亡霊の大軍を盾に嘲笑うヨウコ
腕を組み、地図を眺めていたグリモア猟兵の望月・秀(沈着冷静な仕事人間・f14780)は、猟兵の気配に顔を上げた。
「君たちは兵を動かした経験はあるか?」
秀は集った猟兵に問う。頷く者もいれば、首を振る者もいた。彼は一つ頷くと続けた。
「骸の海から蘇ったオブリビオンが軍勢を率いて、とある河港町を襲撃しようとしている。君たち猟兵には、このオブリビオンの討伐を依頼したい」
秀は「詳しく説明しよう」と言い、組んでいた腕をほどいた。
オブリビオンが狙う河港町は、江河川を用いる水上運送による物流と産業の要の町だ。
「この世界の物流を担う重要な拠点だ。敵に奪われる訳にはいかない」
秀は猟兵たちを見回し、河港町の重要性が共有された事を確認すると、続けてオブリビオンの説明に移った。
軍勢を率いているのは「魔神兵鬼『ヨウコ』」。そして、ヨウコに従う兵は、大量の義勇兵の亡霊だ。かつては高い志、強い信念を持っていただろうが、今となっては目前の敵と戦うだけの存在だ。
「亡霊はヨウコが呪術で従えている。ヨウコを倒せば無力化するはずだ」
全滅させる必要はないと告げた秀へ、血気盛んな猟兵が不満を訴えた。秀は理解を示した後、理由があると告げる。
亡霊は魚鱗という陣形を組んでいる。魚鱗とは、中心が前方に張り出し、両翼が後退した布陣――簡単に言うと、敵に先端を向けた三角形の布陣だ。この時、全兵力で一つの巨大な三角形を構成するのではなく、数百人単位の部隊が無数に集まる事で三角形の布陣を構成する。この陣形では、仮に一部隊を壊滅させても即座に他の部隊が穴を埋めてくる。まともにぶつかると消耗戦となる為、兵の数が圧倒的に少ない我々が不利となる。
「従って、亡霊の全滅よりもヨウコを仕留める事を優先すべきだ」
秀の説明を聞き、不服を示した猟兵も納得し引き下がる。
「君たちに兵を動かした経験を尋ねたのは、相手が陣形を組んでいるからだ」
用兵に関する知識があれば、動きやすいだろうと秀は言う。
ヨウコは人から情報と技能を奪う呪術兵器である。陣形に関する知識も何れの将から奪い取ったものだろう。魚鱗を組むヨウコは、陣形の理論通り三角形底辺の中心に居る。
「背後から急襲し、ヨウコのみを討てればよかったのだが、地形がそれを許さない」
秀は地図を指差し、軍勢の現在地を示す。所謂「盆地」である。周囲が山のため、背後を突くには時間を要する。時間をかけている間に町を襲撃されては元も子もない。考えうる最善策は、敵陣を最短で突破し、反転する兵に挟み撃ちにされる前にヨウコを倒す事だろう。
「陽動と防御に徹する者、突破に尽力する者、それぞれ役割を振るのも良いだろう。もちろん総力で突破を目指しても良い」
猟兵たちが総力で一点を突けば、瞬時に兵を蹴散らし将に辿り着けるだろう。用兵だ、陣形だと言うが、君たちに懸かればそこまで難しい話ではないはずだ、と秀は続ける。
「見事ヨウコを討ち取った後は、河港町で行われる奉納相撲を見ると良い。奉納と名は付くものの、堅苦しいものではない。周囲には露店も出るし、相撲への飛び入り参加も可能だ。祭りだと思って気軽に楽しむと良い」
秀は再び腕を組むと、猟兵たちを戦場へ送り出した。
こふ
マスターのこふです。よろしくお願いします。
今回はサムライエンパイアのシリアスです。町を襲おうとするオブリビオンを討ち取るシナリオです。ボス撃退後に奉納相撲という名のお祭りがあります。お気軽にご参加ください。
第1章 集団戦
『義勇兵の亡霊』
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POW : 我が信念、この体に有り。
自身の【味方】の為に敢えて不利な行動をすると、身体能力が増大する。
SPD : 我が信念、この刃に有り。
自身に【敵に斃された仲間の怨念】をまとい、高速移動と【斬撃による衝撃波】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
WIZ : 我が信念、この矢に有り。
【弓】を向けた対象に、【上空から降り注ぐ無数の矢】でダメージを与える。命中率が高い。
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ナギツ・イツマイ
近接戦闘は苦手だからね、こそこそさせてもらうよ。改変偶発任せるよ。
猟兵の能力を持ってしても集団の力は脅威のはず、まずは針先の好機を手繰り寄せよう。
敵陣を取り囲むように広く八芒星を描き各頂点に【活性化5】で複製した天秤を三つ隠す、これは音叉であり受信機、送信機、増幅器の働きだ。
さて、山彦って知ってるかな、盆地だしよく響きそうだね。詩宴だ。
鬨の声を、一兵卒までよく聞こえるように
戦慄は音叉の間を跳ね返ってこだまする
見えない大軍はどこにいるのかな?
