8
正義の方程式

#ダークセイヴァー

タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#ダークセイヴァー


0




 ダークセイヴァー世界で今もなお生きている人間は、とりもなおさず他の誰かを見殺しにしてきたということだ。
 故に、こんな光景は日常茶飯事であり、別段珍しいことではない。
「やめろ! こんな事をしてもなんの解決にもならんぞ!」
「うるせえ! 往生際がわりいぞ!」
 村の中心で壮年の男を複数人の男衆が囲んで、地面に押さえつけていた。
「おうい、誰か縄もってこい縄。ふんじばっておかねえとまた逃げかねねえ」
「馬鹿共が! 長である俺を差し出して、どうやってこれからやっていくつもりだ! 化物と交渉などできるわけないだろう!」
「これからよりも先に今なんだよ。テメエを差し出さなきゃ俺たちゃ全員死んじまう」
「奴がそういったのか!? 言っていないだろ。全部お前らの恐怖が生んだ妄想にすぎん!」
「うるせえ! 誰がどう考えたって村長のあんたが一番適任なんだよ。アンタだってわかってんだろ?」
 痛いところを突かれたのか、村長と呼ばれた男が唸り声をあげて黙る。
「やあねえ、見苦しいったらないわ。村長だなんだっていってこうなっちゃったらお終いよね」
 捕物劇を遠巻きに眺めるのは口さがない女たち。
「村の為だなんだ言って今まで好きにやってきた報いさ。アイツを差し出したときだって涼しい顔してたくせにさ、いざ自分になると大騒ぎするんだから。うちの子供らのほうがまだ道理ってもんがわかってるわ」
「大体こうなっちまったのも自分のせいなのに」
「あ、やっぱりあの噂って本当だったの?」
「そうなのよ。だからああしてとっ捕まえてるって話」
「よかった、悪いのは村長だものね。きっとこれで元通りになれるわ」
 誰も止めない。
 誰も自ら犠牲になろうとしない。
 今を生きるためならば簡単に他者を犠牲にする。
 生き残るとはそういうことだ。夜と闇の支配下にある世界ではそれがより色濃く現れていた。

●グリモアベース
「はいはい、今日もお仕事お仕事。お前らあつまってるかー?」
 やる気無さ気な藤堂・藤淵がおざなりにあたりを見回しながら説明を始めた。
「場所はダークセイヴァー世界。ヴァンパイアの支配世界だな。んでもって仕事もお決まりの支配者の退治だ。簡単だろ?」
 同意を求めるように視線を向けるも色よい返事が無い。簡単でないことはオブリビオンを相手にしてきた猟兵ならば骨身に染みているからだ。
「……続けんぞ。まずお前さんらには村に入り、住人から敵の情報を掴んできてほしい。つってもコレがちと問題で、今から飛ぶと丁度村で騒ぎが起こってんだな。話を聞くなら止めてからのほうが効率的だろうし、何より信用もされるんじゃね。解決のさせかたにもよるだろうけどよ」
 予知からわかることはオブリビオンに捧げられようとしているのはこの村の村長であること。彼は何やら後ろ暗い事があるらしい。
 支配者と交渉する為に生贄は村長が適任だと村人たちは判断したように見える。
「ダークセイヴァー世界のお約束だが、俺ら猟兵の存在はあっちの世界じゃヒーローでもなんでもねえ余所者A、もしくは不審者Aだからな。行き成り押しかけていって話を聞かせてくださいだの、争いはやめてくださいだの正攻法でいっても通じる可能性は0に近い。やるならそれなりの手を考えろよ? まあ、やり方は任せる」
 村は山々の間に隠れてひっそりとある。村というよりも隠れ里だ。殆ど煙を出さないような生活、木々の中に隠れるように工夫された家々、街道なんて真っ当なものは無く、最低限の畑すら無い。きっと山の獣や草木といった狩猟採集中心の生活なのだろう。
 オブリビオンから隠れために止む無くそんな生活を送っているのだろうと予想できるが、まあ予知の限りではその努力も虚しく、といったところだ。
「これは勘なんだが、どうにもここは臭え。なーんか隠してるんだよな。自分が信号見逃して事故った奴が言い訳並べてる時の顔に似てる。自分の非を意図的か、無意識下で見ないようにしてる感じ、とでも言やあいいのかね……。ああ、悪いな余計なこと言った。ま、流れは単純だ。村人から情報を聞き出す。オブリビオンをぶち殺す。これだけ。んじゃあまあ頑張ってこいや」
 事件の不穏さを象徴するかのように、ダークセイヴァーの空は闇が緞帳のように垂れ込めていた。


サラシナ
 数あるOPの中から拙作に目を通していただきありがとうございます。
 サラシナと申します。
 さて、今回の依頼は少々変則的な流れとなる事かつ気分が悪くなる場合がありますのでご注意願います。

 閉鎖された隠れ里の秘密、このフレーズにビビッときたら続きの物語を探索し、調査し、見つけ出してみてください。
86




第1章 冒険 『争う人々』

POW   :    腕っぷしを見せて注目と信頼を集めるぜ!

SPD   :    住人の間に割り込みテクニックで喧嘩を止めるよ。

WIZ   :    仲間割れの無意味さを説いて落ち着かせましょう。

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

太秦・臣継
孤児の振りをして喧噪の真中に向かい、滅私の【祈り】をしながら生贄の代わりを申し出る
「村も焼け、親兄弟も死んで、死に場所を探して彷徨っていたようなものです。この命が皆様のお役に立てるなら喜んで」
「皆様も顔見知りよりは、志願している余所者の方がやりやすいでしょう」
どうやって生き残ってきたのか、どうして生贄が必要なのか、そして適任が村長なのかを聞く
何を聞かされても否定せず、生き残るためには必要だったのだろうという姿勢で聞く
後ろ暗い話を無条件で肯定される喜びで【誘惑】する
「ただ自分の死の理由ぐらいはお聞かせ願えないでしょうか?」
(はてさて鬼の話か仏の話か出てくるのはどっちかのう)


雪生・霜逝
【SPD】使用。

【目立たない】よう、窶れ果てた旅人の姿に【変装】のうえ、村を訪れましょう。

噂話をしている女性たちにそっと近寄り、不安そうに震える声を造って、お尋ねいたします。
「死亡志願者が、一人いれば、よろしいのでしょうか……?」

村長にも声が届くよう、哀切を込めて【言いくるめ】を試みます。
「わたくし、このとおり、死に場所、を探すばかりの、根無し草にございます。誰かの役に立って死ねるなら、其処の方の、代わりに、わたくしが……」

これで何らかの情報が引き出せれば御の字でございましょう。何も得るものがなければ、村長を【かばう】ことで、より村人たちからリアクションを引き出したいところでございます。



「この忘恩の畜生どもが!」
「生贄が必要ならば、ぼくが」
 村長の怨嗟の叫びと、1人の少年の乱入は同時であった。
 少年は身なりからして孤児のようであった。どこかから焼け出されたか、もしくは食い詰めた家族に捨てられたか。
 黒々とした夜そのものの様な髪と瞳は、どれほど薄汚れていようとも見るものの目をひかずにはいられない。だがそれよりも特異なのはその雰囲気。孤児にありがちな餓狼のような鋭利さなど欠片もなく、湖面のように静謐だ。
 それもそのはず。少年の名を太秦・臣継。少年のような見た目に反して齢はいくつになるかも分からぬほどの大古老である。
 亀の甲より年の功。そんじょそこらの役者では太刀打ちの出来ない見事な立ち居振る舞いで視線を集めた。
 あれほど騒いでいた村長も、村人達も魅入られたように彼の言葉に耳を傾ける。
「村も焼け、親兄弟も死んで、死に場所を探して彷徨っていたようなものです。この命が皆様のお役に立てるなら喜んで。皆様も顔見知りよりは、志願している余所者の方がやりやすいでしょう」
「いや……そういってもな、坊主」
 おずおずと1人の村人がまったをかける。
「誰でもいいってわけじゃあねえんだ。そういう事なら俺らだって馬鹿じゃねえ。村長を差し出したりしねえよ」
 道理である。村の最高権力者を安々と差し出すのだからそれなりの理由があるのだろう。となればその理由が気になるが、
「何故ですか?」
「それは……」
「おいやめねえか」
 口を開きかけた村人を別の男が止めた。
「余所者に話すこっちゃねえ。これはオレたちの問題だ。わりいが死にたいなら別の所で死んでくれ」
 辺境の鍬も通らぬ大地が如く拒絶されれば、それ以上交渉する材料はなく太秦は大人しく引き下がるしかなかった。

 その様子を取り囲む女達に紛れ見ていたのは雪生・霜逝。
 彼は太秦と同様、窶れ果てた旅人の装いで村長の代役をかって出ようと目論んでいたのだが、眼の前でその手が通じない事を実演されてしまった。
 ならば別の手を使うまで。
「こんなことは間違っています」
 その長い髪を振り乱しながら群衆の中央、村長の前へと躍り出て、彼をかばうようにその両手を広げた。
「どうして彼を生贄にしなければならないのですか。皆さん冷静になってください」
 再度の乱入者に村人たちはあっけにとられた。
 巨人である。一般的な人間が主な人類であるこの世界で、彼の身長284.4センチメートルの体は少々異端であった。
 無論猟兵の特性としてそういう者もいるか、と流してもらえるのだが大きいものは大きいのだ。
 全員がおもいきり首を上げて彼を見つめた。
「な、なんだあ、アンタ」
「彼に昔世話になったものです。だから、彼を助けたい」
「ああ? 村長に世話? って……おいおい、村長。アンタ魔女だけじゃ飽き足らずこんなでっけぇ、しかも男にまで手を出してたのかよ。サカリのついた犬だってもうちょい分別ってもんがあらあな。なあ皆?」
「ちげえねえ!」
 村人たちが一斉に笑った。
 嘲笑に村長の顔が赤らむ。
「し、知らん。俺はこんな奴知らんぞ! 大体魔女と俺はそんなんじゃない!」
「今更隠すんじゃねえよ。村長のオサカンさは村一番だってな! ほとんどの奴が知ってんだからよう。バレてねえと思ってんのはお前だけ、ってな」
 今や最高権力者から一転、村人の玩具と成り下がった男は顔を俯けて怒りに震えるしか無い。
 魔女という存在、それと村長が関係していた。
 なんのことかわからないが、覚えておいたほうがいいかもしれなし。雪生は一時記憶領域に今の話をそっと書き込んだ。
「あの」
「あー、アンタか。いやいや、俺らにも事情があんだよ。コイツにゃしっかり村のために役立ってもらわねえと。勿論おめえさんが代わりに、とかいうのも駄目だ」
「どうしてもですか?」
「な、なんだよ、やるってのか」
 見上げるほどの大男を前にして、別に脅されているわけでもないのに村人は完全に腰が引けていた。
(押せば行けそうですが)
 意志が強そうには見えない。腕っぷしも並だろう。一瞬だけ、力押しも検討したが直ぐに破棄。ここで関係を最悪にしたら他の猟兵の迷惑になるかも知れない。
「わかりました。口惜しいですが……」
 本当に残念、といった雰囲気を醸し出しながら雪生は引き下がるのだった。

苦戦 🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

ベガ・メッザノッテ
騒ぎを止めるのは時間がかかりそうネ?ならそれは他の人に任せテ、アタシは生贄うんぬんを先に解決しようと試みるヨ〜!

