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美しき灯火と悲しき魂の呼び声

#サムライエンパイア


「集まっていただきありがとう。わらわの予知がサムライエンパイアのとある村を捉えたわ」
 グリモアベースにて話始めるのはレイン・ブランディ(雨を司る女神・f16511)。集まってもらった猟兵たちへ予知の内容を伝え始めた。
 変哲もなにもない農村。そこでは今、村に流れる川へと灯篭を流す行事が行われているという。
 しかし灯篭流しが行われるこの時期だからこそ力を強めるオブリビオンの存在が現れ、予知へと引っ掛かったのだ。
「残滓とでも呼ぶべき相手かしら。人々の未練や後悔の念を糧にして力を強める敵なの」
 そのため灯篭流しによって人々の想いが強まるこの時期にあわせ、オブリビオンは村を襲おうとしているのだ。
「わらわの予知によれば猟兵が灯篭流しに参加すればオブリビオンは大々的に動くことができず、徐々に追い込んでいくことができるはずよ」
 時間は夜、日が落ちてすぐのころ。まずは灯篭流しに参加して欲しいとのこと。
 これは灯篭を流す一人の参加者としてでも良いし、灯篭流しを仕切る人たちの手伝いをしてでも良い。
 灯篭流しが終わった後は蝋燭や提灯の灯りの元、簡単な宴のようなものが開かれる。
「オブリビオンたちはこのタイミングからこっそりと動き始めるわ。狙いをつけた人に取り入り、その人を殺そうとするの。怪しい動きや人の輪から外れようとしている人物には注意して頂戴」
 生き長らえてしまったことへの後悔、あるいは死んでしまった人への心残りなど、そのような強い思いを持っている人物が特に狙われやすくなっているようだ。
「残念……というべきではないのでしょうけれど、どれだけ強い思いをもっていても猟兵には寄ってこないようね」
 どのような人がいるかは灯篭流しの時に予め見渡したり話しかけたりしておくと良いかもしれない。
「人々を守ることができたとき、オブリビオンたちは猟兵を先に片さなければならないとして姿を現すわ。でもその時こそ一番注意して頂戴」
 なぜならこの残滓たちは、猟兵たちが強く思う人の姿かたちをして現れるからだ。
 親しい人、亡くした人、あるいは自分自身の姿を投影してくる。
「敵の力自体も結構強いのだけれど、何よりも心の強さが求められる敵となるわ。よろしくね、猟兵たちよ」
 そうレインは告げると、聖杯の水で作ったアーチ状の転送ゲートを展開。猟兵たちをサムライエンパイアの世界にある村の入り口へと送り出し始めたのであった。


鬼騎
 1章:灯篭流しへ参加。誰かを思い弔いを行っても良いですし、誰かの手伝いなどをしても良いです。
 2章:村人がオブリビオンに取り込まれ殺されそうになっています。探し出し助けてあげてください。
 3章:猟兵が強く思う人物の姿を模して現れる残滓との戦いになります。

 1章への断章はありませんので、公開と同時にプレイングの募集が開始になります。
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第1章 日常 『灯籠流し』

POW   :    灯籠を流す

SPD   :    灯籠を見送る

WIZ   :    灯籠に祈りを込める

👑5
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ジャック・オズガルド
POW
自らが作った灯籠の朗らかな光が川を流れていく幻想的な光景にジャックは目を細めた。
「ジャック」
「...どうした?」
我にかえり横を見ると女型オブリビオンのランダとイザリィが立っていた。
「辛気臭い顔してんねぇ...。たまにははめ外してもバチは当たんないよ。」
「はめ外すような場面でもないじゃない。」
ジャックに突っかかるランダにイザリィが突っ込みをいれる。
(...。)
無意識に胸元から複数のドッグタグを取り出し眺める。
「やっぱCIA時代のか?」
「まぁ、そんなところだ。」
地獄のようや日々だったが、彼らとの思い出は唯一の救いだった。
「...神社のほうで女の子が一人でいたわ。」
「......準備しよう。」



 ゆらりゆらり。穏やかな川の流れに沿い、暖かな光が下流へと流されていく。
 穏やかな光は灯籠の灯火。たった一つの光であれば不安も残るが、村人たちの手で流された灯籠はなかなかの数があった。
 ジャック・オズガルド(元CIA特殊部隊員のUDCエージェント・f03045)も自分の手で作った灯籠を川岸からゆっくりと川へと浮かべる。すると灯籠は次第に川の中央へ導かれ、多くの灯籠の中へと混ざり込んでいく様子に目を奪われる。
 その幻想的な光景にジャックは目を細め、灯籠の流れる先を見つめ続けていた。
「ジャック」
 ふいに真横から声をかけられ、ジャックは手放し気味だった意識を覚醒させていく。
「……どうした?」
 横には女性の形をした存在。ランダとイザリィと名付けられた二体がそこに立っていた。
「辛気臭い顔してんねぇ……。たまにははめ外してもバチは当たんないよ」
「はめ外すような場面でもないじゃない」
 ジャックへと突っかかる形で話かけてくるランダに対し、イザリィは容赦なくツッコミを入れている。
 ジャックにとってはいつもの事なのだろうか。その様子を上の空で眺めながら、無意識にジャックの手は胸元へと伸びる。
 チャリ、という音を立て手にあたるのは首から下げられた複数のドッグタグ。
「やっぱCIA時代のか?」
 首から下げられたドッグタグを眺めていると、そう尋ねられる。
 未だ流される灯籠の灯りにより、手にするドッグタグに光と影が交差す。
「まぁ、そんなところだ」
 交互に現れる光と影。その光景は、あの地獄のような日々――しかし唯一の救いとなる彼らとの思い出を脳裏に浮かばせ、消えていく。
「そう……でもそろそろ動きましょ。神社の方に女の子が一人向かっていくのを確認したわ」
「……準備しよう」
 ジャックは一度瞳を強く閉じ、息を吐く。幻想的な灯籠の灯りから、現実を包む暗闇へと目を向けた。
 ジャックたちは灯籠が流れる川へと背を向け、歩き始めるのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ラプラス・デーモン
POW行動
これが灯篭流しというイベント…いや、セレモニーに近いものか。
灯篭流しに参加する者として、作法などは現地の村人に尋ねるぞ。
その際、自分の身の上を少しばかり語りながら、同じような想いを抱えていそうな者を探すとしよう。
「自分は家族を失った。その弔いとして灯篭を流したいと思う」
似たような境遇の者は、目や雰囲気を見れば分かるだろう。
大切な何かを失った者には後悔の念が付きまとうからな。

