『そばにいるよ』と謳う声は
とある村のはずれにひっそりと佇む塔。
その塔からは、夜な夜な囁くような歌声が聞こえてくる。
そして、村から人が消えていく。歌声に導かれ、一人ずつ消えていく。
まれに帰ってくる人は、大切なものを忘れてしまう――そんな塔が、佇んでいる。
あなたには、大切な人はいますか?
あなたには、守りたいものがありますか?
「そのアイを、ワタシニチョウダイ」
。
――グリモアベースにて。
一人のグリモア猟兵が、暗い面持ちで思案に暮れていた。 一度、猟兵たちに声を掛けて、そのまま口篭っている、少女。
赤凪・風珀は、猟兵たちの視線を受けながらようやく言葉をこぼした。
「・・・事件、なのですが
・・・。・・・、・・・皆さんは、大切なものを失う、覚悟はありますか?」
話が見えず困惑する猟兵たちを控えめに見て、袖口から資料を取り出す。それは、一枚の写真。大きな塔の写真だった。
「ある村から、行方不明者が多発しています。この塔が・・・この塔にいる、オブリビオンが原因であることが発覚しました」
話し始めて尚、その表情は暗く影を落としている。赤凪はひとつ呼吸を置くと、塔の写真から目をそらすように顔を上げた。
なんでも、はじめは森に入っただとか、山に迷い込んでしまったのだろうと語られていたという。
あるときを境に、不意に誰かが塔の存在に"気づいた"。あんなもの、昔はあっただろうか、と。
それ以来、塔を見上げる村人がおかしくなっていった。
ある人は突然泣き出して、ある人は突然怒り出して。歪む日常の最中、人が少しずつ消えていく。
帰ってきた――塔のふもとで見つかった人は、誰も塔の中でのことを覚えていない。それどころか、大事なことを忘れて戻ってくる。
忘却の闇が村を侵食している。
危機感を覚える村の民が、"一人の女性を見た――"そんな予知。
「この塔も、塔にいるオブリビオンも、危険です。・・・写真越しですら、心を揺さぶられるのです」
赤凪の表情が暗い理由はまさにそれだった。繰り返し、事件の概要を写真とあわせてみていて、すでにあてられていた。
「ですが、放って置くわけには、いかないのです」
どうか、この広がる喪失感に、終止符を。
赤凪は両の手を組み祈るように、助けを乞うた。
時巡聖夜
どうも、こんにちはこんばんはおはようございます。時巡ともうします。
二作目です。至らぬ点はあるかと思いますが、よろしくお願い致します。
さて、今回の題材は『忘却』です。
第一章では、村の外れの塔を攻略していただきます。
各々、ご自由に攻略してください。
第二章、第三章は章突破後に導入を掲載しますので、ご確認ください。
◎→アドリブ・連携OK。
○→アドリブのみOK。
△→アドリブ等控えめ。
それでは、どうぞよろしくお願い申し上げます。
第1章 冒険
『時計塔』
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POW : 大胆に進む
SPD : 慎重に進む
WIZ : アイテムを活用
👑11
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伊美砂・アクアノート
◎【SPD オルタナティブ・ダブル】
分身し、探索を実施
ま、世には向き不向きがあるのだわ。私たちみたいな曖昧な人格の方が、若い少年少女よりダメージ少なくて良いんじゃないかしら?
【世界知識8、暗視5、鍵開け5、ロープワーク5、視力5、聞き耳5、第六感5】…きゃはは、オレは一応、本職シーフだからな。分身と互いの死角をフォローし合いつつ、慎重に進むぜ。
もし仮に怪しいモンを見つけたら、身を隠して様子見だ。無為無策で突っ込むほど蛮勇は無いのだわー。敵の手品が判らないと、後続の猟兵が危ねえし、オレも私も忘れ去られたいワケではないもの。
暗器を手に、ゆっくり着実に塔に接近。周縁に辿り着いたら、分身を先行させる。
いの一番に塔へ向かったのは伊美砂・アクアノート(さいはての水香・f00329)だった。
己が分身とともに、慎重に歩みを進める。
「確かに変な声がするのだわ」
「ま、せいぜい気を付けていこうぜ」
「それにしても暗いわね」
自分同時で言葉の殴り合いのようにかみ合わないようでかみ合う会話をしながらゆっくりと進み続けていると、当然ともいえるが声が近づいていく。
歌うように、唄うように、謳うように。おいで、おいでと手招く声。
「…声がするだけ、なのだわ」
「変なモンも…ない」
「なにもない、わけがない…」
しかし、塔のふもとまで来ても何もなかった。ただ、大きくはないのにしっかりと耳に届く囁く歌声がするのみ。嵐の前の静けさのようで、彼女は一つ身震いした。
それから、よし、と意気込み一つ。意図をすぐさま悟ったもう一人の彼女は、肩をすくめて見せる。
「いくか」
「いきましょう」
先を行くもう一人の彼女が、警戒しながら塔に近づき、観音扉に手をかける。
塔の扉は、開いていた。
よく手入れされているのか、不愉快な音を鳴らすこともなく、静かに開く。
わずかに、声がはっきりと聞こえた気がした。刹那。
――ゴォン…。
彼女たちの耳に届く、鐘の音。ただの音なのに、何かを揺さぶられたと感じ、もう一人の彼女は反射的に振り返る。
一瞬、彼女の瞳が揺らいだ。
「…おい」
「なるほど…」
二つの声が重なる。揺らいだ瞳はすでに凪ぎ、しっかりともう一人の彼女を見つめていた。
鐘の音に、互いの存在を掻き消されたように感じた。
「私たちみたいな曖昧な人格なら、ダメージが少なくていいかしら」
「そうだなぁ、互いを視認できるし忘れようがない」
何よりも、と口をそろえる。忘れ去られたいワケではない、と。
お互いを確認しあい、彼女たちは塔の中へ歩みを進めた。
大成功
🔵🔵🔵
紅狼・ノア
◎
大事な物を失う覚悟…僕に大事な物あったかな?
あったとしても絶対…失わせない…
さでとこの塔を登ればいいのかな?
なんか罠がありそうな感じがするなぁ【第六感・野生の勘・忍び足】を駆使し慎重に進もう
鍵が掛かってる所があれば【鍵開け】の前に【聞き耳】で中を様子確認してから開ける
何かあるか分からないからね注意しないと
敵がいた場合、察知される前に先に見つけ【目立たない】闇に姿を隠しずつ情報とかあるなら頂こう、ないなら【暗殺】さっさとやっちゃおう
にしても塔を登った者は何かを忘れて戻ってくる…一人の女性を見たって言ってだな?
