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百花繚乱傾城絵巻

#サムライエンパイア



 とある遊郭、あくる日の夜。

 仄かな灯りに照らされて、水に浮かぶ紫陽花。
 月光を跳ね返すように白い山百合の花が、噎せ返るように重い香りを放つ。
 御伽噺にしか聞かぬ異国の花、茉莉花や依蘭樹の甘い霧が空気に融けてゆく。

 塀で閉ざされた楽園の一角。この中で一際華やかで、背の高い建物の頂上。
 そこは、目に痛いほどに極彩色の襖や屏風に彩られた部屋だった。

 襖を滑らせ入ってきたのは一人の男。慣れていないのか、緊張したような面持ち。
 彼が今から手にするのは……夜毎に花が咲き、朝には散るこの箱庭で、最も美しい花。

 部屋の奥で佇むその花が、優しく微笑んで手招く。

「さあ来なんし。今宵だけは主様のもの」
 豪奢な衣に繊麗な細工の簪で身を飾る女が一人。
 ふわりと衣の裾を翻し、さながら天女。声はさながら転がる銀鈴。

「でも、一つだけ。確かめさせてくんなまし?」
 一体何を?と一瞬戸惑った男の視界に、鷺の首のように美しい白い脚が飛び込む。
 何が起きたか理解する前に、男の背骨に衝撃が走り、放物線を描いて窓から落ちる。

「こんな一撃も耐えられぬとは……わちき、弱いお人は嫌でありんす」

 スッと滑るように。何事も無かったかのように、その場を立ち去る麗しい女。
 立ち去った後……最上階から下界を覗きこめば、胴体から上が有り得ない方向に蹴り折られた男の、無残な遺体だけが残されていた。


「あんたら、急で悪いがサムライエンパイアに飛んでくれるかい?」
 ミルラ・フラン(蘇芳色・f01082)が、ヴェポライザーを懐に仕舞いながら猟兵に呼び掛ける。

「あの世界でね、遊廓を根城にするオブリビオンが見つかったのさ。未成年にはちと刺激が強いかね。」
 予知した光景はとても綺麗だったと話すミルラ。
「ま、毎晩毎晩行われてるコトは千差万別だろうけどね」
 UDCアースのキャバクラで、尻を触った客を投げ飛ばして即日解雇されたこのグリモア猟兵が呟く言葉には、微妙な重みが。

「オブリビオンが潜伏してるのは、その遊郭でも最高級の妓楼だよ。気質はかなり好戦的。抱こうとする男に攻撃を仕掛けて、自分より弱かったら殺してしまう。花魁なのに、格闘技を使うらしいね。」
 厄介なことに接近戦一辺倒ではなく、遠距離は帯を鞭のように扱うのだ。

「まあ、まずは遊廓へ潜入して、その花魁を探すところからかねぇ。」
 遊郭内で、七夕の夜に水に浮かべた紫陽花を見る催しがある。
 その時だけは女を買う男だけでなく、近隣に住む老若男女が紫陽花と花魁道中を見物にやって来るのだ。
「ただ、ちょっと厄介でね。花魁道中でオブリビオンを目撃することはできるんだけど、そんときは面や背丈の確認だけにしといた方がいい。人混みだからね。」
 一般人を巻き込む可能性が高いから、見物がてら確認のターンってとこだね、と説明を続ける。

「オブリビオンへ直接攻撃するのは、その花魁が自分の個室に戻ってから!客がいるかもしれないが、一人だけなら避難も容易だろう?」
 その前に、妓楼内の確認をして下準備をしておけば襲撃はよりスムーズだろう。

 ゲートを開きながら、ミルラが激励を飛ばす。
「オブリビオンは一体だけとはいえ、かなりの強敵だ!風景や色気に気をとられてケガすんじゃないよ!頑張っといで!!」


烏丸くろえ

 お世話になっております。烏丸くろえです。
 今回はサムライエンパイアの任務のご案内、紫陽花映える七夕の夜に妖婦との戦いです。

 第一章は花見、この季節ですので紫陽花の花見と七夕祭りです。
 遊郭内の、水に浮かべられた紫陽花を見る催しで花魁道中があります。
 この日だけは老若男女の一般人が見物しに来るので出入りも容易で、出店もあります。
 第三章のボスについては顔を確認するだけになりますが、酔客同士の喧嘩や、一般女性へのセクハラ、花魁同士のキャットファイトなど起こりますので上手く解決してください。

 第二章は調査。
 やや人が引いてきたところで、第三章ボスの居場所への経路確認や、ボス本人について情報収集をしてください。

 第三章がボス戦となります。
 OPにある通りの戦い方をしてきます。遠近両様バトルオイランです。

 いずれの章も7月7日、時間は夜。
(夕暮れ時→20時~22時くらい、ボス戦突入が0時きっかりといった感じです)

 では皆様のご参加おまちしております!
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第1章 冒険 『花見と酔っ払いとオブリビオン』

POW   :    大声で避難を指示する。暴れる人を力技で取り押さえる

SPD   :    素早く片づけをして避難順路を作る。暴れる人を手早く取り押さえる

WIZ   :    的確な指示でうまく人の波をコントロールする。交渉により移動してもらう

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鳴猫・又三郎
べべんべんべん三味線かき鳴らすは金の目をした黒い猫
「あいや暫く、暫く、皆の衆、各々、主張はあるにゃろが、ここはちょいと爪収め、わしの唄でも聴いてくにゃ」
諍い起こしてるところにスルリと「忍び足ダッシュ」猫の小ささ柔らかさって便利にゃ
上手いこと「言いくるめ」て解決するためにも、ちょっと一席ぶつとするにゃ
「迷い真宵にゃこの世界♪斬った這ったもいいけれど♪愛し恋しがにゃお嬉し♪」
【楽器演奏】と【歌唱】の魅せどころにゃ
猫でも人でも短い生、憎しみ合うより愛し合う方がうれしいに決まってるにゃ
……例え此処が、愛を売る場所だとしても、にゃに愛には違いにゃい
「……宴もたけなわ、御粗末さんにゃ」
もう喧嘩するにゃよ?


