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廃都にて

#アリスラビリンス #血反吐


「はあ……はあ……」
 崩壊した博物館。焼き尽くされた書架。記録という記録が一つ残らず打ち捨てられた歴史の亡骸の吹き溜まり。
 砕けた彫像の影に隠れ、アリスの少女は息を潜める。
「るろろろろろろろ」
「ろろろろろろ」
「……!」
 おぞましい声。這いずる音。彼女の潜む彫像の前を、芋虫に似た怪物が通り過ぎてゆく。祈るように目を閉じて、気配が通過するのを待った。
 数分が経過して、周囲に怪物の姿がないことを彼女は確認する。
 友達はもう3人も喰われてしまった。あと何人残っているだろう。……あのおぞましい牙の並んだ口の中に自分も放り込まれることを想像してしまい、彼女は身震いする。
「……まだ、死ねない」
 いつまでもひとところに留まっていてはいつ見つかるかわからない。通路に這い出た彼女は、慎重に走り出す。ただ、生き残るために。

「仕事の時間であるぞ。耳を傾けよ」
 グリモア猟兵、ロア・メギドレクス(f00398)が告げる。
 今回の現場はアリスラビリンス。その中に存在する不思議の国のひとつ、『インテグラ』が舞台となる。
『インテグラ』は博物館や図書館を模したいくつかの建物が繋がって構成されている小世界だ。古代生物の化石や巨大な彫像、あるいは貴重な文献などが展示“されていたであろう”構造になっている。
「内部は驚くほど荒廃している。『隠れんぼ』には良いフィールドであるな?」
 実際のところ、内部にあるのは展示品の残骸ばかりだ。この世界はオウガたちの『狩場』のひとつでもあり、奴らは展示品の破壊や汚損にも躊躇ない。血痕で汚れた絵画。焼かれた書物。壊された石像。砕かれたガラスケース。もはや見る影もない。だが、散らかっている分隠れるのは容易だ。
「汝らの仕事は、この小世界の中を逃げ回っているアリスたちを保護し、オブリビオンを撃滅することだ。内部はだいぶとっ散らかっておるゆえ、少々骨が折れるであろうが……がんばってほしい」
 ロアは更に説明を続ける。
「あとは……そうだな。比較的無事な展示品が『愉快な仲間』になっているかもしれぬ。コンタクトを取れればアリス捜索を手伝ってくれるはずだ」
 また、当然ながら内部にはオウガたちが闊歩している。
「先に奴らがアリスを見つけてしまえばたちまち喰われてしまうであろう。そうならぬよう、足止めの工夫もできるとよいな」
 とはいえ、オブリビオンの撃滅も作戦内容のひとつだ。戦闘の準備を怠らぬように、とロアは言い添えた。
「また、こちらで確認できているオウガはいもむしどもであるが、より強力な存在に遭遇するおそれがある。それも踏まえて、十分注意して向かってくれ」
 説明は以上だ。ロアは念を押すように猟兵たちの顔を見渡すと、一度おおきく頷いた。
「では、よろしくたのむぞ」
 そして、グリモアは輝く。


無限宇宙人 カノー星人
 ごきげんよう、イェーガー。カノー星人です。
 日頃のご愛顧ありがとうございます。この度も侵略活動を進めさせていただきます。
 この度も皆様とともに旅路をゆけることに感謝いたします。
 よろしくお願いいたします。
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第1章 冒険 『命がけのかくれんぼ』

POW   :    隠れやすそうな場所をくまなく探す

SPD   :    オウガを足止めする為の罠を仕掛けながらアリスを探す

WIZ   :    愉快な仲間達にアリスの居場所をこっそり尋ねる

👑11
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メルノ・ネッケル
【POW】
「狩場」とは悪趣味極まりあらへん、ここで何人狩ってきたんやろな……これ以上はやらせへんで、外道共。

さて、まずはアリスの子らを探さんと。物陰、隙間、探す所は山ほどある。ここは『トオミドローン』の出番やね!
建物繋ぎ合わせた世界や、天井がどこまであるかわからへん。目が一つ増えるだけで上出来やし、低空飛行で捜索や。
視界の端にドローンからの映像を映しつつ、うち自らも探して回るで!

アリスを見つけたら声をかける。
警戒されるかもしれへんし、お近付きの印に『フルーツ飴ちゃん』出しとこか。
「……怖かったな。大丈夫、死なせたりせぇへん。必ずうちらが守ったる。だから……信じてくれるか?」


ラウラ・クラーク
SPDを選択

荒廃しているとは聞いていたけど、まさかこんなに…
怖い… 怖いけど、アリス達もそれは同じはず…
私なら大丈夫… 怖いものから隠れるのは得意だから…

【行動】
《命懸けのかくれんぼ》と〈忍び足〉を使って隠れながら、〈聞き耳/失せ物探し/第六感〉でアリス達を探します。
運良く愉快な仲間達に出会う事が出来たら、アリスやオウガについて聞いてみます。

もしアリスと会う事が出来たなら〈優しさ〉で安心させつつ、一緒に移動します。
〈罠使い〉を発動して林檎手榴弾を使った罠を仕掛けます。
〈物を隠す〉も合わせれば効果が上がるかも?
アリスや他の仲間が罠に掛からないように、情報は共有しておかないと…

アドリブ歓迎です!



 万理崩滅廃都インテグラ。
 そこはかつて数多の美術品や工芸品などの様々な展示品で溢れ、数ある不思議の国の中でも独特の雰囲気をもつ世界として一部の時計ウサギたちの間には知られ――今は、オウガたちの暴虐により、見る影もないほどに朽ち果てててしまった、ということでも噂にのぼる世界だ。
 ぱき。
 床に散らばったガラス片を靴底で踏みながら、ラウラ・クラーク(f19620)とメルノ・ネッケル(f09332)の2人は周囲の様子を伺った。
「荒廃しているとは聞いていたけど、まさかこんなに……」
「せやな……。ここは敵の『狩場』なんやったか。悪趣味極まりあらへん、ここで何人狩ってきたんやろな……」
 見渡した通路には窓からの明かりが差し込んでいる。照らし出されたのは無残な廃墟の姿だ。そして、壁や床、あるいは天井のところどころには赤黒い血の色は染み付いている。ぎり、と歯噛みしながら、メルノは握った拳を震わせた。
「るろろろろろろろ」
 ずる、ずる、べしゃっ。蟲の這う音が通路の奥から2人の耳朶を揺さぶる。
「怖い……」
「……せやな」
 オウガだ。現時点でここにある戦力はメルノとラウラの2人。正面からぶつかるには少々危険を伴う。2人は頷きあいながらガラスの砕けた展示台の陰に身を隠すと、静かに息を潜める。
「けど、アリス達もそれは同じはず……」
「ああ。はやく助けてやらんと」
 ずっ、ずるり。……化け物の這いずる音は、幸運にも彼女のいる通路から離れてゆく。
『いのちびろいしたね』
 通路に顔を見せた2人のもとに、ちいさな声が届いた。
「なんの声や……?」
「誰……?」
『うえだよ』
 声の呼ぶままにラウラは視線をあげる。つられて上を見たメルノの視線の先では、壁に掛けられた額縁の中でひげをたくわえた紳士の顔が微笑んでいた。
「あなたは……」
『わたしみたいなのを《ゆかいななかま》というんだろう? ……てをかしたいのさ。きみたちに』
 絵画の男性……愉快な仲間達の1人である彼は、ラウラへと情報をもたらす。このインテグラにおいて今逃げ回っているアリスたちははじめ十数人いたが、もう既に何人かはオウガに喰われているという事実。
 何人かはまだ存命で隠れ続けているということ。そして今、このインテグラ内を徘徊しているいもむしのオウガたちは知能の低い種であり、隠れ続けることは――万全の状態の猟兵であれば――困難ではない、ということ。
「あの……生き残っているアリスは」
『ああ。ひとり、みかけたよ。あちらなら、きっといじぷたあのてんじしつだね』
「わかりました……、イジプター、ですね。行ってみます。助かりました!」
「うん。いい情報や!おおきにな、絵のおっちゃん!」
『うん、うん……。ありすたちをたのんだよ』
 2人は絵画の男性に別れを告げ、通路を慎重に進んでいく。ここでメルノは持ち込んだ機材にスイッチを入れ、起動した。トオミドローン。メルノの視野とリンクした『千里眼』の機能をもつ、科学と術のハイブリッド・アイテムである。
「そしたらうちがドローンで先を探るで」
「あ……じゃあ、私、まわりを警戒してます」
「うん。おおきにや。助かるわ」
 メルノが注意深くドローンを介した視野でアリスを探しつつ、周囲をラウラが警戒する。……幸運にも、オウガたちに遭遇することなく彼女たちはイジプター史の区画にたどり着いた。砂漠の地に芽吹いた文明であるイジプター文化圏の資料として、貴重な装飾品や石像などが展示されていた場所だ。今ではどれもこれも破壊されているが。
「あっちから、音がした……かも」
「わかった。そんならドローン向かわしてみよか……おったで!」
「!」
 そして、メルノのトオミドローンは『王の棺』――だったと思しき砕けた櫃の影に縮こまる姿を発見する。2人はそこに急行した。オウガたちがいつ嗅ぎつけてくるかわからない。急いで保護しなくては。
「ひ……!こ、来ないで……!来ないで……!」
 年頃は10に満たぬほどであろうか。2人が発見したアリスの少年は怯えきった顔で後ずさる。
「大丈夫や。……うちらはな、君を助けに来たんやで」
 メルノは床に片膝をつき、目線の高さを合わせて声をかけた。
「そう……、だよ。もう、1人で逃げなくてもいいの。よく、がんばったね」
 ラウラも同じように目線を合わせながら、そっと少年の手に触れた。
「ぼ、僕は……」
「……怖かったな。大丈夫、死なせたりせぇへん。必ずうちらが守ったる。だから……信じてくれるか?」
 メルノも同じようにその手に触れ、鮮やかな色をした飴を握らせる。
「これは……」
「飴ちゃんや。元気になるで」
 少年は、震える手で飴を口にする。ころり。舌の上で転がしてその味をゆっくりと確かめ――ぼろぼろと、涙をこぼした。
「……美味しい」
「元気、出た?」
「うん」
「よし、そしたら移動するで。他のアリスも見つけたらんとな!」
「うん……行こう。君、名前は?」
「……ラームス」
「よし。行くで、ラームスくん。一緒にみんなを助けて、ここから生きて帰るんや!」
「……うん」
 そして、2人は少年を保護しながらまた別のフロアを目指す。他にもまだ隠れているアリスたちがいるのだ。
「あ、そうだ」
「どないした?」
「罠、仕掛けるね」
「お、ええやん。オウガの連中も足止めした方がええしな。任せるで!」
「うん」
 ラウラはその道中でいくつかの場所に林檎手榴弾を仕掛けた。うまくいけば、足止めだけでなくオウガの数を減らすこともできるだろう。
「他の猟兵に会ったら、罠を仕掛けてるって伝えないと……」
 かくして、猟兵たちの捜索は続く。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

神羅・アマミ
巨大建造物内で、何の手がかりもなしにオウガから身を隠しつつアリスを探し出せとはなかなか骨の折れる仕事を押し付けてくれるもんじゃぜ…!

……むっ!怪しい影!その巨躯はもしやオウガか!?
いや…ゴリラじゃ!
ゴリラの剥製や蝋人形が奇跡によって命を吹き込まれ、愉快な仲間たちとなったのじゃ!
オランウータンやチンパンジーもおる!
今まさにアリスラビリンスは猿の惑星と化した!

森の賢者とも言われる博愛精神に溢れたゴリラがアリスの捜索に協力、或いは既に何人か保護に成功していても不思議ではない!
そして人類を軽く凌駕するサルの優れた五感と身体能力は、オウガの接近を事前に感知してくれるはず!
妾は今、無敵の友たちを得たり!


エル・クーゴー
●WIZ



アリスラビリンスに現着
躯体番号L-95、作戦行動を開始します

コール、ウイングキャット『マネギ』
(羽生えたデブ猫がマックス210体湧く)

マネギ達には【メカニック】で【迷彩】を搭載し、周辺探索に放ちます

当機は隠れ潜める拠点を定点として待機し電脳世界を展開
マネギ達の動向を逐次集約(情報収集)、必要に応じ猟兵間の連絡中継及び探索進行に並行して構築された地図データの配布を実施します
通信途絶したマネギが出た際は、そこを「オウガ徘徊予測地帯」として地図上に適宜マークします