もしかするとその女性が親玉かもしれないな
今回のは厄介かもなぁ、特に大事な物を持つ者は
反転。次いで塔に現れたのは一人の少女。眠そうな目で塔を見上げ、ぴこりと耳を揺らす。
紅狼・ノア(捨て子だった人狼・f18562)は、わずかに目を見開く。
ここに来る前に、問われた覚悟。己の大事なものとは何だったろうか。正直すぐには思いつかないな、と首をかしげる。まぁ、失う覚悟よりも失わない決意のほうがある。
「さぁってと、行きますか」
気ままな一匹狼たる彼女は、伸びを一つして切り替えると、塔に足を踏み入れた。
すっと瞳孔が開き、闇の中を見通す。上に向かう螺旋階段一つ。どこかへ続く扉一つ。
逡巡をはさみ、彼女は物音を立てずに扉へ足を進める。何の変哲もない扉。しかし、彼女の耳にはしっかりと聞こえてくる声を捉えていた。それは扉の奥、呻く声。塔に絶えず伝う歌声とは違う声。
「…何を言ってるのかなぁ」
言葉をこぼすと、悟られぬように扉に手をかけ――鍵の引っかかる音。併せて、呻く声が止まる。
だれかそこにいるのか、助けてくれ、おんな、女が。
錯乱したようなかすれた声を聞き取り、彼女は集中すべく目を閉じる。必要な情報を口にしないかと、扉の鍵を解除しながら声を拾い続ける。
かちゃ、と鍵の開く音。めぼしい情報は得られなかった。つまらない、とその目を開くのと、部屋に忍び込むのは同時。
「…ばいばい」
扉の先にいたのは一人のやせこけた男性。助けを求めるようにその目が彼女に向き切る前に、その首は彼女の手によって落とされた。
大きくため息をついて、室内を見渡してみる。
簡素な部屋。窓一つない、牢獄のような部屋。一つあるとすれば――床一面に、子供の顔に見える血のシミ。
「…塔を登ったものは何かを忘れて戻ってくる、ねぇ」
忘れないようにと刻んだ痕跡だろうか。忘却、女。彼女はひらめく。
「…親玉、かな」
不意に響く鐘の音。耳の良い彼女はパッと耳をふさぎ、舌打ち一つ。さりとて、彼女の決意に鐘の音が叶うことはなく、わずかに揺れた己の内を造作もなくとどめた彼女は、鐘の余韻が引いたころに耳をふさいでいた手を放す。
見上げるのは何もない天井であり、その先のどこか遠く。
厄介かもなぁ、なんてどこか他人事のようにつぶやいた。
大成功
🔵🔵🔵
メリナ・ローズベル
歌声が聞こえるという夜に塔に侵入する
旅行カバンの中に、攻略に必要になりそうなものを入れてきたの
用意した照明で前方を照らし、障害物を取り除きながら進む
「こ、怖くないわ!」
でもホラーなものを見かけたら悲鳴を上げそう
「この声、どこから聞こえてくるのかしら?」
耳をすませながら声の方を目指す
道に迷わないように至るところにテープで目印を付ける
何か危険そうな生き物と遭遇したら、全力魔法や鈴蘭の嵐で対応する
歌を聞いておかしくならないように気を張っているつもりだけれど、いつの間にか泣いたりするかもしれない
大切な人は旅団の団長
大切なものはバラの名前を付けたアイテム達
夜も深まり、静寂の中に歌声がしっとりと響き渡る頃。
メリナ・ローズベル(紅い花・f13268)は旅行カバンを手に塔に現れた。
前方を照らす光は、ほこりの一つも映すことはなく。まるで何もない闇の中に放り込まれたよう。
「こ、怖くないわ!」
自分に言い聞かせるようにそう口にして、それでもその顔を不安げにゆがめて羽を小刻みに震えさせながら、彼女は歩みを進める。目印にするのは――絶えず聞こえる歌声。
「この声」
どこから聞こえてくるのかしら、と耳をすませる。上。塔の上。
しっかりと目印のテープを張りながら、螺旋階段に足をかけた。
――ゴォン…。
突然響く鐘の音に、ひゃっと小さな声一つ。
ひときわ大きく震えた羽は、警戒するようにわずかに逆立つ。
静寂。歌声。すこし間をおいて、彼女は安堵したように息をついた。
ぽたり、足元に落ちるしずく。
「…あ、れ?」
ぽたぽたと、そのしずくが自分の目から落ちていることに気が付くのに、時間がかかった。
鐘の音に、一瞬途切れた警戒が、彼女の中を揺すっていた。
なにかが、内側からこぼれてしまうような恐怖と不安がこみ上げる。
「あ、いや、いやだ」
旅行カバンが手から滑り落ち、音が響く。震えるからだを抱きしめて、必死に抗う。
持っていかないで、それは、大切な――大切、な?
大切な、何だろうか。
歌声が聞こえる。囁くように、聞こえる。忘却に囚われた彼女に語り掛けるように。
忘れていいのだと、そばにいるからと。それは子守唄。忘却の救済。
ふわりと、香りがした。それは、己の香り。バラの、香り。
「…、…――」
口をついて出たのは、失いたくない大切な人の名前。
それは彼女の耳には聞こえないけれど、薔薇の香りが覚えていた。
涙をぬぐう。抜け落ちた欠片を、失いきる前に。
落としたカバンをつかみ、手を伸ばすように、彼女は螺旋階段を登り始めた。
成功
🔵🔵🔴
ナハト・ダァト
[◎]
ニュイ・ルミエール(f07518)と参加
義妹の作ったシャボン玉に同伴させてもらう形で進む
シャボン玉に負担が掛かりすぎない様、「溶け込む夜」でガス状の身体に変化
ローブを広げ、上昇気流に乗りやすいようにシャボン玉をサポートする
高い所ハ、怖くないかナ。ニュイ
念の為、触手ヲ繋いデおこウ
これなラ、怖くないだろウ?
しかシ、綺麗ナシャボン玉ダ
見事だヨ。私ノ義妹(いもうと)
進路ト速度ハ私ニ任せるト良イ
見事手繰っテみせるからネ
「瞳」から逐次変化する気流を読み取り、情報収集を行う
世界知識から、気流の流れのパターンを予測
地形の利用で広げたローブをカイトの様にして
義妹が怖がらない程度の速さで上昇していく
ニュイ・ルミエール
◎
にぃに(ナハト・ダァトf01760)と参加なの!
にぃに、にゅい頑張るの!見ててねっ♪
虹傘:アルコンシエルを振るい虹の魔法少女に変身
きらきらアワアワ!みぃんな集まっておっきくなぁれっ♪
光と水の奇跡を起こして大きな虹の泡をつくるよ!
軽くて丈夫っどこまで飛んでも割れないの♪
にゅいは虹泡の維持
にぃにに運転はお任せするよ!
わっわっ、すっごく速いの!?
いつものふんわりふわふわじゃなくてビューンって感じ!
えへへっううん怖くないよー!
だってにぃにならどんな事になっても助けてくれるものっ!
時計塔の出っ張りとかに気をつけてっ
もしも破裂しちゃっても大丈夫
大きな泡の内側のちっちゃな泡泡が雲になって最後のひと頑張り!