ルトルファス・ルーテルガイト
(※アドリブ歓迎、好きに弄ってください)

…どのワールドでも、遊び場という場所は栄えるなのだな。
…確かに紫陽花は良い物だが、こういう場所だとトラブルも少なからず出る筈。
…例えば…酔っぱらった男が、花魁に対し強要しようとするとか。

…そういうのに対し、「…通行の邪魔だ」とでも言って割込んで仲裁。
…男が黙って去るならよし、去らぬ上に暴力を振るうなら【選択UC】で制裁する。
(『女に暴力を振るうな』と、ルール宣告)
…後は多少なり、腕でも捻ってやれば…一般人程度には十分。

…遊郭の花魁…というオブリビオンを相手するんだ、多少なりでも、この町の花魁達に貸しを作っておいた方が、まぁ…多少は有利だろうさ。


黒鵺・瑞樹
【SPD】協力・アドリブ可

花魁道中って初めて見るんだ。たとえオブリビオンであろうとちょっと興味はある。
花街自体来たことはないんだが、すごく華やかだって聞いてるからな。
半面その影も濃いって事も。

出店を見、花見&祭り見物しながら件の花魁道中が来るのを待とう。
花魁自体は【視力】でもって確認できればいいかな。
正直花魁同士の喧嘩には触りたくなないんだが…。なんか怖そうだし。女性に任せたい…。
酔っ払い同士の喧嘩はどっちもでのしておけばまぁいいとして。
セクハラはまぁたぶんだが、これやる側は酒が入ってるだろ。
女性を【かばい】、見つけたら【威厳】込でたしなめたらいいだろうか?




 今日は七夕。一年に一度だけ、織姫と彦星が逢う夜。
 地上の浮き世はといえば、男の夢見る天国が、珍しく大門を開けて様々な老若男女を招いていた。

 短冊に願いをかけて、水に浮かんだ紫陽花も目に鮮やか。
 出店の香ばしい匂いも漂う華やかな夜。
 だが、人の多さは騒動をも招くようで……
 あちらでは酔客同士の殴り合い、こちらでは遊女と遊女の掴み合い。
 眉を顰めるものあり、野次を飛ばして囃し立てるものあり。

 そこに、べん。と、三味線の音が響く。
 スルリと滑るように現れたのは、三味線をかき鳴らす粋な猫の旦那。
 すっきりと黒い毛並みに、金の目が映える鳴猫・又三郎(流浪の黒猫・f06418)その人だ。
「あいや暫く、暫く、皆の衆、各々、主張はあるにゃろが、ここはちょいと爪収め、わしの唄でも聴いてくにゃ」
 べべん、と流れる三味線と、渋く低い唄の声音が人々の耳を奪う。

「迷い真宵にゃこの世界♪斬った這ったもいいけれど♪愛し恋しがにゃお嬉し♪」

 悩み迷うこの浮き世、争うのも人の業だが、愛し合うのもまた人の命の色。
 どんな種族であれ限りある生なのだ、ならば楽しく共に生きようではないか。
 それは此処が、金で愛を売る場だとしても。

「……宴もたけなわ、御粗末さんにゃ」

 先刻までの喧嘩はどこへやら。大人しく並び合い『猫の旦那』の三味線と唄に聞き入る人々。
 一曲終わり、もう喧嘩するにゃよ?と又三郎が一声かけて去ろうとするも……
「旦那ァ!もう一曲!礼はたんと包みますんで!」
「いやいやいやいや、ウチで一曲弾きませんかい!?」
 料亭や妓楼で働く男たちが、又三郎の元に押しかけてきた!
 七夕の夜、いつもと違う演目を求める店は多い。

「にゃにゃにゃ!?わしのことで喧嘩するにゃー!」
 又三郎、今宵の賽の出目が良すぎたようで。

 少し離れたところで、酔っぱらい同士の喧嘩を直接仲裁していたのは黒鵺・瑞樹(辰星月影写す・f17491)
「花街は来たことはないんだが……聞いた通り本当に、すごく華やかだな」
 初めて見る花魁道中に好奇心を隠せない、が。見回せば、妓楼から手を振る遊女達の姿。行儀よく衣装を纏う者もいれば、祭りだからと羽目を外したのか、色っぽく着崩した者もいて。
 ちょっと、目のやり場に困る。

(正直花魁同士の喧嘩には触りたくなないんだが……なんか怖そうだし)
 女性に任せたいと思いつつも、今把握できている限り、この場の戦友は男性ばかり。
 ちらりとそれらしい取っ組み合いをしている妓楼を見れば、髪もグチャグチャで簪が宙を舞っている。回避して正解だろう。

 酔客同士の喧嘩は喧嘩両成敗……と、考えながら歩いていた時。
「きゃああっ!いやーっ!あたしはただの農家の娘よーッ!!」
 見物客の一般女性を、明らかに酔った男が抱き締め撫でまわしていた!!
 明らかに犯罪だが、男性が大柄なこともあり周囲は割り込めないでいる……これは見逃してはいけない。

「何してるんだ!!」
 人混みをかき分け瑞樹が酔漢から農家の娘を引っぺがす。
「あァ?なんだてめぇ、女みたいな顔しやがって……」
「酒が脳にまで回ったのか!この人は嫌がってるだろ!!」
 ヘラヘラとニヤつく男だが、瑞樹は一歩も引かず、厳しく一喝する。
「お、おう……嬢ちゃん、悪かったな」
 彼のことを見くびっていたような態度の男だが、不思議とその声が心の根まで響いたのか。
 女性を解放し、ペコペコと頭を下げる。

「大丈夫?」
 瑞樹が心配して、女性の顔を覗き込む。
 農村にはなかなかいない、細面の美丈夫に瞳を覗き込まれたものだから。酒臭い、熊のような酔漢との落差で、農家の娘はふにゃふにゃとへたり込んでしまい……
「ああっ、大丈夫!?」
 彼の厄介事は、もうちょっと続くようだった。

「……どのワールドでも、遊び場という場所は栄えるなのだな」
 ルトルファス・ルーテルガイト(ブレード・オブ・スピリティア・f03888)は冷静に事にあたっている……と思いきや、やっぱり頬は赤い。
 大通りに飾られる紫陽花を見つめるルトルファス。良い色だと頷くが、すぐに周囲の様子に気を配る。
 ただでさえ色を売り買いする場所であるのに、祭りの空気もあれば、けしからん行動に出る不心得者も少なからず出る筈だ。
 例えば、酔った勢いを言い訳に、春をひさがぬ芸妓とコトに及ぼうとする男だとか。