残った天秤を叩き鳴らし、地響きを伝えよう
私たちはどこにでもいてどこにもいない
ほら、音速のこだまに乗って鎌鼬が走る
さあ、存分に切り刻もう
疾風の木霊
ナギツ・イツマイは猟兵として世界を巡り、幾度も戦ってきた。故に、集団の力は脅威に成り得ると知っている。彼は針先の好機を手繰り寄せる為、先手を打つ事にした。
近接戦闘が苦手なナギツは、敵に見つからぬよう秘密裏に動く。
先ずは、戦場を取り囲むように広く八芒星を描く。その八つの頂点に複製した天秤を三つずつ隠した。この三つの天秤は音叉であり、受信機、送信機、増幅器の働きをする。この仕掛けの核心である。
鈴が鳴る。
「さて、山彦の詩宴だ」
盆地だし、よく響きそうだねと続けた音は、突如響き渡った鬨の声に掻き消された。
進軍が止まり、亡霊達は見えない大軍を探す。
ナギツは残った天秤を叩き鳴らした。未だ残る鬨の声に地響きが加わる。
四方から声が聞こえ、地響きがする。周囲全てから気配を感じるにも関わらず、大軍の姿は何処にも見えない。亡霊達の戦慄は、音叉の間を跳ね返って木霊した。
彼らは闇雲に矢を放った。四方へ降り注ぐ無数の矢は、当然ナギツには当たらない。
混乱する彼らの間を疾風が通り抜ける。その途端、悲鳴と血吹雪が上がった。音速の木霊に乗り、鎌鼬が走る。血吹雪は幾度も上がり、切り刻まれた首や手足が舞った。
成功
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アイオン・ライラー
兵法、かつて故郷にて傀儡となっていた私であれば、他に従い忠実に己が役目を果たしていただろう。
しかし、生憎今は違う。
私は宇宙海賊。圧政、多勢、命令を蹴飛ばす反骨の化身。ならば為すことはひとつ。
私は敵陣左翼への突貫を敢行する。だが、私の所持する武器ではこの布陣を突破することは叶わないだろう。ならば、奴等の横腹を晒させてしまえばいい。大将首に執着などない。脇に気を取られ薄くなった所より、私以上の腕自慢が陣を突破するだろう。
私の目的は、誰かの傀儡になって哀れにも戦い続ける、この亡霊達に安寧を与えることにある。かつての私と同じ、誰かのための「数字」に成り果てた兵達よ。同じ穴の狢が、今引導を渡してやろう。
アイオン・ライラーは命じられるがまま、意志なく戦う亡霊に過去を想う。故郷で傀儡であった自分を……。
しかし、今は違う。アイオンは自分を鼓舞するため、敢えて口に出す。
「私は宇宙海賊。圧政、多勢、命令を蹴飛ばす反骨の化身」
ならば、為すべき事は一つ。
アイオンは固く目を閉ざすと、ゆっくりと開いた。現れた紫の瞳が美しく輝く。彼女は銃を構え、敵陣左翼へ突貫した。
熱線銃が火を噴き、敵を貫く。亡霊は弓で応戦し、無数の矢がアイオンに降り注ぐ。彼女は器用に矢を避けながら、素早く移動し続ける。敵の数が膨大である以上、立ち止まっては囲まれる恐れがあった。
移動するアイオンを追い、陣形が動く。
アイオンの目的は敵陣の突破ではない。彼女は後から来る腕自慢の為、大将首への足掛かりを作ろうとしていた。彼女は大将首に執着がないのだ。
彼女の瞳は亡霊を見つめる。誰かの傀儡となり、戦い続ける哀れな亡霊に安寧を与える事。それこそが彼女の目的だった。
かつての自分と同じ――。その思いは銃を握る力を強くする。
「誰かのための『数字』に成り果てた兵達よ。同じ穴の狢が引導を渡してやろう」
成功
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御形・菘
陣形も用兵も知らん! 妾は孤高で最強であるからな!
妾は当然、ド真ん中を全力突破…ではないぞ
右腕を高く上げ、指を鳴らし、さあ戦場に鳴り響けファンファーレ!
味方の炎は即消すぞ
はーっはっはっは! 妾が突っ込むのではない、妾に突っ込ませる陽動よ!
燃え上がりながら迫る無数の怪人ども、迫力十分で実に素晴らしい!
撮れ高十分、さあまとめて大歓迎してやろう!
数十人数百人と同時に襲って来ようが、攻撃できるのは最前列の少数よ
移動しつつ迎撃していくぞ
まあ捨て身で組み付かれて、足止めでもされたら危険であろうな、…妾でなければ!
妾の尻尾、完全に封じれるものならやってみよ!
ファンファーレは時々鳴らしていこう
誰も逃がさんよ!
御形・菘は戦場を見下ろす。彼女は陣形も用兵も知らないし、知る必要がないと思っている。己を「孤高にして最強」と考える存在には、陣形も用兵も全く必要がないのだ。
しかし、知らないから使えない、という訳ではない。それ故に、彼女は「中央突破」という策は選ばない。
菘は不敵に微笑むと右腕を高々と掲げ、指を鳴らした。
「さあ、戦場に鳴り響け!」
戦場には不釣り合いとも思える華やかな楽曲が鳴り響き、その音を耳にした亡霊全てが炎に包まれた。悲鳴と苦悶の声が上がる。
無数の敵が燃え上がりながら、人ならざる速さで菘に迫る。炎に照らされ輝く金の瞳を細め、菘は高らかに笑う。迫力十分、撮れ高十分、実に素晴らしい!
