スチームダンジョン・エクステンション
「皆さん、本日も集まってくれてありがとうございます! じゃあ早速説明しますね!」
木箱を三つ積んで作った台の上に立ち、シーカー・ワンダーは肩掛けカバンからメモ帳を取り出した。
アルダワ魔法学園にある学園迷宮が、急速に機械化され拡張しているとの情報が入りました。
調べたところ、原因はオブリビオン『ガジェッティア教師『ジーズ・ワエムット』』がフロアボスの座についたため。アルダワ魔法学園の教師だった彼は、自らの技術と迷宮に巣食う『ホムンクルスの盗賊』を生徒役に据え、授業と称して迷宮を機械化させているらしい。
迷宮内はスチームパンクな内装の蒸気機関迷宮と化し、ホムンクルスとガジェットの量産を繰り返している。放置すれば、一大勢力を築き上げてしまう可能性がある。
そこで今回は、迷宮内のオブリビオンの殲滅と、迷宮の稼働停止をお願いしたい。
「機械化されている以上、迷宮を動かす動力部分があるはずです。多分、ジーズ・ワエムット本人が守っているんじゃないかなーと思います」
また、迷宮内部はオブリビオンの他、自立して侵入者を迎撃する蒸気ロボットがうろついており、ホムンクルスやジーズ・ワエムットと連携して戦闘を行う。
ロボットは身長3メートル、モノアイで、背中や四肢から蒸気を噴出して肉弾戦を仕掛けてくる。特に油断ならないのがホムンクルスたちと一緒に現れた場合で、大勢のホムンクルスと複数体のロボットを相手することになる。一人で相手するのは厳しいだろう。
「それともうひとつ。迷宮に行く途中に、蝋で出来た温泉のトラップがあるらしいので、そっちの調査もお願いします。美肌にいいとか言う噂が流れてるんですが、入った生徒が蝋人形にされて連れ去られているらしく……」
迷宮の主となったジーズ・ワエムットは、少々スケベな性格をしているらしい。まさかとは思うが、実際に被害が出てしまっているので、調査とトラップの解除をお願いしたい。
「あ、俺の協力必要なら言ってくださいね。戦えないけど、サポートするぐらいなら出来ますから。それじゃ、よろしくお願いします」
鹿崎シーカー
ドーモ、鹿崎シーカーです。スイカと桃が美味しい季節。
●舞台設定
ガジェッティア教師『ジーズ・ワエムット』によって機械化された、学園迷宮のひとつです。スチームパンクな内装で、そこかしこに生えたパイプから絶えず蒸気が吹き出しています。迷宮内の温度・湿度は共に高く、蒸気のせいで視界が少し悪いようです。
ホムンクルスや蒸気兵器の生産もしていて、動力はフロア最奥のボスの座に隠されています。オブリビオン以外にも蒸気ロボットが徘徊しているようです。
●第一章『極楽? 蝋温泉』(冒険)
ダンジョンの道中にある温泉は、とても気持ちよく肌にも良いと評判です。
しかし、実態はドロドロに溶けた蝋であり、油断して入った生徒を蝋人形にして連れ去ってしまいます。トラップの実態を探り、解除をお願いします。行動次第では……?
●第二章『ホムンクルスの盗賊』 (集団戦)
迷宮の奥で量産され、自我を持ったホムンクルスたちです。個々の能力は低いですが数が多く、連携して攻撃してきます。魔法の他、迷宮で作られた蒸気の武器をフル活用し、蒸気ロボットとも連携します。
彼女たちを打ち倒して、迷宮最奥に向かってください。
●第三章『ガジェッティア教師『ジーズ・ワエムット』』 (ボス戦)
生前は学園の生徒として戦い、引退後は教師として多くのガジェッティアを育てた男。オブリビオン化したことで学生時代の肉体と教師時代の技術を併せ持ち、ホムンクルスを生徒として授業がてら迷宮の増築を繰り返しているようです。
彼を倒し、フロアボスの座に隠された動力源を停止させてください。
●その他
アドリブ・連携を私の裁量に任せるという方は、『一人称・二人称・三人称・名前の呼び方(例:苗字にさん付けする)』等を明記しておいてもらえると助かります。ただし、これは強制ではなく、これの有る無しで判定に補正かけるとかそういうことはありません。
途中参加歓迎。8人までならチーム参加もOK。
サポート役として、シーカー・ワンダー(ファーフロムホーム・f00478)を使うこともできます。その場合はシーカーのユーベルコードを確認の上、プレイングで指名してください。(指名しなくてもマイナス補正はかかりません)
(ユーベルコードの高まりを感じる……!)
第1章 冒険
『極楽?蝋温泉』
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POW : あえて入って囮になる
SPD : 引っ掛かった生徒の救出
WIZ : トラップの実態を探る
👑11
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ショコラ・リング
ボク・貴方・名前+さん
なんだか人形云々以前に大火傷してしまいそうなトラップでございますね……(指先だけちょんちょんと突く様に温度を確かめてみて)
まず温泉の原料が蝋であるならば、溜まっている蝋を溶かし続ける機構や新しい蝋の供給機構があるのではないかと思うのです
犯人が被害者を回収する事を考えると解除機構は温泉の近くでしょうか
温泉の周りをぐるっと回りながらそれらしきものを注意深く探してみるのです
スイッチなどあればいいですが、無ければ最悪【神の杖】で源泉の破壊や温泉の底を破壊し蝋の排出を試みます
……こういう時妙に背後が気になるといいますか、調べている最中に後ろから押すなんてベタな事しないで下さいませ?
ニィナ・アンエノン
なるほど美肌温泉。
めっちゃつやつやつるつるになるって、そう言えばもっぱらの噂!
まぁ蝋人形になってるんだから当然だよね☆
興味はあるけど、ここは一つトラップ解除と行きますか!
と言ったものの、にぃなちゃん特にそう言う能力ないんだよね。
とりあえず【情報収集】かな?
どこから蝋が湧いてるとか流れてきてるとか、まずはそこが大事。
構造が把握できたらあと思いつくのは二つ。
蝋を溶かしてる熱源か、蝋を溜めてる温泉そのものをどうにかすればいいんだよね!
【メカニック】知識で何とかできる熱源ならそれで解除してもいいかな。
冷えた蝋には入れないし。
そうじゃなかったら最後の手段!
ミサイルで温泉全部【吹き飛ばし】祭りだー!
テフラ・カルデラ
ミリアさん(f16609)と同行
アドリブ可
蝋温泉の調査…よりはわざと蝋人形にされて黒幕の元へ行くことにします
そのためにミリアさんのミトンさんが頼りになります!
べ、別に蝋温泉に入って固まりたいとかではないですからねっ!!
蝋温泉に入ると足元から固まっていきます…身体の芯まで蝋になるような気分です…
と…ゆったりと浸かっいる間に蝋の間欠泉が!?これがトラップ!?
入っていた他の人を巻き込みつつ、ミリアさんもわたしも蝋を浴びてドロドロに固められてしまう…
その際にミトンさんから紐のようなものを取り付けられて人間蝋燭のようで…これがミトンさんの悪戯なのですね…
ミリア・プレスティール
テフラさん(f03212)と行動
「それじゃあ後のことはお願いね、ミトン」
蝋人形になってしまう温泉の実態をつかむため、テフラさんとあえて温泉に入るミリア。蝋人形にされてさらわれた後は相棒の手袋型UDC『ミトン』に後を付けてもらい、救出されるつもりのようである。
温泉に入ると徐々に足元から固まり身動きが取れなくなる。すると突然蝋の間欠泉が噴出し、頭から蝋が降りかかる。頭まで固まる寸前にミリアの頭頂部に『ミトン』が何かを取り付けた。
どうやら紐のようなものを取り付けたみたいで、固まり切ったミリアはまるで人型の蝋燭のようになる。いたずら好きの『ミトン』の遊び心らしい…
※アドリブOK
ナザール・ウフラムル
【WIZ】
蝋人形に、なあ……。連れ去ってどうしようってのかね。ホムンクルスの原料の供給源か?って、なんだ助平かよ……。(軽蔑してる顔)
蒸気対策は【属性攻撃】(風)と(氷)を応用して、熱気を遮断しながら視界を遮る蒸気もどかす。
【空中戦】スキルで空中を移動しながら、蝋の加熱元の捜索かね。偽装温泉の底面にあるんだと、ぶっ壊すのも一苦労なんだが……。
UCで雷を雨の如く降らせりゃ壊せるか?
――我、希うは〈雷〉の〈雨〉。破壊の権化たる暴威!
蛇塚・レモン
アドリブ・連携◎
一人称:あたい
二人称:あなた
三人称・ファーストネーム+~くん・~ちゃん
<POW>
ここは敢えて囮になって、敵の中枢に潜り込むよっ!
そこにはきっと蝋人形にされた生徒たちがいっぱいいるはず!
目の前の生徒たちを窮す津するのも大事だけど、連れ去られた生徒達だって救出しないとっ!
学園のスクール水着を服の下に着用済み
服を脱いだら真っ先に温泉へ飛び込むよっ!
わぁ~あったかくて気持ちいいね~っ!
何か泥パックみたいにドロドロしていて……って、固まる~っ!?
何も知らない振りをして連れ去られるのを待つよ
連れ去られたら脱出!
UCであたいや生徒の体中に付いた蝋を粉砕、身体の自由を取り戻す
さぁ、早く逃げて!
もうもうと、白い湯気が立ち込めていた。
視界を閉ざす純白と、微かに香る甘い匂い。空へと立ち上る熱い濃霧を―――。
「ふっ!」
SLASH! かぎ爪じみた風が真っ二つに引き裂いた。
割れた湯気の目前、右腕を振り下ろした姿勢のナザール・ウフラムル(草原を渡る風・f20047)が身を起こすと同時、彼の左右を蛇塚・レモン(叛逆する蛇神の器の娘・f05152)とニィナ・アンエノン(スチームライダー・f03174)が駆け抜ける。
ナザールの前に出たレモンは琥珀の両目を輝かせ、興奮して両腕を広げた。
「すごーい! 広ぉ―――――いっ!」
歓声を上げるレモンの眼前に、一面白の巨大温泉が広がっていた。
熱く、どろりとした質感を持つ水面。溶けたキャンドルで満たされた広い温泉を見回し、ニィナはにへらっとした笑顔で口走る。
「なるほど、美肌温泉。めっちゃつやつやつるつるになるって、そう言えばもっぱらの噂! まぁ蝋人形になってるんだから当然だよね☆」
呑気に言い放つニィナ。温泉全体を見渡したショコラ・リング(キマイラのアーチャー・f00670)は、渋い表情で接近。
「蝋で固めた肌が美肌かはともかく……なんだか、人形云々以前に大火傷してしまいそうなトラップでございますね……」
ショコラは温泉のふちに屈み、温泉を指でちょんちょんと突く。たちまち白く固まる彼の指先を、後ろからテフラ・カルデラ(特殊系ドMウサギキマイラ・f03212)が覗き込んだ。
テフラの頬がほんのりと紅潮し、ショコラの人差し指をうっとり見つめる。
「おー……本当に固まるんですね。わたしも固ま……」
不意にショコラが背後を振り向いた。その視線は誤魔化すように顔を背けるテフラをすり抜け、テフラの後方に浮遊する一組の巨大ミトンに向けられる。
青白い生地に、手首で蝶結びにされたリボン。手袋型UDCのミトンは、ショコラのジト目を受けてほんの少し後退した。
「……こういう時、妙に背後が気になるといいますか。調べている最中に後ろから押すなんてベタな事はしないで下さいませ?」
「ミートーンっ? 駄目だよ?」
ミトンの手の甲に触れ、ミリア・プレスティール(守護霊持ちのいじられ女子・f16609)が釘を刺す。
不満げな雰囲気をかもしつつ引き下がる守護霊に溜め息を吐き、ミリアは数歩進み出た。
再度湯気の昇り始める温泉に目を凝らすと、自分たちの居る場所から少し離れた場所に、蝋固めにされた人の手が見て取れた。数にして三。ミリアが神妙な面持ちで呟く。
「やっぱり……何人か捕まってしまっていますね。アルダワ学園の生徒さんなんでしょうか」
「そうでしょうね。あんな慌てた様子で固まれるなんて羨ま、いえ、ごほん」
せき払いをするテフラ。
一方、ミリアと同時に温泉の蝋人形を見つけていたレモンは、服の肩に手をかけた。
「なんにせよ、まずはあの人たちを助けないとね! ナザールくん、あたい行ってくるから、よろしくっ!」
「行くってお前、どこに……おいっ!?」
ナザールがレモンから目を背ける。黄色の軽装が宙を舞う下、服を脱ぎ捨てたレモンはスクール水着姿になっていた。
「それじゃあお先っ!」
走り出したレモンがジャンプし、蝋の温泉へとダイブ! SPLASH! 派手な飛沫がショコラにかかる。ふるふると首を振ったショコラは、驚いて立ち上がった。
「レモンさん!?」
驚き半分、心配半分の表情で湯気に目を凝らすショコラ。だが、当のレモンは背泳ぎの姿勢で悠々と岸から離れていく途中であった。
「わぁ~あったかくて気持ちいいね~っ! 何か泥パックみたいにドロドロしていて……」
レモンが両手で蝋をすくう。その時、彼女の手の平から手の甲、手首が真っ白に染まった。蝋のコーティングが始まったのだ!