 嫌な話だが、彼の予想は当たった。
「ちょ、ちょっとおやめよ!あっしは芸妓!売るのは三味線だけなの!!」
「そのようなことを言っても、花街の女なのだろう?優しくしてやるから大人しくしてろって」
 路地裏から漏れ聞こえる声。華美さを抑えた粋な着物の芸妓が、侍とみえる男にしつこく言い寄られている。

「……通行の邪魔だ」
 侍は、突然割り込んできた長髪の男を睨みつけ、刀の鯉口を切る。
 お侍様に歯向かうのか、と言外に威圧する行いだ。しかし、ルトルファスは一歩も下がらない。
「これ以上、暴力を振るうな」
 そう宣告すると当時に、侍に手袋を投げつける!
「なんだと!?若造、手打ちにしてくれ……ッ!?」
 雷に打たれたかのような痺れが走り、その場でもんどりうって倒れる侍。

「今のうちだ。逃げた方がいい」
 貞操の危機から華麗に救ってくれた青年に、ポッとした視線を向ける芸妓。よくよく見なくても整った顔なのだ、見入らない方がおかしい。
「何処の方とも存じませんが、ありがとうね。お強い方」
 ルトルファスの手を取り、粋筋の女がにこやかに微笑んだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



「陰燐姐さんだ!」
「花魁道中だ!陰燐の姐さんがくるぞッ!!」
 ふと聞こえてきた民衆の声。この遊郭で最上級の花魁、陰燐太夫の道中がやってくる。
 振り返れば、目にも綾な行列が。

 幼い禿や、あどけなさの残る新造、下男らを引き連れて歩くその真ん中に、目的の花魁。
 華やかな外八文字を描くその脚は、重い下駄を履いているにも関わらず僅かもぶれることなくスッとしている。

 未だ若々しく、強気な顔立ちをした彼女こそ……この遊郭を根城にする妖婦、陰燐太夫である。
リル・ルリ
■櫻宵/f02768
アドリブ歓迎

櫻、櫻!みて、すごく華やかな行列があるよ
花魁道中、なんてみるのはじめて
あれは花魁、ていうのか
何をするのかよくわからないけれど
え、君も昔?
……僕の知らない過去に、知らない姿に
櫻宵は一等綺麗だからもっと見られてたんだろうと思うと嫉妬して少し拗ねる
そう今は
僕の櫻だ

水に浮かぶ紫陽花
綺麗
泳ぎたいなと思ったけれど我慢
今はこうして君との時間を楽しみた――なんか声をかけられている
僕の櫻なのに!
僕に触るのもやだ
ヤダヤダ櫻たすけて

そう、せっかく綺麗なんだから仲良くした方がいい
僕、歌おうか
『魅惑の歌』を聴いてくれる?
あとそこの綺麗なひとは僕の櫻だから触らないで

そうだね
賑やかで悪くない


誘名・櫻宵
🌸リル/f10762
アドリブ歓迎

遊郭のこの感じ
花魁道中なんて懐かしいわ!
あたしもやったのよ、昔は花魁でね
リィ?何難しい顔をして
あら妬いてるの?可愛い子ね
今のあたしはあなたの櫻なんだからね!

ほらみて紫陽花が泳いでる
とっても綺麗で可愛いわね
リィが泳いだらもっと綺麗だろうけど今は我慢よ

声をかけてくるひとは誘惑を活かしてうまく躱す
あたしの可愛い人魚も大人気
許さないわ
セクハラされたり尾鰭タッチされたら
斬首といきたいけどここは、魅惑の微笑みグラップルで我慢
せっかくの美しい風景が台無しよ
お行儀よくしましょうね
喧嘩にはあなたの美しさも台無しじゃないなんて仲裁
蕩ける笑顔は徒桜

でも
こういう賑やかさ嫌いじゃないわ




 男か女かもつかぬ、まるで紫陽花の色のようにうつろう二人が、連れ立って歩く。

「あれ?花魁が外を出歩いているのかい?」
「馬鹿言え。あんなにお綺麗で上背があるなら、さしづめ陰間か、女形の御曹司だろ……」
 リル・ルリ(想愛アクアリウム・f10762)と誘名・櫻宵(屠櫻・f02768)の二人は、とにかく人目を惹いていた。

 遊郭の空気と花魁道中に懐かしさを感じていた櫻宵の袖を、無邪気に引くリル。

「櫻、櫻!みて、すごく華やかな行列があるよ!」
「あたしもやったのよ、昔は花魁でね」
 初めて見る花魁道中に、リルは興味津々で。
「あれは花魁、っていうのか……君も、昔?」
 花魁、というものが何をするのか、リルには分からない。しかし、この街の空気から、それとなく察知する。
 けれど、愛する人の、知らない過去と知らない姿……櫻宵は一等綺麗だ。だからきっと、たくさん見られていたのだろうという思いが脳を去来する。

 拗ねたような難しい顔をしている最愛の人へ、櫻宵はやさしく微笑みながら額を撫でる。
「リィ?……あら妬いてるの?可愛い子ね。今のあたしはあなたの櫻なんだからね?」
「……そう、今は。僕の櫻だ」
 額に当てられた手に、手を重ねる。

「ほら見て。紫陽花が泳いでる!とっても綺麗で可愛いわね。」
 櫻宵に言われ目を横にやれば、この世界の技術力でどう作ったやら。
 人が入れそうな程大きな玻璃の桶には水が満ちて、紫陽花が鮮やかに浮かんでいる。
水面に惹かれるは魚の性。
「綺麗……泳ぎたいな」
「ええ、リィが泳いだらもっと綺麗だろうけど、今は我慢よ」
 今の任務は、遊郭に巣食う女怪の確認。

 尾鰭を揺らすリル。そのひらひらとしたはためきが羽衣のようにも見えるのか、道行く人は溜め息をついて見とれている。
 すごーい、天女様かな?あれが仏像にもなってる天人ってぇやつかい?弁天様かねぇ……などという声が聞こえてくる。
 ……が、ただ目の保養だけで済ます者だけではないのが花街の哀しさよ。