マネギ達は元より愉快な仲間めいたデザインを有します
警戒心少なに現地・愉快な仲間との対話が持てる可能性を見込み、当機は裏方に徹します



「こんなでっかい建物の中で、何の手がかりもなしにオウガから身を隠しつつアリスを探し出せとはなかなか骨の折れる仕事を押し付けてくれるもんじゃぜ……!」
 神羅・アマミ(f00889)はみけんにしわを寄せながら呟く。どこから探すかのー、とぼやくアマミの背後で、突如閃光が迸った。
「おわっ、なんじゃ!?」
「アリスラビリンスに現着。躯体番号L-95、作戦行動を開始します」
 そこに降り立ったのはエル・クーゴー(f04770)である。いま丁度到着したばかりの猟兵だ。まずは電脳ゴーグルを通して周囲の状況をスキャン。オブリビオン反応なし。「ロボ娘じゃ……!」アマミはそのシークエンスを眺めてちょっと興奮した。そのアマミの様子をエルは見やり、対象の識別を行う。判定:猟兵。脅威度なし。
「友軍と確認」
「マジなロボ喋りしとる……」
「当機は躯体番号L-95。認識名はエル・クーゴー。そちらの所属と認識名の提示をお願いします」
「おお、マジでこういうやりとりするんじゃな……よろしくたのむぞランドクーガー女史。妾はアマミ。所属?ふつーの猟兵じゃが……」
「了解しました、アマミ。そちらの任務は当機と同様に『アリス』能力者の保護及びオウガ・タイプオブリビオンの撃滅で一致していますか」
「お、おう……」
「では、協力を提案します」
「うむ、よかろう!お主あれじゃろ?ロボじゃからなんかこー、高性能なセンサーとか積んどるんじゃろ?もったいぶらずに……」
「展開します」
 合点承知とばかりにエルは出し惜しみなくストレージ領域から未来の世界のネコ型ドローン、【ウイングキャット『マネギ』】を召喚する。その数おおよそ200体。通路が翼を持つネコで埋まる。
「どんだけ出すんじゃこれ!!」
 アマミは悲鳴をあげた。しかも現れたマネギタイプは実にふっくらとした、オブラートに包まない表現をすればすごいデブねこであった。
「210体です」
「ようやるわ……」
「では、捜索を開始します。アマミ、情報集積のためには拠点となるポイントを定めるのが効率的です」
 エルはマネギタイプ・ドローンを周囲に放つ。彼らの調査データを集積し、インテグラの状況を広域的に把握する算段なのである。
「そうじゃな……。腰を据えてやった方がたしかに効率はよかろう。イイ感じの場所を探すとするか」
「私は情報処理にリソースを割くため、移動中の会敵時には対処を依頼します」
「おーおー、任せとけ。妾、こー見えてかなりの実力者なんじゃぜー?」
「頼りにしています」
 こうして2人は通路を進み、拠点にできそうな場所を探して移動する。
 たどり着いた場所は、『自然史』の案内板が掲げられた展示室であった。中を覗き込めば、ジャングルを模していたのであろう、人工物でつくられた樹木や造花などの残骸や、ばらばらに引きちぎられた動物の剥製の切れ端が散乱している。
「むっ、怪しい影!」
「敵ですか」
「わからぬ。あの巨躯、もしやオウガか!」
 アマミは展示室内に動く影を目にして身構える!オブリビオンか!が、ッ!砕けた展示品の残骸踏みしめながら現れたのは……
『落ち着くッホ』
 ゴリラである。
「なに……!ゴリラじゃと!?」
「……認識しました。オブリビオン反応なし。データベースに照合……、アリスラビリンス世界固有種、『愉快な仲間』と推察されます」
『いかにもウッホ』
 はっきりと知性の輝きを瞳に宿したゴリラの剥製は静かに頷く。
『かつて隆盛をきわめたこの博物館も、今やオウガたちの狩場……嘆かわしいことウッホ』
『そのとおりホホ』
『やつらの暴虐にはもう耐えられないッキー!』
「なるほどのー……」
 いつのまにか現れていたオランウータンやチンパンジーの剥製がゴリラの側に立ち、頷いている。猿。ゴリラ。チンパンジー。彼らはどれも森の賢人と謳われる知性と博愛の心をもつどうぶつ達だ。
『ユーたちがオウガの奴らに対抗できる希望だということは知っているッキー』
『我々が協力するウッホ』
「なるほど。現地の協力者ということですね。これは助かります」
「うむ!サルやゴリラといえばすなわち野生動物。彼らの研ぎ澄まされた感覚はオウガどもの接近なども感知してくれるにちがいないぞ。アリスたちの捜索にも役立つやもしれぬな!」
『ホホーウ。実は既に1人保護しているホホ』
 手招くゴリラ。ゴリラに促され、物陰から少女が顔を見せた。
『ターザ。もう安心ウッホ。この方たちなら、こわいやつらをやっつけられるッホ』
「うん……」
 ターザと呼ばれた少女は恐る恐る頷く。アマミはにぃ、と笑ってその手をとった。
「僥倖!」
「はい。状況は非常に好転したと考えられます」
 エルはこの展示室を拠点にできると確信し、部屋の隅で座り情報の分析を開始した。インテグラに散開したマネギドローンたちはエルに情報を送り続けている。これによってエルはインテグラ内のマッピングを行いつつ、マネギドローンの反応がロストした場合は会敵したと類推し危険度の高い領域として指定。攻略に必要なデータを集めていく。
「よし、ではここを拠点に探索を続けるぞ!あとアレじゃな、さっきのネコつかえば他の猟兵との情報交換も容易にできそーじゃぞ」
「はい。ここを中継地点として利用しましょう。これで格段に効率化が測れます」
『我々愉快な仲間たちも協力するウッホ』
『ミーたちにできることならなんでもするッキー!』
「うむ、うむ!これはよいぞ。妾は今、無敵の友たちを得たり!」
 こうして、猟兵たちはインテグラ探索の拠点を構築することに成功する。さあ、任務を続行しよう。1人でもおおくのアリスを救うのだ!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

レパル・リオン
まかせてロアちゃん!あたしがアリスちゃんを守るわ!
(気合をためる)…ふんぬっ!【獣感覚】っ!さらに【スカイステッパー】!
この技で空を飛び回りながらアリスちゃんを捜索する作戦で行くわ!
アリスちゃんが散らかった場所を逃げ回ったなら、足跡や物を動かした痕跡が残ってるハズよ!それを強化した【視力】で発見、観察、追跡するわ!

アリスちゃんを見つけたら、小声で話しかけて優しく抱きしめるわ

「もう大丈夫。あたしがいるわ。」


草野・千秋
インテグラ……不思議な小世界ですね
古代生物の化石や彫像に文献
グリモア猟兵のロアさんがいたところも
こんなところだったのでしょうか
このようなところが血塗られてしまうなんて許せない
ともかく!
アリスの方をオウガになんかやらせません!
早く救って差し上げねば

WIZ
愉快な仲間さんにアリスの居場所を聞きます
あなたたち(愉快な仲間)は無事でいて良かった
情報収集、コミュ力、誘惑、優しさを使用
もしもし、アリスさんの居場所は知りませんか
女の子です、オウガに追われていた
中はだいぶ迷宮みたいな構造なので難しいかもしれませんが

情報が聞けたらお礼にお辞儀を
傷ついた展示品にシンフォニックキュア



 古代の生き物の化石や想像された復元品などが展示されていた古代生物史の展示室。大型の標本を展示する都合上、インテグラ内でもかなり広い部屋だ。
 博物館の目玉だったのだろうと思しき巨大な肉食恐竜の化石も今や見る影もない。半壊した頭蓋。へし折れた肋骨。砕けた前脚の骨が無残に転がるのみである。
 ここにもまた2人、猟兵が足を踏み入れたところであった。草野・千秋(f01504)とレパル・リオン(f15574)である。
「グリモア猟兵のロアさんがいたところも、こんなところだったのでしょうか」
「彼も『恐竜の化石』だったっけ?うんうん。きっとそうね!」
 であればきっとここに飛ばした彼も複雑な思いに違いない、とレパルはその胸中を想像する。
「まかせといてね、ロアちゃん。あたしがアリスちゃんたちを守るわ!」
 ぐっと拳を握りしめ、レパルは決意の表情で誓いをたてる。
「僕も同じ思いです。このようなところが血塗られてしまうなんて許せない……!アリスの方達も早く救って差し上げねば」
「うん。いきましょう!」
 他の猟兵との情報交換で得たデータによって、2人はインテグラ内の地理をある程度把握している。現在2人が訪れている古代生物史の展示室は、最新のデータではオウガの徘徊区域からは外れた比較的安全なエリアになっている。アリスたちが逃げ延びている可能性はあると踏んで、2人は室内を探索していた。
「とはいえ、闇雲に探しても手がかりが少ないですね」
「そしたら、あたしはちょっと視点を変えてみるわ」
 レパルはすぅ、と息を大きく吸い込んで気合を入れる。【獣感覚】。研ぎ澄ました五感が彼女の知覚能力を鋭敏化する。
「よいしょっと!」
 レパルは床面を蹴って跳ぶ。更に【スカイステッパー】を起動。ぴょいぴょいと虚空を蹴って上方へとのぼった。上から見下ろせば視野が広がり、隠れているアリスがいれば見つけやすいだろうという算段である。肉食恐竜の化石展示に使われていたと思しき支柱に取り付き、レパルは眼下に展示室内を捉える。
「もしもし、どなたか無事な方はいませんか」
 一方、千秋は室内を歩き回りながら化石や像に声をかける。愉快な仲間たちの協力を得られればアリス捜索の助けになると考えてのことである。
『ぐ、おお』
 唸るような声がした。千秋はその声の主を探す。
『ここだ』
 辿った先に千秋が見つけたのは、半壊した恐竜の頭骨化石だ。無事――とは少々言いがたいものの、まだ喋れる状態ではあった。
「愉快な仲間……の方ですね。ご無事……ではなさそうですが、お会いできてよかった」
『アリスをさがしているのだろう』
 頭骨化石は口を開く。
『この部屋の中に、1人逃げ込んできている』
「ああ、やっぱりいるのですね!」
『アア。……彼女を頼む』
 そこまでで頭骨化石は一旦言葉を切る。千秋は一度頭を下げてから、上方のレパルへと声をかけた。
「この部屋に1人いるそうです!」
「おっけー!ええと、隠れるとしたら……」
 レパルは視線を巡らせ、室内の状況を探る。アリスが散らかった場所を逃げ回ったなら、足跡や物を動かした痕跡が残っているはずだ。
「……ここかしら」
 ぴょい、と宙を舞うようにレパルは瓦礫の散らばる床に着地する。 脚が壊れ、倒れかかった展示台と壁の隙間の狭い空間。レパルは覗き込んだその中に小さな人影を見つける。
「だ……だれ……」
 怯える瞳。年頃はレパルと同じくらいだろうか。震える声が、レパルへと返った。レパルは微笑みながら手を差し伸べる。
「助けにきたの。……もう大丈夫。あたしがいるわ。わるいやつらはみんなやっつけて、あなたを守ってあげる」
「……ほん、とう?」
「はい、本当ですよ」
 レパルを追って、千秋もアリスの少女のもとへたどり着く。
「あたしたち、こう見えてもすっごく強いヒーローなんだから!」
「必ず君を守ります。一緒に行きましょう」
 2人の呼びかけにすこし逡巡してから、アリスの少女は物陰からゆっくりと這い出す。震える小さな身体を包み込むように、レパルは抱きしめた。
「こ、こわかっ、た。す、すごく、こわかったの……み、みんな、たべ、食べられ、て……う、うっ、ひっく」
「もう大丈夫。こわくないから、ね」
「……うん、うん」
 緊張の糸が切れたように、少女は大粒の涙をこぼす。レパルはそっと少女の髪を撫で、それから立ち上がった。
『彼女を、頼んだよ』
 その背中へと、頭骨化石が語りかける。千秋は静かに頷き、通路へ通じる扉へと視線を向けた。
「他の猟兵の皆さんが探索の拠点をつくっているそうです。そこへの合流を目指しましょう」
「わかったわ。敵に会わないように気をつけていかないとね。それじゃ、一緒に行きましょ!えーっと……そうだ、名前をきいてなかったわ!あたしはレパルよ!」
「僕は千秋です」
「……トゥーリア」
「うん。それじゃあ行こう、トゥーリア!」
 かくしてまた1人、猟兵たちはアリス能力者を保護することに成功した。
 2人の猟兵にアリス能力者の少女トゥーリアを加えた3人は、データを頼りに拠点となっている自然史の展示室を目指す。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

天乃河・光
実は隠密行動は得意じゃないんだ。ほら、私光ってるから。
他に出来ることもあるからね、私は直接の救助ではなくサポートに回ろう。

さ、オウガの諸君、残念ながら狩りの時間は終わりさ。
次は私との鬼ごっこと行こうじゃないか?

猟兵とはいえ私も『アリス』、オウガの進路に光をちらつかせれば追ってきてくれるんじゃないかな?
私の足じゃ、いずれは追いつかれてしまうだろうけど、それは対策済みさ。
他の猟兵や、愉快な仲間たちを認識しておけば、いざという時はそれを目印に短距離の転移が出来るからね。

オウガの注意を引き付けて、出来るだけ多くのアリスが逃げられるように
さあ、走るよ!



 天乃河・光(f19385)は王子様である。
 立ち居振る舞いは輝きに満ち、その微笑みは眩しい。彼女の通った後には淡い燐光が残りあまねく闇を照らし出すだろう。
「だから隠密行動は得意じゃないんだ」
 と、光は冷静に自己分析を行い、自ら適材適所を考えポジションを仲間たちに申し出た。
『危険すぎるッキー!』
『考え直す気はないウッホ?』
「うん。これは私にしかできないことだからね」
 夜空を映し出したかのような美しい濃紺のマントを翻し、確かな足取りで彼女は誇り高く向かう。
「さあ、輝いていこうか!」
『ご武運をッホホーウ!』
 猟兵たちが拠点として定めた自然史展示室から、愉快な仲間たちに見送られ光は歩き出す。背筋を伸ばし、行儀良い姿勢で。誰に憚ることもなく、崩壊したインテグラの回廊を進んだ。
 マッピングを行なっていた猟兵から預かったデータで、敵が多く徘徊しているポイントはある程度把握できていた。
 光はそこに向かう。
 彼女は血迷ったわけでもなければ自殺志願でもない。力なきアリスたちを守るため、彼女は敢えて危険に向かっているのだ。
 そう、即ち囮である。
 彼女自身もまたアリス適合者である光は、自分自身の持つ輝きが敵の目を惹きつけるのに最適だと判断したのだ。彼女は堂々と闊歩する。
「るろろろろろ」
「るおおおおおおおおん」
「ああああああああああ。あああ、ああああありいいいいぃぃぃぃすうううううううぅぅぅ」
「おおぉおぉん」
 そして、敵地に差し掛かった。
「さ、オウガの諸君、残念ながら狩りの時間は終わりさ」
 光はわざと目立つようにマントを翻し、きらきらと輝きを振り撒く。
 いもむしに似たオウガたちはたちまちその光に惹きつけられた。
「次は私との鬼ごっこと行こうじゃないか?」
 そして光は走り出す。ずるり、ずるり。おぞましく這う音をたてながら、いもむしたちは光を追い始めた。
「おおおおおおおおおお」
「るろろろろろろろろろ」
「あああああああありいいいいいいいすううううううう」
「……よし、ついてきてるね」
 光は綺麗なフォームで疾走しつつ、時々振り返りながら敵の様子を見遣る。追いつかれてもいけないが、振り切ってもいけない。今の私の仕事は1秒でも長く時間を稼ぐことだ。数キロ分ほど走り疲労を訴え始めた足を軽く叩いて言うことを聞かせる。
 走れ走れ。立ち止まるな!オウガの注意を引き付けて、出来るだけ多くのアリスが逃げられるように。仲間たちにそのための時間を作らせるように!
「は、……は」
 だが、彼女は猟兵といえど人間だ。累積した疲労は彼女のパフォーマンスを否応なく下降させ、速度を落とし始める。
「ああああああああおおおおおおおおお」
「ねっ かじらせて ねっ ちょっとだけ ちょっとだけでいいから ねっ かじらせてかじらせてかじらせてかじらせて」
「ああああああありいいぃぃぃいいいすうううぅうううぅ」
「……そろそろ頃合いだね」
 背後は通路を埋めつくさんばかりのいもむしの群れ。先頭のいもむしのおぞましく蠢く口腔は既に光の背後1メートルの距離にある。
 そこで光が逃げ込んだのは通路の行き止まりである。走った先には壁があるだけだ。光はそこに全力で疾走!鬼さんこちら、とオウガの群れを煽り――
「それじゃ、さよなら!」
 綺羅星の輝きとともに消え失せた!
「ああああああああああああ!!!」
「おおおおおおおおお」
「つぶっ つぶれ つ ぶえっ」
 殺到したオウガの群れは誰もいない壁に向かって激突!更に後続のいもむしたちも勢い余って押し込む!先頭のいもむしはオウガ数十匹分のパワーで押し潰されたちまち破裂!圧死!インテグラの景色を汚らしい体液の色で染める地獄絵図!その上、彼らにとっては不運なことに猟兵の仕掛けていた爆弾トラップまでも起動させてしまったのである。爆発!轟音に混ざっていもむしたちの悲鳴が響き渡った!
 
