●蟲のいい話
とある素敵なお庭に、弱くてちいさいアリスたちと、強くておおきい蟲たちがいました。蟲はお庭で幸せに暮らしています。アリスは不幸な餌だったので。たとえば、こんなふうに。
――蟲に齧られたおとこのこは体の中身を全部食べられて死んでしまいました。
――蟲から逃げたおんなのこは体を紙切れみたいに引き裂かれ死んでしまいました。
めでたしめでたし。
このお庭には、ほかにも素敵なものがありました。それは、蟲たちの卵。いずれ強くておおきい蟲に成るたからもの。だから、イースターエッグみたいに隠さなきゃ。たとえばトランプの裏側に、たとえば林檎の樹のウロに、たとえば蟲の眼の中に。
お庭は今日も蟲でいっぱいです。アリスはみんな腹の中。これは、蟲の、いい話。
●グリモアベースにて
或鴉・意味停止音(欠陥品・f13972)の蒼白い顔色は、さながら蜂の幼虫だった。
「えー、みなさん。今回の依頼はですね、蟲がたくさん、たくさんいます。ビッシリいます。どこからともなく沸いて出ます。しかも人間をムシャムシャ食べます。あー、ここまで聞いて具合が悪くなった方はお茶をどうぞ」
一旦言葉を切って、或鴉も緑茶を啜る。
「もう少し詳しく説明すると、巨大な庭で蟲が飼われていてですね、当然餌は人間――アリスというわけなんですよ。予知で見た限りアリスは戦力としてあまり当てにならなさそうでして……ですが、これ以上蟲が増えるのはよろしくないんです。蠱毒とかされても困りますし。なので、はい。申し訳ないんですが、蟲と、もしいるなら飼い主を叩いていただきたい、という次第です」
ふう、と長く溜め息をついて、もう一度緑茶を啜る。喋っている間に口がからからになってしまったようだった。
「転移したらすぐに戦闘になると思います……皆さん、どうかお気を付けて」
墓異鈍
初めましての方は初めまして、墓異鈍(はかい・にぶる)と申します。気持ちニッチ路線かもですが、まったりお付き合いくだされば幸いです。
こちらのシナリオは三連戦デスゲームです。舞台となる庭には至るところに蟲の卵が隠してあるので、破壊することで有利に戦闘を進められるでしょう。平たく言うと戦いながら蟲の卵に対処するとボーナスが入ります。
また、シナリオでの餌アリスは概ね役立たずです。集団戦では多少駒として使えますが、ボス線では無能である点にご留意ください。PCアリスさんはそういうことはないのでご安心を。
また、毎度のことではありますが、シナリオ内で【蟲に対する暴力】と【蟲からの暴力】どちらの描写もある点にご留意ください。与ダメ被ダメの流血描写、やたら命の安いモブについてもいつも通りです。
※シナリオ中で他PCさんと連携希望の方は冒頭に「★」、アドリブ盛っても大丈夫という方は「◎」を付けてくだされば書ける範囲で対応いたします(必ずしもご希望に添えないかもしれません、すみません)。特定の方とチームを組まれる場合は、「チーム名」もしくはチーム相手のf+数字5桁の「id」を記載してください。以上、よろしくお願い致します。
第1章 集団戦
『グリードキャタピラー』
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POW : キャタピラーファング
【無数の歯の生えた大口で噛みつくこと】による超高速かつ大威力の一撃を放つ。ただし、自身から30cm以内の対象にしか使えない。
SPD : 脱皮突進
【無数の足を蠢かせての突進】による素早い一撃を放つ。また、【脱皮する】等で身軽になれば、更に加速する。
WIZ : 汚らわしき蹂躙
全身を【表皮から溢れる粘液】で覆い、自身が敵から受けた【敵意や嫌悪の感情】に比例した戦闘力増強と、生命力吸収能力を得る。
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須藤・莉亜
◎
「虫ねぇ。血は緑色な感じかな?んでもって、味は草っぽい感じ。」
まあ、味見すればわかるよね?
