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くらやみより授けしモノ

#UDCアース


●そらのぞみて
 闇に星が瞬く。
「頼む、金ならちゃんと作るから……一週間、いや、三日だけでも!」
 だめだよ。だって、そういう約束だもの。
 全部知ってて、それでもほしいものがあったから来たんでしょう?
 ちらちらと、四つの光が暗闇で瞬いて。取り乱し、逃げる男を追いすがる。
「知らなかった!命が代金なんて、ただの比喩だと思ってたんだ!」
 だぁめ。
 だめ、だってこれは約束だから。
「死にたく、ない……ッ!」
 ぼくたちは君たちの欲しいものをあげる。
 君たちは代わりに、俺たちの欲しいものをくれる。
 ぎぶあんどていくって、やつでしょ、知ってるよ?
 俺たちはなぁんでも、知ってるんだから。

● Do you like thrill?
「ホラーと、賭け事は好きかい?」
 集まった猟兵を見渡して、四辻・鏡はにやりと笑って問いかけた。
「変な組み合わせだって思うんだが、どっちもスリルを味わえるって意味じゃあ同じだな。そんなわけで、お前さん達には今回、その両方を体験してもらう」
 とある古い遊園地で起きる事件を阻止してもらいたい、と鏡は説明を開始した。
「遊園地っても、そんな大きな所じゃねぇ。古くから地元民を中心に親しまれている、こじんまりとしたところだ。適度に広さがあって、人が集まって、尚且つ目立ちすぎない。そんな利点に目をつけたのか、いつからか裏の顔が出来ていたらしい」
 よくある話だろ、と鏡は言う。遊園地の裏の顔、それは地下で秘密裏に行われるカジノ施設だった。
「会員制、法外なレートは当たり前、さらに言えば運営は邪神教団っていうテンプレのオンパレードさ。勝てば一獲千金、望む地位も思うがまま。——けれど、負ければ毟り取られるのは財産だけじゃ済まねぇ」
 鏡は親指を立てて、首のあたりで横に線を引く真似をする。
 この場所では金で買えないものはない。権利も、知恵も人の命も。敗者が最後にギャンブルで掛けるものは、文字通り命となるのだ。
「負け犬の命の向かう先はご察しの通り、生贄だな」
 それがこの世界のルールであるという。強きものは得て、弱き者は奪われる。それこそ全てを。
「だからそんなくだらねぇ決まりを、邪神ごとぶち壊してくれ」

 カジノに潜り込むには、入場の資格を手に入れる必要がある。その鍵を握るのは敷地内のお化け屋敷だ。
「只の仕掛けだけなら可愛いもんだが、それに混ざって人間のキャストも脅かしてくるらしい。結構怖いって、一部の界隈じゃ少し話題になってるらしいぜ」
 カジノに参加する者は、必ず一度はそこに向っているらしい。どうやらそこで、『何か』を入手しているようだ。
「注意深く探せば、その『何か』を見つけ出せるかもしれねぇ。参加希望の一般人を見つけて、便乗することもできそうだな」
 もしくは、お化け屋敷のキャストの内の幾人かはカジノに携わる者だ。それが誰かを見極めて、何か策を練れば入場を許可して貰えるかと知れない、と鏡は続けた。
「カジノに入場したら、あとは邪神を誘き出すだけだ。何でもいい、会場を引っ掻き回してくれ」
 邪神が出現する条件はいたってシンプル、『誰も生贄を出さないこと』だ。そうすれば邪神は猟兵達を邪魔者と認識し、襲ってくるだろう。
「現れる邪神は『双児卿』、そう呼ばれている。不気味な人形を持った人型の邪神だ」
 邪神は手に持った片割れから異能を引き出し、攻撃してくるという。放たれる技はまるでこちらの動きを読んでいるかのように的確で、無駄がない。ただ我武者羅に回避を試みても難しいだろう。
「叩くまでに手順が必要だし、手間のかかる厄介な相手だ。面倒事だとは思うが、猟兵であるお前さん達にしか頼めねぇ話なんだ。調子に乗った下種に一泡吹かせてくれよ」
 どうか一つ、よろしく頼むぜ。鏡はそう説明を締めくくり、テレポートの準備を始めた。


天雨酒
 はじめまして、新人MSの天雨酒と申します。
 初めての依頼はUDCアースよりご案内させて頂きます。

●第一章
 お化け屋敷にてカジノへの入場証を探してください。
 仕掛けよりもキャスト渾身の演技、ドッキリがウリのアトラクションです。
 廃業した旅館の跡地がモチーフの建物で、まっすぐ進めば10分ほどで回れます。

●第二章
 遊園地地下にある裏カジノへ潜入してください。
 猟兵の皆様が入ったときは、ちょうどポーカーが始まろうとしています。
 邪神出現の為の条件はOPの通りです。ゲームを利用して、うまく運営を引っ掻き回してください。

●第三章
 ボス戦です。純戦闘を目指したいと思います。
 復活のために人間の私欲すら利用する邪神をぎゃふんと言わせてください。

 各章ごとに補足代わりの断章を入れていきたいと思います。
 進行具合、受付等のご案内は逐次Twitter、MSページにてご案内する予定ですので、お手数ですがそちらもチェックしていただけたらと思います。
 それではどうか宜しくお願い致します。
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第1章 冒険 『お化け屋敷に隠すもの』

POW   :    怖くない、怖くない。ゆっくり進む。

SPD   :    怖くない、怖くない。ダッシュで進む。

WIZ   :    怖くない、怖くない。立ち止まって探す。

👑11
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 遊園地の一角、それなりのスペースをあてがわれたお化け屋敷は、古風な旅館の風体をしていた。
 アトラクションの設定はこうだった『古くからの老舗だった旅館が店を畳むことになった。旅館の主は悲しみから館内で自ら命を断ち、それ以降人知れず客人を招いては永遠に閉じ込めている』。
 遊園地の裏会場への鍵はこの建物のどこかにあるという。自分の力で見つけ出すことも、辿りつく為の資質の一つであるらしい。
 何せカジノの参加者は、誰もが人生の大勝負に出るのだ。これくらい運を掴める器量がなくては始まらない、というのが運営側の意向のようだった。

 自らの宿世は自らの手に。自身の『星』を掴みとれ。
 たとえその先にあるものが、闇への糧であったとしても――。
ヴィリヤ・カヤラ
お化け屋敷?
少しスマホで調べたら
怖がって遊ぶ所って感じだったけど
変わった遊びがあるんだね。

遊園地を楽しんでそうにない人とか、
切羽詰まってそうな人だったらカジノに行きそうかな?
そんな人がいたら距離を取ってついて行って、
いなければ普通に入ってみるね。

探索中は『第六感』にも頼って、
気になる所は片っ端から確認してみるね。
UDCだと願い事を星にしたりするんだよね、
お化け屋敷の中にそんなのがあったりしないかな。

あと、キャストはお触り禁止ってネットで見たから気を付けて、
怖くないけど一応は驚いておいた方が良いのかな?
わぁ、ビックリ!……みたいな?

連携・アドリブ歓迎



「お化け屋敷?」
 UDCアースの文化にあまり馴染みのないヴィリヤ・カヤラ(甘味日和・f02681)は、聞きなれない言葉に首を傾げた。
 手元のスマホで試しに検索をかけてみる。全国各地のお化け屋敷の情報や、今回の舞台となる遊園地のアトラクション説明にざっと目を通して、お化け屋敷の概要は理解した。
 怖がって遊ぶ所だなんて、変わった遊びがあるものだ。
 自分にはあまり理解できないが、人が集まっているからきっと人気なんだろう。
 さて、とヴィリヤはお化け屋敷に向かう人々を見渡す。子供連れの親子、若いカップル、そんな顔触れがきゃぁきゃぁと騒ぎながら彼女の横を通り過ぎいった。
 その中の一人に、視線が留まる。
 見たところ、中年のサラリーマンの様だ。一人でアトラクションの入り口を見つめており、連れとおぼしき人物も見当たらない。それにその顔がどこか切羽詰まっているようで、これから娯楽を楽しむ、という様にはまるで見えなかった。
(もしかして……)
 一つの予感を感じて、ヴィリヤはその男の後ろを狙って列に並ぶ。間もなく順番は訪れた。

「このあたりかな……」
 ヴィリヤは客間風に作られた部屋の引き出しを開けてみた。前を進んでいた男は先程、このあたりで何かを探していたように見えたのだが。
 気になったのなら片っ端から確認しよう、そう思いながら手を動かしていく。
「あ……」
 見つけた。手探りで引き出しの奥を捜索すると、コインのついたペンダントが手に引っかかった。
 暗闇のなかでも鈍く輝く硬貨のその図案は、星。
(UDCだと願い事を星にしたりするんだよね……)
 確証は無い。しかしおよそは似つかわしくないこれが、裏道での鍵であると彼女の第六感は告げていた。
 これを持つ人たちが願う先は一体どこなのだろう。
 考えながら歩いていくと、着物姿の幽霊役の女性がわっと声をかけてきた。少しだけ驚きはしたが、別段怖くはない。
 しかし、一応驚いておいた方が良いのだろうか。
「わぁ、ビックリ!」
 幽霊役の女の顔が、ちょっとだけションボリとなった気がした。