アタシが囮として、生贄担当になるのはどうかナー?
そうすれば村の住民にも被害が出ない上、手っ取り早く支配者サンに会えると思うノ!
ン?支配者にとってアタシに生贄としての価値が見いだせないから交渉させてくれないっテ?ア〜…実はアタシ、村長の孫娘でパティシエの修行から帰ってきたところなノ〜!(村長に向かって合わせるようウインク)ダカラ生贄はアタシの方が最適ヨ!それで他の人に残った村長や村民から情報を聞き出してもらいたいネ!

●口調プレイングに合わせて下さい。他人との絡み、アドリブ歓迎です。



「じゃ、アタシが代役を勤めれば解決だよネ~」
 およそ友好的ではない空気の中、随分と緩い口調の少女が人の輪の中から進み出た。
 ベガ・メッザノッテだ。
 今度は何だとやや白けた空気も何のその。ニコニコと笑いながら軽やかに輪の中心へとやってくる。気負いなく、軽やかに、笑顔で。
 妙な少女だなと毒気を抜かれたように村人たちが彼女を見つめる。
「誰だアンタって顔だネ~。実はアタシ、村長の孫娘でパティシエの修行から帰ってきたところなノ〜! いヤ~ナイスタイミングって奴だネ」
「ああ? いや、村長の息子夫婦にゃこんな大きいガキはいねえはずだろ?」
「ジョーのやつ……他に女こさえて子供まで作りやがったか。親父と一緒じゃねえか」
「いや、こんな小さな村だ。ガキ1人隠し通せるものかよ。アイツんときだってすぐわかったろ」
 口から出任せだというのに一笑に付す事無く村人たちがざわつき出した。村長の日頃の行いが余程悪いのか、メッザノッテのコミュニケーション能力が相手に届いたのか。
 メッザノッテは村長にウインクを1つ。彼の目に理解の色が走る。愚鈍な男ではないらしい。
「ええ、ひっどいナー。可愛い孫娘のベガちゃんのこと皆に紹介してくれてないノ~?」
「そうは言ってもな、ベガ。俺には家庭もあったし、な? ほら色々あるんだ」
 乗ってきた。後はこのまま勢いで有耶無耶にしてしまうしかない。幸い村長は随分と女にだらし無い性格らしい、というのは先程の会話でわかっている。勝手に向こうが隠し子説なりなんなり作り出して納得してくれるかもしれない。
「まあほら、この通りアタシが代わりになるからサー。お爺ちゃんの命は助けてくれなイ? ネ?」
「……アンタが本当に孫かどうか知らんがね。仮に本当に孫だとしたって駄目だ。コイツの親族で済むならそもそも息子連中を出したって済む話なんだぜ」
 それもそうだと一瞬メッザノッテが言葉に詰まるが、ここで引いては話が進まないと食い下がる。
「身代わりを申し出ない親不孝者さんよりもサー。立候補した孫娘のほうが適任じゃないかナー」
「駄目だ駄目だ。アイツに恨みをかってるのは村長なんだ。こうなっちまったのも村長のせいなんだ。親族とはいえ代わりにゃならねぇよ」
 恨み、アイツ、気になる単語が出てきた。アイツとはオブリビオンの事だろうが妙な違和感がある。人に対して使うような気安さだろうか。それにどこかで同じイントネーションで語られていた人物が居たような気がする。
「アイツ? アイツってオブリビオンのことだよネ? じゃあほら、恨み骨髄な村長の孫でも代わりに」
「それこそ誰にも知られてないアンタより息子とかのが適任だろうよ。アイツは息子のジョーと面識もあるしな」
「だよネー」
 食い気味に否定された。少し苛ついているようだしこのあたりが潮時か。
 提案は通らなかったが幾つか情報は得た。口から出まかせでもやってみるものだと内心喜びながら、外面はしおらしく引き下がることにした。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

フォルター・ユングフラウ
本当に、この世界の光景はどこも変わらぬな。
我もこの光景を常として受け入れていたが、外の世界の者には異常と映るのであろうな。

村長、村人、男、女子供の差別無く、ヴァンパイアからすれば皆等しく羽虫以下の存在。
己の所有物として、命の価値すら認めておらぬだろう。
そんな状況で争おうとも、何も変わらぬ。
同じ被害者同士で責任転嫁を繰り返すより、協力した方が光明は見える。
…こういった事を、【WIZ】を活かしつつ言いくるめや鼓舞も用いて説いてみるか。
反応次第では、我がダンピールである事を明かした上で、ヴァンパイアを討つ旨も伝えてみるか?
UC:古城の妖鬼で父上を呼び出し見せれば、多少は信憑性を与えられるかもしれぬ。


トリテレイア・ゼロナイン
「化物と交渉などできるわけないだろう」…ふむ、ここから攻めてみましょうか

【POW】

化け物や魔を滅するために各地を回る遍歴の騎士と名乗り「礼儀作法」と「怪力」で信じさせ、風の噂でこの近辺に魔が出没すると聞いてこの村にたどり着いたと虚偽の説明をします

この地に巣食う魔についての情報提供を求めましょう。いないとはぐらかされたら先ほどの村人たちの会話を引き合いに出して、その中で出てきた化け物が風の噂とどう違うのか説明を求めましょう

納得のいく説明が貰えない限りこの村から出ていくつもりは無いし、自分一人でも調べる姿勢を見せれば、嘘か真かは別として情報を得られるのではないでしょうか


ファラン・ウルフブラッド
どうにも辛気臭い場所だな此処は。長居すると此方の生きようとする力も奪われていくようだ。 なるほど、これが人が脅威に敗北した世界、というわけか。

【行動:POW】
【技能:存在感】を使用して群集の中に入っていきます。

「ふむ、お前達を悩ませている贄の問題をどうにか出来れば、この諍いは収まるのか?ならば俺が化物を殺してやる。 その代わり、お前達の知る化物の情報を教えてくれ。……無論、何か隠している事があるのならば、それも全て、な」

実力を疑われた場合は【技能:怪力】を使用し、背中の王剣を軽々と引き抜いて、岩や木を『剣刃一閃』で叩き斬ります。
「コイツで化物を殺す。 我は深淵を狩る者。お前達を救いにきた」


ライカ・モンジ
※事前に他の猟兵と作戦確認済の程で行動

気になる魔女のフレーズ、も少し引っ張り出せないかなァ…
村長確保っちゃうのが早いかな
誘惑、情報収集のスキル使い所だよねェ

一か八か自身が魔女と同格の力を持つ敵対人物装い
・生贄にするなら村長は自分に捧げろ
・魔女とは古くから因縁があり鼻を明かしたいと思っていた、賛同するならお前達を助けよう
(実演可能ならば腕っ節披露)

の旨を魔女っぽい傲岸不遜なお色気キャラ装って村人達に伝える

自他の作戦が効かなそうな時、又は村長確保の途中で失敗しそうな時は味方の作った隙を突いてクリスタライズを使用
村長ごと抱き締め透明化し予め決めてたポイントで合流、村長に事の顛末聞く

アドリブ歓迎です


ルセリア・ニベルーチェ
流石ルセリアさん出身地、いつも通りの日常茶飯事

【POW】腕っぷしで注目と信頼

生き残る為なら何でも
分かるわ、私がそうだったもの

一度眠れば目覚める事は無いかもしれない
死と隣り合わせの世界、そうよね?

仲間割れやめて、魔女?近辺の支配者のこと教えなさい
ルセリアさんが倒してあげるから、止めないなら……こうなるケド

『生命力吸収』『範囲攻撃』で
ユーベルコードを使用する方向に人の生命反応が無いか探知し無ければ

『破壊の暴君(グラウンドゼロ)』使用
畑を耕すつもりで手加減し、指定方向100mを吹き飛ばす(最大278mの地形破壊可能)

これで倒した後は畑仕事出来るわね
で…これ以上、仲間割れ続ける死にたがり居る?



澱んだ空、昏い世界、醜い生存争い。
 それらをまとめてつまらない日常風景でしか無いと、冷めた瞳で見つめるのはフォルター・ユングフラウだった。
 この世界で生まれ、支配者側としてあった彼女は人々に同情の念も無ければ、悪を倒そうという義心すら持ち合わせていない。
 だからだろうか。
「くだらんな。村長、村人、男、女子供の差別無く、ヴァンパイアからすれば皆等しく羽虫以下の存在。己の所有物として、命の価値すら認めておらぬだろう。そんな状況で争おうとも、何も変わらぬ。同じ被害者同士で責任転嫁を繰り返すより、協力した方が光明は見えるのではないか? 子供でもわかろう、そんなこと」
 甘さなぞない真っ向からの正論が村人たちを斬った。
「な、なんだよアンタ。アンタには関係ねえだろ」
「眼の前でくだらんことで騒いでいるからだ。目障りに思って何が悪い」
「な、あ」
 二の句が告げられずに金魚のように口を開閉する男に、立ち直る隙すら与えぬと追撃を加える。
「大体そいつ1人で済むと何故わかる。お前たちがそうあってほしいという願望をさも事実のように思い込んでいるだけだ。付け加えるなら、我はそれなりに世界を見てきたが、ヴァンパイアと交渉して成功した事例など1つとして聞いたことがないぞ」
 村長が言っていたこととほぼ同じ『化物と交渉することの無意味さ』を説いたのだが、当事者ではなく他人の口から言われるからこそ通じるという場合は往々にしてある。もしくは、彼女の言葉の緩急、間のとり方などの一連の所作が優れていたからこそか。
「そ、そりゃあそうだけどよ……」
 あれだけ頑なに拒絶を繰り返していた男たちが、項垂れて叱られた子供のような有様になった。事実だからこそこたえたのだろう。
 皮肉にも男たちの心に届いたのは同情も、義心も、真心もなく、凍土の心から出た冷たい現実だった。