ところ変わって、村に現れていたのはとある男女。
ナハト・ダァト(聖泥・f01760)とニュイ・ルミエール(神さまの遊び場・f07518)である。
義理の兄妹たる二人は、事件の解明のために塔を登りに来た。はず。
しっかり作戦を立てて向かおうと二人で話していた。はず。
しかし、遠巻きに二人を見る村人の視線の、温かさたるや。完全に仲睦まじい兄妹を見るそれである。
真剣に話し合う二人と村人たちの温度差の話。
閑話休題。
塔に訪れた二人は、目を合わせて確かめるようにうなずく。
彼女の作るシャボン玉で、二人で塔を登っていく。シンプルながら的確な作成。
彼女は彼に満面の笑みを見せてユーベルコードを発動する。
「にぃに、にゅい頑張るの!見ててねっ♪」
言葉に違わず、振るわれた虹傘はアルコンスィエルとしての伝説の名に恥じぬ効力を発した。
その姿を虹の魔法少女に変え、思い描く奇跡を起こさんとする。
彼女の手で生み出される水は光と交差し、きらきらと光り輝く泡となる。
水と光、そして虹の輝きを纏い頑張る"義妹(いもうと)"の姿に、彼は心の底から賛美に頬を緩める。
そして、その頑張りに恥じぬと改めて意思を強くした。
どんどん集まり大きくなった虹色のシャボン玉は、二人を包み込む。
お互いがお互いを支え、操られるシャボン玉が二人を乗せて塔を登り始めた。
「わっわっ、すっごく速いの!?」
ガス状に身体を変化させた彼は、シャボン玉を操りながら己の義妹(いもうと)を気遣う。
スピードのあるシャボン玉に驚き半分、楽しそう半分で声を上げている愛しい義妹(いもうと)を。
「…高い所ハ、怖くないかナ。ニュイ」
「えへへっううん怖くないよー!」
「そうカ。…念の為、触手ヲ繋いデおこウ」
「…!ほんとに怖くないよ!だってにぃにならどんな事になっても助けてくれるものっ!」
そうして繋がれる触手は優しく、互いの心に寄り添う。
それはこの塔を覆いつくす忘却の音たちに屈することのない、確かな温もり。
彼と彼女は、微笑みあう。
「しかシ、綺麗ナシャボン玉ダ。見事だヨ。私ノ義妹(いもうと)」
触れあう支え、互いに向けあう言の葉の支え。それらは二人を包み、守りあう。
彼女のシャボン玉の丁寧な維持と、彼のしっかりと安定した操作は、着実に塔を登っていく。
しっかりと支えあう二人に、時計塔の些細な妨害などは壁ではなかったのだ。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ルトルファス・ルーテルガイト
◎
(POW)
(紅い外套を羽織る黒髪の青年が塔を見上げる)
…大事なものを奪いさる、【忘却】の塔…。
……そこに入ったら、人は大切な物を捨てなばならぬのか。
…或いは、全て忘却して…嫌な事もなくなるというのか?
…大切な物など、全て捨てられた。
…家族も故郷も…敬意を示した人も、そして…恋を抱いたあの子も。
…皆、俺から離れて消えた…何も残ってない。
…あるのは、喪失感と孤独と…誰も救えない虚無感。
(塔の中の怪異、罠に対して…【精霊剣】を構え)
…そんな負の感情も、「大切なら」全て奪えるのか?
…奪えるものなら奪ってみろ、いや…奪って欲しいものだな。
…そんな物、全て忘れれば…俺は猟兵として全うできるだから。
数名の猟兵たちが塔に挑むさなか、一足遅れてきたルトルファス・ルーテルガイト(ブレード・オブ・スピリティア・f03888)は、羽織った紅い外套を靡かせ、長い黒髪を風に遊ばせながら塔を見上げていた。
「…大事なものを奪い去る、【忘却】の塔…。」
巡らす思考は、忘却について。大事なものを奪うという塔は、どこまで奪うのだろうか。
すでにすべてを失っている、その彼から塔が奪いうるものは。
伏せられた黒い瞳は、食いつくされた己の過去を映しこんでいた。
「…俺にあるのは、喪失感と孤独と…誰も救えない虚無感」
それを奪うのならば。それもまた本望。
外套を翻し、彼は塔に足を踏み入れる。
目指すは塔の上、立ちはだかるものなど敵ではない。
響く鐘の音にも、声にも、揺るぐものはない。
それはただただ悲しい『大切』だった。
欠ける思いは、ただ彼を猟兵たりえる存在へと仕立て上げるのみ。
構えた【精霊剣】が彼の切なく悲しい負の感情に煌めく。
「…奪えるものなら奪ってみろ」
そうつぶやく彼は、むしろその『大切』の忘却こそを望んでいた。
時計塔が、悲しく時を刻む音を響かせても、完遂されぬ忘却。
まるで、訪れえぬ忘却の時を願い心を軋ませる、彼の代わりに泣くように。鐘の音は塔を震わせる。
すでに喪失感に満たされた彼を、この時計塔が止めるすべはなかった。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 集団戦
『もく』
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POW : じめじめ、うつうつ
【闇】【湿気】【周囲の幸福】で自身を強化する。攻撃力、防御力、状態異常力のどれを重視するか選べる。
SPD : もくー
全身を【ふわふわとした雲】に変える。あらゆる攻撃に対しほぼ無敵になるが、自身は全く動けない。
WIZ : おいしいー
【不安】の感情を与える事に成功した対象に、召喚した【自身の分体】から、高命中力の【幸福を喰らう雲】を飛ばす。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴
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各々が塔を登りゆく中、時計塔の一角から、ふわふわと現れる姿。
それはどんどん増えていき、塔の最上階へ向かう道をふさぐ。
煌めく星月の影は、白くやわらかなその姿は、村人から、猟兵たちから奪いたる大事を飲み込み広がり続ける。
これを倒したら、大切は戻るのか。それとも、失われてしまうのか。
何も真実はわからない。答えがあるのは、この先なのだ。
元凶を討ち果たす壁は、除かねばならない。
紅狼・ノア
◎
ん?何この雲のような物は?
邪魔だなぁ…あともうちょいで最上階なのに(ちょいイラ)
てかなんか増えてないか?…うん、やっぱり増えてる
倒しても減らないよなこの雲…まるで何かで増えてる感じだし
どうしよう…念のため【オーラ防御・第六感・野生の勘】を働かせる
これは雲の間を突破かな(戦っても僕らに得は無さそうだから)
そうと決まれば、まずは少しの隙間でいいから作らないと
『ガルム』を召喚し手伝ってもらおうかな
んじゃ、【人狼咆哮】で一気に穴を開け、塞がろうとする雲をガルムに抑えてもらい
そのうちに突破する、そのまんま最上階まで一気に行くよ
僕のスピードについて来られる?
雲の相手はガルム頼んだよ!