首尾よく目星をつけられた後は、宴の隅を借りて大人しくしているぞ。
御覧の通り図体がデカいからな。ちびちび酒でも飲みながら機を待つさ。



「これが灯篭流しというイベント……いや、セレモニーというべきか」
 まわりの住人達から見ると、かなりの巨体を持つ人物がそう呟く。
 ラプラス・デーモン(デモニッシュ・パンチャー・f16755)。初めて見る灯篭流しを興味深く見つめていた。
 木や竹などで出来た枠のまわりに和紙が貼られ、その中に蝋燭で火が灯されている様子は、この国とは違う文化で育ったラプラスには不思議で、幻想的な光景であった。
 しかしいつまでもこうしている訳にはいかない。辺りを見渡すとラプラスと同じようにじっくりと灯籠を見つめ、なにか想いを抱えてそうな青年を見つける。
「突然尋ねる形になってすまないが、この灯篭流しというのはどのような作法があるのか。よければご教示願えるだろうか」
「ぁ……あぁ、あんた灯篭流しは初めてなのかい?」
 ラプラスに声をかけられたことで愛想笑いを浮かべる青年。しかしその表情はどこか陰を差している。
 彼に関しより深く観察しながらも、ラプラスは灯篭流しに関して会話を続ける。
「自分は家族を失った。この灯籠流しというものは弔いになると聞いてな」
「家族を……そうか……」
 青年の言い淀む口ぶりや纏う雰囲気を見てラプラスは確信を得る。彼は己を似たように、何かしらの悔いを残している境遇の持ち主なのだろうと。
 灯篭流しに関しては青年に聞けば完成している灯籠を配っている場所や、流す場所など、色々と丁寧に世話を焼いてくれた。
 無事に灯籠を流し終えたラプラスは一旦青年とは別れ、他にも狙われそうな人物がいないか辺りを見渡し探っていく。
「見事なものだな」
 ラプラスはやがて始まった宴の隅で川の流れに乗ってゆったりと流れる灯籠を見守っていた。あまり自分のような図体のデカイものが動き回り、住人にいらぬ圧を与えてしまわぬようにという配慮もある。
 オブリビオンたちが動き出すにはもう幾分か宵が深まるまで待たねばならぬだろう。辺りの様子を見守りつつこの国の酒を少々嗜み始めるラプラスなのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ファルシェ・ユヴェール
灯篭流し――弔いの灯、ですか
なればお手伝いをさせて頂きましょう
なに、私はしがない旅商人
この場に相応しい程の別れを知らぬ、幸運なる若輩者ですから
せめて皆様が安心して己の想いを籠められるように、とね

とは言え己の故郷とは文化も異なる
詳しい作法を知る訳でも御座いませんから
小さな子やご老人が河辺で足を踏み外さぬようお支えしたり
戸惑う方が居れば、詳しい方へとご案内したりと
出来る事をと、甲斐甲斐しく動く事に致しましょう
そうしながら
接した方の想いのひとかけらでもお伺い出来たのならば幸甚と

――
そして接した人々を記憶に留め置くと致しましょう
私は商売人、人を覚える事は得意なのです
この後の宴
彼らを見落とす事無きように



「弔いの灯、ですか」
 辺りが闇に包まれている中、そうつぶやくのはファルシェ・ユヴェール(宝石商・f21045)。
 川を流れる灯籠の灯りに照らされる彼だが、その身なりはずいぶんと華美な装いだということが一目見るだけでもよくわかる。
 例えそれが安物であろうと、帽子や衣装に付けられている宝石が灯りにあたりキラキラと星のようにきらめいていたのだ。
「――わぁ」
 ふとファルシェは視線と小さな声を感じ、振り返る。そこにはあまり裕福ではないだろうといった身なりの童子がこちらを見つめ、立っていたのだ。
「っ!!」
 しかし己の視線に気づかれた童子はバツが悪そうな顔をし、背を向けて走り去っていってしまった。
「ふむ……」
 走り去っていく童子の背を見つめ、記憶へと刻む。いくら住み慣れた村とは言え、灯篭流しの夜に童子が一人でうろついている様子は気に留めておくに越したことはない。
「今追いかけても仕方がありませんね。まずは皆様のお手伝いをさせていただきに参りましょう」
 ファルシェはこの場で想うような別れというのは未だ知らず、幸運な若輩者だと己を評する。そのような自分はどうすればよいか。皆が安心して己の想いを込め弔いが行えるよう手助けするのが良いのではないだろうかとファルシェは考えたのだ。
 故郷とは文化が異なるこの村で己ができることは何か。
 ファルシェは川辺へと灯りを手に向かう。灯籠を流し終えた者たち、特に小さな子や老人などへと手を貸し人々の支えになれるよう努めていく。
 礼を言われればファルシェの表情は自然と綻ぶ。接した方の想いのひとかけらでもお伺い出来て幸甚だといった様子である。
 次第に始まった宴もあり、徐々に川辺には人の姿が減っていた。
 幾度か川辺と村の中を往復している中で、ファルシェは接した人々にはどのような人たちがいたのか記憶の中で反復していく。
 しがない旅商人ではあるものの、仕事柄人を覚えるのは得意なのだ。
 やはり一番気になったのは走り去っていった童子。ファルシェは人々を手助けしていく際にどのような子なのか軽く村人に訪ねていた。
 どうやら両親とも病気でなくし身寄りがなく、子どもたちの中でもつまはじきにされてしまっているという。
 さて次にどう動くべきか。ファルシェは思考を巡らせたのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