 現実を突きつけられた者が取りうる行動は3つ。
 耳目を塞ぐか、逆上して否定するか、受け入れるか。
 大凡の人間は不承不承ではあるが受け入れる道を選んだかにみえた。が、全ての人間が物分りがいいわけでもない。
「う、うるせえ! 事情もしらねぇで好き勝手いいくさってこのアマぁ!」
 手に持った棒きれを振り上げてユングフラウに殴りかかろうとする。周りの者の静止は間に合わない。
 ユングフラウの目に剣呑な色が宿る。彼女は別に彼らを助けてやろうなぞ端から考えていない。情報を吐き出すだけの道具程度の認識だ。
 情報を吐くなら最悪1人残っていればいい。
 実際彼女がそう思ったかは誰にもわからないが、男の命運は尽きたと言っても過言ではなかった。
 刹那、激震があたりを襲った。
 村人たちがたたらを踏み尻もちをつく。
 何事か。まさかオブリビオンの襲撃か。村人だけではなくその場に居合わせた猟兵達までもがあたりを見回して、それを見た。
 森が消失していた。
 木々が根こそぎ吹き飛ばされ、すり潰され、やたらめったらに散乱し、地はめくれ上がり無残な姿を晒していた。
「これで倒した後は畑仕事出来るわね。で……これ以上、仲間割れ続ける死にたがり居る?」
 抜き身の黒剣をぶら下げ村人達に笑顔を向けたのはルセリア・ニベルーチェ。いや、それは笑顔だろうか。口角は確かに上がっていて笑みの形をしているのに、醸し出す雰囲気は明らかに違うものだった。諦め、怒り、それとも同情か。どれも近いしどれも遠い。絵の具を全部混ぜ合わせて黒くなったしまったような、深くて昏い感情の発露が見えた。
(生き残る為なら何でも。分かるわ、私がそうだったもの。一度眠れば目覚める事は無いかもしれない。死と隣り合わせの世界、そうよね?)
 棒きれを振り上げようとしていた男は束の間、破壊とこの美しい女が等号では結びつかなかったようで、何度も破壊跡と女の間で視線を行き来させていた。やがて理解が追いつくとがくがくと震えるように首を縦に振るのだった。

「やりすぎだ」
 呆れたようにニベルーチェに歩み寄ったのは、ファラン・ウルフブラッド。
 彼女の隣に立っても見劣りしないほどの眉目秀麗な男だった。だが優男という雰囲気はない。まるで刀剣の機能美とでも言おうか。暴力のために計算され尽くして作られたというのに、それが芸術品としても成立してしまっている、そんな雰囲気の男だ。
「これでは俺が今更木の一本、岩の1つを斬った所で地味になってしまうだろが」
 そっちかと村人たちが無言の抗議をこの男に送る。オブリビオンに此方の行動を察知されるのではとか、誰か巻き込まれていないかといった凡人の心配事は彼ら超常の者達から遠いのかもしれない。
「まあ、少しごたごたがあったが」
 すらりと引き抜いた大剣に全ての村人たちが目を奪われ、息を呑む。
 大きい。持ち主である彼も相当大柄な部類だが、それよりも大きい。2メートルはあるだろうか。目方は想像もできない。それだけではなく、大型武器にありがちな作りの粗雑さなどなく、一級の芸術作品としても通用するような精緻な造りが素人目にもわかった。
 銘を王剣カラドボルグ。ウルフブラッドの一族に代々伝わる宝剣である。
 英雄。
 村人たちの心中に去来したのは自分たち無力な民を導き救う英雄の背中だった。
 おぉ、と誰とも知れぬ感嘆の声。
「コイツで化物を殺す。我は深淵を狩る者。お前達を救いにきた」
 喝采が響いた。民は口々に英雄の登場に心を融かし、熱狂し、心酔した。
 手慣れているな、と思ったのはどの猟兵だったか。英雄譚から抜け出したかのような彼は、子供から老人まで誰にでも理解できるとてもわかり易い救世主であった。

 ユングフラウが正論でまず叩き、出る杭はニベルーチェが脅しつけ、最後にウルフブラッドが救世主として手を差し伸べる。
 偶然のコンビネーションだが効果は抜群で、それに抵抗出来る者はこの村には皆無だった。

●聴取

 村人の暴走を止めた猟兵達は、ようやく情報収集を開始する。
 場所は村長の家を一時的に借り受け、数人の村人と村長、それと今回集まった猟兵の全てが一同に介した。
 まず口を開いたのは妖しい魅力を隠すこと無く振りまいている女、ライカ・モンジだった。
「我はお前たちの言っている魔女と因縁のある者でな。ここまで追ってきたのだが、どうする? ありったけの情報を吐くのなら直ぐにでも奴を排除してやってもいいぞ」
 見せつけるように足をくんで見せれば、露わになった足に村人はおろか、村長までもが身を乗り出し目を皿のようにして首を縦に振る。
 見事な演技、見事な御御足である。野良着の女しか身近に居ない村人たちにこの色香に対抗する術は無く、容易くモンジの術中にはまる。そう、彼女の技は色香だけではなくそこから派生する催眠術。視線誘導を起点としたその技は対抗手段の無い村人の口を軽くする事に成功する。
「魔女がやってきたのはいつだ?」
「20年ちょい前だ。最初は流れの薬師だって触れ込みだったな……アンタほどじゃあないが、いい女だったよ。年の頃も同じくらいでさ。このご時世だ、そんな女が1人旅なんて出来るはずがない。おかしい。そう言ったんだが……」
「予想だが、村長あたりか?」
 話題が話題なだけに村長は肩身が狭いのだろう。同席はするが意見を挟むつもりもないようで、気まずそうに視線をそらした。
「そうそう。奴がこの女は使えるって村に引き入れたんだ。実際凄かったよ。うちの母ちゃんも寝たきりだったのが治っちまったくらいだ。優秀だったね。いや、優秀過ぎた」
「ああ、そうだね。それがアイツの手口だから」
 適当に話を合わせて先を促す。
「今思えばありゃ人間業なんかじゃなかったんだ。きっと悪魔やなにか、よくねえものと契約してやってたんだよ。そうに違ぇねえ」
「だが追い出さなかった。それは何故だ? 別にとんでもない力を見せたとかじゃあ無いんだろう?」
「村長だよ。アイツ、魔女に籠絡されてやがったんだ。アンナっていう嫁さんもいたっつうのによ。ほぼ毎日だ。毎日人目を偲んで通いつめて、そんで……ガキが生まれた」
「ガキ」
「ああ。んでもって魔女がおかしくなった。フラフラと自分ちの周り徘徊しちゃケタケタ笑ってやがんだ。ガキがいるってわかったのもそんくらいのときだ。それまで病だなんだっていって閉じこもってたからな。今思えばそんとき産んだんだろうな」
 おそらく、いやきっと村長と魔女の子であろう。村人もそう思っているようだった。
「不気味なガキだったよ。口もきかねえ、手足の動きも芋虫みてえにすっとろい。何を言ってもまともに反応しやしねえ。こいつのことが村長はえらく目障りだったみたいでな。まあ当然か。呪われた魔女との浮気の果てに出来た子だ。目についたら殴るわ蹴るわ、死ななかったのが不思議なくらいだったな。……まあ、それでそのまま何年も、何年も。ガキが体だけは立派になるまで延々と続いたんだ」
「さっきからガキ、ガキって言うけど名前はなかったの?」
「知らねえな。魔女ならしってたかもしれねえが、おかしくなっちまったしな。大体俺らも村長も、アレとかアイツとか、グズって呼んでた」
 アイツ。何度も何度も出てきた呼称。他の猟兵がやり取りしていた内容を思い出す。
 村長に、恨み。アイツ。
「まって、もしかしてそのアイツって、村長が恨みをかって生贄にならなければいけない相手ってのは」
「そうだよ。アンタさんらに退治してもらいてえ化物は、その魔女の子だ」
 成る程合点がいった。
 謎の魔女と村長の子。何故オブリビオンになったのか、それとも元からオブリビオンだったのかは謎だ。だが魔女については調べてみなければいけないだろう。

「失礼、話を引き継いでも構わないでしょうか」
 ぬぅっと腰を折って視線を合わせたのはトリテレイア・ゼロナイン。ウォーマシンの巨躯の青年が、礼儀正しく接すれば目を白黒させながらも村人は快く頷いてくれた。
「お、おう、なんでも聞いてくれよ。俺らを助けてくれるっつーなら協力はおしまねえぜ」
「化物と交渉などできない、そう村長は仰っていましたが実際貴方がたにあてはあったのですか?」
「あぁ……」
 頭をぼりぼりとかきながら村人はバツが悪そうに、
「いや、なんのかんので元々同じ村に住んでた奴だからさ、話が通じるんじゃねえかなと。言われるまでそれしかねえって思ってたが、今じゃあまあ、無理かもしれんと思う」
「先程口をきかないと仰っていましたが、会話は可能でしょうか?」
「できる。これは2日前にアイツが……真っ黒な鎧を着て、とんでもねえ力を手に入れたアイツが来た時に喋っていたから間違いない」
 何度か目撃例のあるタイプのオブリビオンだ。性格は残忍にして凶悪。だが発見の度に滅ぼされてきたオブリビオンでもある。
「どの様な内容かお聞きしても?」
「俺は覚えている。俺のことを馬鹿だと思ったお前たち、残念だったな。そう、言ったんだ。そんで4日後また来るって言って帰っていった」
 4日。何故だろうか。村長に恨みをもって殺すだけなら一息にできただろうにそうしなかった理由はなんだ。
 頭の片隅にひっかかりを覚えつつもゼロナインは質問を続ける。
「ふむ……喋れないのではなく喋らなかった、のでしょうか」
「わからねえな。ヴァンパイアに何かされたのかもしれん」
「っ、ヴァンパイアがいるのですか? そのアイツさん以外ににも?」
 ゼロナインだけでなく他の猟兵達も色めき立った。今まで一度も出てこなかった話だ。黒い騎士とヴァンパイアの両方を相手にする、そんな事態は今までになかった。猟兵たちに緊張が走る。
「あ、ああ。あれ、話してなかったか? いや、すまねえ。なんか久しぶりにこんな話してて混乱しちまってさ」
「構いません。ですから、そのヴァンパイアの話も詳しくお願いします」
「ああ、アレは今からもう半年くらい前か。突然ふらっと1人で村にやってきてな。手始めに1人生贄をよこせって言ってきたんだ」
「それで、出したと」
 当然だろう。でなければ今頃この村は存在していない。
「ああ。……そん時出した生贄が、アイツさ。村長がアイツなら誰も悲しまねえだろうって。親兄弟、子供を出すくらいならってんで俺らも……」
 誰かの舌打ち。視線を巡らせると村長が忌々しげに村人を睨んでいた。
「まるで仕方なくみたいな風情だな、ジャン。お前らだって喜んで俺の言うことに賛同していただろうが!」
「うるせえ! お前にあの時誰が逆らえた! 下手なことを言って恨まれたら、次は自分かもって中でなぜ逆らえるんだよ!」
 顔を真赤に染めて、今にも殴りあいに発展しそうなほど怒気が膨れ上がる。
 これはいけないとゼロナインが拍手を打つ。
「双方落ち着いて。ジャンさん、ですか? 心中お察しします。お辛かったでしょう。村長も、ここで言い争っていてもなんにもならないのはわかっているはずです。抑えてください」
 不承不承といった形で双方が鉾をおさめ、続きとなる。
「ありがとよ。まあ、それ以降そのヴァンパイアは一切出てこなくなった。代わりにアイツが2日前にやってきて、今にいたるって話だ」
「長々とありがとうございました。申し訳ありませんが、またなにか気になることがあった時にお話を伺っても?」
「アンタらの為ならかまわねえよ。ほんと、頼むぜ」
 一度解散ということにして村人たちには帰宅を、村長には身の安全を考慮して猟兵達の隣の部屋に待機してもらうことにした。