「まとめて大歓迎してやろう! 誰も逃がさんよ!」
数十人、数百人と同時に襲って来ようが、菘に攻撃が届くのは最前列の少数に限られる。だが、その場に留まっては背後に回り込まれる可能性がある。菘は移動しながら迎撃を開始した。菘の高笑いが響き、亡霊が幾人も空を舞う。
菘は時おり指を鳴らす。その度に華やかな楽曲が鳴り響き、敵は炎に包まれた。
その身を燃やしながらも、亡霊が捨て身で菘に組み付く。足止めしようと群がる無数の敵に菘の動きが鈍ったかと思われた。だが、彼女の尾は軽々と亡霊を投げ飛ばす。
「妾の尻尾、完全に封じられるものならばやってみよ!」
大成功
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カタリナ・エスペランサ
「うわー、皆もハデにやるなぁ!」
「……そろそろ終わりにしてあげないとね。うん」
《空中浮遊》して上空から《情報収集》。戦場の各所で起きる混乱を見れば、駒として浪費される亡霊たちの冥福を胸中で祈って。
「さぁて、アタシも負けてられないねっ!」
集めた情報を元に猟兵たちの攪乱で陣形に生じた最適ルートを見抜き、UC【失楽の呪姫】で自己強化。乱れた陣形に楔を打ち込むように黒雷と劫火による《範囲攻撃》の嵐で敵軍を薙ぎ払いながらヨウコの元へ突撃します。
最大の目的は後続の味方の為ヨウコまで真っ直ぐ駆け抜けられるルートを切り拓く事です。
「ま、アタシが直々にケリ付けてあげてもいいんだけどね!」
※アドリブ・共闘歓迎です
「うわー、皆ハデにやるなぁ!」
空中に浮かび上がり、眼下の戦場を見つめていたカタリナ・エスペランサは感嘆の声を上げる。戦場の各所で起きる混乱。撃ち抜かれ、切り裂かれ、次々と消費されていく亡霊達。彼女は『駒』でしかない彼らの冥福を胸中で祈る。
「……そろそろ終わりにしてあげないとね。うん」
猟兵たちの攪乱で陣形に生じた隙。最奥へ至る道筋を見抜いたカタリナは、翼を大きく広げる。彼女の周囲に黒い雷と全てを焼き尽くす劫火が現れた。強大な力の代償に、凄まじい倦怠感が襲い掛かる。彼女は気を抜くと膝から崩れ落ちそうな身体を叱咤し、楔を打ち込むように突撃した。
「さぁて、アタシも負けてられないねっ!」
黒雷が落ちる。劫火が燃える。全てを薙ぎ払う嵐の様な突撃は、後続の為のもの。ヨウコまで一直線で駆け抜ける道を切り開く為、カタリナは翔ける。
しかし、亡霊も唯々消費されるばかりではない。正面に躍り出た亡霊は、大きく刀を振り抜き衝撃波を放った。斃された仲間の怨念を載せた攻撃は相殺を許さない。カタリナは急旋回で攻撃を躱すと、すれ違い様にダガーで亡霊の首を落とした。
「ま、アタシが直々にケリ付けてあげてもいいんだけどね!」
最短経路からは外れたものの、未だヨウコへ続く道は生きている。カタリナは道の先を見据え、大きく羽ばたいた。
成功
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香神乃・饗
ここまできたらあと一歩っす!
目標は敵将へ続く道を完全に開ききらせることっす!
今迄の戦いで猟兵は1人でも強いって印象づけられてるかもしれないっす
そこを利用するっす
数には数っす!
香神写しで武器を複製しておくっす
崩れた陣を更に崩すよう大群に向けて打ち込み、猟兵が大群で攻めてきているように装うフェイントをかけるっす
混乱に乗じて死角にまわりこんだりしながら苦無で暗殺して行くっす
直接相手どるのは苦手っすから影から討たせて貰うっす!