「って、固まる~っ!?」
蝋に浸かった背中や腹、足がどんどん蝋に包まれていく。蝋人形化しながら温泉沿岸から離れるレモンを遠目に、ナザールは呆れ顔でぼやいた。
「何やってんだ。迂闊に突っ込んでどうしようって……ん?」
ふと、彼の視界がテフラとミリアの後ろ姿を捉えた。テフラはうずうずと体を揺すり、ミリアの手をぎゅっと握った。
「一人だけ固まるなんてずるっ……いえ、レモンさん一人だけを行かせるわけには参りません! ミリアさん、行きましょう!」
「はい! それじゃあ後のことはお願いね、ミトン」
次の瞬間、手を振るミトンを置いて、テフラとミリアが温泉に飛び込んだ。
溶けた蝋の中を泳いでいく二人を見送り、ニィナは目を輝かせながら拍手する。
「おおー! みんなチャレンジャーだねー!」
「なんか変な台詞が聞こえなかったか? まぁいいけどよ」
テフラの発言を頭の片隅に追いやり、ナザールが言う。
「さて。こっちはこっちで、コイツをどうにかしないとな」
「オッケー! ここは一つトラップ解除と行きますか! と言ったものの」
ニィナは緩い表情で後頭部を撫で、えへへと笑う。
「にぃなちゃん特にそう言う能力ないんだよね。とりあえず情報収集かな?」
指先から蝋を剥がしたショコラが頷く。
「ですね。温泉の原料が蝋であるならば、溜まっている蝋を溶かし続ける機構や、新しい蝋の供給機構があるのではないかと思うのです。犯人が被害者を回収する事を考えると解除機構は温泉の近くでしょうか……」
「蝋の加熱元な。温泉の底面にあるんだと、ぶっ壊すのも一苦労なんだが……とりあえず、空から探ってみる」
ナザールは両膝を折り曲げ、跳躍した。
温泉の上空に飛翔した彼は、空に足場があるかの如く着地。そのまま虚空を歩きつつ、温泉を上から走査していく。
残されたショコラは、ニィナを向いた。
「では、ボクは右回りで探索してみます。ニィナさんは、左回りでお願いできますか? 反対側で落ち合いましょう」
「おっけー! にぃなちゃんに任せなさーい!」
ニィナはショコラと別れ、温泉の縁に沿ってスキップ。
他方、蝋温泉に飛び込んだテフラは、ほっこりと
「確かにあったかくて気持ちいいです……身体の芯まで蝋になるような気分です……」
「そうですねー……これで拉致されるとか無ければ、じっくり浸かっていたいんですけど……」
のんびり会話しているが、二人の体はほぼ蝋で固められている。
そして、レモンに至っては口元から上を残して完全に蝋人形状態。塗装前のフィギュアめいて、真っ白な人形と化していた。
レモンは固まりかけの顔を必死で動かし、生徒の下へと近づいていく。
(もうちょっと……もうちょっと……!)
図らずも、生徒の蝋人形と一緒に温泉の中央へ近づいていくレモン、テフラ、ミリア。
他方、温泉の反対側で、ナザールがニィナたちと合流。
ニィナはナザールが着地するなり、二人に向けて首を傾げた。
「あった?」
「ボクの方は何も。ナザールさんはどうでしたか?」
「それらしい機械は見当たらなかった。だが、収穫はあった」
「ホント!?」
ニィナの目が輝いた、ちょうどその時。鈍い震動が地面を揺すり始めた。
震動に足を取られよろめくショコラとニィナを、わずかに宙に浮いたナザールが受け止める。ナザールに身を預ける格好で、ショコラは困惑。
「地震ですか? なんで突然……!」
「……なんか、嫌な予感がするぞ。俺だけか?」
ナザールの眉間にシワが寄った。
変化は地響きと共に、温泉の方にも現れる。
温泉の中心から半径20メートルほどの範囲に、気泡が激しく湧き始めたのだ。範囲の中には、蝋人形にされた生徒たちと温泉に飛び込んでいった三人!
ニィナの笑顔がわずかに引きつる。
「あれ? もしかして、まずいっぽい?」
赤いハートのタトゥーシールに冷や汗が一条垂れた、次の瞬間。
蝋が間欠泉めいて天に噴き上がった! SPLAAAAAASH!
「なっ……」
「わー……」
思わず声をを上げるショコラとニィナ。三人が唖然と見上げる中、生徒の蝋人形ごと空中に打ち上げられたレモンは全身に黄金色のオーラをまとった。
「くううううっ! 蛇神様ーっ!」
レモンのオーラが上空に伸び、白い大蛇の姿に変化。大蛇は両目を光らせていななき、不可視の鎖を三本放った。
透明な超自然の鎖は、女生徒の蝋人形に一本ずつ命中。そのままハンマー投げのハンマーめいて振り回す!
「ショコラちゃん、ニィナちゃん、ナザールくん! パースッ!」
レモンが叫ぶと同時に、THROW! 投擲された三つの蝋人形。硬直していたショコラたちは我に返り、一人につき一体蝋人形をキャッチする。
「よっし! 蛇神様、お願いっ!」
「SHRRRRRRRRR!」
白蛇の両目が再度輝き、レモンを固めていた蝋を破壊!
直後、ミトンがレモンの足をつかみ、蝋の間欠泉に叩きつけた。
「ごふっ!?」
一瞬にして蝋人形へ逆戻りするレモン。ミトンは彼女の頭にもヒモをつけると、テフラとミリアにも同様にヒモを接着。
人間蝋燭めいた姿になった三人を見下ろし、ミトンは満足げに両手を払った。ミリアたちを捕らえたまま一気に引き下ろされる間欠泉! 温泉の中に引きずり込まれた主を追って、ミトンも蝋温泉に突っ込んでいく。
そして、蝋温泉は沈黙した。
残されたのは、少女の蝋人形を抱えたショコラ、ニィナ、ナザールの三人。
彼らは、潤滑油の足りないカラクリめいた動きで互いの顔を見合わせた。
「……どうする?」
「……どうしましょう……」
「……どうするもこうするも……まあ、打つ手がないってわけでもねえが」
ショコラとニィナの視線がナザールに集まる。ナザールは、かぎ爪型アーマーリングを嵌めた右手人差し指で、温泉の一角を指差した。二人がそちらを振り向くと、蝋の水面の一部がゴポゴポと気泡を上げている。
ナザールが言った。
「上から見てて気づいたんだが……この温泉、ところどころ泡立ってんだ。沸騰してるのとはまた違う、こう……なんだ。下から空気が上がってきてるような、そんな感じの」
泡立つ水面を見ていたショコラが、察した表情でナザールに向き直った。
「もしかして、あれが……?」
「可能性は高いだろ。周りにゃ何もなかったんだ、だったら後は底しかねえ。ぶっ壊して、底ぶち抜けばなんとかなるだろ」
ショコラの表情が不安そうなものになる。彼は小さな声で言った。
「でも、いいんですか? 失敗したら、レモンさんたちまで……」
「あ、それは大丈夫じゃないかなっ」
今度はニィナが、温泉の中央を指差した。
「確か、みんなはあそこから入ってったよね。じゃあ、あそこ以外ぶっ飛ばしちゃおう! それなら平気でしょ?」
ニィナに笑いかけられたショコラは、あごに手を当てて思案。
やるべきはトラップの解除。加えて、仲間が巻き込まれている。解除方法は現状不明。拉致された三人の行方がわからぬ以上、今は一刻の猶予も無い。
ややためらいつつも、ショコラは首を縦に振った。
「…………わかりました。それで行きましょう」
「決まりだな」
三人は蝋人形と化した少女たちを足元に置いた。
ナザールは再度ハイジャンプを決め、滞空。アーマーリングを嵌めた右手を空に掲げる。
地上では、ニィナがバックパックを下ろし、真鍮色のリボルバー型射出装置と並べて置いた。
「にぃなちゃんデバイス展開っ! ミサイルランチャー!」
ガシャガシャと変形したバックパックがランチャーと合体し、巨大なミサイルポッドに変わった。後方では、弓を下げたショコラが片膝をついて合図を出した。
「いつでも行けます!」
空中のナザールが頷き、かぎ爪のついた二本指を空にかざしてかき混ぜる。青い空に暗雲渦巻き、稲妻が走り始めた。ナザールは低い声で呪文を唱える。
「我、希うは〈雷〉の〈雨〉。破壊の権化たる暴威!」
「れっつぱーりぃっ! 温泉に向かってぇ……」
ニィナがミサイルポッドを持ち上げる。自動的に弾頭装填!
ナザールは右腕を振り下ろし、ニィナはポッドの引き金を引いた。
「堕ちろ、雷霆!」
「ファイヤ―――――――っ!」
CABOOOOOM! 雨の如き雷と無数のミサイルが蝋温泉へと降り注ぐ! ミサイルは雷電の豪雨の隙間を潜り、水面の着弾して連鎖爆発を引き起こした。
BOOOM! BOOOM! BOOOM! BOOOM! BOOOOOOM!
温泉を覆う絨毯爆撃。白い水面が嵐にさらされた海面めいて激しくうなり、跳ね飛んだ蝋が蒸発して消えていく。
つんざく破壊音を聞きながら、弓を手に片膝立ちしたショコラは祈る。彼の法衣がホタルの群れじみた光に包まれ、輝き始めた。
「捧げるは我が祈り、矢に纏いたるは神の怒り。全てを薙ぎ払う破壊の果てに創造を!」
両目を見開き、ショコラは後方に大ジャンプ! 空中後方回転を決め、虚空で光の弦を引き絞る。手の平から伸びた黒い矢が、炎じみて禍々しく燃え立った。
「メテオアロ――――――――!」
SHOOOOT! 黒矢が放たれ、連鎖爆撃を食らう温泉へと一直線に飛び込んでいく! 温泉の表面を貫いた矢は煮え立つ蝋を突き抜けて、温泉の底で高熱を発する蒸気機械に命中。直後!
KRA-TOOOOOOOOM!
蝋が全て噴き上がり、凄まじい地鳴りが辺りを揺らす。
ニィナはよろめきながらも射線を上向け、ナザールは上空の雷雲を指差してかき混ぜるように腕を動かす。
ランチャーにミサイル再装填! 雷雲が稲光をチャージして発光!
「これで……終いだ!」
「ふぃにーっしゅ!」
ナザールが右腕を振り下ろし、ニィナがミサイルを発射!
巻き上げられた蝋は下からミサイル、上から雷の挟撃を受け、CABOOOOOOM! 空中で爆発四散した。
蝋の飛沫が温泉の外縁に降り注ぐ中、ショコラがバク宙を繰り返して着地。不快そうな顔で髪を払いながら下降するナザールと、達成感に伸びをするニィナの下へ駆け戻った。
「お二人とも! ご無事ですか!?」
「大丈夫だ。……いや、割と大丈夫じゃないか……?」
言いながら、ナザールは蝋で固まった髪の毛を数本引き千切る。ニィナはポッドを叩き、からからと笑っていた。
「あははははは! いやー、派手にやったねえ! それで、えーっと……」
ニィナが蝋の消えた温泉を見下ろす。
そこはすり鉢状になった、巨大な蒸気機械の器であった。
クレーターを埋め尽くすのは排気系のパイプに、金網を取りつけたヒーターや配水系と思われる機構。ショコラの矢で消し飛ばされた場所や、ナザールの雷、ニィナのミサイルが命中したらしき部分は壊れ、黒い炎と水蒸気を吹く。
そして温泉の最底辺には、閉ざされた巨大なハッチが設置されていた。
「なんか、秘密基地みたいでカッコイイねえ!」
「ニィナさん……」
思わず浮いた呆れ顔をぬぐい去り、ショコラが改めて温泉だったクレーターを検分。
「スチームパンク、と言いましたか。見たところ、これも蒸気を動力にしているのでしょうか」
「ってーと、やっぱり元教師だか言うオブリビオンの仕業か?」
ナザールが真剣な表情で、誰にともなく問いかける。
「蝋人形に、なあ……。連れ去ってどうしようってのかね。ホムンクルスの原料の供給源か?」
「うーん?」
胸の下で腕組みし、ニィナは首を傾ける。ややあって、彼女は閃いた。
「あれじゃない? 美肌になった女の子たちをコレクションしてるとか!」
「なんだ、助平かよ……」
げんなりと肩を落とすナザールに、ショコラが苦笑する。
「それは、これを作った人に聞くのが一番いいかと思います。ともかく急ぎましょう。捕まったテフラさんたちが心配です」
「そだねー。それじゃ、一発行っておきますかー!」
ニィナがランチャーをハッチに向ける。砲門から生える弾頭!