悪魔の切り売りのUCを使って右腕を悪魔化、周囲に超高重力を掛けて、敵さんも卵もまとめて潰してみよう。
仕留め損ねた敵さんは、悪魔の見えざる手と血飲み子で攻撃。
活きの良い敵さんがいたら、深紅で拘束からの全力【吸血】。
敵さんからの攻撃は、【見切り】や【第六感】を使っての回避と、【武器受け】で防御。
ある程度敵さんを減らせたら他の場所に移動して、また重力操作で周囲をぶっ潰そう。隠れてる卵もついでに壊れてくれると良いけど。
「いっぱいいるし、お腹は膨れるかな。」
「虫ねぇ。血は緑色な感じかな?んでもって、味は草っぽい感じ」
須藤・莉亜(メランコリッパー・f00277)は襲い来る蟲を見上げ、気怠い調子で見当をつけた。莉亜が翳した右腕が、重力操作の力を宿した大悪魔の腕へ変異する。禍々しい力は大気を捻じ曲げて、巨大な芋虫たちをいとも簡単に押しつぶした。死骸の山の中から、かろうじて重力による破裂を免れた蟲たちが、鎌首をもたげる。死骸に埋もれて動きの鈍った蟲は、莉亜にとって格好の的でしかない。透明な腕と白い大鎌、いずれも鋭利な一撃によって、ぬめる外皮は切り開かれ、淡い緑色の体液が飛沫く。ある蟲は大量の体液を失い動きを止め、またある蟲は幾重にも生えた牙を激しく鳴らして莉亜に反撃を試みた。
「おっと。血を吸うのは、僕の方だ」
血飲み子の柄で蟲の顎を弾き飛ばし、深紅で胴体をかんじがらめに縛る。そのまま純白の刃を振り抜いた。ばっくり二つに割れた体から、雨のように降り注ぐ体液。鎌から伝わる体液の味には、苦い草や土の風味に混じって、別のえぐみがあった。体液に混じって流れ出たのだろう、靴先にこつんと当たった物体を見て、莉亜は合点がいった。
干からびた人間の腕。蟲のものとおぼしき管が突き刺さったままになっている。おそらく養分として、体内に蓄えられていたモノ。えぐみを感じたのは、蟲と癒着した人間の血をダンピールの舌が検知したからだ。
地面が縦に震え、どこかで蟲たちが蠢動していることを知る。まだまだ潰す相手には困らなさそうだ――隠れている卵も、ついでに壊れてくれると良いのだが。
「いっぱいいるし、お腹は膨れるかな」
誰にともなく呟き、悪魔を宿した男は庭園を駆ける。
大成功
🔵🔵🔵
国木田・光星
◎★
餅は餅屋、蟲は蟲使いに任せてもらおうかね。
必要なのは除虫と救助か。うし、気合入れていくぞ。
【七つ星】を吹いてメガネウラを数体喚び出す。
一体は俺の護衛に回して他は芋虫共の相手だな。
餌の時間だぜ、お前ら。気張ってきてくれよ。
襲ってくる芋虫はメガネウラに任せつつ、イレイザーレーザーで対応。
伴ってアリスの連中の保護をして回る。
しかし肉食の芋虫か。珍しいがUDCアースにもいるんだよな。
まぁ、そいつと奴らは見た目が違うけどな。
卵に関して。
無理くりだが、見つからない場所に隠してあるという「傲慢」に対し、UC【悪意なき黒の天幕】を放つ。
まぁ数だけは多いし雑食だ。物量で探して食らい尽くしてもらおうかね。
蟲には蟲を。蟲使いの青年は、芋虫の群れを前に気を引き締める。ここは自分の仕事場だ。
「……うし、気合入れていくぞ」
国木田・光星(三番星・f07200)が七つ星を吹けば、メガネウラ――メガネウロプシス・ペルミアーナの霊体が笛の煙に誘われ姿を現した。古代の空を駆けた巨大な蜻蛉は、飛ぶすべを持たない芋虫を鋭利な牙で喰らう。粘液で身を守ろうとした蟲とて無力。翅の衝撃波によって外皮を裂かれ、口から内臓を噴き出して絶命するまでに、何秒もかからなかった。
メガネウラが芋虫を蹂躙する間、光星はまだ逃げ延びていたアリスを保護して回る。メガネウラからからくも逃れた蟲の一匹が光星めがけ襲い来るも、イレイザーレーザーが放つ荷電粒子砲の一撃に目を焼かれ。のたうつ巨体は、光星を護っていたメガネウラによって瞬時に屠られた。UDCアースには、たとえばハエトリナミシャクといった肉食性の幼虫が存在するが、光星が目の前の死体を検分する限り、この蟲は生物学的な特徴を共有してはいなさそうである。何か弱点や卵の産み付け場所についてあたりがつけば、と期待していた光星は眉を顰めた。
仕方なく、というわけでもないが、“見つけることなどできぬであろう”という慢心とともに庭に産み棄てられた卵――その傲慢に対して、ユーベルコードを発動させる。召喚されたゴキブリ霊の群れは四方に散り、木の葉の積もった温かい陰に潜り込んでいった。そこに何があったかは言うまでもないだろう。黒の天幕が啜り損なった体液の残滓が、乾いた葉をじっとり濡らし、汚らわしいマーブル模様を描いた。
大成功
🔵🔵🔵
暗峠・マナコ
ブラックタールも餌になり得るのでしょうか。
