である。だがしかし、褌と一口に言っても実はその種類は多く。中には下着ではなく肌着として用いられるものや、水着として活用されるものもあるのだ。
「つまり、下着じゃないから恥ずかしくはないんだぜ!」
腕を組んで仁王立ち、沖合からの風になびく法被と銀の体毛と褌。ケイスはどこか得意気に言ってのけた。
「なるほどにゃ~……まぁ、どっちにしても海はきれいだけど、入ると毛皮がふにゃっちゃうにゃ」
だから海の家でマッタリするにゃ、と視線を海からケイスに向けたナミルは、その紫水晶と黄玉を思わせるオッドアイを瞬き、頭の上に疑問符を浮かべる。ケイスが丁寧に準備運動を始めていたからだ。
「なんで準備運動してるにゃ?行かないデスにゃ?」
嫌な予感を覚えたナミルは、後ずさり距離を取ろうとする。が、一歩遅かった。屈伸運動からばねの様に飛びかかるケイス。そのままナミルを掴むと、全力で海へと放り投げる。
「ぎにゃー!」
激しい着水音と共に水しぶきが飛び、虹がかかる。
それが収まったころ、海面にボコボコと気泡が現れ、ぬっとナミルが顔を出す。もふもふの毛は見るも無残に水を吸い、べったりと体に貼りついている。
「ケぇ~イぃ~スぅ~!!」
「誰だお前は!?」
想像通り面白い姿になった。とニヤリと笑うケイス。しかし、ただやられるだけのナミルではない。
「おいやめろ褌引っ張るな尻に食い込む
!!!!」
怒り心頭のナミルはむんずとケイスを掴む、ただケイスは今殆ど裸だったので、掴めたのはその褌だけだった。
「許さないにゃ!ケイスも濡れろにゃ!」
途端にケイスの足が空をかく。身の丈190cmはある彼が、ナミルによって持ち上げられているのだ。
「あだだだ、だぁー!?」
先ほどより激しい着水音。そして飛び散った水しぶきが再び虹をかけるのだった。
●幸福の時間
「まったくもう、ひどい目にあったデスにゃー」
プンプン、そんな音が聞こえてきそうなほどに怒り、頬を膨らませるナミルは毛繕いをしていた。海水をたっぷりと吸い込んでしまった体毛だったが、リゾート施設としてシャワー室も完備されていたので、べとべとすることなく洗い落とす事が出来た。
「すまんすまん、ほれバーベキューで肉でも焼いてやるから機嫌直せ」
「……バーベキューも出来るにゃ?やりたいにゃ!」
怒った猫がもう笑った。
同じく体を綺麗に洗って乾かし、毛繕いを済ませてすっかり元通りになったケイスの言葉にすっかり上機嫌になったナミル。彼女に急かされながら、ケイスはバーベキューの準備に入る。
やがて鉄板と鉄網が十分に熱を持った所で食材を焼き始める。豚肉に牛肉、鶏肉にラム肉等々。バリエーションは豊富だがどれも肉ばかりだった。
「野菜なんて挟まないにゃ。肉に肉肉にゃー! いっぱいお肉焼いてデスにゃ!」
「はいよ!」
ケイスは焼いた端から肉をナミルへと渡す。食欲をそそる焼けた肉の香ばしい香りに満面の笑みを浮かべて口へと投じるナミル。これぞ幸せと言わんばかりの笑みを浮かべる。
「ほれ、こっちも忘れるな」
ケイスはそんなナミルへ酒も勧める。既に成人しているナミルはこれを躊躇なく受け取り飲み下す。胃の奥がカッと熱くなり、肉を平らげた時とは趣の異なる満足感と幸福感が彼女を包み込んだ。
「おらっ食え!飲め!お前の腹をパンパンにしてやる!!!」
ケイスはどんどん肉を焼き、酒を注いだ。終いには己が手ずから焼き肉を彼女の口へと放り込んでいた。
「肉とお酒いっぱいで幸せにゃー!」
酔いも回りテンションもあがったナミルは、幸福に満ち足りた表情で叫んだ。
虚空に浮かぶ夏の海に、彼らの楽し気な声はいつまでも響いていた。
大成功
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