 不意にリルは肩を掴まれて、行く手を阻まれる。
「よう、可愛いお嬢ちゃんかお坊ちゃんか知らんが、兄ちゃんたちと遊ばないかい?」
 並ぶ櫻宵へも立ちはだかるように、幾人かの男が下卑た笑みを二人に向ける。
「人魚も龍も、ここいらじゃ見かけねぇって訳じゃねえが珍しい……『食べれば』不老長寿になるって話じゃねえか」
 リルや櫻宵の身体を、品定めするように触ろうとするゴロツキ共。

「僕の櫻なのに!……うっ、僕に触るのもやだ!ヤダヤダ、櫻……たすけて……」
 必死に手を躱そうとしながら、半泣きで櫻宵に助けを求めるリル。
 櫻宵は、今すぐ首を切り落としたくなる衝動を、魅惑の微笑みの下へそっと押し込めて……鉄拳一発で済ませる。

「嘘だろ……おい、やべぇ腕っ節じゃねえか。ずらかるぞ!」
 二人とも儚げな容姿と侮っていたが、リルに触ろうとしていた仲間が派手に吹っ飛んだ。それを目の当たりにし、血相を変えて逃げてゆくゴロツキ達。
「無粋なことしたんじゃ、せっかくの美しい風景が台無しよ。お行儀よく、仲良くしましょうね」
「そう、せっかく綺麗なんだから仲良くした方がいい……僕、一曲歌おうか」

 リルが背を伸ばし、すうっと息を吸う。……そして、麗しい人魚の歌が流れ出る。
 歌といえば、先刻の戦友が弾いたような長唄や民謡、というサムライエンパイアの人々は、聞き慣れぬ異国めいた旋律に思わず聞き惚れて。
 それはまるで、天女が棲む泉のように透き通り清らかで、仏の道の教えに出てくる迦陵頻伽の鳴き声もかくやと思うほどの妙なる調べ。

 愛しき人魚の歌声に耳を傾ける櫻宵。その、蕩ける笑顔はまるで薄紅の紫陽花のような。あるいは、季節外れの桜のような……
 歌い終えれば、やんややんやの大歓声。先程まで、好奇や劣情の目線を向けていた者すらも、心底参ったという風に手を叩いている。

 拍手喝采の一舞台。心からの拍手に囲まれた二人は、内緒話のように顔を近付けて囁く。
「ふふ、こういう賑やかさ。嫌いじゃないわ」
「そうだね、賑やかで悪くない」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 冒険 『深夜に潜む人斬り侍』

POW   :    夜間に現地に向かい直接調査

SPD   :    お昼時に村人に聞き込み調査

WIZ   :    日中に大名、城主などの偉いさんを訪問

イラスト:にこなす

👑11
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 黒猫旦那の粋な一席に、麗し人魚の異国の歌。
 美女とも美男ともつかぬ花魁の鮮やかな鉄拳に、二人の好青年の武勇伝と。
 今年の七夕の祭りは、これまでにない華やかな噂話に彩られていた。

 そして、祭りも過ぎて空は暗闇に落ちた。
 月は刃物のように細く、星占では諍いを司るという夏日星が昏く赤に光る。

 先刻までの賑やかさが嘘のように過ぎ去り、聞こえてくるのは妓楼からのくぐもるような男女の声。

 遊廓に潜む妖婦への突撃まで、まだ時間はある。
 侵入経路の確認や、彼女についての調査……下準備を固めるなら、今しかない。
リル・ルリ
■櫻宵/f02768
アドリブ歓迎

僕ね遊郭、入るのはじめてだ
僕は見習いのゆうじょ、の格好をするよ
櫻に着せてもらった着物はとっても綺麗
尾鰭まですっぽり隠れてるんだ
隣を歩く櫻宵が綺麗でドキドキする
似たのを着れて嬉しい
堂々…前を見て櫻みたいに笑うよ

何か声がするね
ん?耳鰭を塞いだら情報収集できないよ
座敷という所にいくふりをする
何故か慣れてる櫻に任せ
僕の櫻なのにって妬くけど
怪しまれたら誘惑をのせ囁くように歌う
「魅惑の歌」を紡いで
心まで蕩かしてあげる

探るのは居場所や最近の噂、好きな物とか
僕らは新入りだから
ご挨拶しなきゃって

花魁なのに腕っ節が強いなんて
僕の櫻みたいだね
でも僕の櫻のが綺麗だ
首?……もう、君は……


誘名・櫻宵
🌸リル/f10762
アドリブ歓迎

リィ、離れないでね
興味津々のリルにも華やかな着物を着せてみたわ
最高に可愛いのよ!
人魚とは一目ではわからないしね
誘惑使って新入りの花魁として内部に入り込んでみるわ
座敷に行くふりをして
堂々としてリィ
1人で泳いでいっちゃダメよ

密やかな声もリィに聞かせたくない感じのも…懐かしいわ
ちょっと耳塞いでもいい?

『呪華』の蝶を世話人達の影に忍ばせながら内部の構造や妖婦の部屋への侵入経路を探っていくわ
部屋は上階の個室だとは思うの
噂話に日々の評判
今は客をとっているのか
上手くおだて甘え誘惑して聞き出しましょ
腕っ節が強いらしいじゃない?
あたしか弱いけど
楽しみだわぁ…美しい首をとるのよ!