「開けぇーゴマッ! どーんっ!」
SHGOU! ミサイルが飛翔し、温泉底のハッチに突っ込んで爆破! ぽっかりと開いた大穴に向かって、三人はクレーターの外壁を滑り下りた。
大成功
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第2章 集団戦
『ホムンクルスの盗賊』
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POW : 後ろにも目をつけといたほうがいいよ!
【打撃能力を持つ魔法のミサイル】を召喚する。それは極めて発見され難く、自身と五感を共有し、指定した対象を追跡する。
SPD : 早いねキミ、でもウチらも負けないよ!
【攻撃の宣言】を向けた対象に、【ホムンクルスの姉妹たちの連携攻撃】でダメージを与える。命中率が高い。
WIZ : 良いもの持ってるね!ちょっと貸してくんない?
対象のユーベルコードを防御すると、それを【劣化した性能で魔力の回路に一時的保存し】、1度だけ借用できる。戦闘終了後解除される。
👑11
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●断章
魔術の力で作られた、紛い物の少女たち。
芽生えた心は真か、偽か。考えた末、盗みに走る。
『忘却骸海』第二章、作られた生命より抜粋。
●お知らせ
第二章は追加OPを挿入し次第、プレイングの受付を開始します。
受付開始は7月21日(日)を予定しております。今しばらくお待ちください。
●
アルダワ魔法学園迷宮区!
赤銅色の機械で出来た機械の通路に、機械の駆動音と液体が沸騰する音が反響していく。
通路の最奥、煮えたぎる蝋の池を前にして、二人の少女が壁際に立って会話していた。
ショートボブの金髪に、バラの形に結わえた赤のリボン。ビスクドールじみて整った造形の顔立ちで、服装は学生服にも貴族服にも見える独特の衣装。双子めいて全く同じ姿かたちの二人は、壁に設置された操作盤を叩きながら愚痴をこぼす。
「てゆーかさー……毎回思うんだけど、これ、なんの意味があるわけ? 蝋人形じゃ剥ぎ取るものなんにも無いし。ていうか、大体みんな裸みたいなもんだし」
「先生の趣味だからじゃなーい? 頭いいのはわかるんだけどさ、あのスケベなんとかならないのかなー」
「蝋人形も女の子ばっかだしねえ……武器作ってくれるのはいいけど、本当それだけが嫌」
片割れが操作盤のレバーをつかみ、引き下ろす。
BubbleBubble――――煮えたぎる蝋の池が泡立ち始めた。これは迷宮から少し離れた場所に仕掛けた蝋温泉トラップに通じており、引っかかって取り込まれた者を排出する機構となっている。
少女二人は、白い水面に向き直った。
「ま、出てくるのが大体可愛い女の子なのが救いってところだよね」
「わかるー。これでムサいオッサンとか出て来たらマジで萎え。イケメンなら良いけどさ」
BubbleBubbleBubbleBubble!
蝋の泡立ちが激しくなり、池の中央が少しずつ迫り出し始める。
蒸気機械で作られた迷宮に、池から排出されたのは……。
●お知らせ
お待たせしました。第二章、プレイングの受付を開始いたします。
締め切りは現在未定です。
蛇塚・レモン
ぷはぁ!? フンッ!(排出された瞬間、念動力で体中の蝋を破壊!)
あぁ~酷い目に遭ったよ……敵の本拠地へ潜り込むつもりだったけど、まさか味方に不意を突かれるなんてね……?
(ブツブツ呟くスク水金髪少女、ホムンクルス2人に気が付く)
……あ、生徒さん、ではないね?
つまり災魔!
やっちゃえ、蛇神様っ!(先制攻撃+咄嗟の一撃+動物使い)
蛇神様の呪詛でユーベルコードと身動きを封じてもらうよっ!
即時あたいの蛇腹剣で敵を蝋の温泉へぶち込むよっ!
(呪詛+マヒ攻撃+念動力+地形の利用)
ここからは尋問、じゃなくて拷問だよっ?
(コミュ力+情報収集+恐怖を与える)
生徒たちとジーズはどこ?
答えないなら温泉へ沈没させるからね?
ニィナ・アンエノン
おっけー!そんじゃあ張り切って温泉の下へゴー!
蝋も無くなったし、気兼ねなくバイクに乗って行けちゃう☆
蝋人形にされちゃった子達も助けなきゃだし【騎乗】の技術を存分に発揮して降りちゃおう!
皆と、あのトラップしかけたっぽい子も探して……見つけたら問答無用でとりあえずやっつけちゃう!
このままゴッドスピードライドで【吹き飛ばし】ちゃうのが一番かな?
連携攻撃は命中率が高いっぽいから避けない!
【衝撃波】を纏って走って近づけない様にして……あとは【オーラ防御】で凌ぐ!
とにかくぶつけて大暴れだー!
……あ、蝋人形の子を壊さないように注意しなきゃね☆
ショコラ・リング
この穴に流されていくということは、先には回収者がいる可能性が高そうでございますね
滑り出た後、いつでも攻撃と防御が出来る様に警戒しておくのです
可能であれば先制を取りたいところでございますね
迷彩を使い迷宮内に立ち込める蒸気に紛れ、【神樹の矢】による知覚阻害と援護射撃、2回攻撃、範囲攻撃を組み合わせ味方の援護を致しますね
黄昏の外套に自分の姿を映し蒸気立ち込める壁に掛ける事で騙したりとかできたらしてみるのです
また第六感による先読みで出鼻を挫き、相手の連携を阻害するように動いてみます
ロボットに対しては鎧無視攻撃で装甲を撃ち抜いていく感じでしょうか
ガゴンプシュー! 蝋の池左右が蒸気を吹き出し、白い像を吐き出した。
放物線を描いて床に転がった蝋人形一体を横目に、ホムンクルスの少女二人は気だるげな顔を突き合わせる。ジーズの趣味には興味が無いのだ。
「来た来た。んじゃ、さっさと回収してかーえろー」
「んだね。はぁーあ……ジジイのスケベ趣味に付き合わされるこっちの身にもなって……うん? ……あれ?」
少女の片割れが、蝋人形を見やる。
白くコーティングされた、緩い背泳ぎのような体勢。頭頂部には見慣れぬ白いヒモが生え、あたかも人間型キャンドルめいた形となっていた。
もう片方が、蝋人形に釘づけになる相方の目を覗き込む。
「どーかした?」
「いや……今回のあれさ。なんか、変じゃない? っていうか、今ちょっと動いたような……」
「……はあ?」
何を馬鹿なと言いたげに、もう片方も排出された蝋人形を振り返った。
FooooSH、FooooSH。迷宮内に響く蒸気噴出のメロディ。規則正しい機械的なリズムの中に、ひび割れの音が混ざり込む。同時に、蝋人形が孵化寸前の卵めいて震えたではないか!
ホムンクルス二人は驚愕の面持ちで互いを見合った。
蝋は特殊な魔術的マテリアルであり、固体では鋼じみた強度を誇る。未熟な学園の生徒たちが、内から破壊できる代物ではない。もしそんな芸当ができるとすれば、それはオブリビオンか、英雄級の実力者か、あるいは――――。
「猟兵……?」
「うっそ、なんで猟兵がここに来るのよ? しかもわざわざ捕まって!」
狼狽する二人を余所に、CRACK……CRACK……蝋人形の蝋がひとりでにひび割れ、亀裂から金色の光を発する! 光は徐々に強まり、ヒビをどんどん押し広げていく。光と亀裂が蝋人形全体を覆い尽くした次の瞬間、CRASH!
「ぷはぁ!? フンッ!」
蝋を内側から爆ぜ飛ばした蛇塚・レモン(叛逆する蛇神の器の娘・f05152)が勢いよく跳ね起きた。スクール水着姿のまま、頭頂部から転がり落ちたヒモをつかみ、両手と背中をぐっと伸ばす。
「あぁ~酷い目に遭ったよ……敵の本拠地へ潜り込むつもりだったけど、まさか味方に不意を突かれるなんてね……? ていうか何これ。導火線?」
手にしたヒモを怪訝そうに見下ろしたレモンは、ふと視線を感じて視線をずらした。想定外の事態に凍り付くホムンクルスの少女二人と目が合うなり、
「……あ、生徒さん、ではないね?」
「え? えーと、まぁ、生徒と言えば生徒だけどー……アルダワの生徒じゃないというか」
「ちょっ、バカっ……!」
片割れが腕を引っ張って相方を制止するが既に手遅れ! 輝くような笑顔のレモンは全身にオーラをまとわせ、背後の地面に魔法陣を展開させた。
「つまり災魔! やっちゃえ、蛇神様っ!」
SMACK! 魔法陣が閃光を放ち、白い大蛇を吐き出した。大蛇は両目を金に光らせて咆哮!
「SYAAAAAAAAAARGHッ!」
大蛇から放射状に広がる金色の波動! ホムンクルス二人は即座に前後反転して走る!
「やばっ! 逃げろ逃げろ!」
「誰か―――――っ! 侵入者――――――――っ!」
BEEEEEEEEEEEP――――――! 甲高いサイレンの音が機械の廊下に轟いた瞬間、左右の壁が回転扉めいて開いた。中から現れたのは丸みを帯びた鉄の巨体! モノアイを赤く光らせた人型ロボット二体が、大蛇の波動の前に立ちはだかり防御体勢を取った。だが!
『ピガガーッ!』
金光を正面から浴びた二体は四肢や背中から息切れじみて蒸気を吹き出し、赤いモノアイを激しく明滅。うち片方の腹を槍めいて伸びた蛇腹剣が貫き、ワイヤーアクションの如く引っ張り寄せる! ロボットを捉えたレモンは残念そうな顔をした。
「うげっ、外れかー……」
剣の柄ごと手首をスナップ。跳ね上げられたロボの巨体がレモンと大蛇の頭上を飛び越え、蝋の池に落下した。
SPLASH! 飛び散る蝋の飛沫を余所に、蛇が目を閉じ波動を収束。射程距離の限界に達したのだ。波動から解放されたもう一体のロボが両膝を突く。レモンは素足で軽くステップを踏んでロケットスタート!
「逃がさないよ! 聞きたいことなら山ほどあるんだから!」
白蛇を連れて猛然と疾駆したレモンがくずおれたロボの真横を突破する。刹那、ダウンしていたロボのモノアイが再点灯! 四肢と背中から蒸気を吹き出して再起し、振り向きざまに背面とふくらはぎから蒸気を噴射して滑走し出した!
『I'm Ready!』
STEEEAAAM! 白い蒸気をジェット噴射したロボが拳を構え、レモンを背後から襲撃! ロボの接近を感知した白蛇は真後ろを振り返り、尻尾の先でレモンの頭をはたいた。
「あいたっ! 蛇神様?」
足を止めて前後反転したレモンがぎょっと両目を見開いた。ロボは上段に拳を振りかぶり、肘から蒸気を放出しながらフックを繰り出す! 威嚇めいて鳴いた白蛇がレモンを包む形でとぐろを巻いた、その時である!
SPLASH! 蝋の池を突き破り、一台のバイクが飛び出した! 車両後部に極太のマフラーを四本、後輪の左右に無数のドット光を点滅させる箱型機械を取りつけた大型バイクが迷宮の床に着地。
斜めに突き出したバイクハンドルを握ったニィナ・アンエノン(スチームライダー・f03174)は、ド派手なエンジン音に負けじと声を張る。
「なんか敵っぽいのはっけーん! やっちゃえショコラちゃんっ!」
「はい!」
ニィナの真後ろで、ショコラ・リング(キマイラのアーチャー・f00670)がバイクシートの上に起立した。刃状の弓を構え、枝めいた矢を番えて引き絞る! 狙いは黒鉄化した大蛇の鱗に拳を弾かれ、数歩下がった蒸気ロボット! 矢に神聖な光が灯った。
「我が祈りを此処に。この矢を以て、闇の歩みを阻ませたまえ!」
SHOT! 放たれた矢は、肩越しに後方を振り返ったロボのモノアイを射抜く。矢の半ばから伸びた触手状の枝がロボの頭部に絡み付き、視界を完全に封鎖した。矢を抜こうともがくロボに、ニィナはアクセルペダルを踏み込み加速! GRRRRRRNG! 獣じみた排気音と共にバイクはロボへ突進していく!