ひとり塔を登っていた紅狼・ノア(捨て子だった人狼・f18562)は、視界の端をよぎる影に瞬きを一つした。
それは雲だった。しかし、この塔の高さで雲が差し掛かることはないはずである。彼女はこの変な雲のような物のひとかけらに手を伸ばす。
「邪魔だなぁ…あともうちょいで最上階なのに」
少々イラついた声音でつぶやくと、雲の欠片をその手に収め――ぐしゅりと握りつぶした。そしてあたりの様子を伺い、ため息をつく。なんとなく気づいていたが、雲が増えている。周囲に気を巡らせながら、彼女はどうするかと首を傾けて思案し始めた。
(倒しても減らないよなこの雲…どうしよう)
しばしの思案ののち、損得勘定を完了させる。得はないと早々に思考にけりをつけると、雲の欠片を握りつぶしたままにしていた手を開き、幻獣『ガルム』を召喚しようとその手を振るった。
彼女に呼応して、姿を現すのは大きな闇の狼。紅い目が煌めき、濡鴉色の翼は主たる彼女に沿うようにはためく。互いの紅い視線が一瞬絡み合う。彼女たちが意思の疎通をするのには十分な時間を経て、彼女はぐっとその足に力を込めた。大きく吸い込まれる息。
そうして彼女の口から出たのは、塔の鐘の音に負けず劣らず、大きく攻撃的な激しい咆哮。荒々しく力強い咆哮は空気を震わせ、己の行く先に立ちふさがる雲を霧散させる。
はっきりとした"攻撃"に、その雲はもくもくとうごめいた。
「…もくー!」
それは確かに声だった。彼女の耳がその声を聴きとらえるのと、『ガルム』が地を蹴るのはほぼ同時。雲の姿をしたオブリビオン「もく」の前に躍り出る。
大きく吠える声/抗うやわらかな声 は絡み合う。喰らい付く『ガルム』と、攻撃を無効にせんと【ふわふわとした雲】に全身を変えた「もく」が争う。
その影で、彼女は先ほど開けた雲の穴に飛び込んだ。
あけられた雲の穴は、「もく」が『ガルム』に抗うべく全身を変化させた副作用で埋まることなく、彼女の足を止めることはない。 彼女が「もく」を突破し最上階へその足を踏み入れ、『ガルム』が闇に霧のように溶ける。
かくして、一人の猟兵が道を突破した。
大成功
🔵🔵🔵
ナハト・ダァト
◎
ニュイ・ルミエール(f07518)と参加
六ノ叡智を使用してニュイの支援を行う
奪えるモノなラ
奪うト良イ
それヲ上回る分だケ供給れバ良いからネ
聞き取るのは、義妹の希望
純朴であるが故に、もっとも強く
そして共感を得やすい希望を聞き届け
力を増幅させる
出力ハ――比べるまでモ無いネ
ニュイ。君ノ大切ハ、何一つとしテ、奪わせハしないヨ
今私ガ聞き届けテいるモノ……私ガ必ズ、守りきるとモ
失せ物探し、「瞳」による情報収集から奪われた大切を探し
六ノ叡智のストックとしておく
使用せず力溜めにより大切を預かる事で、奪われた者たちへ帰すことが出来る様に
奪われタままにハしないサ
全テ、返しテ貰おウ
ニュイ・ルミエール
◎
にぃに(ナハト・ダァト)と
……あれ?急にお空が真っ暗になっちゃったの。
なんだか嫌な感じ…
あれが今回の事件の原因なの?
もくもく雲さん
水蒸気の塊だから硬いものをぶつけても逃げられちゃうけれど
同じ水なら表面張力で集まっちゃうはず!
学校でお勉強したもんね♪
背に水の翼を重吹かせ聖句を唱えれば
聖なる光を宿す羽根礫をシャボンの上から周囲へ散らばし浄化しちゃうの!
幸せ、欲しいの?
んっにゅいの幸せ満タンになるまで分けてあげる♪
にぃにと一緒なら不安なんて全然感じないもの!
くらぁいお空なんて羽ばたき一つで吹き飛ばして
塔の側の村まで綺麗な青空と飛沫に煌めく虹のアーチのお裾分け♪
忘れていた大切なこと
皆に戻るといいねっ
しゃぼんの中でナハト・ダァト(聖泥・f01760)とニュイ・ルミエール(神さまの遊び場・f07518)は、不意に陰る視界に顔をあげて上空を仰いだ。
「なんだか嫌な感じ…」
彼女がそうつぶやくのと陰りの根源が二人の視界に収まるのはほぼ同時で。もくもく、もくもく…と音を立てながら広がる雲は、二人の行く手を阻む。
もくもく、もくもく。じめじめ、うつうつ。
どこか憂鬱なその雲は、攻撃的ではないが友好的でもない。「もく」は二人を認識している様子もなく、ただそこに漂っていた。
「もくもく雲さん」
彼女は呼びかけるようにそっと言の葉を口に乗せる。
あれは雲だ。雲は水蒸気の塊だ。それならば、同じ水で集めることができるはずだと考え、閃いた様子で笑みを浮かべた。
「【Et la lumière fut.】」
彼女の背に重吹かれるのは水の翼。フルフルと震える涼やかなその翼は唱える聖句に反応し、光を集めてきらきらと輝き揺れる。聖なる光を宿したやわらかな羽根礫がシャボン玉の上に羽吹き、光を捧ぐように周囲へ散りあたりを浄化していく。
彼はその光に目を細めた。彼自身も光を宿しているが、彼女のそれは暖かくまぶしい、それでいて優しい光だった。だからこそ、彼は彼女の――義妹(いもうと)の希望を守りたいと思うのだ。彼女の義兄(あに)として、ありたいと願うのだ。
この時、ようやく「もく」は二人の存在を認識した。最上階へ進む道を阻んでなお増え続けていたその雲は、光水の礫に惹かれるように増えることをやめる。
「…もくー…」
明るい。幸福の光。それがほしい。そういわんばかりの音をさせる「もく」に、彼女は笑顔を絶やさない。
笑顔のまま、そっと手を差し伸べる。
「幸せ、欲しいの?」
「もく、もくー…」
「んっにゅいの幸せ満タンになるまで分けてあげる♪」
満面の笑みでそう告げる彼女をみて、彼も優しく目を細めた。この義妹(いもうと)だからこそ、大切に守りたいのだ。純朴で、それゆえに最も強い、その希望を。
『IHVH ALVH VDOTh』
囁くように発動されるユーベルコード。それは彼女の希望に共感し、その力を増す。彼女が幸せを分けるのなら、己はその分け与えられたよりも多くの幸せを彼女に。そして、あらゆる大切を守り切ろう。
喰らうことを許された幸福に「もく」は震えるように自身の分体を生み出す。彼女にもふもふとすり寄り、幸福を喰らう。
それは確かに彼女の内を奪うが、繋がれ続けていた触手が彼女に不安を与えない。
包まれていながら抱きしめるように、二人は微笑む。
「おいしいー」
その声が聞こえてきたころ「もく」はさらさらと道を遮っていた雲を散らした。
彼女の羽ばたきは塔を中心に綺麗な青空を――煌めく虹のアーチを村にまで届ける。
彼の白い「瞳」は、散らされる雲から奪われていた大切を探し出す。力に変えず、その大切をやさしく預かり、彼は言った。
「奪われタままにハしないサ。全テ、返しテ貰おウ」
己の願いであり、義妹(いもうと)の願いであるからこそ――。
そうして、二人は再び最上階へ向けてシャボン玉で飛んでいくのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
3人の猟兵により、霧散したかに思われた「もく」は、しかしまだ欠片が残っていた。
残されていた欠片は瞬く間に力をつけ、再び最上階への道をふさぐ。
元ほどの綿密さではないものの、ただ通過することはできない雲の壁。
まだ、奪われた『大切』が、そこに在った。
ルトルファス・ルーテルガイト
(アドリブ可、連携絡み歓迎)
…塔を遮るのは雲か、しかし只の雲では無さそうだ。
…霊体なのか、霧の様なモノか…それとも。
…【精霊剣】に炎属性の精霊の加護を付与、「属性攻撃」で雲を切る。
…いや、斬れるかどうかは判らんが…少なくとも、魔力であれば物理よりは効きそうだ。
…逆に相手の攻撃に対し、精霊剣で【武器受け】して防ぐ。
…余計な消耗はしたくないから、手早く片付けるべきだろう。
…人の不安と幸福を貪り成長する雲、俺の幸福も貪りに来るのか?