 猟兵達は顔を突き合わせて情報の整理を行う。
 魔女が来たのが20年と少し前。
 村長は魔女と不義密通を行い、子をなしていた。
 子が発見された時期と同じくして魔女がおかしくなる。
 その子供が巡り巡って今、村を脅かしている。
 魔女の子に力を与えた可能性があるのはヴァンパイア。
 ヴァンパイアは半年前に来て、彼を受け取った後姿をあらわしていない。
 代わりに魔女の子が2日前現れた。魔女の子は4日後、また来るといって帰った。
 つまり2日後、魔女の子が村にやってくるということだ。今度は何をするかは来てみなければわからないが、叩くならここだろう。 
 だが、ただ叩くだけでいいのだろうか。
 魔女は一体何をしたのか。引っかかる部分が多すぎた。

 どうせ後1日猶予はあるのだ。調べてみるのもいいかもしれない。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 冒険 『村のはずれに暮らす魔女』

POW   :    村人に力を見せつけて暴走を止める

SPD   :    村人から話を聞く/魔女の家に忍び込む

WIZ   :    村人を説得して暴走を止める/現象の原因を推理する

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●翌日
 敵が来るのは明日である。
 その間に猟兵達は魔女とその自宅を捜索してみることにしたのだった。
 おかしくなった魔女と、その子。
 おそらく、まだ猟兵達の知り得なかった何かが隠されているのだ。
フォルター・ユングフラウ
魔女の家も気になるが、村人共を放置するとまた争い始めるかもしれぬ。
面倒事は御免だ。
【WIZ】を活かした上で誘惑、言いくるめ、催眠等々も駆使して抑えておこう。

先程も言った通り、ヴァンパイア、更には力を与えられた魔女の子から見ても、貴様等は等しく弱者。
猶予を与えたのも、恐怖に慄かせ、吊るし上げを行わせる目論見かもしれぬ。
争えばそれだけ、奴らは悦ぶだろう。
そもそも…魔女の子というだけで蔑み生贄を押し付けた貴様等が、情勢を理由に今度は犠牲者面をするのか?
理由はどうあれ恨まれて当然の事を村一丸で行ったのだ、今は素直に受け入れ辛抱しろ。
守るべき貴様等に暴れられては、奴らと戦うどころの話では無くなるのでな。



敵の相手をしている後ろで仲間割れでもされたら堪らぬと、魔女の家には向かわず村人に釘を刺しにきたユングフラウ。
 彼女の予想は裏切られたが、その行動は最善の一手となった。
「それで焚き火でもするのか? よく燃えそうだな?」
 男の背に声をかけた。
 男の手には木の棒。それに小枝を括り付ける作業中だった。独特なヤニの臭気。松かそれに連なる樹木の一種だろうか。
 1本ではない。既に完成しているものが他にもある。
「な、あ、あんたか。へへ、いや、まあ」
 背中に隠しながら此方に向き直る男は、そういえばつい先日ジャンと呼ばれていた人間だったような気がする。
 隠す、ということは後ろ暗い何かがあるということだ。
 複数の松明。
 態々隠れ住んだ人間が大量の火を使う理由。
 現在の状況。
「……村長でも焼き討ちにするつもりか? 先程も言ったがな、」
「ち、ちげえよ、村の仲間には手をだすつもりなんてもう一切ねえって」
 話を遮ってまで否定してくる。が、どうにも怪しい。
「……なるほど。仲間には、なあ?」
 言葉尻を捕まえて揺さぶってやれば、途端に視線をそらして脂汗を流す。
「何、別にお前をどうこうしようなぞ考えておらんよ。我は強者。お前たち弱者の小さき罪など一顧だに値せん」
 小さき者の秘密の色にユングフラウの口元が弧を描き、ジャンににじり寄る。しびれるような女の甘い香りにジャンはそらした視線を再度正面に戻さざるを得なくなった。それは食虫花の芳香に虫が抗えないように。ユングフラウの男を誘う術はもはや強制力すら伴うような魔の技となっていた。
「話してみよ。貴様のことは悪いようにはせんよ」
 つうと無精髭の汚らしい顎を撫でてやれば、餌を前にした野犬のように大きく唾を飲み込んでから口を開いた。
「ま、魔女だ。魔女を、焼き殺してやろうと、思って」
「ほう。あれだけ恐れていた魔女をか。勇敢なことだな?」
「へへ、魔女って言ったってアイツ自体は狂っちまったからもうなんもできねえしな。アンタらがアイツさえどうにかしてくれるなら報復の心配もねえ。さっさと焼き払って綺麗にしちまおうって」
「何も出来ないのに殺すのか? 随分と矛盾しているなあ」
「や、奴は呪われた女だ。村にいたらまたヴァンパイアを呼んだり変なガキを産んだり災いをもたらすに違いねえ」
「話せと我は言ったぞ。隠し立てしても無意味よ」
「ぐっ……それは」
「それは?」

大成功 🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
魔女と呼ばれる女性がおかしくなった原因は
①なんらかの精神的ショックによる発狂
②村長、妻のアンナ、他の村人になにか盛られた
③村人から身を守るための演技
私が考えつくのはこの程度ですね…

いずれにせよ魔女と接触して情報を得る必要があります
「手をつない」で「礼儀作法」に則って話しかけ、協力を得られればいいのですが、正気が残っているかどうか

魔女はこの事件の核心に繋がる重要な人物ですが、その前に一人の女性です
なにか不測の事態が起きたときは「怪力」を活かして身を挺して「かばい」ましょう

…彼女がオブリビオンと繋がっている可能性も否めないのが問題ですが
御伽噺のようにめでたしめでたしでは終わりそうにありません



村外れにあるそこへは思いのほか早くついた。小さな村だからだろう。
 遠目にもわかるみすぼらしい小屋は、犬小屋でさえもう少しまともであろうと思えるほどに酷いものだった。。奇跡的な均衡でなりたっている積み木のような危うさがそこにはある。
 小屋の隣には巨大な塊のようになった伸び放題の草花。森の中だというのに木々に負けること無く旺盛に伸び茂っている。薬師という話だからあれは薬草園か何かの慣れの果てなのだろうか。残念ながらそういった知識の無い猟犬達には毒か薬かも判別ができない。
「本当に、ここに人が?」
 誰かの呟きは全員の思いを代弁していた。
 まるでその声に反応したかのように扉が開いて1人の女が姿を現した。
 遠目にもわかるみすぼらしさ。
 髪は伸び放題でごわごわと強張っており、着ている服も染みだらけのワンピース。露出した手足も汚れきっておりどれほどの間体を洗っていないのかわかったものではない。
 件の魔女だろう。トリテレイアが一歩踏み出す。
「あの、失礼。此方にお住まいの方でしょうか?」
 近づけばわかる悪臭。垢と、排泄物、その他諸々の混在したすえた臭いにも関わらずトリテレイアは顔を歪めることなく対応する。
 どんな相手にも礼儀正しく。良く言えば真面目、悪く言えば判で押したような対応とも呼べる。実際彼の思考ベースはインストールされていた騎士道物語、御伽噺であって、この対応も彼自身の信念、正義によって行っているわけではない。御伽噺の騎士ならそうするという対応を真似しているだけに過ぎない。
「あー」
 そっと彼女の手を握ったのがよかったのか。途端に魔女の表情が無邪気な笑顔へと変わる。敵ではないと感じたのだろう。
 笑顔になると彼女はみすぼらしくても尚美しい女性であったことがわかる。
 子が大きくなるほどの歳には思えぬほどその顔は若々しく、目鼻立ちは一級の彫刻家が彫ったかのように整っている。
 なによりその瞳。今はもう絶えて久しい青空を連想させる澄み切った青色が見る人を魅了してきたであろうことは想像に難くない。
 なるほど確かに、村長が籠絡されるのも頷けた。
 彼女はトリテレイアの手を歓声をあげながらブンブンとふりまわした。
 物怖じしない。完全に童女の挙動だった。
「あの、すいません、薬師の方でよろしいですか?」
 再度の確認はやはり空振り。彼女は何が楽しいのか甲高い笑い声をあげながら彼の体を叩いたり引っ張ったりして遊んでいる。
 おかしくなった、という話に間違いはなさそうだった。精神疾患の1つ、退行の類だろう。もしコレが演技であったとしたら驚嘆を通り越して恐ろしい神技だ。
(1つの予想は、おそらく外れ、ですね)
 トリテレイアは幾つか予想を立ててきた。その1つ、彼女が自らを狂人の演技をして他の者から見を守ろうとしているのでは、という案は外れたようだ。
 ならば他の予想。村人達になにかされたか、もしくは余程のショックによるもの。
 トリテレイアと、他の猟兵達は魔女の家へと踏み込んだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ファラン・ウルフブラッド
【行動:SPD】
魔女の家に忍び込む。

そもそも何故、魔女は子を産んで狂ったんだ?父親がクズ野郎ってのは話をしていて何となく分かった。だが、何故母親が? その矛盾点が一番引っかかるな。

【技能:忍び足】を使用して移動。家にカギが掛かっていた場合は音を最小限に抑えた剣刃一閃でサッと潜入します。(誰かピッキング等あれば任せる)
「こんな盗賊紛いな事をする事になるとは……だが、これも真相を知る為だ」(うーん、と若干の葛藤をしつつ)

室内に入ったら魔女や子供の手記が無いか調べる。何が彼女達を狂わせたのか知る事が出来れば、手がかりになる筈。

情報が出たら速やかにメンバーと共有します。

で、狂った魔女は何処いったんだ?


ライカ・モンジ
4日の猶予って、村長の息子が完全にオブリビオンになり切っちゃうリミットなんじゃ…
アーン!ヒトとオブリビオンの間の生物!UDCエージェント
としてこんなにソソられる事ってあるぅ?