敵の攻撃は剛糸で敵をからめとり盾にして身を守るっす
一人で残ってでも討ち倒しきる覚悟を決めて攻めぬくっす
遮蔽物など利用できる地形があるなら身を隠し見つからない様に行動するっす
猟兵達の尽力で亡霊の陣形は崩れ、敵将へと至る道が見えてきた。しかしその道筋は未だ細く、今にも途切れそうだった。疲労と焦りが見え始めた仲間を香神乃・饗は元気に励ます。
「ここまできたら、あと一歩っす! 目標は敵将へ続く道を完全に開ききらせる事っすよ!」
今迄の戦いで、猟兵はたった一人でも十分に脅威であると印象付けられている事だろう。其処を利用する。饗はいっそ場違いと感じる程朗らかな笑顔を浮かべると、愛用の苦無を大量に複製し、念力で上空に飛ばした。
数には数。大軍には大軍。饗は猟兵が大軍で攻め込んで来たかのように装い、空から大量の苦無を亡霊の大軍に向けて打ち込んだ。崩れかけの砂山が水を注がれ更に崩れるが如く、陣形が崩れていく。
空を見上げ周囲を見回し、居もしない猟兵の大軍を探す亡霊。饗はその混乱に乗じ、素早く陣を走り回る。亡霊の死角で鈍く光る苦無は、敵の首を掻き斬り血吹雪を舞わせた。崩れ落ちる亡霊に一瞥もくれず、次の目標目掛けて苦無を走らせる饗。彼はこの場に一人残ってでも、敵を討ち倒しきる覚悟を決めていた。
暗躍する饗に気づいた亡霊が、斃された仲間の怨念を身に纏い高速で走り寄る。亡霊は勢いそのまま大きく刀を振り抜き、衝撃波を放った。饗は剛糸で周囲の敵を絡め取り、自身の前に引き寄せると即座に地に伏せる。凄まじい勢いで飛来した衝撃波は盾となった亡霊を斬り裂き、彼のすぐ真上を通り過ぎた。剛糸が緩み、敵の残骸が崩れ落ち積み重なる。
饗を始末したと思い込み、踵を返す亡霊に死角から苦無が突き立った。
「直接相手取るのは苦手っすから、影から討たせて貰うっす」
血吹雪を浴びる前に飛び退いた饗は小さく独り言ちると、再び地に伏せ身を隠す。同時に目指す先を見据えると、仲間が敵将目指して駆けていく様が見える。道は完全に開かれた。
成功
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第2章 ボス戦
『魔神兵鬼『ヨウコ』』
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POW : 呪法・契約怨嗟
【口から語られる呪詛の言葉】が命中した対象にルールを宣告し、破ったらダメージを与える。簡単に守れるルールほど威力が高い。
SPD : 呪法・剥奪電霊
対象の攻撃を軽減する【電脳体】に変身しつつ、【技能を奪い、自身を成長させる捕食行動】で攻撃する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
WIZ : 呪法・偽狐灯
レベル×5本の【電気】属性の【それぞれ個別に操れる、狐火の幻影】を放つ。
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厚く敷かれた陣形を破り、数多の人垣を乗り越え、猟兵たちは魔神兵鬼「ヨウコ」の前に立った。ヨウコは、積み重なる義勇兵の成れの果てを役立たずと罵ると、猟兵達に向けて傲慢に嘲笑う。
「我に辿り着いた事は誉めてやろ。されど、時を移さず亡霊共が駆けつけよう。主らは挟み撃ち。悲しやなあ、悲しやなあ」
彼らの周囲に亡霊の姿はない。されど遥か遠く、こちらに向かって駆けて来る姿が見える。兵の殲滅よりも将への到達を優先した以上は仕方がないとは言え、時が経てばヨウコの言う通り挟み撃ちとなるだろう。
一人では取るに足りない力も、大量に集まると侮れない力となる。にたにた嘲笑うヨウコは、亡霊の合流まで時間を稼ぐつもりのようだ。
ヨウコは人を弄んで貶める外道である。敵は、亡霊の圧倒的物量で猟兵たちが為す術なく押し潰される様が見たいのだ。
ゆっくりと浮かび上がったヨウコは猟兵たちを見下ろした。
「よいよい、それまでゆるりと遊んでやろか」
御形・菘
うむ、いかにも冷酷かつ卑怯なキャラっぷりが実に良いぞ!
ルールといっても時間稼ぎ、動くな喋るな攻撃するなといった感じであろう?
まったくもってどーでもよい!
覚悟を決めて気にせず突っ込み、全力の左腕で顔面をブッ飛ばす!
はーっはっはっは! お主のような策士気取りの、想定外のボコられ吃驚仰天顔、実にイイ映像であるぞ!
まさか呪詛ガン無視、ダメージ覚悟で即攻撃してくる奴なぞいないと慢心しておったかのう?
邪神たる妾にはさして効かんぞ!
実は当然かなり痛いが、悟らせるようなカッコ悪い真似はせんよ
妾を落とせるほどのナイスな呪詛を、さあ好きなだけ囁くがよい!
時間制限があるのはお互い様、楽しく派手にバトろうではないか!