「うりゃあ―――――――っ!」
3、2、1、CRAAASH! 跳ね飛ばされたロボが大蛇の真上を突き抜け、天井にぶつかって床に墜落。
噴煙まき散らしながらドリフトを決めた大型バイクは、とぐろを巻いた大蛇の前で停止する。螺旋状になった蛇の隙間からのぞくレモンに、ニィナはビシッと人差し指を突きつけた。
「れもんちゃん、見ぃーっけた!」
「ニィナちゃん! ショコラ君も!」
蛇の体が黒鉄色から白色に戻り、とぐろを解除。ショコラはレモンをざっと見て、無傷なのを確かめて安堵する。
「良かった。ご無事のようですね」
「もっちろん! ところでなんだけどさ」
レモンは爪先立ちし、右に左に首を伸ばしてバイクを眺める。
「もう一人ぐらい居なかった? あたいの気のせい?」
ニィナとショコラが互いの顔を見合わせる。申し訳なさそうに首を縮めるショコラとは逆に、彼女はてへっと舌をのぞかせお茶目な笑顔をレモンに向けた。
「はぐれちゃった!」
「すみません、気づいたら途中でいなくなってて……レモンさんこそ、あのお二人と一緒じゃなかったんですか?」
「一緒に温泉入った二人? そういえば……」
ニィナのバイク越しに煮えたぎる蝋の池を見通すが、あるのは固まった蝋の残骸ばかり。池から排出されたのはレモン一人だったのだ。ALAS! では三人はどこに? ショコラが深刻な表情を浮かべて何か言いかけた瞬間、彼らから離れた位置で迷宮の壁が地響きを鳴らして開いた。
これ見よがしに生まれる蒸気機械で出来た十字路。開いた壁の代わりに、蝋の池へと続く道に壁が降りて退路を塞ぐ。迷宮の奥から複数人の硬い足音!
ぞろぞろと現れた迷宮存在を見て、レモンたちの顔に剣呑な気配が過ぎった。
「どうやら……現れたようですね」
ショコラが呟くと同時、立ち込める蒸気から大柄な蒸気ロボットが数体と、ホムンクルスの少女十数人が姿を現した。少女たちは皆判を押したように同じ顔立ち、同じ髪型、同じ服装! しかし手にした武器は蒸気機械であることを除き統一性は無い。大型鉄腕、突撃槍、大鎌、小型砲、その他! どれもアルダワ魔法学園の技術を使った特殊ガジェットを持ち、油断なく身構える少女たち。彼女らの奥から、低めのトーンをした声が響いた。
「わざわざトラップから乗り込んで来る阿呆が居ると聞いて来てみれば。話が違うぞ。何故三人も入ってきている」
居並ぶ少女たちの中から、蒸気仕掛けのサーベルを腰に吊ったホムンクルスが進み出た。顔立ちこそ他と同じだが、鋭い光を目に宿し、表情は毅然としている。明らかなリーダーの風格!
リーダー格のホムンクルスはスチームサーベルを引き抜くと、切っ先を侵入者三人に突きつけた。
「ともあれ、だ。罠にかかった者が間抜けでも大物でも構わない。我々は罠にかかった者を連れていくだけだ。よって、貴様らは大人しく武装解除し、投降しろ。そうすれば命だけは助けてやる」
ショコラの頬が緊張に強張る。手に下げた弓をいつ引くか逡巡する彼の袖を、ニィナがちょいちょいと引っ張った。何か策ありやと耳を近づけるショコラに、ニィナは嬉々として囁いた。
「ね、ね、今の聞いた? 私たち、映画の主人公みたいじゃない!?」
「ニィナさん……」
がっくりと肩を落とすショコラ。そんな二人のやり取りを余所に、レモンは危険な微笑を浮かべてリーダー格と向き合った。
「武装解除は駄目だけど、折角だから聞かせてもらうね」
そう言って、蛇腹剣の切っ先を離れたリーダー格の眉間に据える。恫喝のサインだ!
「生徒たちとジーズはどこ? 女の子を蝋人形にしてコレクションしてるって聞いたんだけど」
剣を突きつけられ、しかしリーダー格は余裕を崩さぬ。どころか彼女は、サーベルに手を触れ酷薄な笑みを貼り付けた。
「知りたいか? 武器を捨て、白旗を上げればすぐにでも連行してやる」
「…………」
迷宮内の空気がピンと張り詰める。沈黙がその場を支配し、プレッシャーが全員の肩にのしかかる。やがて、レモンは刃を下ろして溜め息を吐いた。
「はー……しょうがないか。すんなり教えてくれればよかったんだけど、そうも行かないよね。と、いうわけで」
レモンはショコラとニィナに目配せ。ショコラは頷いて弓をゆっくりと持ち上げ、ニィナはバイクハンドルを握り直す。リーダー格がサーベルを抜いた。
「答えはノーと見ていいのか?」
GAOOONNG! リーダーの言葉にエンジン音が答える。通路に対し真横になっていた車体を90度回転させたニィナは、ハンドルをひねってバイクマフラーから炎を吹かす。武器を構えるホムンクルスたち! レモンは改めて蛇腹剣を構えて言い放った。
「ノーでいいよ。全員ボコした後で体に聞くからっ!」
「元から問答無用でやっつけるつもりだったしね! それじゃ、レッツ・ゴ――――――ッ!」
CABOOOM! マフラーが火を噴き恐るべき速度でバイクが突撃! 同時にリーダー格がサーベルを突き出して号令をかけた。
「かかれ!」
リーダー格の号令飛ぶと同時、ロボットたちが背中から蒸気を噴出て突進を敢行! 両膝を折り曲げ、拳を振りかぶってニィナに真正面から挑む! バイクとロボがショコラは後部座席からバックジャンプしムーンサルト回転跳躍。直後、CRAAASH! すさまじい衝突音と共にゴーレムたちが吹き飛ぶ!
「いやっほー!」
歓声を上げバイクをウィリーさせるニィナ。そこへホムンクルスが四人がかりで突っ込んで来た。巨大鉄腕、大鎌、モーニングスター、突撃槍! モーニングスターを振り回したホムンクルスが声高らかに言い放った。
「私たち姉妹の攻撃、受けてみなさい!」
ニィナめがけて投げられた鉄球が、後方に蒸気を吹き出して加速する。ニィナはウィリーさせていた前輪を振り下ろし、思い切りアクセルを踏んだ。BOOOM! 爆発的加速したバイクがモーニングスターの真下を突破! 突撃槍を構えて正面から駆けこむ個体が跳ね飛ばされて回転しながら宙を舞う。
「きゃっ!?」
大鎌と巨大鉄腕を持った個体が目を丸くする。うち巨大鉄腕の片足にレモンの蛇腹剣が絡みついた!
「なっ!」
「余所見してていいのかなっ!? それッ!」
蛇腹剣を振り上げ、ホムンクルスを天井に叩きつけるレモン! 瞬時に反応した大鎌の個体が刃を振りかぶってレモンを襲うが、横合いから飛来した枝の如き矢が鎖骨部分を貫いた。同時に、大鎌の視界が突如として暗転!
(なにも……見えない
……!?)
困惑し、大鎌が前傾姿勢で凍り付く。蒸気の中からショコラの合図!
「レモンさん!」
「オッケーショコラくんっ! やっちゃえ蛇神様っ!」
レモンの頭上で鎌首をもたげた大蛇の両目が金に光った。金色の呪詛と念動力を混ぜた波動が暴風めいて大鎌に押し寄せ、木の葉の如く吹き飛ばす! 床にたたきつけられた巨大鉄腕も同様。弾丸めいて吹き飛ばされた二人を、巨大足甲と大バサミの個体が受け止める。
「ちょっと、何やってるの!」
「この子お願い!」
巨大足甲の個体が巨大鉄腕を大バサミに投げ渡して加速! 機械のくるぶし、踵、足裏から蒸気を噴出し、攻めてくる蛇神の波動に向かって手を伸ばす!
「いいの持ってるじゃないのサ。その力、アタシが頂くよっ!」
巨大足甲の両手が波動に触れ、GYAAAAAM! 甲高い悲鳴のようなサウンドがまきちらされ、迷宮の奥まで轟き渡る! 波動を受け止めた巨大足甲は足裏からの蒸気をさらに吹き出し、一歩、一歩と波動を押し込む!
「はああああああああああッ!」
巨大足甲は両目を赤く光らせ、手の平から波動を放出! レモンの波動を押しのけ、相殺してのけた。白蛇は目からバチッと火花を散らしてのけ反る!
「SHRRRRRRRRR!」
「蛇神様っ!?」
狼狽して大蛇を見上げるレモン。迂闊! 波動が無くなった所に巨大足甲が駆けこみ、跳躍した大バサミがクワガタめいて得物のアギトを押し開く。さらに後方では、ガトリングガンを構えた個体が銃の引き金を引いた。
BRRRRRRRRRRRRRR! 弾丸に代わり歯車などの鉄屑が飛翔! 大バサミの足元を突き抜け、巨大足甲の頭上を抜けてとっさに盾を掲げたレモンを襲う! 白金の盾が太鼓連打めいて鈍い音を響かせる。防御に手一杯で動けぬレモンに、足甲は低空ジャンプキックを繰り出す!
「好きにできると思わないことだね! 食らいな!」
BFOOOOM! ロケットの如く蒸気を吐き出した足甲が盾に守られていないレモンの膝を打ち砕きに行く! だが、足甲の横合いから跳んだ矢が彼女の脇腹に命中。真横に回転してふっ飛ばし、ジャンプキックキャンセル!
空中の大バサミは即座に矢の出所に目を向けた。そこには第二矢を大バサミに照準するショコラ! 大バサミを振り上げ、ホムンクルスの少女は彼へとダイブアタックを仕掛けに行った!
「そこっ! 撃たせないッ!」
空中一回転からの急降下で、ハサミを振り下ろしての斬撃! SLASH! ショコラと交錯する形で着地した少女は気づいた。自分のすぐ真横は壁で、人が立てる場所は無い。真っ二つに引き裂いたのは、精巧なショコラの絵が描かれた外套だ!
(だまし絵? 待った! じゃあ本物は!?)
慌てて周囲を走査する大バサミ! 右、いない。左、いない。上を見上げた所で天井に着地したショコラを発見! 彼は複数本の矢を一度に番え、光の弦を引き絞っていた!
「彩りを無に変える 冷酷なる息吹よ」
「みんな、避けて――――――ッ!」
大バサミが声を張り上げた瞬間、SHOT! 放たれた矢が雨の如く迷宮の十字路に降り注いだ! 矢の当たった場所から床や壁が凍結し、立ち込める蒸気がダイヤモンドダストに変化していく。ホムンクルスの機械武装やロボットたちの各所が凍結! うち一体、完全な氷像と化したホムンクルスとロボのコンビへニィナのバイクが特攻!
「どりゃーっ!」
アクセルペダルを踏み抜き加速! 目にもとまらぬ速さで二人の元をバイクが駆け抜けた直後、一拍遅れて発生した衝撃波が氷像を粉々に吹き飛ばした。リーダー格をサーベルを掲げ、周りに立つ五人のホムンクルスに指令を言い渡す!
「ミサイル! 飽和爆撃で消し飛ばせ!」
『はいっ!』
屈んだ五人が呪文を詠唱し、蒸気の如きオーラを体にまとわせる。白いオーラが励起し、周囲に白い魔力球を大量に生成。リーダー格はサーベルを突き出した!
「放て!」
魔力球が一斉に飛翔! 高速でバイクを駆るニィナを、両目を開いた白蛇を従えて走ってくるレモンを押し潰さんと迫る魔力ミサイルの大津波!
「ニィナさん! レモンさん!」
天井で声を上げるショコラの下にも流れ弾めいて数十発のミサイルが飛んだ。範囲が広く回避が出来ぬ! ショコラの視界いっぱいに真っ白な光が満ち、BOOOMBOOOMBOOOM! 天井で連鎖爆発が巻き起こる!
一方、レモンは掲げた盾に黄金色の霊力を込め、ニィナはバイクを加速させてミサイルへと突っ込んでいく! リーダー格はサーベルを手に声を張った。
「愚かな。骨も残さず吹き飛ぶがいいッ!」
ミサイルの奔流がニィナとレモンを呑み込み、大爆轟を引き起こす! 迷宮十字路を吹き抜ける白いの爆風。立ちはだかった五体の蒸気ロボに守ってもらったリーダー格は、激しい突風に髪を乱されながらも真っ直ぐに立つ。冷気をはらんだ風に目を細めた、刹那!