 一方、光は最初の拠点である自然史展示室に帰還を果たしていた。
 ユーベルコード、【銀河の王子様】。星の輝きとともに、仲間のもとへ転移する能力である。戻るべき拠点に愉快な仲間たちがいるのは僥倖だった。彼らが帰還地点のマーカーとなり、『跳んで』くることが容易化したのである。
『お帰りなさいウッホ』
『いつ帰ってくるかハラハラしたッキー!』
「ははは。心配させてすまなかったね。君たちもご苦労だった」
 光は☆を振りまきながら愉快な仲間たちをねぎらう。そして僅かばかりの休息を取ると、再び立ち上がった。
「それじゃあ、また行ってくるよ」
『『『ええー!?』』』
 そう。まだ徘徊するオウガは多く、猟兵たちの救出活動は続いている。
 光は誇り高き王子様として、それを座して待つわけにはいかないのだ。気高きノブレス・オブリージュの心が許さない。
「さあ、走るよ!」
 だから、光は行く!

成功 🔵​🔵​🔴​

荒・烏鵠
@WIZ
抜き足差し足忍び足ッてね。ソーッと隠れつつ、耳をそばだててヒトの声を探す。分厚い雪の下を走るネズミの足音を聞き取れる、キツネの聴力(聞き耳)ナメちゃいけねーぜ。
見つけたらソーッと近づいて……先に古杣に頼んで防音(音属性+拠点防御)しておいたほうがイイな。笑顔でひそひそ話しかけつつ、ユベコで傷を治したろう。
コミュ力活かして落ち着かせて、あとァまたソーッと逃げ隠れ。愉快な仲間ンなってる美術品見かけたらユベコで修復しつつ味方になってもらいましょ。
攻撃なンざゼッテーしねェ。風と属性札で体臭も足音も声も隠して、逃げて(聞き耳+目立たない+逃げ足)やりましょーや!


エダ・サルファー
博物館でかくれんぼってのは楽しそうだけど、状況を考えるとねぇ。
まあ、鬼に見つかる前に見つけてあげないとね。

む、大理石の台に乗った、石膏でできた天使の像が動いている……?
あれは愉快な仲間ってことかな?
丁度良いや。アリスを見なかったかとか聞いてみようっと。
うん?「夜になるとここは冷えるから、服を貸すか靴下を片っぽくれ」って?
これって、無理めな選択肢と多少簡単な選択肢を掲げて、後者を選ばせるっていうアレかな?
つまりこいつ、悪質な靴下狩人なのでは。
まあいいや、替えの靴下が荷物に入ってるからそれを……
履いてるやつをよこせ?
おのれ変態チックな。
しょうがない、履いてるのをあげるからアリス探すの手伝ってくれ。


非在・究子
な、なかなか、雰囲気のある、フィールドだ、な。
こ、今回は、探索・救援系の、ミッション、か。
じ、時間との勝負に、なるか。な、なかなか、厄介なんだよ、な。
た、助けられずに、ミッション失敗は、避けたいし、さっ、さっさと、見つけて、保護し(スコアを稼が)なくちゃ、な。

(彼女の主観的にはそう見えているゲーム画面の様な視界の中、右下にあるマップに意識を集中し)
ゆ、UCで、マップ機能を、強化、だ。
しゅ、周辺の情報を、読み込む、ぞ。
(広がったマップに猟兵を示す🔵と敵を示す🔴、そして、緑丸、救出対象が表示される)
ふむ……こ、こんな感じ、か。
ま、まずは、敵を避けつつ、救出対象のNPCの、とこまで、行くと、するか。



「こ、今回は、探索・救援系の、ミッション、か」
 非在・究子(f14901)の視野には電子的解釈をなされた画面が表示される。電脳空間育ちの彼女の視野を通せばいかなる場所であっても多くの情報がポップしている。視界の右下には四角く区切られたマップが表示されていた。他の猟兵からデータを受け取れたのは幸いだった。ドローンの情報集積に乗らせてもらえば彼女の行動は飛躍的に効率化する。お陰で広域エリアサーチを行う【マップ機能】は好調だ。
「……そっちはどんな感じ?」
 荒・烏鵠(f14500)は敵を警戒しながら小さな声で囁くように究子に尋ねる。烏鵠自身も聞き耳をたてながら廊下の先の気配を探っていたが、今のところは安全そうだ。しかし、石橋は叩いて渡る主義である。念には念を、と烏鵠は究子の様子を伺った。
「だ、だい、じょうぶ……し、しかし、壊れた、博物館、とは……な、なかなか、雰囲気のある、フィールドだ、な。」
 究子の視界に映し出されたマップデータには猟兵を青、敵性を赤い光点として表示させている。救出対象のアリスは緑の光点だ。彼女の把握している状況では、この付近には敵の反応はなかった。
「ふむ……こ、こんな感じ、か。いまは、へいきそう、だ」
「そーか。でも、注意するに越したこた無ェ……」
「そ、それ、は、同感……け、けど、じ、時間との勝負。もたもた、し、してたら、アリ、スたちが、つか、まる」
「……たしかにな」
 烏鵠は眉根を寄せながら頷く。慎重になりすぎて時間をかけるのも犠牲が出るだけだ。
「な、なかなか、厄介なんだよ、な。た、助けられずに、ミッション失敗は、避けたいし……」
 スコアが伸びないのは困る、とはまあ、生死のかかっている場では適切な発言ではないので口に出すのは一旦止めておき。慎重さを保ちつつ、やや急ぎ足で究子と烏鵠は通路を進む。

『ここは、寒い……』
「うーん、そうなのか」
『夜になると、ここは寒い……』
「なるほど」
『君の服を貸してくれる?』
「それはちょっと。ほら、私見ての通りの薄着だろう?大きさも合わないだろうし、さすがにここで全裸にはなれないっていうか……」
「何してンスか」
 2人が進んだ先で見つけたのは、天使の彫像と妙な問答をしているエダ・サルファー(f05398)である。
「おやー。烏鵠に……究子じゃないか。2人も来てたんだね」
「ど、どう、も」
「あれ、2人とも知り合い?」
「ああ、この間の仕事でね」
「か、歓談の、時間は、ない、ぞ」
「そうだった」
「それで、エダのねーさんは何を」
「それがね」
 かくかくしかじか。
 ……即ち、この『ルネッサンス美術史』の展示室において愉快な仲間たちの一員である天使像とコンタクトを取れたのはいいが、なかなか話が通じなくて困っている、というところである。
『それなら、くつしたを片っぽ……』
「靴下」
「特殊性癖かよ」
「これって、無理めな選択肢と多少簡単な選択肢を掲げて、後者を選ばせるっていうアレかな?」
 仕方がないな、と緩く首を振りながらエダは荷物の中を探り、替えの靴下を取り出そうとし
『履いてるやつで』
「こいつ悪質な靴下狩人(ソックスハンター)なのでは?」
「ど、同感……」
「愉快すぎんだろこの仲間。いや、まあでも、協力してくれる……っぽいし……」
「しょうがない。履いてるのを貸してやるからアリス探しを手伝ってくれ」
 はーやれやれ、と肩をすくめながらエダは渋々靴下を脱ぎ出した。
「アー……じゃあオレもご機嫌とりしとくかね……煌神に帰依し奉る。契約に基づき、我に癒し手を貸し給え……」
 烏鵠は印を結び術式を唱える。【13術式:踊り龍】。龍の姿を模した、ものをなおす力を持った炎である。なるほど見れば天使像は片腕と片翼を失い、全身がくまなく擦れてひび割れていた。舞う龍炎が天使像に寄り添うように舞い、その傷を修復する。
『……あたたかい』
「そいつはよかった」
「そ、それで、アリス、の居場所は……?」
『うん』
 エダの靴下と烏鵠の術でおおいに癒された天使像は優美な微笑みをたたえながら、通路の先を指し示す。
『あちらの、先にいるはずだ』
「ありがとう!それじゃあサクッと行って保護しようか!」
「う、うん。こっちの、マップデータとも、矛盾、しない……」
 究子はマップデータを再確認。なるほどたしかに示された先には緑の光点が確認できた。……しかし、どうじに赤い光点もいくつか近くを徘徊しているのが確認できる。注意しながら進まなければ敵を刺激してしまうだろう。
「そこはオレに任せてくれ。古杣、たのむぜェ」
 烏鵠は上着の内側をぽんと叩く。古杣とは彼に協力する妖怪のひとつだ。音を操る力があり、今回は逆に自分たちの発する音を制御し、隠密行動に役立てようという魂胆である。
「いいかー、絶対ェ攻撃しない。静かにしずかーに行く。2人ともいいね?エダのねーさんは力で解決しない」
「あっははは、わかってるって!」
「う、うん。黙ってる、のは、得意」
 3人は天使像に別れを告げ、静かな忍び足で進む。究子のマップに表示された赤と緑の光点が頼りだ
 敵の気配を避けながら、3人は通路を進んだ先の部屋に差し掛かる。エウロー文化圏に残された石像を集めた美術史の展示室だ。『思索に耽る男』や『腕のない女神』などが静かに佇んでいる。その部屋の片隅で身を寄せ会うように、2人のアリスを猟兵たちは見つけた。小さな男の子と、おんなのこだ。
「だ、だれだ……!」
「こわい、……こわいよ」
「あー、待って待って。オレら、敵じゃないから。な?」
 烏鵠は膝をついて微笑みかける。コミュ力強者の技術の出しどころだ。彼はつとめて柔らかい表情でアリスの2人へと語りかけた。
「そうだよ、私たちはみんなを助けに来たんだ」
「う、うん。そ、そう……他の、子たち、も、アタシたちの、なかまが、助けにいってる」
「ほ、……本当?」
「本当さ。こんなにかっこいいお兄ちゃんが、きみらをとって食うよーに見える?」
 手を差し伸べながら烏鵠はもう一度笑いかけた。
 2人のアリスは警戒しながらも――女の子の方のアリスが、その手を取る。
「ルネ、やめろ!ぼ、ぼくたちをだまそうとしてるのかも……」
「でも、おにいちゃん……」
「大丈夫」
 反発する男の子のアリスにエダは視線を合わせ、彼女もまた手を差し伸べる。
「信じて」
 そして、わずかな逡巡を置いて。
 彼は、エダの手をとった。
「ぐ、ふふ。よ、よし。いっぺんに2人……いい、スコアが、狙えそうだ」
 その裏で、究子は静かにほくそ笑んでいた。

「それじゃ、行くぜ。敵に見つからないように、静かに。静かーにな!」
「きゅい」
「だ、だいじょう、ぶ。マップは、こっちで、把握してる……」
「もし見つかったら私がなんとかするよ」
 烏鵠は先程呼び出した古杣と、更に風精のシナトくんに依頼をする。音を消し、更にシナトくんの力で風の流れを制御することによって気配や体臭、それに声が敵に感知されるのを最小限に止めようとしているのだ。また、究子はマップ上の赤い光点に警戒。更にエダはしんがりを務め万が一に備える。
 万全の体制のもと、3人の猟兵と2人のアリスはインテグラを進んでゆく。
 行き先は、他の猟兵たちが拠点として定めた自然史展示室だ。そこにたどり着けば、他の猟兵や他に保護されたアリスたちとも合流できるだろう。
 ――そして救うべきアリスたちを救い、猟兵たちの戦力が集まったとき。
 その時こそ、この世界を支配するオウガたちへと、叛旗を翻す時なのである。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​




第2章 集団戦 『グリードキャタピラー』

POW   :    キャタピラーファング
【無数の歯の生えた大口で噛みつくこと】による超高速かつ大威力の一撃を放つ。ただし、自身から30cm以内の対象にしか使えない。
SPD   :    脱皮突進
【無数の足を蠢かせての突進】による素早い一撃を放つ。また、【脱皮する】等で身軽になれば、更に加速する。
WIZ   :    汚らわしき蹂躙
全身を【表皮から溢れる粘液】で覆い、自身が敵から受けた【敵意や嫌悪の感情】に比例した戦闘力増強と、生命力吸収能力を得る。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

「ぎちぎちぎちぎち」
「ああああああああああああああ」
「おおおおなかああああがああああああすきまああああああしいいいいたあああああ」
「るおおおおおおおおおん」
「るろろろろろろろろ」
 喰らうべき餌であるアリスたちはどこへ行ったのか。オウガの群れは狂乱する。
「あちらですか」
「いません」
「どちらですか」
「むこうではないですか」
「おおおおおおおおおんんんんん」
 腹を空かせたいもむしどもは、醜く身を捩りながら餌場を探し這い回る。
 猟兵たちの選択肢はふたつだ。
 敵が猟兵たちの拠点に気づいて攻め寄せたところを迎撃するか、あるいは、こちらから打って出るか。

「……ぼくたちにも、なにかできることがあれば」
「うん。あたし、やるよ」
「……うん」
 猟兵たちが救出したアリス適合者の子どもたちは、勇気を振り絞り助力を申し出る。君たちは彼らの手を借りてもいいし、安全のために隠れているよう言い聞かせてもいい。

 そして、時計の針は進む。さあ、オウガたちとの戦いの時間だ。
 ……蹴散らしてやれ!
ティナ・ルウ
ぐるるる……がぁっ!!(威嚇)
敵に自慢の鋭い爪(グルメツール)と牙で獣のように襲いかかり、その肉を爪で引き裂き、牙で食いちぎります。(大食いと部位破壊の技能を使います)
敵の肉を食べて腹が膨れたところでフードファイト・ワイルドモードを使用し、パワーアップしてさらに激しく攻撃します。
芋虫だろうが餌にありつけず、腹の減ったティナから見ればただの餌。
容赦なく、食らいつきます。
弱肉強食。今度はティナの餌になってもらいます。


荒・烏鵠
@WIZ
ンー、オレサマとしてはニンゲン脆いから隠れててほしーケドも。せっかくヤル気になってるワケだしなァ?
ムチャだけはせンよーに、なんか持ってるらしいユベコ使って戦っておくれ。補佐はすっから。具体的には天使の彫像を盾にしたりゴリラを盾にしたりすっから。
気配ころして、危なくなったらアリス抱えてぱっとコーゲキ避けるぜ。ちくちくユベコで相手の『空腹』を消したりしてスキ作らァ。興味はゼッテー引けるし。コッチ食う気満々なんだモンよ。
こーげきは他のヒトに任せて、オレはコソコソ、アリスを助けますよー。行くぞー、シナト!