天翳・緋雨
【アドリブ・連携OKです】
【SPD:灯篭を見送る】

オブリビオンも色々といるんだね…
こういう場に介入させたくないな
『璃闇、ボク達にはもっといい選択肢があったのかな…?』
自身は多くの時を共に過ごして今は道を違えた少女の面影を胸に
(故人ではなく消息不明の姉とも云える人物)
人々の立ち振る舞いを眺める

幻想的な光景に心を揺さぶられるかもしれないけれど
我が身よりも先に守るべきモノがある

特に嘆きや悲しみが深そうな人物がいたら心に留めて置く
彼らの悲哀を受け止める事は出来ないだろうけれどオブリビオンの標的になった時に守れるかもしれない

穏やかな笑顔と能天気で人畜無害な演技を
コミュ力を活かして情報収集も心掛ける



 辺りが暗闇に包まれる中、美しい光景が広がっている。それは柔らかな炎を灯しながら灯籠が川の流れに沿ってゆったりと流れていく様子。
 海へと向かい灯籠が流れていく様子を天翳・緋雨(時の迷い人・f12072)は川辺からただひたすらに眺めていた。
 頭の中ではこの村に送り出される前に聞いた情報が反復される。
「オブリビオンも色々といるんだね……」
 このような場に介入しようとするオブリビオンに対し、緋雨は過去の出来事を思い出してしまう。
「璃闇、ボク達にはもっといい選択肢があったのかな……?」
 故郷を襲った災厄。多くの時を共に過ごし、その時に離れ離れになってしまった姉の璃闇。あと時もっと良い選択肢があれば、もっと力があれば、何かが変わったのだろうか。
 ポカリと穴が空いたままのその心は、幻想的な灯籠が流れる景色に揺さぶられる。
 しかし緋雨がこの場に居るのはこのような感傷に浸るためではない。灯籠の灯りから目を反らし、一度空に浮かぶ星を見上げる。
 この世界の空は広く、そして雲ひとつかかっていない夜空は星がとても綺麗に見えた。
 空を見上げながら一度目を伏せ、緋雨は気を引き締め直す。今は自分のことよりも優先すべき、危機が迫っている人たちがいるのだ。
 空から川辺へと視線を戻しあたりを見渡せば、灯籠を流しに来ている村の人たちがちらほらと見受けられる。
「よし――あの、こんばんはっ」
 それは穏やかな笑顔と元気のよい少年といった印象を与える口ぶり。緋雨は村人に警戒されないよう人畜無害層な演技をこなしつつ、自然と村人との距離を詰めていく。
 声をかけたのは男の子を連れた若い夫婦。特に気にかかったのは子供の様子。
 緋雨はこの行事はどういうものなのかという質問を投げかけ、同時に子供に関しても探りを入れる。
 すると夫婦の口から子供がなぜこうも落ち込んでいるのか聞き出すことに成功した。
「――そんなことがあったのですか」
 子供が友人らと近くの山で遊んでいたところ、猪の襲来により友人の一人が亡くなってしまった。それ以降、何もできなかった己を責め続けてしまっているのだという。
 それらの話が落ち着いた時、その家族とは一度分かれた。しかし緋雨はその後も家族の動向を気にかけていく。
 何かをなくしてしまった悲哀を満たしてあげることはできずとも、オブリビオンから守ってあげることはできるかもしれないのだ。

 次第に夜は深まり、川辺からは人の気配が消えていく。
 宴の時間の始まり、そしてオブリビオンたちが動き出す時間が来たのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 冒険 『平和な村の違和感』

POW   :    体力が続く限り、村人と交流したり、村を歩き回ったりして地道に調べる。

SPD   :    道具の修繕などをし信頼を得たり、剣舞や手品等の芸で人気を得つつ情報収集する。

WIZ   :    村人達にカマをかける。周囲をよく観察し僅かな変化を見逃さない。

👑11
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 夜は深まり、灯籠流しの行事は宴へと移行しはじめていた。近くの小さな神社や村外れ。あるいは宴が開かえれている広場からは死角となる家々の裏などには注意が必要だ。
 こっそりと動き始めたオブリビオンたちは、生死への何かしらの強い想いを持っている人物へと取り込み、その人物を殺そうとしている。
 オブリビオンの囁きに負け死んでしまえば、その魂は奴らに取り込まれてしまうことだろう。
 取り込まれそうになっている村人を見つけ出し、声をかけ励ましたりなどして村人たちを助け出そう。
ファルシェ・ユヴェール
そろそろ頃合いでしょうか

…宴の最中、まして灯籠流しの後ともなれば、
姿が見えぬ者が居ても「今はそっとしておこう」となる
オブリビオン…狙われた人の想いのみならず、
周囲の心遣いをも踏み躙る所業ですね

人々の姿を確認しつつ
気になるのは最初に出会ったあの子
目撃情報を辿って探しましょう

子供達の輪に入れないのは
おそらく病の両親の為に頑張っていて
他の子達の遊びの誘いに乗れなかったから、でしょう
両親を失った今もまた――
その心
決して奪わせは致しません