「やあ―――――――っ!」
爆炎をぶち抜き、紺色のオーラをまとったニィナとバイクが飛び出した! 放物線を描いた大型バイクの車輪が、即座に滞空パンチを繰り出す蒸気ロボの拳を衝撃波で爆砕。反動で跳躍したニィナはバイクごと横回転しながらホムンクルスたちの頭上を通過。後方に激しくタイヤの筋を引きながら着地し、前輪を少女たちに向けてハンドルをひねる!
「突撃だぁーっ!」
DRRRRRRRRRRRR! バイクのエンジンをいななかせ、ニィナは爆速礫殺突進を挑む! リーダー格は素早く命令!
「迎撃!」
『I'm Ready!』
二体の蒸気ロボがホムンクルスたちの前に割り込み、蒸気を噴出して加速した。鋼の剛腕による高速ダブルラリアットがニィナの首を狩りに行こうとしたその瞬間、彼女はバイクから回転跳躍! ラリアットをかわしたニィナは指笛を吹く。
「かもん、どこかの世界の自分! レッツロック!」
ラリアットを空ぶらせたロボの頭上で煙が爆発! 煙から落下したのはレスラーめいた姿のニィナ。彼女は体勢を崩したロボに肩車し、両足で首を締め上げた。本家のライダースーツを着込んだニィナももう一体に同じ形で取りつく。目配せする二人のニィナ!」
「行くよ、なんかプロレスラーっぽいにぃなちゃんっ!」
「おっけー! なんかかっこいいライダーっぽいにぃなちゃん! せぇーのっ!」
二人のニィナはロボにヘッドロックをかましたままバク宙し、二体の脳天をちにぶち込んだ! ひび割れ、蒸気を噴出して破損する迷宮の床!
『ピガガガガガーッ!』
鋼の床に打ちこまれ、激しく痙攣するロボを置いて二人のニィナは飛び下がる。ロボの蒸気機関が暴走し、爆発四散!
一方、一人でに走るニィナのバイクはタワーシールドを手にしたホムンクルスに防御されていた。シールドを真横に振ってバイクを打ち払った仲間の後ろで、リーダー格が剣を構える!
「私が先陣を切る。続けぇッ!」
「ちょおっと待ったっ! なんか二人ぐらい忘れてない!?」
背後からの声に振り返るリーダー格! そこには体中を白い炎に焼かれ、殴打痕めいた青痣を浮かべたレモン! 彼女は一回転して蛇腹剣の横薙ぎ斬撃を放つ。殴りかかる蒸気ロボの首を斬り飛ばした彼女の額に、拳銃を手にした個体が銃撃! 放たれたスクラップ弾に額を撃たれてのけ反ったレモンに、リーダー格が斬りかかった!
「もらったっ!」
「いいえ、やらせません!」
サーベルを振りかぶった腕に枝状の矢が命中! 矢は恐るべき速度で樹木にまで成長してリーダー格の腕を呑み込み、さらには他のホムンクルスまでも幹に取り込んで拘束した。
背中から迷宮の床にたたきつけられながらも跳ね起きるレモン。彼女の隣に降り立ったショコラは、タコ殴りにされたボクサーめいた顔で口の端についた血をぬぐう。
「はぁ、はぁ……捕まえたっ! これでようやく本題に行ける。ここからは尋問、じゃなくて拷問だよっ?」
急いて立ち上がるレモンの頭上で、白蛇が目を光らせた。金色の光が鎖となってホムンクルス一体一体を縛り、完全に自由を奪う。レモンは、腕と両脚を樹木に絡めとられたリーダー格の喉笛に蛇腹剣を突きつけた。
「生徒たちとジーズはどこ? 答えないなら温泉へ沈没させるからね?」
笑顔に似合わぬドスの利いた声。リーダー格は闇に閉ざされた視界にレモンの笑顔を思い描いて、冷や汗を流した。
大成功
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ショコラ・リング
まずは捕らわれえた捕らわれた生徒さん達と首謀者のジーズ・ワエムットの居場所を吐いて頂きましょうか
別々の場所に保管されているならば先に生徒さん達の保護が必要でしょうか
ポンチョを用意しておいて、蝋を剥がせば自分達で帰れるでしょうか?
難しそうならシーカーさんに頼んで迷宮の外へと誘導してもらいたいのです
その後はジーズの居場所を特定し、迷彩と周囲の蒸気を利用しながら奇襲に適した位置取りなどの、戦闘前の情報収集でございますね
可能であればジーズがいる付近の戦闘で使われそうなエリアなどに、光の弦を使った古典的な紐トラップとかも仕掛けておきましょうか
彼を知り己を知れば百戦危うからずでございます
迷宮の壁に背を叩きつけられたホムンクルスの少女。制服めいた服の袖や足、襟元に突き立った矢が彼女を昆虫標本めいて固定する。矢を引き絞ったショコラ・リング(キマイラのアーチャー・f00670)は、険しい表情で少女を見据えた。
「まずは捕らわれえた捕らわれた生徒さん達と、首謀者のジーズ・ワエムットの居場所を吐いて頂きましょうか」
「……ふん」
ホムンクルスはそっぽを向く。直後、彼女の眼球数ミリ手前に矢が突き刺さった。少女は見開いた目の瞳だけを横に動かし、ショコラに再度視線を合わせる。彼は二の矢を番えていた。
「答えてください。ボクとて、無暗に人を傷つけたいわけではありません」
「だが、殺すのだろう」
横顔だけを向けたまま、少女はキツい口調でショコラをなじった。
「猟兵たる貴様は、オブリビオンである私を滅ぼさなければならない。ここで口を割ったところで、もはや私が命運尽きたのは確か。違うか」
「……否定はしません。ボクは、貴方がたオブリビオンに苦しめられる人々を救うため、こうして弓を取ったのですから」
ホムンクルスの少女が嘲る。
「ならば、やはり利害は一致しないな。先生は子供の姿を使って助平に走る変態ジジイだが、我々に武器と戦う術と役目を与えてくれた恩人でもある。私が口を割る義理はない
。…………殺せ」
「………………」
ショコラは厳しく少女を睨むが、彼女は達観した面持ちで目を閉じた。口を開かず、死を恐れた様子も無いホムンクルス。規則正しい排気の音が遠く沁み――――やがてショコラは弓矢を下げた。ホムンクルスが気配を察して片目を開く。
「……なんのつもりだ?」
ショコラは答えず、引き絞った弦を手放した。矢と幻が光の粒子となって散る。怪訝そうな表情をするホムンクルスに、彼は真っ直ぐ問いかけた。
「ひとつ、聞かせて頂きます。あのトラップは、なんのためにあるのです。貴方がたの……ジーズ・ワエムットの目的は一体なんなのですか。生徒をさらって、どうするつもりなのですか」
「生徒? あの蝋人形どもなら、燃料だ」
「燃料……?」
ショコラが固い唾を呑み込む。少女は、不穏な微笑を滲ませて続ける。
「どのようなものも、原動力が必要だ。活動に必要なエネルギーを作り出す機構、そこに入れる物体がな。獣が肉を食うように、この迷宮にも餌が要る。後は……わかるだろう?」
「……!」
鋭く息を呑むショコラ。
「まさか……!」
「ここの胃袋にして心臓部。お探しのものならそこにある。在り処はせいぜい自分で探せ。この迷宮を彷徨いながら、ゴーレムと我が姉妹を殺しながらな」
ショコラは胸元を握りしめて息を吸う。暴れかける呼吸を抑え、強いてさらなる問いを絞り出す。
「待ちなさい。あと二人、猟兵がここに連れてこられたはずでしょう。二人はどこに」
「知らん。いくつかある、罠の出口のどれかだろうよ。ま、大して心配はいらんだろう。先の蛇の娘は自力で蝋の罠を脱した。猟兵ならば、同じようにしてるだろう。とうに殺されてるやも知れんが、そこまでは知ったことではない。死んでいようが生きていようが、立派な資源に変わりはない」
ショコラの足が半歩下がった。うっすら立ち込める蒸気が複数ヶ所で渦巻き固まり、排気の音が遠のいていく。固まった蒸気が名も知らぬ少女たちの顔に変化し、悲鳴と苦悶、嘆きの声を上げ始めた。
「っ!」
ショコラは目をつぶって首を振る。恐る恐る目蓋を開けると、そこは先と変わらぬ迷宮だった。蒸気の顔も、声ももうない。幻覚だった。冷たい汗を流すショコラを、ホムンクルスは冷たく笑う。
「どうした? 幽鬼でも見たような顔をしてるが」
血の気の引いた顔で、ショコラがかすかに震えた声を絞った。
「そこまで……そこまでして、この迷宮を動かすことに、なんの意味が……」
「知らん。先生に聞け。生きて発見できれば、問うこともできよう。……さ、ここで油を売ってていいのか? 私から言う事はもう何もない。せいぜい、急ぐことだな」
「くっ……!」
肩をすくめる少女を残し、ショコラは迷宮の奥へと急ぐ。弓に再度張られた、光で出来た弦を引き、手の平から伸びた光矢に口元を近づけて囁く。
「もしもし、シーカーさんですか? 少しお願いが。件の罠に捕らえられた少女たちを、迷宮から外へ誘導してあげて欲しいのです。……ええ。蝋を剥がして、ボクのポンチョを着せておきます。よろしくお願いします……!」
SHOT! 放たれた矢が虚空に突っ込むようにして消える。閃光の矢文を撃ったショコラは、血流速まる思考を回した。
(まずはジーズの居場所の特定が先。彼女の言葉を信じるならば、女生徒たちはジーズと、この迷宮の核と一緒に居る。……情報収集が必要ですね。準備を重ね、手順を組み立て、確実な奇襲を成功させる……)
まばたきの裏で、嘆く少女をかたどった蒸気が過ぎる。幻覚を飲み込み、ショコラは毅然とした表情で足を速めた。
(必ず、必ず救ってみせます……!)
大成功
🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『ガジェッティア教師『ジーズ・ワエムット』』
|
POW : スチームウェイブ
【右腕でのパンチ】が命中した対象に対し、高威力高命中の【蒸気の衝撃波】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD : スチームフィスト
【高速飛行する右腕型ガジェット】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
WIZ : スチームタイフーン
自身からレベルm半径内の無機物を【高温の蒸気】に変換し、操作する。解除すると無機物は元に戻る。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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セット・サンダークラップ
一人称・二人称・三人称はオレ・あなた・彼(彼女)
アドリブ・連携歓迎っす
オブリビオン化した後も先生をやっているのは教師の鑑って感じっすね。 助平な性格? うん・・・
と、ともあれ侵略者になってしまうのはダメっすから穏便にやっつけさせてもらうっす! あなたの時代から進歩した学生の力を見るっすよ!(他世界のジョブなのは置いておく)
ジーズのパンチに当たらないように距離を取って・・・蒸気ロボットがいればそれを武器にするっす!
ドラゴニアンチェイン起動、手近なロボか迷宮の内装を爆破してパーツを落とすか体勢を崩させた後、巻き付けたオーラの鎖をぶんまわして鉄球のように相手を薙ぎ払ったり叩きつけるっす!
迷宮最奥、フロアボスの座。
真鍮色に輝く、上下に広い吹き抜けの空間。底も天井も闇に閉ざされて見えず、虚空には複数の巨大な機械キューブが点在している。奥の壁には蒸気パイプと歯車をいくつも生やした、超巨大な女神像めいた形状のマシンが稼働。中央のランプが緑の光を明滅させる。
女神型機械が脈動じみた音でビートを刻み、壁に蜘蛛の巣の如く張り巡らされたパイプに緑の輝きを放つエネルギーを送り込む。
物々しい蒸気駆動音が響く大空間。そこに浮遊するキューブひとつの上面にCRASH! 破砕音が轟いた! 凹んだ金属の外皮から跳ね起きて首を振るセット・サンダークラップ(青天に光を見る・f05234)。直後、彼の斜め上空で蒸気が噴出! ガジェッティア教師『ジーズ・ワエムット』が急降下パンチを繰り出してくる!