 遊郭の夜は、長く短い。
 一晩で織り成される紋様も、朝には儚く泡と消える。
 その縦糸と横糸を掻い潜る様に、潜み駆けるは猟兵達であるが……

 すらりと背ものびやかな遊女が二人。
 表情と恰好からして片方は太夫や天神で、もう片方は振袖新造と見えるが、はてさて。

「僕ね遊郭、入るのはじめてだ」
「リィ、離れないでね」
 麗しい傾城二人、暗闇の中でよくよく目を凝らせば櫻宵とリルである。
 流石、餅は餅屋で元本職というべきか、櫻宵の花魁姿は非常に板についていた。
 リルも可愛らしい色重ねに柄行の衣にあどけない表情はなるほど、禿から上がったばかりの振袖新造そのもの。

 櫻に着せて貰ったし似た服を着られて嬉しいと、無邪気にニッコリしているリル。
 着付けた本人も満足気に気分は上がる。足元まで隠れるこの格好なら、リルの尾鰭も誤魔化せる。
 夕刻のようなことがあっては一大事。

「一人だけで、泳いでいっちゃダメよ。リィ?」
 きりりしゃんとして堂々と背筋を伸ばした櫻宵が、リルに小声で言う。
 柱や襖は鮮やかに彩られ提灯が仄かに照らす妓楼は、見るだけなら美しい。
 しかし、襖の裏は本能と欲望がむき出しの地獄絵図か極楽曼荼羅か……隙を見せれば引きずり込まれかねない。
 祭りの夕刻と違い、今は夜なのだ。

 何か声がするねと、襖の向こうへ興味を示すリル。だが、彼の鰭のような耳を、櫻宵はすっと塞ぐ。
 懐かしい、と思いつつも。リルには効かせたくない。

 新入りの花魁よと堂々と廊下を歩けば、疑う者は誰も居ず。
 スルリと足を滑らせる様子も慣れたものという櫻宵へ、リルは何故だか嫉妬心が湧いてくる。
 僕の櫻なのにと。

 そのリルの胸中を、櫻宵は知ってか知らずか知らないふりか。
 周囲に人が居ないことを確認し、リルの手を引き廊下の奥まったところへ。
 彼が小声で唱えるのは、陰陽の呪言。
「――全部、見せて頂戴な」
 白魚のような手から飛び立つのは、呪を帯びた夜色の蝶。櫻宵の術であらわれた蝶は、彼と五感を共有している。
「さあ、目となり耳となってね」

 ひらひらと黒揚羽が忍び込むのは一つの座敷。
 今日は客が引けなかったと見える遊女達が帯を緩めてくつろぎ、酒や茶を口にしている。
 彼女らの話は、どの世界でも職業婦人が二人集まればこういう話にもなるか、という愚痴に始まり。盛り上がってきたところで、話題が例の女怪へ。

『陰燐の姐さんは、気性が荒くてたまったもんじゃないね』
『何処から来たか分からないが、アッという間に一番になっちまった』
『今日も一番上の部屋にいるのかねえ』
『あんな階段だらけの部屋に、息も上がらずに登れるだけ姐さんは凄いや』

 櫻宵は、蝶の見聞きしたものを頭の中で一つ一つ整頓する。
「やっぱり、予知と似た感じね。この妓楼の、一番上に居るんだわ」
 腕っ節が強いという陰燐太夫。待ち受ける激闘を思い浮かべれば、俄然やる気も出る。
「あたしはか弱いけど楽しみだわぁ……美しい首をとるのよ!」

「首?……もう、君は……」
 最愛の半身の、随分物騒な言動を目にして、リルは困惑するような表情で笑う。
「花魁なのに腕っ節が強いなんて、まるで櫻みたいだね。でも、僕の櫻のがずっと綺麗だ」
 夕刻に垣間見たあの太夫の顔を思い返しても、目の前の彼の方は比べ物にならないほど綺麗だと、リルは心底思うのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

黒鵺・瑞樹
…そういう声は聞こえないふりして。…うん、こういう場所だったんだっけ…祭りでちょっと忘れてた。

まずは太夫についてささやかながら【コミュ力】を発揮、そして【情報収集】。
花魁道中みて何気なく聞いてみた風に【演技】して聞く。
いつからどこの妓楼にいるのか、そして客付きの程度。
さりげなく聞ければ幸い。
花魁道中するぐらいの太夫なんだ、実入りいい客が付いてる、と普通は思う所が。
オブリビオンゆえの不自然さもあるとは思う。
あまりにも短時間で太夫になったとか、いつからいるかわからないとか。

とにかく広く浅くでいい。情報を集めて他の猟兵とも共有する。


鳴猫・又三郎
猫足、差し足、【忍び足】
明かりが落とされた暗い廊下だって、このわしにとっては昼間同然
伊達に野良猫やってないのにゃ
「……御免にゃあ」
怪しい者じゃないにゃ
怪しい猫じゃないにゃ
裏に引っ込んでる爺婆とかの経営陣的な輩を訪ねたいにゃ
チラリ見えた彼女は何時から此処に居るのか
どんな風に勤めてるか
なにか変わったところや言っていることはなかったか
「……みゃあみゃあ、そこをにゃんとか。きっと役に立てると思うにゃ」
……猫の手を貸すと【言いくるめ】
彼女好かれてるなら上手いこと煽てて、疎まれているなら聞き役に回って排除をお約束するにゃ
どっちにしろ、彼女の人となりを聞くか、詳しい人を聞いてそっちにも聞きたいにゃあ


ルトルファス・ルーテルガイト
(アドリブ可、PC絡み歓迎)
(SPD)
…先ほど助けた人…芸妓と言う人らしいが、過日の礼をしたいと言って来た。
…まぁ…芸を見せるだけなら問題ないから、その好意に甘える。
…無論、ただ厚意に甘えるんじゃない…彼女を介して、知れたら知りたい。
…この遊楽の花魁・「陰燐」…俺らが今夜狙う相手の事。

…聞く所、あの花魁は力ある男に興味を持つ(それ以外は門前払いな)女傑だろう、何故…この世界の侍とかに付かないのだ?
…いや、下手に強国の手に付いたら面倒だし、今の状態の方が楽だが。
…ただ、遊郭で終わらない様な女傑が、なぜ春を売ってるだけなのかと。

…その情報から、何か彼女を攻略する手がかりが…掴めるかもしれん。




 獅子身中の虫とばかりに楼閣に入り込む佳人あれば、こちらは外から忍び込む男達。

 ルトルファスは、夕刻に助けた芸妓に招かれ座敷にいた。
 琴の音色に耳を傾け、酒……はダメなので茶を飲みながらゆっくりと話す。
 郷里の弟を思い出すねェと、芸妓は上機嫌だ。

 曲の合間合間に芸妓へ問いかけるルトルファス。
「夕方、花魁道中を見たんだが。あの花魁について聞かせて貰えないか?」
「陰燐太夫の姐さんか……あの人は気風が良いように見えて気難しがり屋でね」

