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君は愛するもののために死ねるか

#アックス&ウィザーズ


●盗賊団の襲撃
 街道を進む隊商の列。
 積荷を護衛する傭兵たちはあくびをしながら辺りを警戒していた。
 無理もない。
 ここ数日たいした出来事にもあってなければ、一本道の平坦な道が続いている、
 真上でさんさんと照らす太陽は、はやく次の街について一杯やりたいと思わせる陽気を醸し出している。
 先頭の馬車が急に立ち往生した。
「おい、どうした?」
「いや、何か車輪が窪みにはまったようだ」
 見れば馬車は傾き、片側が浮き上がっている。
 やれやれこれも仕事と、傭兵たちは馬車を起こそうと集まり、力を込めようとする。
 だが一人が違和感に気づく。
「おい……おかしくないか?」
 窪みは薄板の上に土が盛られており、稚拙ながらも隠されていた。
 馬車はそれを踏み抜き、穴へと落ちたという訳だ。
 そして、良く見れば付近のあちらこちらに同じような罠が仕掛けられていた。
「おい……」
「ああ……」
 傭兵たちが腰に下げていた武器に手をかけるのと、遠くから蛮声が聞こえるのは、ほぼ同時であった。

「ひゃっはーーーーー!」
「馬車は襲うな! 刃向う奴だけ相手しろ!」
「武器を捨てなぁ! 俺たちゃ金品にしか用はねえ!」

「やはり盗賊かよ!」
「全隊、馬車を護れ! 一台たりとも奪わせるな!」

 次々と武器を抜き、盗賊の群れを迎え討つ傭兵たち。
 しかし盗賊団は数の優位で包囲し、傭兵たちを倒していく。
 しばらくの後、勝敗は盗賊たちに軍配が上がったのだった。

「かしら、積荷は無事ですぜ!」
 頭と呼ばれた、紳士然とした男が部下に御苦労とねぎらい、積荷を確認する。
 木箱が開けられ、緩衝材がまき散らされ、中から顔を出したのは人形であった。
 等身大の女性を模した人形の数々。それら全てが眼鏡をかけている。
 眼鏡の人形たちを見て、老紳士は満足そうに微笑んだ。
 ひっ捕らえられ、連れて来られた商人が抗議の声を上げる。
「やめてください! それを奪われたら商売が……私の生活が」
「盗賊は奪うのが仕事でして……。そして感謝して欲しいですね、別にあなたの命を奪ってもよろしいのですよ。それをしないのは私達が紳士だからです。ですが……聞き分けて貰えないとなると、残念ですが……少々手荒な真似をせざるをえませんね」
 盗賊の一人が腕を上げた。まさか凶刃を振るうのか。
 腕を人形へと伸ばす。そしてあろうことか眼鏡に手をかけ……へし折ったのだ。
 フレームを無くした眼鏡が地に落下し、レンズが無慈悲に踏みつぶされる。
 そこに有ったのは、眼鏡っ娘でなくなった只の人形であった。
「バ、バニヨド! ああ、なんてことを!」
 商人が非難の声を上げる。
 捕えられた傭兵たちも、商人と同じように声を荒げた。
「てめえら! よくも眼鏡っ娘のメガネを!」
「なんて非道いことを! てめら人間じゃねえ!」
 怨嗟の声を尻目に頭目が顎を動かすと、盗賊は再び眼鏡を破壊した。
「カ、カトリィィィィヌ!」
 商人の絶叫。
 またひとつ、眼鏡っ娘から眼鏡が失われ、ただの人形が出来上がる。
 更に手を伸ばそうとする盗賊の耳に、商人の絞り出すような声が聞こえる。
「わかりました……差し上げます、差し上げますから娘達には手を出さないでください」
 むせび泣く声。見れば傭兵たちも貰い泣きしている。
 返事を聞き、満足そうに笑う老紳士。
「ありがとうございます、平和的に解決できて我々も嬉しいですな」
 頭の哄笑。それにあわせて盗賊たちも笑う。
 柔らかな日差しの下で、極悪非道な事件が起こってしまっていたのだった。

●盗賊団討伐依頼
「これが、私の見た予知でございます」
 ここはグリモアベース。
 ライラ・カフラマーンは居並ぶ猟兵たちに深々と頭を下げていた。
 その背後に生じている霧には、さきほどの光景が幻となって現れている。
 頭を上げると幻は雲散霧消していき、周りの霧と溶け込んでいった。
「今回、皆さまにお願いするのはヴィジョンに現れていた盗賊団、頭目パンテスキとその一味を討ち果たすことでございます」
 ライラの説明によれば、最近アックス&ウィザーズの世界で略奪を働く一味がいるという。
 それがパンステキ盗賊団であるらしかった。
「彼らは金品の他、珍しい物を狙い各地を荒らしまわっているようなのです」
 予知にもあった等身大フィギュア。
 あれも非情に精巧な作りで、好事家に人気が高いのだというらしい。
 それが盗賊団に狙われる形となってしまったわけだ。
 予知で見た通り盗賊団の戦闘力は高い。傭兵の一団を持ってしてもあの有様だ。
「この隊商が襲われるのは予知にて確実、そこで私は一計を案じました」
 ライラの計画によれば、以下のような話であった。
 隊商が襲われる未来、それを防ぐことは難しい。
 ならば襲われても大丈夫なように対策を取れば良い。
 傭兵のポジションに猟兵たちがおさまれば良いのだ。
「私が商人の店へとあなた方を転送します。そこでは隊商の護衛を募集しているでしょう。募集に応募し後釜におさまってください」
 そうすれば道中護衛する事が出来、盗賊たちにも対処しやすいと言う訳だ。

 ライラが杖の先で地面を軽く叩くと、霧が変化し姿を形どる。
 それはアックス&ウィザーズの世界。
 活気溢れる街並みの中に、ひときわ大きい大店が見える。
「形は違えども大切な物を守るのに理由はいりません。盗賊たちを討ち果たし、街道の安全の確保を。そして品々がそれを望む人のもとへと渡るのを手助けしてください」
 そう言ってライラは、深々とまた頭を下げたのだった。


妄想筆
 こんにちは、妄想筆です。
 最近暗めの依頼ばかりだったので、明るめのシナリオでも。
 オープニングを読んでくださればわかりますが、若干コメディがはいってます。
 全章そんなノリですので、キャライメージを大切にする方はご注意ください。

 一章は商人に傭兵として雇われるよう運ぶ章となっています。
 商人は各地の富裕層にオーダーメイドの等身大フィギュア、それに伴う装飾品や衣服などを卸すことで財を成しています。
 傭兵の募集は常にしていますので、すんなり会ってくれます。
 メガネが好きということがわかると好感を持ってくれます。
 自分を雇えばお得だということをアピールしてください。

 二章は隊商の護衛パートになります。
 予知にある襲撃地点には到達していないので、その前の道中警護となります。
 街から街への護衛をうまくこなしてください。
 商人に眼鏡っ娘について話を振るとベラベラ喋りますので、退屈を紛らわすのにはいいかもしれません。

 三章は、パンステキ率いる盗賊団との戦いとなっています。
 敵一体ではなく、集団を相手とした戦い方を想定すれば良いでしょう。
 パンステキは独自の美学を持っています。

 募集応募→道中護衛→ボス戦、こういう風な流れの依頼となっています。
 参加お待ちしています、よろしくお願いします。
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第1章 冒険 『用心棒を買わないかい?』

POW   :    実力を見せつけて納得させる。

SPD   :    召し使いなど別の役職として雇われる。

WIZ   :    話術を駆使して契約に持ち込む。

👑11
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 店の中には多くの人形が陳列されていた。
 どれも本物と見紛うような精巧さで作成されており、その知識が無い者でも立ち止まらずにはいられないような、惹きこまれる何かを持っている。
 そして人形のための衣服、装飾、その他もろもろ、ところ狭しと並べられていた。
 だが雑多な背景は、主役である人形たちを損ないはしない。
 その陳列には確かに、物づくりの愛情があった。
 その中の一つの人形を見つめる貴族が、長い沈黙を経た後口を開いた。
「決めました。この娘を迎え入れましょう」
「ありがとうございます」
 貴族にむかって深々と頭を下げる男の名は、グラシー・ズダイスキー。
 店主であり、人形作成に半生をかけてきた漢である。
 ひとつの商談を終え、もろもろの手続きをあとは使用人に任せると、懐中時計を取り出し時間を確かめる。
 そろそろ面接の時間が迫っている。
 輸送というのは頭を悩ませる問題だ、哀しいことに世の中人の物を掠め取ろうとする輩が多すぎる。
 自分が心血を注いで作成した物を有象無象の輩に奪われてしまっては、せっかく購入を決めて頂いた方々に申し訳ないではないか。
 したがって、傭兵は自分で見て選ぶと決めていた。
 扉を開けて応接室にむかおうとすると、先ほどの貴族が上機嫌で声をかけてくる。
「ズダイスキーさん、輿入れの際はワインと菓子を追加で用意してくれないか。彼女と食事を楽しみたいのでね」
「かしこまりました、ではそのように手筈を整えますので」
 再度お辞儀をし、グラシーは傭兵の面接にへとむかった。

 『グラシー商店』

 この街、いや好事家の中では知らぬ者は無い。
 眼鏡っ娘専属の人形師、その商う店である。
 猟兵たちは、傭兵として潜りこむために、この店の戸を叩いたのであった。

 
ティエル・ティエリエル
WIZで判定

「グラシーさんグラシーさん、ボクのこと雇ってくーださい♪」

ちっちゃな身体でいっぱいいっぱいボクが有用なことを「コミュ力」も使ってアピールするよ!
背中の翅で羽ばたいて空から偵察することで、いち早く危険を察知できるよ☆
戦いになってもレイピアだって上手に使えるんだからってしゅぱぱぱぱーって連続突きを見せてあげるね♪

そうだ、グラシーさんはメガネが好きなんだってよね!
飾ってある大きな丸メガネを掛けてみて、似合う似合う?ってグラシーさんに尋ねてみるよ!
それにしてもメガネって凄いよね!目が悪い人でもよく見えるようになるんだもん!

