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不帰の森

#アックス&ウィザーズ #群竜大陸 #クラウドオベリスク

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 その森がいつからあるのか、それを知る者は最早ない。
 だが、分かっているのは、長い間、その森が住民と共に生きていたということ。
 そして、その始まりの物語。

「昔々、あの森がまだなかった頃。そこにはとっても悪い竜が住んでいたんだ」
「その竜は大いに暴れ、喰らい、財を貯め込み、私達の遠い遠い御先祖様も、ほとほと困っていたそうな」
「そんなある時、1人の若者がこの町をふらりと訪れたんだ」
「目の眩むような美しい剣を持った青年。それに負けぬ存在感」
「『悪い竜が皆さんを困らせていると聞き、私は馳せ参じました』」
「青年はそう言って、竜退治に乗り出した。そして、戦いは三日三晩にも及んだそうな」
「火が荒れ狂い、輝きがそれを断ち切り、牙が若者を貫き、剣は竜を断ち切った」
「そして、見事と竜を退治した青年は言ったそうだ」
「『竜よ。今迄の悪行を償う時が来た。その身をもって、この地を見守る礎となるといい』」
「するとどうだい。骸となり果てた竜の身体から緑が芽吹き、次第に広がっていくじゃないか」
「そして、出来上がったのが、あの森さ。青年はそれを見守ると、一言だけ御先祖様たちに言い残してふらりと消えていったそうだ」
「『森の深部には竜が眠る。深部に踏み込む者は、その眠りに囚われることだろう。だが、踏み込まなければ、この森はアナタ達に恵みを齎すだろう。』ってね」
「あたし達の御先祖様の多くはそれを守ってきた。実際、あの森に住みついた動物達に木の実なんかはあたし達の糧になってる」
「だけれど、竜が貯め込んでいたっていうお宝目当てか、それとも森の恵みに対しての欲をかいたのか。深部に踏み入った者達も居る。ただ、誰1人として帰ってきてないけれどね」
「その帰ってこなかった者達は言い伝えにある通り、竜の眠りに囚われて、森の奥深くで延々と死ぬことも出来ず彷徨ってるって話だ」
「だから、アンタもそうなりたくないなら、森の奥……目印の大岩の向こうに行ったら駄目だよ? いいかい?」

 その土地に伝わる寝物語。
 そこに住まう者であれば、物語の内容に小さな差異こそあれ、誰もが知る物語。
 だからこそ、土地の者はその森を畏敬と自戒の念を込めて呼ぶのだ。不帰の森、と。

「と、まぁ、子供が危ないことをしないようにぃ、言い含めるためのよくある物語の1つですねぇ」
 作り物の兎耳をゆらりと揺らして、ハーバニー・キーテセラ(時渡りの兎・f00548)。髪を彩る花びらから、はらり零れる香りもつれて。
「ですがぁ、実際のところぉ、不帰――帰らずの森というのもぉ、あながち間違いではないようですぅ」
 ようとして知れぬ群竜大陸の場所。
 それを秘匿する機構こそが『クラウドオベリスク』と呼ばれるものであり、それが説明された森の深部にあるのだと言う。
 奇しくもか、それとも狙ってかは不明だが、かの地には語られたような伝承があり、オブリビオン達にとっては都合の良いことに、その土地の者は深部へ近づくことはない。
 仮に近づいたとしても、それを始末してしまえばいいだけだ。伝承を理由として、森の深部で行方不明になった者を探す者など、誰もいないのだから。
 そして、侵入者の排除を担うのは、クラウドオベリスクの周囲に配置されたオブリビオン達ということだ。
 クラウドオベリスクを破壊するにしても、それが障害となって立ち塞がることは間違いない。
「ですのでぇ~、皆さんにはぁ、オブリビオンを排除しつつぅ、森の深奥を目指してもらうことになりますねぇ」
 恐らく、連戦に次ぐ連戦となることは間違いないだろう。
 それに加え、森の深部には人の手がほとんど入っていないがために下草は伸び、根は生え回り、足場が良いとは言えない。
 また、樹々立ち並ぶ中では視界も通りにくく、そこをこそ己の領域とするオブリビオン達に比べ、ともすれば猟兵達には戦い難さや奇襲を受ける可能性は常に付きまとう問題点になり得るだろう。
「敵地に跳び込むため、その危険性は常より高いことが予想されます。どうか、用心は十二分に」
 ――それでは、ここまでのご案内はハーバニー・キーテセラ。皆さんの旅路の幸運を祈って。
 懐中時計から投影されたグリモアへ銀の鍵が差し込まれ、捻り、カチリと開錠音。
 そして、猟兵達の世界は切り替わる。
「いってらっしゃいませ」


ゆうそう
 オープニングへ目を通して頂き、ありがとうございます。
 ゆうそうと申します。

 クラウドオベリスクを砕くため、いざ、森の深奥へ。
 当シナリオは全て戦闘シナリオとなっています。
 ただし、立ち塞がるのはオブリビオンだけでなく、森と言う環境そのものも。
 対策せずともある程度は問題なく戦えますが、奇襲や足場等への対策があればよりスムーズにことが運べるかもしれませんね。
 それでは、皆さんの活躍、プレイングを心よりお待ちしております。
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第1章 ボス戦 『テリトリー・メイド』

POW   :    守護の花よ、牙を剥け
自身からレベルm半径内の無機物を【毒を帯びた棘持つ蔦と花弁】に変換し、操作する。解除すると無機物は元に戻る。
SPD   :    かすり傷でも十分なのよ
【クロスボウから放った矢】が命中した対象に対し、高威力高命中の【体を蝕む呪詛に等しい毒の散弾】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
WIZ   :    すり抜けるわ
【緑の外套を脱ぎ去る】事で【高速戦闘モード】に変身し、スピードと反応速度が爆発的に増大する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠椎宮・司です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 踏み入れた森の入り口。そこから暫くはまだ人の出入りもあるのだろう、踏み鳴らされた道もあった。
 だがしかし、目印であり、境界である大岩を境として、世界は変わる。
 鬱蒼と樹々は生え、枝葉は天蓋の如くと広がり、陽の侵入を拒むかのよう。
 踏みしめる脚が伸びる下草に触れ、かさかさと音を立てた。

 ――不意に、風切り音。

 どこからかと飛来した矢は猟兵達に当たらず、地に突き立つ音を飲み響かせる。
 射手は――見当たらない。
 視界に広がるのは鬱蒼とした森ばかりであり、そこに敵の気配は紛れ込んでいた。
「侵入者かと思えば、まさかそれが猟兵とはな」
 森に木霊し、響く声は年若い少女のそれ。
「まあ、いいさ。あたしはあたしの領域を侵す者を討つだけだ」
 森の深奥へと向かわんとする猟兵達に、森が第1の牙を剥く!
ボアネル・ゼブダイ
ふむ、美しい森だが
相応に危険はあると言う事か

コ・イ・ヌールを装備
伸ばした爪刃で飛来する矢を範囲攻撃でなぎ倒しつつ
敵に感づかれないように密かにUCを発動
周囲の影に潜ませ隙を伺う

くっ…
こうも足場が悪いと身動きがとれんな…!

等と言って敵を油断させつつ飛来する矢を全力で防ぎ
埒があかないと敵がUCを使いこちらに接近戦を仕掛けるようにおびき寄せる

よし、
存分に喰らえ、影の魔狼よ

高速戦闘モードの敵がこちらに向かってきたら
潜ませた魔狼を出現させて爪牙でカウンター攻撃
その隙に人工血液を吸血
ドーピングで身体能力を上げたら装備武器で追撃する

我々の目的は森の最奥、クラウドオベリスクだ
貴様に構っている暇はない

アドリブOK



 人の手が入らぬ森。それはある種、自然がその手によってのみ創造した空間とも言える。
 故に、そこにあるのは自然の雄大なる美であり、人に生み出せぬものであった。
 長い年月が生み出した樹々の造形。森の彩。そこで育まれ、終わる命。
「ふむ、美しい森だ」
 それこそは彼――ボアネル・ゼブダイ(Livin' On A Prayer・f07146)が祝福し、慈愛と希望とを向けるべきもの。
 だからこそ、彼は此処を美しいと言ったのだ。
 だが。

 ――再びの空気を裂く音。

 それはその美しさの中に含まれぬもの。
 動かぬボアネルの身体。しかし、その両の腕は優雅に、指揮するかのようにと宙を舞う。
「――が、相応に危険もあるということか」
 舞う腕の軌跡を描いて、光が揺れた。
 それは迫る危機――放たれた矢を阻む壁となり、ボアネルの身を害するを許さない。
「そういうことだ。貴様も大人しく、あたしの領域の糧となるがいい」
「すまないが、私の命は既に神へと捧げている。貴様に差し出せるものはない」
「そうか。それなら、その神の御許へ送ってやろう」
 枝葉の隙間より、聳え立つ樹々の合間より、下草伸びる地より、森潜む影はそこが平地と言わんばかりに縦横無尽とその矢を放ち、脚は止まるを知らぬ。
 この地を己の領域と言い放つ言。それは伊達ではないということか。
 矢が雨となり、壁となり、囲いとなり、ボアネルを仕留めんと迫りくる。
「光届かぬ暗黒に潜み、影の中を走る餓えた獣――まさしく、そのようだな」
「獣風情と同じに語るか!」
 光は軌跡を宙へと描き続け、森の奥に潜む者を暴き出さんとするかのよう。
 だが、その光は森の奥までとは未だ届かず、飛来する敵意の具現を壁と防ぐに留まるのみ。
 故に、森潜む影はそれを見抜いていた。
 積極的に攻勢へと出ぬボアネルのその脚元が矢の圧力に、じりと少しずつではあるが後ずさるのを。
 つまるところ、攻勢に出ないのではなく、出られないのだ、と。
「――ならば、その獣に喉笛食い千切られ、地に還るがいい!」
 影が動く。
 矢の圧力は確かにボアネルを少しずつではあるが圧していた。
 だが、それだけだ。それだけだったからこそ、知らず影も焦れていたのだ。
 そして。
「くっ……こうも足場が悪いと身動きがとれんな……!」
 常であれば涼し気な横顔に、今は足場の悪さへ僅かと苦悶を張り付けるボアネルの表情。
 ――それへ惹かれるかのように。今の優勢を押し切るために。
 影が森に溶け込むためと纏っていた緑の外套は宙を舞い、それに隠されていた金色が零れ落ちた。
 それは、金髪碧眼なるエルフの少女。その姿を持つオブリビオン。
 森の障害などないかのように、彼女だけに森が道を拓くかのように、その脚は淀みなくボアネルを討つために進み――その牙が切り裂いた。

「――血の盟約に従い、我が意のままにその力を示せ」
「――ッ!?」

 驚愕を張り付けるのは金色のエルフ。それを当然と受け止めるのは銀色のダンピール。
 ボアネルを討たんと進めた彼女の脚に走るは、傷の一筋。
 それを為したのは、影なる魔狼。
 ボアネルが矢防ぐうち、言の葉の刃交え合う内、密やかにと影に潜めた爪牙。
 地の利は森潜む者にこそある。
 それは自明の理であり、それ故にその思考こそは陥穽。
 地の不利を装った者により作られた罠は、己こそが優勢と思い込んだ者がその領域に足を踏み入れた瞬間にこそ牙を剥いたのだ。そして、その結果として、魔狼の爪牙は金色のエルフを捉え、その身を切り裂くに至れたのだ。
「我々の目的は森の最奥、クラウドオベリスクだ」
 だが、淡々と語る口調に驕りはない。
 こくりと喉を滑り落ちていくは、冷たくも熱い命の滴。
「貴様――ッ!」
「――貴様に構っている暇はない」
 身体へと融けた命の滴はボアネルの中で力と変じる。
 そして――光は森の影を遂に捉え、その身に深々と傷を刻むのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

竜ヶ崎・をろち
「こんな危ない場所は無いほうがいいですよね!」
 この事件に対してこう感じ、猟兵として参加します。

ユーベルコード「グラウンドクラッシャー」を使用して戦います。
とりあえず敵に目掛けて振り回しますが、当たればラッキー、当たらなくても地形ごと木々をなぎ倒して視界を確保し、敵の攻撃を見分けやすくします。



 金色のエルフが負った傷より零れるは命の滴。
 その傷は深いが、それで戦うを止める彼女ではない。
 己の領域を侵されるを、その矜持が決して許しはしないが故に。
 だが、魔狼によりその身へ刻まれた、鈍く走る脚の痛み。それが明らかな機動力の低下を齎していた。
「――チッ! 守護の花よ、牙を剥け!」
 だからこそ、彼女はその態勢を整えるべくと手札を切る。
 彼女が懐より取り出し、猟兵達へと投げつけたは小石の礫。
 ばらりと蒔かれたそれは、彼女の言葉へ応えるかのようにその身を棘持つ蔦と花弁の刃へと変じ、その身を隠す時を稼がんと牙を剥くのだ。
「――これの相手でもしているがいい!」
「いいえ、そういう訳にもいきません!」
 応える竜ヶ崎・をろち(聖剣に選ばさせし者・f19784)が声の一刀両断。
 振り回すは聖なる刃――を包んだ巌固めた鉄塊の。それは最早、鈍器と言うよりは破城槌のような攻城兵器の類か。
 だが、この場合においてはそれが何よりも頼もしかった。
 何故なら、金色のエルフを隠すは植物の壁であり、壁を崩すにそれが適任でなくなんとするか。
「こんな危ない場所は、無いほうがいいですよね!」
 ぶんと振るわれるは少女が剛腕。
 しかし、それは確かに手に持った大質量のそれを繰り、壁を激しく叩くのだ。
「む、無茶苦茶な!」
 それは思わずとして、金色のエルフですら目を丸くする光景。
 千切れ飛んだ植物の壁の向こうで、をろちの纏う衣装から――意図的に――見える筋肉が美しく躍動していた。
 そして、当たるを幸いとばかりに、その躍動は加速をしていく。

 ――振るう。千切れ飛ぶ。振るう。千切れ飛ぶ。振るう。千切れ飛ぶ。

「もう! しつこいですよ!?」
「なんなんだ、こいつは!」
「なんなんだって、花のJCですよ! 来年にはJKです!」
 ただし、聖剣の――渋々ながらの――加護と竜の力を持った、と但し書きも付くが。
 迫りくる棘持つ蔦と花びらの刃を質量で蹂躙し続けてはいるものの、長くともなれば辟易もしよう。
 だから。
「ええいっ!」
 ――彼女はその怪力を、封印ごと聖剣を引き抜くだけの力を秘した怪力を、余すところなく引き出し、振り下ろしたのだ。
 それはただの大上段からの一閃。
 だが、彼女がそれを振るえば、それはただのではなくなる。

 ――爆風が吹き荒れた。

「なんっ!? ――きゃあっ!?」
 大上段から振り下ろされたそれは、迫る脅威を容易くと千切り、地に突き立つ。
 そして、爆発が起きたかのような衝撃と共に地をめくり、下草を吹き飛ばし、根を断ち砕いたのだ。
 つまるところ、森の一部に突如として更地が出来上がり。
 そして、その衝撃は風となり、姿隠さんとしていた金色のエルフをも吹き飛ばしていった。
「むむっ! 姿を晦ましましたね!」
 晦ましたというよりは、晦まされたと言うべきか。
 だが、それを機として再びに金色は森の影。
 ただし、をろちが行動により森の視界は先頃よりも開け、足を取る下草の影響も随分と軽減されていた。
 視界を確保し、敵からの攻撃を見分けやすくするという目論見は成功したと言えることだろう。
 そして、敵を炙り出さんと振り回す質量が、樹々すらもをへし折り、更に更にとそれを広げていくこととなる。

成功 🔵​🔵​🔴​

御堂・茜
弱きを助け悪を挫く竜退治の勇者様…!
御堂もかく在りたいものです!
畏敬の念を込め大岩に一礼し
曇りなき正義の愛刀を携えて参りましょう

ハーバニー様のように軽やかに枝を跳んでゆければ良いのですが…
この身は鋼!
重さで枝が折れてしまいます!
ならば…【気合い】で進むより他ないでしょう!