ふむ、樹液の様に啜られるのは、確かに想像するだけでもご遠慮願いたいです。
[目立たない]様にこっそりと、[暗視]も駆使して
木などが入り組んでいる暗がりな場所を中心に卵を探しましょう。
卵を見つけたらアリスさんに割らせてあげましょう、
少しでも対抗できるという勇気を持つのは大事な事です。
こわい蟲さんに見つかってしまった時の対処は私たちにお任せを。
腕を2本の木に巻きつけて【バウンドボディ】でパチンコの要領で
突進の威力を吸収し、思い切り弾き飛ばして、木に叩きつけてやります。
その衝撃で、木の上に隠されていた卵が落ちて潰れたりしたら、一石二鳥というものです。
草木を揺らすこともなく、影のように暗峠・マナコ(トコヤミヒトツ・f04241)は木陰を滑る。蟲どもに樹液のように啜られるのは遠慮したいところだが、アリス殺しに夢中の蟲たちはマナコに気づく様子はなかった。暗がりに身を隠していた生き残りのアリスを保護しつつ、闇を見透かし、卵を探す。
外敵のいない庭だからだろうか、卵は存外あっさりと見つかった。樹のウロにみっちりと産み付けられているそれを掻き出し、アリスたちに渡してやる。対抗できる勇気を持つのは大事なこと。だからその手で、この卵を壊してみてください、と。
アリスたちは恐る恐る武器や素手で、ぶよぶよした白濁色の卵の破壊を試みる。ぶつぶつと皮膜を破くと――金属の摩擦音に似た甲高い不協和音が響いた。半ば体の出来上がっていた(そして今は無惨に千切れかけている)幼虫が、細い歯を軋らせて叫ぶ断末魔。
音に反応した蟲の虚ろな眼が、一斉にマナコたちへ注がれた。
これではアリスたちが喰われてしまう、咄嗟に判断したマナコは腕を二本の樹に巻き付け、自らの体を弾ませて蟲を弾き飛ばした。そのまま体を弾ませ、二発、三発。銃弾並みの速度と強靭な柔軟さを備えた黒い肉体は、蟲の臓腑深くめり込む。外皮越しに内臓と神経をめちゃくちゃに揺らされた蟲たちは、樹々をなぎ倒しながらどうと倒れて息絶える。死骸に押し潰された幼虫の絶叫が、肉塊の下からか細く響き、やがて絶えた。
大成功
🔵🔵🔵
ヴィリヤ・カヤラ
敵も倒して卵も壊すんだね……宝探しみたいだね。
オブジェとか木の影に卵がないか確認しながら移動するね。
アリスがいたら敵から守りつつ動くね、
あまり離れないでねって言っておいたら大丈夫かな。
もしアリスが敵に襲われてたら急いで助けに入るね。
敵は遠ければ宵闇を蛇腹剣にするか、
【燐火】を着弾点で爆発させて攻撃するね。
一緒に卵が壊せたらラッキーかな。
倒した後の敵の死体が残ったら【燐火】で燃やすね、
中に卵があったら大変だしね。
食べられて放置されてる犠牲者がいても同じように燃やすね、
こんな所で放置も良くないしね。
卵のサイズ次第ではもしも……もあるしね。
その時にはアリスには見せないようにするね。
アドリブ・連携歓迎
敵を倒して卵も壊す。宝探しみたいだと思ったが、厄介なのは敵も宝探しをしている、ということだ。ヴィリヤ・カヤラ(甘味日和・f02681)は慎重に蟲の動きを伺いつつ、敵にとってのお宝、つまりアリスを保護して回る。木立から木立へ駆け抜けようとしたとき、ヴィリヤの背中に隠れていた一人の少女が、ひっと息を引きつらせた。その視線の先には、群れからはぐれた一匹の蟲、そして――半壊したアリスの骸。
死者がこれ以上穢されることは見過ごせない。それに、蟲が餌に気を取られている今は攻撃の好機でもある。アリスたちには物陰で伏せているよう、そして蟲の方は決して見ないように言い含め、ヴィリヤは庭の只中へ身を躍らせた。前進する足捌きと同時に宵闇を抜刀。引き抜きざま、変形機構を稼動させ、鞭のように撓る刀身で蟲の頭部をスライスする。首を落とされてなお暴れまわる胴体は固く縛り上げ、柄を強く引いて八つ裂きに。固さの異なる肉や繊維を切断する感触が、宵闇越しに伝わってくる。肉体の痙攣が完全に停止したのを確認してから、ヴィリヤは死体を検分した。
芋虫の切断された体からは、小さなあぶくが垂れ落ちている。その一つ一つの内側に、極彩色の小さい幼虫が蠢いているのをヴィリヤは認めた。まだ生まれる前のそれらを、既に死んだ母体ごと最大火力の燐火で爆散させる。腥い死臭すら焦がしつくすほど。
「炎よ、熱き刃となって……」
ユーベルコードの炎を再び灯す。今度は滅ぼすためではなく、弔いのため。燐火はアリスの骸を包み、文字通り魂のともしびのように、青く瞬いて消えた。
大成功
🔵🔵🔵
レナータ・メルトリア
◎★
虫さんって、けっこうむごたらしい食べ方をするよね。
身体の中を溶かしてズルズル~とか。
あれって、やっぱり、くるしいのかな?