神羅・アマミ
アリスたちがその気なら、そこは囮をお願いするのも一つの手だと妾は考える。
拠点があり、インテグラなら勝手知ったるゴリラ軍団や『操演』による蜘蛛型ドローン・オクタビアスくんを護衛としてつければ、少なくとも形は包囲網や挟み撃ちを作れることになるのー。

奴らが食欲のまま動く知能の低い怪物ならば、アリスは下手に逃げ隠れさせるより戦場にいる全員が視認できる位置取りをした方が御しやすかろうというもの。

アリスたちとて、ただ庇護されるだけの立場には苛立ちを覚えとるはず。
ユーベルコードは自らの戦う意志や生存本能に促され覚醒すると聞いたこともある。
戦を通じ、彼女たちが新たな力に目覚める可能性にも賭けようではないか!



「おおおおおおおおおん」
「おにく」
「ありす ありす おいしい ありす」
「るろろろろろろろ」
 ずるりずるり。汚らわしく這い回るオウガの群れはインテグラを我が物顔で闊歩する。
 向かう先は自然史展示室だ。人間の匂いを嗅ぎつけたキャタピラーたちはおぞましい声をあげながら本能的に餌場がそちらであることを察し、退去して押し寄せる!
「ぐるるる……がぁっ!!」
 咆哮!瓦礫を蹴立てるようにして飛び出す姿!通路へと獣のように駆けたのはティナ・ルウ(f19073)である!
「ありす?」
「においがちがいます」
「おおおおおおん」
「でもおいしそうです」
「たべたいです」
 その姿を認識したオウガの群れは戦闘態勢に入る。しかし遅いッ!
「ぐるるおおおおおおおおッ!!!」
 爪撃!鋭く薙いだ爪先が先頭のキャタピラーの肉を裂き、暗褐色の体液をぶちまける。ティナはさらにその傷口に牙を突き立て、抉り取るように喰い千切る。
「ぎいいいいいいいいいいい」
「ああああああ」
「ころしたああああああああああ」
「ころされたああああああああ」
 がち。
 ティナはキャタピラーの体液に口元を汚しながら、通路に蠢く餌どもを睥睨した。
「おー、一番槍をとられてしまったな」
「いやまあ、オレとしてはオレら猟兵が目立って敵を引き付けられるーってんならそれでいいと思うけど……」
「……」
 一拍遅れて到着したのは神羅・アマミ(f00889)と荒・烏鵠(f14500)。それにアマミが自然史展示室で保護したアリス適合者の少女、ターザである。
「いや、アリスたちがその気なら、そこは囮をお願いするのも一つの手だと妾は考える」
「ンー、ニンゲン脆いから隠れててほしーケドも……」
「どうじゃ、ターザ」
「……」
 ぎり。
 歯を嚙み鳴らす音がした。
 それは感情の発露だ。怒りであり、屈辱であり、そしてそれを雪ぐという、紛れも無い決意の証だ。
「わ、たしは……餌じゃ、ない」
 アリス適合者、ターザの瞳が鋭く輝いた。
「じゃろ。ただ守られるだけじゃあ、腹も立つというものよ」
「わかったわかった。せっかくヤル気になってるワケだしなァ?……じゃあアマミの姐御。オレはこの子の補佐に回るぜ」
「むろん妾“たち”も手を貸すぞ。なあ?」
『勿論ウッホ』
『奴らに喰われたアリスたちの無念を晴らすときがきたッキー!』
 そこに加わったのは自然史展示室で猟兵達に協力を申し出た愉快な仲間たちである。
「……ん」
 そして、ターザは短く息を吸い込み。
「アァァァア!!アァァァァァァ!!!」
 激しい咆哮とともに走り出した。
「おお、いい声しておる」
 ユーベルコードは自らの戦う意志や生存本能に促され覚醒する、とアマミは知っている。アリス適合者・ターザもまたその意志を芽生えさせたのであろう。ターザは敵の蠢く通路の中へ飛び込むと、ティナと視線を交わしながらキャタピラーに向けて腕を伸ばした!
「あああああありいいいいいいすうううう」
「があああああうううううううううッ!!」
「アアアアアアアッ!!」
 反撃に転じようとするキャタピラーの眼球をティナが抉り出すように爪を突き入れ牽制!じゅうぶんに血肉を食らったティナの【フードファイト・ワイルドモード】は存分に機能し、その技は一撃で致命的なダメージをオブリビオンに与える。続けざまにターザはキャタピラーの触角をぐいと掴み、力任せに引きずり回した!【びったんびったん】!!ターザはそのまま掴んだキャタピラーを鈍器めいて振り回し別のキャタピラーにぶつける!
「ああああああああいいいいいいいいいいい」
 しかし、それを掻い潜りながら身体をくねらせ、側面よりキャタピラーが迫る!
「ほほー。思ったより元気じゃな!しかーし、死角に注意じゃぞ!」
 ここでアマミが動いた。正確にはアマミの自律式蜘蛛型ドローン、オクタビアスくんである。【操演】!鋼鉄の腕がキャタピラーを叩き押し留める!
「ちょっと敵の勢いがつえーな……!暝神に帰依し奉る。契約に基づき、我に調停者を預けよ」
 烏鵠は術式を構築し、ユーベルコードを起動する。【十三術式:太平羊】!花で彩られた羊の姿がふわりと浮かび上がる。
「はいはい!鬼さんこちら、っと!」
『ウッホホホーイ!』
『ユーの喧嘩はミーたちが買ってやるッキー!』
 そして烏鵠と愉快な仲間たちはキャタピラーの群れを挑発するように声をあげる!
「なんですか」
「ありすではありません」
「でもじゃまです」
「ああああああああううううううううう」
 烏鵠の挑発に乗ったキャタピラーたちは矛先を変え走り出す!無数の足を蠢かせながらの高速突撃!
「たべちゃいまぎゅぶっ」
 だが、その進路に割り込んだオクタビアスくんがぶつかり激突を止める!止まったところにティナとターザが襲いかかりとどめを刺した。
「ぜ、……」
 だが、ここでターザの呼吸が乱れる。彼女は猟兵ではないため、ユーベルコードを用いた戦闘に身体がついてきていないのだ。
「引き時じゃな」
「だな!」
『わかったウッホ!』
 烏鵠はぱっと戦場に割り込むと、疲弊したターザを抱えながらオクタビアスくんに掴まる。そして愉快な仲間たちとともに後退を開始!
「そっちのお嬢さんも一回退くぞ!」
「ぐるる……」
 ティナは闘争心に後ろ髪を引かれながらも、猟兵たちが退いてゆく様子を察して状況を把握。退却に加わる。
 かくしてインテグラ内におけるオウガ駆逐戦の口火は切られたのである。
「あああああああありいいいいいいいいいすううううううううう」
「こおおおおおおおろおおおおおおしいいいいいいたあああああああああああ」
「たべさせて たべさせて たべさせて」
 しかし敵の数は多い。ここまでの交錯で多くのキャタピラーが汚らしい肉片と化したが、それでも驚異的な数がひしめいている。
 ……戦いは、まだこれからだ!

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

草野・千秋
はらぺこあおむしなんて絵本がUDCアースにはありますが
今回はそんなメルヘンでもなさそうで油断は出来ないですね
敵さんはお腹が空いてるようですが
アリスの方々をやらせはしませんよ!
(変身)
真・ダムナーティオー推参!

敵が攻め寄せてきた所を迎撃します

戦闘前にUCで防御力アップ
信じ認めたもの
それはアリスのみなさんも、ですよ
攻撃は第六感で見切りつつ
2回攻撃を主軸にして戦う
怪力と投擲を利用して
敵を地面に叩きつけたりも
ちょっと触り心地良くないですけどね!
アリスの方々や冒険仲間さんが攻撃されそうなら
盾受け、かばう、激痛耐性でお守りしますよ
この程度の傷、なんの!


エル・クーゴー
●POW



敵性体、多数の接近を感知しました
当機はこれより自然史展示室の陣地防御戦にシフトします

ユーベルコード【ワイルドドライブ】
(銃砲火器群をモリモリ湧き出させる)

これより、敵性の完全沈黙まで――ワイルドハントを開始します


・愉快な仲間達に、通路に対しバリケードの構築を依頼

・アリス達にも助力を依頼
バリケードの間隙を通して銃口を伸ばす形で固定銃座を誂え、操縦を依頼
アリス各人の腕力や射撃適性に併せ、発射時初速(吹き飛ばし)・射程(スナイパー)・照準性能(誘導弾)等、銃座をそれぞれいい感じに【武器改造】

・モチ自身も撃つ


30cm以下の接近さえ許さなければ安全です
落ち付いて照準を定め、対象を無力化して下さい



「おおおおおあああああああああああ」
「来ましたね」
「はい」
 自然史展示室入り口前。
 エル・クーゴー(f04770)と草野・千秋(f01504)は戦闘準備を整える。
「敵性体、多数の接近を感知しました。当機はこれより自然史展示室の陣地防御戦にシフトします」
『バリケードの準備も完了したウッホ!』
『ホホーウ。いつでも迎え打てるホホ』
 エルは館内に散らばる瓦礫を集め、愉快な仲間たちとともに土嚢めいた銃座を構築していた。既にいくつもの銃砲が展開されている。【ワイルドドライブ】だ。
「ええ。敵さんはお腹が空いてるようですが、アリスの方々をやらせはしませんよ!」
 千秋は既に戦闘形態へと変化している。鋼鉄に身を包んだ戦士ダムナーティオーの姿だ。準備は万全である。
「や……やります」
 恐怖を押し殺しながらも、2人とともに立つのはアリス適合者の1人、トゥーリアである。
「照合。アリス適合者、トゥーリアですね」
 銃座にて、エルは彼女に声をかけた。
「は、はい」
「心配しなくても大丈夫ですよ。僕が必ずお守りします」
 千秋もまた笑いかけ、前へと歩み出る。通路の向こうからおぞましい唸りが聞こえた。間も無く敵はここに到着するだろう。
「は、……は……」
「呼吸・脈拍。心拍数および体温の上昇が確認されました。体調が優れないようでしたら、後退を提案します」
 エルはトゥーリアの表情を見やり、更に声をかける。しかし、彼女はゆっくりと首を横に振った。
「まもられる、だけじゃ……いやだ」
「了解しました。……では、当機が支援します。まずは銃座についてください」
 バリケード上に設置された機関砲の銃座へ、エルはトゥーリアを導く。
「銃を撃ったことは」
「……ない、です」
「想定の範囲内です」
 エルはトゥーリアの手をとり機関砲のグリップを握らせながら、銃声で耳がやられないようにとヘッドホンを渡す。しっかり両手で構えて、照星の先に敵を捉えて、引き金を引く。……フレンドリーファイアにだけは注意してください、と言い添え。
「僕に当てないでくださいよ」
「善処します」
 エルは頷いた。
 アリス適合者トゥーリアは、静かに深呼吸。……そして、通路の先に現れる敵の姿を捉える!
「ああああああああああいいいいいいいいいいい」
「おにくおにくおにく」
「おおおおおおなかあああああすきまあああああしたあああああ」
「るろろろろろろろろろろ」
「では、手筈通り!僕が前に出ますから、よろしくお願いします!」
「はい」
「【Code:Wild-Drive】。シークエンス開始。これより、敵性の完全沈黙まで――ワイルドハントを開始します」
 エル・クーゴーは戦闘用のプログラムを起動する。意識を完全に戦闘へと最適化した状態へとシフト。ファイアコントロール・システム、アクティベイト。各銃座、コンディション・オールグリーン。敵性存在の接近を確認。迎撃作戦開始。
 まず千秋が迎撃のため床を蹴立て前に出る。
「ダムナーティオー推参!」
 鋭い叫びとともに、打ち出した拳が最前に迫っていたキャタピラーの頭部をべしゃと潰した。
「おなかをすかせたあおむしの絵本なんてのがありましたが……」
 暗褐色の体液に汚れた腕を引き抜きながら、千秋は次の敵に向かう。があ。無数に並んだ牙の列をバックステップで躱し反撃の蹴り足!ばあん!虫の顔面が爆ぜる!
「あああああああああああ」
「こおおおおおろおおおおおしたああああああ」
「ころしたあああああああ」
「殺したのは……おまえたちだ!」
 ぎり、と歯を嚙み鳴らす音がした。
 アリス適合者、トゥーリアの瞳には炎が灯る。それは恐怖から転じた圧倒的な怒りが生み出す赤黒い火だ。その声と同時に、周囲の空間が揺らいだ。ぱき、ぱき、ぱき――空気が凍りつくような音。そして、それと同時にガラスの空間が展開されてゆく。【ガラスのラビリンス】。アリス適合者トゥーリアのユーベルコードの発現である。
「引き金を……引く!」
「伏せてください」
「おっと……!」
 千秋が身を伏せる。ギャリギャリギャリギャリギャリギャリ!!凄まじい轟音と閃光!マズルフラッシュ!秒間200発の速度で走る10ミリ徹甲弾の嵐が今しがた千秋の上半身があった空間を通過していもむしの群れに命中!
「ろろろろろろろおおおおおおん」
「あああああああいいいいいいいいいたいいいいいいいい」
「やめてください やめてください しんでしまいます」
「どうしてええええええええこおおおんなことおおおお」
 パーティに浮かれてペンキをぶちまけたように、キャタピラーの体液がパワーガラスの迷宮を染め上げる。逃げ道はない。上下左右をガラスに囲まれ逃げることのできない中に、トゥーリアの機関砲は火を噴きキャタピラーたちを次々に絶命させてゆく!
「今回はそんなメルヘンでもなさそうで……」
 千秋はすぐそばを通過していく弾丸の群れを感じながら肩を竦めた。
「接近さえ許さなければ安全です。落ち付いて照準を定め、対象を無力化して下さい」
「はい!」
「冷静さを欠いてはいけません。……弾切れです。リロードを行いましょう。前衛、敵の進行抑制をお願いします」
「わかっています!」
 エルは冷静にトゥーリアを補佐しつつ、戦場全体を制御する。戦況は優勢を維持できている。砲撃の止む再装填の時間を千秋が守り、リロードが終わり次第に再び後方から砲戦を行う。現状、ここにおける防衛線は完全なかたちで機能していた。
 しかし、敵の数はまだ多く、増援は次々に押し寄せる!戦線はまだ続く!