「ふははははははは! そォォォれぇッ!」
「ぬわっとぉ!?」
背後にライムグリーンの光翼デバイスを起動したセットは、キューブから大きくバックジャンプ! タッチの差でCRASH! ジーズの鉄拳がキューブの上面を破壊する。
浮力を失い、蒸気の噴煙を上げながら奈落へ落ちていくキューブを見下ろし、セットは別のキューブに着地。その時、彼の前後左右に四角い穴が開き、蒸気駆動のモノアイロボットが迫り出した。
「来たっすねッ!」
金の瞳を輝かせたセットに、ゴーレム四体は右肘からスチームを噴き出しながらストレートパンチを放つ! セットは回転跳躍でこれを回避し、交錯した機械の腕に降り立つ。前方に出たロボットの腕を駆け上がって顔面にサッカーボールキック! のけ反った機械に、セットは片腕を振り上げた。
「使わせてもらうっすよ! オーラ解放ッ!」
掲げられたセットの腕に黄緑色のオーラが宿った。彼はそのままロボットの胸へアームハンマーを振り下ろす! オーラをまとった拳が命中すると同時に爆発。黄緑色の爆炎を食らい、仰向けに倒れかけるロボットを胸から伸びた光の鎖が引き起こす。鎖を手繰るセットは元の場所に着地!
「よしっ!」
オーラ鎖の繋がった腕を思い切り引くセットの背後、パンチ空振りから体勢復帰したロボットが、ラリアットめいて大振りの左フック! 後ろ目にそれを見たセットは半ば這いつくばる形で鉄拳をかわし、跳躍からの回し蹴りを繰り出す!
「うおりゃっ!」
セットの足がロボの側頭部を撃ち抜き、蹴とばす! 勢い余って虚空で回る彼に、さらに別のロボット二体が挟撃パンチ! セットは光翼ガジェットを起動してわずかに飛行。引っ込めた両脚の下で拳がかち合う。刹那!
「隙アリじゃあッ!」
「うおっ!?」
肩越しに背後を見たセットの視界一杯にジーズ! 大型ガントレットを振りかぶる彼を尻目に、セットは挟撃パンチの手の甲を蹴って大ジャンプ! 真上に浮くキューブ底面に上下逆さに着地し、オーラ鎖を引いて蒸気ロボを引き寄せる。キューブ底面を蹴り、引っ張り寄せたロボットに急降下!
「これでも……食らえっすーッ!」
一回前転して体勢を整え、飛来するゴーレムにドロップキックを叩き込む! SMAAASH! 撃ち返され、一直線に落下するロボットをジーズは前転してかわした。そのまま右腕を地面スレスレにまで引き絞り、ガントレット手首部分から蒸気を噴いた!
「甘いわ小僧! 食らえ、ロケットパァァァンチッ!」
BOOOM! ロケットめいて飛翔するスチームガントレットを、空中のセットは身をひねって紙一重で避けた。ジーズの目がギラリと光る。さっきまでセットが居たキューブ底面中央が開き、蒸気ゴーレムが頭を出した。
「甘いと言ったぞ、小僧ッ!」
新たに出現したロボットはジーズのロケットパンチをつかみ、セットに投げる! 四角からの一撃。だが!
「お見通しっす!」
拳が当たる寸前、セットはオーバーヘッドキックでガントレットをふっ飛ばした。そのまま空いている片腕にライムグリーンのオーラをチャージし、上空キューブのロボに手をかざす!
「発射ァッ!」
放たれたオーラ光線がゴーレムの頭に直撃しBOMB! 爆発と同時に鎖へ変じたオーラをつかみ、セットはロボットをダンクシュートめいて振り下ろした! ジーズは華麗なバク転三回でロボ落下を回避し、両足と左手を突いて制動をかける。顔には不敵な微笑み。
「ほう……? 完全に不意を突いたと思ったが」
「へへん、オレの読み通りっす! あなたの時代から進歩した、学生の力を見るっすよ!」
「若造めが、よう吠えた!」
大きく身を掲げてハイジャンプするジーズ! 飛行して戻ってきたガントレットを右腕に装着し直した彼は、錐揉み回転しながらセットに迫った。
「その大口に違わぬ力、見せてもらうぞ!」
「望むところっす! リードデバイス、解放ッ!」
セットの周囲にホロウィンドウが複数枚出現し、ジーズをスキャン。光翼デバイスを駆動させ、宙を真後ろに滑走! 自分が居た場所をジーズの回転アッパーが貫くと共に、セットはそろえた両腕を振り上げる!
「ふんッ!」
跳ね上げられた二体のロボがジーズを強襲! しかし若き老翁は口角を吊り上げ、右腕をゴーレムに向けた。STEEEEAAAAM! 手の平が蒸気を噴いて飛来するゴーレムの勢いを殺す。虚空で一時停止した機械の上に降りたジーズはダッシュ! オーラ鎖を伝ってセットへ走った!
「それも読めてるっすよーッ!」
セットは両腕を思い切り開き、二本のオーラ鎖を引き離す。ジーズをすんでで跳ぶも足場を失った状態! ライムグリーンのオーラ鎖をワイヤーアクションのワイヤーめいて高速短縮したセットがコマじみて回る。空中のジーズを真横から襲うロボット! ジーズの目が喜色に輝く。
「ほう! じゃがまだまだじゃのう!」
ジーズは飛んできたゴーレムに右ボディブロー! SMASH! 鉄拳が激突した瞬間、ロボットの機体は白く変色し蒸気に変じる。右手の平でそれを吸い込んだジーズが、セットにガントレットをかざして照準!
「食らえ! スチ――――ムタイフ―――――――ンッ!」
BFOOOOOM! 恒温蒸気の竜巻がセットを槍の如く貫かんとす! セットは半ば仰向けになる形で身を反らしてこれをかわすが、熱気に顎から喉を炙られて叫んだ。
「うおおおおおおおおっ!? 熱っ!」
「どうじゃ! これがかつてアルダワが誇ったスチームパワーよ! そしてッ!」
ジーズは蒸気放射をやめ、左手につかんでいたセットのオーラ鎖を思い切り引いた。蒸気化したロボについていたものだ! ぐいっと引っ張られたセットがジーズへ真っ直ぐ急接近!
「や、やばっ! ウィングフォート! 後退するっすーッ!」
「遅いッ! 既に手遅れよ―――――ッ!」
ジーズが振りかぶった拳を撃ち出しロケットパンチ! 蒸気を推進力に飛翔した鉄拳が、とっさにクロスガードしたセットの腕に突き刺さった。メキメキと軋む腕の骨!
「いだッ
……!?」
「唐突なロケットパンチ。からのコンボじゃ! 食らえ、若き日の十八番!」
ガントレットの消えた右手で、ジーズは指を鳴らした。次の瞬間、セットの腕にめり込んだロケットパンチはドリルめいて高速回転! 徐々に強まる押し込みがクロスガードをセット自身の胸に押し付け、あばら骨ごと腕から悲鳴を絞り取る!
「ぐ、ぐぁッ……!」
鉄拳の回転はさらに加速。そのまま周囲にうっすら立ち込めていた蒸気を吸収し、溜め込み、ジーズは右手指二本をそろえてガントレットに突きつけた。
「必殺! スチームストリ――――――ム!」
BOOOOOOOM! 拳が巨大な蒸気の奔流を放ち、セットを後方にあった浮遊キューブに叩き込む! 白い大竜巻はキューブの内部にまで食い込み破砕音を響かせる。CRACK、CRACK……CRAAASH! キューブを爆散させ貫いた蒸気が、セットを別のキューブに叩きつけた。
大成功
🔵🔵🔵
ミリア・プレスティール
テフラさん(f03212)と行動
蝋燭と化した体を戻すために、『ミトン』は2人に取り付けた紐に火をつけて蝋が解けるのを待っていた。
「…アチッ!熱いっ!うぅ…元に戻れたけど他に方法はなかったの?」
『ミトン』の少々強引な救出方法に疑問をぶつけるミリア。
紆余曲折あり、テフラさんと無事?にボスの元までたどり着くことができた。戦闘の最中にミリアはテフラさんにある提案をする。
「テフラさん!ミトンを硬化させてください!」
攻撃力を上げるためにあえてテフラさんのユーベルコードを『ミトン』にぶつける作戦のようだ。
拳を握った状態で硬化していき『黄金化(ゴールドシイング)ミトン』と変化する!
※アドリブ、絡みOK
ニィナ・アンエノン
あ、先生久しぶりー!
なんて、授業受けたことあったっけ?
にぃなちゃん忘れちゃった☆
まぁいっか、生徒に悪い事する先生はボイコットだ!
とゆー事でガジェットにはガジェット!
ガジェットショータイムに右腕型ガジェットは任せちゃおうかな?
きっといい感じにぶつかり合うのが出てくるって信じてる!
にぃなちゃんの方は先生を殴りに行くね☆
バイクで突撃!
と見せかけて、身構えた所を【クイックドロウ】で【騎乗】したまま撃つ!
【スナイパー】の技で揺れるバイクの上からでも当てちゃう自信アリだぞ!
生徒の成長は先生の喜びでしょ?
成長の証のこのガジェットと弾丸で一杯喜んでね☆
テフラ・カルデラ
ミリアさん(f16609)と同行
アドリブ可
あちちちち…!?地道な解除方法ですね…!?
ともあれ元に戻れたことですし…こういうことをする黒幕も目の前にいますしね!
黒幕を倒して蝋人形にされた生徒たちを元に戻しましょう!
ミリアさんの声に反応してユーベルコード「黄金呪術球」をミトンさんに投げます!
相手は投げる方向を間違えて余裕ぶっていますが…そんなに悠長していると後悔しますよ~?
撃退後は蝋人形にされた生徒たちを助けましょー!
それにしても色んなポーズで固められていますね…?
蛇塚・レモン
全技能フル活用!
生きたまま蝋人形にするだけでも悪趣味なのに、それを燃料として消費しようだなんて、許せない……っ!
犠牲者の無念はあたいたちが晴らすよっ!
うわっ!? 周囲が蒸気で視界が遮られるし蒸し暑いっ!
でも水着で良かった、汗ばんでも動きやすいっ!
蛇腹剣クサナギに風属性を付与
そっちが蒸気の嵐ならこっちは刃の嵐だよっ!
怪力任せに振り回して風圧で蒸気を払って視界をクリア!
ジーズや周囲の機器を巻き込んで破壊!
ガラ空きになったジーズへ向けて蛇神様を召喚、けしかけるよっ!
そういうのズルいから禁止っ!
蛇神様、あいつに天罰喰らわせちゃってっ!
破壊念動波で封殺後、トドメの指鉄砲の呪殺弾でその心臓を撃ち抜くよっ!
ショコラ・リング
ボク・貴方・名前+さん
皆様がジーズの相手をしている間に迷彩を使い蒸気などに隠れながら生徒の皆さんを救出に向かいます
生徒の方々を保護出来た後は先述の通りシーカーさんにお任せ致しますね
その後はキューブの一つに光の弦で蒸気に紛れさせたトラップを仕掛けておきます
その場から迷彩と【其ノ弓ニ矢射ラズ】を利用した奇襲で、援護射撃しますね
居場所がバレれば罠に誘い込み動きを抑えた上で皆で一斉に攻撃でしょうか
貴方が起こす事件は許されざるモノでございますが、生前はボク達と同じ立場の方だったのでしょうね
なればこそ、ボク達の手でケリを付けて差し上げねばなりません
自身が作り上げたこの迷宮に抱かれて眠りゆくのです
セット・サンダークラップ
【にゃん銃士】
一人称・二人称・三人称はオレ・あなた・彼(彼女)
アドリブ・連携歓迎っす
レーヴェさん、アガトさん、助けてくれてありがとっす! 強敵なんで注意してくださいっすー!
いいのを一発くらってボロボロっすがその技の詳細もわかってきたっす!拳が飛ぶのはやっかいっすが、複数人相手では使いにくいでしょう!
フルバースト・マキシマム起動、[援護射撃]でレーヴェさんとアガトさんをサポートっす!
相手の行動を[見切り]、ロケットパンチの初動に射撃を重ねて攻撃の軌道を逸らすっす。[時間稼ぎ]っす!
さらに[時間稼ぎ]の一環として付近のキューブを意識して、蒸気ロボットが出たら攻撃してジーズのサポートをさせないっす!
レーヴェ・ナハトシッフ
一人称・二人称・三人称は俺・お前・あいつ
アドリブ・連携歓迎
【にゃん銃士】
……俺の守りたいあいつに、セットに必殺技をぶち込んだんだ
覚悟はいいな?
過去の残照を発動
寿命なんて知るか。好きな奴が傷つけられたんだ
全力で倒す!