※アドリブや他の方との連携も大歓迎です



「グラシーさんグラシーさん、ボクのこと雇ってくーださい♪」
 最初に部屋に飛び込んできたのは、ティエル・ティエリエルであった。
 その小柄な体格に収まりきらない元気さを溢れ出し、元気に挨拶する。
 その可憐さ、明るさにグラシーは好感を持ったようだった。
 そばに控えている使用人に速記を任せ、小さな訪問客に質問を開始する。
「ティエルさん、傭兵志願ということですが特技はお持ちですかな?」
 その質問に、まかせてくださいとティエルは背中の翅を大きく動かし、部屋中を飛び回った。
 旋回し、上下に羽ばたいて天井の照明にまで高くあがり、ちょこんと座って雇い主へと微笑む。
「凄いでしょう? ボクこうやって空を飛べるんだよ! 偵察なんかに向いていると思うんだ☆」
 なるほど、とグラシーは頷いた。
 高い所から眺められるのは長所だ。それに彼女の小柄さは敵の眼を避けるのにも役立つかもしれない。
 グラシーは続けて質問した。
「傭兵というのは荒事も対処できなければいけませんが……腕の方はいかがでしょう?」
 その言葉にもティエルは胸を張って答える。
「もちろん! そうでないと応募はしないよ!」
 武器の許可をとってから懐からレイピアを取り出すと、真剣な目つきで構える。
 腕前をみせようと、剣舞を披露するのだ。
 先ほどの飛行に突きを合わせ、木の葉が舞い散るように再び部屋中を飛び回る。
 腕を振るい高速で突きをするたびに、レイピアから風を切る音が流れる。
 特殊な加工によってレイピアを振るうたびに、風鳴りの音を出すことができるのだ。
 それはまるで妖精の輪舞曲。可憐な舞にグラシーと使用人はしばし言葉をかけるのを止め、魅入ってしまった。
 武器を納め、お辞儀をするティエルに拍手で持って迎える。
「素晴らしい! なかなかの物をおもちのようですな」
 商人に笑顔が浮かぶ。だいぶ好感度を稼いだようだ。
 だがティエルのアピールはこれで終わらなかった。
 あと一押し。
「そうだ、グラシーさんはメガネが好きなんだってね!」
 部屋にあった丸メガネをとると、ティエルはグラシーにむかって微笑んだ。
 両手の人差し指を頬にあて、似合う? と問いかけるように無邪気な笑みで雇い主に魅力ビームを放ったのだった。
「それにしてもメガネって凄いよね! 目が悪い人でもよく見えるようになるんだもん!」
 メガネが好きですよというアピールは、グラシーには聞こえてはいなかった。
 無言。沈黙。
「……あれ?」
 失敗したかと訝しがるティエル、今度は彼女が驚きのあまり言葉を失う。
「がふっ!」
 吐血!
 商人グラシー吐血!
「ええええええええ!?」
 使用人が椅子から立ち上がる。
 まさか!? ティエルが何かしたかと思うたか!?
 だが使用人も妖精の意外へと奔る!
「テクニカルポイント! ティエリエル様、3ポイント!」
「ええええええええ!?」
 うろたえる妖精を尻目に、グラシーがふらつきながらも起き上がる。
 大丈夫と声をかけるティエルに、グラシーは親指を上げて答えた。
「小っちゃい娘が合わないメガネをかける……。不恰好、だがそれが良い!」
 口を拭わずに微笑むグラシーに、ティエルは商人の気概を見たのだった。
「あ……ありがとう、ございます?」

 ティエル・ティエリエル――採用

大成功 🔵​🔵​🔵​

織部・水重
SPD行動
アドリブOK

拙者の風体では手練れの傭兵として売り込むのは無理があるのう
しからば、流れの絵師を名乗って同道を願い出てみようかの
「アート」+「布袋竹の太筆」で陳列された人形たちの肉筆画を描き、名刺代わりにズダイスキー殿に渡そうか
「見事でございますな店主殿。拙者も創作を嗜んでおりますゆえ、ちとお話を……」

人形の眼鏡について尋ね、店主の眼鏡愛を語ってもらおう
そして創作のため、店主の仕事を傍で見学させてほしいと「言いくるめ」ようか
「なるほど、眼鏡とは奥深いものでござるの。感服つかまった」
「実に乙なり、眼鏡っ娘!」
……いかん、店主の勢いに当てられたかの
しかし悪い気分ではないの



 傭兵として隊商に潜りこむ。
 なるほど猟兵ならばさしたる苦労も要らないのかもしれない。
「しかし拙者では、ちと難しいでござろうな」
 織部・水重は己の風体を眺めてため息をついた。
 老練な傭兵、と威張るには少々無理がある。
 せめて武器や鎧を帯びるべきなのだろうが、おそらく付け焼刃ではうまくいかないだろう。
「さてさて、ここはやはり策を弄じるしかござらんな」
 織部はひょうひょうと、店の扉を開けて中に入るのであった。

 店内に奇妙な人物がいる。
 そう報告を受けてむかったグラシーが見たのは、人形たちを前に画を描く織部の姿であった。
 ひとつ違えば営業妨害の行動ではあるが、グラシーにはそう見えなかった。
 例えばそう、宗教画を描く敬虔な教徒のような、そういった敬意を感じたからだ。
 傍に立つ店主に気づいたのか、織部は恭しくお辞儀をし名乗った。
「ズダイスキー殿でございますな。拙者の名は織部・水重と申す者でございます」
 まずはこれを、と名刺代わりに差し出された絵を受け取ると、まだ描きかけの途中であったが見事な筆使いという事を感じさせられた。
 絵師か。
 これはどうもと礼を言うグラシーに、織部は世辞を絡めながら話を持ちかける。
「見事でございますな店主殿。拙者も創作を嗜んでおりますゆえ、ちとお話を……」
 ふむ、とグラシーは織部を眺めた。
 広告や宣伝の売り込みであろうか。
 なんにせよ、商談を立ち話ですませるのは良くない。
 グラシーは応接部屋へと案内するのであった。
 旅の絵師と自分を紹介した織部は、グラシーに自分を売り込む。
 隊商に同道させてくれと申し出た。
「……それはまたどうして?」
 グラシーが疑問を口にする。当然の反応だ。
 その懐疑をかわすかのように、織部は顔を逸らして部屋にある人形を眺めた。
「見事な物でございますな」
 人形を眺め、そう呟く。
「ありがとうございます」
 グラシーも答える。
 そして、次の言葉をグラシーが喋りかける前に、織部が感嘆とした表情で言葉を口にした。
「特にあの……眼鏡、でござるか? あの造形は見事でありますな。拙者、美学の端をうろついている輩でありますが、あれは只者ではないとお見受け致します。きっと苦労なされて身につけたのでございましょうな」
 嘆息し、グラシーに顔をむける。
 そのグラシーの顔は幾分紅潮していた。
「わかりますか」
「ええ」
 織部は素直に答えた。
 その答えに、堰を切ったかのようにグラシーは語りだしたのであった。
「私は人形作成を生業とする一介の職人でした。来る日も来る日もクライアントの要求に沿おうと、美を作ろうと、精魂を込めて作っていました。人形とはヒトガタ、人を模したもの、そこに魂を込めなければただの木偶に過ぎません。亡くなった奥様の生前の姿、それを作成して欲しいと頼まれたこともあります。実に光栄なことです。しかし個故人の面影を映さなければそれはただの鏡に映った虚像……偽物に過ぎません。人形師として、職人として、魂を込めるにはどうしたらいいか、私は悩み、祈り、報いました。飲まず食わずでアトリエにむかい、じっと粘土を眺めていたこともあります。そして私は気づいたのです……」
 グラシーの両目からうっすらと涙がこぼれた。
「足りない物……人形に足りない物、私に足りなかった物、命、魂、そう、それは……眼鏡だったのです」
 織部は黙って耳を傾けている。
 決して気圧されているからではない。
「眼鏡とは女神、神を顕す物。人には魂があります、では人形には? それを補う物がわかりました。ええ、確かにそこにあったのです。私の創作する人形は、眼鏡をかけることによって初めて魂を得、ヒトガタへと遂げることができたのです。以来私は眼鏡っ娘を創る事に生涯を捧げることにしたのです」
 感極まったのか、涙をハンカチで拭うグラシー。
 織部は黙って聞いている。
 そう、決して引いているからではない。
「人形に眼鏡をかけると、そこに光がはね返ります。それは淡く顔を照らし、魅力を引き立たせます。交差するフレームの陰は人形に翳を落とし、陽の魅力を立たせます。内に溢れる人形の魂は、レンズへと吸収、増幅され見る者の視神経から頭蓋へと突き刺さり、その魅力を脳内へと溢れさせます。その時人は感じるでしょう。眼鏡の魅力へと。そう、太陽と月は眼鏡を照らすために神がこの世に遣わしたのです。眼鏡とは、神との交信を可能にする神器……それを人形にかけることによって魂をこめることができるのです」
 喋り疲れ、一息つくグラシー。心なしか息が荒くなっている。
 このまま語らせると本題の前に陽が暮れそうだ。
 織部は口を挟むことにする。
「なるほど、眼鏡とは奥深いものでござるの。感服つかまった……実に乙なり、眼鏡っ娘!」
 その言葉に、グラシーは両手で織部の手を握りしめる。
 織部も無言で手を握り返した。
「……拙者、旅を通じて芸術に触れているのでござる。もしよろしければ、旅の伴をさせてよろしいでござろうか。創作の足しにしたいのござる」
 グラシーはしばし考え、道中仕事を手伝ってくれるならと告げた。
 傭兵と使用人の中間といったところか。
 織部は異も無く了承する。
 どうにか潜りこむことに成功し、胸をなで下ろす。
 その胸が少しばかり熱いような、そんな気がした。
「……いかん、店主の勢いに当てられたかの」
 織部は自嘲気味に苦笑いするのであった。

 織部・水重――採用

大成功 🔵​🔵​🔵​

幽草・くらら
……これ、猟兵が出る案件なんですかね……?
まぁ、芸術を踏み躙るような方々は個人的にも許せないんでいいですけど……


雇い主の趣味嗜好についてはそういうの私知りません。
魔女として魔術の検知や、ブラシに乗っての【空中戦】を活かし高空からの偵察及び牽制が行える事、
いざとなれば一部だけとはいえ袋に詰め込んで私が離脱する事も出来るのをセールスポイントとして売り込んでみます。
万が一の保険は商人の好む所ではないかと。

それと私だって絵描きの端くれ、
人形を題材にした絵や、人形の服とか小物を描いたりそれを実体化させる事も出来ます。
そういうの好きなんじゃないですかね?
……いやホントそういう趣味嗜好はよく知りませんけど。