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

メルノ・ネッケル
……分かった。
ラームスくんの出来ること、それでうちらを助けてくれ。
約束もしたでな……必ず、うちらがキミらを守り抜く。
手を貸してくれるなら、安心して力を振るってな。

……それじゃあ、やりますか!
拠点を落とされるのはマズい、迎撃に回ろか。
【2回攻撃】、手数を稼いだ銃撃で押し留める!
仕掛けるまではラームスくんの近くにいる方がええな。いざとなれば、無理矢理にでも駆け付けて庇う!

しかし、数が多い上凶暴……いずれ素で撃つだけじゃあ抑えきれなくなってくるな。
そこが仕掛け所、纏めて片付ける!

悪いが、アンタらに食わせるもんはこれしかあらへんで。
行くでぇ……跳躍、照準!
『狐の嫁入り』、鉛と熱で我慢せぇ!!


エダ・サルファー
うむ、その勇気、素晴らしい!
これを意気に感じなきゃ、女が廃るってもんよ!
とはいえ彼らが捕まっちゃ元も子もないので、そのへんは注意しないとね。

まずは賦活術をアリスのみんなに使って、身体能力の底上げをしておくよ。
で、基本的にはある程度距離をとって、猟兵と芋虫の戦いをよく観察してもらおう。
補助系や回復系のユーベルコードを使える子は、適宜それを猟兵やアリスに使ってもらおう。
攻撃系のユーベルコードが使える子は、適当に使ってちゃ危ないと思うんで、猟兵が相手してる芋虫にタイミングを見て打ち込んでもらおうかな?

私はアリスたちの護衛とか戦術の提案とかしとこうと思うよ。
他にやりたい人がいるなら芋虫殴りに行くけど。



 自然史展示室、また別の扉前の通路にて。
「ええんか。本当に行く気なんか?」
 メルノ・ネッケル(f09332)は、敵の気配が迫りつつある通路でアリス適合者、ラームス少年に問いかけた。
「うん。……助けてもらった分の恩は、返さないと」
 震えを抑えながら、彼はその先を見据える。おおおおん。怪物どものおぞましい声が響いた。
「怖くても、立ち向かうんだ」
「……分かった。ラームスくんの出来ること、それでうちらを助けてくれ」
 メルノは頷きながら、その背をぽんと叩いて勇気付ける。
「大丈夫、死なせたりせぇへん。必ずうちらが守ったる。……約束もしたでな」
「うん。……飴ちゃん、ありがとう。美味しかった」
 少年は静かに息を吐き出し、そして戦場へと向かう。
「うむ、その勇気、素晴らしい!」
 どーん。その少年の小さな背中を叩くのはエダ・サルファー(f05398)である。彼女はこういうシチュエーションに弱い。エダは気風のいい女だ。これを意気に感じなきゃ、女が廃るってもんよ!
「どれ、ちょいと失礼」
「うわっ!?」
「なんや!?」
 突然素っ頓狂な声をあげたラームス少年の様子を見やってメルノも困惑する。しかし心配することはない。【ドワーフ式賦活術】だ。エダの腕を伝わって少年の肉体に注がれるドワーフちからは彼の身の裡に眠る力を呼び起こす。
「大丈夫大丈夫。ちょっとしたおまじないさ」
「あ、うん。……なんだか身体が軽い、ような」
「そっか。そんなら心配いらんかな……それじゃ、うちらが助けるからな。必ず、うちらがキミらを守り抜く。安心して力を振るってな」
「うん」
「そろそろかな。お出ましだよ、2人とも!」
「ああ!……それじゃあ、やりますか!」
「……うん!」
 メルノは二挺の銃を抜き放ち、エダは拳を構える。ラームス少年は短く息を吐き出した。
「るおおおおおおおおおおおおん」
「ごおおおおおおはんんんんん」
 それと同時に、通路にひしめき合いながらキャタピラーの群れが殺到!空腹に呻く無数のオウガたちは咆哮とともに押し寄せる!
「来たね!一対一で相手はさせられない!連携して向かうよ!」
「せやな!」
 メルノは引き金を引き正面から銃弾を叩き込む!怯んだところをエダが掴みかかり壁に放り投げ叩きつけた!
「……僕は」
 アリス適合者、ラームスは目を見開き拳を握る。
【アリスナイト・イマジネイション】。ユーベルコードの発露だ。金色の光が生まれ、その身を包む。
「無力ではいられない、ッ!!」
 その手には王笏。金色に輝く長柄の杖が握られる。黄金の鎧を纏いて走るアリスナイト・ラームスは長杖を振り抜き、キャタピラーの顔面を叩き潰した。
「おおおおおおッ!」
「やるじゃないか、彼!」
「けど、死角は守ったらんとな!」
 メルノはラームス少年の側面に滑り込み、死角から彼を狙っていたキャタピラーの顔面に向けて弾丸を浴びせる!
「るおおおおおおおおおおおおん」
「いいいいいいいいいい」
「すみません、助かりました!」
「守ったる、って約束したからな!」
「みんなで助け合いながらやろうじゃないか!」
 ここで更にエダは拳を叩き込み、続けてキャタピラーを沈黙させる。そこにラームスが長杖で打擲しとどめ!
「よし、そしたらそろそろ仕掛けよか!まとめて片付けるで!」
 メルノは床面を踏み切って跳躍!そして空中で身を捻りながら二挺の銃を構える。R&B!アサルトリボルバー!銃身が輝いた!
「おおおおおおおおん」
「おなかああああがああああすきまああああしいいいいい」
「たべ たべて たべさせて たべたい ありす おいしい ありす」
 ひしめくキャタピラーたちがメルノの姿を見上げる。餌を求めて集まる鯉のように、口腔を開いて欲望のままに叫んだ。
「悪いが、アンタらに食わせるもんはこれしかあらへんで」
 トリガー!トリガー!トリガー!メルノは眼下のキャタピラーどもにめがけて銃弾と熱線を振り撒いた!【狐の嫁入り】!血肉の代わりに鉛と熱をオウガたちの腹の中に叩き込んでやる!臓腑と皮膜を突き破る弾丸が次々とキャタピラーどもを絶命させた!
「ぎえ……」
「あ、り、いいいい、すうううううう」
 べしゃべしゃと汚らしく体液をブチまけてキャタピラーの群れはほとんど壊滅する。わずかに生き残ったキャタピラーが、仲間の死体の積み上がる中からずるずると這い出ながら呻いていた。
「……僕は。もう恐れない。お前たちなんか、怖くない」
 アリスナイト・ラームスはそれに歩み寄り、王笏を振り上げる。
「僕は、1人じゃないんだ。……支えてくれる人がいる。僕も、誰かを支えることができるって、わかったんだ。だから、お前たちになんか、負けない!」
 そして、とどめを刺した。
「よくやったぞー、少年」
「うん。おかげですごく身体が軽かった。自分じゃなかったみたい……あっ」
 自分の活躍を半信半疑に感じてしまった。疑念はアリスナイト・イマジネイションの力を失わせる。金の鎧は光の粒になって消えた。
「今のでこっちにきてた連中は全部みたいやな」
 これで、彼らの立つ通路には静寂が訪れる。他の防衛線でも同様にかなりの数のオウガを撃滅したはずだ。
 しかし、まだ全滅させたわけではない。耳をすませば、遠くから風に乗ってまだ呻くような声が届く。
 アリス適合者・ラームスはもう一度視線を向ける。そして、猟兵たちと頷きあい――もう一度、光を纏った。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ラウラ・クラーク
うぅ… 大きな口… あんなのに食べられたら…
考えただけで恐ろしい…
でも、助けた子達を守る為に戦わないと…

あの芋虫達とは離れて戦いたいから、
南瓜のランタンの火炎放射や〈呪詛/呪殺弾〉を合わせた呪いのショットガンなどで攻撃するね…
《リアライズ・バロック》で召喚したバロックレギオン達には前に出て、敵を攻撃してもらおうかな。
それが無理なら、押し留めるだけでも…

確か… アリス達を探した時に仕掛けた林檎手榴弾の罠を仕掛けたんだけど、まだそれが残っているなら上手く誘い込んで攻撃したいな…

アドリブ・協力歓迎です!


非在・究子
お、オウガって、奴らは、なかなかのキモカワキャラ揃いだ、な。
ぐっ、ぐひひっ。か、狩り甲斐が、ある……う、うん? の、NPCの、連中も、やる気、なのか?
ふ、ふむ……や、やられると、スコアが、下がるやつだろ? 背後に、やっといた方が、楽かもだけど、な……そ、それじゃあ、つまらない、から、こ、ここは、裏方に、なってやると、するか。
ゆ、UCの力で、周囲の、フィールドを、【ハッキング】して、支配下に、おく、ぞ。(手にしたゲーム機にデフォルメされた周囲の戦場が映し出され)
て、敵の足元に、落とし穴や、トラバサミを、作って、動きを封じたり、簡易の防壁や、ゴーレムを作って、攻撃から、守らせたり、してやろう。


天乃河・光
アリスが勇気を見せたなら、それに応えないわけにはいかないな。
彼らと一緒に戦うよ!
アリスたちのサポートを主に、自分も輝剣サザンクロスで敵を倒していくよ。ずっと後ろにアリスをかばい続けるのは難しいだろうからね、出来るだけ近くで戦いつつ、いつでも光の斬撃で助けに入れるようにしておくよ。

大丈夫、私がついている。必ず命に代えても君たちを守るさ。だから、君たちも私を守ってくれ。
……でも、無理はしないようにね?アリスにとっての一番の勝利は、生き残って、扉を見つけて自分の居場所へ帰ることなのだからね。



「お、オウガって、奴らは、なかなかのキモカワキャラ揃いだ、な」
「うぅ……大きな口……あんなのに食べられたら……」
 一方、非在・究子(f14901)とラウラ・クラーク(f19620)は遊撃のためインテグラの通路を走っていた。通路を進む先に、キャタピラーの姿が見える。
「か、かわいい、ですか……?あれ……」
「るううううううおおおおおおおお」
「ぐっ、ぐひひっ。ちょっと、よくない、か……?さわった、ら、やわらか、そう」
 究子は口の端を歪めながら視野の端に表示されたマップに表示される光点を確認。視界の先に見える敵との彼我の距離を計りつつ戦闘準備を整える。
「おなかがすきました おなかがすきましたね」
「たべていいですね」
「おいしそう」
「さ、触ろうとしたらかじられちゃいますよ……!考えただけで恐ろしい……」
「ぐひ、ひ……そう、だな。リスクは、遠ざけた方、が……ううん?」
 ここで究子はマップに新たに表示される光点を確認する。……反応パターン青。および緑。猟兵とアリス適合者だ!
「待たせたね!私も一緒に戦うよ!」
「は、はい!」
「ルネ、前に出すぎるなよ!」
 星の輝きとともにそこへ駆けつけたのは天乃河・光(f19385)と2人のアリス適合者、ルネとサンズの兄妹である!
「お、おお……?う、うん? の、NPCの、連中も、やる気、なのか?」
「あ、アリスたちですか?」
 2人は現れた光と2人のアリスの様子に一瞬戸惑うが、しかし敵は既にこちらに気づいて向かってきている。
「や、やられると、スコアが、下がるやつだろ? 背後に、やっといた方が、楽かもだけど、な……」
「た、たすけられたら、かえさなくてはいけません!」
「はい、僕も……僕たちも戦います!」
「……と、こういうわけさ」
 拳を握って主張する2人のアリスを見遣って光はマントを翻しながら笑い、サザンクロスの刃を抜き放つ。
「彼らが勇気を見せたなら、それに応えないわけにはいかない。だろう?」
「わ……わかりました。それ、なら……一緒に、たたかいます!」
 ラウラはショットガンやカボチャの火炎放射器を引きずり出しながら敵の姿を視界に収める。そして引き金を引いた。
「ばあああああああああ」
 炸裂!大型の獣を狩るためのスラッグ弾頭がキャタピラーの頭部を吹き飛ばす!
「おおおおおおおおおん」
 しかし、尚もキャタピラーたちの勢いは止まらない。血肉を求め、おぞましい声をあげながら更に迫り来る!
「バロック……!」
 ラウラは震える瞳で向かい来る敵の姿を視界に収めながら息を吐き出した。左手の傷痕が疼く。そして、虚空より奇怪な化身が染み出すように世界へと零れ落ちる。【バロックレギオン】!それは彼女の身を侵す呪いであり、恐怖をもたらす者たちへと反撃するための力だ。
『うんうんうんうん切っちゃいましょう切っちゃいましょう』
『かんじゃさんはどこかなあ?どこかなあ?どこかなあ?』
『たくさんたくさんたくさん痛く痛く痛く痛く痛くするからねえ』
 ラウラのバロックレギオンは血に塗れた看護師の姿をしていた。凹凸のない顔で彼女たちはゆらゆらと揺れながらキャタピラーの群れへと向かってゆく。そして激突!レギオンたちは手にしたメスや注射器をキャタピラーの表皮に暴力的に乱雑に突き立て、ざくざくと傷を刻み込んでゆく!キャタピラーはそれに反撃し、まず一体を丸呑み!押し潰し!潰したそばから取り囲まれ、無数のメスで嬲られる!一進一退の攻防戦が始まった。
「お、おー……すごい、のが、出、出せるんだ、な……ぐ、ひ。アタシ、も、負けてられ、ない」
 一方究子は視界の中にコントロール・パネルをポップアップ。展開したキーボードを叩きながら、世界への介入を開始する。電脳世界に生まれ、あらゆる物質と事象をデジタル的に認識する彼女は現実でさえデータ上の空間と同じように改竄することができるのだ。【ゲームナイズ】!Let’s game!much game!広がるゲームエリアが空間を上書きしてゆく。既にこのフィールドは彼女が支配者だ。手にしたゲーム機には周囲のマップや敵味方の配置といった情報が表示されている。
「い、っひ……!こ、ここは、裏方に、なってやると、するか」
 究子はコンソールを叩いてエリア内のオブジェクトに干渉。動きを制限するトラップや、自律するゴーレム型のサーヴァントを生成!バロックレギオンたちに加勢させる。
『ぐおー』
「いたいです やめてください」
『がおー』
『切っちゃいましょう切っちゃいましょう』
『採血採血採血採血採血採血採血採血採血』
「ああああああああああ」
 バロックレギオンとオブジェクトゴーレムたちはオウガの群れを殴りつけ押しとどめる!
「よし。それじゃあ私と一緒にいこう。2人とも、準備はいいかい?……でも、無理はしないようにね?アリスにとっての一番の勝利は、生き残って、扉を見つけて自分の居場所へ帰ることなのだからね」
 光は2人のアリスの手を取って目配せし、ぱちりとウインクした。
「うん」
「わかってます!」
 そして、2人のアリスは頷きあい、手を繋いだ。
「ルネ!」
「はい、おにいさま!」
「「プリズマイズ!」」
 煌めく粒子が2人のアリス適合者を包む。それは帯状の光へと変わり、そして2人の肌で弾ける光はたちまち繊維となり布を作り出し、可憐で豪奢なドレスを紡ぎあげる!【ドレスアップ・プリンセス】!
「「プリズマ・ツインズ!」」
「なるほど、君たちはプリンセスだったんだね!……それなら、エスコートは任せてもらおう!」
『王子様』だからね。光が先陣を切り、2人のアリスがそれに続く。床面を蹴り、マントをたなびかせながら光は宙を舞い、そして輝剣サザンクロスを薙いだ。斬閃が光の刃となり、キャタピラーを切り裂く!
「さあ、ついておいで!」
「かっこいい……」
「ルネ、見惚れてるひまはないぞ!今は……僕たちも、戦うんだ!」
「は、はい!おにいさま!」
「「プリズムハート・ウェイブ!」」
 2人のアリスもそれに続いた。プリンセスとしての力を光に変え、オウガの群れへと叩きつけていく!
 光の剣と輝くハートが踊るように振り撒かれる。そしてその煌めきがオウガたちを次々に仕留めていった!
「……お、おとこのこの、ほうも、プリンセス、なのか」
 究子は『そ、そういう、需要も、あるよな』と納得しつつパネルを叩き適切な操作をし続ける。トラップを抜け出したキャタピラーがいれば新たに生成し足止めてハメ殺す。ラウラのバロックレギオンやオブジェクトゴーレムたちも喰われたり押し潰されたりして順調に数を減らしていたが、光と2人のアリスの参戦により前線は切り返されていた。これ以上はアシストもほとんど必要あるまい。即ち、いもむしどもの群れはもはや全滅寸前である。
「ん?……こ、これは、なん……だ?」
 究子はマップ上に表示された見慣れないアイコンを目に止める。リンゴのマークが赤く点滅する絵が見えた。こいつは一体なんだろう、と彼女が首を傾いだのと、派手な爆発音が響いたのはほとんど同時であった。
「ああああああありいいいいいいすうううううううううううううい」
「ふう……。う、うまくいったみたいですね」
 断末魔とともに爆散する最後のキャタピラー。その消滅を見届けて頷くのはラウラである。……そう、いま爆発したのは彼女がアリスたちの探索を行なっている際に館内に仕掛けておいた林檎型手榴弾の罠である。戦いの最中、彼女と彼女のバロックレギオンたちはそこに敵を追い込んでいたのであった。
「けほけほ」
「けむたい……」
「大丈夫だったかい?」
 林檎手榴弾の残した煙の中から、光と2人のアリスが帰還する。これで、インテグラに蔓延ったキャタピラーの群れはほぼ完全に掃討された。館内には、ようやく静寂が訪れる。
「よく、がんばったね」
 ラウラはアリスたちの手を取り、その健闘にねぎらいの言葉をかけた。
 究子は小さく息を吐き出しながらマップ上の表示を確認し――
「な、に?」
 そして、突如赤く染まる画面を見た。
《Danger》《Danger》《Danger》
《強力な熱量を検知》《撤退を推奨》
 画面いっぱいに広がるアラートメッセージ。そして、ここに立つ猟兵たちは気付く。彼女たちの肌を撫でる、乾いた風の熱さに。
「――どうして、まだ生きているの?」

