草の中から長い首が持ち上がる。
つややかな紫の鱗が陽光に輝いている。
しきりに匂いを嗅ぎ、丸い目であたりを見回し、長い尾を揺らす。
あの子はお腹が空いていそうだ。それなら――。
少女は開けた場所へ歩み出ると、好物の果実を足元に置いた。
「おいで」
茂みが鳴る。たくましい後脚で2足歩行するドラゴン。陸竜系だ。
トゥシュ村の人間として学んだことを総動員して呼びかける。優しく根気よく語りかけていると、ようやく向こうから近付いてきた。少女が体を撫でてやると、首をすり寄せてくる。背中に鞍を乗せて手綱をかけた。
「お前の名前は、ヴィオレにしよう」
手綱を引いて一緒に村に帰った。
「おめでとう。お前も今日から一人前だ!」
「ありがとうございます」
「よくやったな」
村は祝福の空気に包まれた。
大人たちに迎えられて、満面の笑みを浮かべた少女の足元に真っ黒な影が落ちる。
「あれは……」
『ぐるる』
警戒を促すように、ヴィオレは空を見上げて喉の奥でうなった。
●
「それがトゥシュ村の成人の儀式なんだって!」
アックス&ウィザーズ。海に面した高台にあるトゥシュ村周辺には仔ドラゴンが多数生息している。
村人は学校を卒業すると、その足でドラゴンを捕まえに行く。捕まえるというよりは『心を通わせ相棒となってついてきて貰う』という表現が正しいだろう。
餌をやり、一緒に遊び、体を洗ってやり――絆を深めたドラゴンはかけがえのない相棒になる。
「それを僕たちもやってみない?」
シトラは現地の文字で書かれた資料を読み上げた。
「参加条件は、相棒の動物を連れてない人。もう相棒がいるなら、儀式の間だけでも隠しておけば大丈夫だよ。ルールは、より早くドラゴンを懐かせて村に帰ってくること!」
村長には既に儀式への参加許可を得てある。
代わりに求められるのは、最近トゥシュ村の近くで起こっている異変の調査だ。どうやら近くの岬で不審火が何件か発生しているらしい。
「予知通り、オブリビオンに関する危機が迫っているよ。この仔竜たちの力を借りれば敵を捕捉しやすくなると思うんだ」
強敵が出現する前にドラゴンと相棒になり、絆を深め、共に戦う。
それが今回の任務だ。
「海が近いからきっと潮風が気持ちいいよ。まずはドラゴンおいでおいで競争、頑張ってきてね」
氷水 晶
仔ドラゴンと相棒になって冒険しませんか?
小さなドラゴンとの交流がメインのシナリオです。
●章の構成
第1章:仔ドラゴンを捕まえよう!
第2章:仔ドラゴンと仲良くなろう!
第3章:仔ドラゴンとはじめてのボス戦!
●シナリオ後
基本的には第3章の戦いの後、仔ドラゴンとは別れる事になります。
もし気に入った仔ドラゴンが見つかれば『仲間にした仔ドラゴンをモチーフとしたアイテム』を参加者様個人で作って連れ帰った事にしても構いません。シナリオの文、設定等も宜しければお使い下さい。
●相棒の仔ドラゴン
どの章からでも参加可能です。
続く項目の『形態と性格』を組み合わせて、ドラゴンの設定を作ります。
初参加の際には以下の情報をお書きください。
連続参加の際には自動的に前回仲間にしたドラゴンになります。
『形態と性格。色。名前(鳴き声)』
例:『C3。紫。ヴィオレ(ぐるる)』
※名前の項目は『考え中』として2章以降で名付けても構いません。
●形態
『A:飛竜系』
4足歩行し背中に翼の生えたドラゴンです。
まだ不安定ながら飛び、炎を吐きます。
幼体のうちは肩に乗るサイズの小さなドラゴンです。
『B:ワイバーン系』
両腕が皮膜の翼となったドラゴンです。
空を器用に飛び、小さな竜巻を操ります。
幼体は1mほどの体長で、人を後ろ脚で掴んで飛べます。
『C:陸竜系』
翼が無い代わりに素早く陸上を駆けるドラゴンです。
2足歩行し強靭な後脚を生かしたジャンプや蹴り技が得意です。
幼体でも人ひとり乗せられる大きさです。
『D:東洋系』
長い体に角とたてがみを生やした竜です。
空や水中を泳ぐように移動します。雷を周囲に発生させます。
幼体のうちは肩に乗るサイズの小さなドラゴンです。
●性格
1:お調子者。たまに言う事を聞かないが臨機応変。
2:真面目。言われた事をこなそうと努力するタイプ。
3:甘えん坊。泣き虫で臆病だが、相棒の危機にこそ力を発揮する。
4:クール。反応が薄く見えて実は相棒想い。
5:熱血。どんな時でも全力だが、たまに周りが見えてない。
6:不思議系。何を考えてるか分からないが好意は感じる。
第1章 冒険
『地を駆ける鱗』
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POW : やんちゃな性格の大蜥蜴を乗りこなす。
SPD : 慎重な性格の大蜥蜴と戦略を練る。
WIZ : 優しい性格の大蜥蜴と仲良くなる。
👑11
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トゥシュ村の正面にはなだらかな丘と平原が広がり、遠く湖が見える。
山方面には深い森。住民によると洞窟が点在しているという話だ。
村の裏手の崖を降りていけば、そこには波の穏やかな入江がある。
丘、平原、湖、山、森、洞窟、崖、海。
他にも、色々な風景がこの付近では探せそうだ。
この多様な自然こそが大型爬虫類を育んできたのだろう。
あなたはどこへ向かい、どんな相棒と出会うのだろうか。
黒鵺・瑞樹
アドリブ・アレンジOK
『D4。黒。考え中(あまり鳴かない)』
ドラゴン!成人はとっくに過ぎてるけど参加していいっていうのは嬉しい。
どこにいるかなぁ。なんとなく、感でふらふらうろうろ。こっち(湖)かなぁ…。水と影が両方ありそうな所。
会えるといいな。
ところで餌って何食べるんだろ?
多少多めに昼飯用の弁当は持ってきてみたが、人用のでも大丈夫か?
まぁ、遊ぶとかもよくわからんけどなるようになるでいいか。
基本出会えた子の観察して、様子とかしぐさとか癖とか知ろうとする。
平原を渡る風に銀の髪を流し、黒鵺・瑞樹(辰星月影写す・f17491)は草を踏んで歩く。
儀式に年齢制限がなくて良かった。10代後半に見えるが、瑞樹はもうとっくに成人の年齢を過ぎている。
「それにしてもドラゴンか。どこにいるんだろうな」
目の前に広がるのは草の海。
ドラゴンはおろか、他の猟兵すらも景色の中に溶け込んでしまっている。
「(こんな時は、自分の勘を信じてみるか)」
足を止め、青い瞳を閉じて第六感を研ぎ澄ませる。
わずかの間、風が止む。近くで水の流れる音がする。
目を開ければ小川があった。丘を流れ下ったその先は、空と雲を映した綺麗な湖だ。
「こっち、かなぁ……」
自信はないけれど、水と影、両方がありそうな場所。
直感に従って、瑞樹は再び歩き始めた。
●
湖畔にたどり着くと、瑞樹は木陰に腰を下ろす。風が作る小さな波の音を聞きながら、荷物の中から包みを取り出した。
お昼ご飯にはちょうどいい時間だ。
布を解けば大きなお弁当箱が現れる。蓋を開けて両手を合わせ、箸を取った。
「ところで、ドラゴンって何食べるんだろ?」
休憩中にも卵焼きを見つめて思案する。
予知では果物をあげていたが、他にも好物はあるんだろうか。
焼き色のついたウィンナーを箸でつまむ。
――ちゃぷん。
何かが跳ねたような水の音に、瑞樹は弁当から顔を上げた。
しばらく水面を見つめるが、変化はない。
今度は水面も視界に入れながらウィンナーをつまむ。
青い水面に波紋が生じる。水の下から真っ黒な棒が2本生える。続いて艶やかな毛並み、うるんで光る2つの珠、長い口吻。
サムライエンパイアの神社の彫刻でも見た事がある。『龍』の頭だ。
思わず視線を合わせると、再び『ちゃぷん』と水の中に潜ってしまった。泳ぎ去る様子はなく、水底からこちらを窺うような気配がする。
瑞樹は相手を警戒させないよう、静かに水際へ移動した。腕を伸ばし、箸でつまんだウィンナーを湖の方を極力見ないようにして差し出す。
「……食べるか?」
じっとしていると不意に箸が軽くなった。
片目で箸の先を見れば、そこにはウィンナーを咀嚼する仔龍がいる。
瑞樹の腕や肩に乗せられるくらいの大きさだ。細長い体は水に濡れてなお黒い鱗に覆われている。神秘的と表現するには、まだまだ輪郭の線が甘い気がする。
思い切って目を合わせると、ふいっと顔を逸らされた。が、逃げようとはしない。透き通った底の見えない黒い瞳で、しきりに瑞樹の膝の上を気にしている。
「わかった。もっと、だな」
苦笑しながらウィンナーを目の前に持っていってやると、仔龍は小さな口いっぱいにかぶりついた。
大成功
🔵🔵🔵
ヒナ・ローレンス
『A3。白。考え中(キュー)』
森に行きましょうか、程よく日の光も差し込んで散歩に丁度よさそうです。
あの子は蔦に引っかかってしまったんですね。
仔竜の頃は蔦を引っ張って外せるほどの力はないのでしょうか。
普通ならあんな引っかかり方はしないような…何かにびっくりして、枝から落ちて…絡まった?
怖がりさんだと思うので、安心させるより助けることに専念。
少しだけ、外すために近づくことは我慢してくださいね。
実際こうして果物の木に絡まっていましたし、この子はこういった物を好むのでしょうか?
…頑張ったご褒美、といっては何ですが。
この子が視線を向けている果実を取って渡してあげましょう。
森の中は想像よりもずっと賑やかだった。
梢では姿も知れない鳥たちが、初めて聞く声で歌っている。風にざわめく木々の葉が、森の中に注ぐ陽光を揺らした。
銀色の髪と白い瀟洒なドレスに緑の光と影が映っている。
背中の翼を蔦にかけてしまわないよう体に寄せて、オラトリオの聖者、ヒナ・ローレンス(今はまだ小さな光・f06137)は青い瞳を周囲に巡らせた。
木の葉の間から見える空が高い。見るもの聴くもの全てが興味深い。この世界の任務には何回か参加していたが、地域が変われば生態系も少しずつ違っている。
散歩がてら森の景色を楽しんでいたヒナは足を止めた。
「私はたしかこちらから来て……?」
すっかり方角が分からなくなっている。
空から村の位置を確かめるにしても、もう少し木々の開けた場所は無いだろうか。
明るい方へ歩き出した時、ヒナはその音に気付いた。
…………キュゥゥゥ……。
聴く者の胸をぎゅっと掴むような、悲しい鳴き声。聞き耳を立てて元を辿れば――いた。
あと少しで何の生き物か分からなくなるところだった。
楕円形をしたオレンジ色の果実に混じって宙ぶらりん。
手足も胴も、顔すらも蔦に絡め取られ、辛うじて僅かに開いた口の隙間で鳴いている仔ドラゴン。
雁字搦め、それとも毛糸玉のなりかけ? なにをどのようにして引っかかったのか分からない。ある意味、もの凄く器用に巻かれている。
ヒナは純白の翼で宙に上がると、蔦を切り離してまずは仔ドラゴンを地面に降ろした。その体はヒナの両手で抱えられるほどに小さい。
「……少しだけ我慢して下さいね」
安心させるより先に命を助けるのを優先する。
首を今にも締め付けそうな蔦を慎重に外す。目を圧迫している蔦を緩めれば、淡いブルーとマゼンタが入り混じったような不思議な色の虹彩に光が満ちた。
弾力のある蔦の端をほどいてはくぐらせ、それも無理なら切る。根気よく続けていると、真っ白な蝙蝠の翼が緑の下から現れた。
おびえていた仔竜も、その頃にはヒナが何をしているのか分かってきたらしい。
「キュー」
「ええ、もう少しですよ」
最初にこの子を引っかけたであろう蔦を最後に切れば、仔ドラゴンは小さな手足と翼を思いっきり伸ばした。鱗の先が半透明に光を通す、純白のドラゴンだ。
それから背中の翼で宙に浮こうとする…………意志は感じるのだが、なかなか浮き上がれない。
「(もしかして、元から飛ぶのが苦手だったのでしょうか)」
見ているこちらが疲れてしまいそうな速さで翼を動かし、ようやくヒナの手の高さまで飛んだ仔ドラゴンを手の平で受け止める。
蔦を引き千切る力も無く、疲労困憊しているドラゴン。
この手の上にいるのは、生態系の頂点に立つ姿とは違って見えた。
「頑張ったご褒美、といっては何ですが」
ヒナはドラゴンを抱きかかえたまま空に飛び上がる。この子が絡まっていた果樹の太い枝に腰かければ、甘酸っぱい香りが梢を満たしていた。
ひとつもいで、顔の前に差し出す。
「キュー」
ツルツルとした鱗をヒナの頬にすりつけてから、仔ドラゴンは果物の皮を器用に剥いで食べ始めた。
大成功
🔵🔵🔵
坂月・陽波
『B6、水色、考え中(フシャー)』
異なる生き物同士が絆を結ぶしきたり、か。分かり合えるのは良きことさ。猟兵も似たようなものだろう。
川は洞窟か、どこか落ち着ける場所に行こうか。
どこにいるかは分からないが、こちらに敵意がないと分かれば寄ってくるだろう。
見かけたらとりあえず食べ物をやろう。共に食を囲えばそれで絆は出来ると和尚も言ってたからな。
で、何をやればいいんだ?竜の食事事情には疎くてね。芋か干し柿ならあるんだが。
突然の雨に降られ、谷を行く坂月・陽波(暁は流霞に埋む・f02337)は木の下へ駆けこんだ。
空を閃光が走る。一拍おいて、ごろごろと音が聞こえる。
避難できる場所は無いかと見回せば、ひっそりと崖際の植物に隠れるようにして洞窟の入口があった。中に生き物の気配はない。
入口近くの枝を拾い集め、火打石でたき火を起こした。岩壁に寄りかかり暗雲を見あげる。
「これはしばらく止みそうにないな」
山などの起伏の激しい地形では、天気が急に変わる上に局所的な変化も大きい。
濡れてしまった三つ編みを一旦ほどく。
火の熱で着物と黒い髪を乾かしながら、何度目かの落雷を聞いた。
次の稲光を目にした時、洞窟の外の影に陽波は気付いた。
大きな頭、長い首、発達した上半身に長い尾。腕の筋肉の間に皮膜が張っている。
「……ワイバーン」
ドラゴンの顎からは絶えず雨の雫がしたたり落ちている。
陽波は何も言わず、立ち上がって洞窟の入口をあけた。ドラゴンは目の前の生き物の行動をじっと見つめる。
再び雷が大地を揺るがした。
「フシャー……」
皮膜の先の鉤爪と後ろ脚を不器用に使って、地を這うようにドラゴンは洞窟の中に入ってきた。
彼が洞窟の奥の壁に身を寄せるのを待って、陽波はたき火の前に戻る。子供のワイバーンはそれをひとときも気を抜かずに見ている。
野生に生きるものだ。そのくらいの警戒心は持っていてしかるべきだろう。
ごく自然に、この場にいるのが当たり前のように。陽波はたき火に薪をくべ、乾いた黒髪を三つ編みに結い直す。
ぱちぱちと薪がはぜる。雨の雫が入口の水たまりに跳ねて音をたてる。ふたつの音は洞窟の奥に反響し、共鳴するように猟兵とドラゴンの間に響いた。
不思議と心が落ちついたのは、陽波だけではなかったのだろう。
いつしかワイバーンは、さっきよりもずっと近くにいる。
「これくらいしか持ち合わせてないが、食べるか?」
芋と干し柿を取り出す。食を囲えば絆ができる。そう『陽波』に名をくれた和尚も言っていた。
腕の一本、ひとかじりにできそうなドラゴンは、ゆっくりと芋の匂いを嗅ぐと鼻息で吹き飛ばした。どうやらこちらはお気に召さなかったらしい。
対して干し柿は、同じく匂いを嗅いだ後に舌で巻き取るようにして口に運ぶ。牙にくっついて食べにくそうではあったが、初めての味だったようだ。
もうひとつ干し柿をねだってから、ドラゴンは陽波のすぐ傍で体を丸める。
すぐ傍に置かれた頬に触れてみる。
火の熱に表面は暖められ、芯には涼しさが残っている。さっきまでの空のような明るい水色の鱗。
ゆっくりと撫でると、仔ドラゴンは明るい水色の目を細めた。
「異なる生き物が絆を結ぶしきたりか……」
まるで猟兵のようだと陽波は思った。
雨が上がる。
夏空が戻ってくる。
1人と1匹は、連れ立って洞窟を出た。
大成功
🔵🔵🔵
落浜・語
『D6。鈍色。つけない(キュウ)』
ドラゴンとか見てみたいんだよな。
ってことなんで、相棒というかお目付け役みたいなカラスには、今回は留守番してもらって、だ。
山の方にいってみようかな。渓流とかなんとなく、いそうな気がする。
あくまで感だけどまぁ、全く外れはしないと信じたい。
散歩の延長ぐらいな気分で、行くぐらいがいいかな。
見つけたなら、警戒されないように自分からは近づかない。
でもまぁ、持ってる菓子で釣れそうなら釣る。
アドリブ歓迎
「(ドラゴンとか見てみたいんだよな)」
落浜・語(ヤドリガミのアマチュア噺家・f03558)は滝の横の岩場を登っている。
水と龍は縁が深い。
仔ドラゴンと聞いた時、真っ先に渓流の風景を思い出した。岩の間を縫って進む急流に、湧いたばかりの澄みきった冷水。自然が豊富な餌の取りやすい場所で暮らしているのではなかろうか。
となれば目指すのは山だ。
相棒というよりもお目付け役のような『カラス』は今回留守番だ。
着慣れた着物を洋装に替え、語はドラゴン探しに村へ来た。
任務に戦闘はつきものだ。
噺家の自分と猟兵の自分は違う存在。道が、気持ちを傾けるベクトルが違う。その切り替えの意味も込めて、任務では着物を洋服へと変えている。
巨石が転がる河原を越え、時には浅瀬を歩いて渡って上流を目指す。
途中幾つかあった滝は迂回して登ったが、今回はそうもいかない。断層のようにせりあがった崖が両側に続いていた。とはいえ、高さは語の背丈の倍ほどか。
崩れにくそうな場所を選んで、岩に足をかける。
それは崖の頂上目前のことだった。
「ギュウ!!」