成功 🔵​🔵​🔴​

依神・零奈
……ヒトって奴はどうしてこうも愚かで儚いんだろ
……いや、愚かなのは私も変わらない、か
ま、いいや。もう私には関係ない事だし
私は現世を護る、ただその役割を果たすだけ

それにしてもお化け屋敷ね
死者が生者に求めるように生者もまた死者を求めるのかな
ま、せっかくだし体験してみようかな
……別に興味ある訳じゃないけど、役割だし、ね

内部では【第六感】で周囲に気を配っておこうかな
物陰とかそういう場所もしっかり調べておいた方がよさそうだね
特にキャストが客を遠ざけようとする場所とかね(WIZ)



 暗く伸びる廊下を歩きながら依神・零奈(忘れ去られた信仰・f16925)は思案する。
(……ヒトって奴はどうしてこうも愚かで儚いんだろう)
 なぜヒトは危ういものに願い、縋り、文字通り人生を賭けた博打などするのだろう。結局、自滅する未来が待っているのに。
 一般人は邪神の存在を知らない。しかしそれでも、必ず何かしらの裏があることは分からないのだろうか。
 ……いや、愚かなのは自分も変わらない。願いも信仰も、最後は集められなかったのが自分なのであるから。
「まぁ、いいや。もう私には関係ない事だし」
 今の零奈は現世を護る。ただその役割を果たすだけだ。
 頭の中を切り替えたところで、視界が開ける。そこは屋敷の庭としてセッティングされた場所のようだった。
 足元から白い煙が立つ。おや、と思ったところで白服の男がおどろおどろしい声を上げながら背後から姿を現した。
 なるほど、これがお化け屋敷というものか。死者が生者を求めるようにまた、生者も死者を求めるといった趣旨なのだろう。
 別に興味がある訳ではないが、これも役割だ。こうして体験するのも良いかもしれない。
 と、脅かしてきた直後のキャストの動きに零奈は違和感を感じた。
 まるで速く行けと追い立てているような、それにしてはやけに、道の端に追い立てて来るような。
 このようなアトラクションは人が回らなければ混んでいくだけだろう。だから追い立てるのはまだわかる。けれどやけに道の端に寄せてくる、気がする。
(もしかして、反対側を見られたくない?)
 そう思い至った零奈は一度その場所を離れた振りをして、悪いとは思いながらもキャストが離れた隙を狙って急いで来た道を戻る。キャストが明らかに遠ざけようとしていたあたりを注意して捜索した。
「……見つけた」
 名前も判別できない。そんな石塚の裏側。チェーンが通された小さな硬貨が、テープで止められていた。その描かれた紋章は、星。
 こんな隠し方をするくらいだから忘れ物とは考えにくいし、キャストの動き方からしておそらくこれが鍵だろう。
 これで、先へ進める。零奈は一つ頷くと残りの道を速足で進んでいった。
 彼女の『護る』役割は、まだ始まったばかりなのだから。

成功 🔵​🔵​🔴​

向坂・要
お化け屋敷、ってのも思えば変わった遊びですよねぇ
わざわざ対価払って怖い思いがしてぇ、ってんですから

なんて思いつつ
遊園地の人を興味深そうにされど注意深く観察
第六感も生かし周囲と違った様子の人を特定したら八咫影戯をそっと放ち様子見

お化け屋敷に入る様であれば念の為解除
代わりに夜航で姿を隠し暗殺の要領で付かず離れず様子を伺い追跡

運を摑み取れ、ねぇ
希望の星、とか言いますけどそこらへんどうなんですかねぇ
なんて思いつつ様子を伺いつつ星にまつわるものなど中心に探索

うまく手がかりや入り方を見たけりゃ見つからない様に透明化解除して潜入、ってとこですかね
お化け役を逆に脅かさねぇ様に気をつけますぜ

連携
アドリブ歓迎



 遊園地の敷地内のベンチに座りながら、向坂・要(黄昏通り雨・f08973は目の前を通っていく客を観察していた。
「思えばお化け屋敷ってのも、変わった遊びですよねぇ」
 そう、遊びだ。それなのに、わざわざ対価を払って怖い思いをしたがるという。自身もヒトとは些か異なる感性であると自負しているが、それでもやはり、変わっていると言わせて貰いたい。
「っと、アレなんかどうですかね?」
 要の前を、背広を着た中年の男が通る。ぱっと見ただけでも高級とわかる服装は、娯楽の場所には不釣り合いだった。若い男と二人連れなのは、重鎮とそのお付きいったところだろうか。
 試しに己の影から知覚を共有する鴉を呼び出す。主の意向を読み取ったそれは音も無く飛び立つと、人々の五感をすり抜けて二人組を追跡した。
 他の施設には目もくれず二人組が向かったのは、予想通り、件のお化け屋敷であった。
 ビンゴ。ゆったりとした足取りで後を追っていた要は、鴉を呼び戻し代わりに【夜航】を発動させた。
 すぐに夜華が自身を包み、周囲の景色と同化する。姿が見えなくなれば、人込みも列も関係ない。アトラクションへ入った二人組に追いつくのは容易だった。
 夜華が消してくれるのはあくまで姿だけである。物音や気配を気取られないように、要は付かず離れずの距離感で二人組の様子を伺う。
 そんな彼の存在など露知らず、二人組はキャストと何やら話し始めた。そっと距離を詰めて内容を拾い聞きすると、何やら場所の説明をしているようだ。どうやら重鎮は、裏カジノの常連であったらしい。
 説明された場所は二つ。一つはすぐ傍、もう一つはもう少し館内を進んだ所。
 要は遠い方を先回りするべく、足を速める。
 指定された順番の廊下の窓を見ると、目的の者はすぐに見つかった。開けて手を伸ばせる位置に、星の首飾りが作り物の枝にかけられている。
 希望の星だなんてヒトは喩えるけれど、これはそれに含まれるのか。
 なんて考えながら窓の前に立とうとして、或ることに気付き要は慌てて【夜航】を解除する。勿論周囲に誰もいないことは確認済みだ。
 一歩踏み出せば、案の定仕掛けが作動し、派手な演出音と照明の点滅が起きる。
 危うく誰もいないところで仕掛けが勝手に発動したことになってしまう所だった。
「お化け役を逆に脅かすのは御免ですからねぇ」
 それこそ怪談話の一つに成りかねない。それは勘弁願いたいと笑いながら、要は星を掴み取った。

成功 🔵​🔵​🔴​

黒木・摩那
【WIZ】
お化け屋敷はお化け本体よりも、
暗闇から突然何かが出てくるのにびっくりしますね。
奇襲は困ります。

まずはカジノの入場証探し。
ちょっとした宝探しですね。

暗闇はスマートグラスの光感度を調整して、
明るく見えるようにします。
あとはカジノの常連らしき人達、
お化け屋敷に似合わない一人客にUC【影の追跡者の召喚】を付けて、
どこでどんな物を探して、入場証が何かを確認します【情報収集】。

入場証の正体が分かったら、後は同じことをしてゲットします。

お化け屋敷も明るくなってしまうと、そんなに怖くは無いのね。



 真横から突然、派手な音と共に吹き付けてきた風に、黒木・摩那(冥界の迷い子・f06233)は思わず飛び上がった。
 それがただのお化け屋敷の仕掛けだと確認して、ほっと胸をなでおろす。悲鳴は上げていない、上げていない筈、多分。
「奇襲は困ります、ええ。お化け本体よりずっと」
 猟兵であり、自身も超常現象の力を使う摩那である。今更幽霊など恐ろしくはない。しかし、暗闇から突然何かが出てくるということはやはり心臓に悪い。
 そう、暗闇だ。暗闇が悪いのだ。
 そう結論付けた摩那は自身のスマートグラス『ガリレオ』の光感度を調整する。途端、薄暗く見通しが悪かった視界がクリアになった。物陰に隠れて機会を伺う幽霊役のキャストもバッチりお見通しである。
「うん、お化け屋敷も明るくなってしまえば怖くは無いのね」
 不安事項はこれで消え去った。落ち着いたところで、あらかじめ放っていた【影の追跡者の召喚】と五感を共有する。程なくして、派手な服装に身を包んだ女性客の姿が視界に映った。
 それは摩那がお化け屋敷に入る前、他の客層と比べて明らかにその場に似合わず浮いていると判断した人物だった。尚且つ一人客だった、というのも大きい。この女性にはお化け屋敷を楽しむ以外に、何か目的があるのではないか、そう判断してこっそりと追跡者を向かわせていたのだ。
 その推測はどうやら正しかったようだ。
 女性客は苛立ったように摩那とは別の部屋で引き出しを引っ掻き回している。が、少しして歓声を上げ、派手なネイルが施された手を戻す。
『あった……! これで今日こそセレブの仲間入りよ……!』
 よほど興奮しているのだろうか、それとも一人だと思って油断しているのだろうか。女性客には隠すといった動作がまるでない。お蔭で手に持っているものがよく見えた。
(なるほど。あれが入場証ってやつね)
 影を通して女性客の手に握られた星のコインのペンダントと、その在処を確認した摩那は一つ頷いて自身の能力を解除した。
 目的の特徴と隠し場所の例いう情報が分かれば、話は速い。視界も良好なことだし、あとはちょっとした宝探しの気分だ。
 落ち武者風の男性キャストが奇声を上げて脅かしてくるのを軽くいなしながら、摩那は軽い足取りで星の金貨のお宝を探しに行った。