腕を切って、血の匂いで『おびき寄せ』るよ!
いい感じに集まるまで逃げ回って、【深紅の憂鬱】を『一斉発射』して『薙ぎ払い』、真っ赤なお花の中に埋めてしまうわ。
アリスの保護は、運良く出会ったらだね。
それよりたくさん蟲を殺して、アリス達の生存率を上げるよ。
見つけたらおにいちゃんが『かばう』くらいはするかな?
あと、死んじゃったアリスの死体には注意するよ。
わざと食べ残しているっていうことは、よほどのことが無い限り、ウジみたいにそこに卵を植え付けているかもしれないわ。
レナータ・メルトリア(おにいちゃん大好き・f15048)は紅の双眸で庭を一瞥する。蟲に体内を溶かされて吸い尽くされるアリス。逃げるうちに四肢を一つずつ捥がれていく手負いのアリス。どうやら蟲の一部は、血液に対して強い反応を示すらしい。観察から推測したレナータは、早速検証を開始する。
すう、と腕に切れ込みを入れた。深紅の血液がどくどくと流れて、緑の生い茂る地面に華を咲かせていく。血の気配に誘われて、蟲たちはレナータににじり寄る。まさに花に群がる蟲そのものだ。違うのは喰らうものが蜜ではなく肉だということ。蟲に囲まれたレナータは、ますます華やかに血を振りまく。
「真っ赤なお花は、すき?」
にっこりと微笑した少女の血が、針の種子――弾丸へと変ずる。針は蟲の厚い外皮を食い破り、深紅のゼラニウムを咲かせた。その花言葉は憂鬱。萎れ枯れ果てながら、緑の地を赤で汚染していく。種子の直撃を免れた蟲も、地面からの汚染に神経を狂わされ、短い肢を激しく振り立てて悶え死んでいった。
一頻り蟲の群れを始末して周囲を見渡すレナータの目に止まったのは、一人のアリスの死体。群れてきた蟲が抱えていたのだろうか。肉体は胴の部分で二つに割けとても生きているようには見えないが、やけに良い血色をしている。卵の養分、ないしは苗床にされているのかもしれない。
「おにいちゃん、見てきてよ」
レナータの操る人形はきりきりと花園を渡り、仕込まれた絡繰りで躊躇なく死体をシュレッドする。寸断された肉片は赤と白と、極彩色。災厄の芽を摘んだ少女は、再び頬に微笑を浮かべた。
大成功
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第2章 集団戦
『トランプの巨人』
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POW : 巨人の剣
単純で重い【剣】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD : トランプ兵団
レベル×1体の、【胴体になっているトランプのカード】に1と刻印された戦闘用【トランプ兵】を召喚する。合体させると数字が合計され強くなる。
WIZ : バインドカード
【召喚した巨大なトランプのカード】が命中した対象を捕縛し、ユーベルコードを封じる。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
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なんということでしょう!
大切に育ててきた蟲たちの素敵なお庭が、めちゃくちゃにされてしまったではありませんか。
これには「庭番」も怒り心頭、邪魔者は追い出さなくっちゃいけません。
庭番は蟲よりずっと硬い皮と、ずっと硬い牙を持っています。これならきっと大丈夫。
蟲だって減ってしまったけれど、邪魔者がいなくなった後は庭番が新しく育ててくれるでしょう。
たからものは、たとえばトランプの裏側に。
これは、蟲の、いい話。
国木田・光星
やれやれ、蟲の次はブリキのロボットか?