 応接部屋へと案内された幽草・くららは辺りを不安げに見まわしていた。
 胸にある疑問は、はたしてこれが猟兵の出る案件なのかということ。
 冒険者でも事足りるのではないかと思ってしまう。
 でも、とは幽草はグリモアベースで見たことを思い出した。
 あの時、予知の盗賊たちは人形を破壊していた。
 商人の嗜好についてはよくわからない。
 しかし他人の創作物を傷つけるなどと、誰彼が好きにしていい訳がない。
 自分も創作をする身だから。それはよくわかる。
 もし自分の絵があんなことをされたら?
 きっと黙ってはいられないし、とても悲しくなるだろう。
「……頑張らないと」
 幽草は拳をぎゅっと握りしめ、己を奮い立たせようとした。
 幽草・くららは、芸術を軽んじる人間が好きではないのだ。
 そう、盗賊たちから創作物を守るために、今回の依頼を志願したのである。

「いやいや、お待たせしました。申し訳ない」
 足早に今回の依頼のターゲット、雇い主であるグラシーが部屋に入ってきた。
 詫びをするように頭を下げ、使用人と一緒に向かえ合わせで幽草の前へと座る。
 幽草もお辞儀を返し、さっそく面接を受けることにする。
 傭兵としてのアピール、まずはこれだ。
「あの、私は魔法が使えます。もし賊などに囲まれることがあっても、その前に遠くから対処が出来ます」
「ほう、魔法ですか」
 グラシーの目が興味深そうに細まった。
「実際に見た方がはやいかもしれませんね」
 失礼しますと幽草は椅子から立ち上がり、自分の得物に跨る。
 それは巨大なブラシ。毛先の具合から箒にみえないこともない。
 そのままふわふわと浮き上がると、グラシーの声から感嘆の声が漏れた。
 見下ろさないようにと部屋の上部をゆっくりと周り、おずおずと下りてきて幽草は説明する。
「屋内ですので物騒な魔法は使いませんけど、こうやって空を飛びながら偵察や牽制が出来ると思います」
「なるほど」
 グラシーは指を組んだ。どうやら幽草の能力に興味を持ってもらえたようだった。
 更に説明を続ける幽草。
「あまり大きな物は運べませんが、いざとなれば貴重品を持って離脱することが出来ると思います。もちろん傭兵として頑張りたいと思っています」
 説明を終え、深呼吸する幽草。
 並みの冒険者ではこういったことは出来ないはずだ。
 だが生来の臆病さからくる不安が、もうひと押し必要と彼女の背を押した。
「たしか……こういうのが好き、なんだよね?」
 ブラシを手に取り、次々に絵を描く幽草。
 使用人の目が驚愕に開く。
 幽草が描いた物が次々と具現化し、形となって現れたのだ。
 一方、グラシーの目は冷ややかであった。
 静かに、落ち着いた声で幽草に語りかける。
「……足りませんね」
「ええ?」
 不安になる幽草。いったい何が足りなかったのだというのだろうか。
 グラシーは具現化した人形を見つめ、呟いた。
「魂が入ってないですね」
「魂?」
 魂が入ってない。創作家を自称する幽草にとって、この言葉は胸に刺さった。
「魂……そう、眼鏡が足りません」
「眼鏡、ですか?」
「はい、眼鏡がなければ駄目です。画竜眼鏡を欠くというものです」
 訝しがる幽草に対し、断言するグラシー。
 おずおずと、幽草が筆を動かすと今度は眼鏡が現れる。
 その眼鏡を人形にかけてやり、グラシーはにっこりとほほ笑んだ。
「素晴らしい、素晴らしい技術をお持ちのようですね」
 パンパンと拍手するグラシー。
 戸惑いながらも感謝を伝える幽草。
 全く、雇い主の考えることはよくわからない。
 しかし気にいってもらえたのは確かなようだった。

 幽草・くらら――採用

成功 🔵​🔵​🔴​

エウトティア・ナトゥア
奴め、また世間に迷惑を掛けておるのか…お仕置きじゃな
さて、まずは面接じゃ
基本はやはり身だしなみじゃろう
きちんと正装を着用し、自慢の耳と尻尾の毛並みもお手入れしてあるのでぴかぴかじゃよ
アピールポイントの蔓植物で作った伊達メガネを装着して臨むのじゃ

(動物使い+コミュ力)
【秘伝の篠笛】で狼と鷲の群れを呼び出して『グラシー商店』へ突撃し交渉じゃ
たのもー!護衛の仕事があると聞いて来たのじゃ!
(動物達を綺麗に整列させて)
店主殿、どうじゃろう。この通り、わしは動物の扱いにはちと自信があっての
駄馬の世話から小荷駄でよければ運搬の手伝いも出来るのじゃ
鷲に斥侯をさせてもよいのじゃよ?
隊商には便利だと思うのじゃが…



「奴め、また世間に迷惑を掛けておるのか…お仕置きじゃな」
 エウトティア・ナトゥアは嘆息した。
 パンテスキ盗賊団。聞いた名だ。
 エウトティアが別件にて相手した奴らだ。
 悪事を働かぬよう痛めつけたはずだったが、懲りずに稼業を励んでいるらしい。
 再び悪の芽をつむために、エウトティアはグラシー商店へとむかうのだった。

 グラシー商店の前に動物たちが集まってくる。
 狼と鷲の群れ。何事かとそれを見つめる店員たち。
 動物たちは吠える訳でも暴れる訳でもなく、整然と並んでいた。
 その中をエウトティアが颯爽と歩いてくる。
 そして店にむかって大声で叫んだのだった。
「たのもー!護衛の仕事があると聞いて来たのじゃ!」
 得意げに、クイと手製の眼鏡を動かした。
 面接、というだけあって彼女は気合いを入れて臨んで来た。
 身だしなみは完璧、毛並もつやつやだ。
 雇い主に対して不快な印象は与えないであろう。
 店先の騒動に、奥から店主グラシーがやってくる。
「おお、そなたが店主殿か。わしの名はエウトティア・ナトゥアじゃ」
 さっそく傭兵として自分を売り込もうとするエウトティア。
 だがそのアピールは、予期せぬ出来事によって中断されることになる。
「がふっ!」
 吐血!
 商人グラシー吐血!
「な、なんじゃ!?」
 エウトティアはうろたえた。いきなり目の前で血を吐く人間を見れば誰だってそうなる。
 グラシーはエウトティアを指差した。
 まさか彼女が犯人とでも言うつもりなのだろうか。
 商人は弱弱しく口を開いた。
「眼鏡っ娘……ケモ耳眼鏡っ娘……馬鹿な、そんな馬鹿な」
 ゴフゴフと血泡を吐きながらもがくグラシー。
 そんな彼を介抱し、抱え起こす使用人。
「旦那様、しっかりしてください旦那様」
「うう……ケモ耳……蔓は? 蔓はどこにかかってるの? 耳はどこなの?」
 幾分か幼児退行した主人に使用人は優しく諭す。
「しっかりしてください旦那様、ここはアックス&ウィザーズです。夢も魔法もあるんです。エルフだってフェアリーだって、ましてやケモノっ娘だって、みんな眼鏡をかけてもおかしくない世界なのです」
「うう……そうだ……そうだった。眼鏡は……世界」
「ええ、世界は眼鏡です旦那様」
 エウトティアが起こした騒動よりはるかに大きい衝撃をグラシーが与え、ひとときの中断ののち、二人は応接部屋にて相対することになる。
 最初のインパクトはグラシー・ズダイスキーに軍配があがったようだった。

「いやはや、お見苦しい所をみせてしまいましたな」
 深々と頭をさげるグラシー。
「いや、儂は気にはしてはおらんよ。それにそちらが雇い主の立場であるしのう」
 先ほどの動揺を押し隠し、笑みを取り繕うエウトティア。
 気を取り直して自分の能力を説明する。
「店先の動物たちは見て貰えたと思う。儂は動物を操るのに長けておってな。街道沿いには野生の獣と遭遇することもあると思うのじゃ。儂がいればそういったトラブルは避けることが出来ると思うのう」
 アピールする彼女をじっと見つめるグラシー。
 その目を見返しながら、エウトティアは続ける。
「それに、のう。長旅では馬車の馬の世話も難儀する筈。儂なら馬たちをなだめすかすこともできるのじゃ。もちろん、鷲をつかって斥候の役割も果たせるぞ? 野生の動物たちに協力を仰げば、賊の襲撃など遅るるに足りんと思うのじゃ」
 いかがかな、と商人に尋ねるエウトティア。
 グラシーは、そんな彼女にむかって真剣な面持ちで返す。
「その言葉、嘘ではないでしょう。貴女がいれば旅路も心強い。これからよろしく
お願いしますよ」
 これから、という言葉にエウトティアは喜んだ。
 どうやら雇えてもらうのには成功したようだ。
 しかしエウトティアは気づいてはいなかった。
 商人は先ほどからうわの空、話は耳にはいってはおらず、彼女の眼鏡しか見つめていなかったという事を。

エウトティア・ナトゥア――採用

大成功 🔵​🔵​🔵​

花園・スピカ
【WIZ】

(眼鏡っ娘人形に眼鏡っ娘人形が見入ってるシュールな光景)

あっすみません、とても精巧で美しかったので
宜しければこの子達、私にも守らせていただけませんか?