悪いけど魔女には息子の鹵獲のネタになって貰うわよ


・魔女の現在の村へ対する感情
・自身の生い立ち、村長との馴れ初め

この辺本人との対話から引き出せないかに注力

魔女自体がヴァンパイアなら村人に親切にする理由も余り見当たらないのよね
息子への愛情等揺さぶれる隙間があるなら情に訴えかけ、
無効ならば魔女の根本にある不満は何なのかを掴み、事の全容の把握に専念
息子説得への参加を依頼

宅内にも手掛かりや情報が無いかコッソリ見回らせてもらうね


雪生・霜逝
【SPD】使用。
この巨躯では探し物にも一苦労。幸いわたくしの首は取り外しができますので、家に潜入するどなたかに頭部の運搬をお願いしたく存じます。首から下は【迷彩】をかけ、屋外に隠します。

無事に潜入が出来たのであれば、強化【視力】および【暗視】機能を起動。暗がりに目を凝らして【情報収集】いたします。足跡やパターン検出ができれば、【追跡】して次の手がかりを得ることができるかもしれません。
……それから、血液や性の痕跡が残っていないか。【吸血】器官にもリソースを回して検知を試みましょう。

嗚呼、けれど。深入りするほどに、泥濘に溺れて身動きを封じられるような。そんな恐怖が、すぐそばに凝っている気がして。



「全員で入れるほどではないでしょう。わたくしは頭部だけでお邪魔します……申し訳ありませんが、どなたか運んでいただけますか?」
 雪生が自らその頭を引っこ抜き猟兵達がぎょっとする一幕があったが、それ以外は特に問題もなく小屋の中へと彼らは歩を進める。
 ちなみに頭はトリテレイアが持つことになった。
「こんな盗賊紛いな事をする事になるとは……だが、これも真相を知る為だ」
 ウルフブラッドは若干思うところがあるようで、葛藤を露わにしつつも戸をくぐり中の探索を始める。
 室内は実に酷いものだった。万の言葉をかさねるよりも、子供がひっくり返して遊び尽くしたおもちゃ箱、と言えば伝わるだろう。
 退行して久しい彼女に整理整頓、掃除といった概念は通じないようである。
「これは、苦労しそうですね」
 トリテレイアの腕の中に収まった雪生である。家探しに適した技を持たぬトリテレイアの代わりに彼が目となり耳となり、周囲の探索を行う。
 その前にまず片付けなければ話は進まないわけだが。
 彼らはこれも情報の為と言い聞かせながらベッドを整え、なぜか厠にある乳鉢やお玉やらを戻し始める。
 散らかりきってはいたが、元々数人入れば窮屈になってしまうような小屋だ。さほど時間をかけずに終わりそうである。
「あ~まってまってー。アタシも手伝うよー」
 そう言って遅れて参加したのはややくたびれた風情のモンジ。魔女その人からの情報を得ようとした彼女は、哀れ童女と化した魔女の熱い洗礼を受けたのであった。子供の相手は疲れる。ましてやそれが体は立派な大人であればなおのことだ。
「首尾は?」
「ぜーんぜん。駄目だねー、完全に自分を見失っちゃってるー」
 だろうなとウルフブラッドが頷けば3人+頭部1つによる探索が始まり、やがてそれが見つかる。
 薬草棚らしきものの下にそれはあった。手記らしきものや、なにか情報が無いかと技を駆使していた者たちの手柄だろう。でなければこんなもの、普通に探したところでは見つかりはしなかっただろう。

緑鳥の月・3日
 今日、隠れ里のような場所を発見する。
 ここにはどれだけ居られるだろうか。

 それは日記だった。前の頁には苦難の放浪の日々が、迫害され石を持って追われた日々が綴られていた。
 書き手はおそらく魔女その人だろう。
 薬を造り、人を診て、癒やす一連の出来事は薬師という触れ込みと一致した。
 どうやら彼女はなにがしかの特殊能力をもっていたらしく、人々に恐れられる力を疎み、だがそれが無ければ生きていけないままならなさに苦悩しているようだった。
 隠れ里というのはこの村のことらしい。日記に記された地形や人物名からそう推測された。
 当初村人たちは彼女によくしてくれたらしい。
 ヴァンパイアに数十年脅かされてこなかった穏やかな土地柄のせいか、他の場所に比べれば村人たちは温厚で少し抜けていた。おかげで彼女の待遇は大分良く、彼女自身も村を気に入っているようだった。
 人々に感謝されて日々をおくれることに、淡々とした筆致ながらも隠しきれない喜びがしっかりと綴られている。この村でずっと生きていきたいとすら書かれていた。
 だが、彼女の穏やかな日々も終わる。

黄金の月・10日
 狩りに出たディルムが大怪我をして帰ってきた。
 獣の反撃を受けたらしい。右足が付け根からちぎれかけていた。
 力を使うか。使えばまた、恐れられるのではないか。
 力を隠して放っておけば、彼は死ぬ。
 力を使うことに決めた。
 これでよかったのだ。

黄金の月・23日
 今日、村長が来た。
 村人に魔女と噂され疎まれていると教えられた。やはりディルムを助けたのは間違っていたのだろうか。それでも彼には、彼等には良くしてもらった。後悔は無い。
 出て行きたくは無い。この村はとても居心地がよかった。
 村長が守ってやると言ってきた。その代わりに体を要求された。
 村の男達、特に彼には以前からそういう目で見られていたことは知っていた。
 ここでそれを言うか。
 この男の性根の悪さに怖気がはしる。

黄金の月・24日
 また死に怯えて夜を越し、迫害されて回る旅に出るのか。それとも体を許すか。
 一晩考えて、決断した。体一つで平穏が買えるなら安いものだ。

黄金の月・25日
 今日村長が来た。
 初めての痛みよりもこんな男に抱かれる事の方がこたえた。
 夜に食べたシチューを全てもどしてしまった。

黄金の月・26日
 今日も来た。痛みはひかない。

黄金の月・27日
 今日も来た。

 同じ文章が延々と続く。その様子は村長が彼女に入れ込んでいたという事実と一致した。ただ違うのは、彼女が籠絡したのではなく村長が彼女の事情を背景に脅していたということか。
 月日がたつ。

白樹の月・2日
 妊娠した。
 避妊の薬は飲んでいたが無駄だった。
 あの男との子。
 そのことを伝えせめて産まれるまでと関係を拒否したが無視される。

 村長がやって来るようになるのと時期を同じくして、彼女の薬師、治療士としての仕事は無くなったようだった。
 誰も魔女だなんだと噂される者には診てもらいたくなかったのか。
 完全に彼女は村長の囲い者と化していた。
 日々体を貪られる怖気と嫌悪が、少しずつだが確実に彼女の精神を蝕んでいくのが乱れる文章や文字の形からわかった。
 村長が来たという記述が淡々とまた続いて。

灰狼の月・10日
 なんでこんなことになにがいけなかったのかやはりわたしの血はよごれていたああこんなこんなみにくいばけものを。

 日付から計算してこの日、件の子供が生まれたのだろうと予測された。
 醜い。村人の証言のとおり、何らかの障害をもって生まれたようだ。瀬戸際で保たれていた彼女の精神はこの日を境に崩れ落ちた。
 以降の記述はあまりにも文字が乱れているため解読できず、たまに読み取れても妄想に囚われたような意味不明なものが続くだけだった。
 血。産まれ。呪い。殺して。
 度重なる性的暴行と、望まぬ子が彼女の精神をついには破壊してしまったのだろう。しかし妙だ。現在の彼女の退行した精神とこの日記の錯乱したそれとはまったく一致しない。
 日記はやがて真っ黒に塗りつぶされた頁で終わった。
 これで終わりではない。もう一束、同じ様相の紙らしきものの束が見つかったからだ。
 これもまた日記のようだったが筆跡が異る。まともであったときの彼女の時とも、精神を病んだ時とも違う。足かなにかで書けばこのように乱れた文字をかけるだろうか。

 じ れんしゅう する

 その一文で始まったのは、件の子の日記であった。
 おぼつかない筆跡で、独学で学んだ字で日々の出来事を記していた。

 おとなおとこ なぐる いたい なぜ

 暴行の記録とも言えた。
 どの頁にも必ず1つは彼が受けた暴行の様が綴られている。
 何日も、何ヶ月も、何年も。それは気の遠くなるような暗闇の世界だった。
 いつまでも字自体はうまくならなかったが、やがてまともな体裁で文章らしいものを書けるようになると、加害者が解ってくる。
 それは村長だった。
 彼は外で遊んでいる彼を見つけては蹴り飛ばし、動かなくなるまで殴りつけた。
 それは村人だった。
 村長のまねをするように殴り、蹴り、そして彼を罵った。
 ある日などは動物の糞を団子だから食えと押しつけてきて、全部食べきるまで暴行を加えてきた。
 それは母だった。
 妄想の世界に逃げ込みだした母は、時たまかんしゃくを起こして彼を殴って泣くのだった。
 彼の日々は暴力に支配されていた。だが、そんな彼にも救いがあった。
 母親の荷物の中から見つけた一冊の本、どこかの地方に伝わる神の物語だった。字を憶える為の教科書代わりであり、恐ろしい魔物やそれから人々を救う救世主の物語は日々の辛さを紛らわす救いでもあった。特に彼はその中に出てくるアベルという若者がお気に入りだったようだ。辛い神の試練を生き抜いて、ついには認められ神の国へと招待される物語だった。

白風の月・5日
 今日から俺の名前はアベルにしよう。母さんも、誰も、呼んでくれる人は居ないが。それでもそう名乗ろう。いつか俺も神の国へといけるように。

 アベルと自称し始めても日々は変わらない。彼の人生はヴァンパイアなど居なくても充分すぎるほど闇に支配されていた。
 理由も無く暴行される。見ている村人はいても誰も助けてはくれない。ただ汚いものを見るような目でみるか、嗤うだけだ。
 それでも彼は耐え続けた。試練と思って耐え忍べばいつか自分も神に認められて救われるのだと。あるかどうかもわからないそのか細い救いの糸を必死に必死に掴んで、暗黒の毎日を送る。
 変化のない暴力の日々の中、それが起こった。
 元から見辛かった文字が、目に見えて乱れた。どの日よりも乱れていて解読するのに難儀するほどだったことから彼の精神状態を想像することは容易であった。

密の月・2日
 ジャン、ゴロウザ、シン、あいつらあいつらあいつら絶対にゆるさない絶対にゆるさない。
 母さんに母さんに母さんに、あいつら、汚らわしい手で、

 字の乱れが酷くてその日の続きは読めなかった。

密の月・3日
 母さんはもう俺をわからなくなってしまった。
 子供のようになってしまった。
 とてもとても哀しいけれど、殴られない事を喜んでしまった俺を、神はお許しになるだろうか。
 そもそも……神はいるのだろうか。

 以降、日記から神や物語、救いについての記述が消えた。
 あるのは村人達への憎しみと、幼くなってしまった母を支えなければと言う使命感。

黄金の月
 ヴァンパイアが来て生贄を要求してきた。
 おそらく、俺か母さんが選ばれるだろう。
 この世の終わりのように騒ぐ連中を見て笑ってしまう。
 支配されることも、一方的に奪われることも、俺が今まで味わってきたことだ。
 精々これからは俺たちの味わってきた煉獄を長く長く味わいながら死んでいけば良い。
 奴らの苦しみが1日でも長く続きますように。光無きこの世で、ただヴァンパイアに祈る。