基本は大鎌で接近戦
右腕でのパンチはビハインドの力で教師の後ろへ出て、バックスタブ
二回目以降は残像を残しながら教師の後ろへ、後ろへ飛びながらダガーを投擲
とバックスタブを気まぐれにする
もし攻撃を食らって吹っ飛ばされても後ろへ出現して攻撃を続ける
激痛耐性で我慢しながら攻撃し続け、生命力吸収で回復
もしもアガトの花びらの攻撃に気づかれたら、
花びらに混沌の水をまとわせ、鋭利にして攻撃力をあげる
アガト・シレスティアル
一人称・二人称・三人称はにゃー・君・彼(彼女)
アドリブ・連携歓迎
【にゃん銃士】
うにゃー……どうせなら俺のセットとか言えばいいのににゃ
「しゃんしゃん」頷くシャーくん
まあセットにゃんがぶっ飛ばされた事はにゃー達も怒ってるから
全力でいくにゃ!「しゃーん!」
まずは決意のネリネを発動
レーヴェにゃんが接近戦をしてる間に
シャーくんでガトリングを撃ったり、ガブガブモードでガブガブしたりとロボの片付けしながら、教師もロボもネリネの花びらでずっと攻撃にゃ
生命力吸収と激痛耐性でダメージは我慢&回復にゃー
それと電脳ゴーグルによる遠隔武器改造でシャーくんとレーヴェにゃんとセットにゃんの武器の攻撃力を強化にゃ!
CABOOOM……! 爆炎を噴き、二つの巨大キューブが奈落の底へ落下を始める。白い蒸気混じりの黒煙を上げて墜落する機械立方体の上方、ジーズは連続バク宙を決めて別のキューブに着地した。掲げた右手にロケットめいて戻ったガントレットが再装着。
一息吐き、キューブ端に屈みこんで墜落を見守るジーズ。徐々に高度を下げていく二個を見下ろし、喉元の毛を撫でる。
「さて、これで一丁上がりかの。若い体というのはええわい。……ぷりちーな美女なら、なお良かったんじゃが」
呑気につぶやいた直後、ジーズは全身総毛立たせて目を見開いた。突風じみて背後から押し寄せた殺気に振り返ると、そこには右拳を振りかぶったレーヴェ・ナハトシッフ(風を纏う傭兵獅子・f04940)! ベルト状の眼帯で両目をふさいだ彼は、憤怒の咆哮を放つ!
「ウオオオオオオオオオオオオオオッ!」
「ぬおおおおおっ!?」
鉄拳をバックジャンプ回避したジーズは連続後方回転しながら落下! 真下のキューブにドッスン着地を決めるなり横っ飛びし、急降下してきたレーヴェの斬撃をかわす。幽霊めいて足を煙状にした彼に、体勢復帰して身構えたジーズが抗議を飛ばした。
「いきなりなんじゃ! 老いぼれを驚かすのはよさんか! 心臓止まったらどうしてくれる!」
「うるせえ。お前の腐れ具合なんぞ知ったことか」
陽炎揺蕩う大鎌を、レーヴェはジーズに突きつける。
「……俺の守りたいあいつに、セットに必殺技をぶち込んだんだ。覚悟はいいな?」
「フハッ! ならぶち込まれる前にかかって来ぬか! 仲間が死んでからでは遅いぞ、若造よ!」
「抜かせ!」
鎌を振りかぶり突進するレーヴェ! 対するジーズは足場を蹴って正面からぶつかりに行く。大鎌の斬撃とガントレットのパンチが激突し、STEEEEAAAAM! 二人を中心に蒸気が爆発。
一気にフロアボスの座を満たした蒸気は天井と床を隠す闇を塗り潰し、点在するキューブの輪郭をぼかす。蒸気の奥から響く金属衝突音を下方に、キューブの上を飛び移る蛇塚・レモン(黄金に輝く白き蛇神オロチヒメの愛娘・f05152)は額から溢れる汗をぬぐった。
「うわっ!? 周囲が蒸気で視界が遮られるし蒸し暑いっ! でも水着で良かった、汗ばんでも動きやすいっ!」
「普通ならば厄介なものでございますね。しかし、この状況ならむしろ好都合……!」
レモンのすぐ隣に降り立ったショコラ・リング(キマイラのアーチャー・f00670)が、まとった外套の襟を立てる。生地が霧じみて真っ白に染まり、ショコラの体を蒸気に溶かした。
「レモンさん、ジーズの相手をお願いします。その間にボクは生徒の皆様を!」
「了解っ! 生きたまま蝋人形にするだけでも悪趣味なのに、それを燃料として消費しようだなんて、許せない……っ! 犠牲者の無念はあたいたちが晴らすよっ!」
真横に90度反転するレモンの背後でショコラは外套のフードを被る。高熱の濃霧に消えた彼を背後にレモンは助走をつけてキューブから跳躍!
四肢を広げて降下する彼女の真下、濃くなる蒸気を吹き飛ばしてレーヴェが横薙ぎ斬撃を繰り出す! 頭を下げて避けたジーズはレーヴェのワン・インチ距離からジャンプパンチ!
「ぬぇいッ!」
SMASH! 鳩尾を殴られたレーヴェが後ろに吹き飛ぶ。刹那、彼の体は緑の煙と化し霧散! 足より先に右手を地に着いたジーズは、手の平から蒸気を噴いた!
「何度も通ずるか、阿呆め!」
真後ろに跳んだジーズの両足が、彼の背後に出現したレーヴェの顔面に直撃! 膝を折り曲げてレーヴェを蹴り飛ばしたジーズは空中でコマめいて回転。のけ反ったレーヴェの横面めがけて空を引っかくように右腕を振る!
「ふんぬァッ!」
「ぐおッ!」
錐揉み回転するも足場に鎌の石突を突き刺して体勢を立て直すレーヴェ。開脚姿勢で着地したジーズは拳を構え直して言い放った。
「知性ある存在と戦うならば、攻撃にバリエーションを持たせるのは基本! 馬鹿のひとつ覚えでなんとか出来ると思うた間抜けは、強みを殺され死ぬのみよ!」
「ああそうかよ!」
言うなりレーヴェが緑の煙に包まれて消失! すぐさま反転するジーズの後方上空、再出現したレーヴェは右手五指に挟んだダガーナイフを投擲し、左手五指に保持した刃も投げつけた。ジーズは右手を手刀に変え、二波のナイフを往復チョップ迎撃! そのまま一回転し、右腕を振りかぶる!
「身を以って知れ! ワシに同じ手は何度も通じぬとぉぉぉぉッ!」
突き出された右手がBOOOOOM! レーヴェへ飛翔した鋼の拳は、しかし横合いから翡翠色のビームを食らって爆破されて撃ち落とされた。その隙にレーヴェは蒸気へ紛れて姿を隠す。レーザーが飛んできた砲口から合図!
「今のうちっすーッ!」
「うりゃああああああああッ!」
ジーズの真上、蒸気に剣閃が走り左右に割断! バックリ割れたスモークを突破し、レモンが側転じみた動きから長く伸びた蛇腹剣を振り下ろす! ジーズは連続側転で降り来る刃の下から逃れた。 CRAAASH! 抉り取られたような傷がキューブを横断。体操選手の如く回転しながら着陸したレモンは距離を側転からバク転に切り替えて取るジーズめがけて蛇腹剣を振り回す。
「逃がさないよっ! それっ!」
蛇腹剣が長く伸び、群れ為して噛みかかるサイドワインダーめいて怒涛の連撃を繰り出した! ジーズはこれを後退しながらのホップ・ステップ・ジャンプでかわすも、カマイタチのような余波が彼の腕や外腿を裂く。
「ぬうッ!」
顔をしかめたジーズは両足をキューブの面につけて急ブレーキをかける。端スレスレで停止した彼は、コマめいて回るレモンに合わせて飛んできた刃を這いつくばって回避!
BLOWWWWWWWW! 刃の軌跡が暴風を放射し、周囲の蒸気を吹き飛ばす。クリアになった空間のうち、ジーズの後ろでガントレットが弧を描くように飛行。主の下へ帰還せんとす! レモンは剣を元の長さに戻して地面に突き刺す。切っ先を中心に明るい黄色の魔法陣が展開!
「そうは行かないよ! 蛇神様、やっちゃって!」
「お主こそ、そう好き勝手出来ると思うたら大間違いよ!」
跳ね起きたジーズが足元を引っ叩くと同時、レモン目前の床に四角い穴が空く。そこから飛び出した蒸気ロボがレモンの脳天めがけてアームハンマー! 赤銅色の拳を見上げたレモンの鼻面が叩き潰される寸前、割り込んだ薄桃色の花吹雪が薄い円盤状の渦を巻いて拳をガード!
離れたキューブに立つアガト・シレスティアル(この抱いた思いは忘れない・f03547)は、剣のように構えたサメ型ロボを花吹雪に向けつつぼやいた。
「俺の守りたいあいつって……うにゃー……どうせなら俺のセットとか言えばいいのににゃ。ねー、しゃーくん」
「しゃんしゃん」
サメ型ロボが首を縦に振る。アガトは赤い右目から血の涙を流しつつ、まなじりをキッと逆立てた。両目を引き下ろしたゴーグルで隠し、サメを持つ手に力を込める。
「まあセットにゃんがぶっ飛ばされた事はにゃー達も怒ってるから、全力でいくにゃ!」
「しゃーん!」
アガトがサメ型ロボを振り上げた瞬間、花吹雪の盾がロボの拳を跳ね返した。腕を跳ね上げられ、一歩後退するロボを余所にジーズはアガトの方へとダッシュ! キューブを飛び出し、後ろにやった右手ガントレットから蒸気を噴いてブーストをかける!
「伏兵とは恐れ入る。いつの間にワシの迷宮を突破してきたのかのう!?」
「んにゃっ!」
アガトがサメ型ロボを斜めに振るうと、花弁の嵐で形作られた大型サメがジーズを頭上から噛みかかんだ。直後、花弁サメが内側から膨張し、蒸気を噴いて爆散! 真っ白い霧に背中を押さえれたジーズがアガトに右フックの構えで迫る!
「ぬおおおおおおおおおおおおッ!」
「にゃあああああああっ!」
鉄拳とフルスイングされて機械サメが衝突! アガトは四肢に力を込めてサメを振り切る。打ち払われたジーズがアガトと同じキューブに飛び乗り制動をかけたところで、アガトはゴーグルの側面に手を触れた。
「強化改造完了にゃ! セットにゃんっ!」
「はいっすーッ!」
キューブの横合いを垂直上昇したセット・サンダークラップ(青天に光を見る・f05234)が、周囲に機械サメ型の砲身を複数召喚。一斉に大口を開けたサメ砲塔が翡翠色のビームを発射し、ジーズを側面から狙う!
「むっ……!」
ジーズはセットに背を向け低姿勢ダッシュで距離を取る。ジグザグダッシュでビームの雨を回避する彼の背後にレーヴェが出現! 陽炎に包まれた大鎌がアガトの花吹雪に包まれ、緑色の液状オーラで覆われる。砲撃を繰り返しながらセットは叫んだ。
「レーヴェさん、アガトさん、助けてくれてありがとっす! 強敵なんで注意してくださいっすー!」
「ああ」
「セットにゃんも無理は禁物にゃー」
走りながら返事するアガトの手中で機械サメが口からガトリング砲を生やした。アガトは機械サメを真横に向けてぶっ放す! BRRRRRRRRRRRRR! 神速魚群めいて飛ぶ弾丸たちは、レーヴェ目前に飛び出した蒸気ロボの脇腹に命中! よろめく機体に、レーヴェは鎌を振り上げる!
「おおおおおおッ!」
液状オーラが鋭利な刃を形作ると同時に、SLASH! 縦一閃の斬撃が蒸気ロボを両断。左右に分かれて倒れる機械の奥、レーヴェのワン・インチ間合いにまで踏み込んでいたジーズがガントレットの手で掌底を繰り出す!
「ふんはッ!」
「チッ!」
レーヴェは手の平を大鎌の柄でガード! 吹き飛ばされたレーヴェの鎌が蒸気を吸い上げる一方、高度を稼いだセットはサメ砲台の一斉砲火!
「おりゃあああああああッ! 追撃なんてさせないっす!」
ZGAGAGAGAGAGAGAM! 鮮やかな緑のレーザーが複数、レーヴェの頭上を突き抜けてジーズに降り注いでいく。追撃を諦めたジーズは右手の平を前方に向け、STEEEEEAAAAAAM! 蒸気逆噴射で後退しセットの砲火を回避する。
「やりおるわい。さっきの一発でくたばったかと思ったが、どうやら過小評価しすぎたようじゃの!」
「そりゃどうも! いいのを一発くらってボロボロっすがその技の詳細もわかってきたっす! 拳が飛ぶのはやっかいっすが、複数人相手では使いにくいでしょう!」
「しかも敵の技を分析しつつ援護射撃に徹する姿勢! うむ、高得点じゃ! しかァしッ!」
ジーズが右手を握って振り上げ、足元を殴った。BFOOOOOOM! 噴き上がる濃密な蒸気が竜巻を成し、セットの光線を取り込んで乱反射させる。四方八方に飛び交うビームが迷宮内の壁や他のキューブに突き刺さり爆発! うち一条がセットの頬をかすめ鱗をあぶった。
「うわわわわっ! 撃ち方やめ! 撃ち方やめっすーっ!」
慌てて両腕を広げ、浮遊機械サメ砲台を制するセット。次の瞬間、蒸気の竜巻からジーズのロケットパンチが飛び出した! 狙いはセット!