成功 🔵​🔵​🔴​

ヴィクトリア・アイニッヒ
【WIZ】判定。

遊園地。馴染みはありませんが、中々に楽しい場所ですね。
でも、こうして脅かされるのを楽しむという感覚は、中々理解出来ませんけれど。表向きは平和なこの世界特有の文化なのでしょうか…

…ともあれ、この裏に潜む邪教団を見過ごす訳にはいきません。
しっかりと、与えられた務めを果たすとしましょう。

まずはお化け屋敷。
見切り、情報収集、第六感などを活かしつつ。内部の怪しげなポイント、物陰、人の動きに注意しましょう。

特にキャストが脅かしにくるポイント、ゲストが足早に離れるポイントは要注意、ですね。
相手の様子、場所の状況をしっかり見極め、探すべき物をしっかりと探しておきたい所です。

※アドリブ歓迎です。



 午後を過ぎても遊園地を訪れる人々の数が減る様子はない。アトラクションの順番を待つ事に飽きた子供達がぱたぱたと鬼ごっこをしているのを、同じく列に並んでいたヴィクトリア・アイニッヒ(陽光の信徒・f00408)は微笑みながら見ていた。
「こうしてみると中々に楽しい場所ですね、遊園地」
 周りの誰を見ても、常に笑顔が溢れている。アックス&ウィザーズ出身の自分にとっては馴染みのない場所だが、それでも良いところだと思う。
「脅かされるのを楽しむということは理解出来ませんけれど……表向きは平和なこの世界特有の文化なのでしょうか」
 人は非日常な出来事を求めたがるという。ここでは『恐怖』が非日常である証ということなのだろうか。
 ともあれ、この遊園地の裏に潜む邪神団を見過ごすことはできない。
 目の前まで迫ったお化け屋敷の入り口を見上げ、ヴィクトリアは捜索に向けて意気込んだ。
 
 視界の悪いアトラクション内をゆっくりを歩いていく。仕掛けの場所、装飾の配置まで一つ一つを見逃さないように観察して、冷静に手掛かりを探していった。
(……あれ?)
 振り向いたのは虫の知らせと呼ぶようなものだった。
 近くにあった業務員専用口から来たのだろう。いつの間にかそこには白い着物姿のキャストが、そこに立っていた。そして、何やら装飾を弄っているではないか。それはまるで何かを隠しているような動作だった。
 ヴィクトリアはそっと物陰に隠れて、それを観察することにした。
 と、若い男女のしゃべり声が近付いてくる。後から入ってきたゲストが追い付いてきたのだ。
 白い着物のキャストはそれに気付くとすぐに来訪者を脅かしにかかる。悲鳴が上がり、カップルは隠れているヴィクトリアにも気づかず次のエリアへ足早に向かっていった。それを見届けると満足そうに来た道を戻り、キャストは姿を消す。
(さっきは、あそこで脅かされませんでしたが……)
 どうにも引っかかる。キャストがもう戻ってこないことを確認して、問題の箇所の捜索にあたった。
 動かされた様子がある、破れた大きな提灯のセットを覗く。
 果たしてそこには、星型のコインが隠されていた。先程スタッフが置いたものはこれだろう。無事見つけられたことにほっと安堵するが、いけない、とすぐに気を引き締め直した。
 これはあくまで鍵だ。邪神を倒すまでの道は、まだ、遠い。 
 自分は与えられた務めを果たすのだ。ヴィクトリアは再度、己に言い聞かせる。
 先程までの子供たちの平和が、ずっと表向きで在り続けられるように。

成功 🔵​🔵​🔴​

黒河内・柊夜
邪神より与えられし遊戯、フン、くだらんな。
作り物の闇に恐怖など抱こう筈もない……多少得手としないのは否定出来んがな!何故このような試練を我に押し付けたのだ魂の同胞ヒイラギよ!!

されど我が力もってすればこの場において平静を装う事は容易い。
認められし証ということは持ち運び出来る程度の物、内装をサイコキネシスで軽く揺すりながら進もうぞ。手が届く範囲で、手に取ることの出来る不自然な物を探すぞ。

あとは人が立ち止まらぬ様な位置で立ち止まり、係の者の反応を見る。
多少ハッタリを効かせ堂々としていれば、関係者ならば勝手に勘違いするだろうよ。実力行使は好かぬ故な、適当に言いくるめて自ら案内してもらおうか!



「邪神より与えられし遊戯か……フン、くだらんな。作り物の闇に恐怖など抱こう筈もない!」
 お化け屋敷に入って早々、黒河内・柊夜(中途半端にこじらせた・f16288)は大声で言った。こういう場所は、空気に呑まれたらいけないのだ。
 意気揚々と柊夜が一歩踏み出す。
 途端、雷に似た轟音と共に落ちてくる化け提灯。
 飛び跳ねて結果、二歩退いた。
「……多少得手としないのは否定出来んがな!」
 それがただの仕掛けであると入念に確認して、少し大回りに避けて柊夜は改めて先へ進む。
 何故このような試練を我に押し付けたのだ!
 身の内にいる筈の同胞に苦情を訴えるも、返事は無い。黒縁の眼鏡は胸ポケットの中のままだった。
 こほん、と咳払いを一つ。
 気を取り直して、認められし証——入場証とは何か、と柊夜は考えた。設置や持ち運びのことを考えると、それほど大きなものではないだろう。
 それならば。試しに目の前の看板を【サイコキネシス】で揺すってみた。木製の看板は音を立てるのみで、これといって変化は無い。
 しかし、探し物が小さい物であるのなら、こうやって探りながら進めば手掛かりが見つかるかもしれない。
 がたがた、コトン。
 ガチャガチャ、がたり、ぱたん。
 いっそ軽快にも思える怪奇音を鳴らしながら、柊夜は屋敷内のルートを突き進んでいく。
 彼自身がちょっとしたポルターガイストの具現となりつつあるが、さして気にしていない。本人はいたって真面目だ。
 しかし心なしか、脅かしてくる幽霊役も減ってきたような……。
「あのー、お客様?」
 声を掛けられた。見れば白い着物姿のキャストがやや離れた所に立ち、様子を伺っていた。
「アトラクション内の装飾物を触るのはちょっと……」
「む、幽世の使いの者か。求め訴える我が闇の力の前に、恐れを抱いてしまったか」
「えっと……何かを探しているんですか?」
「その姿、夕闇の星の如き儚い光なれど、我は資格を得る者。必ずや見つけ出さねばならぬのだ」
「星……資格……?」
 スタッフは困惑顔を浮かべるばかりだが、あくまで柊夜は堂々とした態度を崩さない。その内、何を勘違いしたのかキャストはポンと手を叩いた。
「ああ、もしかして社長のご親族様で! 我が教団に興味を持たれていると伺っておりました、『星』を探していらっしゃったのですね!」
 なんだかとんだVIPと間違われてしまった様だ。しかし、会話の端々からこのキャストは間違いなく、カジノの運営に絡んでいるのは明らか。
 ここはうまく会話を合わせよう、とハッタリを続ける。
「う、うむ、我は星の資格を得た者なり!」
「事前に連絡を頂ければご案内しましたのに。——さぁどうぞ、『星』はこちらになります」
 勘違いをしたままのキャストに連れられ、柊夜は隠された星を手に入れたのだった。
 願わくば勘違いされた当の本人と、この先で鉢合わせることがないようにと思いながら。

成功 🔵​🔵​🔴​




第2章 冒険 『隠されたポーカー大会』

POW   :    ポーカー大会に参加、気合いで幸運を引き寄せてみせる

SPD   :    ホテルに忍び込み怪しいところが無いか周辺の調査を行う

WIZ   :    ホテルに客として入り、ポーカーを観戦 邪教徒の動きを警戒する

👑11
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 遊園地の閉園時間を大きく過ぎ、日付も変わるかという時間。
 『星』に導かれ、閉ざされているはずの正門前に、ちらほらと人が集まり始める。
 くたびれた顔のサラリーマン。派手な服装の女性。
 いかにもという高価な背広を着た男とその側近。
 はたまたまだ若い学生のような身なりの者もいる。
 彼らもまた、例のお化け屋敷で入場証を探し見つけてきたのだろうか。
 集まったの人々の様子を伺う猟兵達の前で閉ざされた門が音を立てて開き、ディーラー服姿の女が姿を見せる。よく見ればその姿は、お化け屋敷内を動き回っていた白い着物姿のスタッフだった。
「星の導きに従い、今宵はご参加ありがとうございます。それでは皆様、参加者の証を見せて頂きたく」
 促されるままに、二つの星が刻まれた金貨をディーラーに見せる。丁寧に一つ一つを確認した女は恭しく礼をすると、どうぞこちらへ、と右手を挙げた。
 