この子は優しく、逞しい
さあ、私の手を取って
UCで創り出す宝石は、本物の石ではなく
想いを石の形にしたもの
ほら、あなたの心は美しい
これは、どうぞあなたが持っていて下さい



「そろそろ頃合いでしょうか」
 宴が始まり少し時間がたったころ、ファルシェ・ユヴェール(宝石商・f21045)は行動を開始する。
 灯篭流しが行われた後、この時に姿が見えぬ者が居たとしても一人の時間を大事にしてあげようという周囲の気遣いが発生するのは至極当然のこと。
「周囲の心遣いをも踏み躙る所業ですね」
 その想いを逆手にとり、このタイミングで動き始めるオブリビオンには憤りを感じる。
 宴に集まる人々の姿を見て回り、気になるは最初に出会った童子。
 集まった人々の中に姿が見えなかったため、目撃情報を聞きだす。
 童子が向かったと思われる方向へ向かい、人の気配が少ない場所を探し歩く。
 家々の裏手や村外れなどを見落としがないよう順番に丁寧に見て回れば、やがて童子の姿を見つけ出す。
「――見つけましたよ」
「ぁっ……!」
 あらゆるところを見て回り童子を見つけ出したのは村近くの畑だった。しかし事態は緊迫している。童子の手には暗闇に光るもの。その小さい手に握られているのは包丁であった。
 震える手、怯える表情でこちらを見る童子。ファルシェは怖がらせないよう姿勢を下げ、ゆっくりと話しかける。
「助けにきたんですよ、もう大丈夫。気をしっかりもって」
 今にも泣き出しそうな顔で童子は震える唇で言葉を紡ぎ出す。
「オラ……オラはいらねぇ子だ……皆から嫌われてる……穀潰しだ思われてるさ……」
「聞きました、ご両親を病で亡くされたと。子供たちの輪の中へ入れずにいると」
 ファルシェの言葉を聞き、童子は手にする包丁を見つめる。しかし包丁を握るその手を動かす前に間髪入れずファルシェは言葉を続ける。
「きっと病に伏せるご両親のお世話を懸命にしていたのですよね」
「っ!」
「その中で、皆の遊びの誘いに乗れなかったりしたのではないですか」
 あるいは両親が病であるがゆえに、避けられてしまっていたか。理由は様々あるだろう。しかし両親を失った後まで苦しみ続ける童子をそそのかすようなオブリビオンにその心を、魂を奪わせるわけにはいかない。
「あなたの心を映し出す宝石を作りませんか?」
 あなたの心ならば、さぞ美しい宝石ができるでしょう。包丁を地面へ置くよう諭しながらそっと手を差し出す。
「それに。あなたが死んでしまうことを、ご両親は望まないでしょう」
「おっかぁと、おっとぉが……ぅ……ぅえ……ぅええええん」
 童子の手からはぽとりと落ちる包丁。大粒の涙が頬をこぼれ落ちる。
 ファルシェの手へと抱きつくように崩れ落ちた童子の体からはオブリビオンの残滓が抜け出て川の方へと向かっていくのが確認できる。
 しかし今は目の前の童子が大事だ。ユーベルコードにより手が触れた瞬間作り出された宝石はとても美しい輝きを放っていた。
 ファルシェこの宝石を渡し、泣きじゃくる童子を抱えあげて一度村へと戻るのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ラプラス・デーモン
POW行動
ヒーロー活動とは足で稼ぐものだ。これでも体力には自信がある。
歩き回りながらオブリビオンに取り込まれそうになっている村人を探すとしよう。

自分は外回り、人気があまりない場所を重点的に探すぞ。
この手の事件は人目のある場所では起きにくいものだ。
広場で盛り上がっている人々の輪から外れた者には要注意だな。
酔っぱらって吐きに行くのと、夢遊病のように歩くのでは動きが違う。

取り込まれそうになっている村人を見つけ出したなら声をかける。
「悪魔の囁きに乗るんじゃあない。気をしっかりと持つんだ」
村人を正気に戻すよう努め、死へと誘おうとしたオブリビオンへの怒りを胸に宿す。