アリスの国っつーかガキのおもちゃ箱じゃねぇか。
本丸を叩くのも肝だがあの増殖する敵は捨ておけねぇな。
【七つ星】を吹いてドラゴンマンティスを喚び出す。
騎乗して、トランプの兵隊共を蹴散らすぜ。
「操縦」っつーと語弊があるが、カマキリを笛の煙で誘導しつつ大鎌と顎で派手にやってやるさ。
番号付きの敵はくっついたら強くなるのはゲームの定石。
一体ずつきちんと「スナイパー」でぶっ飛ばしてくぜ。
結構生真面目なんでな。
さて、助けたアリスは無事に逃げられたかねぇ。
・アドリブ・共闘、歓迎です。
意志なき鉄の巨人たちは、まずは牽制とばかりに小さなトランプの兵士を喚び出す。紙切れのように薄い体の兵士ではあるが、それらが手にしている鉄の剣の重さはヒトを撲殺せしめるに充分であるように見えた。ああいった増殖する手合いは捨て置くべきではない。
国木田・光星(三番星・f07200)は七つ星にふっと息を吹き込んだ。空を制すメガネウラに代わって召喚されるは、地を制するオオカレエダカマキリ――ドラゴンマンティスとも呼ばれる、巨躯の蟷螂の霊。トランプ兵よりも圧倒的に長いリーチから繰り出される鎌の斬撃は、群れる兵士たちを易々と二つに裂く。薄い体でひらひらと身を躱した矮躯の兵とて逃げられはしない。光星のイレイザーレーザーは的確に刻印された数字に照準を当て、撃ち倒していく。
笛とレーザーを駆使して蝗めいた大群を捌く中、敵の隙間を縫って逃げる数人のアリスが光星の目に留まった。多少怪我をしているようだ。このままでは兵士の群れに阻まれ安全圏への離脱は叶わないだろう。アリスごと吹き飛ばさないよう用心しつつ、ドラゴンマンティスの文字通り龍のように長い胴でトランプ兵を薙ぎ倒して、道を作ってやる。
「前だけ見てまっすぐ走れ! 敵は俺が片付ける!」
光星の声がどうにかとどいたのか、アリスたちは脇目も振らずに道を駆けて戦闘領域から離脱した。
後方に庇護対象がいる以上、敵がどんなに多かろうとも討ち漏らすわけにはいかない。
「さて、もうひと頑張りだな」
七つ星から吐き出される煙が、のろしのように一筋たなびいた。
成功
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レナータ・メルトリア
◎★
【赤の謀略迷路】と〈血晶兵器〉を併用して、『罠使い』の迷路を作り上げて、我楽多の巨人さんと遊んであげるわ
わたしは出口で待っていて、到達できたご褒美に無抵抗でUCを受けるつもりよ。到達できれば、の話だけれどね
でも、ゲームにはタイムリミットを設けなきゃ。壁からは血晶が成長して道が狭くなっちゃうから、ぺちゃんこにならない内に、急いでね
う~ん、やっぱり死体に産み付けられたりするんだ
…じゃあ、生きたアリスにたまごを寄生させる蟲も、いたんじゃないかな?
『傷口をえぐる』事でとりだせるなら、いいんだけど…
力になってくれる猟兵をさがしてみるわ。…でも、どうしようもない位に進行しちゃってたら、しょうがないよね
ヴィリヤ・カヤラ
★◎
蟲を守る兵隊さんかな?
攻撃が重そうだからちょっと気を付けたいね。
敵の動きはよく見て攻撃は『見切り』で
出来るだけ避けていきたいかな。
攻撃は【氷晶】を爆発させて使いながら、
宵闇でも攻撃していくね。
敵と少し距離があるなら蛇腹剣にして戦うね。
兵団を召喚されたら出来るだけ早く【氷晶】で数を減らすね。
強くなったら面倒そうだしね。
ユーベルコードが封じられても
動けるなら宵闇で攻撃するね。
このくらいで諦められないし、
捕縛中に敵から攻撃されても
仲間がいれば攻撃するチャンスになるから、
気にせず攻撃して貰えたらいいな。
怪我は治せば良いしね。
前線に躍り出たヴィリヤ・カヤラ(甘味日和・f02681)の前に、トランプの巨人が立ちはだかる。手にする剣はシンプルな両刃剣ではあるが、巨躯から打ち下ろされれば部位ひとつ断ち落すことも出来るだろう。冷静に甲冑の関節部を観察し、斬撃の軌道を見切って避ける。大振りな一撃で出来た隙を狙って氷晶を撃ちこんでやれば、凍って脆くなった甲冑や関節機構は容易に吹き飛んだ。一度動きを止めた巨人には続けざまに氷晶を叩き込み、木っ端微塵に爆散させる。
距離を詰めてきた次なる巨人へ氷の刃を向けた、その時。ヴィリヤの目に飛び込んできたのは、巨人の真後ろを縺れた足で駆けていく手負いのアリスたちだった。このまま刃を放てば彼らも被弾する可能性がある――一瞬の躊躇が、巨人に攻撃の機会を与えてしまう。
どこからともなく現れた一枚の巨大なカード。“スペードの3”が描かれたそれが、ヴィリヤの左腕を拘束する。単に巻き付いただけではない。どういった仕組みかはわからないが、その絵札は“切り札”を封印する力を備えているらしい。放とうとした氷晶が、結晶を為さず霧散する。
素早く敵と距離を置いたヴィリヤの背後から、少女――レナータ・メルトリア(おにいちゃん大好き・f15048)の声が聞こえた。
「おねえちゃん! わたしの血の『匂い』がする方に、走って!」