…やってみろ、失うモノを失った様な人間に「不安」や「不幸」を与えられるというのならな。(【覚悟】)
淡々と歩を進めていると視界を遮る雲。周囲を警戒していたルトルファス・ルーテルガイト(ブレード・オブ・スピリティア・f03888)はその歩みを止めた。
塔を遮り、登ることを阻む雲に、手にしていた【精霊剣】を構えて彼は目を細める。
「…只の雲では無さそうだ。…霊体なのか、霧の様なモノか…」
それとも、と口の中で言葉を転がしながら、構えていた【精霊剣】に炎属性の加護を付与させると、その属性攻撃を雲に向けて放つ。
雲は切れた。しかし、それは大元の「もく」にはダメージを与えられなかったようだった。
その攻撃に反応した「もく」が彼を振り返った、ような気がした。
「…もくー…!」
どこか苛立ったような声に聞こえる音が彼の耳に届く。次の瞬間には、己の断ち切った雲の欠片が彼の足を掠めた。
ぢりっとその場所が熱を持つ。慌てて距離をとり確認すると、そこにはまるで電撃が走ったかのような裂傷ができていた。
――やられた、そう気付くのに時間はなかった。武器受けを、と考える間もなかったことに、舌を打つ。余計な消耗はしたくない、手早く片付けようと思いながら再び【精霊剣】を構える。
彼は知らなかったのだ。彼が訪れる前に「もく」がすでに【湿気】や【周囲の幸福】でその攻撃力を上げていたことも、全てを失ったものに不安を与える手段があることも。
たった一瞬でも、己の攻撃が意味をなさなかったことに、気付くより先にかすかな不安を感じてしまったことすら、知らなかったのだ。
しかし、構えなおした時点で彼の中にあるのは確かな【覚悟】のみ。闇を映しこんだような黒い瞳がきらめくと、属性付与されていた【精霊剣】から立ち昇る熱気が周囲の空気を焦がした。もくもくと漂っていた雲の欠片が、熱に触れて蒸発していく。形を保てず崩壊していく。
「――去ね」
彼がそう言って【精霊剣】を振り上げると、「もく」はおびえたように身体を震えさせ――彼の前の空間を空けた。
彼が通れるだけの空間を作り、泣くように「もくー、もくー…」と音をさせる。彼は数秒それを見つめた末に、ため息をついて振り上げた【精霊剣】を手元に引き下ろした。
これを切り捨てるのはいささか面倒だったというのもあり、通れるのならば興味もないというように目をそらすと、最上階へ続く道に足を踏み入れた。
「…もくー…」
片足を負傷したものの、進めるのならばよいといわんばかりに進んでいく彼の背。その背に、小さな音が見送るように届いたのだった。
苦戦
🔵🔴🔴
メリナ・ローズベル
私、情けないわ。涙なんて!
どうして涙が出たのか、自分でもわからないの
ただひとつ、確信できることは…
この塔の声の主…元凶を倒すまで帰れないということ
覚悟を決めて杖を構えるわ
敵達から離れたところに立って、鈴蘭の嵐で攻撃する
敵に囲まれないように立ち回るわ
鈴蘭の嵐が効かないなら、氷の属性攻撃の全力魔法はどうかしら?
湿気を凍らせたら、雲の姿を保てないと思うのよ
2回攻撃で手早く敵を消去したいところね
これ以上の不安はいらないわ!
気を張って頑張ってみる
でも、私からこれ以上奪うのは許せないわ!
敵の攻撃はオーラ防御で防いでみる
雲の切れ間から前に進めるとわかったら、無駄な戦いを避けて塔の上を目指す
溢れた涙を振り払って階段を駆け上がっていたのはメリナ・ローズベル(紅い花・f13268)だった。金色の髪を揺らし、訳も分からない涙に目尻を赤く染めながら、必死に駆け上がる。
「私、情けないわ。涙なんて!」
思わず声に出して、また視界が涙に歪みかけた。それがなぜかわからないけれど、心に大きく腰を据える喪失感にただひとつ、確信できることがある。
この塔の声の主――なにか、大切な何かを奪った元凶を、倒すまでは帰れない。
奪われたままで、失ったままで、帰ることはできない。
ぎゅっと杖を持つ手に力を籠め、彼女は最上階を目指す。その力は彼女の覚悟の力。行く手を阻もうとしているのか漂う雲の欠片に、巻きあがる鈴蘭の花びらで散らして、彼女自身の足を止めることはない。
「…もくー」
声のような音にハッとして顔を上げれば、道を遮る雲。力強くにらみつけて鈴蘭の嵐をたたきつけ――堪えた様子のない「もく」を見据える。
覚悟を決めた彼女は、一つの手段が潰えても揺らがなかった。この喪失感さえ失う前に、敵を消去したいから。
杖を突き付けて、彼女は力強く魔法を使う。氷の属性は、湿気でできた「もく」を消耗させてくれるはずだと。狙い通り、魔法を受けたところから雲の形を崩し、あたりを輝かす氷の粒となり塔の底へ落ちていく。
しゃらしゃら、きらきらと反響する氷のはじける音を耳にしながら、彼女はまっすぐと前を見据えた。
「これ以上の不安はいらないわ!」
それは、彼女の確かな意思の言葉。気を張り、もうひと踏ん張りだと己を奮い立たせる言葉。
崩れ行く「もく」が、彼女に一矢報いろうとするかの如く薄く広がり、彼女の中身を喰らわんと覆い被さる。しかし、覆い被さろうと、不安を与えようと足掻こうと、これ以上は奪わせないとする彼女の意思には勝てない。意志の強さに比例したオーラ防御は「もく」を一定距離以上近づけることさえ許さない。
深緑の瞳が、「もく」の切れ間から先へ続く道を捉えた。
力強く地を蹴り、彼女は弾け飛ぶようにそこに飛び込む。早く、取り戻すのだ。
無駄な戦いに時間を費やす暇はない。
最後の段へ足を踏み込んだ彼女の後ろで、ついには端の端まで氷の粒になった「もく」が、音を立てながら崩れ去っていった。
大成功
🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『籠の世界の堕天使『アネモネ・ブランシュ』』
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POW : 死か愛か
【黒き羽根】が命中した対象にルールを宣告し、破ったらダメージを与える。簡単に守れるルールほど威力が高い。
SPD : 不浄の疾駆
自身の身長の2倍の【漆黒のバイコーン】を召喚し騎乗する。互いの戦闘力を強化し、生命力を共有する。
WIZ : 籠の世界の童話
戦闘用の、自身と同じ強さの【清らかな白き守護騎士】と【英知に満ちた魔法使い】を召喚する。ただし自身は戦えず、自身が傷を受けると解除。
👑11
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猟兵たちが足を踏み入れた最上階。
その視界を、漆黒の羽根が一瞬埋めた。