 灯篭流しの後に開かれてる宴に参加していたラプラス・デーモン(デモニッシュ・パンチャー・f16755)は酒を嗜みながらも宴がおこなわれている場所を歩き回り、そこに参加する者たちをつい先程まで観察していた。
 ヒーローとして活動しているラプラス。
 彼はヒーロー活動とは足で稼ぐものという考えの元、その体力には自信があった。
 宴を少し楽しみ帰宅する者、酔っぱらい道端に吐き戻しに行く者、料理や酒の追加に行き来する者。
 宴を離れる理由は様々だが、敵に狙われそうな者たちはいない。
 しかしつい先程、虚ろな表情をして宴の席を離れた者がいた。
 ラプラスが灯篭流しの際に声をかけた青年だ。
 彼を追って移動すれば宴の灯りが届かない村外れまでやってきていた。
「この手の問題は一目に付きにくい場所で起こるものだからな」
 おそらくオブリビオンが彼に取り付き殺すため誘導しているのだろう。
 青年がさらに向かった先は灯篭流しを行った川の上流。
 川の幅はかなり広く、流れが早い。
 このような時間に川に着の身着のままで入れば命はないだろう。
 しかしここまで村から離れればとラプラスは青年へと声をかける。
 よそ者のラプラスにも愛想笑いを作るような青年だ。
 村の者が近くに入るような状況では素直に胸中を吐き出したり、素直に耳を傾けてくれないと判断したのだ。
「おい、大丈夫か。気をしっかりと持つんだ」
 人が居るとは思わなかったのだろう、青年は心底驚いた表情でゆっくりと振り返る。
 ラプラスはゆっくり、ゆっくりと青年との距離を詰め、しっかりした口調で語りかける。
「なにを知ったように……。兄者の……兄者の声がするんだっ! 親に早死されて、兄弟で支え合おうなんて約束してたのに。なんで……なんでお前だけ生きてるのかと」
 灯篭流しのときの愛想笑いが嘘のように今はくしゃくしゃな顔で苦しそうに青年はそう語る。
「それはとても苦しいだろう。しかし兄者は、弟に対しそのようなことを言うような人物だったのだろうか」
「そ、れは……」
「その誘いに乗るんじゃあない。それは悪魔の囁きであり兄者の声ではない」
「兄者は、いつも優しくて……そうか、これは……悪魔の、悪霊の声、なのか……」
 青年はラプラスの言葉により頭の中に響いているという声に疑問をもつ。
 すると青年はがくりと膝から崩れ落ち、身体からは青白い何者かが抜けて川の下流へと急ぎ向かっていくのを確認することができた。
「大丈夫か」
「あ、あぁ……ありがとう。よくよく考えれば兄者があんなこと、言うわけねぇ。流行り病で死んじまった兄者だが、死に際にしっかり生きろと、そう言ってくれたんだ」
「そうか。ならばしっかりと生きねばならないな」
 善良な青年を精神的に追い込み死へと誘おうとしたオブリビオンに、ラプラスは怒りを感じずにはいられなかった。
 ラプラスは青年へと肩を貸し、一度村へと送り届けるのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

天翳・緋雨
オブリビオンに狙われそうな人物…
猪の襲来で友人を失った子供が一番危険な気がする
オブリビオンの囁きで命を落としたら今度がご両親が悲しむから絶対に阻止だね
一緒にいた時に交わした言葉にヒントがある筈だから探してみよう
周囲の人への聞き込みもいいかもしれない

見つけ出せたらまずちょっとした手品やパントマイムを見せるのもいいかな
笑顔を引き出せたら色々とお話しできる気がする
口に出せない気持ちがあったらそれを引き出したり
今後の猪対策を一緒に考えたりだね
悲しみはきっと無くならないけれど少し前も向けたらいいかなって
オブリビオンに狙われている事は伝えないまま守りたい

ユーベルコードは必要なら子供に一芸を披露する時にでも



「あの子供を探さなければだね」
 灯籠流しが行われた後、宴の席を離れた天翳・緋雨(時の迷い人・f12072)はとある人物を探していた。
 川辺で出会った親子、その子供のほうだ。
 あの子供の両親は宴の切り盛りをするため宴が行われている場所で忙しなくしており、子供のことを聞いたところ、そこらに居なければ先に家へと帰ったのだろうという。
 宴周辺を探したところ子供の姿は見つかない。
 ただ家に帰ったのならばいいのだがと思いながら村にある家々を探し回る。
 ふと暗闇の中に動くものが視界の端に入った。
 場所はとある家の裏手。
 よくよく目を凝らし見ればあの子供がそこに立っていたのだが、その様子から緋雨は急いで声をかける。
「キミっ! 探したよ!」
 びくりと体を震わせてこちらを見る子供の手には輪が作られた縄。
 灯籠流しの時よりも暗く、思いつめた表情をしている子供に緋雨はゆっくりと近づき、ふいに空の両手を見せる。
 ひらりと手の平をひねりながら閉じ、再び開いた瞬間、その手の中には甘いタブレット状のお菓子が出現する。
「え、すごい……」
 ちょっとした簡単な手品だが、このような芸をはじめてみた子供は驚き、先ほどまでの思いつめていた表情が少しだけ和らいだ。
「ふふ、だろう。これは甘いお菓子だよ、一つあげるよ」
 緋雨は子供が握っていた縄をさっと取りあげ、代わりにお菓子を一つ手渡した。
 危ないものではないとわかってもらうためにも自分の口にも一つ放り込めば子供もそれに習い口の中へとお菓子を放り込む。
「おいしい……!」
「あぁ、おいしいよね。死んでしまったら、美味しいお菓子も食べることができなくなってしまう」
「それ、は……だってオイラ役立たずなんだ……この美味しいお菓子だって、オイラじゃなくてアイツのほうが……」
 アイツとは両親から聞いた猪の被害にあった子のことだろう。
 再び子供の表情は暗く淀んでいく。
 どうやら死ぬべきは友人ではなく自分であればよかったと思っているようだ。
「山にいって、猪に襲われてしまった時のことを悔やんでるんだよね。でも、いまこのまま現実を放り出したら、同じような被害に合う人のことも守れなくなってしまうだろう」
「っ!」
「猪と遭遇した場所、なぜ襲われてしまったのか。どう対策がとれるかとか一緒に考えないかい? これから先、多くの人を守れるようにさ」
「守れるように……オイラでも、役に立てる、かな。アイツはオイラのこと、許してくれるかな……?」
「ああ、きっと許してくれるよ」
 緋雨の言葉に子供の表情が完全に和らぐと同時にその場に崩れ落ち、青白い何かが子供の体から抜け出ていく。
 これがオブリビオンの残滓だろう。
 抜け出たものは勢いよく飛び去り灯籠流しが行われていた川のほうへと向かっていった。
「大丈夫?」
「う、うん……なんか急に力入らなくなっちゃった」
 ヘラっと笑う子供の顔を見れば、もうこの子は大丈夫だろうと確信を得ることができる。
 今いる場所は子供の家の裏手だと聞き、家の中へ子供を運び介抱する。
 敵は逃げていった川の方角に居る事だろう。
 介抱が終わり次第向かうことにするのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ジャック・オズガルド
WIZ
「なあ。君」
「…」
少女は手元の人形から目を離さない
ジャックは神社で一人でいる少女と接触していた
「少し、話をしないか。この村の事を教えてほしいんだ」
「…お兄ちゃん…異国の人?」
「ああ。そうだ」
両手を広げ笑顔を作る
「村の事が知りたいなら大人に聞けば?」
「まあ、それもそうか。でも君は宴には行かなくていいのか?」
「…うん。…今日は…」
少女は少し間を開け
「おかあに会えそうな気がするから」
「…」
ジャックは離れた場所のイザリィ達に目配せした
イザリィが目を細めて頷いた
鞄の中の重火器をこっそりと確認して少女に顔を向ける
「お母さんは宴の方にいるのかい?」
「ううん…去年の今頃に…」
「…それは…申し訳ない」