ヴィリヤが振り向く前に、足元から生い茂る血色の花が、迷宮を造り出す。レナータの血を結晶化させたシレネアルメリアの花園。その花言葉は、罠。辺り一面に濃厚な血の匂いが漂う。が、特に強い香りが迷宮の外から立ちのぼるのをヴィリヤは嗅ぎ分けた。先ほどの戦闘で切ってから、未だ血のすじを肌に刻み続けているレナータの腕。新鮮で混ざりもののない血と、そうでない血は匂いで判る。
トランプの巨人たちもまた迷宮の中。数体はヴィリヤを追うが、巻き込まれた他の十数体はでたらめに隘路を右往左往する。そうだ、巨人殺しのゲームには、タイムリミットを設けなければ。レナータはくすくすと笑い、迷路に血を注ぐ。壁を飾る花が、血晶が、じわりと道を狭めながら生長していく。細身で身軽なヴィリヤが逃げるにはさほど困難とはならないが、巨人の横に大きい図体へ喰い込んで圧し折るには十分だ。
血の棘をかいくぐり、真っ先に迷宮を脱したのはヴィリヤでも巨人でもなく、手負いのアリスたちだった。中でも一番年上に見える青年のアリスは左腕が暗い紫に変色しており、水疱のようなものが指先から肘までを覆っている。様子をよく見ようとレナータが近づいた途端、左腕は激しく痙攣を始めた。水疱の内側に蠢く極彩色を垣間見て、レナータは確信する。このアリスは生きたまま卵を植え付けられた、アリス殺しのための「罠」。おにいちゃん――絡繰り人形の手で傷口をえぐれば蟲を切除することは可能かもしれないが、止血処置の用意がない。
何か、手はないのか――逡巡するレナータのもとへ、迷宮を抜けたヴィリヤが合流する。
「この血の匂い……あなたが迷宮を造ってくれたんだね」
レナータは頷き、そして卵を植え付けられたアリスについて説明した。
ヴィリヤは暫し思案した後、後ろに隠していた自らの左腕を差し出す。左腕に巻き付いたカードの内側では、何かが――嫌というほど見慣れた動きの何かが、蠢いている。
「先にカードごと卵をえぐりだして……そうすればきっと私のユーベルコードが使える。それで、止血してみるね」
不安そうに視線をさまよわせるレナータに、怪我は治せば良い、とヴィリヤは強気な笑顔で告げる。
「……おにいちゃん、慎重に」
意を決したレナータが囁く。人形に仕込まれた絡繰りが、ヴィリヤの皮膚を薄く削り、深く抉った。無事にカードと卵を剥がし終えた後は素早く氷晶で止血――同じ措置を、手負いのアリスたちにも施してやる。
いずれも浅い傷ではない。だが彼女たちはトランプの巨人の数を大きく削り、そして最悪の事態をも免れた。
大成功
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暗峠・マナコ
◎
最初からこうしておけば良かったのかもしれません。
ダメなお庭は一度全部焼き払ってから、新しく作り直した方が良い気がしてきました。
【ガジェットショータイム】で炎の[属性攻撃][範囲攻撃]を付与した火炎放射ガジェットを召喚します。
向かってくるトランプ兵を焼いてしまうついでに、少しお庭も燃やしてしまいましょう。
とはいえ、まだ隠れているアリスさんも居るかもですし、そう大っぴらに火を付けることは出来ませんが。
アリスさん達には水の[属性攻撃]を付与した水発射ガジェットを召喚してあげます。
形が変なので使い方に苦戦するかもしれませんが、広がる炎の消火活動でもお願いしたいです。
今まさに戦線後方から打って出んとした暗峠・マナコ(トコヤミヒトツ・f04241)のもとへ、傷を負った――不自然に抉れているが、治療は既に施されていた――アリスが数人駆け寄ってきた。どうやら最前線から逃げ延びてきたらしく、戦況や味方の位置について知っていることを矢継ぎ早に報告してくる。トランプ兵に鉄巨人、そして厄介極まる蟲の伏兵。それらの数を大幅に減らせたものの、まだ止めは刺せていないという。それならば。
――ダメなお庭は一度全部焼き払ってから、新しく作り直した方が良い気がしてきました。そう、独り言ちる。 最初からこうしておけば良かったのかもしれない。少なくとも今の庭は、全然キレイではないのだし。
マナコはユーベルコードで火炎放射ガジェットを造り出した。隠れているアリスをうっかり焼き殺すことのないよう射程距離は抑えているが、可燃物に引火すれば容易には消せないよう改造された代物だ。アリスたちにも、身を守りつつ退路を確保するための水発射ガジェットを手渡してやる。
ガジェットが火を噴けば、先ずは斥候として突出した一枚が。次に控えていた先鋒たちが。トランプの体を持つ兵士は、炎によってなすすべもなく灰となり、芝生の焦げる青い匂いとともに風にまかれて霧散する。ぱちんぱちんと弾ける音は、庭木の陰に潜んでいた幼蟲が破裂するささやかな悲鳴。撒き散らした内臓もろとも炭にして、水飛沫と白煙とを背負い、マナコは進軍する。その火の手は、庭に残っていた残党をキレイさっぱり焼き払うに充分だった。
大成功
🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『ストーリー・テイラー』
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POW : ああもう、苛々するなぁ!このシナリオは全部没だ!