UC【暴れん坊プリンセス】!
更に天下自在符を装着し
馬モードのまま木の根を避け森を駆けます
【残像】が見える程に風の如く!
速ければ矢など恐るるに足らず!
さあ、当ててご覧なさいませッ!!

万一の時は機械部分で受け
毒の侵食を抑えます
そして御堂にはミドウ・アイがあります!
正義量が低い場所
そこに悪が潜んでいる筈!
一瞬で距離をつめ成敗ですッ!



 弱きを助け、悪を挫く。それはまさしくと正義の在り方。その1つ。
 例え、物語故の脚色がそこにあったのだろうが、今を生きる人々にそれは関係がない。むしろ、物語の中だからこそ、それは猶更に綺麗なものなのだ。
 そして、その美しさに感銘を受け、『正義』が受け継がれていくのならば、これ以上のことはないだろう。
 その『正義』を受け継いだ1人、御堂・茜(ジャスティスモンスター・f05315)は愛馬を駆って、森を往く。
 ――弱きを助け悪を挫く竜退治の勇者様……! 御堂もかく在りたいものです!
 畏敬の念を心に抱いて、礼を向けた大岩は既に後ろ。
 今は、その心に宿りし『正義』と共に、曇りなき刃を抜き放つのだ!

「正義の使者御堂、ただいま見参――」
「わざわざ討たれるために名乗るとはな!」
「――ッ! 名乗りの邪魔を!」

 曇りなき輝きが、飛来する矢を宙にて断つ。だが、茜の名乗りもまた断たれた。故に、その口より零れ出るは怒りの声。
 矢を放ちし金色は今再びと森の影。
 雨の様に、壁の様にと矢を撃ち放たぬのは、足を負傷しているが故か。しかし、それでも森を影と蠢くは出来るようだ。
 駆ける駿馬の脚を森に拓けた空間で止め、茜は飛来する矢を捌いて落とす。
 下草すらなく、森の中では珍しくと土の肌見えるそこ。ぐるりと視界の通るそこ。
 視えるのであれば、彼女に矢を落とすは難事ではなかった。
「影になど隠れず、正々堂々と姿をお見せなさいッ!」
「貴様達の都合になど、付き合っていられるか!」
 矢が奔り、再び輝きが断ち落とす。位置代わり、再びと矢が奔り――。
 互いにその身を穿てず、断てず。しかし、此度は金色のエルフも近付くという愚は犯さない、犯せない。
 茜の脳裏に描かれたは、跳んではねてのいつかの、誰かの姿。
 そのようにあれたなら、きっと森に潜む影にも負けじと悪路も気にせず追い付けたことだろう。
 だが、彼女の身は鋼。宿す信念の硬さを証明するかの如くと、その身を変じた結果故に、その身を枝に乗せたならば、きっとその末路は転落のみ。

 ――すぅ、と茜は大きく一息吸った。

 森の影を睨むが、そこに隠れた金色の姿は見えない。
 息吐き出し、瞼閉じ、己が心に問いかける。
 軽やかには舞い飛べない。ならば、自身にあるのは何か、と。
「観念したか!」
 飛び来るのは言葉だけでなく、恐らく自身を害する脅威もであろう。

 ――閉じた目を見開き、その眼は世界を視る。

 細やかな足が騎馬の腹を蹴り、先へと進めと命じる。
 軽やかさはない。あるのは、先へと進む強き覚悟。例え、その道が茨であったとしても、歩みを止めぬ意志の強さが、彼女にはあったのだ。

 ――ぐんと加速する世界。

 迫っていた脅威は目標を見失い、茜のすぐ横顔を通り抜け、地へと突き立つ。
「――! ――!!」
 誰かが何かを言っている。しかし、最早その言葉は聞くに値しない。
 茜の見開いた眼は、討つべき者の姿を映してはいなかったが、確かにそれを捉えていた。
 悪なる者の気配を、彼女の瞳が逃す筈などなかったのだ。

 ――加速して、加速して、加速して、茜は一陣の風となる。

「速ければ矢など恐るるに足らず! さあ、当ててご覧なさいませッ!」
 常の騎馬、常の乗り手であったなら、如何に拓けていようとも森の中、騎馬繰るも限られる場所は死地も同然。
 だが、彼女は、彼女の馬はそうではない。茜が信念を鉄としたように、その身を預ける馬もまた同様に。
 それは地を削り、障害を踏みつぶし、ただ一直線に主を目的の場所へと運ぶ。

 ――これぞ、御堂茜が天下御免の通り道!

 矢弾は彼女を捉えない。捉えられない。捉えたとしても、その身の歩みを止めるには至らなかっただろうけれど。
 そして。
「成敗ですッ!」
 正義の刃は悪を討つ。

成功 🔵​🔵​🔴​

オリヴィア・ローゼンタール
森の深遠に眠る竜……実に興味深い物語です
が、まずは手荒い歓迎を凌がねばなりませんね

【天軍戦士の召喚】で呼び出した鋼の守護天使と共に戦う
【属性攻撃】で自身と天使の武器に聖なる炎を纏う
信仰心が無敵の源泉なので疑念は一切抱かない

【毒耐性】【呪詛耐性】で抵抗
毒植物や矢を、聖槍や守護天使の光の剣で【なぎ払って】燃やす
毒の殺傷力に頼っているのでしょうか、素の破壊力はそこまででもなさそうですね

豊富な【戦闘知識】で狙撃手の居場所を探り、【ダッシュ】【クライミング】【スライディング】を駆使して【追跡】する
――そこですね

守護天使と連携して斬り打ち穿ち、【ランスチャージ】で粉砕する
次弾を装填するヒマは与えません!



 真っ直ぐなる志を宿す刃は1つのみに非ず。
 森に花咲く焔の花。照らし出されるは銀彩。
 オリヴィア・ローゼンタール(聖槍のクルースニク・f04296)が森を駆け抜け、金色のエルフへ追撃を掛けんとするのだ。
「森の深淵に眠る竜……実に興味深い物語です」
 駆け、跳び、進み。その脚を絡めとらんとする森の障害など意にも介さず。
 ならばと飛来するは毒に濡れた鏃の群れ。
 当たりを付けてはいないのだろう。弾幕を張る様に、とにかくと撃ち出されたそれは滅茶苦茶に飛び交うが故、不用意に足を踏み入れるを許しはしない。

「――が、まずは手荒い歓迎を凌がねばなりませんね」

 ただし、それは普通の相手であれば、だ。
 ここにある猟兵の誰もが一騎当千の兵であり、その場凌ぎの攻撃で止まるような者達ではない。
 自身が零した言葉。それを証明するかのように焔が軌跡を描き、森を照らし出した。
 その後に落ちるは、火中に飛び込んだ虫の末路か。切り払われ、薙ぎ払われ、燃やし尽くされ、地に横たわる鏃の名残。
 彼女の脚は、止まりなどしない。
「糞ッ! 猟兵ってのは、皆こうなのか!」
「さて、どうでしょうね。全てが、という訳でもないかとは思いますが」
 ――少なくとも、私はこの程度では止まりませんよ。
 言外に仄めかし、その脚がまた彼我の距離を縮めた。
 積み重ねてきた経験。研鑽し続けてきた力。それが揺るぎない意思と噛み合い、その結果が、今、ここにあるのだ。
「――ッ! 守護の花よ!」
 正面からぶつかるは、やはり不利。
 元々、金色のエルフは己が領域と定めた場に潜み、障害を排除することこそが得手。
 圧倒的武威を持つ相手と、このように正面からやり合うような状況は避けるべきことなのだ。
 だから、彼女は場を再構成せんとするのだ。
 金色のエルフの言葉に応え、落ちた鏃の群れがぞわりと蠢く。無作為に撃ち、至る所へと落としたが故に、その広がりは早い。
 森を呑み込み、猟兵を呑み込むかのように、毒の棘持つ蔦が、花が広がっていく。
「茨へ囲まれた先にあるのはお姫様……とは程遠いですか」
「言っていろ!」
 瞬く間に出来上がるは茨の森。
 そして、金色のエルフが意思を汲み取ったかのように、茨はオリヴィア囲む檻となり、檻は内に捕らえし者を圧し潰さんと収束する。
 が。
「お姫様でないなら、貴女は13番目の魔女と言ったところですね」
 その状況に動揺はなく、怯えもなく、威風堂々たる姿だけがあった。
 それは金色のエルフが予想とは異なるもの。そして、続く結果もまた。

「天来せよ、我が守護天使。王国を守護する無敵の戦士よ」
 暗雲を切り裂くが如く、森の天蓋を貫き、天より差し込むは一条の光。
「――御霊の剣を抜き翳し、勝利の歌を奏で賜え!」
 一条の光が溶け消え、光の粒子が残滓と遊ぶ。
 ばさり広がるは純白の翼。煌き光るはアウレオラ。
 ――揺るがぬ信仰心の齎した奇跡。鋼鉄なる天使の降臨であった。
「それでは、魔女退治といきましょう」

 閃光が奔った。
 それは槍の穂先が軌跡であり、光の刃が軌跡。
 軌跡の描いた残光が森に溶け消えるに遅れ、蔦の檻は瓦解する。
 そして、解き放たれるは2人のオリヴィア。
 武装天使は蔦の棘にも、花にも、それら齎す毒にも意に介せず。引き千切り、踏みつぶし、道を均して先を行く。
 それに続くオリヴィアもまた、檻囚われていた時間を取り戻すかのように淀みなく。
「蔦よ! 花よ! 植物たちよッ!」
「いいえ、貴女に次をさせるヒマは与えません!」
 駆ける勢いを穿つための力と変え、燃ゆる槍が、剣が、形成されつつあった蔦の盾ごと金色のエルフを貫き、吹き飛ばすのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

上野・修介
※アドリブ、連携歓迎
「なるほど。射手か」
この森は相手の領域。
生半可では捉えられないだろう。
「だが森は誰にだって平等だろ?」

姿は見えずとも、実体があるならば痕跡はある。
故に恐れず【勇気+激痛耐性】、【覚悟】を決めて推して参る。

武器は素手格闘【グラップル】
UCは基本防御強化。攻撃時のみ攻撃力を強化。

呼吸を整え、無駄な力を抜き、目付を広く、戦場全体を観【視力+第六感+情報取集】るように。

木々を遮蔽物【地形の利用】として【フェイント】を掛けながら常に動き回って狙いを付けさせない。
先ずは撃たせて間合いと拍子を量【学習力+戦闘知識+見切り】り、【ダッシュ】で距離を詰め、【捨て身の一撃】を叩き込む。



 盾ごとと吹き飛ばされた金色の彩は茨の蔦に受け止められ、それでも殺しきれなかった衝撃はその身を苛む。
「――ゴホッ、ゴホッ!」
 咳き込んだ際に口より零れたは血の滴。
 それは紅く紅くと口覆った手を、零れ落ちた先の蔦を染めた。
 しかし、領域を守るものとして、してやられてばかりという訳にもいきはしない。
 彼女にとて、プライドというものがあるのだ。
 吹き飛ばされた先で、その姿を蔦が覆い、はらり解けた時には姿もなし。
「これ以上、この領域で好き勝手などさせるものか!」
 響く声はまるで森全体から聞こえてくるかのよう。
「隠れ鬼が好きだと見える」
 追撃の脚を止め、上野・修介(ゆるふわモテスリム・f13887)の眼は周囲を見渡す。
 そこに見えるのは、茨の蔦と時折に咲く毒花。そして、元々の緑。
 その視線を遮るかのように、時折と茨がぞろりと動き、常に世界の形を変えている。
「なるほど。この森が領域とは言うが、確かに生半可では捉えられそうもない」
「ぶつぶつと何を!」
 蠢く茨の隙間を越えて、飛来するは鏃。
 それは修介の真後ろ、視ること叶わぬ筈の方角より差し迫る危機。
「――そして、そこに潜む射手。充分な脅威だ」
 だが、その言葉とは裏腹、霞の如くと手が動いた。
 そして、それが止まるを見せた時、その手中にあるのは捕らえられた矢の姿。
 目付は広く、戦場全体を視るもの。
 それはなにも視覚的なものに限るわけではない。
 茨の蠢き、風の流れ、草葉の舞……世界を構築する数多を捉えたのなら、そこに死角というものは最早存在し得なかった。

「だが、まあ、お粗末だな」
「――!?」

 世界の理見抜く黒の瞳と草葉の奥に潜む青の瞳。交わる筈のなかったそれが、確かに交わっていた。
 撃たれた矢の方角は背後。
 しかし、見据えるべきはそこではない。
 それは緑の世界を染める僅かな紅。それは他より僅かばかりと厚く固まる茨の壁。
「――チッ! 捉えたとて、近付けまい!」
「ああ、そうだな」
 がぱりと開いた茨の壁。その先に揺らめく金色。その手には既に装填されたクロスボウ。
 そこへと至るにしても毒の茨が波打ち塞ぎ、解き放たれるを待つ鏃が迎撃せんと、その存在感を示す。故に、修介はその言葉を素直と認める。認めはするが。

「――だが、森は誰にだって平等だろ?」

 茨の向こうより迫る鏃の群れの中、それでも身体は予め想定していた動きを澱みとなく実行する。
 それは戦場を捉える内で見出していた活路。
 辿り着くは先の猟兵の動きにより砕かれ、へし折られ、倒れ伏す樹々の内の1つ。
 既に森を構成する地形の一部と化したそれを武器とし、盾として利用するために。

 ――コォ。

 それは小さく、しかし、大気震わせるような呼吸の音。
 酸素が修介の身体を巡り、四肢末端にまで行き届く。そして、それは力と変じるのだ。
「! ――やらせるか!」
 鏃の群れがその密度を増すが、もう遅い。
 ズッと重い質量が地を擦り、それでも動かされたことを示す音。修介により、それは盾の如くと掲げられ、鏃を受け止め――金色目掛けて放り投げられた。
 この森が金色のエルフが領域だというのなら、全ての戦場は修介を始めとする猟兵の領域だ。
 彼らはその場その場で必要な技術や要素を拾い集め、利用し、戦うことに長ける。その技能が生きた瞬間であった。
「なっ! なぁっ!?」
「これぐらいで驚くとは……やはりお粗末だな」
 投擲された樹木は波打つ茨圧し潰し、此方と彼方とを結ぶ橋の如く。
 
 ――声はもう間近。
 ――巌すらも砕く拳が金色のエルフが身を捉えんと迫る。
 ――最早、茨の盾も間に合いはしない。

 そして、鈍い鈍い音が響き渡り、金色のエルフが獲物であるクロスボウごと、修介の拳がその身を穿った。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ガルディエ・ワールレイド
厄介な自然とそこに適応した敵か。
強敵だし、それ以上に難敵というべきか。
だからと行って退くわけにもいかねぇがな。

◆行動
《属性攻撃》を上乗せして強化した【竜神の裁き】と近接戦を織り交ぜて戦闘。

武装は《怪力/2回攻撃》を活かすハルバードと長剣の二刀流。
ハルバードの取り回しが難しいと感じれば長剣一本に変更。
また障害となる植物は可能そうなら《なぎ払い》で切り裂く