 宴の灯りが届かない村から離れた神社。
 灯りがないその場所は月明かりだけが照らす。
 神社の鳥居の下に佇んでいるのは普段着の着物に、人形を抱えている少女。
「なあ。君」
 ジャック・オズガルド(元CIA特殊部隊員のUDCエージェント・f03045)はゆっくりと少女に近づき声をかけた。
 少女は小さく上を向き、目だけでジャックを見る。
 しかしすぐさま抱えている人形へと視線を戻し、うつろな雰囲気で佇み続けている。
 おそらくこの少女もオブリビオンに狙われている一人だろう。
 でなければこのような時間に、このような場所に居る理由がない。
「少し話をしないか。君は灯篭流しが行われていた村の子だよね」
 にっこりと笑顔を作って声をかけるジャックだが、少女の対応は冷たい。
「……そうだけど。……村のことなら、村の大人に聞けば?」
「そうか。それで君は宴には行かなくていいのか?」
 今は村で宴が開かれているはずだからと少女は言うが、宴に行かなくて良いのか聞いたところ、少女の表情はさらにくもり、人形へと顔をうずめる。
「……行っても、誰もいない。それにここから先に行けば、おかあに会えそうな気がするから」
「……」
 どうやら少女は母親を亡くしており、母の面影を探してこの場にいるらしい。
 しかしこの少女の父や親類はどうしたのだろうか。
 疑問が多く残る。
 ジャックは手持ちの鞄の中に忍ばせている銃器の類を確認する。
 少し離れた場所にはイザリィとランダが万が一戦闘になっても大丈夫なよう待機している事も気配で感じ取る。
「お母さんに会うということは、どういうことかわかってるか?」
「……?」
 まだ幼い少女は死というものがどういうことか、正常に把握ができていないのかもしれない。
 しかし執拗に視線が外れない少女が抱える人形。
 ジャックは何かを感じ、少女の隙を見て、ジャックは少女が抱える人形を取り上げる。
「っあ、なにす……るの……」
 人形を取り上げた瞬間、少女の体はがくりと倒れこみ、人形を手にしたジャックには悪寒が走る。
 その様子を見ていたイザリィとランダは物陰から飛び出てくる。
 女性のような金切り声が人形から発せられたと思えばその人形の体から青白いなにかが飛び出し、猟兵たちの上空へと飛びあがると村を越え川へと向かっていく姿が確認することができた。
「人形のほうに取り付いて少女を死へとたぶらかそうとしていたのか」
 倒れてしまった少女を見れば意識はあるようで、その表情は毒気が抜けた、子供らしい顔をしていた。
「大丈夫か、村へと送るぞ。村に父親はいるのか」
「……うん、なんで私ここに居るんだろ。おとおに怒られちゃう」
 オブリビオンからの強い死への誘いが無くなれば、どこにでもいるただの少女だ。
 ジャックたちは少女を送り届ける。
 その後の行き先は決まっているのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 集団戦 『残滓』

POW   :    神気のニゴリ
【怨念】【悔恨】【後悔】を宿し超強化する。強力だが、自身は呪縛、流血、毒のいずれかの代償を受ける。
SPD   :    ミソギの火
【視線】を向けた対象に、【地面を裂いて飛びだす火柱】でダメージを与える。命中率が高い。
WIZ   :    ケガレ乱歩
【分身】の霊を召喚する。これは【瘴気】や【毒】で攻撃する能力を持つ。
👑11
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 足元の砂利を踏みしめオブリビオンが向かった先へと到着すればそれは灯篭流しが行われていた川辺。
 すでに灯篭は流れていき、あたりは暗闇に支配されている。
 青白い光を放ちながら現れたのはオブリビオンである残滓。
 しかしその姿は猟兵によって見える姿が違うことだろう。
 猟兵たちが強い感情を持つ相手。
 親しい人、亡くした人、あるいは自分自身の姿などを投影してくる。
 猟兵たちはその姿に惑わされることなく倒さなければならないのだ。
ラプラス・デーモン
我が悪魔の瞳に映るはオレ自身の姿。
流血と暴力に生きた結果、妹の最期すら看取れなかった負け犬だ。

ファイティング・スピリットを燃やして筋肉を増量し暴力の化身となるぞ。
拳に生きたオレたちに言葉なんて上等なものは似合わない。
原始的な暴力の応酬、殴り殴られどちらかが倒れるまで殴り合うとしよう。

戦闘もシンプルだ。
肥大化させた巨躯から怪力を引き出し全力で殴る。
これでも元ボクサーだ、どう殴れば人が壊せるかなんて考えるまでもない。
悩むことも迷うこともなく、オレはオレの姿をした者を破壊しよう。
敵からの攻撃も避ける気はないぞ。
殴られた以上に殴り返す、それがオレの帝王学なのだ。