 日記はこれが最後だった。おそらくこの呪詛を書き、母の日記と共に誰の目にも触れぬよう隠した後で彼はヴァンパイアに供されたのだろう。
 母の日記と共に見つかった彼のそれ。つまり彼は母親がされてきたことを知っていたということだ。父がだれかも、何故自分が生まれたのかも、なにもかもを。 

●貴方の正義を問う

「だから全てを灰にしようとしたのか。中々に愉快な話だな」
 村の中で真実を知ったユングフラウは嗤う。
「クズどもが」
 日記を発見し、いの一番に読んだウルフブラッドが吐き捨てる。
「いや~これはない。ないなー」
 横から覗き込んでいたモンジは笑いとも怒りとも、なんとも名状しがたき表情をしている。
「……」
 ウォーマシンの2人は何を思ったか。
 頭部だけとなった雪生は体があったら身震いしていたであろう。この深入りすればするほど身動きが取れなくなるような悪意を予見していただけに。
 トリテレイアは何も言わない。彼の思考は守るべきものが居て、倒すべき敵が有る、そういう御伽噺に立脚しているがゆえにバグを起こしたのかもしれない。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『異端の騎士』

POW   :    ブラッドサッカー
【自らが他者に流させた血液】を代償に自身の装備武器の封印を解いて【殺戮喰血態】に変化させ、殺傷力を増す。
SPD   :    ブラックキャバリア
自身の身長の2倍の【漆黒の軍馬】を召喚し騎乗する。互いの戦闘力を強化し、生命力を共有する。
WIZ   :    フォーリングローゼス
自身の装備武器を無数の【血の色をした薔薇】の花びらに変え、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
👑17
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


邂逅は、約束の日をまたずに訪れた。
 初日に猟兵の1人が吹き飛ばした破壊跡の淵にアイツは立っていた。
「お前らがコレをやったのか? なるほど、凄いな。この力で里のもんたちを守り、俺を討つ、か。まるで英雄か救世主様みたいだ」
 10代後半か、20そこそこの人間の男性の声だ。
 禍々しい気を放つ黒い鎧姿。兜はなく、その醜くひきつれた顔を露わにしていた。片方の目は肥大化した肉腫で潰れ、もう半分の顔は火傷でも負ったかのようにケロイド状に歪んでいる。だが喋れている。二本の足で健常者と同じ様に歩き、剣をもっている手は震えてすらいない。
 戦わねばならぬだろう。相手は迫害を受けてきた弱者ではなく、今や立派な支配者となった強者だ。
 猟兵達が武器を構えたその時、唐突に彼の感情が爆発した。
「なんでだよ。なんでだよなんでだよ。里の連中は助けて、なんで俺のときは、あんたらは助けに来なかった! 救世主様ならもっと早く来て昔の俺も助けてみせろよ! 俺の母さんを助けろよ! 助けてくれよ……頼むよ」
 激情に震える声が猟兵達を打つ。助けてくれと叫ぶ彼はただの1人の人間のようですらあった。
「いや、いい。そういうもんだろうな。神様なんていないんだ。救いなんてないんだって、わかってるよ。でもさ、頼みを聞くくらいいいだろ。ちょっとだけでいいんだ。目をつぶっていてくれよ。そうすれば全て終わるから」
 終わる、とは。
 村の者たちを全員殺して回ることだろう。復讐のことだろう。真実を知った猟兵達には皆まで言わずともわかった。
 だが、どうする。
 心情的に彼の言いたいこともわかる、という者が居るだろう。彼ら村人の行いは裁かれて然るべきだと思う者も居るだろう。
 だが、一連の虐待と関係のない村人だっているだろう。赤子や物の道理のわからない子供だって村にはいるのだ。彼がそれらを区別して殺戮するとは思えない。

 オブリビオンである彼を討つのは覆らないにしても、どうするべきだろうか。
 ほんの数分目をつぶるのか。
 それとも、今ここで彼を討つのか。

 猟兵達は選択せねばならない。
フォルター・ユングフラウ
救世主?
勘違いするな。
人間を抑圧し、蹂躙し、この世界を作った─我は、その夜の一族の血を引く者。
貴様と母を迫害したあの村人共、あやつらを屑たらしめる遠因は我にもある。
さあ、剣を向けよ。
貴様は、我を憎む権利がある。

…化物と聞いていたが、村人共より余程人間らしいではないか。
が、こちらも黙って斬られる訳にはいかぬ…奴も、それでは満足出来ぬだろう。
【WIZ】を活かしつつ、吸血・呪詛・催眠・生命力吸収、その他持てる技能を全て駆使して全力で迎え撃つ。
UCは、トーデスシュトラーフェを。
奴の行く末は、我の一存で決まる訳では無い。
が、どうなるにせよ…溜まった怨嗟くらいは、吐き出させてやるべきだろう。



「救世主? 勘違いするなよ」
「え?」
 酷薄に笑いながら進み出たのはユングフラウ。
「人間を抑圧し、蹂躙し、この世界を作った――我は、その夜の一族の血を引く者。貴様と母を迫害したあの村人共、あやつらを屑たらしめる遠因は我にもある。さあ、剣を向けよ。貴様は、我を憎む権利がある」
 豊かに広がる黒髪をたなびかせ、悠々と進み出る様は戦に赴く戦士というよりも舞踏会に向かう淑女然としていた。優雅に、堂々と。
「っ! なんでだ! なんでだよ! ヴァンパイアの仲間なら別に見逃してくれたっていいだろ!」
 淑女を出迎えるのは紳士の手ではなく大剣の暴風。
 轟々と鳴く風が騎士の慟哭めいて響く。
(化け物と聞いていたが、村人共より余程人間らしいではないか)
 ユングフラウの顔に束の間訪れた表情は憐憫か、それとも嘲笑か。人ならざる者の内心を推し量ることは出来ない。
 けれども、騎士の剣を真っ向から受けて立ち、全力で相手をする様は敵手を対等の者として見る優しさを感じずにはいられない。
 次々と繰り出される剣。縦に、横に、時には下から掬い上げるように。ユングフラウのドレスを裂き、腕を、足を、掠めては赤々とした血化粧を施す。
 迎え撃つユングフラウは、時に躱し、時には自らの傷を騎士を斬りつけることで癒やし、呪詛を刻みつけ応戦する。
 ユングフラウめがけて振り下ろされた剣が空を切った刹那、騎士が背中から鮮血を撒き散らしてつんのめった。
「後ろがお留守だぞ、坊や」
 ユーベルコード、トーデスシュトラーフェ。
 背後に転移して斬りつける無慈悲な一撃を、果たして騎士は理解しえたかどうか。
「まだ、まだだ。俺はこんな所で死ぬわけにはっ!」
 騎士が大地を踏みしめ、反転。鋸鎌を振り切ったユングフラウに向けて魔剣の封印を解く。
 殺戮喰血態へと変化し魔獣の顎と化した大剣があわやユングフラウを襲おうとしたその時、

成功 🔵​🔵​🔴​

雪生・霜逝
生贄。
決定的な破局から目を背けて、代入され続けたもの。
それがこの村を支えた存続の形式。正義か否か、解が一つに定まることはないでしょう。
わたくしは――
「この村の在り方に決着をつける権利は、アベル様もあるかと存じます」
あえて、名前を呼ぶ。記憶の断片が、呼ばれずにいた名をこそ忘れるな、と囁くので。
「貴方の仕事の後に、わたくしはアベル様を討つ義務を果たします」

戦闘では【POW】使用。首と胴体は接続。
アベル様に接敵しつつ、味方を【かばう】ことで攻撃を受け、【自身の血液】で【ブラッド・ガイスト】起動。
【激痛耐性】で痛みを抑え、武器を体に咥え込んだまま、"鉄杭(パイル)"の【零距離射撃】を以て遇しましょう。



「っ、アベル、様……」
 雪生が、その狂刃を一手に引き受けていた。
 ばきり、ばきりと、強靭な大顎が雪生の機械の体を噛み砕く音が木霊する。ひと目で重症と分かる。けれども雪生は激痛に対する耐性でもって意識を失うことなく耐えていた。
 名を呼ばれ、騎士が体を震わせる。
「この村の在り方に決着をつける権利は、アベル様もあるかと存じます」
 もう一度、名前を呼ぶ。誰にも呼ばれることのなかった彼の宝物だったであろう名を。
 忘れるなと、雪生の失われた記憶の断片が叫ぶから。
 騎士――アベル――が絞り出すように声をだす。
「っ! その名を……呼んでくれるなら、止めないでくれ……」
「そうしたいと、わたくしも思います。けれど、わたくし1人の意見では止まらぬ流れもございます」
 雪生の言う通り、猟兵達は皆武器を構え、今ここでアベルを討つ意志を見せていた。目をつぶってやろうとしたのは雪生ただ1人。
 アベルがその猟兵達全員を振り切って本懐を果たすのは最早不可能であろう。
「であれば」
 雪生は訥々と語りかける。自らの罪を懺悔するように。悲しい彼へと謝罪するように。
「1人無関係を装おうのは貴方様を見過ごしてきた村人達と同じと愚考いたします。わたくしもその手を汚しましょう。貴方を阻み、憎まれる敵となりその刃を受けましょう。それがわたくしの出来る精一杯の誠意です」
 おうけとりください。そう結んで、彼の手がアベルの鎧に触れた。
 ブラッド・ガイスト、起動。
 鈍い衝撃音と同時に、アベルが地面と水平に吹き飛ばされた。
 雪生の持つパイル――墓鏢――が持ち主の傷を糧に威力を増し、零距離でアベルの鎧を打ったのだ。
 威力は絶大。木々を何本もなぎ倒して漸く止まる。間を置かずにアベルが立つ。鎧は大きく陥没し、口からはどす黒い血を流しながらそれでも尚しっかりと二本の足で立ち、猟兵達を睨みつけた。

成功 🔵​🔵​🔴​

太秦・臣継
「お主を救うことには間に合わなんだ。村を救うことはできそうじゃから、やれるだけのことをする。それだけの話じゃよ」
境遇には最大限同情するが、たとえ一人でもやることは変わらない。オブリビオンを倒し人を救う。
他の猟兵が何をしようとも、敵を倒すことへの直接的な妨害にならなければ関与しない。

【属性攻撃】の力を込めた狐火で敵を攻撃する。敵の花びら攻撃を相殺できないか試みる。
【祈り】【破魔】でオブリビオンの力だけ滅ぼし、殺さないで済むかどうかを試す。
(生き残っても地獄じゃろうがな)