常に《オーラ防御》を展開。これは防御目的だけでなく、障害物になり得る下草や枝を強引に突っ切って立ち回るためのものだ。

【守護の花よ、牙を剥け】対策
【竜神の裁き】で、敵本体と同時に蔦や花弁もターゲットとして選択、一斉に薙ぎ払って迎撃するぜ。



 金色のエルフは幾度と穿たれ、打たれ、傷だらけとなった身体を引きずり、それでもと立ち上がる。
 だが、最早その手に得物はない。
 ガラリと地に散らばり落ちるはクロスボウだった物。
 残されたのは、森に蠢く毒の茨と花弁。それと、弓なければ用向きもなさぬ矢の束か。
「もう勝負は付いた。諦めな」
 立ち上がり、しかし、何をするでも、出来るでもなくある金色のエルフに、終わりを告げるはガルディエ・ワールレイド(黒竜の騎士・f11085)。
 纏う甲冑は全てを塗りつぶすかのように黒く、気高く。如何な場所であろうとも、そこにガルディエ在りと知らしめる存在感を放っていた。
「そうだな。あたしは貴様らを侮っていた」
「へぇ、認めるのか」
「――ああ、だから、あたしも、もうなりふり構わない」
「! ――てめぇ!」
 突きつけられる刃を前として、未だに金色に浮かぶ青は戦意を失わない。いや、むしろ、そこには覚悟を秘めた光が瞬いていた。
 そして、彼女の言葉を証明するかのように、拡がった茨が、花々が、毒が、蠢き、彼女を基点として集まっていく。それは全てを呑み込む黒穴のように。
 その一点への収束に巻き込まれまいと、ガルディアは跳ぶ。その動きは全身を包む甲冑を身に纏ってなお身軽。着地の衝撃に金属の擦れあう音を響かせて、そして、彼は『それ』を見た。
「厄介な自然とそこに適応とは言うが……まさか、自然の一部になっちまうとはな」
「ぐっ、うぅ……これぐらい、せねば、最早手はないのでな」
 そこに見たのは茨と毒を凝縮し、甲冑と身に纏う異形なる人型。見上げる程の巨体。だが、それは金色のエルフをも蝕む諸刃の刃。
「強敵だし、それ以上に難敵というべきか」
 そこに見える存在感は、先程までの満身創痍たる姿とは遠い。
 まさしく難敵たる予感。それをガルディエは感じざるを得なかった。 
 だが。
「――だからと行って、退く訳にもいかねぇがな」
 ――それでも、黒竜の騎士たるを名乗る彼に、退くという選択肢はない。
 彼の高まる戦意を示すかのように、応えるかのように、手にした双つの刃がばちりと赤い魔力を稲妻と弾かせていた。

「オオォォォォォッ!」
「潰れるがいい!」
 遠心力を込めた、掬い上げるような槍斧が一撃。
 それを迎え撃つは天蓋より落ちる茨の拳。
 激突の音は激しく、まるで金属同士がかち合うような音を森へと響かせ、風を巻く。
 その勝者はガルディエ。掬いあげる一撃に込められた怪力なるは茨の拳をカチ上げ、その胴を伽藍と開ける。そこに奔るは赤き刃。茨の鎧と、その奥にある本体を叩き切らんとする明確な意思。
 しかし、敵もさるもの。無防備を晒す筈の胴より、ぞろりと茨を伸ばし、彼の刃を絡め、毒の棘にて刺し貫かんと抵抗するのだ。
「ったく、びっくり箱かよ!」
「その程度で貴様らの首級をあげられるなら、安いものだ!」
 本体ごと断たんとした刃を寸でで返し、伸び来る茨をガルディエはなぎ払い、叩き斬る。
 振るった慣性を殺し、そこから即座に異なる目標を断つだけの力を発揮できるは、ガルディエの培ってきた力、そして、秘めたる怪力があるからこその。
 双方のぶつかる衝撃が森を揺らす。
 下草は風に伏され、絡みつこうにもガルディア自身が宿すオーラはそれを許さない。伸びる枝葉もまた、彼を阻害するには至らない。
 戦闘の激しさが及ぼす森への影響。そして、それでもなおと油断せぬガルディアの対策。最早、そこに森の障害が介入できる余地はなかった。
「攻めに護りに、厄介な鎧だぜ」
 広がっていた茨が凝縮した分、その密度は高く、それは通常なる刃ならば弾く程の硬度を持つ。かと思えば、その一部が突如として牙を剥く刃ともなる。まさしく、攻防一体の鎧とも言えた。
 だがしかし、だがしかしだ。それに腕をこまねき続けるガルディエではない。
「この雷は半端じゃねぇぜ」
 ばちりと強く、強く赤い魔力が稲妻と音を立てる。
 ガルディエに秘められた異端なる力の一端。神鳴る威を示すかのように。
 そして。
「――覚悟しな!」
 裁きは下される。
 それは茨を焼きながら、内へ内へと伝い、本体をも捉えるもの。
 声なき悲鳴が響き渡り、その手応えを確かにガルディエへと還しながら、赤い雷は茨を蝕んでいく。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リュカ・エンキアンサス
悪い竜、か
御伽噺みたいなのは好きだ
だから、ほんの少し気持ちが浮き立つ

目立たないように森の中、遮蔽をとりながら移動する
…寄寓だね。俺も射撃は得意なんだ
こういう撃ちあいも、嫌いじゃない

何度か地形を利用して目立たないように移動
それでも飛んでくる攻撃には絶望の福音も交えて回避する
特に毒は気合入れて避けたい

相手の攻撃から居場所を割り出す
大体の場所をつかめたらこちらからも銃を撃って反撃開始
撃つ時はなるべく距離と遮蔽を取り、移動しながら撃っていく
基本は生存重視、無理しない
ので、無理のない範囲で攻撃を重ねて、
着々と追い詰めていければいいなと思います

悪いけど(あんまり悪いとは思ってないけど
先に進ませてもらうよ



「悪い竜、か。御伽噺みたいなのは好きだ」
 リュカ・エンキアンサス(蒼炎の・f02586)の零す言葉は予知で耳にしたそれのこと。
 目立たぬよう、気付かれぬよう、草葉に隠れ、その身を秘して、彼はそれを見守り続けていた。
 赤い雷に蝕まれ、ぼろりぼろりと崩れゆく茨の鎧。
 その隙間から、ちらりと時折揺れて見えるのは金色の。
 周囲は戦闘の余波か倒木が目立つも、元々の下草や立木も未だと残る。
 誰聞こう。この光景も、当事者でなければきっと御伽噺の一幕に相応しいものなのだろう。
 そして、リュカもまた、その登場人物なのだ。
 だからという訳でもないが。
「――ほんの少し、気持ちが浮き立つ」
 淡々と語る口調の中に、それでも僅かと高揚が秘められているように思えたのは。
 ――見えていた金色が、先程より幾分と脆くなった茨に再びと覆われていく。
 狩人は森に秘し、獲物を仕留めるからこそ狩人たるのだ。それを止めた金色は最早狩人に非ず。
 ならば、なにか。
 ――それはもう、獣の立場でしかない。

 ――銃撃の音が森に木霊した。

 リュカの手にした灯り木が、その名に宿す言葉の通りと火薬の瞬きでもって僅かの間、森の薄闇を払う。
 そして、吐き出された弾丸は脆さの中を貫き抜け、茨の向こうへと。
「こっ……のぉ! こっちにもか!」
「驚いた。その形でも、射撃は出来るんだ」
 茨の塊が成す手を差し向けられると同時、木の洞のようにぽっかりと円を形成する暗がりより飛来するは鏃の群れ。
 それは一挙に面を制圧する程の密度こそなかったものの、まるでガトリングの如くと連続して放たれる。枝葉を揺らし、散らし、幹に刺さり、森の一部を針鼠の如くと。
 だが、茨の塊が成す手が差し向けられたと同時、リュカの身に奔ったのは予感。優れた第六感の齎す危機感知。
 それが無意識にと身体を動かし、その身を影から影へ。
 森を、地形を、遮蔽としながら動くが故に、彼の身を鏃が捉えることは叶いはしない。
 それは金色なるエルフが行っていたことと同じことであった。
「――キグウだね。俺も射撃は得意なんだ」
「――チッ!」
 銃撃が火線を宙に描き茨に穴開け、鏃が森に突き立つ音を響かせる。
 互いに得手とするのは射撃。その奇遇。
 森を一時ではあるが、己の領域と変えている。その寄寓。
 奇しくも、重なり合うところのある2人。故に、どちらが先を読み切るか。それが勝機を定めることとなる。

 ――リュカの跳び込んだ草葉の影。飛来する鏃の弾丸。遮蔽物は用向きをなさず、その身は……。

 隠れ蓑としていた枝葉を蹴り、跳び出さんとした瞬間の映像。
 それは優れた第六感の齎した未来視。進む先の絶望を脳裏に響かせる、福音の鐘の音。
 それがなんであるかと理解するより早く、リュカはその身を捻り、猫の様にと跳び出す位置を異なるとする。
 遅れて。
「――其処かぁ!!」
 ――未来が現在へと追い付く。
 しかし、その未来は本来訪れる筈であったものとは異なるもの。
 貫かれるべきであったものは貫かれず、鏃はただ虚空を奔るのみ。
 森の状況を鑑み、自分が隠れるならばと金色のエルフが読んだ1手。正しかった筈のその読み。だが、覆されたそれ。
 ひりつくような空気。それでも、リュカの生存への意思が、蜘蛛の糸を確かに掴み取ったのだ。
「こういう撃ち合いも、嫌いじゃない」
 そして、危機の後に訪れる好機。幾度と重ねてきた銃撃の果て。金色覆っていた茨の幕は僅かと剥がれおち、その中身の位置を晒していた。それを見逃す彼ではない。
「――悪いけど、先に進ませてもらうよ」
 だから、彼は淡々とその引き金を引いた。
 金色に咲いた紅い花。それは茨に咲く毒の花とはまた違う、真っ赤な。
 彼の勘が言っていた。
 終幕の時は近い、と。

成功 🔵​🔵​🔴​

イーファ・リャナンシー
子どもが危険なことをしたり、旅人が地元に悪影響を与えたりしないように作られた古い昔話だって思ってたものが、実は根幹で本当のことを含んでるって言うのはこの世界にありがちなことなのかもしれないわね

ともかく、クラウドオベリスクがあるって言うのなら放っては置けないわ
邪魔するっていうのなら、押し通るまでよ

小さな体を活かしつつ、遮蔽物を利用しながら先を急ぐわ
敵と遭遇したら【スピリット・アウェー】を使って透明になりつつ、小さな体のもたらすメリットと合わせて攻撃を掻い潜るわ
疲労も積み重なるといけないから、出来るだけ使うのは要所要所に限りながら、相手の隙を見つけたら【全力魔法456】で攻撃して畳み掛けるつもりよ



 零れ落ちる雫。それに伴い、朦朧とする意識。
 金色のエルフが見る景色はふわりふわりと覚束ず、まるで夢見心地のように。
 だから、その景色へと浮かび上がる様に燐光零す星のような光が見えるのも、きっとその欠片。

 ――意識が痛みに、蝕む毒に、引き上げられる。

 景色は急速にその輪郭を取り戻し、世界は現実の色味を帯びた。
 だが、その中においても燐光だけは消えない。
 そして、彼女は『彼女』を見た。
 それは妖精。小さく、嫋やかで、可憐なる。そして――猟兵の。
「子供が危険なことをしたり、旅人が地元に悪影響を与えたりしないように作られた古い昔話」
 妖精――イーファ・リャナンシー(忘都の妖精・f18649)は謳うように、鈴転がすように語るのだ。
「――そう思ってたものが、実は根幹で本当のことを含んるって言うのは、この世界にありがちなことなのかもしれないわね」
 アックス&ウィザーズに限らず、それは他の世界でも言えることなのかもしれない。
 だが、それを断言するには、イーファの記憶はあまりにも穴だらけで、今迄の経験でもって語るしかないけれど、それでもと。
 ――星の光が瞬き零れた。
「ともかく、この奥にクラウドオベリスクがあるって言うのなら放っては置けないわ」
 彼女の目的もまた、他の猟兵達と同じ。
 クラウドオベリスクを破壊し、群竜大陸への道筋を見つけんとするもの。
 そして、それはこの地を守る金色のエルフとは衝突するもの。
 だから。
「ア、嗚呼アァァァァァ!」
 金色のエルフは最後の力を振り絞る。
 その身は既に限界を超え、最早長くは持たないと理解するからこそ、死なば諸共、と。
 外套を脱ぎ捨てるかのように、彼女の纏う茨がはらりと解け――それは全てを呑み込む濁流と化した。
 それは彼女自身をも巻き込むもの。自爆。そう、自爆だ。
 彼女自身を炉心として、茨の爆風を、毒の爆風を当たり一面に撒き散らすための。
「抵抗は当然ね。でも――」
 言葉は形をなさず。イーファの姿もまた、それへと呑み込まれていった。

 ――周囲を茨が蠢き、拡がる。
 人間やエルフを始めとする種族のヒトであったなら、それに呑み込まれたならば一溜まりもなかったことだろう。
 だが、彼女は、イーファは身長30cmにも満たない身体だ。
 それ故に、その身は茨の爆風の中においても、依然として健在。その身を茨の隙間へと潜り込ませることが叶っていたのだ。
「さて、隠れんぼの始まりよ」
 小さな身体を活かし、姿掻き消す力でもって、その身をするりと茨の森が奥へ奥へ。森の主に見つからぬように。
 目指すべき場所は、茨の発生源――金色のエルフであり、炉心たる者の居場所。
 するりするりと茨を越えて、潜って、触れぬように。
 その姿を見る者が他にあったとすれば、それはまさしく森の中を飛び交う妖精そのもののようにも見えたことだろう。
 そして、彼女は程なくとして目的の場所へと辿り着く。
 茨喰い込み、生気も感じられぬ、金色のエルフが炉心の場所へ。
「そんなになってまで、私達を止める必要があったの?」
 もしかすれば、過去、イーファにも命を賭してと思うものがあったのかもしれない。
 だが、その答えは失われた時の向こう。
 金色のエルフからも、問いかける己の内からも、返る声はなかった。
 ふるりと振るわれた頭に、青が揺れた。今、それを追いかける時ではない、と。
 だから、彼女は告げるのだ。
「――邪魔するっていうのなら、押し通るまでよ」
 茨に呑み込まれる直前、掻き消された言葉を再びと形にして。
 そして、眩い光に包まれた茨の森は瓦解する。
 森の奥へと続く道を、猟兵達に拓くかのように。

成功 🔵​🔵​🔴​




第2章 集団戦 『毒牙虫』

POW   :    針付き鎌
【毒針】による超高速かつ大威力の一撃を放つ。ただし、自身から30cm以内の対象にしか使えない。
SPD   :    針付き鋏
【毒針付きの鋏】が命中した対象を切断する。
WIZ   :    1匹いれば
【忌避】の感情を与える事に成功した対象に、召喚した【30匹の仲間】から、高命中力の【攻撃】を飛ばす。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 森が猟兵達へと剥いた第1の牙は退けられ、奥へ奥へと続く道が示される。
 それは揺らめいた景色の向こうに見える巨塔。
 テリトリー・メイドを打倒すると共に姿を見せたそれ――クラウド・オベリスク。
 それを目指し、猟兵達は道なき道を再びと歩み出すのだ。
 そして、歩みを進めて程なく、猟兵達は周囲に散らばるモノに気付くことだろう。
 それは物言わぬ骸の果て、白きを見せるもの。
 それはかつて誰かが振るったであろう得物の果て、今は錆色を見せるもの。
 転がり、散らばるはかつての名残達。

 ――竜の眠りに囚われて。

 さて、それを零したのは誰だったか。
 だが、これがそうなのであろうか。森に入り、帰らぬ者となった者達の末路なのだろうか。
 そして、新たなる音が響くを猟兵達は耳にする。
 それは耳に残る耳障りな羽音。
 1つ、2つ……否、最早数え切れぬそれは、異形の蟲。
 数多と奏でられる羽音は、最早、竜の咆哮とも変わらぬ圧を感じさせるもの。
 刺々しき角、牙、身体。その全てが侵入者への敵意を感じさせるもの。
 恐らく、ここに眠ることとなった者達を生み出したのは、これが原因の一端でもあることだろう。
 そして、蟲達は正面から、森の影からと、猟兵達もその輪に加えんと殺到を開始するのだ。
ボアネル・ゼブダイ
今度は森に蔓延る番犬…番虫か
まったく、美しさとは裏腹になかなか過激な森だな