如何にも冷酷かつ卑怯な性格をしているヨウコに御形・菘は嬉しくなる。敵に個性が際立つ人物像設定が成されてこそ、対立する自身の個性も際立つと言うもの。実に良い。
『敵』として分かりやすいヨウコに喜色を浮かべる菘。そんな彼女にヨウコは傲慢に嘲笑い、呪詛を放った。
「何やら悦ばしい事が在った様子。目出度き哉。さて、主は其のお目出度き顔の儘、其処に在ればよかろ。動かず喋らず地蔵のように」
ヨウコの呪詛は「ヨウコが宣言した規則を破ると苦痛を受ける」という代物で、簡単に守れる規則で在れば在るほど威力が高い。動くな。喋るな。時間稼ぎを目的とした至極簡単な規則は菘に絡み付き、彼女を縛り上げた。
呪詛に捕縛された菘を見て、勝ち誇って嘲笑うヨウコは不敵に笑う菘に気づかなかった。
菘は規則を無視し、損傷覚悟で即座に攻撃に移る。身体を回転させ体重を乗せた全力の左腕が、一直線にヨウコの顔面を突き抜いた。吹っ飛ばされ、砂煙を上げて地面を転がったヨウコは驚愕に目を瞠る。
「はーっはっはっは! お主のような策士気取りの、想定外のボコられ吃驚仰天顔、実にイイ映像であるぞ! まさか呪詛ガン無視、ダメージ覚悟で即攻撃してくる奴なぞいないと慢心しておったかのう?」
敢えて呪詛に真っ向から逆らった菘。視聴者を大切にする彼女は撮れ高の為に身体を張る事に躊躇がない上、余裕綽々の振りが大得意であった。
呪詛による苦痛など微塵も感じさせず高笑いする菘は、邪神たる妾には其の程度の呪詛なぞ効かんぞ、とヨウコを見下す。ヨウコから嘲笑いが消え、憤怒が現れた。
「貴様……!」
「うむ、良い顔だ。さあ、妾を落とせる程のナイスな呪詛を好きなだけ囁くがよい!」
蹌踉めきながらも浮かび上がったヨウコを、菘は尚も挑発する。時間制限一杯まで楽しく派手にバトろうではないか! と呼び掛ける菘にヨウコは舌打ちを返すと、彼女に背を向け天高く舞い上がった。
「ま、待て! 普通この状況で逃げ出すか!?」
「痛みに大層鈍いと思しき邪神様と正面から戦うなぞ愚策よ、愚策。何れ、また遊んでやろ」
捨て台詞を吐いたヨウコは、そのまま菘の視界から消えた。
成功
🔵🔵🔴
カタリナ・エスペランサ
「随分と楽しそうじゃないか。その悪趣味が命取りになるんだから有り難い話だね」
四枚に増えた翼を広げ、嘲りには皮肉で返し。
「この蒼雷は烏滸がましくも神の名なんか騙った報いさ。遠慮なく味わうといいよ!」
使用UCは【天災輪舞】。纏っていた雷の色を変えれば、間合いは遠距離を維持して神殺しの蒼雷を纏った羽による《破魔》《鎧無視攻撃》の《誘導弾》を軸に《空中戦》を展開。
敵の攻撃は高速移動で射程距離の外側を保つ事で封じつつ、もし届くようなら《早業》で展開した《残像》に《オーラ防御》のバリアを被せる事で身代わりに回避。
何度も使える手では無いものの、不意の一撃さえ凌げば後は《戦闘知識》《学習力》で《見切り》ます。
カタリナ・エスペランサは四枚に増えた翼を広げ、空に舞い上がったヨウコを追い掛ける。素早い動きで前に回り込んだカタリナは、嘲笑うヨウコを皮肉った。
「随分と楽しそうじゃないか。その悪趣味が命取りになるんだから有り難い話だね」
「よう動く口よ。油でも舐めやったか」
他人の揶揄を非道く嫌うヨウコから嘲笑いが消える。
同時に飛び退き、睨み合う両者。カタリナの纏っていた雷の色が黒から蒼に変わった。神殺しの蒼雷が激しい雷鳴を響かせる。
「この蒼雷は烏滸がましくも神の名なんか騙った報いさ。遠慮なく味わうといいよ!」
カタリナが大きく羽撃き、蒼雷を纏った羽の散弾を放つ。全てを焼き焦がす無数の羽がヨウコに殺到した。ヨウコは防御に優れた電脳体に変化すると、羽に向かって突進する。あわや衝突という瞬間、急上昇し羽を避けたヨウコは、そのまま急降下しカタリナに詰め寄ろうとした。しかし、カタリナは高速で後退し、ヨウコを近寄らせない。彼女は常に距離を保ち、間合いの外から攻撃してくる。防戦一方のヨウコは苛立ち、舌打ちをした。
何度目かの羽の散弾。突然、ヨウコの口が大きく開き、攻撃を捕食する。焼き焦げ、煙を上げるヨウコの口からカタリナと同じ羽の散弾が放射された。目を見開くカタリナに無数の羽が突き立つ。にたりと嘲笑うヨウコに、空から羽の散弾が降り注いだ。醜い叫び声が上がる。
憐れな姿と成った筈のカタリナは、上空からヨウコを見下ろしていた。彼女は目にも留まらぬ速さで動き、残像を生み出すとオーラ防御の防壁を被せる事で身代わりに使ったのだ。
再びヨウコの口から羽の散弾が飛ぶ。しかし、彼女はその攻撃を最小限の動きで躱した。元は自分の技。不意の一撃さえ凌いでしまえば、見切る事は容易い。
「相手の技を奪って、その技で殺す。本当に悪趣味だね。でも、元々自分の技なんだからさ、簡単に見切れるよ」
「小娘ぇ!」
残念だったね、と微笑むカタリナ。不利を悟ったヨウコは地上目掛けて一目散に逃げ出した。
大成功
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アイオン・ライラー
役立たず…そう切り捨てるならこちらも遠慮はいらないな。
しかし、私の相手はお前ではない。
ヨウコに我が【菫青瞳射光(アイオニック・レイ)】を無数に放ち目眩まし、踵を返すと愛機「ドレッドパイク号」に跨がる。そしてそのままヨウコを振り切りらんとする。しかし奴もそう簡単には逃がしてくれまい。そこで私はコートを脱ぎ、愛機に自動運転を指示する。コートを被せ適当な林道を走らせれば、奴の目も多少誤魔化せよう。それでも無理ならば近くの仲間に任せるさ。
…多いな、まさしく圧倒的だ。私ひとりではどうにもならないだろう。いつまで持たせられるか…実に燃える、これでこそ海賊よ。
さあ来い…亡霊の同胞共よ!