「お主に力を与えたものはどこに行ったのじゃ」
元凶の情報を聞き出す



周りを囲む猟兵たちにアベルは憎悪の眼を向ける。
「そうか、アンタら全員敵かよ。なら、全員まとめて死んじまえ!」
 雪生の肩を食いちぎった剣がまたもや姿を変じた。それは無数の薔薇の花弁。狂い咲き、吹き荒び、数え切れぬ程の花弁の刃が猟兵達を襲う。
「させぬよ」
 いくつもの花弁が燃え尽きて落ちる。太秦の狐火だ。十数個の炎が其々意志を持っているかのように走って花弁を焼いて回る。
「お前も! 俺を邪魔するか! あんな奴らを助けるっていうのか!」
「お主の境遇には同情して余りあるがの」
 嘆息しながらも炎を操る術に滞りはない。遅滞なく、容赦なく、的確に、花弁を焼いて焼いて焼き尽くす。
「お主を救うことには間に合わなんだ。村を救うことはできそうじゃから、やれるだけのことをする。それだけの話じゃよ」
 答える声は実に淡々とした合理的なものだった。それはそれ、これはこれと割り切った現実的な意志。幼い見た目に反して長い時を重ねたこの翁に見えているのはきっと他のどの猟兵とも違った理だったのだろう。彼の瞳は誰よりも明確に、アベルを滅ぼすべき敵として見据えていた。
「っ!」
「臆したか? コレが戦いと言うものじゃ。敵意には敵意が返ってくるんじゃよ。勉強になったの?」
「いま、さら! その程度で!」
 アベルには見破れなかったが、太秦とて血も涙も無い冷血漢なわけではなかった。人に戻せるならば戻してやろうと、気づかれること無く祈りと破邪の力を込めて花弁ともどもアベルに炎を向けていたのだが、
(……届かぬか)
 ダメージは入っているが、望んだ方向には向かっていない。
 天に神はおらず、ゆえに祈りは無意味。そう言われているような手応えのなさを感じて太秦は内心唇を噛むような想いだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

ファラン・ウルフブラッド
我は王。そして王の役目は民を護る事である!
護るべき民であるお前達の救いを求める手に、声に気づくのが遅れた事、恨んでくれていい。
故に貴様は貴様の為すべき正義を通せ!我も我の為すべき正義を通す!
来るがいい、強き者よ!絶望を火に焼べ、己が力を、正義を我に示してみせよ!

【行動:POW】
攻撃時は『技能:鎧無視攻撃・鎧砕き・二回攻撃・衝撃波』を乗せた王剣解放で真っ向勝負を挑みます。
防御時は『技能:見切り・第六感・残像』で受け流します。

我とて救えるものなら全てを救いたい。今のお前も昔のお前も、無論お前の母親もな。だが英雄とて人の子、掬う掌の大きさにも限りがあるのだよ。

村の者には別の形で必ず贖罪をさせると誓う



無数の蛾が炎に炙られて狂い舞うような、そんな狂的な風景が広がる中ウルフブラッドがゆるりと歩を進める。
 焼け残った花弁に斬りつけられても怯むこと無く、その見事な大剣を担ぎ一歩一歩アベルへと迫りながら叫ぶ。
「我は王。そして王の役目は民を護る事である! 護るべき民であるお前達の救いを求める手に、声に気づくのが遅れた事、恨んでくれていい」
 それは宣誓であった。神聖な誓いじみていた。
 堂々としたその様に、無視できない存在感を感じてアベルが視線を向ける。
「故に! 貴様は貴様の為すべき正義を通せ! 我も我の為すべき正義を通す! 来るがいい、強き者よ! 絶望を火に焼べ、己が力を、正義を我に示してみせよ!」
「おかしな人だな、アンタ」
 思わずと言った風情でアベルが呟いた。恨んでいい。受け止めてやる。だからかかってこいと。ただ真正面から向かってくる相手にアベルの心は初めて怒り以外の感情に震えた。それが何なのか、アベル自身も分からぬまま2人は接近し、
「こい!」
 激突。
 花弁から戻った邪剣を振るい、ウルフブラッドの王の剣とぶつかり合う。
 剣戟が幾重にも重なるほどの速さ。常人の目には捕らえきれない軌跡。
 恐るべきはオブリビオンか、それともアベルの学習能力か。そういえばアベルは完全な独学で文字の読み書きを成し得た男であった。
 半年で一端の剣士並には動けるようになっていた男は、ここに来てさらなる進化を始めていた。
 ユングフラウの背中への傷も、雪生の腹に開けた穴も、まるで意に介していないようにウルフブラッドの剣を受け、学習し、同じ技で反撃する。
「やるな!」
「っぅ!」
 後進の成長を喜ぶようにウルフブラッドが真っ直ぐに笑いかければ、アベルが息も絶え絶えに剣で返す。まるでそれは剣の稽古をつけているかのようで。止めてはいけない尊いものを感じ一時他の猟兵達は手出しを忘れた。
 けれどもこれは殺し合いなのだ。ウルフブラッドとてそれは分かっている。終わらせなければならないのだ。
「受け取れ! これが我の全力だ!」
 剣の一撃と同時に辺りをホワイトアウトさせる程の雷撃が落ちた。その一撃は鎧を砕き、通り抜け、爆ぜる。
「っぐ、あっ」
「まだまだぁ!」
 返す刀でもう一撃。まともにくらったアベルは鎧を半壊させながら地に崩れ落ち……なかった。衝撃を利用してウルフブラッドから距離を取ると、剣を杖に立ち上がる。
 幾度も猟兵の攻撃を食らい、それでも立つ。
 半壊した鎧と流れ出る大量の血で装飾されて、まさに怨霊としか言いようのない姿である。

大成功 🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
【今ここでアベルを討つ】

妨害する者は格納銃のだまし討ちで対抗

嗚呼、目の前に私(アベル)がいる
いや兄弟かもしれない
彼と私にどれほどの違いがあるというのか

この世界に幾度も赴き弱者が弱者を喰らう様を幾度も見てきました
御伽噺の英雄など居ないのだと思い知りました

ですが私は御伽噺の騎士を模倣し続けるでしょう
機械の思考の私が彼らを「尊ぶべきもの」と認識したからです

アベル、よく御覧なさい
無知で醜悪な紛い物の騎士、それが貴方に引導を渡す者の姿です


…罪深き村人達などどうでもいい
ですが彼の母は村に置くわけにはいかない
妙案がなければ私が過去の任務で解放に加わった村に私の名前を出して託しましょう…

彼の叫びを聞いたから



怨霊と化したアベルの前にトリテレイアが静かに接近する。
 その目にあるのは憐憫でも敵意でもなく、共感のようにみえる。何が彼の琴線に触れたのか。
 物語に縋って立ってきた事だろうか。それとも御伽噺など無いと絶望したその煉獄にか。
 ウォーマシンの男は黙して語らず。ただその騎士を模した鎧と盾、剣をもって相対した。
 血をがぼがぼと吐きながらも、アベルの目は死んではいなかった。むしろより強く、ひたむきに、猟兵達を打倒して前へと進もうとする意志すら見える。
 可能かもしれないと、トリテレイアは感じただろう。
 最初の一合から爆発的速度で成長し続けるアベルなら、後幾ばくかの戦いを経れば猟兵達を圧倒することすら可能に見えた。
 だからこそ、今ここでアベルを討つ。討たねばならぬ。
 騎士たれと己に定めた規範が、無力な民を守らねばならぬと囁くが故に。
「アベル、よく御覧なさい。無知で醜悪な紛い物の騎士、それが貴方に引導を渡す者の姿です」
「化物を殺すのは騎士様か。ほんと、御伽噺みてえだ」
 なんて皮肉のきいた御伽噺だろうか。無力故に更に無力な者を見つけて嬲る民と、それを守る張子の騎士。そして苦しめられてきたがゆえに悪道へと落ちねばならなかった者。
 トリテレイアはこの醜悪なジョークに笑わずただ剣を振り下ろした。
 儀礼用の剣を、鞘に入れたまま。
「なめ、るなぁ!」
 横殴りに捌こうとしたアベルが、次の瞬間肩口を殴打されて這いつくばった。
 何故? なにが起こった?
 アベルの思考は千路に乱れた。唯の鈍ら、いや鈍ら以下の鞘入りの剣が弾こうとした剣など歯牙にもかけず、特大の戦場槌の如くアベルを叩きのめしたのだ。
 これこそトリテレイアの異能。
 ユーベルコード、オース・オブ・マシンナイツ。
 守るべき民の為に、1人で、粗悪な武器でもって立ち向かう。そんな英雄譚の模倣が膨大な力への扉を開いたのだ。
「が、ああぁあああああ!」
 四つん這いになったアベルが獣めいた叫びと膂力で猟兵たちから距離を取った。

 あと一歩。
 猟兵達はアベルの物語に終止符をうつべく非情の刃を構え直した。

成功 🔵​🔵​🔴​

フォルター・ユングフラウ
【WIZ】

貴様…アベルと言ったか、貴様は先程から救世主云々と言っていたな
ならば、貴様がなれ
その救世主にな
我の様な圧政者は、この世界にごまんといる
貴様と同じく虐げられる者も、数多存在するだろう
我にこれだけの傷を与えたのだ、救世主となる力は十分にあるだろう
復讐に囚われたまま、ここで終わるのか?
それを望むならば、我もUC:ヴィーダーゲンガーにて応えよう
次は、無い
が、貴様がオブリビオンでなく、アベルという人間の意思で別の道を選ぶのならば…我個人は刃を収める
人間を討つのは、猟兵の任では無い故な
村人も、我が言いくるめて後始末はしておこう
さあ選べ、アベルよ
周囲に弄ばれた人生、その最後は己の意思で決めるが良い


アンテロ・ヴィルスカ
何を這いつくばっているんだい?アベル
その立派な名前を名乗るなら、最期は勇ましく散るといい

さぁ、早く立ってくれ
俺と英雄ごっこをしようじゃないか

英雄と言えば卑怯な手は無し、正々堂々がお約束さ
剣で斬り合って、君に【捨て身の一撃】を喰らわせよう

俺も君も唯では済まないだろうが、構わない
【ブラッド・ガイスト】には自分の血が必要だからね
君のPOWにも必要だろう?