UCを発動
氷結属性の薔薇を敵の集団に投げつける
凍り付いたら破壊せずに次々と召喚された敵集団ごと氷像にしていく

周囲は鬱蒼とした森で枝葉は天蓋の如く広がる…つまり、ここは陽光が遮断され空気の逃げ道が少ない蓋をされた箱のようなものだ
そんな状態で氷の彫刻を幾多も放置すればどうなるか…
一時的にだが、氷像が放つ空気より重い冷気がその場に留まり周囲の温度を下げ続けると言う事だ
氷点下での越冬は可能でも急激な温度変化に耐えられる昆虫はいない
動きが鈍れば格好の的だ
氷の薔薇の追撃と装備武器の攻撃で一気に残りの敵集団を殲滅する

アドリブ連携OK


上野・修介
※連携、アドリブ歓迎
「毒虫か。厄介だな」
この後を考えるなら、無傷とはいかないまでも極力消耗は減らしたいところ。

呼吸を整え、無駄な力を抜き、戦場を観【視力+第六感+情報収集】据える。
まずは敵味方の戦力を把握し、総数と配置、周囲の地形を確認。

得物は素手喧嘩【グラップル】
UCは攻撃力強化。

ヒット&アウェー重視【ダッシュ+逃げ足】
敵は毒持ちで数も多い。半端な間合いに居つかず、極力接触時間を減らす。
脚を止めず、敵との間を保ち、一対づつ確実に仕留める。

可能なら広域火力持ちの味方の前に誘導し一網打尽を狙う。
その際は【挑発とフェイント】を用いての囮役をする。

あとは腹を据えて【覚悟+勇気+激痛耐性】推して参る。



 ぎちぎちと鳴る音は鳴き声か。はたまた、蟲達の全身覆う甲冑が奏でる不協和音か。
 鎌から、鋏から、ぽたりと落ちた一滴。これから獲物喰らうを夢想して、食欲に零れた涎の様に落ちたそれ。
 零れた雫がかつての生者が名残に触れ、白色がどろりと黒く溶け落ちた。
「今度は森に蔓延る番犬……いや、番虫か」
「毒虫の類か。厄介だな」
「まったく、美しさとは裏腹になかなか過激な森だな」
 迫りくるそれらを捌き、穿ち、ボアネル・ゼブダイ(Livin' On A Prayer・f07146)と上野・修介(吾が拳に名は要らず・f13887)は、波に呑まれずと己を繰る。
「やれやれ、数頼みを相手とは骨の折れることだ」
「その数も無限ではないだろう。確実に1体1体削っていけばいい」
 奇怪な鳴き声をあげ、迫った1匹が刃と貫かれ、1匹が拳に沈む。
 雲霞の如くと押し寄せる群れを前にしても、2人の呼吸は共に平静。
 入れ替わり、立ち替わり、蟲達の奏でる不協和音をBGMとし、舞踏のようにとくるりくるり。
 男2人。優雅に、しかして勇壮に。観衆たる蟲達も、迂闊とステップ刻む2人が領域へと果敢に挑むも、全ては敢え無くと地に沈む。
「――とは言え、一網打尽とする術があるなら、別だがな」
「その術はあるとも」
「何?」
「あると言っているのだ」
 話す間も止まらぬ舞踏は、蟲の波を寄せつけはしない。
 しかし、思わずと修介がボアネルを見てしまうのも、致し方のない事だろう。
 その視線は、ならばそれを使わぬ手はないと、雄弁に語る。
「――勿論、使うに否は無い。だが、数瞬とは言え、負担を任せる事となるが?」
 今は互いが互いをカバーするが故に、波に呑まれずとすんでいると言えた。
 それを1人で支えるとなった時、その負担は2倍では済みはしない。
 波受け止める堤防の決壊は、即ち死だ。
 それ故に、ボアネルは出来るのかと修介に問うのだ。
 そして。

「構わん。それぐらい請け負おう」
「そうか。では、頼む」

 答えは簡潔にして、瞳に宿るは不動なる意思。
 互いのことは知らないが、それでも分かることはあった。
 だから、ボアネルもまた、その答えに任せると決めたのだ。

「――スゥッ……」
 任される時間は数瞬。
 とは言え、攻め来る敵の数は両の指を軽くと越える。それを相手とし、その数瞬を支えられるかは、まさしく修介の腕に掛かっている。
 だからこそ、余計な力は要らない。いつも通りを、いつも通りに行うだけ。
 敵を視る。仲間を視る。己を視る。戦場を視る。世界を視る。
 そこから流れ込む情報は濁流の如く。しかも、その流れは刻一刻と変わるもの。
 彼はその中から必要な情報だけを拾い集め、最善なる道をその手で掴み取るべくと動くのだ。
 脚に力を。拳に意志を。瞳に意地を。
「――フゥッ!」
 鋭く吐き出された呼気と共に、冷徹にして獰猛なる暴威が吹き荒れた。
 最短を最速で奔る拳が、目前の蟲が身体を穿つ。
 巌すら砕くその拳。蟲の身体が甲殻に覆われていようとも、それが意味を成す筈もなし。
 ――1つ。2つ。3つ。
 潰すと共に反転。重心の移動をも利用し、修介が身体は瞬く間にその位置を移し、ボアネルの背後へ。
 その脚の動きは淀みなく、足場の悪さ、地形の凹凸をすらも利用し、己が動きを加速させるとするのだ。
 ――4つ。5つ。
 勢いのまま、振った脚に還るはぐしゃりと潰れる感触。
 吹き飛ばされた蟲が仲間を巻き込み、共にと樹にぶつかり体液を撒き散らす。
 ――6つ。
 振るった脚をそのまま振り下ろし、下草隠れて近付く蟲が潰れて砕けた。
 動きは止まらない、淀まない。まさしく流水の如く。
 己が拳で、脚で、時に敵の身体を利用して、修介の敷いた武の結界は、その内へと蟲の入り込むを許しはしない。
 1人動き続けるが故に、次第に息はあがり、あがり、あがり――それでも、動きは止まらず。
 そして、僅かな瞬間を逃さずと、修介の吸い込んが空気に混じる冷たさ。

「待たせたようだな。ここからは、任せてもらおう」

 それが時来たることを修介に告げていた。
 蟲達の中に突如と咲いたは、氷細工の薔薇の花。
 それは優雅で、美麗で、あまりにも戦場の中で浮いていた。
 が。
「爆ぜろ」
 それがただの美麗な氷細工である筈もなし。
 咲いた薔薇は花びらが解けるように、ひらりはらりと散り落ち――ボアネルの言霊に従い、冷気の爆風を撒き散らす。
 それは凍てつく風。吹き付けるもの全てを凍らせる風だ。
 樹が凍り、葉が凍り、草が凍り、生じるは樹氷の森。そして、その中に垣間見える蟲の氷像という奇怪なオブジェ。爆心地に近ければ近い程にそれは猛威を振るい、蟲達をも氷像と変えていたのだ。
「どうした。動きが鈍っているぞ」
 それでも、全ての蟲達がその餌食となった訳ではない。爆心地より遠かったために無傷でったもの、被害は被ったが然程でもなかったもの。それらもある。
 だが、ボアネルの言葉が示す通り、その動きは鈍りつつある。
 何故か。
「貴様らが森を隠れ蓑とするように、私達とて利用することは出来る」
 陽の差し込むは鬱蒼と生い茂る枝葉が天蓋となり、それを妨げる。
 それはつまり、ここは天然の暗所。蓋をされた箱の中。
 密閉とまではいかないが、閉ざされた場所に氷を置けばどうなるか。答えは簡単だ。
「――周囲の温度は下がり続ける。外部の温度に頼る貴様らには、幾分どころではないだろう」
 冷ややかなる空気は氷像とならなかった蟲達の身体をも蝕み、その動きを凍てつかせていく。
 環境の特性。蟲達の推測される特性。
 それらをボアネルは見抜いたが故に、利用した結果であった。
 そして、動きが止まったものは言うに及ばず、鈍ったのものであってもそれは――格好の的でしかない。
「では、仕上げと行こう――息も、整っただろう?」
「当然だ」
 刃は貫き、拳は穿つ。それは蟲達の1匹とて逃がさず、討ち果たしていく。
 砕け散る氷が名残とばかりに、きらりきらりと散っていた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

イーファ・リャナンシー
あー…何が来ても大丈夫って思ってたけどこれだけはダメ…
駆除…駆除しないと…

正直、無視が嫌だって気持ちはなくせないって思うから、出てきた分の対策をしないとね
具体的には…【ウィル・オー・ウィスプ】で焼き払うわ
手加減せずに、敵が近寄る間もないように…【全力魔法468】で
1匹について1つの炎だとしても、とりあえず遭遇した1匹が呼んだ分以上は何とかできるかしら?
これを何度も繰り返しながらとりあえず手当たり次第虫を片付けるって感じで…
もちろん、地元の人たちに恵みをもたらすって側面もあるこの森が焼けちゃうようなことがあると申し訳ないから、森の木に燃え移っちゃった分については、個別に消火していくって形にするわ


オリヴィア・ローゼンタール
なんだか最近、虫との遭遇率が高い気がします――!!

【偽槍展開】【属性攻撃】で聖なる炎を纏った複製槍を作り出し【念動力】で周囲に展開
数には数で対抗して……近づかれないようにっ!

【念動力】【槍投げ】【投擲】で次々に複製槍を放って穿ち貫き燃やしていく
掻い潜って近寄ってきたら【怪力】で聖槍を【なぎ払い】、【衝撃波】を起こして【吹き飛ばす】
このっ、このっ、こっちに来ないでください――!

見たくないけど【見切って】鋏を【武器で受け】流し、触りたくないので【全力魔法】で火球を放って燃やす
ひぇ!?
もう、もう、こんな危険な森は丸ごと焼き払って焦土にした方がよくないですか――!?(錯乱)


御堂・茜
む、虫…でございます!!
この御堂、武士ではございますが乙女
かように禍々しき虫の大群を前にしては
くッ、身の毛がよだちます…!

しっかりなさい御堂!
苦境にあればこそ立ち向かうのが
我が正義ではございませんか!
己に【気合い】と【勇気】を注入し
UC【風林火山】で御堂家鉄砲隊を召喚致します!
数には数で対抗です!

家臣達には命中精度を重視し頭部等の急所を狙って
一発で着実に仕留めるよう指示します
接近される前に撃つのです!
わたくし自身はミドウ・アイと直感力で
藪の中や木の陰、背後等死角より襲い来る虫を
いち早く察知し家臣やお味方へ伝えます!

伝達が間に合わぬならば…
み、自ら一刀両断を…!
恐ろしいですがやってやりますとも!


竜ヶ崎・をろち
今度は虫さんですか… たくさん居ると気持ちが悪いですね!
虫さんは虫さんらしく潰しちゃうのが一番ですよね!

ですのでユーベルコード「グラウンドクラッシャー」で潰していきます。
前回と同じく、潰し損ねても地形を破壊して虫の隠れる場所を減らして戦います。



「む、虫……でございます!!」
「あー……何が来ても大丈夫って思ってたけど、これだけはダメ」
「なんだか最近、虫との遭遇率が高い気がします――!!」
「たくさん居ると気持ちが悪いですね!」
 集いたるは乙女が4人。それはオリヴィア・ローゼンタール(聖槍のクルースニク・f04296)であり、御堂・茜(ジャスティスモンスター・f05315)であり、イーファ・リャナンシー(忘都の妖精・f18649)であり、竜ヶ崎・をろち(聖剣に選ばさせし者・f19784)であった。
 グロテスクとも言える節々の身体。なのにつるりと光沢放つ甲殻。多節の脚はうぞりと蠢き、腹はぶより。
 これには如何な猟兵と言えど、その前に乙女である彼女らに嫌悪感を持つなということの方が酷というもの。
 だが、1匹いればなんとやら。その嫌悪感は、忌避なる感情は、それを夏場の光に集う虫の如く、更にと呼び寄せるのだ。

 ――羽音が1つ、2つ、3つ。否、数え切れぬ程、聞き分けられぬ程。

 忌避感持つ者が複数と居れば、その倍率もその数だけ。
 それを見てしまったが故、身体に浮かんだ鳥肌を思わずと擦るは誰であったか。いや、誰もがであったのかもしれない。
「駆除……駆除しないと……」
「くッ、身の毛がよだちます……!」
「お、おおお、落ち着いて、落ち着いて、いき、いきましょう!」
「虫さんは虫さんらしく、潰しちゃうのが一番ですよね!」
 ――1人、ちょっとだけ方向性が異なる気もしないでもない。
 だが、そこに抱く思いは1つ。

 ――あれを近づけさせてはならない。

 だから彼女達は、それでもと蟲達を討つべく、未だ鳥肌残る手で各々の得物を握りしめるのだ。それに専心することで、少しでも忌避感を忘れんと。
「数には数で対抗です!」
「――近づかれないようにっ!」
「ええ、近寄る間もないようにね」
 覚悟とか、勇気とか、決意とか。様々な感情の入り混じり。
 だが、それでもと奮い立つ彼女らの姿は、称賛されてしかるべきものであった。
 そして、ゆらり揺らめく鬼火の光。照らされ、姿見せるは展開された聖槍の写し身であり、御堂のお家が鉄砲隊。
 一夜城もかくやと、突如として展開されたそれらは堅牢なる砦の如く。そして、その守りの奥に乙女達の姿はあった。
 得物は握りしめた。覚悟も固めた。戦いだってする。だけれども、だけれども! やっぱり、なるべくならお近づきにはなりたくないのだ。仕方がない。 
「潰し損ねないようにしないとですね!」
 悲壮なる覚悟の先で、をろちの元気一杯なる声が響く。
 それが戦いの始まりを告げる鐘となったのである。

 先陣を切るようにと、鬼火の光――悪戯好きな妖精の放つそれ――が押し寄せる蟲の波と激突し、森を光で染め上げた。
「正直、蟲が嫌だって気持ちはなくせないわ」
 だから、せめてその感情が引き寄せた分の処理だけでも確実に。
 妖精は他種族に比べ、やはり身の丈は小さい。
 それ故に、迫る蟲達が他の者達に比べ、一層と大きく、禍々しく、見たくない部分が見えてしまう。
 そして、その忌避感は正しく、もし組み付かれることがあったとするなら、それは他の者達より命の危機の度合いが大きいと言えた。
 だからこそ、まず敵を近づけないという選択肢は選ぶことは正しいのだ。
 近付かないという選択肢の正しさを証明するように、鬼火の1つが蟲達の顎に囚われ、千々と消えていった。
 イーファが1度に喚んだその数は47――今、1つと減ったので46か。
 それは確かにイーファが忌避感を基とする感情に呼ばれた蟲の数を越えるものであるが、ここには他にも忌避感持つ者がある。それ故に、それだけで蟲の波を止めるには至らない。
 だからこそ。
「このっ、このっ、こっちに来ないでください――!」
「接近される前に撃つのです! 着実に、一発で仕留めるように!」
「おー……おおー! 虫さん達が、あっという間に!」
 それを支える仲間があるのだ。今は、それぞれがちょっとだけ、いっぱいいっぱいにも見えるけれど。
 宙を聖槍の写し身たるが駆け、2匹、3匹と纏めて串刺しにすれば、その隙間を押し広げんと鉄砲隊の弾幕が空間を染め上げる。
 オリヴィアの奮闘たるや、思わず目を見張るもの。
 掴んでは投げ、掴んでは投げ。手が足らずとあらば念動力すらも行使して、槍は数多と飛び交っていく。本人の眼もよく見れば、ぐるりぐるり渦を巻く。
 一方で、茜の活躍もまた劣らず。
 家臣団の手前もあるだろうが、それ以上に苦境立ち向かうこそが己が正義と自身を叱咤し、その脚は揺るがず、瞳は些事も見逃さぬと輝き光る。
 故に、草葉の中、枝葉の中、樹の影、数多とある森の障害を蟲達が隠れ蓑としようとも、その正義の瞳は決して脅威を見逃しはしないのだ。
 それらを感心して眺めるをろちの声。
 ぐしゃり、べしゃりと潰える蟲達を前にしても、その表情に怯えはない。
 築かれし乙女が砦。
 その堅牢さは、それぞれが身に秘めし決意の如くと硬く固く、4人が領域を難攻不落へとするのである。
「この調子なら、少なくとも押し留めるはできそうかしらね」
 悪戯妖精が火を放ち続けるはイーファ。
 その手腕は豪快に蟲達を焼くだけでなく、森と寄り添う人々の暮らしに影響を与えぬまいとする気遣いも繊細さも持ちえるもの。
 そして、散らされれば再びと呼び寄せ、また散らされればと繰り返し続ける中で、ぽつり。
 確かに、蟲達の波は押し留められ、その圧は最初に比べて減っているような。
「御堂は知っていますッ! それは曰く、フラグだと言うことを!」
 奔り過るは茜が直感の冴えわたり。
 その言葉へと応えるかのように、ぼごりと地面が隆起する。そして、そこから顔を出し、跳び出したは穢れた金色。
「地中を掘ってきたとでも言うの!?」
 跳び出す蟲の狙うは組みし易き身体のイーファ。
 まさかとも言えるタイミング、場所からの出現に、誰しもの反応が遅れる。