何の声だと思う暇もなく、岩を掴もうとした手がぴりりと痺れる。落石を警戒して崖に頭を寄せれば、空いたうなじと上着の襟のわずかな隙間に何かがすっぽりと収まった。
石では無い。石のような固さでひんやりしているが、少なくとも石は動かない。
「頼むから背中はやめてくれよ……」
手を離すわけにも、上着を脱ぐわけにもいかず、語はそのまま崖を登り切った。
岩に腰かけ上着を脱ぐと、思った通りと言うべきか。長い体の仔龍がきょとんとした表情で落ちてきた。
鱗の色は鈍色。艶やかな光沢があり鉄のようにも見える。てんでばらばらの方向に散った薄墨色のたてがみの中からは、2本の角が生えだしていた。
想像するに体の色を生かして岩に擬態していたのだろう。
警戒されないように近付くつもりの語だったが、仔龍からはこちらを警戒するそぶりも見受けられない。黒曜石を球に磨いたような瞳で、目の前の語をじっと見ている。
「人を初めて見たのかもな」
「キュウ?」
首を傾げる。随分といたいけなドラゴンもいたものだ。
語は懐の巾着袋を探ると、白い金平糖を目の前に置いた。匂いを嗅いだ仔龍は、それを小さな前脚でころころと転がしだす。そういえば、龍は玉を持っているとも言い伝えられていた。
「そいつは食べられるんだ」
もひとつ金平糖を取り出すと、語は自分の口に放り込んでみせる。
理解したのかどうなのか、仔龍はぱかっと口を開けた。語は片眉を上げ、小さな牙が並んだ口の中にひとつ置いてやる。しゃりしゃりと音をたてて食べている。
「うまいか?」
「キュウ!」
「……一緒に来るか?」
「キュウ!!」
仲良くなれたんだと思う。たぶん。
その証拠に、腕を差し出せば自分から語の腕に登って、肩に乗り――。
「だから上着の中に入ろうとするのはやめろって」
大成功
🔵🔵🔵
吉備・狐珀
『D4。月白色。月代(つきしろ)。時々「ぐるる」と鳴く 』
【第六感】で海の方に気配を感じたので入江に向かいます。
村の人から「好物の果実だよ」とわけてもらったけれど、海に住んでいたら魚の方が好きかな…。念のため魚も買って持って行きます。
…お、お肉もいるかな…。
入江についたら海鳥にドラゴンを見かけていないか【話し】をしつつ、お礼にもって来たお魚をドラゴンの分を残しつつあげます。
ドラゴンに会えたら、怖がらせないように急には近づかず様子を観察。
果実をかじって美味しいよーと見せながら、ドラゴンにも差し出します。
食べてくれたら、私も持ってきたお弁当食べつつドラゴンと話しをして距離を縮められたらいいな。
「ドラゴンが好きな果物かい?」
「はい」
吉備・狐珀(ヤドリガミの人形遣い・f17210)が尋ねると、人の良さそうなおかみさんは狐珀を通りに連れ出した。洗濯カゴを前脚にかけ陸竜がついてくる。近くで見た抹茶色の鱗を持つ生き物は、巨大な蜥蜴を思わせた。
「ここの並木は皆の物だからね。好きなだけ取っておいきよ」
「ありがとうございます。ドラゴンは他に何を食べるんですか?」
「そうさね、その仔の好みとどう育てるかによるね。だいたいは仔竜の時に食べていた物に餌付くのが多いよ」
まずは餌を消化できるかどうか。その上で力仕事なら肉や魚を。持久力をつけるには卵を。穏やかにするなら植物中心に与えるのが村の伝統的な給餌法だという。
「雑食にして両方食べられるようにしておく仔が、一番多いかね」
さすがトゥシュ村。台所を預かる主婦にとってもドラゴンの食性は一般知識のようだ。
礼を言い、村では魚を買っていくことにした。
●
第六感を頼りに、村の裏手から出発する。
入り江には、断崖絶壁に張り付いた細い道を下っていくしかない。崖を吹き上がる海風が、狐珀の和服の袖を空に舞いあげた。体ごとさらわれないように進む。
それでも不思議と怖くなかったのは、眼下に広がる景色のおかげだ。
外海から隔絶された露草色の海の水。三日月の形をした波打ち際に、真っ白な砂浜。人の手がほとんど入らぬ入り江は、自然が作った宝石のようだ。
――ドラゴ……? オオトカゲカ。
――アイツラ、タマゴニヒナネラウ。
――ガケ、コナイ。ウミ、スナハマ。
龍の居場所を尋ねれば、魚数匹を情報料に海鳥はこう話した。
荷物を日陰に置いて、砂の上に座る。
太陽は頂点からやや傾き、海は淡い金色を纏った。
狐珀は不意に立ちあがった。目にしたものに息をするのも忘れ、着物の裾が濡れるのも厭わず、寄せる波の中に歩み出す。
金色の波の中、冴えわたる月を思わせる白がおどる。波の上をはねた体が紫電を纏う。電流にぷかりと浮いた小魚をくわえて、仔龍は海面に頭をもたげた。
「綺麗……」
大きな声ではなかったのに、顔がこちらに向く。
波が引き、再び寄せる。
帰ってしまう前に何か言わなくちゃいけない。
「一緒に、お弁当食べない?」
仔龍の鱗は月白色だった。青さを内に秘めた、白磁のような白。たてがみは同じ色で、撫でるとようやく生えてきた角を手の内に感じる。まるで職人が作った像のような造形の中で、狐珀を見あげる目だけが海の色をしている。
「やっぱり魚が好物なんだね」
ぐるる、と仔龍は答えた。言葉は出なくとも、こちらの言葉はほぼ理解しているようだ。
大きな魚を丸ごと一匹平らげた仔龍に、狐珀は荷物の中から黄金の果実を取り出す。
「こっちも食べてみる? 檸檬に見えるけど……」
この地方は初めての狐珀にも、海で暮らしていた仔龍にとっても見慣れぬ食べ物だ。
意を決して果実を二つに割って一口。
「すっぱ…………くない! 甘くて美味しいよ!」
訝し気な視線を受けもうひとかじり。笑って差し出せば仔龍はもくもくと食べ始めた。
「(つきしろ……月代かな)」
この仔をあらわす響きを見つけ、狐珀は仔龍が果実を食べ終わるのを温かく見守った。
大成功
🔵🔵🔵
緋神・美麗
アドリブ・絡み歓迎
『A3。白。シルヴィア(ガルルル)』
まさかドラゴンを懐かせることが出来るとはね。これはすごく興味あるわね。良い子に出会えるといいんだけど。
とりあえず手っ取り早く懐かせようと思ったらやっぱり餌付けかしら。ドラゴンってやっぱりお肉が好きなのかしらね?(上質の牛の生肉ブロックを用意)
丘や平原なら見つけやすいかしらね?
ドラゴンを見かけたらお肉を近くに置いて様子見する。
目の前には青の水平線。背中には緑の平原と丘。
海から吹く強い風を全身で受ける。
狭いグリモアベースから転移してきた後の解放感を、今日はいっそう強く感じる。
セーラー服にショートブーツという異世界の出で立ちで思いっきり体を伸ばした。
「よし――やりましょうか! 良い子に出会えるといいんだけど」
緋神・美麗(白翼極光砲・f01866)は見晴らしのいい平原で、仔ドラゴンを探すことにした。
美麗は海を右手に歩いていく。
草の先が順番にかしぎ、波のように風を伝えていく。
遠くで草を食んでいる二足歩行の仔ドラゴンを見つけたが、美麗が近づくよりも早く走り去ってしまった。
仔竜の中でも一番大きな陸竜系ですらそうなのだから、ドラゴンの種類によっては豆粒くらいにしか見えないかもしれない。視力には自信がある美麗だったが、ある程度まではおびき寄せたほうがいいだろう。
「これで釣られてくれるかしら」
草の下から突き出ている岩の上に、ブロック肉を一切れ置く。
爬虫類の中には嗅覚の鋭いものがいるという。海風はどこまで『いい生肉』の匂いを届けてくれるだろうか。
ちょうどよく近くにあった低木に寄りかかり、直射日光を避けながら待つこと10分少々。
唐突にドラゴンは現れた。
「(……来たわね)」
岩の傍の草原に、空から白いものが落ちてきた。着地失敗でも恥ずかしがっている暇はない。小さな手足で岩によじ登ると周囲を忙しく確認し、生肉にがっつく。背中に蝙蝠の翼を生やした飛竜系のドラゴンだ。
驚かさないようそうっと立ち上がって美麗は近付いた。
「ガルルル……」
弾かれたように顔を上げて仔ドラゴンは唸り声をあげた。緑がかった眼をめいいっぱい尖らせ、肉を取られまいと背中に隠して後ずさろうとする。
「それを置いたのは私よ。ほら、まだまだあるわ」
ブロック肉の山が乗った皿を美麗が見せると、ドラゴンは信じられない物を見たように目を丸くして、よだれをだーっと流した。唸り声が一気に弱まる。
おいで、と呼ぶと、美麗の後をついてきた。
さっきの顔に唸り声はどこへやら。
木陰でころころと目を丸くして、白い仔ドラゴンは青い空に向かって口を開ける。
美麗は上質な牛の生肉ブロックをその口に入れてやる。
仔ドラゴンは咀嚼して飲み込み『かふっ』と満足そうな息を吐く。美麗の思った通り、肉は好物だったようだ。
「現金ね。それにちょっと食い意地が張ってるのかしら?」
「ガルル!」
そうだよ、と言っているわけでは無いだろうけれど。
ぺたんとお尻をついて『おすわり』しているのを見ると、一瞬何の生き物だったか忘れてしまう。最初は肉だけしか見ていなかったエメラルドグリーンの瞳が、今は美麗の顔を見あげていた。
「……シルヴィア。名前はシルヴィアにしましょうか」
「ガルル……?」
「さ、まずは暗くなる前に村に戻りましょう、シルヴィア」
飛ぶのも歩くのもまだ拙い仔竜を腕に抱えて、美麗は来た道を戻っていった。
大成功
🔵🔵🔵
真守・有栖
どらごん。
狼たる私に相応しき仔はいるかしら?
たぶんこっちね!いや、あっちかしら?どっちかしら!?
むむむ、と。狼の感と勘を巡らせながらわふわふと探索。
こう、わふん!と来るどらごんはー……んんん?
どらごんがしかの群れに追いかけられてるわ。ぼっこぼこじゃないの!?
わぅう……しょうがないわね!助太刀するわっ……って、わふぅううううう!?!?
ぜぇっ……ぜぇ……よーやく、振り切ったわね!
まったく、どらごんともあろうものがえものに追われるなんて!どらごんにあるまじきことよ?
…………
じぃーっ。ふーん?
決めたわ。俊狼にて竜狼たる私が狼を!どらごんを!みーっちり教えてあげるわ!
『C3。銀。考え中(おまかせ)』
「はたして、狼たる私に相応しき仔はいるかしら?」
真守・有栖(月喰の巫女・f15177)は勇ましく村を出発した。
トゥシュ村の正面はだだっ広い平原だ。狼の耳をぴんと立てて周囲の音を聞き、狼の眼はなにものも見逃さないよう緑の隅々まで配らせる。
「むむむ、たぶんこっち! いや、あっちかしら? ど、どっちかしら!?」
狼の勘は気まぐれだけど、あながち外れてもない気がする。今だってほら――。
「あら、森の近くに土煙?」
事件の匂いがする。何かがきっと起こっている。
有栖は草の大地を蹴って走り出した。
鋭い爪で地面をとらえて銀色の陸竜が走る。人1人ようやく乗せられるくらいの二足歩行のドラゴンだ。長い尾でバランスを取り、逞しい後脚を必死に動かす。
陸竜の脚力は馬を一撃で蹴り殺してしまうとも言われている。
「そんなどらごんが、どうしてしかの群れに追われてるのっ!」
「グアア!?」
突然横を走り出した有栖に、仔竜は驚きを隠せない様子だったが脚は止めない。
「狼がひつじに追われてるようなものよ。いーい? 私が止めるから見てらっしゃい」
川にかかる橋を渡った所で、有栖は勇ましく振り向いた。
鋭く尖った角を前にかざして、牡鹿の群れが土煙をあげて突進してくる。
「…………。」
対峙しようと向き直ったはずの有栖が再び仔竜の隣に戻ってきた。
「わふぅぅ!! あんなのムリよ! どうやってあそこまで怒らせたの!」
「グアアァ……」
そんな会話(?)を交わせる余裕のある有栖と仔竜だ。彼らを巻くのも時間の問題だろう。
だが、シカの群れは突然足を止めた。くるりと反転し、元来た方へと走りはじめる。
有栖は振り返って得意気に両手を腰に当てた。
「ふふん、ようやくこの俊狼たる私の存在に――」
「グアッ!? グアアア!!!」
「なによ、今いいところなのに」
仔竜に前脚で腕を引かれ、丘の上を見た有栖の背中を冷や汗が伝う。
大型の陸竜がこちらを見ている。大きさは隣の仔竜の優に2倍。本物の肉食爬虫類だ。
「ゴォォォ!」
獲物を睥睨した大人の陸竜は、咆哮して牙を剥き、襲いかかってきた。
逃げ出した有栖と仔竜の背中に熱い息が迫る。このままでは間違いなく追いつかれる。
「……! こっちよっ!」
刹那の判断で仔竜に飛び乗った有栖は腕で首を回し足で指示を出す。
一緒に橋の欄干から川面へと身を躍らせた。
「ぜえっ……ぜぇ……よーやく、振り切ったわね」
さすがに川の中までは追ってこない。命からがら川岸まで泳ぎついて、その場に座り込んだ。
「まったく、どらごんとあろうものが追われてにげるなんて! どらごんにあるまじきことよ?」
「グアァァ……」
有栖より青みがかった紫の瞳がしゅん、と下を向く。
めんぼくない、と言わんばかりの仔竜を有栖はじぃーっと見つめた。
「……決めたわ」
有栖は立ち上がって仔竜に指をびしっとつきつけた。
「俊狼にして竜狼たる私が狼を! どらごんを! みーっちり教えてあげるわ!! 狼竜として、生態系の頂点をめざすの!」
「グアア!?」
「そうと決まったならふさわしい名前を考えないと――」
「グアア…!」
村に向かって歩き出した有栖の後を、まるで会話でもするかのように仔竜が付き従った。
大成功
🔵🔵🔵
雛菊・璃奈
ん…相棒、じゃなくて家族に仔竜が他に3匹程いるけど…家族が増えると嬉しいな、と思って参加してみたよ…。
『D4、紫がかった黒、アマツ(くるる)』
仔竜が普段好きで食べてる焼いたお肉とかメイド人形達に作って貰ったお弁当を持って参加…。
自分と波長の合いそうな子を探して、魔力や呪詛の感覚のままにふらふら…。
ここ、と思う適当な場所に辿り着いたら、後は気を鎮めてゆっくりと姿を現すのを待つよ…。
姿を現したら声を掛けてお話したり、お肉を渡したり、撫でたり…。
先ずはコミュニケーションを取って、自分の事を知って貰い、仲良くなる事から始めるかな…。
それで一緒に来てくれるなら、改めてよろしくね、って…
※アドリブ等歓迎
トゥシュ村の外に出ると、雛菊・璃奈(魔剣の巫女・f04218)は目蓋を伏せた。そうして視覚情報だけに囚われないよう、目に映らない魔力や呪の流れを視る。
西の森の方角。紫の薄墨のように力が流れ出している。
まっすぐ向かって2時間はかかるだろうか。
「(いってくるね……)」
待っている家族たちに、心の中で声をかけた。
そこは、森と山の間に深く切れ込んだ谷だった。
崩れて形を失いつつある石造りの建造物が、蔦まみれになってひっそりとたたずんでいる。いつの時代のものとも知れない、古代の神殿跡のようだ。
オブリビオンや敵性存在の気配はまったくない。誰からも忘れ去られ、ただ静かに崩れ落ちていく古代の名残。
石の柱が四隅に立った、正方形の祭壇に上がって璃奈は思う。
「色は黒でも……これは呪の類ではないね……」
いつか誰かが舞い踊った場所。身にまとっていた高尚な黒。人々の願いの残滓。
燦々と陽のそそぐ空の下、魔力の墨色が揺らめく中に璃奈は座る。
気を静めて目を閉じる。静けさが訪れるまでじっと待つ。
この地に同じく惹かれたもの。波長を同じくするもの。声に応えるもの。
璃奈はゆっくりと目を開くと、口の端をかすかに上げて微笑んだ。
「こんにちは」
璃奈の前に仔龍が浮いている。
他にも仔竜がいるから分かる。この仔はオブリビオンではない。ドラゴンと爬虫類の間の曖昧な存在のように、璃奈の目には映る。
魔力の流れの中、仔龍はその場に留まろうとするように体をくねらせていた。
鱗の色は紫がかった黒。光の当たる角度によっては、より紫が強調されている。細く艶のある質感のたてがみと、短い2本の角は同じ色。黒く丸い眼球の奥には、紫の炎のような光彩が揺らめいている。
「わたしが探しに来たのは相棒、じゃなくて……家族なの」
帰りを待っている、元はオブリビオンだった3匹の仔竜たちの姿を思い描いて言葉を紡ぐ。今の璃奈の大切な家族だ。
仔龍は璃奈の話をじっと聞いていた。
この龍もまた、ずっと独りだったのだろう。見た限りこの種族は、血のつながりのある家族とは行動していない。卵から孵った途端、もしかしたらその前から弱肉強食の世界に晒されている。それが自然の摂理であり、彼らが強い個体のみ生き残らせる術だ。
そして、人と絆を結ぶのもひとつの生き方だ。
「あなたがもし一緒に来てくれるなら、仲良くなることから始めたい……」
しばらくそのまま時がたつ。黒い眼が鏡のように璃奈の姿を映している。
答えの代わりに仔龍は紫の虹彩を揺らして、璃奈の前で首を垂れた。
息をついて、小さな額を指先で撫でる。
「うん。改めてよろしくね。……名前、つけないとね。――アマツはどうかな」
世界によっては『空の』を表す言葉。
くるる、と龍は小さく鳴いて、璃奈の肩に降りた。
大成功
🔵🔵🔵
紅狼・ノア
*アドリブ歓迎
『A6。濃い青。考え中(…ガルル)』
ドラゴンってあのドラゴンだよね‼(尻尾ブンブン)
しかも仔ドラゴンかぁ、どんな子かな?楽しみ~
さで何処に行こうか…あそこの森が気になるなぁ【野生の勘】
(森の中)
着いたはいいけど…さっきから誰かにつけられてる感じする
振り返って見るといない
まだ歩くやっぱり何がいる
振り返る、いないのを何回か繰り返すもいない
一か八かやってみるか
まず走る、木の陰などに素早く隠れる、そして確認…あれ?隣に…青いドラゴンがいるのですか…めっちゃガン見…え、どうしよう(てかいつの間に)
(時間が進み、今だお互い見つめ合う)
えっと、ジャーキー食う?
この子謎すぎ!しかも逃げないし!