 芸妓が語る。
 何処からともなく鳴り物入りでやってきて、すぐに売れっ妓になったこと。
 気に入らないものや、ライバルに対しては苛烈な応対をしがちなこと。
 最高級の女の嗜みとして、芸事や書画も立派にこなすものの、どうやら武芸も修めていると見えること。

 戦国の遺風も残るサムライエンパイア。
 強い男を好む陰燐太夫ならば、大名や侍の愛妾として滑り込めば男に困らなかったものを。
(下手に強国に付けば面倒だ。倒すにしても今の状態が楽だな。だが、聞く限り女丈夫とも思える彼女が、何故花魁に?)
 少年の頭の中を、疑問が去来する。

 一方、こちらは瑞樹。
 道端におれども、やっぱり「そういう」声は聞こえてくるわけで……
(……うん、元々こういう場所だったんだっけ……祭りで忘れてた。)
 顔が赤くなるが、頑張って聞こえないフリをする。
 さて、件の太夫について聞きこまねばならぬが。
 怪しまれぬよう、判断力も鈍っていそうな、酔った通行人に目星を付ける。

「こんばんは。お話、大丈夫かな?」
 屋外に置かれた椅子へ腰掛け、夜風で涼んでいる中年男に話しかける瑞樹。
「あい、こんばんは。兄さんも今夜はお楽しみかい?」
 中年音はニンマリと口の端を上げる。さっき聞こえた声を思い出して、ちょっと気まずくなる。
「い、いや。俺は今日は祭り見物に来ただけで……」
「そうかそうか。いやぁ、陰燐太夫様はいつ見てもお綺麗だぁねぇ」
 酒臭い息を吐いて、陽気に笑う男。
 話の糸口を掴んだ瑞樹は、そこから一歩踏み込む。

「そういえば、あの花魁道中。綺麗だったな……あの女性はどの妓楼にいるんだ?」
「陰燐太夫を抱えているのは【蓮流楼】だねぇ。この遊郭きっての大見世だよ」
 そういって、遊郭でもひときわ目立つ、仏塔にも似た高楼を指差す男。
 なるほど、予知通りのようだ。

「あの高楼はこの遊郭のどこからでも見えるんで、たまに窓の傍に来る太夫が見えるよ」
 もしかしたら、あの塔の上が陰燐太夫のお気に入りなのかもしれない。

「ところで兄ちゃん、飲めるクチなら俺のおごりで一杯どうよ?」
「えっ、俺はちょっとこれから用事が……」
 絡み酒の予感がする。逃げるが勝ち……だろう。

 そして、その【蓮流楼】の奥深く。
 楼主夫妻の私室へ忍び寄る小さな、黒い影……鳴猫の又三郎である。
 灯りも疎らな廊下も、彼の目には昼間同然だ。

「……御免にゃあ」
「ど、どちら様で?」
 珍客に戸惑いを隠せぬ楼主夫妻。
 怪しいものではない。怪しい猫でもない。そう前置きした上で。

「ちょっとだんにゃさんと奥さんに、聞きたいことがあるのにゃ」
 夕暮れ時に垣間見た傾城……陰燐太夫が、いつから蓮流楼に在籍しているのか。
 仕事ぶりはどんなものか。
 風変わりにみえる所や、奇矯な言動は無かったか。 

「そ、そんなこと言われたってねぇ……」
 楼主夫人は突然現れた又三郎に、不信感を隠せない。
「……みゃあみゃあ、そこをにゃんとか。きっと役に立てると思うにゃ。猫の手だって貸すにゃ」
 又三郎が、それとなく言いくるめるように誘導する。
 夫人が目の前の侵入者をよくよく見れば、夕刻に三味線を弾いて拍手喝采だった猫の旦那ではないか。
 この旦那が何か手伝ってくれるなら、と。夫人は少しずつ話を零す。

「太夫は、半年前に突然ウチにやってきて、遊女にしてくれって言ってねえ……ウチも、美人だし芸が出来るから雇ったんだよぅ」
「男の好き嫌いは激しいし、男を追い返すこともあるけど売れっ妓だからねえ」
「風変わりと言えば、誰も見ていないところで武芸の稽古をしているんじゃないかって噂はあるねえ。誰も見てないから噂に過ぎないけど……」

 そして、他の猟兵も掴んでいた太夫の好き嫌いの激しさ。
 同僚や後輩にあたる花魁や新造にきつい当たりをするのは毎日の事。
 蓮流楼の高塔からの転落死は、陰燐太夫がそこを占有するようになってから明らかに増えた。
 無論、お上にも伝えず、見て見ぬフリ。自分がそこから落ちる羽目にはなりたくない。

「売れっ妓だからいいけどさ……そんで、旦那はなんでわざわざあっしらの処へ?」
「それはまだナイショなのにゃ」

 でも、話の恩は必ず返すのにゃと言いながら。黒猫は楼主夫妻に背を向けて戻ってゆく。
 又三郎は、仲間と情報を共有すべく、また夜の闇に溶けてゆくのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『陰燐太夫』

POW   :    金襴乱舞
【豪華な衣装での目くらましからの飛び蹴り】による素早い一撃を放つ。また、【花魁衣装を脱ぐ】等で身軽になれば、更に加速する。
SPD   :    艶惑緞子
【くるくると踊るような仕草】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【帯を変化させた鞭】で攻撃する。
WIZ   :    嬌嫣一蹴
【M字開脚】から【の素早い足払い】を放ち、【魅了】により対象の動きを一時的に封じる。

イラスト:唯々

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​


 日付が変わるか、変わらないかの時刻。

 細い月は山の端に沈み、空には諍いの夏日星――火星が鈍い血の色でぼんやり浮かぶ。
 異国の御伽噺に出てくる、髪長姫はあのように高い塔に住んでいたか。

 猟兵達は、足音を立てぬように高楼への階段を昇る。
 この先に待つは……傾城にして女武芸者、そしてオブリビオン。
 陰燐太夫その人である!!
黒鵺・瑞樹
場所が十分、刀を抜く広さがあればいいな。
右手に胡、左手に黒鵺。
ちょっとだけ、ちょっとだけ。ワクワクしてる。
花魁だってことのぞけば強いんだろう?
たとえオブリビオンであっても強者と戦えるのはわくわくする。