「…だぁれ?」
囁くような声は、しかしはっきりと耳朶を打つ。
誰もが確信する。塔に、村にまで響く歌声の――すべての元凶が、その声の主であると。
漆黒の翼をもつその後姿が、ゆっくりと振り返る。
白銀の長髪が揺らめき、その隙間から蛍石を思わせる水色が覗いた。
嗚呼――…と、陶磁器のような白き肌を赤らめ、そのオブリビオンは感嘆の声を漏らす。
「貴方達も、愛をくれるの…?」
それならば『そばにいるよ』と囁く。
甘く柔らかく、淑やかに艶やかに、忍び寄る虚愛の言葉。
さぁ、その言葉ごと、この物語に終焉を。
ニュイ・ルミエール
ナハト・ダァト(にぃに)と一緒
騎士は剣が当たらなければ大丈夫な筈
虹傘を振るい濃密な霧を辺りに
光の屈折で偽物の姿を映し惑わすのっ
魔法使いは炎氷なら形が変わろうと同じ水なので操れるけど
電撃使われたらちょっと怖いの
でもね
学校の先生に聞いたんだ
水は純度を上げると電気を通さなくなるんだって
存在が薄くなる分にゅいもきついけど
もしもの対策!
あれ?にぃに……どこいったの?
──愛は与えるものだって聞いた事がある
もしそれが目に見えるのだとしたら
にゅいはどれ程の愛をにぃにに注いで貰っているのだろう
ほわぁ……おっきい……
ふふふ♪負ける気、しないの!
傘を両手で掲げ
水と虹が渦巻く剣に
漆黒の鳥籠へ射し込む夜明けの光となれ!
ナハト・ダァト
◎
ニュイ・ルミエール(f07518)と参加
無我の成り手を使用
一ノ叡智も使用し、強化した肉体を巨大化
オーラ防御、呪詛、毒、激痛の各所耐性や防御技能を纏い
更に強靭に
塔と同じ高さ、大きさまで巨大化した躰での触手による一振りや
かばう技能で義妹を守る
三ノ叡智で敵の挙動を把握し、庇う行動をとる
私ニ、愛ガあるトいうのなラ
その全てハ、義妹ニ与えル
君にハ一欠片モ、渡さないヨ
無我とは、あるがままにいる様
無くて在り、在る様で無い感情
常に模索し続けるが故の、肥大化した聖泥の願望
出来れバ――避けテ居たかっタ
見せられる様ナ姿でハ、無いかラ
――私ハ、怖く無いだろうカ
今ハ考える事でハ無い、カ……
ニュイ、私ガ守ル
後ハ任せたヨ
ついに元凶たる堕天使をみつけ、ニュイ・ルミエール(神さまの遊び場・f07518)とナハト・ダァト(聖泥・f01760)は真剣な瞳で臨戦態勢に入る。
うっとりとした顔でそれを受ける堕天使は、ゆっくりと両の手を広げて二人を受け入れるように微笑んだ。
「ここは籠の中。私の愛の籠の中。この――籠の世界の童話は、私の愛」
語られる言葉を、二人が理解することはない。理解をする必要もなかった。堕天使の羽ばたき、その翼の陰から、いなかったはずの【清らかな白き守護騎士】と【英知に満ちた魔法使い】が姿を現す。ギギギ…と軋んだ音を絶えたかと思えば、それらは堕天使の前にかばうように仁王立ちをする。
彼女は虹傘を強く握り、素早く思考する。鋭い刃をもつ剣を構えた騎士に、杖を突き付けている魔法使い。
(騎士は…剣が当たらなければ大丈夫な筈)
ならばと、握った虹傘を大きく振るい水を生み出す。その水は生み出されたそばから彼女の望む姿に変わり、濃密な霧へとなった。あたりは霧に包まれ、召喚された騎士と魔法使いの視界を奪い惑わす。
惑わされた騎士が、それでも堕天使を守ろうとがむしゃらにその剣を振るい始めた。
彼は振るわれるその剣を見て、一瞬焦りをその目に宿す。いつ、その剣は魔力を纏い始めたのだろうか。その答えはひどく単純で、彼女が霧を起こすより早く、魔法使いが魔力を込めただけのこと。
――ダメだ。彼女を、ニュイを、傷付けることは許さない。
彼のその心は、弾けるようにそのユーベルコードを発動させた。
それは、彼女がいかずちに対して対策をするより早く、彼女の存在が薄くなりきつい思いをさせるよりも早い。
無我の成り手を、一ノ叡智を使われ、その身は巨大化していく。あらゆる攻撃から、彼女を守るためだけに。
「…あれ?にぃに……どこいったの?」
彼女が困惑を滲ませて声を漏らす。不安そうに視線を彷徨わせた彼女を、かばうように触手を伸ばして。
彼の触手が見えた時、彼女はふと思い出した。
――愛は与えるものだって聞いたことがある。
もしそれが目に見えるのだとしたら。
同時に、彼も思った。
――私ニ、愛ガあるトいうのなラ。
その全てハ、義妹ニ与えル。
「君にハ一欠片モ、渡さないヨ」
頭上から聞こえ来る声。ゆっくりと、触手をたどって顔を上げた彼女は、塔ほどに巨大化した彼を見た。そして、その目が大きく見開かれる。にぃに?とその口が音を出さずに動いた。
その目から、その口元から、彼は目をそらす。なぜなら、彼はその姿を見せたくなかったから。
出来ることならば、見せられる様な姿ではないこの姿を、彼女に見せたくなかったから。
(――私ハ、怖く無いだろうカ)
そらした目を伏せ、そんなことを思う。それは今は考えることでは無いといわかっていたけれど、それでも。このあるがままにいる様を、無くて在り、在る様で無い感情を模索し続けるが故の、肥大化した聖泥の願望を、見せずにいられたならと。
彼の思考とは裏腹に、彼女はまっすぐと彼を見上げていた。見開かれている目は、彼のその姿の本質を捉えていた。
そこに在るのは、己への愛の大きさを投影したような、姿。嗚呼――いったい、どれ程の愛を注いで貰っているのだろう、と。そっと弧を描く彼女の口元は、そのことへの喜びをはっきりと示す。
「ふふふ♪」
彼女は思わず声を漏らす。とてもとても、嬉しかった。
きっと、この優しい義兄(あに)はこの姿を見せたくなかったのだろうと、何となく察したから。
それでも、すべての愛を、余すことなく捧ぐと言ってくれたから。
その言葉に違わず、己に降り注がれる愛の粒を、その大きな姿から受け取ったから。
彼女の笑い声に、彼ははたと瞬く。それすらも愛おしさを感じながら、彼女は虹傘を掲げた。
「負ける気、しないの!」
水と虹が、傘へ集う。渦巻く輝きは剣へと姿を変える。それは、二人の愛をこめて、光を宿して。
堕天使が、零れることのない愛の光に目を細め――騎士と魔法使いさえ、その動きを止めるほどに、それは崇高で。
振り下ろされる、剣。堕天使の築いた漆黒の鳥籠を、夜明けの光が差し抜けた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
紅狼・ノア
*アドリブ・絡み歓迎
愛?欲しいの?…いいよ
愛をあげるよ…空っぽの愛をね(微笑み)
【オーラ防御・野生の勘・第六感】をフル活動
ん?この気配は…まさかバイコーン?