【コミュ力】駆使

腕前は…そうですね… (周りに影響する実演はまずいなぁ…と思案中、グラシーさんの動作に違和感感じ)
あれ?もしかしてお怪我…されてますか?
でしたら少し失礼して…(【優しさ】【医術】とUCでさくっと治療)
もちろん戦闘も普通にこなせますが…一番の得意分野はこれかと
あとはお許し頂ければお人形の影武者もできるかもしれません

グラシーさんの眼鏡への熱い想いを伺いつつ
…私を作った人はどんな想いで私に眼鏡をかけさせたのかな…(ぽそり独り言



 店内にグラシーが戻った時、彼は荘厳な光景を目にすることができた。
 陳列されている人形、それを女性が見つめていた。
 眼鏡っ娘が眼鏡っ娘を見つめているという状況に。
 片方の美ともうひとつの美が出会い、溶け合い、昇華されていく。
 その光景を目にしたとき、グラシーの胸から何かこみあげる想いが募る。
 そしてグラシーは口を開いた。
「がふっ!」
 吐血!
 商人グラシー吐血!
 花園・スピカは一瞬、なにが起こったのか理解できなかった。
 面接を待つまでの間、陳列を眺めていたら店主と思わしき人物がいきなり口から血を吐いたのだ。
 しかしグラシーは幸運だった。
 花園には他人を癒す力があった、しかも眼鏡っ娘だ。
 柔らかく温かい光がグラシーを包む。
 するとたちまち傷は癒され、気分が良くなった。
「あの……大丈夫でしたか?」
 花園が微笑む。その優しい笑顔を汚してはならぬと、介抱されていたグラシーは喉の奥からこみあげてくる血反吐を気力で押しとどめることに成功した。
「大変お見苦しい所を……ええと」
「花園、花園・スピカと申します。あのここで傭兵を募集していると伺いました。私、応募しに参ったんです」
「これは失礼しました。ではここでは何ですから場所を移して伺いましょう」
 こうして花園も応接部屋へと案内され、面談を受けることになったのである。

「店内を勝手にうろうろして申し訳ありません」
「いえいえ、あれは貴女のせいではありませんので。お気になさらなくても」
 謝罪する花園の言葉をグラシーは聞き流す。
 眼鏡っ娘と自分、誰に非があるかは歴然だ。
 眼鏡っ娘に非があろうはずがない。謝罪などする必要がないのだ。
「……それでですね。宜しければこの子達、私にも守らせていただけませんか? 戦闘もそれなりにこなせますが、先ほどのように回復の素養を持っていますので、お役に立てると思います」
 花園の優しい笑顔を前にグラシーは考える。
 味方を癒す者が一人いれば、それは戦力の減少を抑えられるということだ。
 頼もしいことに間違いない。しかも眼鏡っ娘だ。
 グラシーの中ではほぼ、採用は決まりかけていた。
 しかし花園の言葉を聞いて顔が曇る。
「奥の手というか、許し頂ければお人形の影武者もできるかもしれません」
 はにかみながら、そう答える花園。
 そんな彼女に、グラシーは首を振って否定する。
「それはいけません。雇い主として述べさせていただきますが、人形の影武者というのは必要ありません」
 真剣な表情で花園を見据える。
「なぜなら……眼鏡っ娘に貴賎はないからです」
 商人は熱く語った。
「護衛のための傭兵をたしかに募集はしています。人形を奪われるのは愛娘を誘拐される様なものです。が……人形というものは再び作ればよろしいのです。再び魂を込めればよろしいのです。同じ眼鏡っ娘は無く、一体一体に心血を注ぐように、眼鏡っ娘に代用に出来る人物など居りはしません。天は眼鏡の上に眼鏡を創らず、眼鏡の下に眼鏡を創らずという言葉もございます。傭兵としての任務をたしかに依頼はしますが、貴女の身体を、眼鏡を大切になさってください」
 熱のこもった調子に、花園はたじろいだ。
 彼女はミレナリィドールである。
 だから人形と近い存在故に影武者を申し出たのだが、この人は自分を気遣ってくれている。
 そこには人形の、眼鏡への熱い思いが感じ取られた。
 己のかけている眼鏡に、自然と手が伸びる花園。
 自分も、生み出された存在の一つ。
 そして目の前の人は、人形に魂が有るという。
「……私を作った人は、どんな想いで私に眼鏡をかけさせたのかな……」
 ぼそりと呟く花園。
 彼女たちと、自分の違いとはいったいなんであろうか。
 どちらも、愛情を込められて作られたのは間違いない。
 しかし自分は動くことができている。
 それは文明の違いだけで説明がつくものなのだろうか。
 眼鏡とは、一体。
 花園はしばし、物思いにふけるのであった。

 花園・スピカ――採用

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 冒険 『隊商の護衛』

POW   :    不寝番で見張る。

SPD   :    斥候や警戒を行なう。

WIZ   :    守りやすいルートを提案する。

👑11
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 隊商の護衛として猟兵たちを雇ったグラシーは、荷造りを終え街を出発する。
 これから納品先へと人形を納めにいくのだ。
 街から街へと移動し、注文を受け付け帰ってくる。
 その間、使用人と店員に店を任せることとなる。
 いつも通りの、ちょっとした長旅だ。
「旦那様、お気をつけて」
「なあに、こちらには手勢がいるし。慌てることもないさ」
 グラシーの表情に不安さはみえない。
 おそらく彼はずっとこうやって商売を続けてきているのだろう。
 だが猟兵たちは知っている。
 この先、盗賊どもが襲ってくる未来があることを。
 いつか、どこか、ということははっきりしていない。
 だがこの積荷を狙っているパンステキ盗賊団は、必ずどこかにいる。
 猟兵たちはこの先起こることに警戒しながら、隊商の護衛の任へとついたのだった。

 ※街から街へと納品しながら、得意先を廻ります。
 ※街中は衛兵がいるので、特に警戒しなくて大丈夫です。
 ※猟兵たちは街の外、街道などでの護衛がメインです。
 ※グラシーを説得できれば途中の街で馬や馬車、その他の品を用意できます。
織部・水重
SPD行動
アドリブ連携OK

襲撃地点はまだ先じゃな
ならば拙者なりのやり方で襲撃に備えるとしようかの

移動中は先頭馬車の屋根の上に乗り、前方を警戒じゃ。
休憩中や野営の時は【バウンドボディ】で高所に飛び乗って周囲を見張るぞい
今は絵師のフリをしとるから店主には「アート」で風景を描くため、と言っておこうかの
「ちと揺れるのう、しかしこの揺れが筆遣いに面白き味を出すやも…」
(多勢が隠れられそうな場所はあの丘かの…)

おっと、仕事の手伝いもするよう頼まれておったの
「言いくるめ」で途中の街での交渉事を手伝えそうじゃの
旅に必要な物資や他の猟兵が欲しい品を手配するとしよう
「その値段なら他の店に行こうかの、ゲヒヒヒ…」


エウトティア・ナトゥア
とりあえずメガネは不思議な力でくっついておるので深く考えるでないぞ。(ブリッジを押上げつつ)

(動物使い+騎乗)
いい陽気に街道に吹くそよかぜが気持ちよいのじゃ。
さて、馬達の面倒をみる約束じゃし、馬達の世話や御者をしながら護衛に勤しむかのう。
まずは大鷲を呼び出して上空から警戒させるかの。
次に狼の群れを呼び出し、扇状に数km先行させて街道やその周囲を調査、得られた情報は皆と共有するのじゃ。
マニトゥや、危険な野生動物やパンテスキ一味以外の盗賊等はお主に任せるでな、適当に追い散らしておくれ。

(積荷を見やりつつ)
それにしても人形も装飾品も中々見事なものじゃな。これはこれで芸術的な価値のあるものなのかのう?


ティエル・ティエリエル
SPDで判定

「ようし、それじゃあボクは上空から偵察してるね♪」

面接時に言っていた通り、背中の翅で羽ばたいて空からの偵察を担当するね♪
他の空を飛べる傭兵さんとは交互に見張りをすればばっちりだよね☆

空からの見通しの悪い森とかがあったら小さな身体を利用して先行して調査してくるよ!
森で動物を見かけたら「動物と話す」や「コミュ力」を使って怪しい人がいなかったか尋ねてみるね♪

護衛の休憩中はグラシーさんと一緒に人形のかけてるメガネを綺麗に磨いてあげようかな?

※アドリブや他の方との連携も大歓迎です


幽草・くらら
宣言通り隊商の上空から偵察を行います、他に同じ方針の方がいれば協働したり交代したり情報交換したりも追加ですね。
上空での警護が1人だったら多分寂しいなぁとか言いながらなんやかんや真面目にやってると思います。

隊商には馬車を用意してもらって、荷台から目を光らせたり上空から監視して警戒していきます。

怪しい人影を見つけたら上空から【範囲攻撃】込みでUCを発動。
塗料が付着した地面は私の魔力で凍り付くので敵を寄せ付けず、うまくいけば敵を捕らえて次の襲撃を有利に迎えられたらな……といった魂胆です。


花園・スピカ
【WIZ】

(面接時激しく吐血していた事を思い出して)
グラシーさん、もしかしたらお体があまりよろしくないのかな…?
他の方々や馬さんの怪我はもちろんですけれど、また吐血なさった時の為にもすぐにUC含め治療できる準備をしておきましょう(※盛大な勘違い)

できれば足場の悪いルートや急勾配は避けたいです
馬さんや馬車への負担、大切な人形達の破損にも繋がりかねませんから
そういう意味では重量を極力抑える為に必要なものは(不足しないよう多少の余裕はもちつつも)ある程度その都度街で揃える方がよさそうです


もし可能なら納品の様子を見せて頂いても大丈夫でしょうか…?
魂のこもった人形達を迎える人々の姿、私も見てみたいんです



 積荷を乗せ馬車は移動を開始する。
 納品する品々を乗せた馬車達とは別に、先行する形で一台の馬車が先を進む。
 猟兵たちが用意した馬車である。
 エウトティアが巨狼マニトゥにまたがり、横にならぶ形で追随する。
 すでに狼たちには先行させている。
 次の街まで行く間に、なにか問題があれば姿を現すだろう。
 見上げれば空は晴れている。
 旅路の幸運を祝福してくれるかのようだった。
「そよかぜが気持ちよいのう」
「うむ。まっことその通り」
 馬車のホロの上で、織部が呟きに相槌をうつ。
 彼は道すがらの風景を絵に止めながら、周囲を警戒してくれていた。
 今のところ筆に止まる物はとくに見当たらず、もっぱら牧歌的な風景が仕上がっていく。
 花園が荷台に身体を揺られながら、二人にむかって尋ねた。
「グラシーさん、大丈夫でしょうかね……?」
 その声には、不安がこもっていた。
「どうしてじゃ?」
「いえ、その……御身体が悪そうでしたから……」
 花園は面接のことを思い出していた。
 血を吐くグラシーの姿、それが気にかかっていたのだ。
 何か身体を悪くしているのではないか、彼女はそう気にかけていたのである。
「あー……うん、あまり気になさらぬほうがよろしいぞ」
 伊達眼鏡をくいとあげ、気にするなとエウトティアが言う。
「うむ、その通り。あれは草津の湯でも治らぬものゆえ、拙者たちではどうしようもありませぬな」
 織部も続けて返す。
 そういうものなのかな? と花園が考えあぐねている間に、空から隕石が降ってきた。
「うーーー、休憩休憩!」
 ティエルが空の偵察を中断し、馬車へと下りてきたのだ。
 マニトゥの頭の上に着地し、翅を休めている彼女にエウトティアが尋ねる。
「これはティエル殿、空はどうじゃったかな」
「今はまだなーんにも見つからないかな。くららと交代だよ」
 ティエルが指差す先には、幽草が上空高く飛んでいた。
 その傍には大鷲も飛んでいる。あれもエウトティアが召喚したものだ。
 幽草にも変わった様子は見えない。
 今のところ順調といえた。
「大鷲ちゃんもいいけど、マニトゥちゃんもふかふかして良いね!」
 巨狼の頭の上で飛び跳ねる小さな妖精。
 マニトゥはその客人を咎めたてることもなく、黙って四肢を動かし前へと進んでいく。
「ふむ、花園殿。マニトゥが首を痛めたら助力をお頼みいたそう」
「ええ、喜んで」
 旅はまだまだ始まったばかりだ。馬車はゆっくりと街道を進んでいく。
 上空にて警戒していた幽草ではあったが、怪しい人物は今のところ周囲にはいなさそうだった。
 街から出たばかりだから当然ともいえるが、予知では盗賊に襲撃されるはずなのだ。
 警戒するに越したことはないだろう。
 街道を流れる風が、涼やかにくららの身体を通り抜けていく。
 ブラシの先で、大鷲が羽を休めようと身を止まらせた。
 少し前までは、そこはティエルの席だった。
 下には馬車が見える。他の猟兵もそこにいる。
 自分も休憩と称してあそこにいこうか。
 一瞬そんな考えがよぎったが、すぐに打ち消した。
 しばらくすればティエルもまた空へとやってくるに違いない。
 その時、下で何を話していたか聞くのも悪くは無い。
「なんにせよ、一人じゃなくて良かったです」
 幽草は生真面目に、空の偵察任務を続行するのであった。