 観覧車の関係者口から案内されて地下へ続く階段を降りる。アンティーク調の扉を開けたそこは、別世界のような光景が広がっていた。
 赤を基調をしたカーペット。派手な色遣いの調度品は見るからに高級感が漂い、どこか威圧的だ。天井に飾られた豪奢なシャンデリアから零れる光が室内を柔らかく照らしており、明るく華やかな雰囲気を作り出していた。
 行われるゲームは日毎に異なるらしい。今宵はここでポーカーをやってもらう、とディーラーは説明した。
 猟兵達はここで邪神を呼び寄せ、戦うための機会を作らなければならない。
 それにはこの勝負に勝つだけでは足りない。かといって自分たちが負けるだけでも足りない。敗者の中に一般人が混ざってしまえば、邪神は『食べやすいモノ』だけを平らげて姿を消してしまうだろう。
 猟兵達が思う存分に戦い、邪神を『討つ』為に整えるべき条件は、鏡が言った通り一つだけだ。
『誰も生贄を出さないこと。』
 弱者に味方するのも良い。強者に仕掛けるのもよい。ゲーム中に小細工を加えても、バレなければそれはルール違反ではないのだ。
 さぁ猟兵達よ。問答情け、容赦は無用。
 悪しき邪神の作り出した、弱肉強食の盤面をひっくり返せ!
 
ヴィクトリア・アイニッヒ
これ見よがしな調度品。派手な色合い。
……何よりこの、嫌な空気。見た目には華やかですが、邪な空気が漂っていますね。
ここが邪神の巣窟である事は、間違いないでしょう。

さて……ここからが、本番。
賭け事などはあまりよろしくありませんが、邪神を討つ為です。仕方ありませんね。
……主よ。眼前の勝負に打ち勝つ勇気を、与え給え。

学習力、情報収集、第六感などを活かしつつ、配られる手札や他の者の手札を推測。大きな動きを起こさぬ様に、場を調整し続けるように動く。
ディーラーの様子も注視。イカサマなどは無いとは思いますが、その辺りもしっかり見切らねば、ですね。

※アドリブ・連携、歓迎です



●調停者
 各々の場所でゲームが始められ、活気付く会場を見回したヴィクトリアは嫌悪感に顔をしかめた。
 派手な色合いの装飾。これ見よがしに置かれた高級な調度品。彼女の眼にはそれはただの悪趣味なインテリアにしか映らない。
 何より、会場を覆う嫌な空気が。見た目だけは華やかではあるが、欲望と陰謀、策略に塗れた邪な空気に、彼女は一つの確信を覚える。
 ここが邪神の巣窟に間違いないと。ならば、手段は選んではいられない。
「賭け事などはあまり宜しくありませんが、仕方ありませんね」
 胸の前に手を置き、小さな声で祈りをささげる。
「……主よ、眼前の勝負に打ち勝つ勇気を、与え給え」
 目を開けた彼女に、もう迷いはなかった。

 ポーカーのルールは大まかに理解しているつもりだった。しかし実践となるとまるで話は変わってくるものだ。
 複数人参加型のポーカーを数ゲームこなして、ふむ、とヴィクトリアはここまでに得た情報を整理した。
 カードの枚数はジョーカーを抜いて52枚。手札は5枚。交換は一回までで、数字がマークを合わせて役を作っていく。
 52枚の内容は、4つのマークの数字がそれぞれ1から13まで。基本、数字が大きければ大きい程強いが、1は一番強い。この会場ではゲーム毎にカードはすべて集められ、リセットされる。
 それでも、捨てられたカードの数字、プレイヤーの顔色、挙動、それまでの切り方、役の狙い方。それらの情報は十分な程集まった。
(ここからが、攻め時です!)
 自分の手札に目を通しながら、不要なカードを選びながら周りの人たちの視線を、カードを選ぶ指先を盗み見る。
 一番右の人は選び方に迷いが生じていた。捨てたカードからして、役が弱かったのだろう。その隣の人は大役狙い。自分の隣は不敵に笑っているだろうが、先程からせわしなく指先がテーブルを叩いている。きっとブラフだろう。
 交換したカードを確認。テーブル上のチップの数も確認。
「……コール」
「レイズ」
 出されたチップに、間髪入れずその倍ほどの量を上乗せして中央へ置く。微かに周りがざわめいて、次々と降りていった。
 ヴィクトリアの前に集められたチップが積まれていく。じっとりと掌にかいた汗をテーブルの下で握りしめながら、あくまで集中は途切れさせない。
 ゲームは続けられる。
 レイズ。フォールド。オープン。ストレート。コール、コール……。
 ハッタリと詐称、表情の裏にある企み。それらすら計算に加えてカードの中身を、プレイヤーの手の内を見切っていく。もちろん小細工が無いように目を光らせることも忘れない。
 そうしてヴィクトリアはひたすらカードを読み切り、時には第六感に頼った引きの手札を使って相手の行動を牽制、誘導。テーブル上のゲームバランスを調整していく。
 勝ったものは次のゲームで、負け、負けたものは別の機会で損失を取り戻す。煮え切らない勝負の繰り返し。少しずつほかのプレイヤーも違和感に気づき始めるも、すでにその場はヴィクトリアの支配下だった。
「おい、あの卓……嘘だろ」
 ふぅ、と限界まで張りつめていた緊張を緩める。
 全てのゲームが終了した時、卓上のプレイヤー全てのチップの高さは、等しいものとなっていた。
 

成功 🔵​🔵​🔴​

依神・零奈
……へぇ、暇潰しには丁度良さげな場所ね
邪神のお膝元なのが気に食わないけど、どうせ今から
掻き回す事になる訳だし、ま、いいかな

条件は誰も生贄を出さない事……ね
手っ取り早いのは一般人側の気を引き付けて勝負させない事かな
このカジノで最もレートの高い場所で勝負して大勝すれば
客の気を引ける筈、ついでに運営側、邪神の気もね

どうせこういう場所なんだし
まともにやって勝てないのは分かってるよ
だから私もUCを使わせて貰う
気づかれないようにさりげなく使わないとね

「……キミはずいぶんとツイてないみたいだね」

舌禍による呪詛をディーラーに向けて災い、不運を引き寄せる
手札の引きの悪さ、仕掛けの不発とかね


黒木・摩那
【WIZ】
誰も生贄を出さないというと、
誰も負けないことですし、勝ち過ぎないこと。

ここは勝ち過ぎを妨害してみます。
勝ち過ぎというと疑うはイカサマです。
ポーカーですから、カードに細工や
相棒が相手のカードを伝えてることが考えられます。

まずはカードを動きをスマートグラスで
スローモーションで解析したり、
イカサマの相棒がいないか調べます【情報収集】【第六感】。

イカサマの手段がわかれば、あとはそれを妨害するだけ。
【念動力】でカードの動きをずらしたり、
【ハッキング】で秘密通信を妨害します。

イカサマ自体はばらすと、その相手が生贄になるだけなので、
秘密にします。



●幸か不幸か
「へぇ、暇つぶしには丁度良さげな場所ね」
 凡人が聞いたら眩暈を起こしそうな零奈の独り言を聞くものはいない。
 まさに生と死を分かつような賭け事を、暇つぶし、と言ってのけるのはヒトとは違う感性を持つ神である彼女だからこそだろう。
 ここが邪神のお膝元であるのが少々気に食わないが、どうせこれからかき回す場所だ、構いやしない。
 やるなら彼女なりに、楽しみながらやろうじゃないか。
 零奈はふらりと足を踏み出し、目的の卓へ向かっていった。
 