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​




第3章 ボス戦 『マッチ売りの少女』

POW   :    スルト・ザ・ゴースト
自身の【身体を炎上させる事で発生した火傷】を代償に、【高い攻撃力と耐久力を持つ炎の巨人】を戦わせる。それは代償に比例した戦闘力を持ち、【周囲の空間を燃やし、所持している炎の剣】で戦う。
SPD   :    ファイヤー・オブ・ロンドン
【戦場の地形が燃え盛るロンドンの街並み】に変形し、自身の【身体すら燃え始める様な熱による火傷】を代償に、自身の【周囲の空間を燃やし、同時に攻撃力と移動力】を強化する。
WIZ   :    彼岸の大火
【火の付いたマッチの棒】を向けた対象に、【自身の火傷を、対象に身体に移し変える事】でダメージを与える。命中率が高い。
👑11
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「どうして。どうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうして」

 燃やし尽くしてやったのに。
 忌まわしい。忌まわしい。忌まわしい。忌まわしい。

 誰からも救われなかった『マッチ売りの少女』は、世界を呪いながら滅びた。
 オブリビオンとして骸の海から這い出た彼女は、流れ着いたこのインテグラという『世界の記憶』を集積した世界を怒りのままに壊し尽くした。
 あらゆる展示品を破壊してまわり、一冊残らず書物を焼却し、そして世界そのものを灼いた。それは彼女なりの復讐心であった。
 それでも尽き果てなかったが故に、彼女はこの世界に迷い込むアリスたちが惨たらしく死ぬ様を見ることで、あるいは直接灼き殺してやることで僅かな慰めを得ていたのである。

 しかし、猟兵たちの介入でそれは崩れ去る。
館内に放っていた眷属どもは1匹残らず殺されてしまった。
 殺してやろうと思っていたアリスたちも奪われてしまった。
 なんて憎い。殺してやる。

 『マッチ売りの少女』は膨大な熱量でもって纏う炎を吹き上げた!その威力は凄まじく、炎の圧力が館内の壁を破壊するほどである。
 凄まじく強力なユーベルコードだ。……戦い慣れしていないアリスたちは、彼女との戦いについてくることはできないだろう。

 殺意を剥き出しにしたオブリビオンと猟兵たちは相対する。
 さあ、武具を構え、ユーベルコードを起動せよ。『マッチ売り』を打倒し、アリスたちを、このインテグラを救うのだ!
草野・千秋
あなた……いやお前が展示品や書物を燃やしたのか
世界を呪うとはいえ
貴重なものを犠牲にするなんて
なんてことをしてくれたんだ!
僕も家族を失って世界を呪ったことがあったが
お前とは違う
許せない、その罪、断ってみせる
アリスの方達、下がっていて下さい
あなた方を最後まで護るのも
猟兵とヒーローとしての矜恃だ

【血反吐】
2回攻撃をメインにして戦います
ヴァリアブルウェポンで命中率重視
よーく狙っていくぞ!
怪力で敵を持ち上げて
地面に叩きつけたり振り回したり
武器改造で氷の属性攻撃も付与しておく
攻撃は第六感でかわし
仲間をかばうときは盾受けと激痛耐性
敵殲滅のためなら多少の傷は厭わないものとする!


レパル・リオン
心情◆…アンタがどんなに悲しいからって…苦しいからって…人々を焼かせる訳にはいかない!

行動◆【転衣召還】を使うわ!取り出した衣装に早着替えして、フォーム名『スワンレイク』に変身よ!
この服の力で清らかな水を操り熱と炎を打ち消すわ!水流を纏う華麗な連続キックで怪人の動きを封じて、そのまま蹴り倒す!

目的◆怪人の撃破を最優先!でも水を操る事で愉快な仲間や地形への被害も抑えたい!

台詞例◆「マッチ売りの怪人!あたしが相手よ!」
「凄い熱…だからこそ、あたしが戦わなきゃいけない…!」
「この熱さが、アンタの苦しみなの…?」
「アンタの苦しみは…わからない!だけど!あたしが止める!」

【血反吐】アドリブ歓迎


ティナ・ルウ
ガァアッ!!(怒りの咆哮)
ティナには相手の過去も関係ありません。
ただ敵を引き裂き、食いちぎるだけです。
敵が火傷を代償にパワーアップするのなら、こちらも、炎の熱や火傷の痛みでさらに凶暴化し、食いちぎった肉でパワーアップ(フードファイト・ワイルドモード)して襲いかかります。
骨も残さず食い尽くしてやります。



「苦しい」
 暴圧!
 凄まじい熱気が押し寄せる。展示台のガラスが圧力に耐えきれず次々に砕け散り、あまりの高温に壁紙までも燃え始めた。
「痛い」
 そして、少女は燃え上がる。
 果てぬ憎悪と呪いに自身を灼き焦がしながら、『マッチ売り』は進む。
「憎い」
 その瞳には、底無しの闇が揺蕩う。
「待ちなさい、マッチ売りの怪人!あたしが相手よ!」
 レパル・リオン(f15574)はその行く手を遮る。
「あなたが……いや、お前がこの世界を壊したのか」
 草野・千秋(f01504)もまた並び立ち、『マッチ売り』に相対した。
「そうよ。だって、憎かったんだもの」
 闇を湛えた瞳が2人を見据える。その手に摘んだ一本のマッチを、しゅ、と振った。たちまち炎が走る。
「許せない。……その罪、断ってみせる!」
「やってみるといいわ。できるものなら」
 燃え広がる火が空間を焼く。【ファイヤー・オブ・ロンドン】。焼け落ちてゆく世界は炎の中で異界の領域と化す。ひび割れた石畳と煉瓦の街並み。それは『マッチ売り』の望む全てが燃え尽きる世界である。
「やめて!アンタがどんなに悲しいからって……苦しいからって……こんなふうに、みんなを焼かせる訳にはいかない!」
 レパルがユーベルコードを起動する。その手の中に光が灯った。【転衣召還】だ。彼女は虚空から新たな衣装を取り出し、素早く着替えフォームチェンジ!
「『スワンレイク』よ!」
「なら、干上がるといいわ」
『マッチ売り』がマッチを擦る。ごう。生まれた炎は激しく燃え広がり、そして意志を持った生き物のようにレパルへと襲いかかる!
「凄い熱……こんなの、ふつうの人が浴びたらすぐに黒焦げになっちゃうわ」
『スワンレイク』は水を操るスタイルだ。レパルの魔法によって生成される水流が『マッチ売り』の炎と激突する!続けてレパルは走った!
「だからこそ、あたしが戦わなきゃいけない……!」
「ふうん。りっぱなことを言うのね」
「ええ、僕たちはヒーローですから!」
 千秋――ダムナーティオーもまたレパルとともに走った。一気に『マッチ売り』との距離を詰め、両腕にエネルギーを収束させる。
「はあッ!」
 レパルは水を纏いながら『マッチ売り』へと蹴り足を放つ!流れるような動作で追撃!連撃!連続のキックが『マッチ売り』の炎と交錯!
「ふうん」
 更にダムナーティオーはレパルと『マッチ売り』の打ち合いの間隙に割り込む。レパルへの対応に意識を割いていた『マッチ売り』に隙を見出したのだ。ダムナーティオーは『マッチ売り』の身体に掴みかかり、放り投げた!その身体は想像していたよりもずっと軽い。
「じゃあ、おしえて。正義の味方」
 ばぁんッ!煉瓦の壁に叩きつけられる矮躯がか細く声を漏らす。
「……どうして、わたしを助けてくれないの」
 瞳が、揺れる。
「痛いのに苦しいのに辛いのに熱いのに怖いのに恨めしいのに妬ましいのに生きたかったのに誰も呪いたくなんてなかったのにどうして助けてくれないのどうして救ってくれないのどうしてわたしを見てくれないの」
 ごう。
『マッチ売り』の身体が燃え上がる。炎の塊と化したその身体から分かれるように動き出した炎が、巨大な人の姿をとった。 【スルト・ザ・ゴースト】。憎悪と呪いが生み出したその巨人は、燃え上がる剣を薙ぎ払う。
「ぐ……ッ!!」
「きゃあ!」
 暴圧!炎の剣が生み出す凄まじい熱波が押し寄せる。ダムナーティオーの装甲の表面が融解しはじめていた。レパルのスワンレイクが生み出す水の流れも吹き飛ばされる。レパルの身体も圧力に耐えきれず押し出され、煉瓦の壁にしたたかに打ち付けられていた。激突の衝撃に身体が軋む。
「……僕も家族を失って世界を呪ったことがあった」
 ダムナーティオーは歯を食いしばり、踏みとどまる。まだ倒れるわけにはいかない、と。焼けるように熱い空気を吐き出しながら視線を上げる。
「だけど、僕はお前とは違う」
「なにも違わないわ」
 炎の巨人は再び剣をかざす。燃え上がる『マッチ売り』は炎の中から猟兵たちを見ていた。
「この熱さが、アンタの苦しみなの……?」
 レパルは痛む身体を引きずりながら、荒い呼吸とともに態勢を立て直す。
「そう。そうね。だから、あなたも燃えて死んで」
「それは――できないわ!アンタの苦しみは……わからない!だけど!あたしが止める!」
「じゃあ、いやでも殺すわ」
 炎の巨人が、振り上げた剣を叩きつけようとする。その瞬間である。
「ガァアッ!!」
 咆哮が炎を裂き、ティナ・ルウ(f19073)が戦場に飛び込んだ!獣の瞳に獲物を映し、彼女は一気に駆け抜ける。
「……品の悪い狼!」
「ガアアァァウウゥゥゥゥゥ!!」
 奇襲めいて乱入したその爪牙は吠え哮りながら石畳の上を駆け抜け最短距離で『マッチ売り』に向かい飛びかかった!
「ガアアッ!!」
「ッ……!!汚らしいッ!!」
 不意を打たれるかたちとなった『マッチ売り』は接近を許し、ティナに組み敷かれる。意識が散ったことで、炎の巨人は戸惑うようにその動きを止めていた。
「チャンスですね……!今のうちに、この巨人を!」
「わかったわ!」
 ダムナーティオーは両の拳に再びエネルギーを収束する。改造によって埋め込まれた冷却装置の機能を応用し、冷気を拳に纏ったのである。
 レパルは再びスワンレイクの力を稼働させる。流れる水を纏いながら、レパルは跳んだ。
「ダムナーティオー……パァンチ!!」
「スワンレイク・カミカゼキイィィック!!」
 ダムナーティオーの拳とレパルの蹴り足が水の力と冷気を纏い、炎の巨人へと同時に炸裂させる。2つの必殺の技を受け、巨人はたちまち鎮圧され消滅!
「ガアアアアアッ!!がるぅうううぅッ!」
「痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い」
 一方、ティナは組み敷いた『マッチ売り』に牙を突き立てその肉を喰い千切る。ティナ・ルウは人語を解さない。その精神は獣のそれと変わらない。故に、彼女は容赦をしない。
「死ね、死ね、死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね燃えろ燃えろ燃えろ燃えろ燃えろ燃えろ燃えろ燃えろ燃えろ燃えろ」
「が、っ!ふ、ぐぅ、ガ、ガァアッ!!」
 しかし、『マッチ売り』もただでは済まさない。喰われながらも燃え上がる彼女の身体の炎は当然密着するティナにも燃え移り、炎の中へと呑み込むようにその身体を苛んだ。だがティナはその熱を、焼かれる痛みを怒りと闘争心に変え更に苛烈に喰らいつく!牙と炎が滅ぼし合うように互いを喰らう!
「……死ね!」
「ガアアッ!」
 均衡を破ったのは『マッチ売り』である!彼女は肩口に喰らい付かれながらもティナの頭を掴むように腕を伸ばし、そこに最大出力で炎を吹き出す。顔面に向けて放たれた炎はティナを怯ませ、『マッチ売り』が離脱するための隙をつくりだした。
「殺すわ。……殺すわ。みんなみんなみんなみんな殺す。この世界ごと焼き潰してやる」
 逃れる『マッチ売り』は黒く淀んだ瞳で猟兵たちを睥睨すると、怒りと憎悪に満ち満ちた赤黒い炎を更に大きく燃え上がらせる。
 燃え落ちる異界と化したインテグラを戦場に、『マッチ売り』との戦いは続く。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

荒・烏鵠
@WIZ
アリスは置いてきた、この戦いには付いてこられそうにない……ってダイジョブ?このセリフ書いてヘーキ?
ウン、とにかくクライマックスバトル!レディーゴー!
なーんて言っても前線に立てるほどのパゥワはねーのよネ。オレサマはサポート狐なンで。そんかわしソッチはお任せ!
風を操って真空を作り延焼を留める。水気を帯びた風で消したった方が早いかな……ソコらへんは臨機応変にネ。
けがしたおヒトには踊リ龍で治療、火傷移されても治療。自傷は自分だけになさって!
アト愉快な仲間達も治療してやっから手伝って!ゴリラの群れとかあのへんつよそーだし。
ケガとか知るかで突っ込むヒト居そうだし。居なけりゃソレでケッコーなコトさ!