(改変アドリブ歓迎)
「役立たず……そう切り捨てるなら、こちらも遠慮はいらないな」
アイオン・ライラーは、空から舞い降りて来るヨウコに紫の瞳を向けた。その瞳から無数の輝く光線が放たれる。辺りを青白く染める光の攻撃を辛うじて躱したヨウコは、アイオンを睨め付けんとした。しかし、彼女は既に踵を返し、宇宙バイク「ドレッドパイク号」に跨っていた。そのまま走り去ろうとするアイオンを、ヨウコの操る狐火の幻影が追う。
岩陰に回り込んだアイオンは、自動運転状態にしたバイクに自身のコートを被せるとそのまま飛び降り、息を殺す。遠ざかるバイクを狐火の幻影が追ったが、間もなく掻き消えた。
「ふむ、臆病風に吹かれたか。はは、逃げたくば逃げればよかろ。滑稽滑稽! ははは!」
アイオンが逃げたと判断したヨウコは高らかに哄笑し、彼女に背を向け遠ざかっていく。
ヨウコの事は他の仲間が何とかするだろう。アイオンもそのままヨウコに背を向け、走り出す。戦場を走る彼女は冷静に考えていた。ヨウコは想定以上に逃げ回る。このままでは体制を立て直した義勇兵の亡霊に挟み撃ちにされてしまう。――誰かが、防がなければならない。
大量の亡霊を前にアイオンは足を止めた。彼女一人ではどうにもならぬ程の圧倒的な物量が目前に在る。
「いつまで持たせられるか……。だが、実に燃える。これでこそ海賊よ」
アイオンは武器を構えた。
「さあ来い、亡霊の同胞共よ! 時間稼ぎに付き合ってもらうぞ!」
苦戦
🔵🔴🔴
ニニニナ・ロイガー(サポート)
どうも~
支援要請を受けて参りました、UDC職員のニニニナっすよ~
ということで、どんな触手がご入用っすか?
長い触手に太い触手、幅広触手に細触手。
鋸歯つきのゴリゴリ削れる触手にヒトデみたいな手裏剣触手、
ドリル触手に粘着触手に電撃触手なんかも行けるっすよ。
それとも溶解液を吐く触手をご所望っすかね?
麻痺触手に毒触手に石化触手になんなら自白用の催眠触手とか…
後は耐熱耐冷耐衝撃触手に再生触手なんかもOKっす。
マニアックな所だと按摩触手にお肌ピチピチローション触手、
しっとり触手に保温触手や電脳アクセス触手とかも便利っすね。
あ、触手本体は見えないようになってるので、
狂気とかその辺は気にしないで大丈夫っすよ~。
「立場的にはアタシも亡霊さん達と同じ『部下』なんで、いい気分しないっすね〜」
己に従う者達を粗雑に扱うヨウコを見て、ニニニナ・ロイガーは眉根を寄せる。彼女は逃げ回るヨウコの動きを封じる為、不可視の触手を召喚した。ニニニナが「ドビーちゃん」と呼ぶ触手は、彼女の喚び声に応じてヨウコを縛り上げる。
強烈な締め上げに呻き声を上げたヨウコは、舌打ちをすると電脳体に変身する。そのまま触手をすり抜けると口を大きく開き、虚空に喰らい付いた。其の途端、ヨウコの両手が肥大化する。湾曲しながら長く伸びる手は、宛ら触手の様だ。
「え〜、ドビーちゃんのパクリっすか〜?」
直後、ニニニナに向かってその触手が伸ばされるも、彼女に届く前に動きが止まる。ニニニナを縛り上げようとするヨウコの触手を、不可視の触手が絡め取ったのだ。
拮抗し、身動きの取れなくなったヨウコにニニニナは拳銃を向ける。
「普通の拳銃が効くか分かんないっすけど、物は試しっす!」
「ぎぃ……! おのれ、小癪な!」
発射された銃弾はヨウコの身体の中心に吸い込まれ、其処に大きな穴を開けた。ヨウコは即座に己の手を元に戻し、不可視の触手から逃れると大きく飛び退く。電脳化されていた身体が穴を塞ぎながらゆっくりと元に戻った。しかし、銃弾が貫いた身体の中心は映像が乱れているかの様に歪んでいる。
「ふん、随分と忌々しいモノを飼って居やる。……主と遊ぶは次の機会としよ」
再び電脳体に変身したヨウコは、えっ、また逃げるっすかー!? と叫ぶニニニナを無視し、空中に放電する。激しい発光に彼女が目を閉じた瞬間、ヨウコは背を向け逃げ出した。
成功
🔵🔵🔴
護堂・結城
容赦に程遠い存在みたいで重畳
逃げて隠れて口だけ達者、小物感が否めないがまぁ…外道は外道だ、抹殺あるのみ
【POW】
「大口叩く割に逃げ回るのが納得いかねぇんだよなぁ」
ヨウコが呪詛の言葉を紡ぎ切る前に声に【衝撃波】を載せて【早業・先制攻撃】で妨害
『雪見九尾の夢幻竜奏』を発動し風雷の鎧を纏って【属性攻撃】を付与
氷牙を突撃用の巨大ランスに変更して【空中戦】だ
「音さえ置き去り、空でも地上でも逃がしはしねぇ」