「ドラゴンってあのドラゴンだよね!!」
いつになく赤い瞳を煌めかせ、真っ黒な狼の尻尾を振りながら紅狼・ノア(捨て子だった人狼・f18562)は森へ出発する。
この世界の脅威でもあるドラゴン。まさか仲間に出来る日がくるとは思わなかった。
オブリビオンなら大抵が人に害をなすはずだが、儀式がはじまる前に村でちらっと見かけた大人のドラゴンたちはごく平穏に暮らしているように見えた。大きも馬よりひとまわり大きいくらいだったろうか。人間が扱えるだけあって、比較的小柄な種族なのかもしれない。
「――ってことはだよ。仔ドラゴンはもっと小さいのかな!?」
どんな仔に会えるのか今から楽しみで仕方ない。
心が弾むのを抑えきれないまま、ひんやりとした空気の漂う深い森へと足を踏み入れる。
動物と育ったノアにとって自然の中は居心地がいい。これで虫がいなければ最高なのだが、極力遭遇しないように怪しい場所は避けて通る。
野生の勘を頼りにノアは奥へ奥へと進んでいく。
しばらく歩いてノアは足を止めた。
くるりと振り返る。
葉の隙間からこぼれる日差し。太く根を張る木々。張り出した枝。緑の天蓋。落ち葉に倒木。
何の違和感もない森に首を傾げ、再び前を向いて歩きだす。
歩きながら、頭の上の狼の耳を斜め後ろに傾ける。
ノアが枯れ葉を踏む音に混じる、微かに風を切る音。
今度は勢いよく振り向いた。
「――!?」
何か細長いものが幹の裏に隠れるのが見えた。走って戻って木を見あげるが、そこにはもう何もいない。
「(一か八か、やってみるか)」
腕組みしてから頷いて、再びノアは歩き出した。
思った通り、謎の気配は十分距離をとってからついてくる。
――今度は思い通りにはさせない。
小川に突き当たった所で、ノアは強く地面を蹴った。走って加速し一気に距離を突き放す。ジグザグに幹の間を駆け抜けて、茂みに勢いよく飛び込んだ。
伊達にシーフの心得があるわけじゃない。身を低く沈めて気配を消し、赤い瞳だけ葉の間から覗かせて追跡者を待ち構える。
だが、5分ほど待ってみても何も現れない。どうやら本格的に巻いてしまったらしい。
脱力して空を仰ぎかけ、ノアは呆気にとられた。
ノアの頭上に垂れている、濃い青をした爬虫類の尻尾。羽ばたいている蝙蝠の翼。ノアが見ていたのと同じ方向を見て、茂みから顔を出しては引っ込めている。
小川の音と川の上を吹く風が、仔ドラゴンの気配を巧妙に隠していた。
「――つかまえた」
ノアは両手を上に伸ばすと、仔ドラゴンの両脇を掴んで目の高さに持ってくる。
もっと暴れるかと思ったが、仔ドラゴンはきょとんとしてノアと見つめ合うと、勢いよく尻尾をぶんぶんと振りはじめる。青緑色の眼をやや細め、まるで笑っているかのようだ。
「もしかしてお前、遊んでた?」
「……ガルル!!」
いい返事だ。まったく警戒していない。
「……ジャーキーあるけど、食う?」
「ガル!」
なんだか脱力させられながらも、こうしてノアと仔ドラゴンは出会ったのだった。
大成功
🔵🔵🔵
フレミア・レイブラッド
ドラゴンと仲良くなるっていうのは良いわね♪
『B4。紅。レクス(キュルル)』
とりあえず、気まぐれにドラゴンがいそうなところ…獲物が多そうな森とか丘陵地帯とかが良さそうかしら?
そちらに行ってみようかしらね♪
ドラゴンがいそうな場所に着いたら、【念動力】で周囲の生物や状況を探知。
危険なオブリビオンや魔獣の類は先に始末しておいて、猪とか果物とか獲物になりそうなモノを用意。
後は時折【念動力】での探査をしつつ、【歌唱、誘惑】で華麗に歌いながら相性の良さそうな仔ドラゴンが現れるのを待とうかしらね♪
現れたら、微笑みかけてご飯あげたりコミュニケーションを取ってみるわ。
仲良くなれると嬉しいわね♪
フレミア・レイブラッド(幼艶で気まぐれな吸血姫・f14467)は気の赴くまま、丘陵地帯へ足を向けた。気まぐれとは言いつつも、森と平原の境にあるここを選んだのにはわけがある。
「この辺り、獲物が多そうだもの♪」
子供のドラゴンが身を隠す場所があり、餌にも困らない場所。大自然の中でもある程度条件は限られてくる。
見つけた果樹から、念動力で黄金色に熟れた実を集める。その最中、非力な少女と見誤って襲ってきた魔獣を槍で仕留める。収穫したものを指一本で宙に浮かせながら丘陵地帯を奥に向かうと、森との境界に綺麗な泉が沸いていた。
金色の髪に散った返り血を洗い流し、フレミアは念動力も使って周囲の気配を探る。危険なオブリビオンや魔獣の類がいるなら、最低限安全を確保してから行動するつもりだった。
明るい泉には鳥の歌が響き、色とりどりの蝶が浅瀬に水を吸いに来る。海から吹く強い風は森に遮られそよ風となり、暖かな日差しが草花に注いでいた。
平和そのものの光景だ。
フレミアは紅色のドレスの胸に手を当てると歌いはじめた。
歌詞のない歌に声で旋律を。
半音階上がるフレーズには誘惑を。
少女のような外見には不釣り合いなほどの、あでやかな魅力を纏わせた歌。
ドラゴンが歌を聞くかどうかは分からない。されども歌は時として、言葉の壁くらいなら軽く飛び越していく。
「(私の心と共鳴しあう仔がいるならば……)」
金色の髪を揺らす風がフレミアの声を運ぶ。
黄色い小鳥が近くの枝にやってくる。ふわふわと暖かい色の蝶が周囲を舞っている。
両腕の皮膜を広げて、一体のドラゴンが空から草地に着地した。地面に腕と皮膜を伏せるようにし、長い首だけを持ち上げて歌を静かに聞いている。
最後の楽章を歌い終えて、フレミアは優雅に一礼して微笑みかけた。
ワイバーンと呼ばれる種族の仔ドラゴンは、餌の選り好みはしなかった。
果実を与えればうまそうに皮ごと平らげ、魔獣の肉は後ろ脚と鉤爪で押さえつけながら、綺麗に骨と毛皮だけにする。
全身を覆う鱗は紅。グラスのワインを光に透かした時にこんな色になることがある。丸い瞳も紅……と一言では言いがたい。透明に透き通った玉の中心から、紅色がにじみ出したような色をしている。
大人しい竜の隣に座って鱗に手を這わせれば、燃えるような色に反してひんやりとしていた。体にたまった熱を吸い取ってくれるような心地よさだ。
「あなたの名前はレクスにしましょうか」
暗くなる前に村に帰ろうと立ち上がると、レクスはフレミアの指をごく軽い力でくわえて泉の前へと連れていく。そして少し離れて地に伏せる。
「……もしかして、アンコール?」
キュルルルルル……と、仔竜は声の高さを変えて鳴く。さっきうたった歌のごく一部。ワンフレーズにも足りない、なりかけの歌。
「そんなに気に入ってくれたのね♪」
帰りは予定より遅くなるけども、それも悪くはない。
フレミアはドレスの胸に手を当てた。
大成功
🔵🔵🔵
サニー・アンダーテール
『A1。青。シアン(キャッキャッ)』
(喧嘩友達、悪友みたいな関係を目指す)
ドラゴンはおっきくて怖いけど、子供なら怖くないもんね!
捕まえて仲良くなって、そして子分にしてあげよう!
森の方へと飛んでいきドラゴン探し
子供なら常にお腹が空いている筈
先に美味しそうな果実を集めちゃって、それを餌に言うことを聞いてもらっちゃおう
ふふーん、ぼくって頭いい!
頑張って果実を集め終わったら一旦休憩
美味しそうな果実だなぁ…ぼくも一個食べちゃお!
いただきまーす、と食べようとしたところで仔ドラゴンに奪われる
あー! それはぼくのだぞー! 返せー!
当初の目的を忘れてわーわーキャッキャッ
こいつ、ぼくのことからかってるな…1
海から風が吹く。
背中のフェアリーの翅は、サニー・アンダーテール(極楽気楽つむじ風・f06667)をあっという間に空高くへと運んだ。
そのまま海風に乗って草原を越え森の上空まで来ると、サニーは高度を落とした。一面の緑の点描画の中から、黄色い点が混じる樹を見つける。点の正体が果実なのを確認すると、螺旋を描いて樹の下へ舞い降りた。
「へへ、ぼくの作戦はこうだ! まず、ドラゴンが好きな果実を集めまくる!!」
妖精の体でぎりぎり抱えられる果実の見た目は、丸いレモンのようだ。梢を飛び回るだけで、甘く爽やかな良い香りがした。かぶりつきたい欲求をぐっと抑え『護剣』で果実を枝から切り離す。果実を切り株の上に運んでは樹上に戻り、再び果実を収穫しに行く。
できあがった黄金の果実のピラミッドを、サニーは満足気に見あげた。
「頑張って集めたからしばらく休憩!」
サニーはピラミッドの最下段の果実に腰かける。手を後ろに置き足を揺らして想像の翅を伸ばす。
なにものかが最上段の果実をこっそり頂いていったのには気付かない。
「大人のドラゴンはおっきくて怖いけど、子供なら怖くないもんね。この果実を餌にして言う事を聞いてもらって、それから子分にしてあげよう!」
2段目の果実が次々と姿を消していく。
「ドラゴンって言っても、子供なら常にお腹がすいてる筈だよね。――それにしてもいい匂いだな。ぼくも一個、食べちゃえ…………あーーっ!!!」
振り向いたサニーは、ピラミッドの上段を頬張っている不届きものにようやく気付いた。初夏の空のような水色鱗の仔ドラゴン。口から腹にかけて、甘酸っぱい香りの果汁まみれになっている。
そもそもドラゴンを探していたような気がしなくもないが、それはそれ、これはこれだ。
自分とほぼ同じ大きさで、体格なら相手が勝る。そんな仔竜にサニーは物怖じせずに猛然と抗議した。
「それはぼくのだぞ! 返せー!!」
仔竜は食べかけの果実を手に、背中の蝙蝠の翼で宙に逃れる。追いかけたサニーの腕をかいくぐり、くるりと空中で一転。その間に果実を飲み込んで新たな1つを手に取った。
「キャッキャッ!!」
しばらく空中での追いかけっこが続く。
「こいつ、ぼくのことからかってるな……!」
仔ドラゴンに更に3つの果実を奪われたサニーは、むうっと頬を膨らませると膝を抱えて後ろを向いた。
その姿を仔ドラゴンはじっと見つめる。口先を使って果実の皮を器用にむく。食べられるようになった果肉をサニーの前に差し出す。
「おまえ……ぼくのために?」
「キャキャッ!」
一口かじってみる。レモンの味に似ているが、甘みの勝った爽やかな果汁が口いっぱいに広がった。
「おいしいや。ありが――って、元々ぼくが集めたやつじゃん!!」
「キャッキャッキャッ♪」
仔竜はサニーの口に手についた果汁を、淡いピンクの舌でべろべろと舐めはじめた。
「や。やめろー! ちょっ、うくくくくく……脇腹はダメだーー!!」
このあと、仔ドラゴンはサニーによって『シアン』と名付けられることになる。
大成功
🔵🔵🔵
アオイ・フジミヤ
言葉がなくとも縁を結べる
それは暖かな陽だまりの様な希望だと思う
『D6、白、考え中(みゃー)』
マリモくん、あなた相棒の動物になるのかな?
無口な親しい「隣人」のUDCは、不満げにぽすんと跳ねる
ふふ、違うね、ごめん
(でも髪に隠れてくれた)
海の浅瀬をのんびり
あ、変な貝みっけ
指を伸ばしたら、綺麗な真っ白い子とかち合った
金色の眼に見つめられる
どうぞ、と渡してあげると彼?はぱくんと貝を飲み込み
お返しにとばかりに別の貝を渡してくれた
優しいね、きみ
チョコレートを差し出す
食べる?甘いよ
いらない?そっかぁ、辛党かな…
笑うとそっと指先に触れてきた
不思議だね、何もわからないけれど
私、きみのこと好きみたいだ
〇アドリブ歓迎
アオイ・フジミヤ(青碧海の欠片・f04633)は崖の上昇気流を背中の翼で包み、砂浜の上に降りた。
波打ち際でサンダルを脱ぐ。
あたたかな砂に薄いベールをかぶせるように波が寄せ、指の間を洗うようにして引いていく。静かなざわめきが、浅瀬を包んでいた。
髪の内側で体を揺らした『隣人』に、アオイは指先を触れさせる。
「マリモくん、仔龍はあなたの相棒の動物になるのかな?」
海の鬼と呼ばれたUDCは、ぽすんと跳ねると再びアオイの藍色の髪の中にもぐりこんだ。
「ふふ、違うね、ごめん」
親しい隣人は、どうやら今回は不満げなようだ。
アオイは砕ける波を素足で踏んで歩きはじめる。
三日月型の波打ち際の先まで来て足を止めた。楽園の終わりは恐ろしくも美しい。
宝石のような色の入り江は、外海に向かって深く色を沈ませている。青はもっと深い青へ。真っ暗闇の世界をその下に秘めている。
背中合わせの美しさと畏れが、さざなみのように心をざわめかせる。
足の裏のかすかな感触に屈んでみると、砂の中から巻貝が出てきた。住人のとうにいない、白とピンクの縞模様。
「みゃぁ……」
貝殻の向こうで声がした。
真珠のように丸く淡い金色の瞳がアオイを見あげている。ほっそりとした体つきに、盛り上がった雪のようなたてがみは影になった部分が薄く青みがかっている。
東洋系の仔龍だ。
探している時には見つからないのに、探すのを休んだとたんに見つかってしまう。アオイは目を伏せるようにして微笑んだ。
「これが欲しいのかな。どうぞ」
巻貝を手の平に乗せて顔の前に差し出す。受け取った仔龍は、カリカリと音をたてて貝殻を食べた。釉薬を塗って焼き上げた陶器を一枚ずつ重ねて張り合わせたような鱗をしている。
この子は男の子だろうか、女の子だろうか?
そんな事を考えていると、仔龍が何かくわえているのに気付いた。アオイの手に顎を乗せてから口を開き、くわえた物を手の平の上に落とす。波に洗われ磨かれた、夜光貝のように輝く七色の欠片。
「これを私に? ……ありがとう。優しいね、きみ」
そっとたてがみを撫でる。
お礼に持っていたチョコレートを出してみると、香りだけ嗅いでそっぽを向いてしまった。
「み゛ゃ!?」
不意にやってきた大波に、転げそうになった仔龍を抱き上げる。小さな四肢がアオイの腕にすがりつく。片手で抱き上げられるほどに軽く、手首と同じくらいに細い。
「ふふ、びっくりしたね」
落ち着かせるように頭を撫で、声をかけながら砂浜に戻る。
タオルで足を拭いてサンダルを履き、仔龍を見た。
「(このまま連れて帰ってもいいのかな)」
この子はきっと、生まれた美しい海を離れてついてきてくれるだろう。
タオルを握りしめるアオイは、不意に手に暖かさを感じた。宙を泳ぐように浮き上がった仔龍がアオイの手にたてがみの額を寄せている。
言葉がなくとも縁を結べる。
それは、暖かな陽だまりのような希望だと、アオイは思う。
「……うん。じゃあ、一緒に行こうか」
「みゃー!」
大成功
🔵🔵🔵
榎・うさみっち
『A5。ピンク。ドラみっち(ふぎゃー)』
ドラゴンと一緒に冒険!ロマン溢れる響きだな!
うさみっち様にふさわしいドラゴンを探そうじゃないか!
じゃあ俺は平原を探すぜ!直感だ!
地平線がしっかり見えるな!雲ひとつ無い青空も綺麗!
この景色をスケブに描き残したいくらいだ
と、のんびり探していたらピンクの塊が目に入る
ドラゴン発見!
近づいてみると俺と同じくらいの大きさ
色もピンクだし親近感が湧くな!
よーし、こいつを捕まえて…
ぴゃあああ!火吹いてきた!俺は餌じゃねーぞ!
もしかしてお腹空いてるのでは?と
【ゆめのくにうさみっちランド】に収納してた肉をやる
ちょっと懐いてきた!よーしよし、お前の名前はドラみっちだ!
どこかうさぎを彷彿とさせるピンクのロップイヤーのフェアリー、榎・うさみっち(うさみっちゆたんぽは世界を救う・f01902)は村の外に出た。
「ドラゴンと一緒に冒険! ロマン溢れる響きだな! このうさみっち様にふさわしいドラゴンを探そうじゃないか!」
20cmに満たないうさみっちにとって、世界は人間の倍以上に広い。
海岸線に沿って帯状に広がる平原地帯は、海風が吹きつけるせいか樹が所々にしか生えていない。
「いい天気だ。地平線までしっかり見えるな。この景色をスケブに描き残したいくらいだ」
丘に平原に森に山。入り江に海に湖に。
絵師であるうさみっちにとって描きごたえのある風景ばかりだ。ファンタジーを表現するには、まさに『絵になる』地方だろう。
特にこの草原と湖、奥に遠く霞む森の構図なんて、背景にすると映えるかもしれない。
「ん……?」
うさみっちが頭の中で切り取った風景の中を、横切るように飛ぶ姿。
丸みを帯びた横顔に、短い4本足。ずんぐりした体つき。尻尾を揺らしながら、背中の蝙蝠の翼で羽ばたいている。
「ドラゴンじゃねーか! しかも俺と同じピンク色だし!」
人によっては、さくらもちを彷彿とさせる優しいピンク。
これはぜひうさみっちの一員に加わってもらいたい。名前もほぼ決まっている。
湖で喉を潤している仔ドラゴンをスカウトしにいく。
「おい、お前……」
うさみっちの声に振り向き、仔ドラゴンは口を開いた。
「ふぎゃー!!!」
「ぴあっ!? ぴゃあああああああ!!!」
返答として吐き出された小さな火の玉を、なかば落下するように避ける。
「まて! 話を聞くんだ、ドラみっち!!」
「ふぎゃーっ!」
うさみっちの髪がひと房、こんがりとコゲる。
「俺は餌じゃねーぞ!?」
火球を避けてドッグファイトを繰り広げながら、うさみっちはふと思い当たった。
「(もしかしてこいつ、腹減ってるんじゃ…?)」
『うさみっちゆたんぽ』に手を触れる。
吸い込まれた先は、ユーベルコードで作られたパステルカラーのテーマパーク『ゆめのくにうさみっちランド』だ。たしかここに肉をしまっておいたはずだ。
「お。あったあった。こいつを持って外に戻れば――」
「ふぎゃーー!!」
……うさみっちランドの中にまでついてきてる。
勢いあまって仔ドラゴンは、うさみっちの目の前で植え込みに突っ込んだ。
「ふぎゃっ!?」
頭が抜けず、前脚も半分植え込みに埋もれて封じられ、じたばたと後ろ脚でもがいている。
「落ち着けって。絶対に炎は吐くんじゃないぞ」
火気厳禁。肉でドラゴンをなだめ、肉で釣り、暴れないよう理解してもらい、ようやく植え込みから救出する。
しかし、このユーベルコード。抵抗意志のある者なら追い出されてしまうはずだ。
肉をお腹いっぱいに平らげて満足そうなドラゴンを見て、うさみっちははたと気付いた。
「もしやお前、遊んでるつもりだったのか?」
「ふぎゃ! ふぎゃー!!」
楽しそうに尻尾で、びたんびたん地面を叩いている。
ドラみっちにはこれから教える事が山ほどあるのを、この時うさみっちは予感していた。
大成功
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第2章 冒険
『海へ続くレモン畑』
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POW : 起伏の道もなんのその。
SPD : 速さを生かして駆け抜ける!