「――させません!」

 ――オリヴィア1人を除いて。
 跳び出す穢れた金を抉るは、清廉なる金。
 茜が直感の冴えわたり。それを受けて響いたはオリヴィアが第六感の警鐘。
 故に、その瞬間だけは蟲への苦手意識も、忌避も、何もかもを置き去りとして、彼女は神速を持って動いたのだ。
 まさに戦闘経験の賜物。戦場の空気に馴染んだ身体が、仲間の危機を前として、無意識に動いた結果であった。
「助かったわ!」
「――はっ!? あ、い、いいえ……ひぃ!?」
 イーファが礼に無意識は霧散と消え、オリヴィアが目にするは槍の穂先に残る蟲の亡骸。零れた悲鳴へ呼応するかのようにと、穂先が聖火を灯し、それを消し炭と変え、この世から消し去った。
「まだ、油断してはなりません! 後続が来ますッ!」
 ぼごりぼごり。
 その鎌で、顎で掘り、削り、地より砦の内部へと姿を見せ始める蟲達が姿。
 蟻の穴からも堤は崩れるとも言うが、まさにその前兆とも言える光景。
 乱戦ともなれば数の不利は猟兵の側にある。
 それですぐに負けるということはないだろうが、それでも傷は避けえないだろう。
 だからこそ、『彼女』は決意と共に1歩を踏み出したのだ。
「禍々しき虫の大群。この御堂、武士ではございますが乙女」
 だが、彼女の心に根付くは燃えるような正義。苦境にあればこそ立ち向かい、それを打ち破るこそが茜が正義!
 ならば、足踏みなどできはしない。己が正義に悖ることなど、出来はしない。
「――恐ろしさは否定しません。ですが、やってやりますとも!」
 踏み込んだ脚の先、ぼこりと跳び出した瞬間の蟲が見える。
 怖気はある。だが、それが身体を縛るよりも早く――正義の大太刀が斬り裂き捨てる。
 流れる様に、次へ次へ次へ。己が正義の眼が捉えた端から。
 恐怖を乗り越え、自ら一刀両断をする姿の、その決意の、なんと美しきか。
「こちらは御堂にお任せをッ! 恐らくは、本隊が来ます故に!」
 地中より来るはあくまで陽動と直感が囁くのだ。
 蟲達がそこまで考えていたかは不明だが、それを証明するかのように、砦の向こうへ光る色数多。
「まだ来るっていうのね。1匹見たら30匹どころじゃないわ」
「もう、もう、こんな危険な森は丸ごと焼き払って、焦土にした方がよくないですかー!?」
 尽きぬ攻勢は身体的だけでなく、精神的にも疲労を積み重ねるのだ。
 我を取り戻したが故に、その蟲達の群れを直視し、精神的なナニカをごりっと削られたオリヴィアが珍しくと泣き言を零した。
 その時である。

「それなら任せて下さい!」

 ――振るうは鉄塊。パワフルガール。
 砦より跳び出し、躍動を見せたはをろちが姿。
 集う乙女たちの中でも、まだ蟲達に対する忌避感の薄い彼女。
 それ故に、そこに怯えはなく、先程の一戦が如くとその力を存分と振るうのだ。
「せぇ~のっ!!」
 ともすれば、可愛らしい掛け声。だが、そこから繰り出される現象は可愛いではすまない。
 抜かずの聖剣が轟風を巻き起こし、振り下ろされた先で爆発にも似た衝撃を巻き起こすのだ。
 任せて下さいとはよく言ったもの。
 その一撃は樹を倒し、地を抉り、森を削る。そこに潜み、ある蟲達を諸共と。
 をろちが力を振るえば振るう程に、まさしく森の一部が焦土の如くと化していくのだ。
「本当に森を平らげようだなんて……ああもう、援護!」
 その暴威は容易くと止められるものではないが、それでも1人で突き進めば、待つの欠け、折れる穂先の運命だ。
 だから、一瞬の忘我より素早くとイーファは精神を立て直し、をろちを援護すべくと火力を注ぎ込む。
 幸いと言うべきか、不幸にもと言うべきか、彼女が燃え広がらぬようにと繊細に気遣っていた森は暴威がなぎ払った。
 それ故に、最早遠慮などは不要。
 悪戯妖精の焔は鬼火の如くと揺らめき、1つが1匹を道連れとするが精一杯であった。だが、最早違う。イーファの秘める全力が込められたならば、それは一切合切を灰燼と帰す業火と化すのだ。

「――好きにしていいわ」

 それは枷を解き放つ言葉。
 妖精の悪戯は時として人をも殺める程に無邪気で、残酷で。
 だから、枷のなくなったそれらが遊ぶようにと蟲の群れを燃やすのは当然であった。
 恐れという感情を知らぬ蟲も、果敢に顎で断ち切らんとするが足りない。その程度の暴威では、もう足りないのだ。むしろ、飛んで火にいる夏の虫。自らと業火の中に跳び込み、燃え尽きる末路が待つのみ。
 砦の内は茜とオリヴィアが。砦の外ではイーファとをろちが。それぞれがそれぞれの役割を果たし、蟲達の波を駆逐していく。
 そこに予測された瓦解の危機はもうありはしない。
 そして、勝鬨が響くのも遠くない未来であろうことは、誰の目にも明らかであった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

リュカ・エンキアンサス
俺は、ドラゴンに会いに来たから
悪いけれど、硬そうな虫の人には興味がないんだ

ちょっと、そのはさみが面白そうだな、とは思うけど

そんなことを思いながらも、遠距離からの狙撃
よく観察して、弱点を狙って撃つことができたらいい
また、なるべく毒が当たらないように注意する
こちらに近付いてくる前に片づけてしまいたいけれども、
無理そうならナイフで応戦
なるべく攻撃を受けない方向で慎重に戦う

万が一毒を受けたり、深手を負ったりするようなら
救助活動や医術を使って何とか凌げればいいけれど…
もし猟兵の中で深手を負った人がいるなら、その救助にも当たるよ
何事も、命が一番大事だから、そういうことはないに越したことはないけれどね


ソフィア・テレンティア
少々遅れましたが、クラウドオベリスク破壊の為参戦させていただきます。
その為にも……まずは邪魔な羽虫をお掃除致しましょうか。
毒牙虫の針付き鋏は厄介ですので、近づかれる前にUC【魔導式収束光照射機構・紫眼】の収束魔力光線により、遠距離から薙ぎ払って差し上げましょう。
それでも近づいてくる蟲や、他の猟兵の方々に近づく蟲がおりましたら、ソフィアの【蒸気駆動式機関銃・冥土式】で【援護射撃】を行い撃破、或いは行動を妨害致します。我々は一人で戦っているわけではございませんので、全員の連携で、被害は小さく、戦果は大きく、を目指すのでございます。



 氷が舞い散り、炎が荒れる。そんなただ中において、静かなる銃声が溜息をつく。
 吐き出した息は重い弾丸となり、蟲の身体にぶつかり、共にと弾けた。
「俺は、ドラゴンに会いに来たから。悪いけれど、硬そうな虫の人には興味がないんだ……」
「と、言いつつ。少しばかり視線がそわそわとしていらっしゃるようですが」
「……はさみは面白そうだな、とは思うけれど」
 その結果を引き起こしたのはリュカ・エンキアンサス(蒼炎の・f02586)。
 淡々としつつも、傍にて同じくと蟲達の対応を行うソフィア・テレンティア(歌唱魔導蒸気機関搭載機・壱式・f02643)が観察の通り、その視線は金色に光る蟲に生えた鋏の顎に注がれていた。
 多くの女性が虫というだけで忌避を覚える様に、男性ならばその角に興味が湧くのも致し方がない。だって、男の子だもの。
 表情変えぬまま、しかし何かを理解したかのようにソフィアは頷き、そうですか、と零す声はどこまでもクール。
 もしかしたら、蟲と相対するのみではなく、己が目的の1つのためリュカという人となりもまた分析をしていたのかもしれない。
「それはともかく」
 話を切り上げるように、再びの吐息。
 それは初撃と同じ蟲を襲い、弾けて態勢を崩したそれを冥府へと誘っていく。
「――あの甲殻、正面から撃ち抜けはするけれど、一撃でとはいかないみたいだ」
 リュカの撃ち放った弾丸の全ては確かに蟲を穿った。
 だが、それは1回で止めとはならず、数発を要して、その息の根を止めたのだ。
 如何な猟兵の得物とは言え、リロードもなく無限と撃てるものではない。
 そして、先の銃撃は蟲達にリュカとソフィアの存在を知らしめるに十二分なるもの。
 ぎちりと軋むような、鳴き声のような、そんな音をたて、一斉に視線が2人へと向く。そこにあるのは、ただ敵意と食欲か。どうにせよ、友好とは程遠い。
「あれを主に……とは露とも思いませんが、倒さねば先には進めそうもありませんね」
「毒もあるみたいだし、万が一には気を付けたいところだね」
「ええ、クラウドオベリスクの破壊こそが目標ですから」
 その為に行うべきは1つ。邪魔な蟲のお掃除だ。
「――少々参戦は遅れましたが、これより任務を開始します」
 ソフィアの宣言にヘテロクロミアの瞳が瞬き揺れた。

 ドンドンドンと腹に、全身に響く音が途切れずと森に響く。
 その音を奏でたソフィアの身体も反動を受け止め、殺し、逃した衝撃にかつての徒の名前も揺れる。
 そして、重低音を奏で飛び出したそれらは、金色の甲殻を物ともせずに蹂躙し、その中身をぶちまけた。
 ――蒸気駆動式機関銃・冥土式。
 メイド繰り出すおもてなしは、過たずと蟲達をもてなし、その鎧を剥がし、冥土へと案内するのだ。
「あの鋏も、鎌も、そこに潜む毒針も、どれも厄介ですので、近づかれる前に」
「徹甲弾……なるほど、それなら」
 蹂躙するそれは最早吐息とは言えず、吹き荒れる嵐か。面を制圧するには十二分。
 だがしかし、面は正面のみに非ず。側面から、後方からもと蟲の波は押し寄せる。
 だからこそ、それを補助するようにとリュカがその灯火を煌かせ、弾幕を張るのだ。
 森の薄暗闇を照らす光の乱舞。それは確かに、迫る金色を押し留める堤防となり得ていた。
 しかし、息吐き出し続ければ身体が酸素を求めるように、銃器もまた弾丸を吐き出し続ければ弾丸をと求めるもの。
 再装填に掛ける時間は、弾丸の切れ目は堤防の消失を意味する。
 堰き止められていた分、その流れは勢いをより増して2人を呑み込まんとするのだ。
 そして、1度崩れた堰を立て直すは困難。
「俺が時間を稼ぐ。その間に、立て直しを」
「いえ、それには及びません」
 ――普通であるならば、だ。

「ソフィアの僚機の遺した力、少しだけお見せして差し上げましょう」

 零れるのは紫眼からのか細き光。
 ソフィアの身体に巡る力がその1点へと収束され始め、か細き光は段々とその輝きを増していく。
 それは森の闇を、蟲の波を圧する力。未来を切り拓く、彼女の徒から遺された意思。
 彼女の口元が弧を描く。
 それはまるでリュカを安心させるかのように。自分自身に宿る力を通して、誰かを見るように。
 そして、か細き光だったものは遂に極光となり、2人を呑み込む筈であった蟲達を呑み込み返し、その光の中へと連れ去っていく。

 ――不意に奔った映像は、ソフィアが足元の土塊の盛り上がり。

 リュカの脚は地を蹴り、ソフィアの手を取ると共にその身を翻す。
 遅れて、いつかの様にと現実が未来へと辿り着く。
 生じた土塊の盛り上がりから飛び出たは金色。
 それはぎちりと顎を鳴らし、誰も居ない空間を挟みこむ。
 ソフィアの極光は四方を全てとなぎ払った。だが、足元――土の中へと潜んだものまでは。
 だからこそ、リュカの未来視が、その手が、それを阻んだのだ。
「ありがとうございます」
「何事も、命が一番大事だから」
 強いことが世界の全てで、戦って戦って戦い抜いて。それでも他に何か掴むものがある筈なのだと願った手は、今、確かに1人の命を掴み取ったのだ。
 そして、奔るは火線が宙へと描く軌跡。
 ソフィアが極光を零す間にとリュカが再装填した弾丸。それを灯り木より吐き出し、蟲を射止めたのだ――1匹1発で、だ。
 それは蟲達の足止める間に積み重ねた情報の集大成。
 如何に撃てば止まるか。如何に撃てば効率的か。
 ただ漫然と蟲達の足を止めるに努めるでなく、それを視ながら行動していたからこその。
「一射必倒。お見事でございます」
「俺だけだとさっきので呑み込まれてたかもだし、そっちもお見事」
「いえ、互いがあったからこそでございましょう」
 猟兵は蟲達のような群体ではない。1人1人が異なる意思を持ち、矜持を持つ、別の存在。
 だからこそ、志を共とすれば、意思を重ね合わせるを出来れば、その力はただの群体であるだけの存在には出せぬ力を発揮出来るのだ。
 そして、リュカも、ソフィアも、少なくとも今この時は1人ではなかった。故に、重ね合わせる力は蟲の波を穿つ力となり、クラウドオベリスクへと至る確かな道を切り拓く力となるのであった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ガルディエ・ワールレイド
竜の咆哮とも変わらぬ圧、と来たか。
上等じゃねぇか。俺達で寝坊助の竜に声を届けてやろうぜ。

◆戦闘
《念動力》を上乗せした【竜神咆哮】と近接戦を織り交ぜて戦闘。

一先ずは様子見気味に程々の距離から【竜神咆哮】を放つぜ。
それで、敵を十分に仕留められると判断した場合は、踏み込み敵を引きつけてから使用するスタイルに以降。
逆に敵が竜神咆哮を突破してきそうな手応えなら、やや遠方から放って長期戦覚悟で削っていく。

武装は《怪力/2回攻撃》を活かすハルバードと長剣の二刀流
竜神咆哮が途切れた合間や、多くの敵を引きつける溜めの時間等は《武器受け》に要領で蟲を斬り捨てるぜ。

依然として《オーラ防御》を展開して枝や下草対策を



「竜の咆哮とも変わらぬ圧、と来たか」
 蟲達の翅が叩く音は圧となり、ガルディエ・ワールレイド(黒竜の騎士・f11085)の身体を叩き過っていく。
 だが、それに臆する彼ではない。
 むしろ、その口元に鋭き犬歯を覗かせて、強く強くと弧を描き出す。
「――上等じゃねぇか。俺達で寝坊助の竜に声を届けてやろうぜ」
 そして、翳す刃の煌き双つ。その指し示す先は、クラウドオベリスク。
 目の前で喧しく羽音震わせるだけの蟲など、それへと至るため、踏み越える障害でしかないのだ。