「だから安心して…死の恐怖に怯えてくれや?」
打ち合うたびに【生命力吸収】し【恐怖を与える】
逃走しようとした瞬間に紫電を纏い最高速度で【怪力・ランスチャージ】だ
「中途半端に逃げ隠れする心構えが命取りだ」
「ええい、亡霊共はまだか。遅いわのろまめ」
逃げ回るヨウコは空に浮かび上がり、苛立たしげに遠くを見遣った。この期に及んで尚、亡霊達に悪態を吐くヨウコを下から眺め、護堂・結城は鼻を鳴らした。
「大口叩く割に逃げ回るのが納得いかねぇんだよなぁ」
逃げて隠れて正面からは戦わず、口だけは達者。部下を使い捨ての駒として扱い、即座に役立たずと切り捨てる。敵は『容赦』や『手加減』には程遠い存在のようだ。重畳である。軍を率いる統率者の癖に小物感が否めない点は残念だが、外道は外道。結城の目が鋭さを帯びた。
「外道は抹殺あるのみ」
「なんと、また来寄った。猟兵とは小虫の様に厄介者よ。払っても払っても寄って来よる。主は……」
「黙れ!」
見上げる結城に気づいたヨウコが口を開く。敵が呪詛の言葉を紡ぐ前に、結城は咆哮した。衝撃波を伴った音速の攻撃はヨウコを天高く吹き飛ばす。
ヨウコが体制を立て直すより早く、お供竜の氷牙が突撃用の巨大ランスにその身を変化させた。同時に、結城の全身がお供竜を模す兵装で覆われる。彼は自身と巨大ランスに風雷を纏い、ヨウコを追って天高く飛翔した。
目にも留まらぬ速さでヨウコに肉薄した結城は、素早くランスを突き出す。ヨウコは何処から奪い取った技能か、自身の両手を盾に変化させてそれを防いだ。二人の周囲に激しい風が起こり、稲妻が走る。
「音さえ置き去り、空でも地上でも逃がしはしねぇ。だから安心して……死の恐怖に怯えてくれや?」
凄惨な笑みを浮かべた結城は、徐々に速度を上げながら武器を打ち付けていく。打ち合う度に力が抜ける感覚に襲われたヨウコは、得体の知れない恐怖に慄いた。
ヨウコが逃げの体勢に入った瞬間を結城は見逃さない。彼は紫電を纏い、最高速度で突進した。速度も乗った渾身の一撃は、盾諸共ヨウコを刺し貫く。ヨウコは叫び声を上げる事すら出来ず、そのまま宙に消えた。
「中途半端に逃げ隠れする心構えが命取りだ」
結城は背後を振り返る。ヨウコを倒した事で、呪術で従わされていた義勇兵の亡霊達も消えた様だ。戦いは終わった。
大成功
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第3章 日常
『奉納相撲』
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POW : 飛び入り力士として土俵に上がる。
SPD : 露店を手伝う。あるいは自分で店を出す。
WIZ : 飲み食いしながら相撲を見物する。
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見事、魔神兵鬼「ヨウコ」を討ち取った猟兵たち。狙われていた河港町には何の被害もない。町の皆は大喜びで彼らを迎え入れた。
町では丁度「奉納相撲」が行われていた。オブリビオンの襲来により中止となっていたのだが、猟兵たちの活躍で開催できる運びとなったのだ。
社寺の境内には大きな土俵が設置され、逞しい身体の男衆が取組を行っている。「奉納」とは言うものの、飛び込みで相撲に参加する者もおり、和やかな雰囲気だ。時折、女性の参加者も見受けられる。
土俵の周囲には観覧席、そしてその周囲には露店が建ち並ぶ。露天の間を浴衣姿の子ども達が小走りで走り抜ける。彼らの手には風車。どこからかお囃子も聞こえてくる。平和そのものの風景だ。
町年寄が町を代表し、猟兵たちに言う。
「毎年恒例の祭りの様なものなのです。猟兵の皆様もぜひ楽しんでいってください。この度は本当にありがとうございました」
猟兵たちは幾度も頭を下げる町年寄をやんわりと制止し、各々祭りへと繰り出した。
アイオン・ライラー
無事に仕事が終わるとやはり気分がいいな。そのうえ宴か。渡りに船だな…。
今回は随分と体を張ったからな、英気をしっかり養わせてもらおう。
……ただ、私はあまり人混みは好まん。適当に飲食物を頂いて、手頃な木の上にでも陣取らせてもらおうか。
……うむ、ここなら相撲もよく見える。
そういえばこれは奉納する相撲なのだったか?なら派手な方がよいだろう。こういうときこそクリスタリアンの見せ場に他ならない。