 夜。
 野営。
 グラシー達、商人や御者たちは旅の疲れを休めている。
 だが猟兵たちの仕事はこれからだ。
 織部は高所で陣取り、周囲を警戒していた。
 どこかで狼の無く声が聞こえる。
 野生の獣には昼夜は関係ないと見える。
「人形は獲物ではござりませんからなぁ。そのまま襲わないでほしいでございますな」
「ううん、襲わないと思うよ?」
 織部の疑問にティエルが答える。
 同じように偵察していた彼女だったが、いつのまにか木の上までやってきたようだった。
「ほう、それはどうしてかな?」
「だってあれエウトティアの狼だもの、異常なしって吠えてるよ」
 当たり前、といった顔のティエル。
 なるほど、妖精ならばそういう能力を持っているのかもしれない。
 だがあいにく自分はブラックタール。
 動物と言葉を介す舌は持ってはいなかった。
 ふと見ると、下で幽草とエウトティアが手をあげている。
 どうやら交代の時間になったようだ。
 二人と代わって、織部とティエルは休むことにする。
「お疲れ様です」
 花園が役目を終えた織部とティエルに手をかざす。
 柔らかい光に包まれ、疲労が薄れていく。
 なるほど、これならば長旅も辛くは無い。
 優しさに包まれながら、二人は寝入ったのであった。

 護衛を続け、隊商は街へと入る。
 手続きをすませ、商人たちの荷物を置く場所へと案内され、そこへ停めるよう言い渡される。
 グラシー達はそこから、この街の納品を選り分けて街の中へと入っていく。
「ふむ、では念のためわしは馬車の側で待機しておるか」
 商人たちの荷物は見まわる衛兵たちが監視している。
 盗まれるような心配はない。
「じゃあ、ボクも一緒!」
 ティエルもここへ留まることを希望し、街へは他の三人が従うことになる。
 鼻歌を歌いながら人形たちの眼鏡を拭いているティエル。
 その近くで身体を休めているエウトティア。
 石畳の上を歩くよりは、こうやって馬やマニトゥの傍にいるのが十分にやすまる。
 それに、とエウトティアはティエルを見やった。
「ん? どうしたのかな」
 視線に気づいたティエルが首を傾げた。
「いや別に、仕事熱心じゃのうと思ってな」
「今のボクは傭兵だからね。雇い主の品を守らないとね☆」
 屈託なく笑うティエルに、エウトティアは頷く。
 安らぎの時間。
「さてはて、ついて行った御仁たちは毒気に当てられぬといいがのう」
 彼女はマニトゥを撫でながら、グラシーについていった仲間達の身を案じるのであった。

 一方、街へと入った幽草は画材店へと足を運んでいた。
 自分の魔術には塗料や画材を媒介とする物がある。
 そして、その街だけの珍しい画材が売っていたりする時もある。
 補給ついでにそれらの品もあればと、寄ってみたのだ。
「その値段なら他の店に行こうかの、ゲヒヒヒ…」
 店員に歩み寄り、交渉をしている織部。
 彼も画材を求めてこの店へとやってきたようだった。
 では一緒にと、彼は幽草の品も合わせて、相場より値切りに値切り倒して品を手に入れることに成功した。
「ありがとうございます」
 店を後にする彼の背に、幽草は礼を述べた。
「なんの、拙者も筆を嗜んでござってな」
 そういって、彼は一枚の絵を幽草に差し出した。
 地平線へと伸びていく一本道の街道。
 左右には草原が広がりそよ風で揺れているのがわかる。
 その中を馬車は進み、それを避けるように行きかう人々。
 空は青々と澄み渡っており、旅路を祝福するかのような絵であった。
 そして、その空にブラシにまたがった魔女が一人。
 大鷲をブラシの柄先に止めて、馬車を先導するかのように上空を飛んでいた。
 そんな絵を見て、幽草はおずおずと尋ねた。
「これ……ひょっとして、私ですか?」
 左様、と首を縦に振る織部。
「良い物は筆に残しておきたい性質でございましてな。被写体が良いと、いい絵が描けますな」
 はにかむ幽草に対し、織部は満面の笑みで礼を述べるのであった。

 花園はグラシーの護衛として、街へと入っていた。
 彼女はグラシーを病気持ちと誤解していたことにも起因しているが、なにより人形たちを購入した人に興味も興味があったからだ。
 だからグラシーに願い、商談についていくことを許可してもらったのだ。
 他の猟兵たちは、何らかの理由をつけて商人から離れようとしていた。
 しかし哀しいかな、彼女の優しさが眼鏡の世界へと自ら飛び込むことを望んでしまったのであった。
 富豪の邸宅。
 そこで客にグラシーと一緒に出迎えられた花園は、眼鏡っ娘の世界の一端を垣間見ることになる。
「素晴らしい! まるで眼鏡っ娘の理想が形になったかのようだ」
 屋敷の主人は、人形を手放しで賞賛する。
 どうやら大変気に入ってもらえたようだった。
「注文通り……注文以上の出来栄えだ。やはり君の作る物は良い。金なぞ幾らでも払って良いという気になるよ」
「ありがとうございます」
 深々と客にむかって礼をするグラシー。
 部屋には眼鏡をかけた人形が鎮座している。注文をうけて作成したものだ。
 そしてその他にも数々の眼鏡っ娘人形が、処狭しと部屋に鎮座していた。
 彼はグラシーの店から何体も何体も、人形を購入していたのである。
「眼鏡、お好きなんですね」
 ひとりでに呟いた花園の言葉に、客は頷いた。
「もちろんです、麗しい眼鏡のお嬢さん。私はこの娘たちが大好き、眼鏡が大好きなのです」
 胸のうちを抑えきれなくなったのか、客が身振りをこめながら語り出す。
「オーバルが好きだ、ボストンが好きだ、スクエアが好きだ、ウェリントンが好きだ。フルリム好きだ、ハーフリムが好きだ、アンダーリムが好きだ、ツーポイントが好きだ。この地上でかけられているありとあらゆる眼鏡が大好きだ。快活な眼鏡っ娘が運動しているのが好きだ、時折り眼鏡を外して汗をぬぐい、またかける時など心がおどる。文学眼鏡っ娘が書籍を読むのが好きだ、続きを読もうと背を伸ばして高い所の本を取ろうとしている姿を見た時は胸がすくような気持ちだった。眼鏡のメイド長が新人を叱責するのが好きだ、どうしてミスをしたのか正論を交えて指摘し、何度も眼鏡を直している様など感動すら覚える。夫に先立たれてうなだれる眼鏡の夫人などはもうたまらない。哀しみに打ちひしがれる眼孔にまるでアーチのようにかかる眼鏡に涙が触れるのも最高だ。起床して眼鏡をどこに置いたのか忘れて手をわたわたと動かしようやく見つけて顔にかけた時など絶頂すら覚える。眼鏡っ娘に踏まれるのが好きだ。恥ずかしがって踏んでくれないかもしれないが、拒絶されるのはとてもとても悲しいものだ。裸の眼鏡っ娘いっぱいのプールに飛び込んでもみくちゃにされるのが好きだ。眼鏡と肌が触れ合うのを感じながら、私は天国へと召されるであろう。
気になっていたあの娘がレンズの度数を気にしてコンタクトに替えるのは屈辱の極みだ」
 一旦言葉を切り、熱に浮かされたかの様な目で客はグラシーを見つめた。
「ズダイスキーさん、私は眼鏡を。奇跡の様な眼鏡を望んでいる。君は一体何を望んでいる? 更なる眼鏡を望むか? 慈悲に溢れ美を体現するかのような眼鏡を望むか? 須弥山の頂きからをこの世を照らし三千世界の愚昧を照らす日輪の様な眼鏡を望むか?」
 その問いに、グラシーは大声で叫ぶ。
「眼鏡! 眼鏡! 眼鏡!」
 その答えに、客は満面の笑みを浮かべた。
「よろしい、ならば次の注文だ。我々は真理を求めて足掻こうとする盲目者だ。だがこの地上で自らの腐敗に呻く、蛆虫のような我々にただの眼鏡ではもはや足りない!」
 両手を伸ばし、まるで頭上に輝く陽を掴むかのような格好。
 その眼は陶然と光輝いていた。
「眼鏡を!! 一心不乱の眼鏡っ娘を!! 私はただの富豪、成金を稼いだ愚者に過ぎない。だが君は他に類を見ない、古今無双の職人だと私は確信している。ならば私は君にすがって眼鏡を増やし続ける求道者となろう。眼鏡を余分な物と追いやり美から目を逸らす連中を叩き起こそう。髪の毛をつかんで引きずり降ろし眼鏡をかけさせて思い出させよう。連中に眼鏡の美しさをわからせてやる。連中に眼鏡の世界の色を焼きつけさせてやろう。天と地のはざまには我らの哲学では思いもよらない事があることをみな知るであろう。そのために私は私財をなげうって眼鏡っ娘を……この街の辻々に彫像を飾るつもりです。これからもよろしく頼みます、ズダイスキーさん」
 両目から大粒の涙を流し、握手を求める客。
 グラシーも涙を流しながら握手、そして熱い抱擁を交わすのであった。
 それを一人、黙ってみている花園。
 彼女には演説の内容は頭にはいってはこなかった。
 だが眼鏡に対する愛情。人形に対する愛情は、しっかりと心に刻まれたのであった。