WIZ : 品種や環境を気にしつつ進む。
👑11
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一晩明けて朝がやってきた。
猟兵たちはそれぞれの相棒に導かれ、宿を出てトゥシュ村の南の門に集まる。
明るい森の先に、遠く岬が霞んで見える。昨日口にした猟兵もいるだろう――道の両脇にはレモンに似た美味しそうな果実がふんだんに実っている。
仔ドラゴンたちは、こちらの方角が気になっているようだ。
幼い彼らの感覚は、あやふやで気まぐれで確たる方向が定まっていない。
交代で集中させながらオブリビオンの気配を追ってもらうのがいいだろう。
歩くような速さで進む道中。
あなたと相棒とって、どんなひとときになるのだろう。
黒鵺・瑞樹
アドリブ可。
一晩悩んだ末に付けた名前は伽羅。金目の黒龍。
俺が顕現し世話になった寺社(同じ境内に寺と社がある)の近くにある竜神伝説から。
寺社とは直接関係ないらしいが、直感でこれだと思ったな。
一人というか一匹だけじゃないんだし、他の猟兵達もいる。
のんびり散策がてらの行程と行こうか。
出来る時に出来るだけで良い。頑張りすぎてもダメだからな?
自分にも伽羅にも言い聞かせて。
あんまり言わなさそう(鳴かないみたい)だから念のため。
見た感じの性格上無謀はしなさそうだし、大丈夫だとは思うけど無茶はしそうな気が(無茶に関しては人の事言えないけど)
さてゆっくりじっくり行こうか。
翌日の準備を整えているうちに、黒い仔龍はベッドの掛布団の上で目を閉じていた。
そんな素振りなど見せていなかったが、疲れていたのだろうか。
小さな寝息を聞きながら瑞樹は考える。
「(名前はどうしようか……)」
第六感に従って川をたどり、湖へ向かい、この龍に出会った。
昨日、瑞樹を導いた直感が見せる風景がある。
サムライエンパイアにある神仏習合の寺社。神社と寺、違う教え同士がひとつの境内に共存している。別の世界から来た瑞樹が顕現したのはそんな場所だった。
その寺社の近辺に伝承されていた竜神伝説。そこに出てきた金目の黒龍。
眠る仔龍を見つめながら、瑞樹は語呂を確かめるように幾度かその名を呟いた。
「伽羅」
黒龍は瑞樹の声に振り返る。澄んだ瞳を見つめ返し、瑞樹はもう一度その名を口にする。
今はまだ声に反応しているのかもしれない。呼んでいるうちに、いつしか自分を示す名前だと分かっていくのだろう。
「そろそろ出発しようか、伽羅」
他の猟兵に続いて、のんびり歩きはじめる。
高台にある村から岬への道は、カーブを描いて森の中を下っていく。伽羅は細長い身をくねらせ、瑞樹の隣を宙を泳ぐように進む。遠く向けられた視線は、この風景のどこかに潜んだオブリビオンを黙々と探しているように見えた。
「頑張りすぎてもダメだからな」
視線は前に向けたまま、瑞樹の声にじっと耳を傾けている。
昨日から一緒に過ごして、分かった事がある。
伽羅はあまり鳴かない龍だ。クールで自己主張をあまりしない。慎重で冷静かつ大人びた面を持っている。よく考えて行動する性格のようだから無謀なことはしないだろう。だが、自分の力以上に頑張りすぎて無茶はするかもしれないと瑞樹は感じている。
なぜ短い時間でそこまで理解できたかと言えば――。
「俺と伽羅は似た部分があるんだろうな」
類は友を呼ぶとはよく言ったものだ。これも勘だが、あながち外れてもいない気がする。
瑞樹は伽羅の真っ黒なたてがみを撫でながら声をかける。
「俺と伽羅、ふたりきりじゃない。他の猟兵と仔ドラゴンたちもいる。集中しすぎないよう、出来る時に出来るだけやればいい。ゆっくりじっくり、みんなに任せている間は散策するくらいの気持ちで行こうか」
伽羅に言い聞かせると同時に、瑞樹が自分自身にもかける言葉。
要領よく、上手に手を抜くことができない1人と1匹。
そんな瑞樹の気持ちが通じたのだろうか。
我慢強く隣を泳いでいた伽羅は、瑞樹の差し出した腕に体を休めた。
大成功
🔵🔵🔵
アオイ・フジミヤ
他の子達と一緒に移動して探そう
きみの名前、laki(ラキ)はどうかな
私の故郷の言葉で「幸運の」という意味なの
きみのこれからがたくさんの幸運で彩られるよう祈りを込めて
マリモくんは心底興味深そうにラキの周りを飛んでいる
……ラキ、その子食べ物じゃないよ?口を開けて追いかけちゃだめだよ?
ラキの様子を注意深く見ていよう
嫌な感じはどっちからかな?でも無理はさせないように
分けてもらったレモンを一緒に食べながらゆっくりね
ここは故郷に少し似ている
暖かくて沢山の花が咲き人々も動物も皆おおらかで好きだった
あの場所にもう戻ることはなくとも暖かさは私の心に在り続ける
この子にとって少しでもそういう存在になれたら嬉しいな
「きみの名前、『laki』はどうかな」
「みゃー?」
「そう、ラキ。『幸運の』という意味なの」
これからこの子が、たくさんの幸運で彩られますように。
アオイが故郷の言葉で祈りを込めた名前。
「ラキ、嫌な感じはどっちからかな?」
他の仔ドラゴンと同じように、ラキもまた岬の方角を気にしていた。
仲間の猟兵たちに続いて、アオイはラキを肩に乗せてトゥシュ村を出発する。
村が見えなくなると、アオイの髪の中から緑色の球体が飛び出す。儀式中は隠れてもらっていた、アオイの『隣人』、マリモくんだ。マリモくんは興味深そうにラキの周りを飛ぶ。
当然だが、UDCを見たのは初めてなのだろう。ラキはアオイの肩に小さな手足を置いたまま、白い首と胴を長く伸ばしてマリモくんの動きを追いかける。ふわりと宙に泳ぎ出すと、アオイの眼前を横切って口をかぱっと開いた。
「ラキ、その子は食べ物じゃないよ?」
「みゃー」
アオイの方を見て聞き分けのいい返事をしたラキは、マリモくんを舌でべろりと舐める。文字通り『異世界の味』がしたのだろうか。不思議そうな顔をして首を傾げる。
ラキはマリモくんを遊び相手と認識したらしい。ちょろちょろと体をくねらせ追いかけている。
その様子を見守りながら、アオイはのんびり後をついていく。
涼しさを残した朝の空気が気持ちいい。
今日の海風は昨日よりもおだやかで、こうして歩いているだけでも周囲の果樹から甘く爽やかな柑橘類の香りが漂ってくる。わずかに混じっているのはジャスミンの香りだろうか。元を辿ってみれば、果樹の影でひそやかに小さな白い花を咲かせていた。奥に見える赤いハイビスカスは太陽に向かって咲き誇り、その間をアゲハ蝶が器用に翅をさばいて舞っている。
ここはアオイの故郷に少し似ている。
暖かくたくさんの花が咲く地。人と生き物と自然とが共生している地。
竜と心を通わせ、旅人を受け容れるおおらかな気質の村人たち。それを見守る青い海。
アオイがもう戻ることのないであろう故郷の姿だ。
深層深く沈んでは今も確かに支えてくれている。心の奥に在り続ける暖かさ。
「(この子にとって、私がそういう存在になれたら嬉しいな)」
マリモくんが仔龍の周囲をくるくると飛ぶ。目を回したのか、ラキは地面に降りて頭を振った。
一度休憩。マリモくんを肩に、ラキを腕に抱きあげる。アオイは清々しい香りでいっぱいになった鞄から、黄色の果実を取り出した。
「村の人から分けてもらったの。一緒に食べてみよっか」
大成功
🔵🔵🔵
紅狼・ノア
*アドリブ歓迎
おぉ!レモン畑!
えっ見た目はレモンだけど違うの⁉
ふーん、どんな味だろう…少し味見しでもいいよね?
お前も食ってみたいだろ?(モグモグ)
あっ…目的忘れるところだった
交代で【第六感・野生の勘】を駆使し寄り道もしながら進む(ほぼ食べ歩き)
そういえば名前決めてないや…(仔ドラゴンをじーと見る)
うーん…『ハヤテ』はどう?
(ハヤテの反応が変わってるなぁ)
うーん、つまらん…そうだ!ハヤテ歌は好きか?
好きなら【歌唱・楽器演奏】をしよう!
つまらないより楽しいほうがいいからねぇ
美味そうな物を見つけるのもありだね
さぁ、行こうハヤテ!
眠たげに目をこすりながらノアと仔ドラゴンは村の門を出る。眠気を残らず吹き飛ばすような柑橘系の香りが鼻孔をくすぐった。
「おぉ! これが噂のレモン畑!」
黄色い実をつけた果樹が岬の斜面を覆っていた。どれも低木で、ノアの身長でも楽に手が届く。接ぎ木で増やして育ててこそいるが、元々この斜面に自生していた樹も多いらしい。
村人に聞いてみると、取ってもいいどころか『ぜひ味見をしていって欲しい』とまで言われてしまった。
枝のトゲに気をつけて実をダガーで切り離す。朝露をうっすらまとい、夜風の冷たさを残した果実。
昨日食べた猟兵によると、そのままかじってもいけるようだ。
「どんな味だろう。お前も食ってみたいだろ?」
「……ガルル!」
濃い青色の鱗の仔ドラゴンは、ノアの肩の上で返事する。
ダガーの刃を当てて果実を2つに割った。爽やかな甘い香りがはじける。
ノアとドラゴンは同時に果実にかぶりつく。
甘酸っぱい。口の中いっぱいに瑞々しさが広がる。レモンの酸っぱさと同時にオレンジのような甘さを感じる。レモンのようでレモンではなく、それでも何かと言われればレモンのようなフルーツ。
朝食後のデザートには最高だ。
「……おいしい」
ノアと仔ドラゴンは満足そうな吐息を同時にもらした。
道端の果実をもいでは食べ、樹ごとに少しずつ違う味を楽しむ。残った皮は仔ドラゴンが残さず食べてくれた。
「あ、しまった。すっかり遅れてるや」
食べ歩いているといつの間にやら最後尾。カーブの先に、前を行く猟兵の背中が消えていく。
「そういえばオブリビオンを探してたんだった。急ごう!」
「……ガルル!」
空中で器用に一回転して、仔ドラゴンはノアの隣を並走するように飛ぶ。
昨日も感じたが、このドラゴンは飛ぶのが上手い。飛行に特化したワイバーン系ほどではないが、短い四肢と尻尾でバランスを取り、背中の蝙蝠の翼で風を上手にとらえている。猟兵であり身の軽さが身上のノアの足にも難なくついてくる。まだまだ子供なのだから、成長すれば風のように速くなるかもしれない。
ようやく追いついた。
ノアが掲げた腕の上に仔ドラゴンが降りる。全速力で飛び続けてさすがに息を荒げているが、少し休めば大丈夫そうだ。
「――お前の名前、今考えたよ。『ハヤテ』はどうかな」
黒い狼の隣を吹く青い風。
「……ガルル!!」
「気に入ったか?」
「ガル! ……ガルルルル!!!」
ハヤテは翼をいっぱいに広げると、宙返りしてノアの黒い狼耳の間に着地する。
「それじゃあ、改めてよろしくな、ハヤテ。歌をうたいながら行こう。こういう単調な道は苦手なんだ」
ノアとハヤテは交代でオブリビオンの気配を探りながら、岬を海に向かって歩いていく。
大成功
🔵🔵🔵
サニー・アンダーテール
うー、昨日はくすぐったかった
ほら、昨日ぼくの分までいっぱい食べたでしょ
今日はぼくを乗せて飛んでよね、シアン!
道中、どーせこの仔は果実に向かう筈
ぼくも食べたいから止めないけど
よし、果実のくっついてる部分を弓で狙って落とすから、シアンがキャッチしてね!
よーしナイスキャッチ!ナイスコンビネーションだね!
ほら、半分はぼくにちょうだい…あーっ!こら!全部食べるなー!
お腹いっぱいになれば、真面目にオブリビオンがいる方に飛んでもらって
ちょっと飽きそうになるたびに、一緒に遊ぼう
ドラゴンは脇弱かったりするのかな?
くすぐっちゃうぞー
え?なに?交代?
うわー!やめろー!ぼくは誰かを乗せて飛べるようにはできてないぞー!
「昨日は、ぼくの分までいっぱい食べたでしょ。だから今日はぼくを乗せて飛んでよね、シアン!」
相棒となった仔ドラゴン『シアン』は意外にもすんなりと言うことを聞いた。
サニーの身振り手振りに従い、顎を地面につけて大人しくしている。背中の翼の邪魔にならないよう、サニーはシアンの首の後ろ、前脚の前に座った。青い鱗を軽く叩いて準備が出来たと知らせる。
翼が地面を打つ。サニーを乗せた分だけ助走を長めに取ると、空に向かって駆け上がる。
自分の翅で飛ぶのとは、また違った高揚感が心を満たした。
視線を受けながら仲間の猟兵たちの間を抜け、サニーとシアンは先頭の空を行く。
「どーせ、こっちに来ると思ったけどね」
こんな誘惑が間近にあって、この食い意地の権化が寄り道しないわけがない。
相棒を背に乗せたまま、シアンはレモン畑の中に入る。
「ぼくも食べたいから止めないけどね。やってみたいことがあるんだ」
サニーが背負っていた『陽弓』を手に取った。足でシアンに飛ぶ方向を指示しながら矢をつがえる。不安定に揺れるドラゴンの背で弦を引き絞る。
狙いすました矢は真っ直ぐ飛んで、果実と枝の間を正確に射貫いた。
「いけーー! シアン!」
「キャキャキャーッ!」
加速したシアンは、答える口で枝から落ちるレモンをキャッチした。
ドラゴンとフェアリーの流鏑馬といったところだろうか。
「ナイスキャッチ!! 最初からこんなに上手くいくとは思わなかったよ!」
「――――。……ググッ。キャッキャッ!」
「記念すべき最初の戦果だね。ほら、半分ぼくにちょうだい……って無いし!?」
シアンは何もくわえていない。落としたのかと思えば、瑞々しい果実の香りが口の方から漂ってくる。
「まさか……皮ごと……丸ごと食べたのか?」
「……キャッ」
サニーはシアンの首と脇をくすぐった。昨日の脇腹のお返しも兼ねている。
くすぐったいのか、シアンは空中で身をよじった。
もうひとつふたつ果実を落としてキャッチさせ、今度こそ一緒に座って食べる。
シアンに乗って指示を出すのも、サニーが撃つまで姿勢を保つのも、回を重ねる度に上達した。
「シアンの食い意地が張ってるだけで、コンビネーションはいいんだよね。ま、飛ぶのに疲れたら、ぼくの弓の腕に任せて!」
「キャッ! キャッ!」
シアンは嬉しそうに鳴くと、サニーの肩に前脚をかける。
「え? なになに? うわー! やめろー!!」
ずしりと仔ドラゴンの体重がかかる。
「任せてってそういう意味じゃない! ぼくは誰かを乗せて飛ぶようにはできてないぞーー!」
「キャッキャッ!」
そんなサニーとシアンの姿を『仲がいいなあ……』と仲間の猟兵たちは見守った。
大成功
🔵🔵🔵
緋神・美麗
(シルヴィアを抱えながら)「ん~。とりあえずこっちの方向で合ってるのよね?」と半信半疑で確認してみる。まぁ、他の皆も向かってるみたいだし大丈夫よね、きっと。
一応周囲に気を配りながら進む
移動中はシルヴィアに飛ぶ練習をさせながら進む。疲れて飛べなくなったら抱えるか肩に止まらせて休ませながらサイコロステーキ大のお肉を食べさせたり
「立派な飛竜に育つにはまだまだかかりそうねぇ」
道中のレモンにシルヴィアが興味を引かれているようなら一つ手に取り、二つに分けてシルヴィアに与えながら自分でも味見してみる
「見た目はレモンよね。酸っぱそうだけど実際はどうかしら」シルヴィアが気にいるなら、もういくつか取って与える
シルヴィアに導かれて町の南門から外に出た美麗は、共に岬を目指す猟兵たちを見回した。
「こっちの方角で合ってるみたいね」
「ガルル!」
美麗に抱っこされながらシルヴィアは得意気に胸を張る。
高台にあるトゥシュ村から岬へと向かう道は、ゆるやかな下り坂だ。海からは向かい風が絶えず吹きつけている。
「特訓にはちょうどいいかしらね」
「ガル?」
美麗の顔をシルヴィアは不思議そうに見あげた。
「さあ、シルヴィア。この移動中に飛ぶ練習をするわよ」
「ガルゥ!?」
多くの飛竜系のドラゴンの例にもれず、シルヴィアはお世辞にも飛ぶのが上手くない。
宿でも美麗の肩からベッドの上に飛び移ろうとして失敗したり、テーブルの上に乗れずに抱えあげてもらうまで待っていた。
放っておいてはオブリビオンと戦う時、命取りになってしまうかもしれない。
不安そうな様子のシルヴィアの鼻先に、美麗は鞄の中から『特効薬』を取り出した。ラベルを読み上げる。
「……A5ランク。最高級、黒毛和牛のステーキ肉」
「ガルッ!? ガルルルッ!!」
効果覿面だ。沈んでいたエメラルドの瞳は輝き、美麗の腕から肩へがしがしとよじ登る。背中の翼を勇ましく広げ、頭を上下させて風を読む。
いざ、勢いよく肩を蹴って飛び出す。
「あっ」
飛び出そうとして気合を入れ過ぎたのだろうか。美麗の服に爪を引っかけた。糸に捕まり逆さ吊りに揺られ、ぽかんとした顔をしている。
「動いちゃ駄目よ、シルヴィア。もう1回、ね」
笑いを何とかこらえて、美麗はドラゴンを釣り上げた糸を外した。
何度も繰り返しているうちに上達してくるものだ。
美麗の頭に激突したのが1回。顔に激突したのが1回。肩をつかみ損ねたのが2回で、目の前で落下したのが3回。
3連続で美麗の腕に戻ってこられたシルヴィアは、自分こそご褒美にふさわしいとばかりに胸を張る。
「ガルルルゥ!」
「はい、よくできました」
とろけるようなうっとりとした表情で目を細め、一口大に切り分けられた肉を食べる。デザートにレモンを食べると、再び意気揚々と空へ飛び立っていく。
甘えん坊でも、うまく気持ちを乗せられれば頑張ってくれる。
レモンに似た甘い果実を美麗も味見しながら、練習の様子を見守った。
「あっ」
美麗の方を見て飛んでいたシルヴィアが、果樹の梢にぶつかった。慌てふためいて落下し、葉と枝が派手な音をたてる。
「……ガルルルゥゥゥ~~」
悲し気な声が聞こえてくる。
「立派な飛竜に育つには、まだまだかかりそうねぇ」
そっと笑って美麗は、サイコキネシスを使ってシルヴィアの救出に向かったのだった。
大成功
🔵🔵🔵
坂月・陽波
『名前考え中→翼(たすく)』
晴れてよかったね。雨も嫌いではないが、あなたは晴天の方が好きだろう?