「うおあっ!? 撃ち方再開! ロケットパンチを押し止めるっすーッ!」
セットが飛来するガントレットを指差すと、サメ砲台がビーム射撃を再開した。複数の光線が拳と真正面から激突し、拮抗! 直後、セットより高い位置に浮かんだキューブからジーズが飛び出す。回転しながら組んだ両拳を振り上げた彼は、セットの脳天めがけてハンマーパンチを繰り出した!
「ほれ、そこじゃあッ!」
「ふがっ!?」
頭を殴られ、セットの両目が裏返る。彼の首根っこを引っつかんで振り回したジーズは、勢い弱まったビームをぶち抜いて迫るロケットガントレットにセットを投げた!
「敵を視認できなくなったら身を隠せ。そして即座に索敵せよ。自分の位置だけ一方的に知られるのはこれ以上ないデメリットじゃ!」
背後にレーヴェが出現! 大鎌フルスイングでジーズの首を刈り取りに行くが、当のジーズは真横に回転して刃をかわしつつ回し蹴りでレーヴェの腕を受け止める。懐に入ったジーズのダブルパンチがレーヴェの腹に直撃!
「ぐぉッ……!」
「お主のタネもとうに割れておるわ。背後に出てくるとわかっておれば対処は容易。位置さえわかれば、あとはぶん殴るだけじゃからのお。ほれ、このようにッ!」
ジーズはレーヴェの鳩尾に素手に右ストレートを叩き込む。さらに左、次に右。左、右、左、右! 加速するラッシュが獅子の胴体を抉り、あばら骨をへし折り内蔵を圧迫。歯を食いしばるレーヴェの口が開いて血を吐くと同時、ジーズは右腕を限界まで引き絞る!
「ぬぇぇぇぇあッ!」
SMAAASH! 渾身の右ストレートをぶち込み、レーヴェを吹き飛ばした! その時、ジーズの胴が不可視の鎖に縛られる。ぐんと彼を引っ張り寄せたのは、空を飛ぶ白い大蛇。蛇の頭に乗ったレモンは輝く蛇腹剣を手に跳んだ。
「ご高説ありがとうね先生! じゃあこのアンブッシュには何点もらえるのかな!? ゴッドアーマメント!」
蛇腹剣が閃光を放ち、凄まじい速度で伸びる。一瞬で万里の長城じみた威容を誇るに至った刃は、暴風をまとう! レモンは剣を両手でつかみ、思い切り背中を反らした。
「嵐と化せ、クサナギ――――――ッ!」
振り下ろされる長い剣を見上げ、しかしジーズは口角を吊り上げた。彼の真上に白目を剥いたセットが飛び込む! 殴り飛ばされたのだ!
「わっ!?」
驚いて斬撃軌道を変えるレモン! 長く伸びた剣は遠くのキューブを撃ち落とし、迷宮の壁をガリガリ削る。真横を空気を引き裂いた蛇腹剣、その暴風に脇腹を引っかかれながらも、ジーズの表情は余裕そのもの!
「惜しいのう。呪縛せず殺しに来れば、この首獲れたであろうものを! 征け、我が右手! フライングライト―――――ッ!」
轟とエンジン音を唸らせ、ロケットガントレットが主の隣を突き抜ける。剣を振り切り隙を晒したレモンを襲う飛行鉄拳。そこへ鎌首をもたげた白蛇の頭がインターラプトし、レモンの代わりにロケットパンチを顎で受けた!
「蛇神様っ! ……こんのぉぉぉぉぉぉっ!」
レモンは蛇腹剣を釣り竿のように引く。ジーズの遥か後方、伸びた剣は先端に突き刺さった巨大キューブを引っ張り寄せた! 迫る巨大質量を前に、ジーズはガントレットを装着!
「それは悪あがきというものじゃ! ここでの判断は仲間を連れて一旦距離を取ること。不意打ちの失敗は高くつくからの! そしてこの攻撃も無意味そのものじゃよ!」
声高に言いながらジーズが拳を放った瞬間、キューブ下の面から巨大な機械腕が飛び出した!
「何っ……」
本来無いはずの機能に目を見開くジーズ。機械腕はムチのようにしなりながら、彼にアッパーカットを撃ち出した! 小柄な体を遥か上空へ殴り飛ばしたジャイアントアームを、バイクに乗ったニィナ・アンエノン(スチームライダー・f03174)が駆け上がる!
「ひゃっほー! あ、先生久しぶりー! なんて、授業受けたことあったっけ? にぃなちゃん忘れちゃった☆ まぁいっか!」
空中で複雑に回転するジーズを見据え、ニィナはアクセルペダルを踏みしめた。DRRRRRNG! 派手にいななき、バイクが加速!
「生徒に悪い事する先生はボイコットだ! 食らえ―――――っ!」
「ぬおおおおおおッ!」
ジーズは右手を天井に向け、蒸気噴出! 逆噴射で急降下した彼は回転右ラリアットでニィナの鼻面を砕きにかかるが、ニィナはリンボーダンスめいてこれを回避。上体を後ろに倒したまま、ジーズの背中に大型リボルバーを発砲した。
BLAM! BLAM! BLAM! 撃ち込まれた弾丸を回転裏拳で弾いたジーズは、機械腕に両足をつけて真後ろに滑る。前後反転したニィナが体を起こしてハンドルを握ると、オブリビオン教師は口の端の血を左手でぬぐった。
「見事じゃ。今のは効いたぞ……!」
「やった! にぃなちゃん百点満点! ついでにボーナス点獲得だーっ!」
バイクを起こして機械腕を駆け下りるニィナへ、ジーズが疾走! 一方、フロアボスの座最奥の壁に設置された像に一矢で穴を穿ったショコラは、内部へ飛び込んでいた。高熱の蒸気が彼の頬に吹きかかり、褐色の肌に紅を差す。
「熱い……なんて温度……!」
外套を振るい、蒸気を払いのけるショコラ。周囲を見回せば、等身大の蝋人形を収めたガラスタンクらしきものが多数居並ぶ。蝋の表面にエメラルドグリーンのライン模様を刻んだ少女の蝋人形は、実際罠にかかった犠牲者たちだ。顔をしかめつつ、ショコラが足元にチョークを立てた、その時。
「……アチッ! 熱いっ! うぅ……元に戻れたけど他に方法はなかったの?」
「あちちちち……!? 地道な解除方法ですね……!? 火傷しちゃいそうです……!」
どこからか聞こえて来た悲鳴に顔を上げ、声のした方を見る。ガラスタンクのうち二つに、動く人影。中身は服をはたくミリア・プレスティール(守護霊持ちのいじられ女子・f16609)とテフラ・カルデラ(特殊系ドMウサギキマイラ・f03212)! 足元には溶けた蝋の水溜り!
「ミリアさん、テフラさん!」
ショコラが大急ぎで二人に駆け寄り、刃で出来た弓で斬撃! 一瞬でバラバラに解体されたガラスの奥から躍り出たミリアは、頭に乗ったヒモを落とした。
「あ、ショコラさん。お互いご無事のようですね。それで、えーと……ここはボスのところ、で合ってますか?」
「はい。……心配しました。お二人とも、どこに行ってしまったのかと」
テフラが照れ臭そうに後ろ頭を掻く。
「てへへ……。ともあれ元に戻れたことですし……こういうことをする黒幕も目の前にいますしね! 黒幕を倒して蝋人形にされた生徒たちを元に戻しましょう!」
「救助の目途は付けてあります。今はジーズを!」
CRAAASH! 外から響く衝撃音。ミリアとテフラは顔を見合わせ、一緒に轟音の方へ駆け出した。女神像に空いた穴から跳躍すると、そこには鉄腕を振り回して荒れ狂う巨大なキューブ!
闇雲に突き出された巨拳を蒸気逆噴射の急上昇でかわしたジーズは、高所のキューブに着地した。彼の前後を挟むレーヴェとレモン! ジーズは真後ろから飛んでくるダガーナイフをブレイクダンスめいた回転蹴りで撃ち落とし、腕を断ちに来るレモンの蛇腹剣を逆立ちジャンプで回避!
「出でよ! ワシの作品たちよ―――――ッ!」
上下逆さ状態のジーズが床を殴ると、彼の四方の床に空いた穴から蒸気ロボが四体出現。レーヴェとレモンの包囲を遠巻きにしたアガトは指笛を吹き、周囲に四体の大型サメロボを呼び出した! 指差す先は蒸気ロボ!
「しゃーくんズ、ガブガブにゃーッ!」
『SHAAAAAAAARRRRRRRRK!』
ミサイルじみて飛び出したサメ型ロボが一体ずつ蒸気ロボの頭に食らいつく。たたらを踏むロボの足元をジグザグダッシュで突破したジーズに、バイクに乗ったニィナが並走! リボルバーの銃口でジーズの側頭部を狙う!
「生徒の成長は先生の喜びでしょ? 成長の証のこのガジェットと弾丸で一杯喜んでね☆」
「はっはっはっ! こやつめ、膝枕で老骨をいたわるぐらいは出来んのか!」
「もんどーむよーっ!」
BLAMBLAMBLAMBLAM! ニィナの銃撃を回転ジャンプ回避するジーズ。ニィナは急激なドリフトを決めて方向転換、ジーズへウィリーダッシュで突撃していく! ジーズは空中で身をひねりバイクの側面を蹴って軌道を逸らし、続く銃撃をガントレットで防御!
「ぐぬッ……!」
右手に走る衝撃に呻きつつジーズが吹き飛ぶ。床を転がったのち膝立ち姿勢を取り、床を叩きかける彼のガントレットを翡翠色のビームが狙撃! 腕を弾かれスタンするジーズに、ミリアとミトン型ゴーストが飛びかかった。
「テフラさん! ミトンを硬化させてください!」
「わかりましたっ! ミトンさんにさっきまでの恨みも込めてーっ!」
ミリアの後方、テフラは頭上に黄金球を生成し、ミトンめがけて投げつけた。ミトンが黄金球を両手で包むと同時、人ほどもある手袋は発光し純金の装甲に包まれる! 黄金の握り拳と化したミトンに、ミリアは片手を振り上げた。
「ゴールドシイング・ミトン! 行きますよーッ!」
顔をしかめたジーズがバックジャンプしかけるも、その踵に光の糸が引っかかる! 次の瞬間、ジーズの腹に光の矢が突き刺さった!
「ごはっ!? なんじゃッ……!」
バックジャンプ失敗から再度膝を突いたジーズ。そこへ襲い掛かるミトンのラッシュ! マシンガンじみた黄金拳がジーズに連続で叩き込まれた! 拳に合わせてミリアが叫ぶ!
「駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目……駄目ぇぇぇぇぇぇぇぇぇッ!」
SMAAASH! 派手に殴り飛ばされたジーズを、宙を掻くようにして迫った巨大機械腕がキャッチする。大きな手の平にへばりついた彼を狙い、ショコラが光の弓を引き、セットとアガトが機械サメの砲台を照準!
「今っす! トドメの集中砲火っすよ――――――ッ!」
「しゃーくんズ、一斉砲撃にゃ!」
サメ型機械が翡翠色のビームと鉛弾を乱射し、機械の巨掌に連鎖爆発を引き起こす! 巻き起こる飽和爆撃に弓を引いたショコラは、手から伸びた黒い矢を射出! 矢は闇の尾を引いて吸い込まれていき、大爆発!
ぽっかりと機械の手に空いた風穴の中心、焼け焦げながら白目を剥いたジーズに、レモンの大蛇が両目を光らせる。空中で固定されたジーズに、レモンは人差し指を突きつけた!
「これで終わりだっ! 蛇神様、あいつに天罰喰らわせちゃってっ!」
レモンの人差し指に黄色がかった黒のオーラが球を為し、弾丸めいて撃ち出されたそれがジーズの心臓を穿つと同時、白蛇は大口を開けていななく。直後、ジーズの胸が光輝き、爆発四散した。
大成功
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最終結果:成功
完成日:2019年08月10日
宿敵
『ガジェッティア教師『ジーズ・ワエムット』』
を撃破!
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