 この街での要件は済んだ。
 隊商は街を離れ、再び街道へと。
 人形は少なくなったが、かわりに代金が積まれている。
 これも大切な物だ。盗まれぬわけにはいかない。
「それにしても人形も装飾品も中々見事なものじゃな。これはこれで芸術的な価値のあるものなのかのう?」
 エウトティアが積荷を見ながらしみじみと呟く。
「ええ、素晴らしい物なんですよ」
 眼鏡の世界へと踏み込んでしまった花園が、満面の笑顔をエウトティアに向ける。
「エウトティアさんも商談の場へと来れば良かったのに。眼鏡は世界を救うんですよ」
「その通りです」
 いつの間にか、馬を並べてグラシーが近づいていた。
「人々が眼鏡をかけるようになれば、きっと世界を平和になるでしょう。よろしければ、その眼鏡の作成法をお教え願えませんかな?」
 わざとらしく眼鏡をなおしながらエウトティアは首をふった。
「あいにくこれは部族の秘術……不可思議な力で固定しておってのう。量産は出来ぬと思うのう?」
 その言葉に、心底残念だといわんばかりにため息をつくグラシー。
「そうですか……まあ眼鏡ならば不思議な魔力を込めていても不思議ではありませんね。しかし私は諦めません、必ずや眼鏡っ娘の神秘に辿りつけるよう努力いたしましょう」
 そういって拳を握りしめるグラシー。
 そんな彼にティエルは明るく声をかける。
「ボクは普通の眼鏡も好きだな。だって買ってくれる人もいるんでしょう?」
 眼鏡を綺麗に拭いてやり、人形にかけ直すティエル。
 自分でかけたりはしない。
 なぜなら面接の惨劇を目にしているからだ。
 ティエルは賢い娘なのだ。
「ええ、そうですね。しかし哀しいことに価値を見いだせることが出来ず、ただ金目の物だからと、彼女たちに触れる不届き者が後を絶ちません。なのでこうやって皆さんに護衛を頼んでいるわけです」
 せめて、眼鏡っ娘の価値をわかっていただけるならばお譲りするんですがね。
 悲しげにため息をつくグラシー。
 そんな商人の身体が揺れる。
 どうやら馬体がバランスを崩したようだ。
 街道は平野から山道へと、だんだん姿を変えている。
 猟兵たちは商人に後ろに下がってくれるようお願いし、護衛を続ける。
 丘を上がっていく馬車群。
 箱や人形などの隙間には、毛布などが積まれている。
 花園の薦めで緩衝材として街で購入した物だ。
「ちと揺れるのう、しかしこの揺れが筆遣いに面白き味を出すやも…」
 揺れる馬車の上にもかかわらず、絵を描くことを止めない織部に、花園は地図を眺めながら答える。
「この先、ずっと林の中を上りながらの山道ですからね。揺れるのも無理はないですね」
 花園の声に織部は目を細める。左右に林が続く山道。
 前と後ろに馬車は進むしかなく、林の中を逃げるにしても木々が邪魔をする。
(多勢が隠れられそうな場所はここか……?)
 織部の筆が止まる。
 そんな彼の胸中を見透かしたのか、幽草が馬車の上で滞空する。
 林の中ではあまり高くは飛べない。
 だが、高所からの攻撃は相手も防ぎにくいに違いない。
 エウトティアはとっくに狼たちを斥候に放っていた。
 こういう時、動物と会話が出来るのは貴重だ。
 なにしろ相手にはただ吠えているだけにしか聞こえないからだ。
 遠吠えが聞こえる。
 そしてまた別の狼がそれに合わせて遠吠えを。
 それは、林に伏せている人影を発見したという報せ。
 狼たちの報告を聞き、皆に知らせようとするエウトティア。
 それよりはやくティエルが大声をあげた。
「オオカミちゃんが怪しい人物をみつけたって!」
 その声に、猟兵たちが色めきたつ。
 いよいよか。
 足音を立てないように接近できる幽草とティエルを行かせ、他の猟兵は馬車の護衛を強化するのであった。

 草木に隠れながら男は一人、山道を見張っていた。
 男はパンステキ盗賊団の一員である。
 斥候として、隠れながら馬車が来るのを待っていた。
 頭によれば、この道をお目当ての物を積んだ馬車がやってくるのだという。
 男はそれが来たら報告する役目を任されていたのである。
「それにしても……」
 男は愚痴をこぼす。
 先ほどから獣のなく声があちこちに聞こえていた。
 それなりの修羅場はくぐってきても、野生の獣と戦った経験は無い。
「はやく、みんなの元へ戻りたいぜ……」
 さっさと姿を見せろ。
 そう思っている男の鼻先を、何かが通り過ぎた。
 何事かと顔をそむける男。
 その眼前には妖精がひらひらと舞っていた。
 おどけるようにひらひらと翅を動かし、無邪気な笑みをこちらにむけている。
 男は一瞬、どうしていいかわからなかった。
 そして、男の背後から冷や水を浴びせるように、冷気が叩きつけられたのあった。
 首から下が氷漬けになった彫像が、林に出来上がる。
 男はそれなりの修羅場をくぐってきたことは間違いなかった。
 だが獣の嗅覚と空を飛ぶ者の存在を、男は侮っていたのである。
「やったね☆、くらら!」
 賊を捉えたのを嬉しそうに、ティエルは幽草と喜ぶのであった。

「パンステキ盗賊団じゃな」
 ひっ捕らえられて馬車の前に突き出された盗賊を見てエウトティアが言う。
 彼女には盗賊がつけている腕章に見覚えがあった。
 黒い下着に紫のガータベルトを組み合わせたかのようなエンブレム。
 パンステキ盗賊団に間違いなかった。
「すると、この先やつらが待ち構えているということでござるな」
「じゃろうな」
 猟兵たちの顔つきが変わる。
 あいにくと自分たちに尋問の技術はない。
 口を割らせることはできそうになかったが、この先待ち構えていることは、この男の存在そのものが証拠となるだろう。
「だとすると、このまま先を進むのはあまりよろしくないですね」
 花園の言葉にうなずく猟兵たち。
 そんななか、おずおずと幽草が手をあげる。
「あの……ちょっといいですか? 私に考えがあるんですけど……」
 そう言って、自分の考えを口にする幽草。
 考えを聞かされ、猟兵たちは頷く。
「おもしろそー☆、やってみようよ!」
 待ち構える盗賊団に対抗するため、猟兵たちは幽草の策を実行に移すのであった。

 ガラガラと音を立てて山道を馬車たちが駆け上がっていく。
 それを、伏せていた盗賊団が発見した。
「来たぞ」
 遠眼鏡をつかい馬車を確認すると、遠目ではよくわからないが、人形の類や箱が積まれているのが確認できた。
 あれが目的の馬車に違いない。
「頭、確認してくだせえ」
 頭と呼ばれた老紳士は遠眼鏡を借り、それを眺めて微笑んだ。
 この老紳士こそ多くの盗賊を操るパンステキ盗賊団の頭目、パンステキ本人である。
「ズダイスキーの印が馬車に刻んであります。間違いありません、あの馬車ですね」
 その声に、他の盗賊団が色めき立つ。
 ズダイスキーの人形は好事家たちの欲しがる所。
 横流しして売れば大儲けできるに違いないからだ。
「やった! やろうぜ皆!」
「しかしカシラ。カシラは何で馬車が来るってわかってたんでさあ?」
 子分の疑問に、パンステキはおやおやと、わざとらしく身振りする。
「別段、おかしくはありませんよ。この先にある街、そこにいる富豪に変装して注文を依頼しただけです。だからあの積荷には、私が頼んだ品が積んであるはずです」
「さっすがカシラは頭が良い!」
 げははははは!
 げははははは!
 盗賊たちの野卑な笑いが林に響く。
 パンステキは客の振りをして人形たちを作成させ、金を払わずに奪おうというのだ。
 当然、他の客が頼んだ品々も盗むつもりだ。
「手付けとして幾分懐は痛みましたが、あれを回収すればおつりが来るでしょう。みなさん、戦果を期待いますよ」
「がってん!」
 うきうきと得物を抜き放つ盗賊たち。
 その一人が、パンステキに話しかける。
「カシラ……そういえばスミスに斥候を申しつけたんじゃ?」
「待っているあいだ居眠りしたのかもしれませんね。しかし馬車を通りすぎさせるわけにはいきません、いきましょう」
 いきりたつ盗賊たち。
 パンステキ盗賊団は、略奪のために動き出したのであった。

「ひゃっはーーーーー!」
「馬車は襲うな! 刃向う奴だけ相手しろ!」
「武器を捨てなぁ! 俺たちゃ金品にしか用はねえ!」
 山道を進む馬車の群れに、盗賊団が襲いかかる。
 御者たちは慌てふためき、荷台から飛び降りて逃げ出そうとしていた。
 「ひゃっはーーーーー! 逃げな逃げな!」
「俺たちゃ紳士だからよ! 大人しくするなら命はとらねえぜ!」
 逃げてくれれば好都合だ。
 盗賊たちは御者の代わりに馬車を操ろうと手綱を握る。
 他の賊たちも集まり、積荷を奪おうとする。
 だが次の瞬間、止まっていた馬車の荷台が破裂した。
「ぐあああああーーーー!」
 訳もわからず吹っ飛ぶ盗賊たち。
 遠目で見ていたパンステキも動揺する。
「な、なにごとです!?」
 辺りにはライトブルーの色彩がまき散らされ、一面の氷結地帯と化していた。
 事の出来事に、盗賊たちは混乱するのであった。