【存在感】【殺気】を消し【目立たない】ように移動、物陰から【暗殺】のUC剣刃一閃を叩き込む。
敵の攻撃は【第六感】【見切り】で回避。
回避しきれないようなら黒鵺で【盾受け】して可能なら【カウンター】を叩き込む。

さてどこまで通用するか。


鳴猫・又三郎
ベンベン、ベベン
三味線の音が鳴る
「やいや、美しいお嬢さん、ご機嫌如何かにゃ」
三味線は【念動力】で浮き、一人でに鳴って
「わしは鳴き猫の又三郎……一手、お相手仕る」
鞘走り、刃鳴り、猫の声

言葉は無用にゃ
舞って、奏でて、斬る
「にゃあにゃあ綺麗なお嬢さん、弱い男が嫌いかにゃ?」
激しくなるのは三味線の甘い音
そして互いの足運び
「ほしいのは血かにゃ?愛?快楽?……それとも終わり?」
クルクル狂狂と迫る帯の群れに合わせて躍り
「そうにゃあ、問答は無粋かにゃ……今宵はこんにゃに――」
確実に、気楽に、なんでもなく間合いを詰めて
「――月が綺麗にゃ」
斬って、斬って、斬る
この目は闇を見通し色に眩まず
「……楽しかったにゃ」


リル・ルリ
■櫻宵/f02768
アドリブ歓迎

花魁、は
腕っ節が強くないとなれないのだろうか?
櫻宵も彼女も似ていると思う
僕の櫻のが綺麗だけど
気をつけて
あとあんなのに魅了されたら許さないから
続く櫻の言葉に盛大に頬を膨らませる
愛、なんて!僕だけなのに!

歌唱には櫻への鼓舞を込めて歌う『凱旋の歌』
愛しい君が思う通りに刀を拳を振るい舞えるように
負けないで、応援してる!
攻撃はオーラ防御の水泡で防ぎ守るよ
僕を庇うなら君ごと守る
はぁ?!
僕の櫻に、変なもの見せるなよ!
魅了なんて許さない
誑かすなんて許せない
僕は花魁には向いてない
誘惑のせた歌声で紡ぐのは『星縛の歌』
全部打ち消す
これ以上僕の櫻をみるな

死を齎す一夜の華
綺麗に散らせてよ


誘名・櫻宵
🌸リル/f10762
アドリブ歓迎

あなたが陰燐太夫?
うふふ、嬉しいわ
あたし強いひとは大好きなの
お互い愉しみましょう
今一時、愛してあげる
お代はあなたの首でいいわ!
殺し愛ましょう!

可愛い子が拗ねちゃう
あたしか弱いけど武術は嗜みあるの
リルの歌が心地よくて昂るわ
がんばる!

初めはグラップル
一撃一撃に怪力込めて動き見て舞うように踏み込んで
見切り躱し咄嗟の一撃
生命力吸収の呪を込め傷を抉るように蹴り殴り
リィったらヤキモチ妬き
この位慣れてるわ

帯は刀でなぎ払い
衝撃波を打ち込んで
ああなんて楽しい!
本当は刀の方が得意なの
綺麗に斬らせて頂戴な
踏み込み放つ一閃『絶華』

傾城を城から落とすのは
さぞ楽しかろう
華が散るのは一瞬よ


ルトルファス・ルーテルガイト
(アドリブ・連携歓迎、NGなし)
…陰燐、この遊郭の花役で…オブリビオンか。
…さて、遊郭の遊びに付き合えと言われれば困るが…オブリビオンを倒せと言うなら問題なし。

…押し入り強盗紛いで済まない、だが…これ以上暴れられても困る。
…まぁ、女丈夫な奴が尻尾撒いて逃げるなんて女々しい事はあるまい。
…俺も…逃げも隠れもせん、存分に相手してやる。
(柄だけの刀身無い剣を構えながら)

…【選択UC】で光属性の加護の刀身を発現、「属性攻撃」で強化する。
…体を張った一撃は「武器受け」と「激痛耐性」で凌ぐ。
…そして、一撃を耐え切った所で…反撃の一撃を放つ。




 妖婦にして女丈夫、遊郭に咲き誇る大輪の花。
 陰燐太夫の座す高楼へ迫るは五つの影

 女のなりをした麗しい青年もいるだけに、その姿はさながら白浪五人男。

「わちきの首を獲りに来た、賊でありんすね?」

「今宵はこんにゃに――星が綺麗にゃ」
 月は、山の向こうに沈んでしまった。だが今宵は七夕。月明かりが無い故に明るい、織女と牽牛。
 その声に振り返れば、三味線が宙に浮かんでひとりでに鳴っている。
 べん、ぺん、と、緩急をつけて三味線の音色が弾ける。
「美しいお嬢さん、ご機嫌如何かにゃ」
 姿現すは黒猫の粋な旦那。
「問われて名乗るも おこがましいにゃ、鳴き猫の又三郎……一手、お相手仕る」

 さて其の次は、血桜が如き今弁天。由緒辿れば御曹司、まじないを封じ剣を手に、嗤うは夜叉か天神か。
「あたし、強い人は大好きなの。」
 櫻宵はニィと口の端を吊り上げて、龍らしい笑みを浮かべる。
 嗚呼、血腥き鬼子母神か、戦神なる神功の姫宮もかくやというもの。
「今一時、愛してあげる……お代はあなたの首でいいわ!殺し愛ましょう!」

 続いて次に控えしは、緑も深き森育ち。師に学びしは精霊の技。
「……押し入り強盗紛いで済まない、だが…これ以上暴れられても困る」
 ルトルファスが、剣の柄だけを構える。そして、柄の先を太夫へ向けると同時に、暗闇の中で輝く光の刃が現れた!
「女丈夫が、尻尾撒いて逃げるなんて女々しい事はあるまい?」
 己も逃げ隠れせぬと、じりじりと間合いをはかる。