神羅・アマミ
完全に自分自身のはらいせで世界の破滅を望む…リアル炎上案件じゃな。
別に何も上手いこと言えてなかった!

自身を燃やし地形を燃やし炎の巨人を召喚するというのなら、こちらも消火作業で可能な限り被害を軽減しちゃる!
水や消火剤がなくとも可能な、古来より伝わる方法でなー!
真の姿・ゴリラニックパワーローダー形態へと覚醒し、放つコードは『番手』。
下半身をブルドーザー、両の腕はそれぞれショベルに換装じゃ。
足元からいくらでも砂や土を得られる以上、掻き集めては掬って少女本体や巨人に向けてぶっかけてやるわい!
単純に嫌がらせとしても機能するしにゃー。
今の妾、盾キャラっぽいようでその実やっとることは砂かけババアじゃのう…


ラウラ・クラーク
うぅ… 凄い炎…
焼け死にたくないよぉ…
でも… 戦わないと!

【行動】
私には、炎に効果的な技能やUCが無いから、後ろから〈呪詛/呪殺弾/2回攻撃〉を合わせた呪いのショットガン
でみんなの事を援護するね…
誤射しないように〈念動力〉を使わないと…

《リアライズ・バロック》で召喚したバロックレギオン達には、味方が動きやすい様に敵の注意を引き付けてもらおうかな…

敵の攻撃は〈目立たない〉で命中率を下げて〈盾受け/残像/第六感〉でどうにか対処出来ないかな?

アドリブ・協力歓迎です!


エダ・サルファー
【血反吐】
……救われずに死してオブリビオンになった少女か。
しかもおっそろしい強敵のようだし。
これはアリスのみんなに手伝ってもらう訳にはいかないな。
よし!お前の慰めにはならないだろうけど、私が全力を持って相手させてもらうよ!

まずは真の姿を開放し、巨人式を発動!
相手が呼び出す炎の巨人と正面から殴り合ってやるぜ!
多分本体を狙うほうが常道なんだろうけど、巨人は代償ありで呼び出されてるんだし、こっちを倒してもダメージに繋がるって寸法よ!多分!
炎の剣は避けるか巨拳で受けるけど、高熱は防ぐのが難しそうだねぇ。
まあ燃えてる相手を殴りに行く以上高熱は避けられないんだし、ダメージは気合で無視しよう!できる限りは!



「燃えろ燃えろ燃えろ燃えろ燃えろ燃えろ燃えろ燃えろ燃えろ燃えろ燃えろ燃えろ燃えろ燃えろ」
『マッチ売り』のユーベルコードによって展開された燃え上がる街並みの異界領域で、彼女は呪い続ける。
「ぜんぶ、燃えて死ねばいいのよ」
「……救われずに死してオブリビオンになった少女か」
 エダ・サルファー(f05398)は聖職者の生まれである。故に、彼女は救いを求める声をきけば、思うところはある。
 しかし。
「バカを言うでない。完全に自分自身のはらいせじゃぞ、あんなん」
 神羅・アマミ(f00889)は目の前の現実を見る。如何な事情を持つ者であれ、命を奪い世界を焼く邪悪な行いをするのであれば、その罪過は断たれなくてはならない。
「自分の都合だけで世界の破滅を望む……うむ。リアル炎上案件じゃな」
「わかってるよ。……それじゃ、いこうか!」
 ぎゅ、とエダは拳を握り込む。焼け付くような空気を吸い込んで、ゆっくりと敵の姿を見据えた。
「ところでアリスたちはどうしとるんじゃ」
「アア。アリスたちは置いてきた、この戦いには付いてこられそうにない……」
「きゅい……」
 荒・烏鵠(f14500)とその肩の上で風精のシナトくんが神妙な顔をして頷く。
「そうだね。おっそろしい強敵のようだし……これはアリスのみんなに手伝ってもらう訳にはいかないな」
 しかも広範囲に炎を振り撒いてくる。もしここにアリスたちがいたら、守りきれるかどうかあやしいところだ。下がらせた判断は正解だろう。燃え上がる街並みの中で、怯えを見せる猟兵もいる。
「うぅ……す、すごい炎……。焼け死にたくないよぉ……」
 ラウラ・クラーク(f19620)である。
 燃え上がる火の色は彼女の恐怖を煽り、痛みと死を想起させる。戦場はこんなにも熱いというのに、震えが止まらない。
「だめ。焼けて死んで」
『マッチ売り』が燃え上がる。膨れ上がる業火は赤黒く渦巻き、そしてふたたび四肢を持つ巨軀が。即ち、巨人が立ち上がった。
「わ……」
 炎は剣と化し、そしてラウラめがけて振り下ろされた。
「あッぶねえ!」
 ひゅ。
 風の鳴る音が炎上する世界を駆け抜ける。そして作り出される風の流れ。そして凪。烏鵠は風精と共に巨人の存在する空間に局地的な真空を生み出したのだ。燃える酸素の存在しない空間はスルトの剣を押しとどめる。
「よし、妾もゆくぞォ!」
 続けてアマミのユーベルコードを起動!【万手】!鋼の鉄機をアマミは喚ぶ!ゴリラニックパワーローダー!オペレーターが直接搭乗し操作するタイプの機動重機である!アマミは機体にライドオン。続けてマニピュレータを操作し、ラウラを雑に放り出した!直後に巨人の炎剣が着弾!ラウラが10秒前まで存在した地点がぐずぐずに焼け熔ける!
「わ、わ……」
「よいしょォ!」
 飛んできたラウラをエダがキャッチ。彼女を地上に下ろすと、エダは石畳を蹴った。
「いくよ!」
「よし、とにかくクライマックスバトル!レディーゴー!」
「う、うん!怖がってばかりもいられない……戦わないと!」
「おらーッ!消火しちゃるぞ!お主らも前に出よ!」
 ガォンッ!アマミは換装パーツを呼び出しパワーローダーを形態変化!脚部をブルドーザー・タイプ!両腕にパワーショベル!ガリガリガリガリ!パワーローダーは瓦礫と砂塵を巻き上げ燃え上がる街を進む!
「ドラーッ!」
 ざ、ッ!アマミはレバーを押し込んだ!轟音を立ててショベルアームが駆動!瓦礫を放り投げるように炎の巨人へと浴びせて行く!
「水や消火剤がなくとも可能な、古来より伝わる方法よ!」
 そう!これは即ち土砂で火を埋め立て酸素を閉ざすことで鎮火する消火法なのである。アマミは次々と瓦礫を作り出し、そして投げつけ爆裂的に鎮圧しにかかる!
「なんて、不愉快な……!!」
「ゲハハハハー!いくらでもぶっかけてやるわい!……いやしかし、今の妾、盾キャラっぽいようでその実やっとることは砂かけババアじゃのう」
「はああッ!!」
 更にエダが駆け出した!アマミのパワーローダーを足場がわりに駆け上がりジャンプ!そして更に真の力を解放する。虚空を裂いて2つの巨拳が出現した。
「慰めにはならないだろうけど……私が全力を持って相手させてもらうよ!」
 剛拳!瓦礫の中からなおも立ち上がろうとする炎の巨人を、撃ち抜く拳が叩く!【奥義・巨人式】!
「死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね」
 拳圧によって巨人はその形状を大きく崩される!全身にたぎるドワーフちからと祈りを込めた強靭な一撃は巨人を半壊させた。
 しかし、炎は未だに尽きない。風精の大気操作や土砂での鎮火による妨害を受けてなお、『マッチ売り』の憎悪を火種に炎は更に燃える。立ち上る業火を迎え入れるように巨人は吸い上げ、その身体に再び活力を得た。膨大!
「くッ……!」
「燃えて落ちて死んで」
 業ッ!再生した巨人は咆哮めいてぼうぼうと燃える音を響かせながらエダに掴みかかる!幼子が虫を捕まえるように掌で包み込んだ。凄まじい熱量!炎がエダを包み、その肌を焦がし肺腑までも灼き尽くさんと纏わった。肌が、髪が焼ける。燃える。思考までも塗り潰し焼き焦がす業火がエダを苛んだ。
「く、…………ッ!」
「やっべェことになってんな!!」
 それの様子を見上げながら烏鵠は指先を振り術式を構築!
「煌神に帰依し奉る。契約に基づき、我に癒し手を貸し給え!」
【十三術式:踊リ龍】!烏鵠は術式により召喚した炎の龍を遣わせる。彼の操る炎は、世界を呪う『マッチ売り』のそれとは異なる癒しと再生の炎だ。宙を駆ける龍の群れはエダを捕らえる巨人の手の中に滑り込み、そのまま繭のように彼女の身体を包み込みながら引きずり出す。
「エダのねーさん、無事か!」
「あはは……多少の傷なら大丈夫と思ってたけど、なかなか堪えるねえ」
 エダの身体は【踊り龍】の力により急速に再生を始めていた。しかし、体力の消耗はかなり激しい。
「……だけど、向こうだって代償があるはずさ」
「アア、たしかにそーだ。あれだけのでっかい……」
「うおおい!妾だけでこれを抑え切るのは無理じゃぞー!!」
「あーアマミの姉御ー!いまそっちに応援出しまーす!!」
『加勢するウッホ!』
『待たせたッキー!』
 ここで戦場に飛び込んだのは自然史展示室の愉快な仲間たちだ!彼らはインテグラ館内から土嚢と消火器とありったけかき集めてきていたのである!そして、それをバケツリレー式にアマミの元へと届けててゆく!
「おお、これは重畳!オラッ死ねーッ!!」
 アマミはパワーローダーの出力をフル稼働し、ありったけの土砂と消火器を巨人へと浴びせてゆく!

 一方。
「……」
「燃えろ燃えろ燃えろ燃えろ」
 3人の猟兵たちが炎の巨人との死闘を繰り広げる最中、ラウラは『マッチ売り』本体を銃の射程距離に捉えていた。
「怖いね。……悲しいね」
「黙って」
「い、いや」
 ラウラの瞳に映る『マッチ売り』は既に全身が黒く焼け焦げていた。自分自身を薪に燃やし続けた憎悪が、世界を焼く代償として彼女を蝕みつづけていたその結果である。炎の巨人を呼び出し、ダメージを受けた巨人を再生させるのにも少なくない代償が支払われていた。
「もう、終わりにしよう?」
「そうしたいなら、やってみるといいわ。……その前に、わたしがあなたを焼き殺す」
 ごう。
 炎が、燃える。マッチを擦って、彼女はそれをラウラへと向けた。
「ごめんなさい……恨まないで」
 相対するラウラのそばで、虚空から染み出すように影が立ち上がる。バロックレギオンだ。【リアライズ・バロック】。焼け付くような恐怖と戦いながらラウラはユーベルコードを起動し、更に銃を抜き放つ。
『あああああああああ燃える燃える燃える』
『ああああ焼けてしまう』
『マッチ売り』が狙った先にはラウラでなく呼び出されたバロックレギオン。ぼう。音を立てて彼らの身体が燃え上がる。
「……ぜんぶ、ぜんぶ、ぜんぶ燃えてしまえ」
「もう、やめて」
 展開したバロックレギオンたちを盾に有効距離へと『マッチ売り』を捉えたラウラは、絞り出すような弱々しい声で呟きながら引き金を引いた。ガァンッ!激しい銃声とともに、散弾が『マッチ売り』へと叩き込まれる。
「あ、あ……!」
『マッチ売り』は呻くように声を漏らした。血も涙も枯れ果てた火傷塗れの身体が僅かに震える。
「そう、やって。……そうやって、そうやって。みんあ、みんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなわたしをいじめる。誰も、誰も助けてくれなかった。誰も救ってくれなかった」
「それでも、……やめよう、よ」
「ああああああああああああああああああああ!!!」
 燃え上がる。世界を滅ぼす意志をもって炎上し続ける劫火は、『マッチ売り』方向とともに更に激しさを増した。
「う、うう……」
 激昂と暴圧。あまりのプレッシャーにラウラは足が竦む。
「あーあーあー!こっちもやっべーことなってんじゃん!!」
「おわ、マジじゃ。やべーマジギレしちょる!」
「一回下がるよ!」
 ガァンッ!パワーローダーが瓦礫を蹴立てながらここでアマミを筆頭とした3人の猟兵が乱入!敵の消耗の激しさを見てとるが、同時に手をつけられない状態にまで激怒していることを確認すると現状の戦力を勘案し一時後退を決断!冷静で的確な判断力!アマミはパワーローダーから消火器と瓦礫を放り投げ煙幕の代わりにすると、ラウラを雑にひっ掴んで機体の手頃なスペースに同乗させながら一時撤収!
 
 ……こうして、『マッチ売り』との戦いは佳境へと入ってゆく!