 幽草の策。
 それは囮として馬車を先行させ、隠れている盗賊団をおびき寄せるというもの。
 グラシーたちを後続に待機させ、猟兵たちが御者として馬車を駆る。
 食いついて出てきたところで一旦猟兵たちは引く。
 馬車には氷の魔力を持つ塗料が積んである。
 そしてそれを幽草によって遠隔発動させたのだ。
 氷結爆弾とかした馬車の積荷は、辺りを凍結させ、盗賊たちにも負傷を負わせた。
「おうおう、驚かせてすまなかったのう」
 エウトティアは怯える馬たちをなだめ、戦闘区域から逃がしてやる。
 ここからは自分たちの領分だ。
 それぞれの武器を手に取り、猟兵たちは盗賊に対峙するのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『パンテスキ』

POW   :    パンテスキ盗賊団
【レベル×5人の配下の盗賊達 】が現れ、協力してくれる。それは、自身からレベルの二乗m半径の範囲を移動できる。
SPD   :    強奪の手
【素手による攻撃 】が命中した対象に対し、高威力高命中の【防具を透過し下着を抜き取る一撃】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
WIZ   :    包囲陣形
【配下の盗賊達に指示を出し、一斉攻撃 】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
👑11
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 盗賊たちの悲鳴が、林の中に木霊する。
 いったいどういう訳か、パンステキの奇襲は見破られていた。
 あべこべに、こちらが奇襲をうける羽目になってしまったのである。
 パンステキは激怒した。
 パンステキには法律は知らぬ。
 ただ己の欲望に従い、下着と財宝を奪って暮らしてきた。
 しかし盗賊団への攻撃は人一倍敏感であった。
 それは自分に対しての侮辱へとなるからだ。
 赤いマントを取り出し、身に着ける。
 それはパンステキが本気になったことの合図。
 そして己に敵対する愚か者に、裏地に縫いこんだ下着の数々……戦利品を見せつけることによって威圧するためだ。
「我々を虚仮にしてくださるとは……良い度胸をお持ちのようですね。いいでしょう、お相手致しましょう」
 杖を捻ると柄が外れ、刃が露わとなる。
 仕込み杖を掲げ、パンステキは手下たちに指示をおくる。
「みなさん、我々の仲間に血を流した者達に報復を! パンステキ盗賊団心得!」
「エンジョイ&エレガント!」
 頭目の一喝に、盗賊団は怒号をあげて猟兵たちに襲いかかろうとしてくる。

 アックス&ウィザーズを荒らしまわる盗賊団
 パンステキとその手下は、猟兵を敵と認識して襲いかかってきたのだった。

 ※二章での行動により、盗賊の足元は氷結しており、動きが鈍くなっています
 ※囮となった馬車は破砕して、盗賊たちの侵攻を防ぐバリケードとなっています
 ※馬車の残骸の中から「実は街で購入していた物」を拾うのは自由です
 ※パンステキは増援を呼びます
 ※下履きの描写が無い方には強奪の手は使用しません、仕込み杖での攻撃になります
ティエル・ティエリエル
SPDで判定

「へ、へ、へんたいだーーー!」
裏地にいっぱい下着を縫い付けたマントを着た変態を見つけて思わず大声をあげちゃうよ!

背中の翅で羽ばたいて「空中戦」と「空中浮遊」を組み合わせて頭上からヒット&アウェイで攻撃だー☆
敵の攻撃は「見切り」を使ってひらりひらりと回避、「カウンター」で風を纏ったレイピアによる「属性攻撃」でずばっと刺して回るよ!

花びらのスカートの中は上下一体の若草色のレオタードになっていて下着は穿いてないから
下着を抜き取ろうとしたらレオタードを引っ張られることになるよ!
そんなことされたらボク怒って【妖精の一刺し】でぐさーってしてやるんだから!!

※アドリブや他の方との連携も大歓迎です


織部・水重
SPD行動
アドリブ連携OK

エンブレムに、そのマント…下着ドロを公言するとは中々愉快な盗賊じゃ
笑わせた隙を狙って攻撃するとは侮れぬ、気を引き締めんと…プフッ!

味方の女子に強奪の手が当たりそうな時は身を挺して「かばう」
代わりに拙者の白い越中褌が盗まれるが仕方あるまい
「いや~ん、まいっちんぐ…でござる♪」
「パフォーマンス」でポーズをつけて相手をおちょくる

【ガジェットショータイム】で大量の眼鏡型ドローンを召喚じゃ
レンズで太陽光を盗賊達に集中させ、燃やしてくれよう
「眼鏡とは女神、これは太陽の女神の力なり!」
「店主の言葉あっての発想じゃ。お主の敗因は、創作物に込められた人の魂を理解できなかったことじゃよ」


エウトティア・ナトゥア
来おったな『パンテスキ』、お主も懲りぬやつじゃのう。
その癖の悪い手を切り落としてやるでな、覚悟しておくのじゃ。

【野生の勘+動物使い】
彼奴の手の内は知れておるのじゃ。事前に用意した兄様の下着を重ね着して、手癖の悪い『パンテスキ』対策をしておくとするかの。
まずは数には数で対抗するかの。【秘伝の篠笛】で狼の群れを召喚し、他の女性猟兵と共に切り込むのじゃ。
狼達には配下をけん制させておいて、わしは両手のナイフで『パンテスキ』の手を斬りつけてやるか。
『パンテスキ』が誰かに【強奪の手】を使用するようなら巨狼マニトゥに急襲させ、『パンテスキ』の手にガブリと噛み付いてやるのじゃ。


花園・スピカ
眼鏡っ娘最こ…って、わ、私は今一体何を…!?
(眼鏡より人形の嫁ぎ先が気になって納品に付いていったはずなのに、演説により眼鏡洗脳にかかっていたが爆発音で解けた模様)


…って、何ですかあれ…(敵の裏地に絶句)

UCで女神を召還
配下達を浄化の光と自身の【破魔】の【衝撃波】で【二回攻撃】しまとめて攻撃

自身の下着が狙われたら女神の輝剣で相手の罪(と下着)を斬り捨てる
敵の下着のさらに下が見えちゃったら私が恥ずかしいので…ズボンは切りません(真っ赤な顔でそっぽ向き)

…いかがですか?下着を奪うはずの女性相手に逆に下着を台無しにされたお気持ちは…(丁寧な口調ながら女性の敵に対する怒りをこめた言葉攻めで【精神攻撃】)



 マントを颯爽とひるがえして紳士が現れた。
 遠目でもその姿を猟兵たちは見ることができた。
 その威風堂々とした格好にティエルが大声をあげる。
「へ、へ、へんたいだーーー!」
 無理もない。
 かのような紳士はティエルが妖精として生を得て初めてみるシロモノだからだ。
「プ……フフッ」
 織部もそれは同じだ。
 あのような狂人は金を払っても見れるものではない。
 ここが戦場でなければその傾く姿を写してやりたいところではあるが、いまはいくさ場、失笑をこらえて武器を構え、盗賊たちに備えるのであった。
「何ですかあれ…」
 花園は紳士の格好に絶句していた。
 半分眼鏡の世界へと引きずりこまれていた彼女は、逆に正気を取り戻し、猟兵としての己の心を取り戻す。
 エウトティアは冷静であった。
 以前対峙したことがあるおかげで、ある程度の耐性が出来ていたせいもあるが、目の前に迫る盗賊たちの怒号が、彼女を正気へと取り戻させる。
「お主たちはすでに包囲されておるのじゃ!」
 篠笛を取り出し高らかに吹き鳴らすと、その音は木々の間を抜けて林の先へと木霊していく。
 その音色を合図に、狼たちの咆哮が近づいてくる。
 斥候として放っていた狼の群れ。
 それらを呼び戻し、彼女は盗賊へと襲わせたのだった。
「ぎゃあああーーーー!」
「ぐあああーーーーー!」
 狼の群れが次々と襲いかかっていく。
 冠氷と馬車の残骸で体勢が不慣れな盗賊たちに、それを迎撃するのは少し難しいようだった。
 その阿鼻叫喚の盗賊たちのなかをティエルが疾走していく。
 彼女に地の利は関係ない。
 翅をはばたかせて盗賊たちを討ちとっていく。
 一人、また一人。
 彼女がもつレイピアは、一陣の風となって盗賊たちを駆け抜けていった。
 ティエルが目指すのはこいつらではない。
 特注のマントをひるがえす変、紳士であった。
「やろう! かしらの元へいかせるかーーー!」
 意図を悟った盗賊が、ティエルの前へと立ちふさがった。
 上段から力のかぎり振り下ろされる斧の一撃。
 だがティエルはそれを風圧で流されたかのようにひらりとかわし、逆に錐もみで回転加速して盗賊の頭部に愛剣を突き刺すのだった。
「うっぎゃあーーー!」
 レイピアを振って血を払うと、彼女は敵陣の奥へ奥へとはばたいていく。
 こんな雑魚にはかまっている気はない。
 目指すは敵の頭目、変……パンステキなのだ。
「なにをしているのです皆さん! 正直に突っ込むことはありません、迂回散開して敵を包囲しなさい!」
 パンステキの号令。
 それを受けて後続の盗賊たちが前でやられている仲間達を避けるように、大きく拡がっていく。
 数の優位で猟兵たちを倒そうとするのだ。
「おっと、そうはいかんでござる!」
 織部が彼らを迎撃しようとガジェットを生成する。
 すると織部を中心として、またたく間に林へドローン群が生成された。
 それは眼鏡であった。色とりどり、形状さまざまな眼鏡たちであった。
 その眼鏡たちは、まるでやってくる盗賊たちを眺めるように、ゆっくりと滞空していく。
「店主の言葉あっての発想じゃ!」
 にやりと織部が笑う。
 何条もの光が、木々の中を貫いていく。
 それは眼鏡に反射した太陽光であった。
 レンズによって反射された光は、次のレンズにはね返って木々を抜け、盗賊たちを取り囲んでいく。
 反射されるたびに光条は増幅していく、明るさを増していく。
 蜘蛛の巣に絡め取られた蟲のように、盗賊たちは光の帯に追い込まれ、その身を触れさせた。
 どのような奇跡か! 眼鏡の神秘か! 眼神の力なのか!
 光に触れた盗賊たちは、その身を焦がし火達磨と化していった。
「なんじゃそりゃああああ!」
「お主らの敗因は、創作物に込められた人の魂を理解できなかったことじゃよ! 眼眼鏡をかけて来世をやり直すがよい!」
 氷の地に、次々と焼死体が崩れおちていく。