 『ガリレオ』の調整をしつつ、摩那はこの場に於いての目標を改めて考える。
 目的は、誰も生贄に出さないこと。
 生贄とは敗者が成る。
 だから誰も負けてはいけないし、勝ち過ぎてもいけない。
 目立った勝ちがいなければ、大損するものは当然少なくなる筈だ。
 ならばここは、勝ちすぎる者の妨害を図るとしよう。
 摩那が狙いとして定めたのは、いかにも常連といった風体の二人組の男。
 片方が高級そうな背広を着た偉そうな男、もう一人はへこへことしてばかりの、付き人と思しき若者。
 すでにいくらか勝っているらしく、男は上機嫌に、下品な笑い声を上げていた。
(勝ち過ぎて疑うことは、まずはイカサマよね)
 『ガリレオ』を介して、ゲームの流れを見る。注目するのはいかにも仕掛け易そうな立場にいる付き人。大声で敗者を罵っている背広男に周りが注目している中で、付き人がそっと、ゲームのディーラーに何かを渡している。
 スローモーションで解析、拡大。予想通り、金銭の類の様だ。
(これはディーラーとグルってこと、かしら?)
 考えられるのは、ディーラーがカードを分ける際にタネを仕掛けていること。いかにもな手だが、もっとも確実なものだ。
 さてどうする。ここでイカサマを告発することは簡単だが、そうすると今度は二人組が生贄になってしまう。
「今度は私と遊んでくれないかい?」
 と、と散々罵られ追い出された敗者と入れ替わるように、一人の少女が背広男の向かい席に座った。零奈である。
「おや、お嬢ちゃんが夜遊びなんかしていいのかい?」
 小柄な少女の姿に、背広男がげらげらと笑う。そんなことも気にせず、零奈はディーラーに一言、二言、何かを言うと、頷いたディーラーがあるものを持ってきた。観衆が一斉にざわつく。
 遠目からみていた摩那も、思わずえっ、と声を漏らした。
「上限は無しでいいんだよね?」
 ディーラーが持ってきたものは、高額チップの山だった。
 予想外の勝負の誘いに、背広男は一瞬たじろぐ。しかし一変、すぐに余裕の笑みを浮かべた。
「いいのか? 途中でごめんなさいってしても、遅いんだぜ」
「言うわけないよ。それで、やるの? やらないの?」
 相手をわざと煽るような零奈の態度に、背広男はやってやる、と苛立ったように答える。
 そうして、その日の中で一番の高額レートのゲームが開催された。
 なんだなんだとそれまで賭け事に興じていた人々も好奇心から集まってくる。気付けばギャラリーは大勢になっていた。
 ディーラーが簡単にルールをおさらい、レートの確認をしている間に、摩那はゲームの卓上付近まで、肉眼で二人の様子が確認できる位置まで移動する。
 背広男の態度はあくまで崩れない。イカサマをしている彼の勝利は必然、いいカモができた、くらい思っているのだろう。
(そうは問屋がおろしません……!)
 今までのゲームを観察し、情報を集めてきた摩那は気付いていた。勝負を始めようとしているディーラの袖に、数枚のカードが仕込まれていることを。カードを配る前にそれを上に乗せることで、両者の役をコントロールするのだ。
 知っていた。だから、ディーラーがカードに触れた瞬間、【念動力】で仕込まれたカードとデッキをと、まとめて引っ張った。
「あッ……!」
 ばらりと、バランスを崩したカードが崩れ、床にばらまかれる。
「大変ですね。拾うの、お手伝いしますからこちらを使っては?」
 すかさず摩那が近づき、未開封のトランプを差し出す。先程受付で借りてもいたもので、正真正銘の公式戦用の新品である。
 今使っているものと、柄が異なることを除けば。
「え、ええ。ありがとうございます……」
 まさか新品を使えないとも言えない。ディーラーは若干引き攣った顔になりながらもそれを受け取った。
 これで仕掛けは崩れた。さて、あとは両者の運と技量次第だが……。
 カードを拾いながら、零奈と目が合う。こくり、と彼女は頷いた。
 零奈も何も、無策で挑んだ訳ではない。まともにやっても勝てないのは承知の上だ。
 だから、こちらも小細工をさせてもらう。
「大丈夫? ……今日のキミは、『随分とツイてないみたいだね』」
 ——【舌禍「七羽鴉」】。不吉な予言は力ある言葉となり、ディーラーを縛る。
 きっと彼の手は鉛のように重くなっていることだろう。だからほら、こんなにもカードを配る動きが鈍い。
 そしてそんな彼が配るんだから、当然、揃う役なんてないのだ。
 ちらりと背広男の顔色を見る。その顔色から見て、相手もさして変わらないらしい。
 さぁ、あとはこの不幸にどこまで耐えらるか。我慢比べの賭け比べだ。
 手札を交換したことにより、一番小さな素数が2枚並ぶのを見て、零奈は小さく笑った。
 

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

黒河内・柊夜
カジノって一回来てみたかったんですよね。
ということで副人格のヒイラギがお送りします。
大丈夫、仕事は忘れていません、あわよくば稼ぎたいですけど。

まあギャンブルですので正々堂々イカサマしますか。
ゲームに興じながらサイコキネシスで適当な調度品を吹っ飛ばして壁にぶつけて壊します。派手な音が出そうで周辺に人が絶対に居ない物を選びましょう。
突然大きな音がしたら誰しも意識が逸れるはず。その隙に手札を適度に強い手に入れ替えます。僕のではなく、負けそうな一般参加者の物を。僕はポーカーフェイス得意なのでハッタリで乗り切りますよ。

いきなりこんな事が起こるなんて怖いですねー。
シャンデリア、落ちてこないといいですねー。


向坂・要
なるほどねぇ
こりゃまたご盛況なご様子で、っと内心思いつつ
影に紛れて放つは八咫影戯の影の鴉達
ホテルの客の1人としてギャンブルを楽しむ振りをしつつ第六感も生かし広げた感覚で会場全体の様子を把握

調査も試みつつ一般客が生贄とならないように念動力などをこっそり使ってゲームの行方を調整させてもらいますぜ
手癖の悪さも含め、小細工、なんざバレなきゃいいんでござんしょ?
なんて?嘯き

っとついでに潜入試みてる人がいたりしたら監視役の注意をひいたりと手伝えりゃ幸いってもんで

アドリブ
絡み歓迎


ヴィリヤ・カヤラ
一般人が負けないように頑張ってみようかな。
まずは室内のセキュリティが気になるから、
確認出来る範囲の監視カメラと
見回る人の動きを確認するね。
確認出来る人がいたら情報共有してもらおうかな。

『目立たない』ようにしながら監視の目が無いところで
【澄明】を使って姿を消すね。
慣れてなさそうな一般人のいる卓に行って、
その卓の参加者のカードを見て役を確認。
まずは信じてもらわないといけないから、
バレないように小声でアドバイスして勝って貰うね。
信じてもらえたら同じように卓のカードを確認して
最後まで勝ってもらえばOKかな。
猟兵のいる卓なら協力してやるのも良いかもだね。

アドリブ・連携歓迎



●misdirection
 監視カメラの数、警備に当たっている者の人数。ディーラーが定期的に巡回しているのは、一応イカサマ等が無いように、というパフォーマンスだろう。
 ヴィリヤは会場の中をゆっくりと歩いて回り、会場内のセキュリティを確認していた。
「何かお探しで?」
 と、そんな彼女に見知った顔が声をかけた。長身に人狼のような狼の耳と尾を持つ男、要である。
「ちょっと、私も作戦を考えてて。人目がつかないところを探していたんだ」
「あァなるほど。あっちもこっちも、ご盛況なご様子ですからねぇ」
 それなら、と、まるであらかじめ答えを用意していたかの様に、要が部屋の隅のテーブルを迷わず指差す。会場の真ん中でその日一番の高額な勝負が行われているからだろう。近くに卓はあったが、客もディーラーもいないようだった。
「あそこなら、今なら丁度カメラの目も潜り抜けられまずぜ」
「何で分かるの?」
 素直に驚くヴィリヤに要はけらりと笑い、今度はふさふさとした尻尾で監視カメラの上を指す。
「目も耳も、ちょいと多く広げていたもんで」
 おそらく開場と同時に、人々の影に紛れて放っていたのだろう。そこには要の分身たる影色の小柄な鴉が陣取っていた。よくよく気を付けてみれば、部屋のあちこちに鴉は隠れているようだ。
 それらは全て、要の五感と繋がっている。カジノ会場の死角を探すことなど、今の要にとって造作もないことだろう。
 なるほど、と納得してヴィリヤは礼を述べて、ゲームの雰囲気を楽しむ振りをして教えられた場所へ移動する。
 念のため周囲を見回し、一般人の視線がこちらに向いていなことを確認。物陰に隠れるとすぐに】澄明】を発動させる。
 瞬き一つで、彼女の身体が周囲と一体化していくのを、鴉越しに要は『視て』いた。
 いや、見ていたものはもう一人。
「なるほど、姿を消せれば敵も味方も手札を見放題ですもんね。いやー、便利そうです」
 柊夜、いや、彼の中の副人格、「ヒイラギ」だ。
 羨ましい、などど言いながら彼の表情に別段焦りの色は無い。
「そう言う割りにや、余裕そうですねぇ。何か策がおありで?」
「ええ、勿論。ここは正々堂々——イカサマをします」
 ヒイラギの黒縁眼鏡がきらりと光った。
「――ははっ」
 あまりに潔い回答に、要は思わず吹き出した。
「折角だ。俺も一枚噛ませて貰いましょうや」