これは驚いた『不純を司るバイコーン』とは…ということはそうゆうことかな…
んじゃこっちも出しますか『ガルム』来い、狩りの時間だ!
不純と闇どっちが勝つかな?…まぁ負けるつもりはないけどな
【怪力・部位破壊】を仕掛けようか二度と戦場に上がれぬよう
隙を見て【目立たない・暗殺】をするのもありだね
第一優先はバイコーンを仕留めることだからね
あとは仲間達に任せるよ
片付いたらそっちに行くよ
愛ねぇ、そんな物僕に求めるのはお門違い
愛なんで分からないね…
光に部屋が眩む中、紅狼・ノア(捨て子だった人狼・f18562)は野生の勘と第六感を鋭くさせ、気配を読む。消えゆく騎士と魔法使いの気配――代わりに、別の気配が現れるのを感じた。
「……ん?この気配は…まさか」
瞳孔が鋭くなる。ゆっくりと腰を落とし、気を張り巡らせる。眩い光が収まった頃、そこに鎮座していたのは。
「…バイコーン」
「ふふふ、そうよ、バイコーン。貴方の愛を得るのに適していると思うわ」
堕天使が妖艶に微笑み、バイコーンを優しくなでる。それを見ていた彼女は、その口元に同じように笑みを浮かべて見せる。そうだった、この堕天使は、愛を求めている。ならば…あげよう。
戦闘態勢を維持したまま、漆黒の髪を揺らして小首をかしげた。
「いいよ。愛をあげるよ――空っぽの愛を、ね」
突如、彼女の背後に闇が巻き上がる。その闇は漆黒と白銀の髪を舞わせながら形を成し、獣の姿をとった。
“不浄”たる『バイコーン』と“闇”たる『ガルム』が相対し、互いに威嚇し始める。
微笑みを称える女が二人、威嚇をしあう獣が二匹。わずかな均衡状態は、飛び出したバイコーンによって破られた。
吠え猛るバイコーンの双角が『ガルム』の胴を狙い、『ガルム』の双牙はバイコーンの喉を狙う。
それらは繰り返しぶつかり、どちらも引けを取らない狩りを行い続ける。
その傍ら、彼女と堕天使は見つめあっていた。
堕天使が不思議そうに首を傾け、人差し指を口に当てる。
「…愛、くれないの…?」
蛍石の瞳が剣呑に煌めき、彼女から“あい”を奪おうとその羽根を震わせた。
そらすことなくまっすぐと見返していた彼女は、肩をすくめて目を背けた。
「愛ねぇ、そんな物僕に求めるのはお門違い」
くるりと踵を返す彼女に、堕天使は何を思ったのか、泣き出しそうな顔を両の手で覆う。
嗚呼、嗚呼とこぼれ出るその声は悲嘆に暮れていた。だけど、そんな様子を気にも留めず、彼女は闇にその身を溶かすように目立たないように姿を眩ます。
次の瞬間、彼女はバイコーンの足元にいた。力を込められた彼女のこぶしが、その足を捉え――【怪力・部位破壊】を仕掛ける。
ボギンッと耳障りの悪い何かがへし折れる音が響き、バイコーンの断末魔が混ざる。
「愛を…ちょうだい…」
囁かれる堕天使の声、バイコーンの姿が揺らぎ空気に溶けて、消えた。
大成功
🔵🔵🔵
伊美砂・アクアノート
◎【SPD・羅漢銭・須臾打】
…愛、愛か
そんなもの、ついぞ他人からしか貰ったことがなくてね
まぁ、誰から貰ったなんて些細なコトさ
何時、どれだけ貰ったかなんて、気にするコトでもない
【早業10、投擲10、2回攻撃10】―――分裂したワタシたちは曖昧だけれど、随分と昔に『手先が器用だね』って褒められた気がするのよ。どのボクが褒められたのかは忘れたし、誰がオレに優しかったのかも忘却の彼方だが。
何度も何度も繰り返した動作で、コインを敵に投げつける
さぁ、我を忘れて踊ろうか
この記憶を亡くしても、『私』はコイン投げでは誰にも負けない
昔の自分は他人だし、未来の自分なんてどうせ他人だろ?
愛があったという事実だけでいい
ルトルファス・ルーテルガイト
(アドリブ連携絡み歓迎)
…アレが元凶、か?…天使のようだが、羽が黒いな。
…「愛をくれる」だと、それが人の記憶を奪う輩の言葉か?
…それともその「愛」とやらで、俺の暗い過去を全部奪ってくれるとでも?