せっかくの大空だ。存分に飛んできておいで。
俺は暫く下から見てるよ。
俺は飛べないから羨ましくはある。そこはきっと気持ちいい風が吹いてるんだろうからね。それにとても自由そうだ。
……まさかとは思うけど、果物に釣られてこっちに来た、なんてことはないよね?いやいいんだ。美味しいものを食べたい気持ちはよくわかる。
取りづらいのなら俺が取ろう。俺の頼みを聞いてくれるならだけど。
……俺もそっち(空)に連れて行ってくれないかな、なんて。
「晴れてよかったね、翼」
穏やかな晴天の朝だった。
陽波は朝日に目を細めるワイバーンの相棒に続いて村を出た。
『翼』と書いて『たすく』と読む。
誰かの力添えをし、補佐する意味を持った字と読み方。
陽波がこのワイバーンにつけた名前だ。
「雨も嫌いではないが、あなたは晴天のほうが好きだろう?」
昨日、雷雨から逃れて洞窟で出会った陽波と翼だ。雨だれの音も悪くはない。
が、翼にとって、晴れた空ほど居心地のいい場所はないだろう。
「せっかくの大空だ。存分に飛んできておいで」
首を撫でてやると、両腕の皮膜を大きく広げて打ち下ろす。1m近い体躯がいともたやすく浮き上がる。空を力強く打ち高く昇る、空より更に明るい水色のワイバーン。この近辺にいる中では、最も巧みに空を飛ぶドラゴンだ。
機能美というものだろう。飛ぶために進化してきた体は、空にあってこそ美しい。地べたを不器用に這うしかなかった皮膜は今や海風をとらえ、発達しすぎて釣り合いの悪かった腕は力強く羽ばたき続けている。
――うらやましい。
そんな言葉が陽波の頭の中を過ぎる。
陽波に翼はない。風をとらえ、自分の力で空へと羽ばたけない。
自由を得たばかりのヤドリガミの体は、いつか翼と同じ自由を感じる事があるのだろうか。
大空を舞った相棒は、陽波の元へ帰ってきた。
地面に伏せるように着地し、何か言いたげに鳴く。
「フシャー」
「……もしかして、この果実を食べにきたのかい?」
黄色く実ったそれに触れれば、その通りだと言わんばかりに尾を振る。
大きな口では取りにくそうな果実をまずはひとつ。もいで皮ごと舌の上に乗せた。
「美味しいものを食べたい気持ちはよく分かる。代わりにひとつ、頼みがあるんだ」
「フシャ?」
「俺も空に連れて行ってくれないか?」
果実をごくんと飲み込むと、翼は陽波の前に足を掲げる。察して陽波は足首の辺りを掴んだ。ぐん、と腕が上に引っ張られ、慌ててもう片方の足も握る。
容易には浮き上がらない人の体を、翼は海風の上昇気流を使って空に引き上げた。
檸檬の梢よりもなお高く、緑の岬の全景が見えてくる。青い水平線は心なしか曲線を帯び、何にも邪魔されぬ空が広がる。
海と空。青くかすむ岬と山。周囲が青に満たされる。
「すごいな……。これがいつも翼が見ている世界か」
「フシャッ!」
声すらも張り上げなくては飛ばされていく。長い三つ編みと和服は風に浮き、体全体が軽くなる。宙に揺れる脚は何も捉えていない。足の裏を、全身を、強く風がなぶっていく。
「(自由……)」
陽波はそのすべての感覚を心に留めた。
大成功
🔵🔵🔵
雛菊・璃奈
WIZ
アマツは今までどんな風に暮らして来たのかな…?わたし、もっとアマツの事知りたいよ…(なでなで)
周囲を念の為、【呪詛、情報収集、高速詠唱】による探知呪術で確認しつつ出発…。
自分達の順番が来たらアマツにお願いして気配を追って貰い、順番じゃない時はアマツにご飯や果実をあげたり、たてがみをブラッシングしたり体を拭いてあげたり…。
狩って来た獲物のお肉を肉焼き機にセットしてぐるぐると…適度な火加減で炙って引き上げれば、肉汁溢れるジューシーなお肉が完成…。
アマツと一緒に食べたり、他の猟兵とドラゴン達にお裾分けしたりするよ
「……♪」(引き上げると同時に何処からともなく聞こえる上手に焼けました~♪の声)
「アマツは今までどんな風に暮らしてきたのかな……? わたし、もっとアマツの事知りたいよ」
紫がかった黒い鱗とたてがみを撫でる。
そんな璃奈の疑問は、アマツと宿で過ごしているうちにある程度解けた。
午後6時。就寝。
「早いね……。太陽が沈んだら眠っていたのかな?」
璃奈が抱き上げ寝床に運ぶ間も、目覚める気配すらなく深く眠っている。
寝姿は家族のひいき目を自覚して差し引いてみても、余りある可愛さだ。長い体をくるりと巻いて、自分の体で枕を作って休んでいる
「この時間に眠ったということは……」
午前4時。起床。
「太陽と同じスケジュールなのね……」
起き出すと移動し、窓際の陽だまりに身を置いている。こうして体温をあげてから行動するのだろう。璃奈が夢うつつに見守れば、腕にひんやりとした体を寄せてきた。ちゃっかり人間の体温で暖をとっていたのかもしれない。
「ああ、小さい頃はそういう子もいるねえ。体が大きくなってくると体温調節も上手くなるし、人間と同じリズムになる子もいるよ」
たてがみを綺麗にブラッシングし体を布で拭いてあげていると、朝食を運んできた宿の女将は懐かしそうにからからと笑った。
トレーの上のお皿には目玉焼きとベーコン。サーモンとトマトのサンドウィッチに、チーズの乗ったレモンサラダ。自家製ヨーグルトとレモネードが添えられている。
「アマツ。この中に好きな物はある……?」
初めての人間の朝ごはんの匂いをアマツは順番に嗅いでいく。
ベーコンと目玉焼きを一緒に飲み込む。サンドウィッチからはサーモンだけを引き抜いて、サラダからはチーズのみを選んで食べた。ヨーグルトは器を綺麗に空にする。
「……美味しい所だけ持っていったような感じね……」
「お代わりがあるよ。それじゃあお客さんがお腹空いちゃうよ」
ありがたく頂くことにする。
「アマツの好物は肉と乳製品。卵、魚……見事にたんぱく質ね」
「くるる
…・・?」
璃奈とアマツは先頭でオブリビオンの気配を一緒に追った。
大きな樹の下で休憩に入る頃には、早めのお昼の時間になっている。そろそろ皆もお腹が空く頃合いだろう。
「いいもの用意してきたんだ。他の仔や、仲間の猟兵たちの分もね」
手ごろな岩に腰かけて、持ってきた骨付き肉を魔法の炎で炙る。焼き加減が偏ったりしないよう、支柱を立てリズミカルにくるくると回す。
「(そろそろかな……)」
そう思った肉は生焼け。でも問題ない。引き続き炙り直せばいいだけなのだ。むしろそうしようか。
ここぞというタイミングで璃奈は勢いよく手を上げた。
「……♪ 上手に焼け――」
「くるるる?」
アマツに問われ、どう説明すべきか迷った璃奈は「おまじないのようなものかな」と答えた。
大成功
🔵🔵🔵
落浜・語
吉備さん(f17210)と
まぁ、急いでも仕方ないというか、急げないから散歩位のつもりでのんびり行こうか。
お前も、吉備さんとこのも、よろしく頼むよ。
吉備さんとこの子と、うちのと交代で気配を探ってもらいながら歩く。
昨日は山の方行ったから、海側に来るのは初めてなんだが…。綺麗なんだな。
檸檬みたいだな。見た目だけで酸っぱそうだけど、どうなんだろうな。
仔龍が興味持つようなら、一個貰って与える。
ん……じゃあ、すこしだけ。
あ、本当だ。見た目と違って、甘い。
だからお前は上着に入るな。襟のとこで落ち着くな。まったくもう……
吉備・狐珀
落浜・語(f03558)殿と参加です
天気もいいし本当に散歩みたいですね。
月代、語殿の仔竜さんよろしくお願いします。
仔竜に交代で気配を探ってもらいながらオブリビオンを追います。
ここの海は露草色のとても綺麗でしたよ。途中ちょっと危ない道もありましたけど…。
あ、道の両脇に植えてある果物はすきにとっていいそうです。
竜の好物なんですよ、と言いながら果物を手にとり半分に切って月代に食べさせ、語殿の仔竜にも美味しいよと差し出します。
語殿も食べてみますか?見た目は檸檬の様ですけど甘くて美味しかったですよ。
と、襟の所で落ち着いている仔竜を微笑ましく眺めながら食べやすい大きさに切って差し出します。
「語殿」
村の外の南門で、語は耳慣れた声に顔を上げる。
「ああ、吉備さん」
和服姿で駆け寄ってきたのは、思ったとおり『吉備 狐珀』その人だった。
旅団では珍しい、洋服を着た語の顔を狐珀は見あげる。
「同じ任務で竜を探しに来たとは知っていましたが――あ。こちらは月代。私の龍です」
狐珀の肩からするりと降りてきた仔龍が、語の手に触れる。
白磁のような薄青の影の、月白色のうるんだ鱗。静かな瞳に海色を湛え、じいっと語を見あげている。
なるほど、ドラゴンはドラゴンでも、随分と気質が違うらしい。
「今日はよろしく頼むよ」
「……ぐるる」
鱗に触れて挨拶すると、喉の奥を震わせるように月代が鳴く。
怒らせてしまったろうかと一瞬語が戸惑えば、狐珀が横から言い添えた。
「こちらこそよろしく、と言っていますね」
「そうか、吉備さんは動物の言葉が――」
「ええ、分かります。ところで語殿の竜は……?」
それらしき姿が無いのに気づいて、狐珀はあたりをきょろきょろと見回した。
返事の代わりに難しい顔を作り、語は狐珀に背を向けた。
「キュウ!」
おぶわれるように上着の襟から顔を出す、灰の鱗の仔龍と目が合う。てんでばらばらに散ったたてがみの中から、小さな両手をもそもそと出す。
狐珀の月代と同じく東洋系の龍だ。
「(かわいい……)」
「すぐここに入ろうとするんだよな。あえて名前はつけていない。……襟のとこで落ち着くな。まったくもう」
上着を脱いで落ちてきた仔龍を、狐珀は下で受け止めた。
「キュキュウ!」
「はい。語殿の仔龍もよろしくお願いしますね」
黒曜石の瞳に狐珀と月代の姿が映る。天真爛漫な挨拶に狐珀は笑み返した。
「まぁ、急いでも仕方ないというか、仔龍を急かしたところで敵の居場所が分かるわけじゃない。のんびり行こうか」
「天気もいいし、本当に散歩みたいですね」
穏やかな風が吹く岬への道を、語と狐珀は灰と白の仔龍に続いて歩いていく。
番が来たら、2匹で交代して気配を探って欲しいとは伝えている。今彼らは遊ぶので忙しいらしい。何かに興味を引かれては2匹で見に行く。並んで仲良く泳いでいるかと思えば、急に追いかけっこがはじまる。
遊び盛りの仔龍たちを気に留めながら、語は群青色の水平線に目を向けた。
「昨日は山の方行ったから、海側に来たのは初めてなんだが……」
隣を同じ歩調で歩きながら、狐珀も水平線に目を向ける。
「入り江の方はとくにすごい色でしたよ。海が露草色をしていました」
「露草色か。今見える海よりも随分と明るい色だ。綺麗だったんだな」
「ええ、入り江に降りるまではちょっと危ない道もありましたけれどね。風が強く吹き上げる、崖際の細い道を降りていくんです」
そう言ってから狐珀はそっと首を振る。
心の中で、語のことは心配している。そんな私が心配をかけるわけにもいかない。
転げるようにして、2匹の仔龍が2人の元へ戻ってきた。それぞれ口には黄色い果実。風で落ちたのを拾って来たようだが、特に傷んでいる様子もない。
「檸檬みたいだな」
語は果実をしげしげと観察する。そういえばどこからか、ずっと柑橘のような爽やかな香りがしていた。
「道の両脇のは、好きに取っていいと村の人に聞きました。竜の好物なんですよ」
月代から受け取った果実を、狐珀は皮をむいてから手の平に乗せる。待ってましたとばかりに、白い龍はかぶりついた。
「それなら俺もやってみようかな」
狐珀と同じようにして屈み、灰の仔龍の鼻先に近付ける。何度か臭いを嗅いでから、勢いよくかぶりついた。
面白いほどの食いつきの良さに語は苦笑する。
「見るからに酸っぱそうだけど、どうなんだろうな」
狐珀は、近くの果樹に生ったひとつに手を添えた。
「語殿も食べてみますか? 意外な味ですよ」
「ん……じゃあ、すこしだけ」
頷いて狐珀は果実を食べやすい大きさに切り分ける。
一切れもらって口の中に入れると、檸檬のほろ苦さや酸っぱさを残しながら、オレンジのような甘みがいっぱいに広がった。
「あ、本当だ。見た目と違って、甘い」
もう一切れ、語は果実を手に取る。まだ食べ足りないのか、月代もやってきた。
「(そういえば、語殿の仔龍はどこでしょう)」
ふと気づいて狐珀が見回すと、果肉を食べながら語がまた難しい顔をしているのに気付く。ぽんと手を打って、狐珀はその背中に回ってみた。
「やっぱりそこが一番お気に入りなんですね」
上着の中に体を収め、『キュウ!』と返事が返ってくる。
「うちの龍がそう言ったのか?」
「いえ、見ていれば分かります。今のは――」
誘われた月代は、灰の龍の隣に潜りこもうとする。
「お前たち、なんでそこが好きなんだ。……まったくもう」
首が締まってしまう前に、語はもう一度上着を脱ぐ。その様子を見て、狐珀は微笑ましそうに笑った。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ヒナ・ローレンス
(仔竜は道すがらシロちゃんと命名)
そうそう、上手ですよ。
相変わらず飛ぶのに必死な様子ですが、それでも少しずつ上手に飛べるようになってきたような気がします。
よくできました、シロちゃんはとっても頑張り屋さんですね。
シロちゃんは急かさずにのんびりと。
素敵な景色と果実の香り、心地よい風を楽しみながら進みます。
せっかくの素敵な場所ですから、ゆっくり楽しみたいですよね。
もしシロちゃんが移動するのに疲れた様子なら抱えてあげましょう。
「そうそう、上手ですよ。シロちゃん」
気付けばヒナは、相棒のドラゴンをそう呼んでいた。
鱗も背中の翼も全て真っ白な飛竜系のドラゴン。命名の由来は明白だ。
ふんわりした銀髪に白いドレスを纏い背中には天使の翼を生やしたヒナと一緒にいれば、ドラゴンですら清純な愛らしい生き物に見えてくる。
夏の濃い色彩の景色によく映える1人と1匹だった。
果樹の枝を蹴って飛び立ったシロは、バタバタとせわしなく背中の翼を動かす。疲れ切って落ちる寸前でヒナの胸に飛び込んだ。まだまだ効率の悪そうな飛び方ではあるが、最初よりも長い距離を飛べるようになってきている。
ヒナはそんなシロちゃんに、明るい言葉をかけ続けていた。
「よくできました。段々上手になってきましたね、シロちゃん」
「キュー」
手の平で包み込むようにして頭を撫でる。淡いマゼンタとブルーが入り混じった不思議な虹彩を持つ瞳が笑う。
昨日、蔦の手から救い出して以降、すっかり懐かれてしまった。甘えたい盛りなのかもしれない。
「キュー!」
「ええ、シロちゃんは頑張り屋さんですね」
生まれて初めて触れた優しさに、シロは額を押し付けた。
太陽の下を歩き続けると、驚くほど体力を消耗する。
暑さで仔龍が参ってしまう前に、濃い影を落とす大きな樹の下で休憩となった。
ヒナはここまで練習に励んだシロちゃんを抱っこすると翼を広げて飛び上がり、樹の太い枝に腰かけた。
爽やかな香りの風が吹く。広がる空は真っ青で、目に痛いほど鮮やかだった。海は今日も穏やかで、波が陽光にきらめいている。
この海もまた群竜大陸につながっているのかもしれない。
オブリビオンを倒しに行くのでなければ、ずっとこの景色を眺めていただろう。
「シロちゃん……?」
ヒナの腕から枝の上に降りると、シロは風で遊ぶように翼を揺らめかせる。
その姿は何かに似ているような気がした。しばらく考え思い当たる。巣立ち前の鳥の雛だ。
それはあながち外れてもいないのかもしれない。かつて繁栄を極めた恐竜と呼ばれる生き物たちは、一部が鳥に進化して生き残ったと一説には言われている。
ヒナは自分の背にある翼を広げて、その角度を揚力が得られるように傾けた。
「こう、風と喧嘩しないように翼の先で……」
「キュ……キュー!?」
真似したシロの体が、ひとりでに空中に持ち上がった。
「キュー!!」
「ふふ、おめでとうございます。シロちゃん」
コツを掴んだ子供なら、風で遊べるようになるのはもはや時間の問題だろう。
ヒナとシロちゃんは、出発の時間までゆっくりと樹の上で過ごした。
大成功
🔵🔵🔵
フレミア・レイブラッド
「~♪」
レクスと一緒に歌【歌唱】を軽く口ずさみながら進んでいくわ♪
歌って喉が渇いたら【念動力】で両脇に生えた果実を集め、レクスと一緒に喉を潤す…こういう風に楽しみながら進むのも良いわね♪(レクスを撫でたり抱きしめながら)
しかし、良い天気ね…レクスと一緒にこのままゆっくりと過ごしたいものだわ。
そういえば、今のレクスの大きさでも人を掴んで飛べるのかしら?