 ヒイラギ達が混ざったのは、複数人で同時に行われるポーカーゲームの卓だった。
 カジノというものには一度来てみたかったんですよね、と開始の準備を見送りながらヒイラギは内心で胸をときめかせていた。あわよくば稼いでもみたいところだけれど、流石に仕事は忘れてはいけない。
 自分の手元にカードが割り振られる。手札を見る振りをして、周囲をざっと見てタイミングを見計らう。
 おそらく近くには、先程姿を消したヴィリヤもいる筈だ。同じ卓に紛れている一番の不運と負債の持ち主は彼女に任せるとして、せいぜい自分は役割を全うしよう。
 向かいの席に座っている要を見る。お互い視線だけで合図をして、作戦は決行された。
 がしゃん! 
「きゃああっ!?」
 突然、ヒイラギたちの卓の近くで悲鳴が上がった。
 インテリアとして置かれていた花瓶が派手な音を立てて壁へと激突したのだ。幸い人がいる方向には飛ばなかったが、それは誰がどう見ても、自然な動きでは無かった。
「今、ひとりでに花瓶が……」
「何を驚くんだ。ただの余興だろう」
「でも、昼間も例のお化け屋敷でポルターガイストが起きたって話も……」
 明らかに異常な現象に、周囲がざわめく。勿論、卓上のゲームの参加者も例外ではなかった。
「いきなりこんな事が起きるなんて怖いですねー。シャンデリアとか落ちてこないといいですねー」
 間延びした口調で、いけしゃあしゃあとヒイラギは言ってのける。何てことはない。彼のユーべルコード、【サイコキネシス】で花瓶を動かし、壁へと投げつけただけだ。
 タネを明かしてしまえば簡単な話だが、それでも一般人の注目を集めるには十分だろう。
 その場にいる一般人全員の注目が花瓶に向けられている隙に、要がさりげなく、カードの山に触れる。次に、隣の席に置かれたままの手札へ。
 会場全体に鴉を飛ばしている要にとっては、それぞれの手札を把握するのは簡単なことだ。だから少し、ほんの少し、そこに細工を入れる。ゲームがあくまで均衡を保つように。具体的にはカードの順番を入れ替えて。
(手癖の悪さも含め、小細工なんざバレなきゃいいんでござんしょ? ってね)
 ついでとばかりに使えそうなカードを数枚拝借して、テーブルの影に向けて差し出した。
 ありがとう、小さな礼を述べる声が聞こえて、要が差し出したカードが溶けるように消えていく。
「さて、あとは頼みましたぜ」
 警備員が割れた花瓶を片付け、客人を宥める声に紛れ、要の呟きは誰にも聞こえることがなかった。
 
 何事もまずは信用が大切だろう。
『ねぇ、聞こえる?』
 【澄明】で姿を消したままのヴィリヤは、その卓で一番の負債を抱えているサラリーマン風の男にそっと声をかけた。
 先程の騒ぎがあったばかりだからだろう。男はびくりと身体を震えさせると、あたりをせわしなく見回した。その表情には怯えの色が混ざっている。
『怖がらないで。私は貴方の味方だから。貴方に負けて欲しくないの』
 周囲に聞こえないよう、あくまで小声でヴィリヤは声をかけ続ける。
『信じてくれるなら、次に右のカードを捨てて。次に引くカードはきっと良いものだから』
 恐る恐るといった様子で男が右端のカードを捨てる。交換されたカードはダイヤの6。男の表情に緊張が走る。男の手札には既に6のペアがあったからだ。
『ありがとう。今回は勝負に出ていいよ。今、この場で一番強いのは貴方の役だから』
 男がレイズ、と震える声で宣言。手札が開示され、そのゲームはヴィリヤの言葉通り、男の勝利に終わる。
 一度信用を得てしまえば、あとはスムーズだった。
 ヴィリヤが姿を消したまま、卓の状況を見て回り、男に助言を出していく。時には先程要から渡されたカードを使いこっそりと手札を入れ替えて、怪しまれない程度の役を作らせる。目立たないように少しずつ、マイナスを打ち消すべく勝たせ続けていった。

●明星来りて、やみが降りる
 かくして、その晩に行われた全てのゲームが終わった。
 カジノを任せれた支配人は、戸惑い表情を見せながらも終了を宣言する。
 その日、人生の成功を掴み取ったと言ってよいような勝者はおらず。
 かといって、絶望の淵に立たされた敗者はおらず。
 全員がほぼ少しの得。少しの損。全ては本人の努力でどうにでもなってしまうくらい。
 栄光を授けられる者は無く。生贄を差し出されることもなく。

 猟兵達の密やかな暗躍により。
 その日初めて、まつろわぬ星との契約は、違えられた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​




第3章 ボス戦 『『双児卿』ジェミナイ』

POW   :    輝き寄り添え、僕達カストル
【『兄弟』である人形から取り出した剣】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD   :    輝き寄り添え、ボク達ポルックス
【抱えている『兄弟』である人形】を向けた対象に、【光り輝く雷撃】でダメージを与える。命中率が高い。
WIZ   :    輝き対にあれ、僕とボク、忌まわしき双星
【『兄弟』である人形】を代償に自身の装備武器の封印を解いて【自信を無数の触手を持つ巨大な肉塊】に変化させ、殺傷力を増す。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

 ずるい。ずるいよ。
 
 響くそれは、空気の振動を介してではなく、猟兵達の頭に直接届く。
 それはまるでお気に入りの玩具を取られた子供のような、恨みがましい声だった。
 
 たくさんくれるって、言ってたのに。
 これは約束なのに。勝手に破るのは反則だ。
 力を手に入れるための知恵を授けた。
 カネが集まるための知識も与えた。
 なのに、ボク達にはくれないんだ? 

 ふ、と。煌びやかだったカジノ会場の落ちる。あたり一面に、闇が訪れた。異様な空気を悟った一般人の参加者がざわつき始めた。

 知ってる。これは契約違反だ。
 だったら、違約金を貰わないと。
 誰からもらえばいいかな?
 勿論、約束やぶりから。見せしめに、しなくっちゃ。

 部屋の片隅に、四つの星が、瞬いた。
 現れ出でた形は、まるで少年の様な姿。しかし、その肌は夜闇を溶かしたかのように黒く、末端は液体のように揺らめいている。瞳だけが蒼く、昏く瞬いていた。そして傍らにはもう二つ、瞬く星がある。
 少年の形をした異形が持つ、歪な人形。その目は同じく昏い光を宿し、輝いている。
 けたけたと人形がひとりでに嗤った。
 
 知恵をあげる。知りたいことを教えてあげる。
 僕達はなぁんでも、知ってるんだから。
 お前達のこと、ぜんぶぜんぶ知ってるよ。
 おしえてあげる。この先のことを、キミたちの未来を。
 だから代わりに、イノチをちょうだい!!
 
 
黒河内・柊夜
遂にまみえたな堕ちし星の使徒、邪なる神よ!
ハハハハ! 闇の饗宴の始まりぞ! この猛りに我が魂は打ち震えん!
そして我は導きし光を強く所望する!!

この場闇に飲まれようともやる事は変わらん。
博打と小細工はここまで、正々堂々刃を交えようではないか。
剣での先制攻撃を仕掛け何度でも打ち込むぞ。
そして我が存在感をもってすれば他の者を意識するのも疎かになるであろう、そこを『闇へ誘う黒き毒』で狙う。
攻防の間に黒針を撒いておけば気付くこともあるまいて。
だまし討ち? 戦略と言え。
我が毒の作る一瞬こそ好機、我が刃食らわせるもよし、同胞達に任すもよしだ。

ふん、強請るだけの小僧に与える物など無いわ!


向坂・要
最近じゃクーリングオフ、なんて制度もあるんですぜ?
なんて嘯きつつ
第六感や影に溶けた鴉達を生かして全体を俯瞰で把握するように心がけ

こりゃまた随分とうねうねした姿になっちまって

一般人が巻き込まれないように気をつけつつ(まぁ、多少お灸の意も込めて怖い思いしてもらってもいいとは思いますがね)