…どっちにしても、お前に情けをかけるつもりは…一つも無い。
(WIZ)
…精霊剣で『風の精霊』の刀身を具現、守護騎士と魔法使いの攻撃を。
…だが本命はそいつらじゃない、本体のあの天使…オブリビオンだ。
…隙を見て精霊剣の『封印を解き』、刀身を一気に伸ばす。
…その儘…心臓に目掛け、一突きにさせてもらう(属性攻撃+全力魔法)
…それまでは、「激痛耐性」と「武器受け」で耐させてもらうがな。
…
「アレが元凶、か?…天使のようだが、羽が黒いな」
「…愛、愛か」
堕天使の囁きを聞き留めたルトルファス・ルーテルガイト(ブレード・オブ・スピリティア・f03888)と伊美砂・アクアノート(さいはての水香・f00329)は、各々につぶやいた。
彼はふむ、と顎に手を当てて考え、彼女は虚空を見ながら思考にふける。
――「愛をくれる」という。人の記憶を奪う輩が。この俺の暗い過去を奪ってもくれないというのに。
――「愛がほしい」という。ついぞ他人からしか貰ったことのないワタシが与えられるわけもないというのに。
そう、二人は未だ他者に与える愛を持ち合わせていなかった。
かたや過去にすべての愛〈幸福〉を奪われた男、かたや他人に欠片の愛を与えられただけ女。
そんな二人から、愛をもらえるわけがなかった。堕天使も二人の様子からそれを悟ったのか、妖艶な微笑みも悲嘆に暮れた涙もなく、不機嫌そうに顔をゆがめる。そしてそれを隠すように両の手で顔を覆い――漆黒の翼が震えた。
大きく開かれた翼が羽ばたき、漆黒の羽根が舞い散る。羽根は自然と地に落ちることなく、あたりを漂った。
「愛を頂戴…そばにいるよ…?…ここに、いるよ
…?…。」
二人がその声に構えるのと、漂った羽根が二人めがけて飛び交うのはほぼ同時だった。
それぞれが反対側へと地を蹴り、それを避ける。
その瞬間、彼は見た。堕天使の口元に浮かぶ、冷笑を。あの羽根に触れてはいけない、そう思わせるに足る冷笑を。
「ちっ、面倒な。…お前に情けをかけるつもりは、一つも無い」
舌を打ち、【精霊剣】を突き付ける。しかし、堕天使の隙はつけない。手の下で冷笑を浮かべながら、水色の瞳は彼を絶えず捉えている。半面、彼女への警戒が僅かに薄くなった。その瞬間を逃すはずもなく、袖口に忍ばせたコインをはじく。チン、とコインの音がした。飛び交う羽根の隙間を縫って、それは的確に堕天使の翼を打つ。
ゆらり、と堕天使の纏う雰囲気が変わった。それは、確かな怒り。愛を持たぬ二人への怒りか、はたまた別の何かなのか。
「愛されているのに…愛してくれないのなら…」
あなたたちはイラナイと、音が空気を震わせた。愛か死か、堕天使が提示しうる選択肢は二者択一。
――愛をくれないというのなら、変わるものをもらおう。
水色の瞳がどろりと濁り、愛に変わるものを狙う。それは哀かもしれない、曖かもしれない、和かもしれない。はたまた――その、命かもしれない。
怒りは歪みを、二人から何かの欠片を、その塔ごと、ひずませていく。そのひずみはぴしりと塔に亀裂を走らせ、二人の足を取った。
視界が、暗転した。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
メリナ・ローズベル
元凶がかわいい女の子だと知って怒りがこみ上げてくる
しかも、私は与えたんじゃない
あなたが勝手に奪ったのよ
怒り…、そして戦うという覚悟を、鈴蘭の嵐に込めるわ
後衛の位置に布陣して、敵から距離を取って立ち回る
攻撃が被って無駄にならないように、攻撃時には声をかける
黒い羽根を飛ばしてきたら、範囲攻撃・炎属性の全力魔法で燃やせるか試す
ルールなんて決められたらたまらないわ!
何かが召喚されても、私は堕天使を狙い続ける
敵の攻撃はオーラ防御で防いでみる
炎と鈴蘭の嵐、どっちが効果的かしら?
うまくいった方で攻めるわ
「さあ、降参して
村の人達と、私達から奪ったものを返してくれたら…」
「でも倒すしかないのね
…さよならね」
塔の亀裂に足をわずかに取られながらも、持ちこたえたのは後衛の位置に布陣していたメリナ・ローズベル(紅い花・f13268)のみだった。息をのみ足に力を込めて、バランスを保つ彼女に、堕天使が目を向ける。
覚悟を込められた深緑の瞳と、期待の込められた水色の瞳が絡み合う。
見開かれた水色が、嬉しそうに輝いた。
「あ、あぁ…あなた、貴女は」
「…?」
元凶を見て怒りがこみあげていた彼女も、その上擦った声に警戒をしながら眉を顰める。
とろりと堕天使の顔が歓喜にとろけ、ふるふると揺れる翼も、ぐっと力の入った肩も、すべてが喜びを全面に出す。
「さっき、貰い損ねた愛の持ち主ね」
「…、…まさか」
「とても、とても素敵な欠片。貴女の大切、その愛を、全部全部――頂戴」
即座に悟る。己の中の喪失感のことだ。すべてを理解せずとも、分かった。
頭がカッと熱くなる。思わず握りこんだ拳に、彼女の周囲に鈴蘭の花びらが生成される。
堕天使の言葉の一つ一つ、己に起きている事象の一つ一つ。その全てのことが、彼女の神経を逆撫でした。冷静になろうと、そう言い聞かせることすらできないほどに。
「…私は、与えたんじゃない。あなたが勝手に奪ったのよ!」
花弁は彼女の言葉に弾かれるように嵐となり、部屋を巻き込み吹き荒れる。小さく堕天使の悲鳴が聞こえ、漆黒の羽根が反撃するように彼女へ飛んでくる。
彼女はそれに向けまっすぐに突き出した左の手で、全力魔法を放った。激しい炎は、彼女の心そのものを映したようにその羽根を焼き尽くす。 燃え散る火は薔薇の花が散りゆくかの如く、地へと落ちて溶けるように消えた。
「…返して。…さあ」
たった一言。しかし、その一言はあまりに悲痛で、切実で、泣きそうなほどに震えていて、それと同時に憤怒に震えていた。それをきいた堕天使は、ゆっくりと、微笑んだ。
その笑みが明確な<拒絶>だと分かり、彼女は唇を強くかみしめる。それでも『どうか』と願うのは、彼女のやさしさだったのかもしれない。
「降参して。…村の人達と、私達から奪ったものを返してくれたら…」
その言葉は、再び彼女へ飛んできた漆黒の羽根に途切れる。拒否、拒絶。
ちいさな、ため息。彼女は一度目を伏せ――次いでその目を向けた時、そこには一つの決意。
「どうか、と、思ったのだけど…でも倒すしかないのね」
深呼吸、一つ。
「…さよならね」
差し向けた手を薙ぎ払うように振るえば、吹き荒れていた花弁は堕天使に狙いを定め――その姿を薙いだ。
散らされた堕天使は、光の粒となり塔から散り散りになって消えていく。
その一つは、彼女のもとへ。
光の粒から薫る、薔薇の香り。それは、彼女の奪われた大切の欠片。
両の手でそれをうけとめ、彼女は大切に、大切に抱きしめるように己に引き寄せる。
「…、……よかった…」
零れる涙は安堵の涙。口の中で転がしたのは大切な人の名前。彼女の、確かな愛の一つたる、大切なモノを取り返すことができたのだった。
。
。。
。。。
――――――そして。
数日の時を経て、かの塔は亀裂から崩壊して崩れ去って消えていったという。まるで、そこには何もなかったかのように。
されど、記憶の中には残っている。誰かの愛を望み、大切を奪うことで存在していた堕天使の欠片が、村の人々や此度の猟兵たちの記憶の中に。
“あれ”が真実何を望んでいたのかはだれにもわからない。
されど、奪われていた大切なモノを取り戻した人々は、再び日常へと戻っていく。
猟兵たちの取り戻した、大切な日々へ。
―――fin.
大成功
🔵🔵🔵