空から眺めてみるとまた色々と見渡せて良さそうなのだけど…。
レクスと空の散歩というのも楽しそうだしね♪(万一何等かの理由で落下しても【サイコキネシス】の念動力で自身を包んで降りて来る)
「キュルルルルルルル♪」
「そう、その後は上がって――」
「キュルル、キュルルルル♪」
「すごいじゃない! また1フレーズ覚えるなんて」
フレミアは紅の鱗のワイバーン、レクスに飛びついた。耳の間近で嬉しそうに喉を鳴らす音が聞こえる。
どうやらこのワイバーンは歌が好きなようだ。
フレミアの声に魅かれて出会い、フレミアと同じ歌をうたおうとしている。
出発前に村人に聞いてみると、歌好きのドラゴンなど聞いた事がないという。覚え込ませようとしたこともないらしいが、これがレクスの個性なのだろう。
岬の道を一緒に歌いながら歩いていく。
フレミアがリードしレクスが続き、ようやくなんとか13小節。昨日、初めて歌に触れたドラゴンなら上出来だ。
道端の果実を幾つかもらい、レクスと乾いてしまった喉をうるおす。
爽やかな香りを楽しみながら、フレミアは平和そのものの岬と海に目を向けた。
「本当にいい天気ね。レクスと一緒にこのまま、ゆっくりと過ごしたいものだわ」
「キュルゥ……」
言葉が通じなくても言いたい事は分かる。
オブリビオンさえいなければ、もっとゆっくりしたって構わない。この平和を揺るがす相手がこの近くに潜んでいるならば、今のうちに倒しておかねばならない。
――景色に何か手がかりはないかしら。
フレミアは、はっと気づいてレクスに顔を向けた。
「そういえば、今のレクスでも人を掴んで飛べるのかしら?」
言いながら自分の腕を上下させる。真似して皮膜を上下させたレクスは浮き上がると首を傾げ、腕を伸ばしたフレミアの姿をじっと見た。
厚い袖の部分を爪で優しく掴むと、レクスは力強く上腕を羽ばたかせた。
瞬時にとまではいかないが、2秒ほどで靴底が地面から離れる。更にレクスは羽ばたき続け、海風を捕らえた瞬間に高度が増した。
「わぁ……♪」
感嘆せずにはいられない。
その気になれば自分の力で空を飛べるフレミアでも、連れて行ってもらう空はまた違う。
海風に乗り岬を足元に見おろして、フレミアはあることに気がついた。
「レモンの森のところどころが燃えているわね。めだった法則性はなさそうだけれど、岬の先の方が多いのかしら」
太陽を受ける濃い緑が、数本丸ごと炭と化している。思い返せば依頼を受ける時に、不審火が発生しているとも聞いていた。
「みんなに教えなくちゃね。その前に……」
思い切り深呼吸する。水平線を遠く見て、金色の髪を好きなように風に遊ばせる。
オブリビオンにも邪魔できない解放感。
この空の広さを共有したならば、もっとレクスと新しい歌がうたえそうな気がした。
フレミアとレクスは空の散歩を楽しんでから、地上へと舞い戻る。
大成功
🔵🔵🔵
榎・うさみっち
いやぁ昨晩は大変だった
ドラみっちが俺の晩飯を横から根こそぎ奪っていったり…
寝ようとする俺の腹の上で思いっきりジャンプしてきたり…
(脳内に流れる回想シーン)
さぁ気を取り直して出発だドラみっち!
まずは【かくせいのうさみっちスピリッツ】で
うさみっちゆたんぽを複製
俺とドラみっちの周りを囲むように飛ばせる
こうすればドラみっちが突然あらぬ方向に行っても
万が一の不意打ち襲撃があっても対応しやすい!
…って早速どこに行くんだドラみっちーー!!
おぉ、すっげーレモン畑!
ひとつ取ってドラみっちに食べさせる
そうか美味いか!え、もっと沢山食べたい?
いやいや、この自然の恵みは皆のものだからな
食い荒らしてはダメだぞ!と教える
うさみっちの顔には立派なクマができていた。
うつろな目で大あくびする彼の横には、元気よく飛び回るドラみっちの姿。
「……ふああぁ。いやぁ、昨晩は大変だった」
それは夜のこと。
宿に入ったうさみっちとドラみっちの前に、夕食が運ばれてくる。
鉄の器にはたっぷりのミンチ肉。その隣には人間サイズのチーズハンバーグ。
「お客さん、肉用の特性香辛料、使います?」
「おっ、使う使う!」
香辛料の壺からスプーンですくい、かけようとお皿を見る。
目の前には空っぽのお皿。
「なっ……ないーー!? 俺のハンバーグが消えたー!?」
「ふぎゃぁ……」
ミンチ肉とチーズの欠片を口の端につけ、真ん丸のお腹を満足そうにさするピンクの仔竜が近くに転がっている。
メイン料理を失った空きっ腹を抱えて、うさみっちはドラみっちと部屋に戻る。
食べ物の恨みは深い。――が、ドラみっちはまだまだ子供だ。
明日の朝食を楽しみに今日は早く寝よう。蝋燭を吹き消してうさみっちがベッドに横になると、ドラみっちもやってきた。
……ぽよん。
勢いよく着地し、弾力のあるマットレスに体が跳ねた。
「ふぎゃーーっ!」
嬉しそうな咆哮が月明かりに響く。
生まれて初めての新感覚。仔竜はぼよんぼよんとベッドの上で跳ねだした。
「こらー! 少しはおとなし……ぴぎゃああぁぁぁ!?」
うさみっちの鳩尾にいい頭突きが入った。
寝不足の目に朝日は眩しすぎる。ぷるぷると頭と耳をふって眠気を追い払う。
俺がこんな状態じゃあの野生児にパワー負けしてしまう。
「さぁ、気を取り直して出発だ、ドラみっち!」
ユーベルコードを発動し、45体の『うさみっちゆたんぽ』を呼び出す。
背中の翅で宙に浮くうさみっちと、同じく翼で飛んでいるドラみっちを取り囲むように球形に配置する。
「こうすればドラみっちが突然あらぬ方向に行っても、万が一の不意打ちの襲撃にも対応しやすい! 徹夜でかえって頭が冴えてきたな!」
そんなゆたんぽたちを仔竜は見回し、口の先で小突いては匂いを嗅いでいる。
うさみっちの背中でドラみっちは何かに気付いたように鼻先を上に向ける。
「ふぎゃっ? ふぎゃーー!」
「……って、早速どこへ行くんだドラみっちーー!!」
包囲を今にもすり抜けようとする野生児を慌てて追いかけた。
枝から取ってきた黄色の果実を、ドラみっちは最初にうさみっちの腕に渡す。
「ドラみっち、お前……」
皮をむいてかじると酸味がある、苦みがある。そして遅れて濃厚な甘みがやってくる。
何かが少しだけ報われたような気がして、うさみっちはドラみっちにも果実を取って渡した。
「ふぎゃあ!」
「そうだな、うまい。この自然の恵みは皆のものだからな。食い荒らしてはダメだぞ!」
次の果実を取ろうとするドラみっちを、うさみっちはたしなめた。
素直に言うことを聞いて、ドラみっちは振り返る。じっと瞳を見つめられる。
「うっ……」
天真爛漫な瞳だ。食べ盛りの仔ドラゴン。時には我慢も覚えさせなくてはならない。
「もう一個だけだからな」
「ふぎゃー!」
大成功
🔵🔵🔵
真守・有栖
とっっっても美味しそうな果物ね(じぃーっ)
ふふん。畑の持ち主のおじいさんから許可はもらってるわ!
さっそくいただき……んん?
おおかみまるも食べたいの?仕方がないわね!一緒に頂くわよ…っ……わぅう!とっっってもすっぱくて甘くて美味しいじゃない!?
特訓の続きよ!
狼はばっっっちりよね!次は狩りを教えるわ!あの群れはどう?
って、今度は何よ?……え?嫌なの?だって、おおかみまるは肉食よね?おにくよ?おにくなのよ?
……そう
あの時は群れと仲良くなろうとして追い払われた、と
――月喰
……避けたらあの群れごと狩るつもりだったけれども
肉食は本能よ
それに抗ってでも仲良しさんを目指す、と?
呆れた覚悟ね。でも、気に入ったわ
どんな仔ドラゴンも基本的にはお腹を空かせている。
岬への道を歩く陸竜系の仔ドラゴンは果樹の隣で歩みを止めると、背中に横座りする有栖を振り返った。樹では黄色く丸い実が甘く爽やかな芳香を放っている。
「グアア」
「さっき見かけた畑のおじいさんは食べていいって言ってたわ」
有栖はドラゴンの背から梢で熟れている果実を2つ手に取る。
「私たちも一緒に頂きましょうか、おおかみまる」
「グア―!」
おおかみまる。
有栖が銀色の仔ドラゴンにつけた名前だ。名前に付ける丸とは『麻呂』が転じたものらしい。
「わぅう! とっっっっってもすっぱくて甘くて美味しいじゃない!?」
「グァアー!」
おおかみまるの背から果実を取っては2人で食べる。
こうしてしばらく穏やかな時間が流れた。
「それじゃ、おおかみまる。狩りの特訓の続きよ!」
有栖はおおかみまるの背から岬の斜面を見渡し、木々の向こうでシカの群れが草を食んでいるのを発見した。角を持った雄ジカはいないようだ。
「あれがいいわね。獲ってらっしゃい」
そう言って有栖は竜の背から飛び降りる。果樹の影に隠れながら見守るつもりだ。
「グァ……」
おおかみまるは戸惑ったように小さく鳴いて振り向き、シカの群れの元へ歩きはじめる。振り向くたびに有栖は叱咤と激励を込めた視線を送る。
果樹の影に身を潜ませ、静かに気付かれないように。足音を潜め、体と尻尾を葉に当てないよう進んでいく。
まだ拙い部分もあるが、概ね及第点といった所だろうか。
ひと飛びすれば飛びかかれる位置まで気付かれないまま迫った。あとは奇襲すればいい。外しても逃げ遅れたのを狙って仕留められるだろう。
しかし、おおかみまるは迷った挙句、身を低くしてシカの前に姿をさらした。
「おおかみまる、なにやって――」
「グァァア……」
ぺたんと地に伏して尻尾を振っている。
ぎょっとしたシカたちは、相手に敵意が無いのを認めて動きを止め、ゆっくりと立ち去っていく。
「グアァァ」
それを寂しそうにおおかみまるは見送った。
草を踏む足音に気が付いて、おおかみまるは振り向く。迫る白刃に身を固くしてその場で硬直する。
有栖はぴたりと刀を寸止めしておおかみまるの反応をうかがう。
「昨日も今みたいに仲良くなろうとしたの?」
「グアア……」
「肉食は本能だし、おにくを食べなきゃおおきくなれないわ。それでも仲良しさんを目指すの?」
「グア、グアア」
しゅんとした肯定の鳴き声に、有栖は刀を鞘に納めた。
野生では狩りの下手な者から飢えていく。逞しい脚も、曲がった鉤爪も、何かを狩る事ために進化したもの。それを有効利用できないというのは致命的な気質かもしれない。
「呆れた覚悟ね。……でも、気に入ったわ」
もう少しおおかみまるの様子を見守ってみよう。
有栖はようやく緊張を解いた銀の仔ドラゴンの首を軽く叩くように撫でた。
大成功
🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『暴虐のマギステル』
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POW : 火のサンクトゥス
【ファイアブレス】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【を火の海に変えて】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
SPD : 鏡のラディウス
全身を【超反射モード】に変える。あらゆる攻撃に対しほぼ無敵になるが、自身は全く動けない。
WIZ : 虚のレメディウム
自身が戦闘で瀕死になると【ドラゴンゾンビ】が召喚される。それは高い戦闘力を持ち、自身と同じ攻撃手段で戦う。
👑11
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果樹の森が途切れる。その先には砂浜が広がっている。
海中に行くにつれて黒々とした岩棚が広がり、足首からふくらはぎの中ほどまでの深さがある。岩棚の上には巨石がまばらに転がっている。足場代わりに使えるかもしれない。
岩棚の外は急激に水深を増している。岬の先端を囲むように、海中から10mほどの高さの岩の柱が突き出していた。
果樹の生えている場所以外は、砂浜に海中とかなり足場の悪い地形だらけだ。
仔ドラゴンたちはここへと猟兵を導いた。
静かな海に陸から波紋が広がる。
振り向けば、崖にひっそりと洞窟があった。その中から、小山のように大きな影が姿を現す。
「ふん、儂の眠りの邪魔をしにくるとはな。力も知も無くし、人に媚びる家畜トカゲめ」
背中に翼を生やし、強靭な爪と角、鋭利な棘を持った尻尾のまさしくドラゴン。
『暴虐のマギステル』は人語を操り、猟兵たちを睥睨する。
「そんなトカゲどもを、同じ爬虫類というだけでドラゴンなどと呼ばれては、甚だ不愉快じゃの。そろそろ目も覚めてきた頃だ。お前たちを退けて、全てを焼き尽くしてやろう」
アオイ・フジミヤ
ドラゴンって喋るんだね!
……ごめん、勉強不足で
そんな呆れた顔しないでマリモくん(何となくわかる)
怪我しないように一緒に戦おう
私もラキも空中戦できるし、足場の悪さはハンデにならない
高速詠唱でUC発動、マリモくんの作った波で相手のUCを流す
特に相手のSPDやWIZには徹底してUCで対応
POWのファイアブレスには衝撃波で直撃を避ける
波で周囲や敵を濡らすこともできるので
延焼を止めるのと同時にラキの雷も効きやすくなるかな
戦うことを、空気を覚えようね
何処へ行ってもラキが生きて行けるように
ラキもいつか言葉を話せるようになるかな
覚えていてね?幸運の名前と”大好き”の言葉
あなたが大好きよ、ラキ
私の大事な相棒さん
「ドラゴンって喋るんだね!」
『暴虐のマギステル』を見あげ、アオイは感じた事をそのまま口に出した。
ふんっ、とマギステルは鼻を鳴らす。
「真のドラゴンのみが生せる業じゃ。儂らドラゴン族の知力ならば、この程度造作もないわ」
「……ごめん、勉強不足で」
素直にアオイが謝れば、マギステルは優越感を大いに刺激された様子で吠えるように笑った。
「フォフォフォ、そこの小娘はよく分かっておる。そのような仔トカゲにはもったいないわ。どうじゃ、儂に協力せんか? 儂の支配する世界を半分やってもいいぞ」
そして『白い仔トカゲ』を見て再び笑う。
「そんな呆れた顔しないで、マリモくん」
アオイは肩の上のマリモくんに囁いた。
姿にも表情にも目に見える変化がなくても、隣人の言いたい事はよく分かる。
「ラキもいつか話せるようになるのかな。覚えていてね? 幸運の名前と『大好き』の言葉」
「みゃー」
ラキも同じだ。陶磁器のような白い鱗の仔龍は、言葉以上にアオイの気持ちを受け止めてくれている。
「あなたが大好きよ、ラキ。私の大事な相棒さん」
「みゃー!!」
マリモくんもラキも、一緒にいるだけで少しずつ分かりあえる。
そんなアオイたちを年寄り言葉のドラゴンはせせら笑った。
「話を聞いておったのか小娘。そんなトカゲにいくら期待しようが、人の言葉など話せぬわ!」
マギステルに向き直り、静かに首を振る。
「あなたは言葉を話すけど、心は通じあえない」
アオイはマギステルを見あげたまま、ラキとマリモくんに囁いた。
「いくよ、怪我しないように一緒に戦おう」
青い海に影を落とし、マギステルは海上すれすれを飛行しこちらに向かってくる。
「(ラキも私もマリモくんも、足場の悪さはハンデにならない)」
アオイたちも空に飛びあがり、敵の動きを正面から見定める。怯まぬ覚悟はとっくにできている。
口を開けたマギステルは、『ただの炎』をアオイと周囲に向けて吐き散らした。巨大な口はユーベルコードを用いずとも、樹の1本は丸焼けにしてしまえそうな火球を次々に放つ。
アオイはマリモくんと視線を交わしあう。
『私の”海”、全部流そう』
眼下の海が盛り上がると、翡翠色の波が海面を割って現れる。
「何っ……」
ただの波だとあなどれば、波の中にはラキの姿。マギステルが波をかぶるのに合わせ、全力で雷を発生させる。閃光がドラゴンの目を焼き、海の中に電流が走る。
眩んだ視界の中、闇雲に追撃する火の球は、海に煙を残して消えていった。
「戦うことを、空気を覚えよう。何処へ行っても、ラキが生きて行けるように」
無事に戻ってきたラキに、アオイは優しく声をかけた。
大成功
🔵🔵🔵
雛菊・璃奈
わたしには許せない事がある…大切な家族や友人を傷つけられる事…そして、大切な家族や友人を侮辱される事…。
アマツはわたしの大切な家族…それを侮辱したオマエはここで仕留める…!
【見切り、第六感】で攻撃を回避しながら機会を伺い、魔剣アンサラーの力【呪詛、オーラ防御、武器受け、カウンター、早業】でブレス等の攻撃を反射して隙を作る…。
反射で隙を作ったら【ダッシュ、残像】で高速で接近し、竜殺しの力を持つバルムンクによる【呪詛と衝撃波】を纏った【力溜め、鎧無視、鎧砕き、早業】の剛剣の一撃で叩き斬るよ…!
最後は切り札の【ultimate】の究極の一刀による一撃で仕留める…!