天に向かい、我がUC【菫青瞳射光(アイオニック・レイ)】を放ち、それぞれをぶつけ弾けさせる。…どうだ、花火の真似事だ。
相撲を肴に、酒を一口。…勝利の美酒もうまいもろらな…んふふ。
アイオン・ライラーは、露店の建ち並ぶ通りを気分良く歩いた。無事に仕事を終えた上、宴にも参加出来るとは渡りに船である。しかし、彼女は人混みを好まない。美味そうな団子と徳利を頂くと、喧騒を避けて早々に木の上に陣取った。
「今回の仕事では随分と体を張った。しっかりと英気を養わせてもらおう」
眼下では男衆が組み合っている。大柄な者同士、迫力のある取り組みだ。思わず魅入ってしまったアイオンは妙案を思い付いた。奉納する相撲ならば、派手な方が良いだろう。こういう時こそクリスタリアンの見せ場に他ならない。
アイオンは天に向かい、幾度も紫の瞳を光らせる。無数の輝く光線が天に走り、ぶつかり合い弾けた。美しく輝く光の粒が空を美しく彩る。
「わ〜花火だ!」
「綺麗だね〜」
子供だけに留まらず、大人も皆空を見上げ歓声を上げた。
アイオンは人々の嬉しげな声と迫力ある相撲を肴に、徳利を傾ける。喉を滑り落ちる辛口の美酒は臓腑に染み渡り、彼女の色白の頬を染め上げた。
「……勝利の美酒もうまいもろらな……んふふ」
大成功
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御形・菘
妾は露天巡りをしつつ、子どもたちと遊ぶとしようかのう
飛び入りで相撲とやらに参加しても面白いが、たしかルールでは土俵に膝がついたりしても負けなのであろう?
妾は接地面積の点で、割と規定違反なのでの~
はっはっは、どこの世界でも子供たちは笑顔が一番、元気なのが最高よ!
肩車をしてやろう! 身を伸ばして、ものすごく高い高~い!
そーら、皆身体や尻尾に掴まってくれ! 腕にも抱えて、纏めて運んでやるぞ!
あっこら、角を掴むでない!
出店で、お主らお勧めの美味いものはあるかのう?
今回限りであるからな、妾がこっそりおごってやろう!
親にはナイショにしておけよ? その代わり、妾と一緒に美味しく食べようではないか!
歓声を上げて走り寄って来た少年を、御形・菘は笑いながら抱き上げた。
「はっはっは、どこの世界でも子供は笑顔が一番、元気なのが最高よ!」
少年を自身の首の付け根に跨らせた菘は、肩車をしてやろう! と言うなりその身を天高く伸ばした。
「ものすごく高い高~い!」
「うわぁ~!」
経験した事も無い高さに、少年は興奮し切った声を上げる。菘が少年を下ろすや否や、僕も私もと大勢の子供達が群がった。小競り合いが始まらぬ様上手く捌きながら皆を肩車した菘は、満足げな子供達を露店に誘う。
目を輝かせた子供達は菘の手を引き、走り出そうとした。躓いた幼い少女を軽々と抱き上げ、肩に乗せた菘は彼らを制止し両手を広げる。
「そーら、皆身体や尻尾に掴まってくれ! 腕にも抱えて、纏めて運んでやるぞ!」
殺到する子供達を次々と身体に乗せ、彼女は大勢の子供と共に祭りに繰り出した。
角を掴むやんちゃ坊主を注意しつつ、露店を巡る菘。彼女は露店を覗き込みながら、お勧めを尋ねた。口々に自分の好物を叫ぶ子供達。その一つ一つに相槌を打ち、顔を綻ばせた菘は大きく頷く。
「よし! 今回限りであるからな、妾がこっそりおごってやろう!」
子供達の大歓声が上がる。菘は嬉しそうな声が収まるのを待ち、ただし親にはナイショにしておけよ? と人差し指を口元に当てた。『秘密の約束』に子供達は頬を染めて嬉しそうだ。
団子や飴細工を買って貰った子供達は食べるに忙しく、束の間の静寂が流れる。そこに土俵から取組の音が聞こえた。
菘の腕に抱かれ、飴を舐める少女が問い掛ける。
「邪神様はお相撲しないの?」
「それも面白いだろうが、妾は土俵に乗った時点で負けてしまうのでな」
確か相撲の規定では足の裏以外が土俵に着いたら負けであろう? 妾は接地面積の点で割と規定違反なのでの~、と笑う菘に、子供達も大笑いだ。
「じゃあ、邪神様! 俺達と相撲しようよ! 倒された方が負けね!」
「む、妾に勝負を挑むか! よかろう、受けて立つ!」
地面に描かれた歪な土俵で行われた彼らの相撲対決は大いに白熱し、日が暮れるまで歓声が途切れることがなかった。
大成功
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