広げた感覚を元に暉焔を発動
生み出すはプラズマすら発する小さな火球達
手足のように自在に操り撹乱しつつの攻撃をはかりますぜ

オレ自身も空明あたりに毒のルーンを宿した属性攻撃でカウンターやらさせてもらいますぜ

連携
アドリブ歓迎



●誘いと導き
「遂にまみえたな。堕ちし星の使徒、邪なる神よ!」
 邪神へ真っ先に飛び出して行ったのは柊夜だった。かけていた黒縁眼鏡を放り捨てると同時に、細身の黒剣を抜く。
「この猛りに我が魂は打ち震えん!」
 持ち主と同じ名の葉が彫られたそれが柊夜の魔力を纏った。同時に少年の姿をした邪神の正面を取ると、真向から突きの構えをとる。
 対する双子卿はにたりと嗤ったまま。片割れの人形を持ったまま、応戦する様子もない。
「闇の饗宴の始まりぞ!」
 まずは一撃。そう確信した柊夜の手に、鈍い手ごたえが走った。
 へぇ、じゃあボク達を、もてなしてくれるのかい?
 嘲笑う『声』はどちらの者だろう。それは間近で聞いた筈の柊夜にも分からない。
 分かることは、双子卿の傍ら、人形の腹から何かが飛び出していた。固くて、尖った前端をもつ何か。それが柊夜の突きを受け止めていた。
「何、だと……ッ!」
 だったら、キミがホスト? 
 違うよ。僕、知ってる。これはおもてなし、御馳走っていうんだよ。
 ずるり、と片割れの少年が人形のハラワタを引っ張り出す。抜け落ちたそれは、一振りの剣のカタチをしていた。
 じゃあ悪くなる前にたべちゃおう。
 くすくす、けたけた。片割れの少年が剣を握り、お返しというように横薙ぎ振るわれた。正確に頸部を狙って繰り出される攻撃を状態をひねることによって避ける。犠牲になった数本の髪がくらやみに舞う。
「ふん、強請るだけの小僧に与えるものなど無いわ!」
 構わずに、柊夜は次の攻撃を仕掛けていった。双子卿は面白がるようにそれを防ぎ、弾き返す。刃が敵に届くことがなくとも、構いやしない。猛る心のままに、黒剣を繰り出していく。
 そもそも、自分の狙いは双子卿に刃を当てることですらないのだから。
 あッ――!?
 突然少年が悲鳴を上げ、膝をついた。見ればその足元には、少年の黒い身体とくらやみに溶け込むように、細い針が刺さっている。打ち合いの間、柊夜がひそかに撒いていたものだ。
 針には麻痺毒が塗られている。それが邪神の動きを封じたのだ。
「——『闇へ誘う黒き毒(パラライズ・スティング・レゾナンス)』。我が剣はあくまでフェイク。汝をこの世界より隔離せしは、祈りの刃ではない。我が闇の力よ!」
 残りの針が一斉に双子卿へ牙を向く。全身を隈なく針山にされた少年が悶絶の声をあげた。
 ひどい、ひどい!! ボク達は望むから教えたのに!
 知りたいというから、授けたのに! 星の導を上げたのに! 
「……汝のそれは、導きではない。破滅への誘いだ」
 甘い言葉で惑わし、思考することを放棄させる。それは導きとは言わない。
「我は真の導きし光を所望する! 偽りの星は潰えるが良い!」
「まったくでさぁ」
 宣言する柊夜に応える言葉と共に、精霊の燐光が文字を刻んだ。

●yr
 双子卿の身体に刻まれた、生と死を司る文字が発光した。毒の役割を与えられたそれは柊夜の麻痺毒と相乗し、邪神の縛めをさらに強固なものへと変えていく。
 己の仕事を終えた精霊が、要の下へと戻る。それは棍へと姿を変えて手の中へ納まった。
「契約契約って言いますけど……知ってますかぃ? 最近じゃクーリングオフ、なんて制度もあるんですぜ?」
 対価が釣り合わないってことなら、返品解除だってできますぜ。飄々と宣う要の言葉が勘に触ったのだろう。恐ろしい形相で双子卿が睨みつけてくる。
 知ってるさそんなこと! ボク達は何でも知ってるんだから!
 満足に動かすことが叶わない身体に業を煮やしたのだろう。怒鳴るような『声』が反響し、人形の身体が、少年の身体がみるみる崩れていく。
 二つの異なる肉体は溶け、混ざり、一つの肉塊へと姿を変えた。
 カジノ会場の天井まで届かんとする肉塊から、獲物を探すように無数の触手が生えた。その一つ一つが木の幹ほどの太さがある。あれで殴られたらひとたまりも無いだろう。
「こりゃあまた……随分とうねうねした姿になっちまって」
 それでも、要の態度は崩れなかった。カジノが開かれた当初から変わらず放ったままだった、影の鴉の視界を借りて敵の動きを注意深く観察する。
 途中、部屋の隅で恐怖に震え縮こまる一般人を捕らえた。念のため攻撃が向かないようにと気を配るが、それ以上のことをするつもりはない。寧ろ、彼らにも丁度良いお灸となっただろう。
「——っと」
 敵の攻撃開始の機微を第六感で感じ、全てを紙一重で躱わした。毒の効果は残っているのか、その動きは緩慢だった
 そして、目的のものを要は『視た』。
 肉塊の上部。四つの蒼い恒星の煌めきを。
 右目に力を集中させる。常に眼帯に覆われども、彼の視界は今、無数の鴉と共有している。
 そうして視えていれば——視線は通るのだ。
 アアアアあああ゛ッ!?
 超高熱の火球が暗闇を照らした。肉の焦げる音が響く。
 要の生み出した炎は不規則な軌道を描き、彼らの目を焼いていく。
「自慢の星が台無しだねぇ」
 灼熱の太陽の前では、いかに眩い星の瞬きも勝つことは敵わない。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

依神・零奈
支配人のご登場か……
契約破談はご愁傷様、でも私の知った事ではない
……神様ってのは悪魔ほど契約を律儀に守らないから

さてと……まだ周りに人もいる事だし
敵の動きを抑制してしまおう、UCで攻撃を仕掛けるよ

「キミの知る未来は書き換わる」
「さぁ、予期せぬ不幸はすぐそこだ」

舌禍による呪詛で相手が行動する度に
行動が阻害される何かしらの災いを引き起こさせるよ
体が重くなったり、感覚が狂ったり、シャンデリアが
落下してきたりね

相手が反撃してきたらめんどくさいけど
【破魔】の力を宿した霊符を展開して触手を
叩き落してしまおう



●Nevermore
「いよいよ支配人のご登場か……って思ったけど、随分な姿になったもんだね」
 太陽に目を焼かれた双子卿だったものは、痛みから手当たり次第に暴れまわっていた。その動きは愚鈍ながらも力強い。零奈達猟兵ならばいざ知らず、一般人相手に掠りでもしたらたちまち肉塊の仲間入りだろう。
「まだ周りに人もいることだしね……もう少し動きを封じさせてもらうよ」
 零奈の声に反応したのか、うごめく触手の向きが彼女へ向く。
 イノチを、生贄を寄越セ……! ボクにはその権利がある!
 卑怯者! ウソツキ!
「契約破談、御愁傷様。神様ってのは、悪魔ほど契約を律儀に守らないからね」
 だから何を言われても、痛くもなんとも無い。
 ごう、と音をたてて触手が振るわれる。当たれば全身の骨が砕かれるような一撃を、しかし零奈はあくまで気怠げに、心底面倒臭そうに見遣った。そして懐から取り出だした霊符を数枚宙へと投げる。
「……そもそも私には関係が無いし、知った事でもない」
 彼女は只、邪神を討つだけだ。それが今の役割だから。
 破魔の力を宿した呪符が即座に彼女の前に陣を描く。それは力有る障壁となり、質量での一撃を受け止めた。
「さて、キミに伝えるべきことがある」
 舌に乗せるのは禍つ言霊、【七羽鴉】。
 伝えルのは僕達の方ダ! 僕達は知ってる、キミの未来を!
 餌となるのが、オマエ達の未来——。
「その未来は、キミの知る未来は書き換わる」
 呪符の一枚を掌に持ち、障壁を破らんとする触手を叩き落としながら零奈は宣言した。
 何故なら彼女は神託の神であったから。
 彼女が告げれば、それは未来へと変じる。
「さぁ、予期せぬ不幸はすぐそこだ」
 ——精々、用心することだ。
 叩き落とされた触手が振り上げられる。再び零奈を叩き潰そうとする。
 しかし彼女は今度は防ぐことはしない。まるで必要がないというように。この先の未来を予感しているかのように。
 果たして不幸な予言は真となる。
 触手は零奈の一歩先の床を破壊するに留まった。
 『不幸にも』、触手の間合いを見誤ったから。
 『不幸にも』、いつもより肢体が重かったから。
 そして『不幸』は続く。
 ぎしりと金属が軋む嫌な音が響いた。
 『不幸にも』、天井に吊るされていたシャンデリアは年季が入ったもので。
 『不幸にも』それは肉塊が放った暴れた際に触手とぶつかり、大きく揺れていて。
 『不幸にも』、吊るされていた金具が砕け。
 『不幸にも』、その下には猟兵はおらず、かといって一般人が巻き込まれる位置にはならず。
 その下に居たのは、『不幸にも』肉塊となった双子卿のみであった。
 無数のガラス片が砕け、金属片がぶつかる音が周囲に響く。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヴィリヤ・カヤラ
未来は自分で確認するから
教えてもらわなくても大丈夫だよ。