 暗闇があたりを包み込む川辺で二人の巨漢が向き合い、立っていた。
 否、ラプラス・デーモン(デモニッシュ・パンチャー・f16755)、筋骨隆々の肉体を持つバイオモンスターにはそう感じられていた。
 敵はオブリビオン、残滓。
 対象を引き込み取り殺すためにその姿を相手が強い想いを持つ人物の姿を投影してくる。
 敵がラプラスに見せてくる姿はラプラスそのもの。
 ラプラスが強く想うのは負け犬となった己自身。
 非合法の舞台で流血と暴力に生きた結果、大切だった妹の最後すら看取ることができなかった記憶が付き纏う。
 鬱々とした禍々しい気を放つ敵に対しラプラスはその悪魔の瞳に己自身を映し闘志を燃やし拳を握る。
「言葉なんて上等なものは似合わない。どちらかが倒れるまで殴り合うとしよう」
 沸々と燃やす闘志が大きくなればなるほどラプラスの肉体は膨れ上がり強化され、かたやラプラスの姿をしたオブリビオンは後悔の念を利用し肉体を強化していく。
 動いたのは同時だ。
 互いに全力で踏み込んだ右の拳を繰り出し互いの顎へと拳を叩きつける。
 唾が飛び脳が揺れる。
 続けて左の拳を互いに繰り出し、みぞおちへと拳がめり込む。
 元ボクサーであるラプラスは容赦なく急所を狙っていく。
 どこを殴れば人体が壊せるかなどというのはラプラスの体に叩き込まれており、考えるまでもない。
 最初は互角の殴り合いを続けていたオブリビオンだが徐々に力の差が出始めていく。
 ラプラスが己に対し燃え上げる闘志はオブリビオンの強化を上回り、強化され隆起する肉体はさらなる圧倒的な力を生み出す。
「強い想いに惹かれるのだったな。ならばくれてやろう、これがオレの想いだ!」
 ラプラスが吠えながら繰り出した拳の突きはオブリビオンの腹へと打ち込まれる。
 するとラプラスの姿をしていたオブリビオンは最後の打撃を食らった箇所から霧散し、散っていった。
「負けるわけにはいかぬ――オレが世界で一番強いのだからな」
 体中殴打された跡を残しながらラプラスは散っていく己自身の姿を見つめる。
 オブリビオンからの攻撃は一度たりとも避けることはなかった。
 殴られたら殴られた以上に殴り返す。
 それが裏闘技で圧倒的な強さを誇った無冠の男の帝王学なのだから。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ファルシェ・ユヴェール
この目に映ったのはかつての師の姿
故郷――山岳の小さな集落が存在していた頃の

秘術を継ぐ者は宝石に眩んだ人買いに一人また一人と拐われ
力持たぬ者も皆散り散りとなった

私は
我が師に、友でもある兄姉弟子達に再会する為に宝石商になった
造られた宝石を探し当てれば
行方を求める事も出来ると考えて

求めた姿に、その名を呼びそうになるけれど
――違う
彼は、彼らは猟兵ではない
此処にいる筈はない
何より、彼らはこんな目をしない
……此れは、ダンピール故に独り難を逃れ得た私自身の罪悪感

ならば
この力でお相手します
黒い宝石を触媒に、UCにてこの血の力を
躊躇は無い
これは我が師ではあり得ない
――けれど
姿形だけとは言えど……少し、堪えますね



 ファルシェ・ユヴェール(宝石商・f21045)が向き合うのは己の師。
 かつて故郷である小さな集落で教えを受けた人物が今目の前の川辺に立っていた。
「――ッ!」
 ファルシェは思わず名を呼びそうになり、思いとどまる。
 故郷が一体どうなったのか、忘れるわけがない。
 山岳に存在し秘術を継ぐ者が暮らしていた小さな集落。
 宝石の価値に目がくらんだ売人にその集落の存在を知られたが最後。
 一人また一人と誘拐されていき、秘術を持たぬ者までも皆散り散りとなり集落は崩壊。
 ファルシェ自身はダンピールの力があった故に難を逃れることができたが、独り助かった事実が罪悪感となりファルシェを蝕む。
 ファルシェは宝石商となり作られた宝石の出所を探れば師や友でもある兄姉弟子達の居場所をつかめるのではないかと考えた。
 それが純粋な気持ちか、あるいは贖罪を求めてかは心の内にある。
 ファルシェは集落の記憶とともに師の姿をより鮮明に思い出す。
 目の前に居るのは"偽物"と断定するに確かな要素を見出す。
 師は、彼らは猟兵ではなく、この地にいるはずがない。
 またなにより、目の前に居る偽物のような淀んだ目をしたりなどしないのだ。
 一歩踏み出したファルシェの足元で石ころが鳴る。
「偽物だと確信を得たならば壊すことに迷いはしません」
 懐から取り出したのは黒い宝石。
 これを触媒に力を発動すればファルシェの瞳は真紅に染まりヴァンパイアの姿へと变化する。
「この斬れ味。とくと味わいなさい」
 身体能力の増したファルシェが振るう仕込み杖はその鋭利な刃で師の姿をしたオブリビオンを斬り裂く。
 ヴァンパイアの力を使う事に戸惑いは無いが偽物とわかれど刃を受け身じろぐ師の姿は堪えるものがある。
 ならば――。
「決めましょう」
 行動を決めてしまえばファルシェの動きは素早くなる。
 とどめを刺すべくファルシェはオブリビオンへと肉薄。
 反撃を許す間もなく心臓を一突きすればオブリビオンは師の姿を保ったまま塵と化し霧散していく。
「いったい……本物の師は、友は、どこに居られるのでしょうか……」
 ポツリと呟いたファルシェの言葉も宵が深まる空へと消えていくのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