「さあ、聞きやがれ!」

 弧を描いていた口を大きくと開き、溢れ出すは大なる咆哮。
 蟲達の羽音など、それこそ風の囁きと同じ。これこそが竜の咆哮だと言わんばかりに、ガルディエの声はそれを塗りつぶし、世界に我在りと叫ぶのだ。
 その咆哮は、主張は、轟風を伴い過り去り、遅れて『それ』を連れてくる。
 ばちり奔ったは紅の雷。
 咆哮の衝撃波が軌跡を描くように、ガルディエを中心として広がったそれは蟲達の身体を貫き焦がす。
 風雷過ぎ去れば、後に遺るは彼に近ければ近い程と地に落ちる数を増やす蟲の亡骸。
「――効き目は十分ってか。はっ、竜を騙ろうってのに、気合が足らねぇぜ?」
 だが、効果のほどは十二分に見て取れた。
 ならば、後は障害にもならぬそれを踏み越えるだけだ。
 1歩と踏みしめる脚が、咆哮に屈し、横倒れた下草を踏む。
 1歩と踏みしめる脚が、雷に焼き切られ、落ちた枝を踏み折る。
 蟲だけではない。彼の咆哮は森という環境をも捻じ伏せ、屈服させていたのだ。

 そして、もう1歩と脚が地を踏みしめた瞬間――地より飛び出る金色の顎。

 ガルディエが咆哮は全方位。ただしく、全方位とその咆哮を轟かせ、荒れ狂った。
 だが、やはり地というクッションを挟んだだけ、その内に逃げ込み、潜んでいた蟲を打倒するへ至らしめるには足りなかったのだ。
 その生き残りが、まるで虎鋏のようにとその顎を地より突き出し、ガルディエの脚を挟みこまんと襲うのであった。
 だが。

「たかが蟲の顎程度で、竜の鱗を貫けるとでも思っていたのかよ」

 ――ぎちりと漆黒の鎧を貫くはずであった金色の顎はそれを貫くでもなく、否、鎧に触れることすらなくとその身を宙で止めていた。
 顎を受け止めたるは、彼のオーラ。漆黒の鎧のその上に纏う、もう1つの防御壁。それがガルディエを毒牙より守っていたのだ。
「だが、最後まで諦めねぇのは感心するぜ」
 それでもと万力の力でその守りを突破せんとあがき続ける金色の。
 蟲は蟲でしかなく、それが本当に諦めないからこその所業だったのかは分からない。
 だが、騎士として、猟兵として、時に巨大なるに諦めず挑み続ける身だからこそ、彼はそう零したのかもしれない。
 だからこそ、これは手向けだ。
 如何な手段であろうとも己が咆哮を越え、武威突き立てんとした者への。
 ガルディエの手の中で、ガチャリと双つの刃が音を立てる。
 そして。
「悪ぃな。俺は俺の道を行かせてもらう。その邪魔はさせねぇ」
 ――地に突き立つ刃の墓標。それが突き立つと同時、びくりと蟲の顎は震え、力なくと果てていく。
 それを引き抜き、再びと見据えるは進めべき己の道、その先。
 未だと残る蟲はあるが、最早敵などではない。
 だから、ガルディエはひときわ大きくと咆哮し、その道を駆けていくのであった。
 その後ろに、彼が通った道であると証明するかのように、数多の蟲の亡骸と森に刻んだ足跡を残しながら。

成功 🔵​🔵​🔴​




第3章 ボス戦 『ドラゴンゾンビ』

POW   :    異種再生
戦闘中に食べた【ゾンビや死骸、腐肉】の量と質に応じて【自らの体の欠損箇所を再構築し】、戦闘力が増加する。戦闘終了後解除される。
SPD   :    戦場の記憶
【戦いを挑み返り討ちにあった冒険者達】の霊を召喚する。これは【生前と同じ手段】や【霊体を生かした攻撃方法】で攻撃する能力を持つ。
WIZ   :    生まれるゾンビの群れ
レベル×5体の、小型の戦闘用【ゾンビ】を召喚し戦わせる。程々の強さを持つが、一撃で消滅する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はアズール・ネペンテスです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 領域の守護者を越え、蟲の群れを越え、猟兵達は遂にと目的の場所へと辿り着く。
 そこに聳え立つは金銀財宝で彩られし塔。
 近くで見れば見る程に、見上げる程に大きくと、天へと突き立つようにと伸びるクラウドオベリスク。
 後はこれを破壊さえ出来れば、此度の目標は完了したとも言える。

 ――深緑の香りに、何かが混じる。

 それは音であり、匂いであり、気配。
 再びに蟲が襲来したのかとも思えば、それも異なる。
 地が揺れた。樹々が揺れた。森が揺れた。
 来た道へと跳び退る猟兵達の前、まるで森そのものが隆起するかのように、何かが起き上がる。

 ――これは、腐臭であり、死臭だ。

 隆起した土の下、遂にと猟兵達の前へと姿を晒したのは、骨を、肉を、体液を零す腐死なる竜。
「我が領域に足を踏み入れたのは汝らか」
 テレパシーの類か。それの声はまるで脳裏に響くかの様。
「――猟兵であろうとも、我が眠りの無聊の慰めとなるのなら歓迎しよう」
 ヒトが腕広げ歓迎するかのように、ばさりと広げた背の翼。
 ぼとりぼとりと落ちるのは纏わりついていた土塊か、はたまた他の何か。

 ――そして、腐臭は、死臭は更なる彩を増す。

 森の匂いすらをも掻き消して、ここが冥界の一つとでもなったかのように。
 ざりざりと引き摺る音が猟兵達の後ろより聞こえてくる。
 視線を向ければ、そこには先程の場所に転がっていた数多の白。それと、錆色。
「――ただし、貴様らの死を持ってだがな」
 面前には腐死の竜。それと猟兵達を囲うように取り巻く白。
 竜の眠りに囚われその一員となるか、それともそれらを打破し現世へ戻るか。未来はそれぞれの手に託されたのである。
竜ヶ崎・をろち
うわわ、気持ちの悪ーいドラゴンさんですね…
ニオイもキツイし仲間を増やすなんて卑怯だし…

気持ちの悪いドラゴンさんにはあまり触りたくないので、周りの骨さんを片付けましょう!
ユーベルコード「ビったんびったん」でゾンビさん達を遠くに投げ飛ばします!
ドラゴンさんが吸収しないようになるべくドラゴンさんから離れた所に投げまくりますよ!



 森の香りを塗りつぶした腐敗と死の臭い。それがツンと鼻につく。
「うわわ、気持ちの悪ーい」
 それは臭いに対してであり、竜の見てくれに対してでもあり、竜ヶ崎・をろち(聖剣に選ばさせし者・f19784)は思わずと眉を顰めた。
「安堵せよ、汝らもすぐにと同じとなる」
「うぇ! そんなの嫌ですよ! お断りです!」
 感情素直に表に出して、をろちは竜へとあっかんべー。
 しかし、舌を出してしまったが故に、腐敗と死の空気を味としても感じてしまい、ぺっぺっとジェスチャー。
「ニオイもキツイし、仲間を増やすなんて卑怯だし」
 現代を生きるJCであるところの彼女からすれば、腐敗した竜などには直接と触れたくもないところであろう。
 折角の一張羅に臭いも沁みもついてしまうではないか。
 それならば、まだ腐肉も落ちきった白の亡骸の方が幾分かマシというものだ。
 だから。
「いきますよー!」
 ――彼女は周囲の白をこそ討つ道を選んだ。

 群がる枯れた白の群れ。それを前にして躍動するは若木の如き生命力。
 敵の数は多い。だが。幸いとも言うべきか、蹂躙するという点において彼女は長けていた。
「えぇぇいっ!」
 轟風撒き散らすは抜かれずの聖剣。
 只人であれば抜くことすら、持つことすら叶わぬそれは、をろちが怪力によって振るわれる。
 聖剣には甚だ不本意な状況なのではあろうが、それでもその一閃は確かに仲間の助けと繋がるのだ。
 錆びた鉄で防ぐは叶わず、白が折れ、砕け、風と散る。
 だが、元より命亡き者。その歩みに恐れもなく、怯えもなく、ただただひたすらと猟兵達を己が仲間に加えんと、亡骸を積み重ね、蹂躙を越えて差し迫るのみ。
「もう! ありえないですし!」
 をろちの聖剣が柄を握る手に未だ衰えはなく、振るう力にも同じく。
 しかし、連戦を越えての更なる戦い。刻一刻と疲労は溜まる。それは彼女の目の前に迫る白にはない、生きているが故の制約。
 額から流れた雫が頬を伝い、顎から零れ落ちた。
 息は軽くあがり、俯いた顔には乱れた髪がかかり、汗ばんだ肌がじっとりと気持ち悪い。
 今を生きる花のJCが、何故、こんなところで汗だく塗れ、汚れ塗れになっているのだろうか。疲れを見せ始めた今、そんな考えだって脳裏を過りもしよう。

 ――近くて遠い場所で、竜の咆哮が響いた。

 それはまるで、諦めろとでも言っているかのように。
 身体は重くなる一方でもあるし、鼻腔の奥に染み付いた死と腐敗の臭いは、まるで自身がそうなったかのようにも思わせる。
 だが――それがどうした。
 心に負けん気の炎が宿る。顔はあがり、前を向き、心より弱気が追い出される。
 それは聖剣を抜く時と同じ感情だったのかもしれない。同級生に挑発され、埋まっていた地面ごとと聖剣をぶち抜いた時と。
 をろちが聖剣の獲得は正統なるではなかったかもしれない。だが、加護は確かにそこにあるのだ。
 ――四肢の重さが嘘のように消え、代わりとばかりに漲るは力。
 
「負けてられませんし!」

 吼える声は、竜の咆哮に負けじと。
 脚が動いた。腕が動いた。思考が動いた。
 その手がをろちを呑み込まんとして近づいた白を叩き伏せ、その足を掴む。
「潰れちゃってください!」
 振り回す聖剣との二刀流。最早それは轟風ではなく嵐。
 白に白をぶつけ、手にした白が砕ければ次の、砕ければ次の。変えの武器は向こうから近づいてくるのだ。遠慮など要らない。
 洗練された技術ではない、荒削りの暴威。
 だが、それは確かに仲間達の道を拓き、その背を守る力となっているのだ。
 そして、周囲の敵を掃討するということを主眼に置いたその行動は、奇しくも竜がもつ1つの能力の妨げにも繋がっていくのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

ボアネル・ゼブダイ
貴様の気晴らしだけで終わらせるつもりはない
骸の海に還る時が来たのだ、朽ちた竜よ

黒剣グルーラングを装備
ダッシュとジャンプで敵の死角に入り込み攻撃
反撃には見切りとカウンターで対処し
攻撃を受けないように注意する

命を喰らうだけでなく
死後もその魂と肉体を捕らえ弄ぶか…

敵がゾンビを召喚したらUCを発動
光の精霊達による鎮魂歌で自陣を回復させ
さらにゾンビ達の魂を浄化し在るべき場所へ還す

彼らのために罪の赦しを
そして永遠の安らぎを与え
その魂を天国への確かな道に導かんことを…

ゾンビ達が消滅したら生命力吸収をのせた斬撃でさらに敵を削る

厭きる程に生きたというのならば
歪み澱んだその命
全て吸い尽くしてやろう

アドリブ連携OK


オリヴィア・ローゼンタール
召喚されたのはゾンビに亡霊……虫はいません、ね?
ならば問題ありませんっ!

白い翼の真の姿を解放
【属性攻撃】【破魔】で槍と四肢に聖なる炎を纏う
己が死を忘れし邪竜よ、今一度滅び去る時です!

【怪力】を以って聖槍を振るい、有象無象を【なぎ払い】【吹き飛ばす】
ゾンビにしろ亡霊にしろ、破邪のルーンが刻まれた聖槍なら効果は覿面
生前の戦法に囚われているなら、初見の私に適切な対処をするまで時間を要する筈
順応する前に一気呵成に打ち破り、聖なる炎で残さず焼き尽くし捕食させない

【ジャンプ】【空中戦】で空高く舞い上がり、聖なる炎を脚へと集中させる
【熾天流星脚】【踏みつけ】で額から全身へ貫通する蹴りを放つ
はぁあああっ!!



 森染め上げる空気を揺らし、猟兵は駆ける。
 目指すべきは腐死なる竜の打倒であり、クラウドオベリスクの瓦解。
「来るか、猟兵共。さあ、足掻くが良い」
 それをさせじと、己が無聊を慰めるためと、竜は腐り落ちる身体を動かし、それを迎撃せんとするのだ。
「貴様の気晴らしだけで終わらせるつもりはない」
「それが出来るかは、汝ら次第よ」
 ならば、それは行為によって示すべし。
 ボアネル・ゼブダイ(Livin' On A Prayer・f07146)が掲げるは形見の刃。それに施されし蛇の装飾は、過去の遺物を喰らう蛇だと言う。オブリビオンという過去からの残骸を討つに、これ程適したものはないだろう。
 影から影へと渡る様に、その脚は淀みなくと地を駆け、走る。竜の巨体が故の死角を少しでも活かさんと。
 だが、竜とてそれは長き時の中で経験していない筈もないもの。
 死角を薙ぎ払うように、森の樹など容易くとへし折る程の勢いを伴った尾がボアネルへと迫る。

「その程度、脅威ですらない」
 ――黒衣が宙に翻った。

 跳ねとんで、躱す動作の紙一重。
 視線の先、ボアネルの元あった場所を風が過り去っていく。
 そして、それに合わせる様にと奔ったは三日月の軌跡。
 竜の巨体が故にその尾も太く、一閃で刎ね飛ばすには至らない。だが、確かな手応えは飛び散る肉片が証明してくれていた。
「ほう、我が肉片を落とせるか」
「肉片だけではない。その首すらもいずれは落とそう」
「言うではないか、猟兵」
「ボアネル・ゼブダイだ。覚えておく必要もない」
 飛び散った肉片を興味深げと竜は見る。そこに痛痒の兆しはない。
 やはり、死せる者。痛覚による行動の鈍りを期待するは難しいか。
 ならば、宣言の通り首を刎ねるか、はたまた動かなくなるまで斬り穿つのみだ。
 ボアネルが1歩を踏み出そうとした刹那。

「そうか。だが、我にばかり目を向けるは失策ぞ」

 ――その脚を妨げるようにと飛び掛かるナニカ。
 咄嗟に身体捻り、それを受け流すと共に切り払う。
「――命を喰らうだけでなく、死後もその魂と肉体を捕らえ弄ぶか」
 『それ』は飛び散った竜の肉片より生じた者達。
 だが、ボアネルには理解できた。それが竜に喰われた者達の末路の1つであると。
「弄んだつもりはない。ただ、喰ろうて、我が一部としただけよ」
 竜は嗤う。美味くもなかったが、と。
 ずるりずるりとゾンビが迫る。
 それに遅れを取るボアネルではないが、その眼差しは厳しい。
 無辜の人々のために。
 それが彼の戦う理由の1つであり、故に、彼はその死の冒涜を許しては置けなかった。
 ずるりずるりとゾンビが迫る。
 その時。