 ティエルは盗賊たちを抜け、パンステキと対峙していた。
「さあ、覚悟するんだよ、この変態!」
 武器をとって構えるティエルに、パンステキは首を振って否定する。
「違いますねお嬢さん。変態ではありません、紳士です……そう、己が道を究めんとする求道者……それが、紳士」
 仕込み杖の刃をティエルにむけ、諭すように彼女へと語りかける。
「女子供に浪漫は解せぬでしょう……ですが、受け止めてあげましょう貴女の刃を。そして死が貴女を覆う事になっても、貴方は私の元で生き続ける……そう、我がコレクションに加わることによってね!」
 ばさり、とマントをひるがえすと裏地に縫いつけられた下着がまるで孔雀の羽のように鮮やかにひろがる。
 コレクションとはその下着の数々のことであろうか。
「やはりへんたいだーーー!」
 ティエルは叫んだ。
 問答無用と言わんばかりに、パンステキが襲いかかる。
 フェンシングのように二人は切っ先を交わし、必殺の一撃を双方が狙う。
 体格の不利を補うように、ティエルは周囲を周りながらパンステキの隙を窺い、月を放っていく。
 パンステキも老いを感じさせない鋭い突きを返す。
 だが返す刃の先に彼女の姿はすでになく、死角から刺突が盗賊の頭目を狙う。
「ほう……やりますね」
 パンステキが笑う。
 敵が強ければ強いほど、可憐であればあるほど、彼のコレクションとしての価値が増すのだ。
 パンステキの食指がひくひくと動く。
 彼は我慢できずに、獰猛なる一撃を彼女に向けて突き放った。
 電光石化の貫き手。
 パンステキの手に白き布切れがひるがえる。
「ふはははは! いただきましたよ!」
 恐ろしく早い手刀の一撃は紳士がなせる技なのか、上の衣服を破ることなく下着を剥ぎ取ったのだった。
 戦火を確認しようとするパンステキ、だが彼の両目が驚愕にひらいた。
「な、なんですと……!?」
 吐血!
 パンステキ吐血!
「がはっ……があああああああああ!」
 血を吐く紳士、彼が持っていたのは乙女の柔着ではなかった。
 意外! それは越中褌!
「いや~ん、まいっちんぐ…でござる♪」
 わざとらしく、せくちーぽーずで相手を挑発する織部。
 彼は敵の攻撃をかばおうと、自らの身体を張って止めたのである。
 織部が割って入らなければ、嫁入り前のお嬢さんに大変な結果が待っていただろう。
 彼は己の褌を捧げるという漢気溢れる行為によって、乙女の貞操をまもったのである。
 その姿と、手に持った褌の温もりがパンステキの精神を壊す。
 吐血! 再び吐血!
 パンステキの技は完璧であった。
 事実、下着は抜き取られていたからである。
 ティエルの花びらスカートの中身は若草色のレオタードだ。
 引っ張られていたらっどうなっていたことか。
 それを想像し、妖精は顔を真っ赤に染めて怒りの一撃を放つ。
「へんたい! へんたい! どへんたい!」
 一陣の風というより、暴風という速度でパンステキに体当たりを敢行する。
 男性下着を手にしたことによるショックから抜けきることが出来てなかったパンステキは、それをまともに受ける。
「ぐはっ!」
 小柄と言えど、高速での体当たりはよろけさせるのに充分な威力を秘めていた。
 のけぞり、無防備になった紳士の身体へ、レイピアが深々と突き刺さった。
 その衝撃に吹っ飛ばされるパンステキ。
 なんとか起き上がると、止血のためにマントから下着を引き千切り、包帯替わりに傷口へと縛り、止血する。
 その顔には若干、焦りが見えた。
「やってくれますね……」
 パンステキが口笛を吹く。
 するとどこからともなく盗賊たちがあらわれ、頭を守ろうと猟兵たちに立ちふさがった。
 だが、その壁は衝撃波によって吹き飛ばされ、再び道が出来上がる。
「なん……ですと?」
「私をお忘れではありませんか?」
 花園の声。
 そしてその後ろには蹴散らされ、地に伏した盗賊たちの数々。
 花園の傍には、彼女を護るように輝く女神が佇んでいた。
 それは荘厳な雰囲気を感じさせる女神で、持っている剣には血のりひとつ留めていない。
 もうひとつの手には天秤があり、片方の秤には下着が、もう片方には眼鏡が乗せられていた。
「女神よ、罪深く穢れし哀れな者達に眼鏡の審判を…!!」
 花園が静かに呟くと、女神の天秤が傾き、下着側がガクンとさがる。
 それは有罪の証。
 眼鏡ではなく下着を良しとするパンステキ盗賊団に、裁きを下す時がきたのだった。
 天秤を掲げると、まばゆいばかりの光が辺りにほとばしる。
 先ほどの衝撃波に吹き飛ばされ、起き上がろうとしていた盗賊たちにも、それは包み込む様に降り注ぐのだった。
「めがーーーーーーねーーーーーっ!」
 略奪を良しとする邪悪な心を、女神の聖なる光が浄化した。
 盗賊たちは地に倒れ、微動だにしない、まるで安らかに眠る子供のように。
 彼らが再び起き上がった時は善良な民となっているに違いないと、花園は確信していた。
 眼鏡を愛する、一市民となっているに違いないと。

 幸か不幸か、手下たちが盾となってくれたおかげで、パンステキに光は届かなかった。
 だが、先ほど受けた痛手が回復する訳でもなく、荒い息を吐く。
「お主もこれまでじゃな」
 残党を処理し終わったエウトティアがマニトゥと共に仲間の援護へと駆けつけた。
 逃げられぬよう、周囲には狼が放たれおり、逃げ切るのは至難だ。
 手下たちの姿も見えず、絶体絶命。
 だが紳士の取った行動は! 敵に背を見せることではない!
 逆に思い切りエウトティアへと突進した!
「ほう、その意気や良し」
 両手でナイフを構え、受ける体勢を取るエウトティア。
 そんな彼女へと、仕込み杖を大きく振りかぶるパンステキ。
 それを、振り下ろすかに見えた。
 だが、パンステキは振り下ろすと見せかけ後ろに大きく跳んだ。
 タイミングを狂わされ、エウトティアの身体がぶれる。
 そしてその身にむかって、パンステキが仕込み杖を放り投げた。
 かろうじて交わすエウトティア。
 だがそれは紳士の読み通りだった。
 魔手が、獣巫女の身に迫る。
「ふははははは!」
 おお! おお! なんたること!
 紳士はこの期に及んでまだ……下着に固執していた!
 抜き去った手には巫女の可憐な下着が……無い!
「なにぃ!?」
 意外! それは兄様の下着!
 エウトティアが以前戦っていたのは伊達ではない。
 おそらくこうしてくるだろうとあらかじめ予測しており、下着を重ね着していたのだった。
 男物の下着を履いているという、ある種のわびさび。
 だが、それを解すほどパンステキは雅ではなかった。
 脳内にあるのは事実。
 一度ならず二度までも男物下着を盗ってしまったという事実。
 その不始末が、パンステキの身を焦がした。
「ぐああああああーーーーっ!」
 手がただれ、腐り落ちていく。
 まるで沸騰するかのように肌が泡立ち、それは拡がっていった。
「おお、これはもしやアナフィラキシーショック。再度男物の下着を手に取ったことにより、肉体が過剰に反応したのでござろうな」
「ええ……」
「人の身体って、そういうものなんですか……?」
 もっともらしく語る織部に、疑念の目をむけるティエルと花園。
 マニトゥがこの隙を逃さず腕に噛みつき、もう一つの手にエウトティアのナイフが突き刺さる。
「これでもう手癖の悪いことはできまいて。いまじゃ、皆の衆!」
 エウトティアの号令。
 その声に猟兵たちは我に返る。
「お願いします!」
 花園の声に、女神は心得たと断罪の剣を下ろす。
 それはパンステキのみならず秤の有罪、マントの下着も切り刻み、ただの布きれと化した。
「…いかがですか?下着を奪うはずの女性相手に逆に下着を台無しにされたお気持ちは……悔い改めてください!」
 女神から放たれる浄化の光。
 それは俗物まみれだった、パンステキの心に深く入り込み、焼き尽くす。
「続きますぞ!」
 織部がパンステキの周囲に、眼鏡ドローンを展開する。
 それは女神から放たれた光を反射させ、再びパンステキへと跳ね返す。
「眼鏡とは女神、これは太陽の女神の力なり! お主の敗因は、創作物に込められた人の魂を理解できなかったことじゃよ」
 女神へ眼鏡ドローンが降り立ち、眼鏡となって女神の顔へ嵌まる。
 光は収束し、レーザーとなってパンステキの肩口を貫いた。
「が……こ、このわたしが……紳士である……この私が……」
 もはや叫ぶことも出来ず、苦悶の声を絞り出すことしかできないパンステキ。
 哀れな老紳士に止めを刺そうと、可憐な二人の少女が光に祝福されながら刃を振るった。
「いっくぞーーー!! これがボクの全力全開だよ☆」
「マニトゥ! 彼奴に止めをさすぞ!」
 ティエルと、マニトゥにまたがったエウトティアが交差する。
 パンステキの身体が両断され、光に焼かれ散りじりになる。
 あとに残ったのは倒れている盗賊たちと、氷漬けになった馬車の残骸。
 猟兵たちは、この地を荒らしまわっていた盗賊団の頭目、パンステキを討つことに成功したのである。

●それから~

 あれから隊商の護衛もつつがなく終え、猟兵たちは酒場で宴を開いていた。
 商人であるグラシーは、盗賊たちを倒してくれたことに歩合をはずんでくれたようで、思ったより袋の金貨は重い。
 食事と、今回の依頼を肴に会話に興じているとふと、袋に金貨以外の物が入っているのが目に止まった。
 それは眼鏡ケース、中を開けるとそれぞれのサイズにあった眼鏡が入っていた。
「ボーナス、ということでしょうか……?」
 花園が眼鏡をかけ変えてみる。
 いつのまに調べたのか知らないが、サイズも度もぴったりだ。
「これはなかなか良い細工ですぞ」
 織部もせっかくだからとつけ、伊達男を気取ってみせた。
「じゃろうな、粋な計らいというべきかのう?」
 エウトティアは蔓眼鏡を外さず、代わりにマニトゥに似あっておるぞと譲ってやった。
 ティエルは卓にある自分用の眼鏡を、複雑な表情で見つめていた。
 うんざりするような声でため息をつく。
「なにも、見なかったことにしたいなぁ……」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年07月16日


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🔒
#アックス&ウィザーズ


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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はフィン・スターニスです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


挿絵イラスト