天翳・緋雨
瞳に映るのは「璃闇」
姉と呼ぶ、もう一人の自分

敵を滅する冷ややかな眼差し
紡がれる歌声が周囲展開されたドローンにより増幅され凶器と化す

彼女がボクを攻撃した事は一度も無いのだから
これはきっとボクの後ろめたさ

ユーベルコードは【誓刻】
この痛みは避けて通れない
「激痛耐性」で受け止めて

「キミの真意をボクは知らない」
「キミの感情をボクは読めない」
「けれど何時かキミに追いつくよ」
「そしてキミを迎えに行く」
これは本人に伝えるべき、伝え様の無いコトバ
けれど此処で形にした事で今後を変えていく

ただ、誓いを成して歩く
痛みを超え間合いを詰めたら額に宿した「破魔」の瞳で

「さあ惨劇は終わりにしよう」
魔を滅して幕引きとしたい



 静かな闇に浮かぶのは己と同じ顔つきをした少女。
 それは天翳・緋雨(時の迷い人・f12072)のもう一人の自分とも言うべき姉、璃闇。
 しかし体から瘴気を放つ璃闇を見つめる緋雨の瞳に光は宿らない。
 璃闇が緋雨を攻撃することなどないのだ。
 しかし未だ探し出すことが出来ずに居る、あるいはあの時守ることができなかったことへの後ろめたさが残る緋雨にとって、目の前の存在は己への罰なのだとすら思う。
 緋雨は襲い来る瘴気を避けることなくその痛みをただ受け止める。
 痛みを耐えつつ冷ややかな眼差しを璃闇へと向ける緋雨。
 それとともに緋雨の周囲に展開されるのは拡声機能を持つドローン。

 ――キミの真意をボクは知らない

 ――キミの感情をボクは読めない

 ――けれど何時かキミに追いつくよ

 ――そしてキミを迎えに行く

 一歩、また一歩と璃闇へと近づく度に緋雨から紡がれる声は言霊を乗せドローンにより拡声され、瘴気により痛み続ける緋雨の体を癒やす。
 痛み続ける体を癒やし続け、倒れることは許されない。
 己の罰。己の罪。
 しかし先へ進まなければ見つかるものも見つからない。
 助けられる命も助けられない。
 これは避けては通れない道。
 璃闇へと伝えたい、けれど伝えたい相手が居ない、伝えようのないコトバは言葉として緋雨の体へと還ってくる。
 痛みを誓へと成し、璃闇の眼前へと迫る。

「さあ惨劇は終わりにしよう」

 額を隠すバンダナを外せばそこには眼光を放つ第三の瞳。
 破魔の力を宿した瞳が瞬けば目の前にはただ静かにせせらぐ夜の川と、静かに瞳を閉じた緋雨のみが存在しているのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

六連・栄
「…君が居ると思って正解だったよ、マスター
僕は今、君に貰った名前で猟兵なんてもんをやってる
他の世界を侵略するための兵器が、今は世界を救うヒーローの端くれさ
何とも因果なもんだと思わないかい?」

オブリビオンの姿は「僕を設計・製造した創造主」に見えている
語らうのは、創造主に放逐されてからどういう生活をしていたのかという事
いつかお礼を言えればと思っていたけれど、もう会えない人だから
こういう「過去の残滓」と出会えるのは猟兵の特権かな?

一通りの報告を終えたのならば、お別れの時間だ
「喋って、少し気楽になったよ。それじゃあ、サヨナラだ」
ヘビィ・リボルバーで容赦なくその眉間を撃ち抜こう

アドリブ・設定ねつ造歓迎



 暗闇に溶け込んだ者の瞳が開かれれば、そこに映るはよくよく見知ったその姿。
 サムライエンパイアの村近く、灯篭流しが行われていた川辺に闇に溶け込みながら存在しているのは六連・栄(F-666・f17087)だ。
 同じく川辺に立っているのは栄を造り名を贈りし創造主。
 創造主は栄の記憶に残るままの姿で、立ちふるまいで己のことを識別番号で呼ぶ。
「……君が居ると思って正解だったよ、マスター」
 栄は一度だけゆっくりと瞳を開閉するが、再度開いた瞳にはやはり映る創造主の姿。
「僕は今、君に貰った名前で猟兵なんていう、ヒーローのようなもんをやってる」
 創造主たる者に放逐されてからの生活を短い言葉で報告をする。
「何とも因果なもんだと思わないかい?」
 基幹生物全種の遺伝子情報を積載し、他の世界を犯すための生物兵器として作り出された己が、他の世界を救うための存在となったのだ。
 形はどうあれ、創造主から贈られた名をもって己が存在する理由。
 己の命が生まれた意味を見つけ出せたこと。
 もう二度と創造主と会うことはない。
 そう知っていながらも、礼を伝えられればなどいった夢物語を描いていた。
 まさかこのような形で報告することができるなんてと栄は苦笑交じりに微笑んだ。
「喋って、少し気楽になったよ……」
 目の前にいるのは創造主。
 しかしながら、それはオブリビオンが变化している残滓である。
 栄はその体には少々アンバランスにも見える重量級のリボルバーを懐から取り出し、流れるような動作で創造主の眉間へと照準をあわせた。
「それじゃあ、サヨナラだ」
 創造主本人ではないことをわかっていながら会話をしたのは、一方的な、いたって自己満足的なこと。
 しかしこれもまた、猟兵の、ヒトになれたことで得られた特権だろう。
 そのようなことを思いながらもトリガーにかけられた栄の指が引かれる。
 一発の銃声の後、川辺には青白い光が散る。
 やがて暗闇だけがその場に残されるのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年11月09日


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#サムライエンパイア


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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

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 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『冒険』のルール
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※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

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挿絵イラスト