帰ろう、アマツ…わたし達の家に…
わたしには許せないことがある。
「くるる」と鳴いたアマツが気に病んでいる節はないけれど、わたしは絶対に許さない。
「大切な家族や友人を傷つけられること……そして侮辱されること……。アマツはもうわたしの大切な家族。……それを侮辱したオマエはここで仕留める……!」
璃奈は珍しく強い怒りと憤りを語気に出していた。いつもほとんど感情を表に出すことのない銀の瞳が鋭く輝く。
アマツは璃奈の本気を感じて、羽衣の端をきゅっと握った。
向かってくるマギステルの火の玉を魔剣『アンサラー』で跳ね返す。なんとか軌道を逸らせたものの、手応えが重い。反射によって璃奈の魔力が予想を上回って削られる。
「くるる……」
心配そうに小さく鳴いたアマツに、肩で息をしながら笑い返す。
反撃の機会はすぐに訪れた。仲間の起こした大波がマギステルを飲み込む。途端に電流でも流れたかのように、マギステルの体が震える。
「(今
……!)」
波に足を取られながら、璃奈はダッシュで距離を詰める。
闇雲に撒き散らされこちらに向かってくる炎を、璃奈は両手で握ったアンサラーでまっすぐ跳ね返す。打ち返された炎が、マギステルの顎に弾ける。散らばった火花が視界を奪う。
一瞬でも早く、一歩でも近く。
アンサラーを収める間も惜しんで投げ捨て、璃奈は新たな魔剣を抜き放った。魔剣『バルムンク』。かつて魔竜を屠り、竜殺しの異名を持つ剣。
もう少し距離を詰めたかったが、それ以上にマギステルの回復が早い。
力を込めて魔剣を振り下ろす。紫がかった黒い呪詛が、目に見えぬ波となって青い鱗を襲う。巨竜の左半身を弄った衝撃波は、鱗の表面に細かくヒビを入れた。
もう一歩。
大きく踏み込んで璃奈は手を掲げる。
「全ての呪われし剣達……わたしに力を……」
魔剣の巫女として。かつて失った家族から受け継いだ力を、今の家族のために。
璃奈が持つ魔剣と妖刀が揺らめいて形を失う。璃奈の手の中にただ一本として集約する。踏み込み足りないリーチを補うように、長く鋭い刀身を思い描く。
「――我が敵に究極の終焉を齎せ!」
ユーベルコードの一刀。強固な鱗が割れ、マギステルの左半身に細く長い傷が走った。
尻尾の追撃を避け、転がるように距離を取る。
丁度やってきた海の波が、璃奈の体を波打ち際まで運んだ。
「くるる……」
僅かな戦闘の間隙。
璃奈は砂浜に起き上がり、心配そうなアマツのたてがみを撫でた。
「アイツを倒して、一緒に帰ろうアマツ……。わたし達の家に……」
大成功
🔵🔵🔵
黒鵺・瑞樹
アドリブ連携可
伽羅と一緒に戦闘か。
ちょっと、いやかなり心配。
戦う覚悟もってれば子供だとか言わないつもりだけど。でもなぁ…。
助けは無理がない程度に、そういって物陰に隠れさせる。
信じてないわけじゃない。でも俺は守るために切る存在だから。
右手に胡、左手に黒鵺の二刀流。
【存在感】を消し【目立たない】ように移動、【奇襲】【暗殺】のUC剣刃一閃で攻撃。
さらに動きの制限を狙って【マヒ攻撃】、かつ【傷口をえぐる】でよりダメージ増を狙う。
相手の物理攻撃は【第六感】【見切り】で回避。
回避しきれなものは黒鵺で【武器受け】からの【カウンター】を叩き込む。
喰らったら【火炎耐性】【激痛耐性】でこらえる。
高熱の炎が海面を流れる。
相棒の黒龍『伽羅』をかばいながら、浅瀬の巨石の影に瑞樹は身を隠した。
「(この先に伽羅を連れて行くのは――まだちょっと、いや、かなり心配だな)」
子供だから。まだ力が足りないからとは言わないつもりでいた。戦う覚悟をもっていればいい。
だが、敵の攻撃手段と自分と伽羅の能力を考慮してリスクを考えると、瑞樹はどうしてもためらってしまう。
「伽羅。ここに隠れて無理がない程度に助けて欲しいんだ」
伽羅は海の中から顔を出して、瑞樹を見上げる。一緒に行きたいという気持ちはひしひしと感じている。
「伽羅を信じていないわけじゃない。でも俺は、守るために切る存在だから」
同行させて万が一、大怪我を負わせてしまうようなことになれば。きっと瑞樹は後悔する。
点在する巨石の影に隠れるように移動し、マギステルの背中を取るように密かに動く。波に足を取られながら慎重に。移動で生じる水の音を波の音にかぶせて歩く。
大波によろけそうになる瑞樹を、水中で何かが押しとどめた。
「(伽羅……)」
すぐ戻りますよ、という雰囲気を出しつつ、黒い龍は海の中の瑞樹の服を口でくわえて引っ張って支える。人よりずっと小さい仔龍でも、水の中で生きてきた。せめて移動中は手伝わせてほしい。
そんな意志を感じて、瑞樹はマギステルの後ろの岩まで連れて行ってもらう。
海底は波に不安定に揺らぐ。伽羅は瑞樹が海中の岩棚に足を滑らせぬようルートを選び、障害物を避けるように服を引く。
流れ弾の火球を避けて瑞樹が水に潜ると、思わぬ強い力で腕を引かれた。手首に伽羅が巻き付いている。海面に顔を出した時、目標とする岩は目の前にあった。
「……ここでいいよ、ありがとう」
囁いた瑞樹の顔を伽羅は澄んだ瞳で見あげてから、ちゃぷんと海底に身を沈めた。
敵に気付かれていないのを確認し、瑞樹は岩の上に登る。髪から服から水を滴らせながら、右手に打刀『胡』、左手にナイフ『黒鵺』を抜いた。
ちょうどその時、仲間の強力な一撃がマギステルに吸い込まれた。
今なら、この足場からならやれる。
マギステルの無防備な背中を狙い、瑞樹は岩壁を蹴った。打刀を竜の背に突き刺し、それを支えに竜の体を蹴り登る。
剣刃一閃。
瑞樹の本体である黒鵺は、ヒビの入った鱗を打ち砕き、温かな肉を切り裂く感触を伝えながらマギステルの肩に深手を負わせマヒさせる。
「ぬぅっ
……!?」
力任せに振りほどかれ宙に舞った体に、ファイアブレスの反撃が飛んでくる。黒鵺で受けながら、瑞樹は灼熱と痛みに耐えた。
海に落ち、今にも外海に流されそうになった瑞樹の手に触れるものがある。
伽羅の体を掴み、瑞樹は離れた岩陰へと戻った。
成功
🔵🔵🔴
フレミア・レイブラッド
色々な世界で数多くのドラゴンと戦ったけど…暴れるしか能の無いトカゲがドラゴンを名乗るなんて、それこそ不愉快ね。
行くわよ、レクス。わたし達の力を魅せてあげましょう!
【ブラッディ・フォール】で「終焉を呼ぶ黒皇竜」の「黒皇竜ディオバルス」の力を使用(黒皇竜の翼や尻尾等が付いた人派ドラゴニアンの様な姿に変化)。
敵のブレスに敢えて【インフェルノ】で対抗して焼き尽くし、「黒皇竜の一撃」で超反射モードを力任せに突破。最後は【カタストロフィ・ノヴァ】で消し去ってあげるわ!
黒皇竜は誇り高く尊敬できる武人だったわ…貴方如きが竜を名乗る等烏滸がましいと知りなさい!
レクス、これからもわたしに着いて来てくれないかしら?
『骸の海で眠るその異形、その能力……我が肉体にてその力を顕現せよ!』
フレミアは背中に黒く大きな蝙蝠の翼を広げた。翼の途中に現れた鉤爪が鮮明な緑に光る。揺れるように現れた爬虫類の尻尾は黒。触れただけで手を傷つけてしまいそうな鋭い鱗に覆われている。黒い胸当ての真ん中には緑の光線が走り、黒く尖った鱗をモチーフにしたティアラのような兜の背から、金色の髪が流れる。
かつてフレミアと戦ったドラゴン『黒皇竜ディオバルス』を彷彿とさせる鎧姿だ。
「行くわよ、レクス、わたし達の力を魅せてあげましょう」
姿を変えた相棒にぎょっとしていたレクスは、フレミアの声を聞いてほっとしたようだ。
「キュルルル……!」
共に翼の一打ちで空に上がる。
飛んできた火の玉に向かってフレミアは手の平を向ける。あえて同じ炎『インフェルノ』で相殺する。 弾けて襲い来る火の粉は、レクスの竜巻によって跳ねのけられた。
「暴れるしか能のないトカゲがドラゴンを名乗るなんて、それこそ不愉快ね」
空中から巨大なドラゴンを見おろし冷ややかに告げる。
「黒皇竜は誇り高く尊敬できる武人だったわ……貴方如きが竜を名乗るほうが烏滸がましいと知りなさい!」
フレミアとその隣のレクスを見あげて、マギステルは文字通り気炎を吐いた。
「誇りじゃと? 我らドラゴンは人には従わぬ。人と馴れ合い、細々と生きながらえてきたそやつらとは違う。自らの力で生き、誰にも支配されぬ。それがドラゴン族の誇りなのじゃ!!」
感情と共に吐き出された火の玉を、フレミアとレクスは両脇に飛んで避ける。
遥か空高くで爆散した炎が火の粉を散らし、同時にフレミアはマギステルに向かって落下するように空を駆けた。
「ぬぅっ
……!?」
マギステルの背に仲間の猟兵がいる。深手を負わせた猟兵を振りほどき、炎で反撃するドラゴンの隙をついて肉薄すると、フレミアは尾をしならせてマギステルの頭を打ち据えた。
更なる追撃は、マギステルの影から染み出した何かに防がれた。
マギステルによく似た、黒く濁った鱗のドラゴン。皮は腐れ落ちて手足に纏わりつき、眼球は片方が糸を引いて落ちかけている。
「ドラゴンゾンビ……」
空にまで立ち昇ってくる酷い臭いにフレミアは腕を鼻に当てた。刺激臭に目が痛み、喉の不快感にせき込む。唯一腐っていない翼で、ドラゴンゾンビはフレミアの元へ迫る。
構えようとしたフレミアの周りにひときわ強い風が発生した。レクスの竜巻がフレミアに新鮮な空気を運ぼうとしている。
「ありがとう、レクス」
目を開き集中しなおして、『カタストロフィ・ノヴァ』。未練がましくこの世に留まろうとする死者の頭を爆散させる。
「レクス、これからもわたしについて来てくれないかしら?」
「キュルルル」
迷うことのない即答が風音の中に聞こえた。
成功
🔵🔵🔴
緋神・美麗
アドリブ・絡み歓迎
本当にちゃんと案内してくれるとはねぇ。なかなかやるじゃないの。それじゃここからは私達の出番ね。
「派手な立ち回りになるでしょうから安全なところに隠れていてね。」
シルヴィアにお肉を与えて隠れていてもらう
「さて、それじゃぁドラゴン退治と行きますか。」
雷天使降臨を使用し高機動空中戦を仕掛ける
ライトニングセイバーで鎧無視攻撃・先制攻撃・フェイント・2回攻撃を駆使して攻撃する
戦闘が終わったらシルヴィアに
「これで私は帰るけどシルヴィアはどうする?もしよかったら一緒に来ない?来てくれるなら毎日お肉を食べれるけど」
「本当にちゃんと案内してくれるとはねぇ。なかなかやるじゃないの」
オブリビオン出現の一報に、美麗は岬の先端、崖上にあるレモンの森へ走った。
戦場を遠く見おろすと仲間が現れたドラゴンと会話している。すぐに炎が飛び交い始める。岩がいくつか重なってシェルターのようになった場所を見つけ、美麗はそこにシルヴィアを隠した。
「派手な立ち回りになるでしょうから、安全なここに隠れていてね」
お皿には残りの肉を置いた。
振り向いてユーベルコード発動『雷天使降臨』。
美麗を青く光る雷光が包み込む。雷の力は新たな服となって形を留め、背中には光の翼を作り出す。サイキックエナジーで作り出したライトニングセイバーは、いつもより強く雷の力を纏って輝いた。
雷光の翼を広げ今にも戦場へと飛翔しようとした美麗の足首が不意に重くなる。
「シルヴィア
……!?」
「ガルル!!」
短い手足でぎゅっと足首を抱きしめられる。
「このまま置いていくわけじゃないから。すぐに戻ってくるから――ね?」
「ガルルルるるる……ぅぅ……」
今までに聞いたこともない悲痛な鳴き声だ。
美麗は振り向いて屈みこむ。お肉よりも何よりも、離れたくないのだろう。ふるふる白い体を震わせている
……困ってしまうけど、ここまで慕ってくれるのは何だか嬉しい。
美麗はシルヴィアの白い頭に手を置いた。
「それじゃ約束。もしシルヴィアがついてきてくれるっていうなら――全部終わったら私の世界に一緒に帰りましょう」
「ガル……?」
シルヴィアの額を撫でる。
「あなたの好きなお肉も、毎日食べられるから、ね」
じっと美麗の顔を見あげ、ようやく足首から手が離れる。
「ガルル……ガル!」
「ええ、いってくるわね」
雷を纏って空を行く。
「さて、それじゃぁドラゴン退治と行きますか――うっ、何この異臭……」
海に浸かったマギステルを守るように、黒く濁った鱗のドラゴンゾンビが飛行している。ぽたぽたと滴る体液は油となって海面に薄く広がり、周囲に肉の腐った匂いをまき散らしている。
正直お近づきにはなりたくないが、アレを倒さぬ事には近づけない。息を止めても臭いで目がしぱしぱするし、喉はいがいがしはじめる。
風上となる海上へ時速200kmを越える速度で飛行して、美麗はくるりとターンする。
時を同じくして、仲間のユーベルコードがドラゴンゾンビの顔を爆散させる。
……さすがゾンビ。頭部を失ってもなお、ふらふらと飛んでいる。
「終わりにしましょ。――完全開放、天魔滅雷!」
美麗はライトニングセイバーを振るい、ドラゴンゾンビの体を心臓ごと十字に斬り払った。
成功
🔵🔵🔴
落浜・語
引き続き、吉備さん(f17210)と
なんだかんだ言ったて、お前もデカいだけの蜥蜴じゃないか……
きっちりしかるべき場所にお帰り頂きましょうかね。
多少周囲を壊すかもしれないが、『人形行列』を使用。
爆破して攻撃すると同時に周囲の海水を巻き上げる。
仔龍に手伝ってもらうかな。ほら、襟首で落ち着いてないで、ちょっと頑張って雷起こしてくれ。
巻き上げた海水は目隠しが一番の目的ではあるが、海水って電気伝導良いんだよな。
多少なりともダメージにはつなげられるだろう。
必要に応じて奏剣も使いつつ【かばう】
馬鹿にしてるけどな、こいつらはこいつら頑張ってんだ。見下すのは許さない。
吉備・狐珀
落浜・語(f03558)殿と参加です
どんなに力と知恵をもっていても、そんなに傲慢な態度では底が知れています。
不愉快なのはむしろ此方です。
UC【青蓮蛍雪】でドラゴンに氷結の【属性攻撃】を仕掛けます。
まずは語殿が巻き上げた海水を【火炎耐性】もある狐火で凍らせブレスを防ぎます。
月代も私達に協力して下さいね。
語殿の仔竜が起こした雷でドラゴンが痺れている間に、月代に風を起こしてもらい凍らせた海水を砕いてもらいます。
砕いた氷はそのままドラゴンに【一斉発射】でぶつけます。
仔竜達はこれから力と知恵を身につけながら成長するんです。
馬鹿にすると許しませんよ。
したたかに打たれた頭を振って、マギステルが起き上がる。背中の翼で飛翔すると、青みがかった血液が水面にぽたぽたと波紋を作った。
「やれやれ、儂としたことが不覚を取ったのう」
波間を漂うドラゴンゾンビの油と肉片に向かって、マギステルは大きく息を吸い込んだ。
「吉備さん……!」
炎が走る。燃えあがる浅瀬から、近くの岩に飛び乗った語が狐珀の体を岩の上に引き上げる。
「かたじけない、語殿」
語の背中を見て2匹の仔龍も無事だと分かる。
すぐさま狐珀はユーベルコードで青い炎を生み出した。冷気を含んだ青い狐火。岩に寄せる波を凍らせて、周囲で燃える油の熱から2人を守る。
赤と青。灼熱と酷寒。
海の上に異なる2つが身を寄せて揺らめいた。
岩の縁に屈んでいた語は、狐珀を振り向いて頷く。それから自分の背へと声をかける。
「ほら、お前たちも襟首に隠れていないで、ちょっと頑張って手伝ってくれ」
咄嗟の避難所に語の背中を選んだ月白色と灰色の2匹の仔龍は、体をくねらせ上着の襟から外へ出る。
「月代、語殿の仔龍さん、作戦があります」
「キュウ?」
「ぐるる……」
動物の言葉を使った狐珀の耳打ちに、2匹の仔龍はじっと聞き入った。
凛とした声が燃える海の上に響き渡った。
「どんなに力と知恵をもっていても、そんなに傲慢な態度では底が知れています。不愉快なのはむしろ此方です」
狐珀の言葉を引き継いで、語も更に言葉を重ねる。
「なんだかんだ言ったて、お前もデカいだけの蜥蜴じゃないか……きっちりしかるべき場所に、お帰り頂きましょうかね」
マギステルは長い尻尾をもたげると、海面を叩いて語と狐珀に向き直る。
「お前たち人が傲慢では無いと誰が言えよう。愛玩動物となり果てた裏切り者を、哀れみ葬って何が悪いか!!」
言葉と共に、マギステルの口から火球が放たれる。
「私の後ろへ!」
狐珀は海水を狐火で凍らせ盾にする。激しい熱はそれでもなお、着物の袖や髪の先を焦がしていく。
語はぐっと応じる言葉を飲み込んだまま、溶けた氷の盾の向こうから迫る牙を正眼に見る。火球を凌いだ2人と2匹を飲み込まんと、向かってくる敵との距離をはかる。
じりじりするような一瞬が過ぎた。語は手を繋いだ2匹の仔龍に鋭く叫んだ。
「――――今だ!」
「キューーー!」「グルルルルル!」
2つの雷光が、ただ一点を狙い撃つ。落雷はマギステルのはるか前。浅瀬の中を電気が走る。一瞬の間の後、撃たれた海面付近に差し掛かったマギステルを、吹き上がる海水が捉えた。
「ぬおっ
……!?」
語が浅瀬の底に隠しておいた『人形行列』のユーベルコード。月代と灰の龍の雷撃によって爆散し誘爆した人形は、しめて255体。
衝撃波と海水が海底から吹き上がる中、なおも雷が落ちる。水塊とマギステルの体を縫っては繋ぐように、2匹の稲光が次々に閃いた。
「海水は電気を通しやすいからな……!」
語の隣で狐珀は真っ直ぐ前に手をかざす。青い炎が一斉にマギステルに向かって飛んでいく。海水に包まれたドラゴンの体は冷気に晒され、白く透明に張り付いていく。
海面の波ごと時が止まったようだった。
波しぶきの中、苦悶するドラゴンの氷像が出来あがる。巨竜を封じ込めたその像に氷塊の槍が次々に突き刺さる。白い氷像は血の青に染まった。
すっかり疲れきって襟首に戻ってきた仔龍たちを語は振り向いた。
「馬鹿にしてるけどな、こいつらはこいつらで頑張ってんだ。見下すのは許さない」
月代と語の龍のたてがみを狐珀は労わるように撫でた。
「仔龍たちはこれから力と知恵を身につけながら成長するんです。馬鹿にするのは許しませんよ」
マギステルの顎付近の氷にヒビが入る。喉の奥にオレンジがちらつく。
はっとして語は狐珀をかばいつつ腕を引き、再び海に飛び込んだ。
その波紋を炎が舐めていく。
自身を炎の熱で溶かし、傷だらけのマギステルが姿を現す。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
榎・うさみっち
ドラみっちのことだ、こんなでかくて強そうなドラゴンにも
ビビることなく突撃しようとするだろう
俺は敢えてそれを止めずに全力でサポートするぞ!
ドラゴンよ、お前はドラみっちの成長の糧となってもらうぜ!
【あなたのうしろにうさみっちゴースト】発動!
こっそりとドラみっちとドラゴンの傍に行かせ
ドラゴンがブレス吐こうしたら攻撃して妨害したり
間に入って攻撃を肩代わりしてドラみっちを守らせる
俺は後衛からおばけっち達を操作しつつ
ドラみっちを応援したり褒めたりして鼓舞
時にはおばけっちの放った攻撃を
ドラみっちの手柄のように褒める!褒めて伸ばす!