 又その次に連なるは、かつては匣船の歌う名花。儚く蒼い稚児の身なれど、その魚の鰭は暹羅の闘魚。
 想人にぴったりくっつくように、拗ねたような表情を浮かべるリル。
「愛、なんて!僕だけなのに!」
 おいらん、というものがリルにはよく分からない。櫻宵のように腕っ節にも覚えが無いとなれないのか?と可愛らしく首を傾げる。
 敵は遊郭随一の女。あんなのに魅了されたら許さない!と思わず頬が膨れる
 それでも、愛する者への視線は語る。
 僕の櫻は、あんなのに負けない!という、鼓舞の視線だ。

 さてどんじりに控えしは、寒風荒き出羽国。修験の社で生まれたる、異国から来たりし刃の申し子、名は瑞樹。
 右手にはえびすの打刀。左手には黒鵺の小太刀。
 抜き身の刃を両手に、切っ先を妖婦へ向ける。
 今宵の強敵、いかほどか。

「……精霊よ……この声に耳を傾け、その力を剣に示せ!」
 一番槍のルトルファスが、光剣を振りかぶり斬りかかる!
 光の霊力纏うその刃が衣を貫き、陰燐太夫の脚へと突き刺さった。

「お強いようでありんすね。わちき、主様のこと、気に入りましたえ?」
 しかし、一撃ではびくともせぬ太夫。
 音も無く、帯を浮かせたと思えば、金襴の帯が鞭のようにしなって猟兵達に襲い掛かる!
 受け身、護りの水泡、己の勘などで、咄嗟に守りを固める男達。

 その帯が、猟兵達を薙ぎ払うように一閃するかと思われた瞬間。
「背中が、がら空きだ!」
 帯を操ることに気を取られた太夫の背へ、闇に潜んだ瑞樹は忍者のように死角から斬りかかった!
 完全に見落としていた。そうだ、五人いるのはさっき見ていたのに、なぜ一人見逃したのか。
 背後を取られた陰燐太夫の背に、黒鵺の小太刀は深々と突き刺さる。

「ぐっ……こちらの主様もお強いのでありんすね……まるで、主様ご自身が、突き刺さっているようでありんす」
 聞きようによっては煽情的な言の葉を、口の端から血を零しながら太夫は呟く。
「死を覚悟した人間は、その色香も増す……と、聞いているでありんす。なら、これはどうであらしゃりますか?」
 帯を操り、身を守りつつ花魁が取ったポーズは……美しい白い脚を開き、見せつけるかのような劣情を催すしぐさ。
 しかし、その姿も敵を惑わすためにしか過ぎない。

 太夫のあられもない姿勢を見て、眼を見開き激情を露にするリル。
「僕の櫻に、変なもの見せるなよ!……誑かすなんて許せないっ!」
 大きく息を吸い込み、あらん限りの力でもって、彼は旋律を紡ぎ出す。
「――黙って僕の歌を聴いてろよ」
 夏の夜空に赤く光る諍い星。それすら溺れ、蕩かし、堕として、縛る。
 性別すら越えて高く響くのは、命削る絶唱。
「僕の櫻を……これ以上、僕の櫻をみるなッ!!」
 迦陵頻伽の歌声はいよいよ大きくなり、その空気の振動が、脚や背中の傷を更に抉る。

 嗚呼、これでは魅惑の仕草も、帯の舞も出来ぬ……
 音の波動で、簪も割れて髪が落ちる。
 そして対峙するのは、対照的に華やかな花魁姿を保つ櫻宵。
「リルの歌が心地よくて昂るわ!」
 愛し子の歌声を耳にした彼の気合は最高潮。か細くも見える細腕から放つは豪速の一撃。

 鳩尾には呪いを帯びた龍の拳がめりこみ、太夫がくぐもった声で呻く。
「……主様、わちきが死んだら、この楼の太夫にならしゃりますか?」
「あら。」
 答えず、櫻宵は剣を抜く。玉のような白いかんばせに、心底戦いが愉しい、という笑みが浮かぶ。
「さぁ、桜のように潔く……散りなさい!」
 至近距離から大きく踏み込み、全体重と慣性が刃に籠る斬撃。
 帯すら切り裂いて、真っ赤な花が咲くように太夫の血が噴き出す。

「にゃあにゃあ綺麗なお嬢さん、弱い男が嫌いかにゃ?」
「いいえ。わちき、こんなに強い主様方に囲まれて……これまでで一番昂る夜でありんす」
 かろうじて、という様子で嫣然と微笑む陰燐太夫。
 彼女が一瞬、高楼の出窓へ目を向けたのを、又三郎は見逃さなかった。

「欲しいのは血かにゃ?愛?快楽?……それとも終わり?」
「さぁ……何であらしゃりますかねぇ。わちきも考えたことが、ないでありんす」
 長い裾をも物ともせず、最期の力を振り絞って傾城は跳躍する。それは天女の舞か、瀕死の白鳥か。
 女の飛ぶ姿をまっすぐに視界におさめた黒猫は、奏でた音色のように軽々と。猫の身体能力でもって飛び上がる。
 彼の妖刀が、飛んだ傾城の脚へ深々と突き刺さった!

 蹴り飛ばすことも、逃げることも叶わなくなった陰燐太夫。
 出窓の枠にもたれかかるように立つことしか、もうできない。
 
「ああ、さっきの答えだけど――」
 ぐらり、と均衡を崩す陰燐太夫の身体。櫻宵は、トン、と彼女の身体を押す。
 決して力を入れているわけではない。花弁のようにただ軽く。
「お断りさせて頂くわ」

「――――ッ!!」
 城すら傾けると謳われた女が、城から落ちる。
 辛うじて纏っていた豪奢な衣の切れ端が、花弁が散るように宙を舞う。
 幾晩咲き誇ったか定かではないが、散る時はあっけなく。

「……楽しかったにゃ」
 べべん、と、弔いの音色が響いた。


 オブリビオンであるためか、落下したはずの地上にも遺体を残さず。
 衣だけ残して消えた陰燐太夫。

 突然遊郭に現れて、忽然と消えた美しい花魁。
 足抜けしたのだ、殺されたのだと云う者も多かったが……陰燐太夫は天女だから、天に還ったのだという噂が、何時しか囁かれるようになった、という話。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年07月16日


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#サムライエンパイア


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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠グウェンドリン・グレンジャーです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


挿絵イラスト