「召喚されたのはゾンビ……虫はいません、ね? ならば問題ありませんっ!」

 ――邪を掃う鈴が如くと響き渡る凛なる声。
 広がるは純白。自らと輝き放ち、闇を圧す穢れ無き。
 オリヴィア・ローゼンタール(聖槍のクルースニク・f04296)が、その真なる姿をここに顕したのである。
 その手に握る聖槍が、四肢が、彼女が意気を示すように、強く強くと焔を揺らしていた。
「こちらはお任せを」
「だが……」
「あの手合いは、私の得意とするところですので」
「そうか。ならば、暫く頼めるか。私は私で、彼らを導こう」
「導く……成程、そうですか。では、貴方には指1本触れさせないと約束しましょう」
 ボアネルとオリヴィア。共にと信ずるものを持つが故、そこに生まれた共感の光。
 オリヴィアは彼が何を為そうかというのを薄々と感じ取り、それを守るべくと刃を握りしめた。
 そして、飛び出すは純白の弾丸。
「面白い。猟兵はなんとも種類豊かなものだ」
「面白がれるのも今の内だけと心得なさい!」
 その槍は竜へと今は届かない。だが、いずれはとオリヴィアの瞳が竜を射抜いた。
 だが、ひとまずは目の前の憐れなる者達への対応が先だ。
 輝ける穂先が容易くとゾンビが身を穿つ。
「――ほう」
 感心の声は遠きより。
 刺されようが、断たれようが、その身が動ける限りにおいて動き続けるのが死せる者。
 常であるならば、オリヴィアが一刺しであろうとも構わずと残った部分で襲い掛かっていたことであろう。
 しかし、この時においては違った。
 オリヴィアが槍の一撃は、死せる者にとっての致命。邪悪なる戒めを断つルーンが、魂を解放する炎が、そこへ宿っているが故に。
「はぁあああっ!!」
 であるならば、形成された不死者の壁など薄紙にも等しい。
 気合一閃。触れる端から、ゾンビの肉体と魂を繋ぐ呪詛を破り、燃やし、宣言の通りと1人足りとてその後ろには通さない。
 だから。
「GAAAAAAAA!!」
 ――竜はその勢いを止めるようにと咆哮し、腐臭と死臭に染まったブレスを吐き出さんとするのだ。
「っ! まさか、諸共に!?」
「そやつらは所詮、我が血肉の一部。再びと喰らえば同じことよ」
 そして、呪詛の魔力に染まった息吹はオリヴィア達をゾンビ共々と呑み込まんと吐き出された。

「――ふざけるなっ!」

 だが、それに容易くと呑まれる者など、この場には居ない。
 オリヴィアの聖炎灯す穂先が風を断ち、迫る息吹を薙ぎ払うようにと振るわれた。
 それは逆に息吹を呑み込み、跡形もなくと焼き尽くすのだ。
 彼女が守り抜いたのは自分達自身――と、憐れなる犠牲者達。

「十字架の血に巣食いあれば、来たれ。十字架の血にて、清めたまえ。弱き我も御力を得て、この身の汚れを皆、拭われん」

 響いた優しき歌声に、ゾンビ達の動きが止まる。
 世界を染め上げたは光の乱舞。響き渡ったは鎮魂歌。それは赦しと安らぎに満ちた。
 1人、1人とオリヴィアの槍に貫かれた時の様に、ゾンビ達が倒れ伏していく。
「これは……汝の仕業か」
「そうだとも」
「小癪なことを」
「大いに結構な話だ。ところで――私ばかりに目を向けるのは失策だな」
「――!!」
 それは意趣返し。

「猛き炎よ、我が脚に集い、破邪の流星となれ――!」

 守るべき者も、止めるべき者も居ないのであれば、彼女を――オリヴィアの邪魔は何もない。
 さあ、己を槍と変え、その身を穿つ時だ。
 翼羽ばたかせ、天高くと跳びあがったオリヴィア。その動きへと同調するように、ボアネルもまた地を蹴った。

「骸の海に還る時が来たのだ、朽ちた竜よ」
「己が死を忘れし邪竜よ、今一度滅び去る時です!」

 天より落ちる流星。地より描かれる三日月。
 竜を穿ち、断ち抜けたそれらは、竜の身体に十字を深く深くと刻み付ける。
「グッ、ガァァァァァ!?」
「――厭きる程に生きたというのならば、歪み淀んだその命、全て吸い尽くしてやろう」
 土は土に。灰は灰に。塵は塵に。
 刻まれた傷。そこより零れ落ちた肉片は、再びと蠢くことはなかった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

上野・修介
※連携、アドリブ歓迎
「死臭を纏った骸の竜、か」
徒手で闘り合うには厄介な相手だ。
「まあ、なるようになるか」

――恐れず、迷わず、侮らず
――熱はすべて四肢に込め、心を水鏡に

呼吸を整え、無駄な力を抜き、戦場を観【視力+第六感+情報収集】据える。
まずは敵味方の戦力を把握し、総数と配置、周囲の地形を確認。

得物は素手喧嘩【グラップル】
UCは防御強化。
腹を据えて【覚悟+勇気+激痛耐性】推して参る。

まず召喚されるゾンビと死霊の排除と【挑発とフェイント】を用いた囮役に専念。
常に動き回り【ダッシュ+逃げ足】被弾を減らす。

異種再生による強化をしようとしたら、UCを攻撃強化に切り替え【捨て身の一撃】を叩き込み妨害する。


ソフィア・テレンティア
嘗て倒された冒険者を霊体として使役するのですか……。
既に朽ち果てた竜が死人の魂を束縛するなど……許すわけにはまいりません。
目標のクラウドオベリスクも目前でございますし、ここは全力でお相手させて頂きましょう。
……召喚された冒険者には申し訳ありませんが、オブリビオン撃破の為、今は倒させて頂きます。
―――霊体へは物理攻撃の効果は薄いと判断。銃撃から【魔導蒸気機関搭載重撃鎌・冥土式】の魔力刃による攻撃に変更いたします。そして、敵の数が多いというのであれば、こちらも数で対処致しましょう。【魔導蒸気機関複製機構】により鎌を複製。さあ、全て薙ぎ払って差し上げましょう。



 ぼとりぼとりと腐死なる竜の身体より、肉片が剥がれ落ちる。
 それはまるで、喰われ、取り込まれた者達が離反するかのように。
 そして、その証明とでも言うかのように、零れ落ちた肉片はゾンビへと変わることもなく、肉片のまま世界に晒されていた。
「ぐっ、逃すか。逃してなるものか」
 竜自身に痛みはないが、剥がれ落ち、己が手中から零れ落ちる魂の存在は自覚出来るのだろう。その声は怨嗟の如くと響き渡る。勝手に離れるは許さぬ、と。
「死臭を纏った骸の竜、か」
「既に朽ち果てた竜が死人の魂を束縛するなど……許すわけにはまいりません」
「随分な物言いよな。そも、汝らに許しなど願ってはおらぬ」
「そうでございましょうね」
「ほう。それを認めるか」
「許されないからと、それを悔い改める程に殊勝であるなど、思っておりませんので」
「ああ。それに、俺達の目的はお前の是非を問うことじゃない」
 この地に足を運んだ目的の全ては、クラウドオベリスクの瓦解のため。
 竜を討つはあくまで、そのための乗り越えるべき障害の1つでしかないのだ。
 それを淡々と語るは上野・修介(吾が拳に名は要らず・f13887)。
 そして、死者を無理矢理と従える竜とは異なり、亡き人の想い受け継ぎ、此処にあるソフィア・テレンティア(歌唱魔導蒸気機関搭載機・壱式・f02643)だ。
「いくぞ」
「それでは、任務を開始しましょう」
 力を四肢巡らせるための息吹が、力の解き放たれるを待つ蒸気機関の唸りが、森の空気を揺らした。

 ソフィアの響かせる蒸気機関――蒸気駆動式機関銃・冥土式の唸りは明確な咆哮となり、その口より銃弾を竜の息吹もかくやと吐き出す。
 それは一直線にと空間を奔り抜け、竜の身体を食い千切らんと殺到するのだ。
「木偶の如きに呆けているとでも思うたか」
 地に叩きつけられるは、骨見える翼の羽ばたきによる圧縮された空気。
 その羽ばたきは巨体なる竜の身体を宙へと持ち上げ、その身を銃弾の殺到より逃がしていた。
「いえ、思う筈もありません」
 追うようにと銃口を動かせば、竜とて飛ぶようにその身を翻す。いや、むしろ逆襲とばかりに攻め来るのだ。
 だからこそ。
「徒手で闘り合うには厄介な相手だ」
 ――それを叩き落とさんと、死角より修介が跳んだ。
 銃撃はあくまでブラフ。その脅威でもって、竜を動かすための。修介の動きを隠すための。
 とは言え、それで多少でも竜の身を削れたなら、それはそれでよかったのだろうが、流石にそこまでは至れなかった。だが、目的は達したのだ。
 ヒトの身と竜の巨体。その質量の差は比べるまでもない。
 だが。

 恐れず、迷わず、侮らず。
 熱はすべて四肢に込め、心を水鏡に。

 ――その絶対的な差を前にしても、修介の心に揺れ動くものはない。
 乱れる呼吸の一つもなく、その拳は真っ直ぐと突き進む竜の側面に突き刺さる――筈であった。
「零れ落ちた肉片に宿らせることは出来ずとも、己に残るものぐらいはな」
「――!」
 修介の拳を正面から受け止めたのは、竜が纏う肉片――その一部が変化した、ヒトの腕。
 そして、それはガチリと修介の拳を掴み、離しはしない。
「それとな。汝らは少しばかり勘違いをしている――死者を生み出すばかりが我が能ではない」
 言って、再現されるは過去の、この森に刻まれた記憶。かつて、竜に挑み、喰らわれた者達の存在。
 それは魂なき影法師。現世に残された残留思念のようなもの。
 薄靄の様に身体を揺らめかせ、それらは終わらぬ時を再現するのだ。
 つまり、敵を討つというその行動を。
「――修介様!」
 竜の身体からも染み出たそれは、未だと拳掴まれる修介へと刃を振り上げる。
 だが、それは叶わず、銃弾にその身を食い千切られ、霞と消えた。
 そして、その銃弾を躱すためだろう、身を翻し、距離取らんとする竜の勢いを利用して、修介もまた掴む腕を振りほどき、離れることで態勢を立て直すのだ。
「すまん。助かった」
「いえ、問題ありません。しかし、霊体までも使役するのですか」
「霊体……ゴーストとは趣が異なるが、まあ、そのようなものだ」
 ソフィアが厳しい眼差しを向ける先で、霞と消えた筈の者が再構成されるを見る。
 遠くで竜が見下ろし、口元を歪めていた。
「物理的な手段では、効果も薄いようですね」
「あれだけ穴だらけになっても、その痕跡も視えない。恐らく、そうなのだろうな」
 戦況を確認する先で、竜が羽ばたきと共に地上へと舞い戻る。まるでそれへと呼応するかのように、影法師もその数を増していく。
「先程のゾンビ達ほどではないが、数も多いな」
「であれば、私が今一度、道を拓きましょう。修介様にはその先を託します」
「……分かった」
 此処は戦場だ。互いの腹など、とうの昔に据わっている。あとは、1歩踏み出すだけ。
「――行ってください!」
「頼んだ」
 そして、その1歩が今、刻まれた。

「再び同じことの焼き直しのつもりか!」
 竜が吼える。
 ソフィアが後衛となり道を拓き、修介が前衛となり打倒の刃となる。それとまた同じことを繰り返すのか、と。
 2人の目標は同じであっても、状況は異なる。竜へと辿り着くに、影法師達の壁が立ち塞がるのだ。
 だが。
「いいえ、違います。同じにはなりません」
 幾ら魂なき影法師、残留思念の再現と言えども、それの零す苦悶はソフィアにとっては、魂縛られた死人達と同じものに見えていた。
 だから、その美麗な眉を僅かと顰め、瞳に宿すのは哀しみの彩。
「召喚された皆様には申し訳ありませんが、オブリビオン撃破の為、今は倒させて頂きます」

 ――複製機構始動。

 1つが2つ。2つが3つ。3つが4つ……ソフィアの手にした魔導蒸気機関の数が瞬きの間にその数を増やす。

 ――操作領域展開。

 オリジナルの1つ以外は持つ者もおらず、その身を地に晒すのみであった筈。
 しかし、それがまるで誰かの手にある様に――ソフィアの手の内に収まっているオリジナルと同じようにと、浮かび上がる。
 一斉射撃によって道を拓くのか。否。
「数を増やすだけの児戯ではございますが……馬鹿には出来ませんよ?」
 全てに魔力の刃が生じ、その身を魔力光によって照らし出す。
 さあ、準備は整った。
「――全て、薙ぎ払って差し上げましょう」
 ソフィアの号令と共に、複製されたそれらが走る修介を追い抜いていく。
 そして、その先にある影法師達へと激突し、その身を切り裂くべくと襲い掛かり、道を切り拓くのだ。
 その光景に、浮かぶ魔導蒸気機関の傍に、修介はソフィアとよく似た誰かを視た気がした。
 しかし、それも瞬き1つの間に影法師達と同じく霧散霧消となり果てる。
 それはただの幻だったのか。そうでなかったのか。それは誰にも分からない。
 だが、拓かれた道は本物だ。
「――シィッ!!」
 風孕んではためくコートがばさりばさりと音を立てる。
 それはまるで、修介が背中に翼を得たかのようにも見えていた。
 そして、化鳥の如くと吐き出した息吹と共に、その身は一歩で竜との合間を詰める!
「――無駄だ」
 しかし、それこそ先の再現だ。
 竜の意思に従って、その身に纏う肉片が再びとヒトの腕を生み、その拳を掴まんと。

「――悪いが、ここまでお膳立てしてもらったんだ。せめて、意地は貫かせてもらう」

 ――する腕ごとと、その拳は砕き、その先にある竜の身体を捉えた。
 それは防御を考えぬ捨て身の一撃。刃としての意地を貫く漢の。
 巨体に対してヒトの身は小さく、蟻の一刺しとまでは言わないが、それに類するものであったであろう。だが、侮るな。その意地は確かと竜の肉体を穿ち、その深きへと衝撃を伝えたのだ。
 巨体が揺れる。身体の奥の奥へと突き刺さった衝撃に。
 そして、再びとその身体から取り込まれた者達を離反させるのであった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

イーファ・リャナンシー
ドラゴンゾンビ…ね
この竜がいることで犠牲者が出続けるってことなら放っておくわけにはいかないわね
あとクラウドオベリスクも

数が多いのは気になるけど、先制攻撃で対処するつもりよ
【サモニング・ガーディアン】で巨人の霊を召喚して戦うことにするわ
地上を動き回る敵には地震で、地面に接していない敵には煉獄の炎で攻撃して貰うの
もちろん、巨人にも戦力としてたくさん頑張って貰うけれど、私もサボってるわけじゃなくて
陽動に敵の目が巨人にむいてる間に小さな体を活かしてドラゴンゾンビに死角から近づいて【全力魔法480】を使って攻撃するつもりよ

ドラゴンゾンビを倒したりクラウドオベリスクを壊したせいで森に変化が出なきゃいいけど


ガルディエ・ワールレイド
この森が、そして、その穢れこそがお前の領域か。
ああ、それでこそだ。朽ちたりとは言え確かに竜。

ところで俺の領域は空の方でな……楽しくやろうぜ?
無聊はしっかり満たしてやるよ。

◆行動
真の姿で【真・黒竜嵐装】を使用、巨大な黒竜となる
全ての攻撃が《範囲攻撃》と化し《衝撃波》を伴う
《空中戦》で機動し、《怪力/2回攻撃》での爪牙や、纏う嵐や雷を操る《属性攻撃》で戦闘

切り札は《全力魔法/属性攻撃/範囲攻撃/衝撃波》を《力溜め》で増幅して放つ赤雷のドラゴンブレス。

【異種再生】対策
嵐や雷をもって戦闘中の食事を妨害
またダメージを与えて敵が食事を行うタイミングが読めた場合、その隙こそを狙ってドラゴンブレスを叩き込むぜ



 揺れる腐死なる竜の巨体。
 数多と刻まれた傷が、肉片に覆われた内なる白を外へと曝け出していた。
 だが、まだ腐臭も、死臭も、存在感も、依然としてそこにある。
「この森が、そして、その穢れこそがお前の領域か」
「否定はせぬ」
「ドラゴンゾンビ……ね。これが元凶ということなのね」
「ゾンビ、か。汝らから見れば、我も使役されるだけの者共と同じ種に見えるか? であれば、愚弄であるな」
「ああ、それでこその存在感だ。朽ちたりとは言え、確かに竜」
 他の猟兵達と同じく、その前に毅然として立ち向かうはガルディエ・ワールレイド(黒竜の騎士・f11085)。そして、イーファ・リャナンシー(忘都の妖精・f18649)。
 竜より放たられる存在感が空気を圧し、生温く、纏わりつくような不快なる風を2人へと吹き付けていた。
 その周囲を取り巻くように、未だと残る過去の亡霊達が蠢き揺れる。
 腐っても竜。それを知らしめるかのような姿。
 だが。
「いい圧だ」
「この竜がいることで犠牲者が出続けるってことなら、放っておくわけにはいかないわね」
 ――ガルディエは犬歯を剥き出して笑みを浮かべ、イーファは圧をそよ風と受け流して淡々と。その2人の姿に気圧される雰囲気は微塵もないのだ。
「それじゃあ、いくぜ? 幻想が現実を削り、古き権能を持つ異端神の姿、目に焼き付けなぁ!」
「忘都の守護者、巨人なる霊よ、おいでなさい」
 その声は死の臭い蔓延する中で、それを吹き払う程に強く強く。