地面に火がうつったらまほみっちゆたんぽの
水の【属性攻撃】で消火活動!
ある意味でそれは信頼だ。
勇猛果敢にして猪突猛進。アクセルは踏み込んでから考える。
巨大な相手でも怯まない。そもそも、巨大かどうかなどあまり考えていない。
「ふぎゃーーーっ!!!」
猛々しく咆哮し、まだ小さな翼をいっぱいに広げて、海面から立ち昇る上昇気流に乗る。
敵が炎の息で氷の海を一息で溶かし大量の海水を蒸発させたのを目の当たりにした後だというのに。
「ドラみっちならどんな相手にもビビることなく突撃すると思ったぜ!」
うさみっちはドラみっちを止めない、全力でサポートする。
それに今はチャンスだ。
炎を吐いて体を覆う氷を破ったが、背にある翼は凍りついたままだ。
位置的にも、薄い皮膜だけ残して溶かすのも至難の業なのだろう。奴は飛べない。それどころか、背中に重しを背負い続けているようなものだ。
「ドラゴンよ、お前はドラみっちの成長の糧になってもらうぜ!!」
「(あなたのうしろにうさみっちゴースト、発動)」
目に見えぬ夏の風物詩が5人、ユーベルコードによって密かにこの世に現れる。こっそりとドラみっちとマギステルの後ろに忍ばせる。
「ふ、ふぎゃっ!?」
おや、ドラみっち、意外にも霊感があるのか?
透明な彼らにぞわわっとして、おそるおそる後ろを振り返っている。
後ろを飛ぶうさみっちの喝が飛ぶ。
「気にするな、ドラみっち!! そのまま前だけ見ていけーー!」
「ふぎゃっ!? ふぎゃーーーーっ!!!」
小さな火の玉をドラみっちは連続で吐いた。
「ふん、その程度で挑んできたとはのう!!」
それ以上の火球で応じようとして、マギステルの肩が横から叩かれた。
「くっ、奇襲か――」
顔を向けた先には誰もいない。うさみっちの目にだけ、ゴーストがぐっとサムズアップしているのが映る。
マギステルの横顔にドラみっちの火球が弾けた。
「ぐうっ
……!!」
「ふぎゃーーー!!」
「よーし、よくやったぞ! ドラみっち!!!」
この仔は褒める、褒めて伸ばす。
たとえドラみっちだけの力ではなくとも、攻撃を当てた自信は次につながる。
「小癪な……!」
怒りのままに、マギステルは周囲に火球を吐き散らした。
ゴーストたちはドラみっちを火球の範囲から突き飛ばしつつ、躊躇なく間に入る。
空中で大爆発が起こる。うさみっちはドラみっちを抱えて放物線を描き、くるくる回って岬の草地まで吹き飛ばされた。
「いててて……」
庇って貰ったおかげかお互い大した怪我はないようだ。周辺の草地が狙いを外した火球によって、ぱちぱちと燃え始めている。
「放っとくわけにもいかないな。ドラみっち、火を消すぞ」
「ふぎゃあ……」
このドラゴンにしては珍しく落ち込んでいる。そんなドラみっちの肩をうさみっちは叩く。
「ドラみっちのいい所は、失敗しても懲りずに――いや、めげずに何度でも挑戦できるところだぜ!」
「ふぎゃ!? ふぎゃーーー!」
水をかけては尻尾で叩いて回ったおかげで、岬の火事は無事に消し止められた。
成功
🔵🔵🔴
紅狼・ノア
*アドリブ・絡み歓迎
此処かな?…にしでも足場が悪いなぁ
まぁ動けないことはないね、身軽さと育った環境だったからこれくらいは平気!
ハヤテも飛べるしね!
ん?この気配…他の仲間達と協力した方がいい感じかな【第六感・野生の勘】
(物陰に隠れ様子見)
黙って聞いてりゃ…人に媚びってじゃない、絆で繋がった大事な家族・仲間だ!
ハヤテ行くぞ!
【オーラ防御】で軽減
ファイアブレスをかます気か⁉…一か八か
当たる前に避ける
そしてハヤテが注意を引き寄せている間
【目立たない】素早く背後に回り【怪力】【シーブズ・ギャンビネット】強力な一撃をし【部位破壊・二回攻撃】をする
あとはハヤテと連携かな
浅瀬の岩陰にハヤテと共に身を隠して、ノアは怒りのあまり体を震わせた。
森の主に拾われて育てられた。知らない事は動物たちに教わって、家族同然に暮らしてきたのだ。哺乳類に鳥類に爬虫類、そして人狼。違う種族同士、一緒に居るのが当たり前だった。
あのドラゴンはノアが築いてきたその関係を、ただの決めつけで切り捨てた。
「黙って聞いてりゃ……人に媚びってじゃない、絆で繋がった大事な家族で大事な仲間だ!」
「……ガルル!」
ノアの声も憤りも波の音に飲み込まれていく。
「(……にしても足場が悪いなぁ)」
ようやくマギステルの背後まで忍び寄る。
空を飛んで移動し、ゾンビを繰り出し、海を焼き……仲間が奴の翼を凍り付かせたおかげで、ようやくここまで接近できた。
今は絶好の機会だ。チャンスは幾度も訪れるわけではないのを、ノアはシーフの本能で知っている。
「あと少し……僕もハヤテみたいに飛べたら」
ノアの独り言にハヤテはじっとマギステルを見る。それからノアの頭に着地して頭の上の狼の耳に動物の言葉で囁いた。
「……ガルル」
「え……ハヤテが?」
囮になる。危険を承知でハヤテは言う。
逃げ足が得意なのは知っているが、まだまだ体力は仔竜のものだ。時間をかければかけるほど危険は最初にハヤテに及ぶだろう。
迷いを捨てて、ノアは頷いた。
「他の猟兵も仕掛けている。仲間と連携して短い時間だけ気を引いてくれ」
「……ガルル!」
ノアとハヤテは岩の左右に分かれて行動を開始した。
マギステルの背中を目指してノアは、海底に沈む透き通った水色に気付いた。よく見ると細かい鱗が中に見える。凍ったままの尾だ。
「このっ、どこから沸いてきたのじゃ
……!?」
「ガルルルル!!」
見あげると、ハヤテがマギステルをおちょくるように飛び回っている。どこからかピンクの飛竜も飛んできて火球を浴びせている。
やるしか今ならない。
ノアは凍った尾に飛び乗ると上を駆けた。氷漬けになってほとんど感覚を失っていたのと、仔ドラゴンたちが気を引き続けていたのが功を奏する。
渾身のダガーの二刀流による『シーヴズ・ギャンビット』が尾を根元から断ち切った。返す刀で体に斬り付けた時、ノアは自分の体が浮き上がるのを感じた。『鏡のラディウス』。反射された攻撃が、ノアにそのまま返ってくる。
バランスを崩したノアを、ドラゴンの後ろ脚が蹴り上げた。
「ん、あれ……?」
空高く外海にまで吹き飛ばされそうになったノアは、海の柱の上に着地する。ノアの上着をくわえたハヤテが、持ち上げられないまでも羽ばたいて落下速度を緩めていた。
体のあちこちが痛む。膝の上に降りてきたハヤテも同じような有り様だ。
「お互い、傷だらけだな」
「ガルル……」
ノアの鼻を舐めたハヤテを抱き上げて、浅瀬を見おろす。
戦闘は終盤を迎えつつあった。
成功
🔵🔵🔴
ヒナ・ローレンス
このまま放っておく訳にはいきません、ここで止めませんと。
UCで無数の光の蝶を呼び出して相手に向かわせます。
弾ける光で相手の動きを鈍らせながら注意を引きましょう。
……シロちゃん、飛び方はもう分かりますね。
蝶の間を縫いながら、敵の不意を突けるよう視界の外に回り込んで、思いっきりあなたの力をぶつけてください。
大丈夫、あなたは強い子です。あの言葉、後悔させてやりましょう。
「シロちゃん、もう飛び方は分かりますね」
優しくヒナに尋ねられれば、シロは岬の風にふわりと浮いてみせる。時々よろけてはいるものの、見違えるばかりの上達だ。翼の力だけに頼らずに、風の力を上手に使って体を宙に留めている。
相棒の様子に微笑を浮かべ、ヒナはユーベルコードを使った。
『揺蕩う光の蝶』
集中が続く限り光り輝く蝶が召喚され、群れとなってヒナとシロの周りを一斉に舞う。
「それでは参りましょう」
並んで飛ぶ白い天使の翼と白い蝙蝠の翼。そして光の蝶の翅。
まばゆいばかりの一団が、崖の岬から飛び立った。
浅瀬に陣取るマギステルは、海を越えようとする猟兵を寄せ付けぬよう浅瀬を炎の海へと変える。
すぐ燃え尽きる炎だが、既に海水は湯のように熱い。所々に燃え残る炎は、まだ燃え尽きぬドラゴンの骸と、自身の千切れてしまった尻尾。それに運悪く巻き込まれた魚に漂流物だ。
体中に傷を作り、翼は氷で封じられ、尻尾を切られた満身創痍でもなお、炎の勢いは衰えない。
「このまま放っておく訳にはいきません。ここで止めませんと、この辺りの自然が壊し尽くされてしまいます」
惨状に眉をひそめ、ヒナは蝶に向かって行き先を示す。
「ぐうっ……再び滅ぼされたりなどせんぞ……」
猟兵たちを牽制し、浅瀬を再び炎の海へと変える。背中から水滴が滴る。このまま粘って翼が自由になれば、再び傷を癒す場所を探しに行くつもりだ。たとえ自然の摂理に抗おうと、ドラゴン族は再びこの世界に戻ってきた。滅びるために戻ったのでは決してない。
「むう? なんじゃこれは」
光の蝶がマギステルの顔の周りを乱舞し始める。
片手間のように焼き払うと数匹の蝶が巻き込まれ、光の粒となってはじけた。
「ぐっ!?」
体が僅かにこわばった。光の粉が舞っている。壊れた蝶が撒いた鱗粉が、マギステルの体をむしばんでいる。
万全の状態であれば、影響を無視してしまえるほどの効果だったろう。弱っている今は、積極的に壊しにいく事も出来ない。
蝶の群れの間から、赤い炎が飛んでくる。
「(その調子です、シロちゃん)」
光の蝶に身を隠し、火の玉を死角から吐く。反撃は新たな蝶を弾けさせ、体の自由を奪う鱗粉が撒き散らされる。
つい昨日、植物の蔓に絡め取られ鳴いていたドラゴンとは思えない。その記憶ですら遠く懐かしく思えてくる。
「(大丈夫、あなたは強い子です)」
あとでいっぱい褒めてあげよう。
ヒナは新たな光の蝶をユーベルコードで呼び出しながら『シロちゃん』の無事を願う。
「あなたたちを侮ったあの言葉、後悔させてやりましょう」
成功
🔵🔵🔴
サニー・アンダーテール
わーでっかいドラゴンだ!
シアン、お前も大人になったらあんなに大きくなるの?
……大きくなったら、もうぼくの上に乗ったりしちゃダメだかんね!
あれだけ大きいなら、弱点も大きい筈
ぼくらはこっそりドラゴンに近づいて、目を撃ち抜いてやろう!
UCを発動して自分とシアンを透明にして、目を狙いやすい位置まで近づく
本来はとっても疲れる技だけど、今回は移動は全部シアンに任せるから、普段ほどじゃない筈
シアン、しーっ、だからね。しーっ
そうしてこっそり近づけば、可能な限りUCは発動したまま、目を狙い撃つ
出来たら両目を潰したいけど、できないならすぐに撤退だ!
ばれた後は必死に逃げ回るよ!
まだ食べられたくない!
もっかい透明だ!
マギステルは満身創痍の体を引きずるように海の浅瀬を踏みしめた。凍り付いた背中の翼は、徐々に溶けはじめている。光の蝶が巨竜の顔を飛び回り、時々そこに火の玉が弾ける。既に誰かが戦っているのだ。心なしかドラゴンの動きは、精彩を欠いているように見えた。
「――これならいける」
サニーは確信と共に呟いた。
相棒のシアンの背に乗り、果実を撃ち落とした岬の道。あの道中が今、サニーとシアンに自信を与えている。
「それにしてもでっかいドラゴンだな! シアン、お前も大人になったらあんなに大きくなるの?」
飛竜の原型を大きく育てたように見えるマギステルに、成長後のシアンを重ねてみる。
「キャ……キャッ?」
シアンは首を傾げた。大人の姿を思い描くには、まだこの仔竜は幼い。
サニーもこの小さなドラゴンが、何をどれだけ食べればああなるか想像がつかない。
「……大きくなったら、もうぼくの上に乗ったりしちゃダメだかんね!」
「キャキャッ!」
この前みたいにじゃれあえるのは、お互いが子供同士の今だけだ。
その未来を守るべく。小さな騎竜は竜騎士を背に乗せて、浅瀬の上空を羽ばたいた。
「いいか、シアン。今回の飛行ルートは全部お前に任せる! あれだけ大きいなら弱点も大きい筈だ。アイツの目に向かって飛ぶんだ」
青い鱗の首を撫で、サニーは自分の目を指さして相棒に伝える。
「キャッ!」
相棒にしてはきりっとした凛々しい声。
シアンは翼を畳むようにして空気抵抗を減じると、一直線にマギステル向けて落下を始める。
ユーベルコード『静の森で』。
落下するサニーとシアンの小さな姿が、風に溶けるように掻き消えた。
移動を全て仔竜に任せ、疲労の大きなこの技に集中する。それがサニーの作戦だ。
普段よりも透明化する範囲が大きい分、どっと疲れが押し寄せる。集中し、今はただ姿を消すことに全力を注ぐ。
たまたま流れてきた火球を僅かに翼を傾けて避け、シアンは竜の顔を目指す。
サニーは弓に矢をつがえた。矢の軌道とドラゴンの瞳は既に重なっている。シアンは随分飛ぶのが上手くなった。
息を止め、静かに引き絞り撃ち抜く。
「ぐおおおおおおおぉぉぉ!?」
右の瞳の瞳孔を矢が正確に射貫いた。十分近付いてからの射撃だ。外しはしない。
下向きの弧を描くように、シアンはマギステルの顎の下を回る。
サニーは再び目の前に現れた瞳に、弓を引き狙いを定めようとした。
「(あ、あれ……)」
マギステルの瞳が2重に見える。疲れが溜まっているのだ。
放たれた矢は狙いを僅かに外して頬に当たり――。
「キャーッ!」
「シアン!!」
それを見たシアンが炎を吐く。
外れた矢に反射的に瞬膜を閉じたマギステルは、襲撃者を見定めるべく開いた目を、仔竜の炎に焼かれた。
大成功
🔵🔵🔵
真守・有栖
とかげじゃないわ
おおかみまる、よ
本能に抗い
己を貫く
とっっっても!りっっっぱな!どらごんよ!
真っすぐ、往くわ
此処で退けば
美味しい果物も未来の仲良しさんも
焼き尽くされてしまう
その脚も
その爪も
えぇ、狩るのではなく。護るために
真守・有栖。狼丸。参る……!
刃に込めるは“貫”の烈意
狼竜一体。一心にて
迸る斬光が炎禍を裂き海を断ち
銀閃が拓き銀麟が駆け抜け――
光刃、烈閃
連なる銀が暴竜を貫く。成敗……!
見事な狼竜っぷりだったわ!さっっっすがおおかみまるね!
やればできるじゃないの。とーっっっても褒めてあげるわっ
私が教えることはもうないわ
護るべくを護る、立派な竜に貴方なら成れる
えぇ、さよならは言わないわ
また、いつか!
両眼は仲間の手によって封じられ、手当たり次第に炎を吐き散らし、ぎりぎり猟兵を食い止めている。段々とマギステルの息が切れていくのを感じ取って、有栖とおおかみまるは接近する機会を待った。
あのドラゴンは仔竜たちを『ドラゴンではない』と言っていた。力と知をもたず、人間と力を合わせ共に生きている。そのようなものはドラゴン族ではないと。
トゥシュ村の人々は『ドラゴンだ』と信じていた。自分たちと共に生き、はるか昔から暮らしてきた。そういうドラゴンもいるのだと、疑ったことすらない。
有栖は思う。
「本能に抗い、己を貫く。おおかみまるはとっっっても! りっっっぱな! どらごんよ!」
自分たちがそう信じる限り、この仔たちは立派なドラゴンだ。
ようやくと言うべきか。マギステルは肩で息をしはじめる。炎を連続で吐けなくなっている。
「(此処で退けば、美味しい果物も未来の仲良しさんも村の人も焼き尽くされてしまう)」
おおかみまるの背に乗って、有栖は足で合図する。
「いくわよ! 狩るのではなく、護るために!」
「グアア!!」
おおかみまるは砂浜を走って浅瀬を踏み、鉤爪でしっかりと岩棚をとらえる。軽く飛び跳ね巨石に上がると、ジャンプで次の巨石へと渡っていく。空を飛ぶことこそ出来ないが、人を乗せて地を駆ければ飛ぶように速い。
暗闇の中、気配を察してマギステルが有栖とおおかみまるの方へ頭を巡らせた。
「――いるな、仔トカゲ。人に従う裏切り者の末裔め」
「とかげじゃないわ。『おおかみまる』よ」
炎を避けようとしたおおかみまるを制して、有栖は竜の上で刀を抜き放った。真っ直ぐマギステルに向かって振り下ろす。
正面から堂々と。ユーベルコードを発動する。
海が割れ、火球が割れ、マギステルがよろめいた。
水が引いた真ん中を、おおかみまるは駆け抜ける。銀の鱗と髪を高熱にさらしながら、ぎりぎり火球の真ん中を突っ切った。
「真守・有栖。狼丸。参る……!」
「グアア!!」
鉤爪が水の戻り始めた海底を蹴る。
ただ一本、無事なドラゴンの腕が振るわれる。その鱗を蹴りつけて、狼丸は更に跳んだ。
刃に込めるは”貫”の烈意。狼竜一体、一心にて。
「連なる銀が暴竜を貫く! 光刃、烈閃」
胸から背中へ貫かれ、口から頭を貫かれ、うなじから喉を貫かれてマギステルは浅瀬に伏す。
「次に滅び、骸の海に送られるはお前たちじゃ……」
そう言い残して。
●
「見事な狼竜っぷりだったわ! さっっっすがおおかみまるね! やればできるじゃないの。とーっっっても褒めてあげるわっ!!!」
トゥシュ村の門で、有栖は銀の竜の背中に乗ったまま首に腕を回して抱きしめた。
「私が教えることはもうないわ。護るべくを護る。立派な竜に貴方なら成れる」
「グアア……!」
「えぇ、さよならは言わないわ。また、いつか!」
たった2日のことであれ、共に過ごした記憶は数えきれず。
岬の道を歩く時、熟れた果実をかじる時、出会った地を通りがかった時、あなたの事を思い出す。
転移の光が消え去れば、いつもの村の夕暮れが戻ってくる。
光の残滓を見届けてから、仔竜は平原を駆けていった。
成功
🔵🔵🔴