俺の血で君を【おびき寄せ】たら、間合いに滑り込んで【串刺し】の一撃

言ったろう?
ごっこ遊びだと…
仲良く遊んだら、これで君と俺はお友達

いやぁ、別れって辛いものだね


トリテレイア・ゼロナイン
化け物を殺す騎士…仮に御伽噺の彼らがいたらどんな行動を取るのでしょうね
紛い物の私には貴方の物語の幕を悲劇という形で降ろすことしかできませんでした
無力な私たちをどうか存分にお恨みくださいますよう

「礼儀作法」に則った騎士として「武器受け」「盾受け」で真正面から攻撃を受け止める
各種格納銃器は使用しない、最後まで紛い物の騎士として振舞う
止めは「怪力」で大盾を殴りつける「鎧砕き」
アベルの鎧を全て壊して剥ぎ取る

……もしアベルの墓を作る時間があれば墓前に彼が好きだった物語を供えたい
この結末を見た優しき御伽噺の騎士達ならばきっとそうするでしょう
ならば私は模倣するのみなのですから



「何を這いつくばっているんだい? アベル」
 猟兵達がその名を呼ぶ時、そこには悲しみがあった。同情もあったろう。
 だが、今この名を呼ぶ声にそれはない。
「その立派な名前を名乗るなら、最期は勇ましく散るといい」
 声の主はアンテロ・ヴィルスカ。まるで鏡写しのように、アベルと同じ黒鎧を纏う者。違う点といえばヴィルスカは兜をしっかりと被り素顔を隠していることだろうか。
 彼の表情はわからない。心もわからない。しかし、その言葉はしっかりと傷だらけのアベルの心を炙る。
「さぁ、早く立ってくれ。俺と英雄ごっこをしようじゃないか」
 ごっこ、と。アベルの宝物を、捨て去ったはずの憧れや救いを嘲笑って踏みにじるように。声の調子が、見下すようなその口調が、村の者たちを連想させる。
「あ゛あ゛ああああああAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!」
 アベルの体から黒炎が吹き上がる。否、これは血だ。己の血を炎のように吐き出しながら突っ込む。
「いいぞ。英雄と言えば卑怯な手は無し、正々堂々がお約束さ」
 飄々とした言葉の数々はどこまでが本心なのだろうか。鎧われたその顔からは真が全く見えなかった。もしくはヤドリガミたる彼の真実は、そのロザリオにのみ宿っているとでも言うのだろうか。
 幾度目かの激突が、また。
 黒々とした大剣がやっためたらにヴィルスカを襲う。
「おいおい、ここまで頑張ってきて俺の時だけ力任せとは感心しないな」
 双剣で迎え撃ちながら常と変わらぬ声色。
 とは言え余裕というわけではなく、ハリケーンじみたアベルの剣線はしっかりとヴィルスカを削りとっていく。ヴィルスカもまた双剣でもって返礼をする。
 鎧を叩き、抉る音はどちらのものか。互いに喰らい合うように撃ち合いながら、その時すらも同時。
 ブラッド・ガイスト。
 ブラッドサッカー。
 血で血を食らう業が発動し、ヴィルスカのロザリオが妖しく胎動する。
 互いの剣が変形、異形化して相手を食い尽くさんと疾走り――。
 鎧が勢いよく吐かれた血で濡れた。
 アベルの剣はヴィルスカの脇腹を食いちぎり、ヴィルスカの双剣はアベルの左上半身を大きくえぐり取っていた。
 同系統の技、同じ拍子。どこで差がついたのかと言えば無数にあるだろうが、大きいものは1つ。
 アベルには先があった。生きて、生きて、復讐を果たしたかった。
 対してヴィルスカは完全に捨て身。その一刀に全てをかけていた。
 勝負のその一瞬に全てを賭けられるかどうかの差が、時に勝者と敗者を分かつ決定的な要素となる。
「言ったろう? ごっこ遊びだと……仲良く遊んだら、これで君と俺はお友達。いやぁ、別れって辛いものだね」
 自身もまた浅くはない傷を負っているというのにヴィルスカの声に変化はない。のらりくらりと、本当らしくない言葉の羅列は、もしかしたらそれこそが真実なのかもしれない。


「ま、だ、まだだ、まだ」
 常人なら何度も死んでおかしくない傷を負いながらも、まだ喋れるのはオブリビオンの力か、それともアベルの執念か。
 ヴィルスカがトドメとばかりに振るった剣を、ユングフラウが止める。
「まて。少しだけでいい」
 彼女の目に何を見たのか。ヴィルスカがその場を譲った。
「貴様……アベルと言ったか」
 声は冷たくも無く愉悦に歪むでも無く、ただただ真摯であった。
「貴様は先程から救世主云々と言っていたな。ならば、貴様がなれ。その救世主にな。我の様な圧政者は、この世界にごまんといる。貴様と同じく虐げられる者も、数多存在するだろう。我にこれだけの傷を与えたのだ、救世主となる力は十分にあるだろう。復讐に囚われたまま、ここで終わるのか?」
 彼女の背後に無数の呪われし腕が現れる。それは死へと誘うようにゆらゆらと揺れ動く。
 断頭台だ。囚われればもはやアベルには逃れる術も抵抗する力も無い。瞬きの間に死ぬ。
「が、貴様がオブリビオンでなく、アベルという人間の意思で別の道を選ぶのならば……我個人は刃を収める。人間を討つのは、猟兵の任では無い故な。村人も、我が言いくるめて後始末はしておこう」
 幾人かの猟兵達の顔に動揺の色が走る。それはそうだろう。オブリビオンを殺さずに見逃すなど、赦されるはずがない。
 オブリビオンは抹殺せよ。それが今の世界の律であり望みであった。
「さあ選べ、アベルよ。周囲に弄ばれた人生、その最後は己の意思で決めるが良い」
 朗々と口上を述べてユングフラウはアベルの瞳を見つめる。
 ユングフラウにこんな事を言わせたのがどれほど驚嘆に値することか、残念ながらこの場に居る者にはわからなかっただろう。
 血も涙もない狂気と殺戮の女帝は今この瞬間、アベルという男に心を割いて活きる道を示していたのだ。
 アベルは血に溺れながらしばらくの間無言だった。葛藤か、それとも意識が混濁しているのか。
 猟兵達はアベルの返答を待った。
「それは、出来ない」
 明確な拒絶。
「俺は、あの、連中の目を、言葉を、痛みを、忘れることなんて、出来ない。母さんの絶望を、忘れてやることなんて、出来ないっ。この憎悪と、復讐のっ、誓いを! 裏切ることは! 出来ない!!!!!!!!」
 血と一緒に溢れだしていた言葉は次第にしっかりと力強く、ついには大気を、木々を震わせて周囲に響いた。
 血が止まっていた。再生の兆候は見えないが、それでもその目と口調には死にかけのものとは思えない芯があった。
 命の一欠片まで憎悪の炎にくべて、アベルが最期の一刀を振り上げる。
「愚か者が……」
 軋むように零した言葉は後悔にも似て、迫り来る剣をただ眺める。
「失礼」
 女帝を守るのは紛い物の騎士。その大盾が真正面から剣を受け止めていた。
「無用」
「いえ、私がそうしたいのです……」
「ふん……邪魔はするなよ」
「心得ております」
 語るべき戦いは既になかった。
 力を使い果たしたアベルに抵抗らしい抵抗など出来るはずもなく、トリテレイアに鎧を砕かれ、ユングフラウの無数の死霊の腕にその肉体をこそぎとられた。それで、終わり。
 立つこともままならず、地に仰臥したアベルを猟兵達は見つめていた。
 放って置いてももう彼は死ぬだろう。オブリビオンの恐るべき生命力は底をつき、徐々にだがその肉体が末端から死滅しているのは誰の目にも明らかだった。
「死ぬかのか、俺」
「ああ」
 ユングフラウが凍えた声で答える。今このときだけは静かな顔で、その事実をアベルは受け入れていた。
「そうか。くくっ、ああ、楽しみだよ。アンタらが、救った世界が、どんなクソ溜めになるのか」
「最期に教えておくれ。お主に力を与えたものはどこに行ったのじゃ
?」
 太秦の問いにアベルは首を横に振った。
 例えヴァンパイアにどんな悪辣な思惑があったにせよ、アベルにとってこの力は福音で、救いだったのだ。恩を仇で返すようなそんな畜生にも劣る事はできない。彼の最期の意地だった。
「かあ、さん」
 アベルと自称した男は、それきり動かなくなった。

●エピローグ
 帰る前にアベルの墓を、そう提案したのはトリテレイアだった。
 今回の事件に思う所のあった猟兵が了承し、小さいながらもしっかりとした墓を彼の生家の側に作った。
 トリテレイアはその前で深く祈る。
 無力な私達をどうか存分に恨んでくれと、懺悔の気持ちを墓前に捧げる。
 もし、御伽噺のような騎士達がアベルと出会っていたらどうなったのだろうか。猟兵達と同じ様に悲劇的な結末を迎えたのだろうか。それともなにか御伽噺らしい奇跡が起こり彼は人に戻って、彼の母親は元に戻り、村で平和に暮らす。そんな大団円の終わりがあったのだろうか。
 無意味な空想だった。ここは御伽噺ではなく血と暴力が支配する現実だ。奇跡は無い。けれど、もしもと想像せずにはいられなかった。アベルの明るい結末を。
「終わったか?」
「ええ。そちらは?」
「ああ、村人たちにはこれからしっかりと償ってもらう。信賞必罰もまた王の努めだからな」
 村人達を集めていたウルフブラッドが墓を一瞥してそれに気がつく。
「これは、お前が?」
「はい。好きだと書いてありましたので」
 墓前にはアベルが信じたかった神々の物語があった。救いと許しの御伽噺だ。
「入れ込み過ぎだ。あの母親も汝が安全なところまで連れて行くのだろう?」
 横から口を挟んだのはユングフラウだ。彼女の言う通りトリテレイアはアベルの母を別の信用できる村へと、自分の名を使ってまで連れて行くつもりらしかった。
 そこまでするのも全ては騎士の模倣故。そう言った所で誰がその行為を貶せるというのか。根底に真が無かったとしてもその行動は正しく優しかったのだから。
「ええ。そうするべきだと思いましたから。ですが……」
「なんだ」
 入れ込んでいるのは貴方もでは、と続けるのをトリテレイアは避けた。
 そう、ユングフラウもまた最後までこの物語に立ち会った一人であった。
 戦いの中でアベルに対して救命の手を差し伸べ、そして戦後は墓を作ることに反対も賛成もせずただ黙って一部始終を眺めていた。
 何が彼女をそうさせたのか。凍土の心に気まぐれに拭いた南風か。
 傲岸不遜を絵に描いたような彼女からは信じられない行動だった。
「いえ。そろそろ帰りましょうか」
 他人の心の詮索するのは騎士的ではない。トリテレイアは首を振って立ち上がった。
 猟兵達は来たときよりも1人、人数を増やして帰路についたのだった。

 世界に暴力は絶えず、憎悪と悲哀が枯れる事もない。
 アベルの書いた通り、ヴァンパイアなどいなくてもこの世は既に煉獄であったのだから。人は醜く、奪い合うものなのだから。
 けれども猟兵達は戦い続けるだろう。明日へと歩むことこそが猟兵であるのだから。

 小さな墓と空高く飛ぶ一匹の蝙蝠だけが、彼らをいつまでも見送っていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年01月05日


挿絵イラスト