自身が【望んだ通りに話が進まない苛立ち】を感じると、レベル×1体の【大きなハサミを持った小型のオブリビオン】が召喚される。大きなハサミを持った小型のオブリビオンは望んだ通りに話が進まない苛立ちを与えた対象を追跡し、攻撃する。
SPD : 必要ないキャラクターは引っ込んでろ!
【本の頁で出来た大型オブリビオンの群れ】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
WIZ : おっと、その展開は無しだ。
【まるで物語の先を読んだかのように】対象の攻撃を予想し、回避する。
👑11
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何度も、何度も、書いたよね。
これは『蟲のいい話』。
可愛い芋虫たちはいなくなってしまった。庭番ももうスクラップ。
――だけど、まだとっておきの“蟲(オブリビオン)”がいる。
僕の出番まで回ってくるとは意外だったけど、役者はどうやら揃っているようだね。
それじゃあ、最終章を書き始めようか!
ヴィリヤ・カヤラ
★◎
その最終章も思い通りの展開にはさせないからね。
まだ蟲がいるなら、まとめて退場してもらわないとね。
戦闘中は隙があれば本体を狙ってみるね、
範囲攻撃を使う時には届くなら
本体も巻き込むように使っていくね。
小型の召喚は対象が自分なら距離を取りつつ
出来るだけ直線か一カ所に集めるようにして
【氷晶】で攻撃していくね。
大型も威力の高い攻撃が恐いから
【氷晶】を着弾点で爆発させて
進行阻害も狙いつつ攻撃かな。
本体は小型か周囲に投げられる大きめの石があれば、
鋼糸の刻旋で分からないように、
上に投げて落下点に誘導して当てたりできるかな?
当てられなくても隙は作れたら攻撃のチャンスになるかな。
オブリビオンが杖を振るうと、紙と土くれから新たな蟲が喚び出される。小さい体躯に見合わぬ巨大な鋏を備えたハサミムシ。本の紙片で体を鎧う巨躯の芋蟲。召喚者を叩こうにも、先ずは蟲を排除しなければまともな一撃は入らないだろう。
ヴィリヤ・カヤラ(甘味日和・f02681)は蟲特有の読みづらい動きを慎重に観察する。鋏蟲や芋蟲に近接される事態はできるだけ避けたかった。負傷したのは利き手でないとはいえ、手になじんだ二振りの剣を自由に使えない点は不安要素だ。
とはいえ、蟲である。オブリビオンではあるものの、本能で動いていることに変わりはない。調教師のように宵闇で鞭打ってやれば、ある程度の群れを誘導することは可能だった。蟲たちをほぼ一直線に並べた――そこは氷晶の射線。
「氷よ――」
号令ひとつ。空中に氷の花弁が咲く。
「射抜け!」
刃が蟲の一団を串刺しにし、召喚者すら巻き込む威力の爆発が巻き起こる。
「残念、思い通りの展開にはさせないよ!」
冷たい爆風を縫って、紙の蟲に騎乗したオブリビオンが射線から離脱した。得意げに高笑いするオブリビオンに、ヴィリヤも不敵な笑みを返す。
オブリビオンが飛び出した先は“第二の射線”の真中。刻旋――攻防自在の鋼糸を操り射出した、砲弾の弾道上。
氷晶によって庭石を補強して造られた即席の榴弾が、放物線を描いてオブリビオンに迫る。彼は咄嗟に蟲で身を庇ったが、炸裂した石と氷は容赦なく血肉を抉り散らす。
獣の咆哮。杖が空を裂き、オブリビオンの怒りに羽音で応えるかのように、新たな蟲の一群が現れる。ヴィリヤの放った弾は致命打にこそ至らなかったものの、語り部の理性を剥ぎ取るには十分な威力だった。
成功
🔵🔵🔴
暗峠・マナコ
あらあら、可愛らしいお方が黒幕でしたとは。
けれど人は見かけによらないとでも言うのでしょうか、ええ、あなたの物語はキレイじゃないわ。
最終章で申し訳ないですが、登場人物を一人追加させてくださいな。
【トコヤミフタツ】でもうひとりの自分、もとい、大きな質量の黒い液状生命体を召喚します。