 始まりはガルディエの姿、その変化からであった。
 漆黒の鎧より滲み出たは、赤雷伴う黒き靄。
 それが暗雲のようにと広がり、嵐の様にと立ち昇り、その奥にガルディエの姿を隠す。
 ばちりばちりと暗雲の嵐の中より赤雷が弾ける度、その光に照らされ垣間見えるは黒き鱗。
 ――ガルディエの存在感が増していく。
「――させるものか!」
 それを看過出来ぬと、竜が放つは影法師達への突撃命令であり、それを巻き込むことも厭わぬ呪詛の息吹。
「あら、そういうのは無粋ではないの?」
 しかし、それも突如として吹き荒れた煉獄の炎が壁となり、その目的の達するをさせはしない。
 そこにあったは天突くような巨人。竜と同格の巨体なる者。そして、その傍にて命令を下したイーファが姿。
「邪魔をしてくれる!」
「邪魔をするのはお互い様よ」
 奥にて存在感増し続けるガルディエも気にはなるが、目の前に生じた巨人もまた放置は出来ぬもの。
 むしろ、それを倒さねば先へと進むは困難であろうことは、予想するまでもないことであった。
 だからこそ、竜は威嚇するようにその翼を広げ、吼えるのだ。
「ならば、まずは汝から葬ってくれる」
「出来るものならね。――やっちゃって!」
 そして、巨躯なる者同士の激突が始まる。
 大質量と大質量がぶつかれば、その衝撃に地は揺るぎ、空気はその身を震わせる。
 竜の牙が巨人の肩口――イーファ共々と食い破らんとすれば、それを巨人は両の手を持ってして受け止め、防ぐ。
 大質量同士が圧し合う中で竜が嗤う。
 牙受け止めようとも、口は、息吹吐き出す砲口は、既にそちらへ開かれているのだから、と。
 淀んだ空気が竜の口内で渦巻くをイーファが巨人の傍にて見る。
 だが、忘れるな。

「――嗤ってる暇なんて、あると思っているの?」

 イーファはただの飾りとしてこの場に在る訳ではない。
 確かに、竜と巨人は言うまでもなく、ヒトと比べてなお小さき妖精の身体は物理的には不利だろう。
 それでも、イーファがその身に宿す魔力はこの場において比肩する者などなし。
 竜の口内で渦巻く淀んだ空気を吹き飛ばす程の爆発が生じたのは、その瞬間であった。
 口より煙吐き出して、吹き飛ばされ行くは腐死なる竜。

 ――いつしか、暗雲と赤雷の嵐は止んでいた。

 吹き飛び、ぐらりと倒れる竜の姿。それを覆うように空からの影が差した。
 竜が見上げたそこにあったは、赤雷纏う漆黒の竜。
 まさか、同族が。などと思うはずもない。竜の眼は、その漆黒の竜が同族などではない、猟兵である、と強く強くと訴えかけていた。
「よぉ、待たせたかよ」
「それが、あなたの真の姿なのね」
 それは黒竜の騎士ガルディエが真なる姿。今は滅んだ故郷に伝わる伝説が一柱と酷似した。
「猟兵が我らの姿を真似るか!」
「真似た訳じゃねえよ!」
「どこの世界でも、竜は似たような姿って訳ね」
 漆黒の竜たる姿。それはやはり、腐死なる竜にとっても特別と映ったのだろう。
 それを否定するかのようにと、起き上がりざまに吐き出したは呪詛の息吹。
 だが、それは大空を舞うガルディエの身を捉えるには至らない。
「てめぇの領域がそこだってんなら、俺の領域は空の方でな……楽しくやろうぜ?」
 急降下の勢いを利用して、ガルディアの尾が竜を襲う。
 それを迎撃するようにと、竜も身体廻して遠心力と共に尾をぶつけ返す。
 しかし、ぐらりと揺れた地面がその脚を乱し、己の勢いをぶれさせる。
 見れば、そこには巨人が揺れる程に地を強くと踏みしめた姿。
「――!!」
「無聊はしっかり満たしてやるよ」
 そして、尾の激突はガルディエに軍配があがり、砕ける音と共にその尾が千切れ飛ぶ。
 元より腐敗した身体の頑丈さは他に劣るもの。まして、他の猟兵が手により斬撃の切れ目入っていた今、竜が尾にその衝撃を耐えるだけのものはなかった。
「なんたる……なんたる!」
 空を自在と舞い踊り、連れる赤雷も鮮やかとするガルディエの強襲は、襲い来る度にと竜のみを削っていく。
 彼の爪が肉を抉り、赤雷が焼き焦がす。
 肉片落とされるまでは許容の範囲。しかし、骨砕かれると至るまでは予想の範囲外。
 じわりじわりと訪れる敗北の恐怖は、かつての生ある頃以来か。
 追い詰められるを自覚した竜は、それを追い出すかのようにと頭を振るう。
 ならば、せめて補充をと周囲を見れば、其処には白の骸もなければ、飛び散った肉片の姿もない。影法師達の姿も、気付けば数少なく。
 全て、猟兵達の手により、今の激突の衝撃により、洗い流されていたのである。
「オ、オォォォォォォォ!?」
「ブレス勝負か。いいぜ、のってやるよ!」
 それでもと、残った影法師を魔力と還し、竜はその口に今迄よりもより強く、淀んだ呪詛を溜め込まんとする。
 それは逆転を期した、竜が切り札の1枚。
 だが。

「私の存在も、忘れないで欲しいのだけれど」

 ――相手はガルディエ1人ではないのだ。溜めるその隙はそれこそ、致命だろう。
 竜は竜の姿持つガルディエの姿に熱くなりすぎていたのだ。それゆえの見落としであり、失策。既に1度踏んだ轍を再び踏むと言う、失策。
 竜の口中でイーファが全力の魔力が弾ける。そして、霧散霧消と消える呪詛の名残を引き裂くように、赤雷の息吹がその身を捉え、呑み込んでいった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

リュカ・エンキアンサス
…すごいな。強そうだ
こういう感じ、嫌いじゃない
ドラゴンを見ると、若干テンションが上がる
……でもちょっと、目に痛いかな
これだと、上に乗るのも汚れそうだし

…と、内心わくわくと眺めたけれども仕事は仕事としてきちんとするので
無言で。無表情で。きらきらした目で見ながら
問答無用でぶっ放す
まずは霊やゾンビから確実にしとめていくけれども、
時々けん制で本体にも弾をばら撒いておく
勿論、トドメをさせそうなら遠慮なくUCでいただくけれども
基本は援護射撃が主…かな。

腐臭も刺繍も慣れてるけど、あえて集めようとは思わない
それが、あなたの趣味なんだろうか
他人の趣味にとやかく言う気はないけれど
仕事だから。悪いけれども全部倒すよ


御堂・茜
伝説は真実だったのでしょうか
ではいざ再び、かの勇者の如く
悪しき竜を封じてご覧に入れましょう!

その不浄の魂、地獄で悔い改めなさい!
屍共は【気合い】により生じる刀からの【衝撃波】で
片っ端から粉微塵にして参ります!

その際竜も同時に巻き込むよう意識
再生できるものならしてご覧なさい!
御堂はそれ以上に!
熱く!
速くッ!!
貴方を斬るのみですッ!!!

勇者様はただお一人で竜と戦いました
ですが我らは一人ではございません!
押し勝てると見たら【ダッシュ】
全力でUC【完全懲悪】を放ちます!

良き死合いができました
即ち我らは『らいばる』ですね!
寂しかったら素直に言うのですッ
この地が豊かでありますよう
眠りの地に花を捧げましょう



「……すごいな。強そうだ」
「伝説の戦いとは、あのようだったのでしょうか」
 リュカ・エンキアンサス(蒼炎の・f02586)と御堂・茜(ジャスティスモンスター・f05315)が目の前で繰り広げられるは、巨体同士のぶつかり合い。
 激突に震える空気が、大地が、その震動を2人へと伝え来る。それはまさしく怪獣大決戦かのような様相を見せていた。
「まるで特撮のようでございますね!」
「そのトクサツってのが何なのか分からないけれど、こういう感じ、嫌いじゃない」
「なんと、この趣が分かられますか! であれば、御堂のお勧めなど……っと、そういう場合ではございませんでしたね」
「ちょっと気になるけど……そうだね。仕事は仕事。きちんとね」
 淡々と、朗らかと、浮かべる表情は違えども、その瞳にある輝きは相通ずるもの。
 言葉に出さずとも、それを読み取るがミドウ・アイ。そんな機能はないかもしれないが、今、この時においてはリュカの内面を少しだけ見抜いていたのだ。
 これが平和な日常の1シーン――映画を見ていた等であれば、そこから弾む話もきっとあったことだろう。
 だが、ここは戦場。きらきらと輝く夢を今は心の箱の中に仕舞いこんで、2人は現実へと立ち向かう。
 ただし、目に残る輝きまでは消せないままに。

 巨体同士のぶつかり合い。猟兵の身体能力を活かせば、それに混じるも不可能ではないが、まずはと2人は周囲の掃討を図るのだ。
 タンと軽やか地を踏みこんで、風にはためき舞い踊るは亜麻色と鮮やかな絹衣。
 それは彩なき過去の幻影達の中で一層と鮮やか、目に映える。

「現世へと繋ぎとめる楔、断ち切って御覧に入れましょう!」

 振るうは正義の志。
 現世に繋ぎ留められたそれを解放せんと、魂籠った斬撃が影法師達の中を通り抜ける。
 ただの物理的な一閃であれば、影法師達は霞の如くに揺らめくのみで、再びと構成されたことだろう。
 だが、茜が一閃はただの一閃に非ず。彼女の魂の篭った、まさしく心に響く一閃なのだ!
 彩なき影法師の身体が、身を過った刀の軌跡から滲むように仄かにと彩を帯び始めた。それはまるで、茜の持つ鮮やかさ、魂の熱を、刃を通して分け与えられたかのように。
「オォォォ」
 撃たれようと、切り裂かれようと、声すらも上げなかった影法師が、手を止め、その声を初めて響かせる。
 苦悶を零すように、痛みに苦しむように、己から生じる熱へ喜ぶように。
 だが、振るう刃の回数よりも、影法師達の数は多い。
 無色なる者達が、その剣を、斧を、槍を振りかざし、舞い踊る茜が首級を上げんとするのだ。
 だからこそ。

「仕事だから、悪いけれども全部倒すよ」

 ――その隙を埋めるリュカの技術が冴えわたる。
 タタタと連続して吐き出される銃弾は、過たずと影法師の中へと吸い込まれ、その存在を掻き乱す。
 それは囲まれるような中で戦う茜にとっては、先照らし出す灯火となるもの。
 その道を駆け抜けることで、彼女は影法師の囲いの中でも踊り続けられるのだ。
「腐臭も死臭も慣れてるけど、敢えてこんな風に集めようとは思わない」
 天秤が傾かぬようにと、その手で戦いの趨勢を繰るはリュカ。
 亡骸を積み重ねて、死を積み重ねて、その先の勝利を掴む。
 それは今迄の戦場でも見て来たもので、それでも、それを誇る気もなければ、集めようという気にもなれなかった。
 だからこそ、彼は内心で小首をかしげるのだ。それが竜の趣味なのだろうか、と。
 だが、彼がそれを糾弾のためにと口にすることはない。
 あくまでも淡々と、彼は引き金を引き続けるのだ。

 リュカと茜。そして、他の猟兵達。その活躍もあり、影法師達は急速にその数を減らしていく。
 故に、彼らが手が竜へと届くようになるのも、また必定。
「その不浄の魂、地獄で悔い改めなさい!」
 薙いだ刃の勢いもって、風奔る斬撃が竜の身を断つ。
 遠かったが故にそれは小さく、すぐにと蠢いた肉片が塞いでいった。
「羽虫が鬱陶しいわ!」
「……それはちょっと、貰いたくないね」
 大質量同士の激突がある故に、チクリチクリとされるは集中を乱されて苛立つのだろう。
 竜が零れ落ちるならばと、肉片を流星の如くと撒き散らしたのだ。
 切り離されたのではなく、意識的に切り離したそれは流れ落ちながらも蠢くように手を伸ばし、猟兵の身を掴まんと範囲を広げる。
 竜には興味はあれども、その撒き散らされるものまでは流石に触れたくもないのだろう。
 大きくと跳び退って躱す茜と同様、リュカもまた走り、樹木の影を利用し、盾としながら躱していく。
 勿論、その間も隙あらばと灯り木の光を複数と灯すも忘れずに。

 ――そして、数多のぶつかり合いを越えた先で、竜の身を赤雷の息吹が包み込む。

 光晴れた後に残るのは、肉片削げ落ち、燃え尽き、骨だけとなった竜の姿。
 恐らく、残った肉片を全て防御のための傘とし、息吹に耐えたのだろう。
 だが、それでもと竜は骨のみとなった身体を動かし、抵抗の――逃亡の姿を見せんとしている。
 逃げるようにと向かう、その先にあるのは――クラウドオベリスク。
「逃がさないよ」
 そこに竜が到達することで何が起こるかは分からない。だが、決して、猟兵達に利することではないだろうことは明らか。
 だからこそ、茜は、リュカは、それを許さない。

「……星よ、力を、祈りを砕け」

 それはあらゆる装甲を、幻想を打ち破る星の弾丸。
 今、ここにおいては、竜の逆転を夢見る幻想を打ち破る弾丸となり得るもの。
 竜の姿に煌めきを向けていたとしても、その引き金を引く時にリュカの青へ宿るは冷徹なる意思のみ。

 ――パン、と。一発の銃声が森の深奥に木霊した。

 それはひた走る竜の骨――身体支える背骨が1つを撃ち抜き、砕く。
 走っていた子供が顔より倒れ込むかのように、竜もまた、その身を地へと横たえる。だが、それでもと諦めず、動く上半身だけがずるり、ずるり。
「あき、諦めてなるものか……」
「勇者様はただ御一人で戦われました。ですが、我らは一人ではございません!」
 そして、正義が追い付いた。
「――これより如何な再生もさせはしません!」
 ここが悪の終わりだと、茜は強く強くとその心を叫ぶのだ。

「――悪は滅びる!!! 正義は勝つ!!!!! 皆様ご唱和くださいませッ、【完・全・懲・悪】ッッッ!!!!!!!!!!」

 誰よりも熱く、誰よりも迅く、踏みしめた足の勢いのまま、正義の大太刀は竜骨を唐竹の如くと立ち割った。
 後にははらり解けて舞い散る白き骨。それは名残雪のようでもあり、花吹雪の様でもあり。
「良き死合いができました」
 戦い終わったならば、勝者としてするべきは1つ。如何な敵とは言え、それでも礼を尽くし、茜は一礼を。
 無聊の慰めを求めた竜。それが幾年月ここにあったかは知らないが、それはもしかしたら、寂しさもそこにはあったのではないか、と。
 だが、その答えは敢えて聞きはしない。聞いたとしても、その答えは返ってこない。

 障害のなくなった今、クラウドオベリスクの破壊は苦も無く終わる。
 最早、この森に脅威たる者はなく、竜の眠りに囚われる者が出ることはないだろう。
 もしかしたら、不帰の森という名前も変わっていくのかもしれない。
 だが、それはまだ遠い未来のお話だ。
 今はただ、深奥にて白き花が一輪、そこにあった塔を、竜を、犠牲者達を慰めるかのように揺れていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年07月24日


挿絵イラスト