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

エル・クーゴー
●WIZ



敵性体の機動及び展開範囲に応じ、ライフルによる点狙撃(スナイパー)及び機関砲による面掃射(範囲攻撃)を適宜運用
当機は後方よりの【援護射撃】を敢行します

並行して敵コード運用を分析(学習力)
傾向として『スルト』及び『ロンドン』によって累積した火傷・セルフダメージを、オーバーフロー前に『彼岸』で猟兵側へ移し変える戦術が想定されます


よって当機は『彼岸』の相殺を図ります
コール、ウイングキャット・マネギ(羽生えたデブ猫を十数体ずつ召喚)


敵が「マッチ棒を向ける挙動」に入り次第、マネギ達をその線上に割り込ませ遮蔽に
ダメージを移し替えられる先をマネギ達とすることで、前衛の猟兵達の戦闘機能を十全に保ちます


非在・究子
ず、随分と、殺る気まんまんの、やつだ、な。
ど、どんなに、燃やしても、満たされない、って、やつか?
……ど、童話のキャラクターって、
あ、ある意味、『先輩』、みたいなもの、だし、な。
こ、ここで、引導を渡してやる。

げ、『ゲームウェポン』に、UCの力を、込めて、『氷属性』を込めた、サブマシンガンに、変形させる、ぞ。あ、当たった、物に、【ハッキング】して、『凍結』状態を、無理やり、押し付ける弾丸、だ。当たっても、外れても、燃やし祭りを、やりたい、先輩には、いやがらせ、ぐらいには、なるだろ。
こ、攻撃、しつつ、ふぃ、フィールドも、適当に、凍らせて、『安地』を作りながら、相手が、倒れるまで、やってやる、さ。


メルノ・ネッケル
【血反吐】
ラームスくん、頼もしかったで。助けてくれてありがとうな!
だから、こっからはお返しのお返し。
……奴は、うちらに任せてくれ。

さて、アンタが親玉やな?
過去に何があったとしても、今を脅かしていい理由にはならへん。
……そろそろ、ご退場願おうか。
『狐の松明』、真の姿を解き放つ!

まずは巨人の気を引く為、牽制の【先制攻撃】。これでこっちに向かってくるはずや。

奴の間合い、ギリギリまで引き付け……その剣を【見切り】、股下を潜るように飛び込む!
巨人の周りは燃えっぱなし、うちも無事ではすまへん。覚悟の上や。

これで奴の盾は潜った。火傷だけじゃ物足りんやろ……銃創も付けといたる。
二丁の連射、全弾持ってけぇ!


白鳥・深菜
(【銀河相乗る究極の暴君】で
他の猟兵の元へテレポートで駆け付けつつ)
え、本が燃やされたの?ああ、もったいないわねえ。

……ま、そういう事は正直二の次よ。
私(猟兵)は貴方(オブリビオン)を狩りに来た。これだけよ。


とはいえその「火力」は認めてあげるわ。
ならばこちらの相応の火力をぶつけてあげましょう?

全てを持って狩れ。全てを賭けて狩れ。統べし得物。全ての魔力。
それを以て虹を掛ける!獲物は刃の先にあり!

相手の「炎の剣」に「虹の刃」をぶつけていく真っ向勝負!

『今回はワイルドハント【奇襲担当】の白鳥深菜として、一撃勝負と行きましょうか!』


天乃河・光
【連携・アドリブ歓迎】

残念だけど、私では君の憎しみをどうにかしてあげることは出来ない……かといってこのまま放っていくわけにもいかなくてね。
出来ることと言ったら、全力で戦って君の憎しみを受け止めることだけさ。

とはいえ、私だって黙ってやられるわけにはいかない。
炎は直撃を避けて、接近の機会をうかがうよ。
能力の方は、マッチを媒介に発動させるなら、火の点いた部分を光の斬撃で狙って斬り飛ばせばどうかな?
初動を潰して隙が出来ればチャンスになりそうだ。

レディと言えどオウガだ、手荒くなるけど、悪く思わないでくれたまえ!



「ああああああああああああああああああああ」
 かくて戦場は燃える。
 炎の塊と化し世界を呪い続ける『マッチ売り』の狂気は止まることなくインテグラを焼き続けていた。

「メルノさん」
「うん?」
 戦いに臨むメルノ・ネッケル(f09332)へと、声をかける者がいた。アリス適合者の1人、ラームスである。
「あの……気をつけて」
 彼らは後方に下がっていたが、ここまでも伝わる膨大な熱気と呪わしい叫びに敵の恐ろしさを感じていた。
 そして、その敵に挑む猟兵たちへの心配と戦えぬことへの申し訳なさが彼らの胸中を満たしている。
「うん。おおきにな」
 メルノはつとめて明るく笑顔を返す。
「ラームスくん。さっきは頼もしかったで。助けてくれてありがとうな!」
「……はい」
「だから、こっからはお返しのお返し。……奴は、うちらに任せてくれ」
 必ず勝って戻る。指切りで約束を交わし、メルノは地獄めいて燃え上がる戦場へと向けて歩き出した。

「敵性体の出力、なおも増大しています」
「うええ……ず、ず、随分と、殺る気まんまんの、やつだ、な。ど、どんなに、燃やしても、満たされない、って、やつか?」
 エル・クーゴー(f04770)と非在・究子(f14901)は収集したデータを検分しながら『マッチ売り』のステータスをチェック。戦術を検討する。
「当機は後方より支援射を敢行しつつ敵の妨害を行います」
「あ、アタシも、そのつもり、だ。ぜ、前衛を、立てないと、不安、だな」
「心配ありません。現在、接近する熱源を感知しています。識別パターン青。味方です」
「つ、都合よく、前衛系だと、いいけど」
「その時はその時です。適宜調整しましょう」
 エルはアームドフォートを起動し武装を展開。火器管制システム・アクティベイト。システムオールグリーン。究子もまたゲームウエポンのテクスチャを弄りながらデータを書き換え、サブマシンガンスタイルの射撃武器に変更する。
「そ、そう、だ。あの、ね、ネコで、データ収集してたの、あ、あんた、だろ?」
「はい」
「で、データリンク、助かった」
「活用していただけたのなら何よりです」
 2人は言葉を交わしながら散開。その地点へと炎の巨人が剣を振り下ろしていた。
「では、作戦……いえ。『狩り《ワイルドハント》』を開始します」
「お、おう」

「燃えろ燃えろ燃えろ燃えろ燃えろ燃えろ」
「残念だけど、私では君の憎しみをどうにかしてあげることは出来ない」
 炎を裂いて戦場に到達した天乃河・光(f19385)は『マッチ売り』に相対し、輝く剣を構える。
「だれも、だれも、だれもすくってくれない。だれもたすけてくれない。だれもあいしてくれない」
「悲しいね、君は……だけど、かといってこのまま君を放っていくわけにもいかない。私に出来ることと言ったら、全力で戦って君の憎しみを受け止めることだけさ」
「なら」
 死ね。
『マッチ売り』が杖をかざすように火のついたマッチ棒を光へと向けた。ごう、ッ!燃え上がる炎!彼女の構えた先で――『マッチ売り』と光の間に割り込んだマネギタイプ・ドローンが炎上した!
「間に合いましたね」
 エル・クーゴーである!彼女は敵のユーベルコード能力の傾向を学習し、敵の戦術を看破して対策を立てていたのだ。巨人の招来や空間の炎上などの能力により代償として負った火傷を【彼岸の大火】により猟兵たちに押し付けてこようという戦法である。それを想定したエルは【ウイングキャット『マネギ』】をデコイとして準備していたのだ。マネギドローンは瞬く間に不吉な黒猫と化して爆発四散!
「こ、ここで、引導を渡してやる。い、いくぞ、『先輩』」
 続けて前に出た究子が引き鉄を引いた。
 童話のキャラクターというのは、ヒトの空想から創造された存在である。同じくヒトの想像から生み出されたバーチャルキャラクターとして、究子は彼女を『先輩』と認識していた。そしてその暴走を止めるのも、きっと後輩である自分の務めである、と。
「うううううううあああああああああああああああ」
 ガガガガガガッ!ゲームウエポンの吐き出す弾丸が『マッチ売り』に叩き込まれる。命中と同時に究子は対象にハッキングをかけた。――あまねく世界の構成をデータとして認識する彼女の視点においては単なるデータ改竄だが、現実としてそれは呪詛や呪縛に似た事象として発現する。『マッチ売り』の身体が凍結を始めた。
「燃えろ燃えろ燃えろ燃えろ燃えろ燃えろ燃えろ燃えろ燃えて死ねみんなみんなみんな死んでしまえ」
 しかし、『マッチ売り』は更に燃え上がる。世界を呪う叫びとともに、彼女は炎の巨人を呼んだ。支払われる代償に『マッチ売り』の身体は末端が既に崩れ始めている。
「厄介なのが来たね……」
「ど、どうする」
「いえ、問題ありません。既に手は打たれています」
 燃えるヒトガタが剣を振り上げながら、猟兵たちを見下ろした。そして、咆哮。
 しかし、その時である。
「お狐様のお通りや!道ぃ開けんと火傷するで!」
 巨人の土手っ腹がぶち抜かれる!赤黒く燃える炎を貫いたのは真の姿である九尾を広げ、青白く灯る狐火を纏ったメルノだ!
「……!」
 巨人が揺らぐ。だが、まだ消滅したわけではない!穴の開いたままの身体で腕を伸ばし、巨人はメルノに向けて剣を薙ぐ!
「づあ……ッ!!」
 巨人の熱量はあまりにも膨大だ。『マッチ売り』も大きな代償を払っている。炎の刃はメルノを捉えた。皮膚が燃える。髪が焼ける。九尾と狐火の霊力が防壁となるが、それも気休め程度だ。瞬く間にメルノは燃え上がり――
「覚悟の上やッ!!」
 火達磨のまま、メルノは跳ぶ!陽炎めいて揺らぐ視線の先に捉えた巨躯へと双銃を向け、銃撃!弾丸が巨人へと叩き込まれ、そして揺らいだ!
「もおおおおおおおええええええええええろおおおおおおおおおおおおおおお」
 それでも、憎悪は燃え続ける。
 崩れかけた巨人へと更に供給される業火。巨影がもう一度立ち上がろうとする。その瞬間!
「待たせたわね!」
 ギュオン!空気を切り裂くエンジン音!おお、見よ!かの漆黒に彩られた恐ろしき姿!そのマシンの側面には荒々しいダーク・ミンチョ体(スペースシップワールドにおいてかつて失われた古代文字である)で『何処へでも飛ぶ』の文字を刻まれたカスタムメイド宇宙バイク!機上でその主、白鳥・深菜(f04881)が不敵に笑う!
「いえ。折良くクライマックスです、ミナ」
「間に合ったなら重畳!しからば爪を立てさせてもらうわね。ワイルドハント【奇襲担当】、白鳥深菜!一撃勝負と行きましょうか!」
 深菜は最初からクライマックスだ。奇襲攻撃は初速が肝心。一撃必殺の心意気で手持ちのリソースをかけらも残さず全ツッパ。曰く【虹色の刃の魔神(レーゲンボーゲン・ヴァッフェ)】!深菜は持ちうる全ての兵装を展開し、魔力操作によってそれらを依り代に魔神を招聘する!
 《おおおおおおおおおッ!》
「全てを持って狩れ。全てを賭けて狩れ。統べし得物。全ての魔力。それを以て虹を掛ける!獲物は刃の先にあり!」
 虹色のオーロラを引き連れて、光の中に魔神が立つ。それは輝く剣を掲げ、炎の巨人と打ち合った!
「火力はじゅうぶんなようだけど……!」
 炎と虹のふた振りが鍔迫り合うように拮抗する。それはまるで神話の一節。虹の巨人の傍で、深菜は叫んだ。
「私《猟兵》は、貴方《オブリビオン》を狩る!!」
 おおおおおおおおおおおおおおッ!!
 それは崩れ落ちる巨人の断末魔か。虹の刃が煌めいて、炎の剣は――今こそ、折れる!
「過去に何があったとしても、今を脅かしていい理由にはならへん。……そろそろ、ご退場願おうか」
 一方、メルノは炎を纏ったままの姿で『マッチ売り』の前に立つ。
 真の力を解放していなければ既に倒れていてもおかしくはない損耗状態である。だが、それでもメルノはその視線を『マッチ売り』へとまっすぐに向けた。
「お、終わり、だぞ。せ、『先輩』」
「はい。既に趨勢は決しました」
 究子がマシンガンを向け、エルが展開したマネギドローンで包囲する。
「ごめんよ。『めでたしめでたし』で終われない物語にしかできなくて」
 光は剣を構えたまま、もはや消し炭と大差なく、されど、未だ死に切れぬ『マッチ売り』へと相対した。
「なあああああんんんんんでえええええええなんでええええええええええ」
 地獄めいて焼け付いたしわがれ声で叫びながら、マッチ売りは魔法の杖を掲げるようにマッチを向ける。
「ピリオドを打とう」
 光はその所作を見ると同時に踏み込み、剣を薙いだ。輝く剣閃がマッチ棒を切り落とす。
「アンタは哀れや。けど、許されるには遅すぎる」
 一拍遅れてメルノが二挺銃の引き鉄を引く。青白い狐火を伴う弾丸が銃声とともに放たれた。
「いいいいいいいやあああああああああだああああああああああああ」
 青い炎に巻かれながら、『マッチ売り』は悲鳴をあげる。もはやその身体は半ば朽ちていた。これ以上支払える代償もなく、ただそこにあるだけで滅びる。
「……敵性体の反応、減少。とどめを」
 エル・クーゴーは冷徹に追撃をかける。射抜くようなスナイプショット。そして。
「さ、さよなら、だ」
 究子が、最後の引導を渡す。
 ぱぱぱ、と乾いた銃声が数度響いて――呆気なく、『マッチ売り』は骸の海へと還った。

 ――そして。
『ありがとウッホ。これで、この国も平和に戻すことができるッホ』
『ターザたちアリスも、きっと自分の帰る扉を見つけ出せるッキー!』
「おっと、それなら私たちも協力するとも。そうだろう、みんな?」
 猟兵たちに礼をする愉快な仲間たちへ、光はにこやかに笑んで頷く。何しろ彼女は王子様。困っているアリスたちを放ってはおけない。
「まあ、私も急に出て来て美味しいところ持ってっただけだものね。余力もあるし、当然手伝っていくわ」
 同意を示したのは深菜である。他の猟兵たちも、何人かが協力を申し出た。
 こうして、廃都であったインテグラでの戦いは幕を閉じ、これからはこの世界の復興と、アリスたちの帰る道を探す冒険が始まる。
 ――しかして、今日のお話はここまで。
 続きはまた、別の物語で。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年07月17日
宿敵 『マッチ売りの少女』 を撃破!


タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#アリスラビリンス
#血反吐


30




種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はアララギ・イチイです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


挿絵イラスト