近接なら黒剣の宵闇を剣のままで使っていくね、
少し遠かったりフェイントやカウンターが狙えそうなら、
蛇腹剣にして攻撃していくね。

カウンターを狙う時には【瞬刻】で
反応速度を上げてみるけど、
使いすぎると寿命の減りが恐いから
程々で解除するね。

敵の動きを阻害したい時や肉塊になった時には、
【氷晶】を着弾点で爆発させて使うね。

そう簡単にはやられてあげないし、やらせる気もないよ?
連携相手がいる時は攻撃が来るのに気付けたら、
敵の攻撃に割り込んでフォローに入るね。

アドリブ・連携歓迎



●瞬きを刻むもの
 落ちてきたガラスと金属の塊を押しのける肉塊に向かう光がある。
 それは星の輝きではない。かといって、太陽の煌めきでもない。
 それは、まるで月の如く。
 ヴィリヤの魔力の行使により溢れる光、それを触手の周囲を囲むように浮かんだ氷の刃が反射し、光を帯びていた。
 その数、およそ200以上。
「氷よ、射抜け」
 彼女の合図とともに、氷晶は一斉に肉塊へと走る。目を潰され、動きを封じられた肉塊に避ける術はない。
 着弾。破裂。
 音を立てて、氷晶が当たった箇所から爆発し、触手が凍りついていく。
 けたたましい双子卿の悲鳴が響く。獣の咆哮の様それは、もはや人の言葉にすらなっていない。
 ミらイ、チエ……ガシッてィる、オマぇノォッッ!
 辛うじて聞き取れる言葉はその程度だった。
 その言葉にすら大した興味もなく、ヴィリヤは一言、切り捨てる。
「未来は自分で確認するから、教えてもらわなくても大丈夫だよ」
 ぴしりと、砕ける音がする。表皮の氷を割って触手が無理やり動き出した音だ。
 ヴィリヤの声から場所を特定させたためか、それとも自らの存在を否定することばに我慢ならなかったのか。氷の呪縛を打ち破った触手が、黒の液体をまき散らしながら襲い掛かる。
「そう簡単にやられてあげないし……」
 ぱちん。己の武器である【宵闇】を軽く指で弾く。
 それが彼女にとっての発動の合図。金の瞳を細めると、足に力を込めて駆け出す。その速さは今までのものと比べ物にならない。
 寿命を対価に己の速さと反応を限界まで上げたヴィリヤにとって、迫る触手全てを避けることは造作も無い。
 お返しというように、触手の一つに剣を突き立てる。大木程の太さのあるそれを、力を込めて根本から切り落とす。
 即座に手首を返して、【宵闇】を変形。刃を通常の剣のものから、鞭状へ。伸びた刀身を振り抜くことで背後へ回す。背後へ迫っていた何本もの触手が切り落とした。
「やらせる気もないっ!」
 それでも触手の勢い止まらない。何が何でも彼女を捕らえようと、様々な方向から伸ばし、己の肉の一部にせんとする。
 ヴィリヤは不敵に笑って、蛇腹剣を再び剣の形へ。何度来ても、やることは変わらない。

 ぱちんと、再び武器を弾き、彼女が戦闘態勢を解いた時。
 哀れな双子星の手足は、その全てが削ぎ落されていたのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

黒木・摩那
カジノ船を使って、生贄調達とはうまいことを考えたものです。
人の欲望を自分のためにうまく利用する当たりはさすがは邪神です。

ですが、それもここまでです。
これ以上の生け贄は許しません。

ルーンソードにUC【偃月招雷】を使って帯電します
【属性攻撃】【破魔】。

防御は【第六感】や【念動力】を使って、回避したり、軌道を曲げたりします。

未来は自分で切り開きます。
あなたの予言なんて聞きたくないです。


ヴィクトリア・アイニッヒ
決められた契約を遵守する事は当たり前の事。間違ってはいません。
ですが、命を対価とし弄ぶ行為は、見過ごせません。
…その悍ましき悪意、ここで断ち切ってみせましょう。

「主よ。悪意を祓う御力を……此処に!」

UC【神威の光剣】を使用。
主に【祈り】を捧げ、夜闇を眩く照らす無数の光剣で戦場を満たす。
自身の身に宿る聖気、【破魔】の力と【呪詛耐性】を活かしつつ、まずは邪神の行動を封じる事を念頭に動く。

多少の業を背負っているとは言え、この場にいる人々は普通の一般人に変わりありません。
無駄な血は、流させません。もし邪神がそちらを狙うようなら、我が身を盾に変えてでも庇ってみせましょう。

※アドリブ・連携、歓迎です



●カミナルヒカリ
 四肢の代わりに蠢かせていた触手は無残にも切り落とされ、文字通り肉塊となった双子卿のなれの果てが低く唸る。星のように蒼く輝いていた目は焼け爛れ、見る影もない。
 吐いている言葉は怨嗟と呪いのようでであるが、もはや誰にも判別は不可能であった。
 時刻はもうじき明け方である。星が隠れる時は、近い。
「決められた契約を遵守することは当たり前のこと。確かに間違ってはいません」
 如何なる時も己の善性と正義に従っていたヴィクトリアが、肉塊の前に歩み寄る。
 恐怖に震える一般人を背後に、庇う様に諸手を広げて。
「ですが、命を対価とし、弄ぶ行為は見過ごせません」
 自らの意思でこの場所に来た彼らにも非は無いとはいえない。きっと、多少なりとも業を背負っているのだろう。
 それでも、彼女にとっては守るべき一般人なことには変わりないのだ。
 悍ましき邪神の悪意は、ここで断ち切る。
 斧槍【L'orgoglio del sole】を肉塊へ向け、ヴィクトリアは低く構えをとった。
 敵を挟むようにして彼女の反対側に立つ摩那も、気持ちは同じであった。
「カジノ船を使って、生贄調達とはうまいことを考えたものです」
 人の欲望を己のために利用する策はさすが邪神らしいともいえる。
 しかし、それもここまでだ。
 企みは彼女たちによって全てが暴かれ、掻き乱され、邪神はすでに虫の息だ。
「これ以上の生贄は許しません」
 だからここで、決着をつける。
 
 二人が動いたのはほぼ同時であった。
「主よ。悪意を祓う力を……此処に!」
 目を閉じ、ヴィクトリアが太陽神へと祈りを捧げる。祈りは届けられ、今一度太陽がくらやみを裂いた。
 具現するのは光の剣。天からの恵みの具現であるそれが虚空から生まれ、彼女の背後に浮かび上がる。
「ウロボロス起動……励起」
 対する摩那が呼び出していたのもまた、光であった。魔法剣『緋月絢爛』がサイキックエナジーを収束させ、属性を変質させる。
 属性は、雷。
 刀身が万華鏡のように揺らめかせるのは、魔を破る閃光。
 かつて神々が、罰として振り下ろした光である。
「──『神威の光剣』よ!」
 ヴィクトリアの神なる光が肉塊を刺し貫いた。
 言葉にならない叫びをあげ、肉塊が四肢のない身体を蠢かせる。
 しかし太陽の威光によって床に縫い留められた身体は、一ミリたりともその場を移動することすら敵わない。
 摩那が跳んだ。大上段に魔法剣を振りかぶる。
 歪な形をした肉塊を足蹴にし、駆け上る。じわじわと新たに生えかけていた触手が苦し紛れに足を絡めとろうとするが、念動力で踏みつぶしてやる。
 ヴィクトリアの光剣を借りて最後の足場に、大きく一足。
 高く高く、目指すは潰れた四つの目の真ん中。人として考えるなら、頭部に当たる部分。
 バチバチと、摩那の手の中で電撃が獲物を待ち構えるように鳴く。
 気合と共に、渾身の力で剣を振り下ろした。
 間髪入れずに肉塊へと落ちるは、神鳴(カミナリ)。
 肉が焼けこげる音がする。双子の断末魔の叫びが上がる。
 構いやしない。深く、深く、剣を握る手に力を籠め、中心へ潜らせる。
 ——だって皆、僕達に願うんだ。
 不意に異形の悲鳴が、全うな言葉となって摩那の脳裏に浮かんだ。これこそが、本当の双子卿の最期の言葉だろう。
 シリタイ、シリタイって。
 知識があれば、それはかなったから。
 なんでも知っていれば、それは未来を手に入れることと同じ。
 人は全てを、未来を知りたがるんでしょう? キミだって、シリタイでしょう?
「いいえ」
 双子卿の最期の誘いを否定して、摩那はさらなるサイキックエナジーを刀身を通して叩き込む。肉塊を分断するまで、あと少し。
「未来は自分で切り開きます」
 未来は定まっていない。だからこそ、未来と呼べるのだ。
 だから。続く言葉と共に、切り込む力に回転を加えて肉塊を切断。真っ二つに焼ききった。
 黒焦げとなった肉塊が崩れ、塵へと姿を変えていく。
「あなたの未来なんて聞きたくないです」
 その言葉は果たして邪神へと届いていたのか。
 確実に分かっていることは一つだけだ。
 遊園地の地下にて蔓延っていた邪悪な陰謀は打ち砕かれ、双子星は今ひとたび目を閉じた。
 再び人々がその身に過ぎた知恵と未来を求める、その時までは——。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2019年07月16日


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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


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「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
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 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠アルム・サフィレットです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


挿絵イラスト