その身体でアリスさんたちを庇いつつ、襲ってきた本の頁を身体で受け止め、くしゃりと捻り上げてしまいます。
物語はあなたに書かれるものではない、アリスさんたちが自分の力で紡いでいくものです。
私達にできるのはそのお手伝い。
ハッピーエンドまでは長いかもしれませんが、その道中のお手伝いは最後までさせていただきますよ。
オブリビオンの姿を認め、マナコは不定形の眼を敵意に細める。彼は見た目こそ可愛らしいが、書き記す物語は「キレイじゃない」。マナコの審美眼に叶うようなものでは、とても、ない。だから、筋書きを少しばかり書き換えよう。
『ごきげんよう、キレイなわたし』
トコヤミフタツ――全く同じ声音の涼やかな挨拶が重なる。現れたのは歩く海のように巨きな、もう一人のマナコ。
オブリビオンは得体の知れない新たな登場人物に一瞬怯んだが、すぐに罵声を張り上げる。
「必要ないキャラクターは引っ込んでろ!」
血文字の綴られた本の頁が蟲の形を成し、雪崩を打って襲い掛かる。白い頁。黒い海。二つはぶつかり共に砕ける……かに見えたが、黒い海は圧倒的な質量差で白い頁を受け止めると、くしゃりと捻り上げてしまった。第二陣、第三陣、際限なく湧き出る蟲の大群は黒に阻まれ、ひとひらたりともアリスたちの元へは通らない。
「そいつらは蟲のエサ! 脇役なんだよ! 邪魔するな!」
「……物語はあなたに書かれるものではない、アリスさんたちが自分の力で紡いでいくものです」
激昂するオブリビオンへ諭すように語りかけながら、アリスの血を吸ってきた本の“蟲(ものがたり)”を常闇へと葬る。
アリスは非力だ。今だって、もう一人のマナコがいなければ簡単に消し飛んでいた。それでも――自らの映し身を挺してでも――護るのは、その果てにあるはずのハッピーエンドが、きっとキレイになるだろうと感じたから。暴虐という頁をオブリビオンが捲り続ける限り、何度でもマナコはその魔手を握り潰すのだ。
成功
🔵🔵🔴
レナータ・メルトリア
◎
蟲に囲まれちゃった?
でもでも、おにいちゃんの腕に仕込んだ爆弾で、『衝撃波』を生み出して、隙を作るよ
多少蟲に纏わりつかれてもかまわないわ。その間に強化した血晶の槍で『捨て身の一撃』を叩き込むよ!
…あ、れ。わたし、意識を失っていたの? 毒、なのかな、体が動かないわ
ちゃんと、いちげき、入れれたのかな?
あ、おっきな蜂
生き残りなのかな。私の身体に集まって、一際大きな蜂がわたしに止まって…え、それって、さんらん、かん?
なんで、わたしのおなかに、宛がって…や、だっ!
うぇっ、吐きそう…卵が孵るまでに、何としても帰らなきゃ
でも、蟲たちがわたしの手足で、肉団子なんて拵えだしてて…さすがに、ばんじきゅうす、かな…
“おにいちゃん”に仕込まれた爆弾が炸裂し、光と衝撃に蟲たちが一瞬怯んだ。レナータはその隙を逃さない――自らの意識を保つ限界まで流した血を槍と為し、たかる蟲を一気に串刺しにする。降り注ぐどす黒い体液。失われていく血液。羽音の止んだ静寂の中、視界が、暗く、冷たく、閉じていく――
ぼんやりと光が戻る。
逆光で輪郭の判然としない、大きい蜂のような蟲が、レナータの胎の上で蠢いていた。毒が体に回っているのだろうか、全ての感覚が鈍い。
蟲から突き出た細い管が、身動きの取れないレナータの皮膚に沈んだ。つぷ、と表皮を破り、薄い体の内臓をぐちゅぐちゅと探る。やがて丁度いい場所を見つけたのか。動きが止まり、管から“なにか”が体内に押し込まれる。
「……や、だっ!」
拒絶の悲鳴は誰にも届かない。操り手のいない人形は沈黙したまま。
「やめて、やめて、や……めて……」
一言息を継ぐごとに吐き気が込み上げたが、戻すものがない。皮膚の下に見慣れた極彩色――蟲の卵が蠢くのを、視界の端で確認する。蟲は卵を産みつけると、何処かへと飛び去って行った。おそらくはアリスたちに産卵したものと同種。卵が孵化する前に摘出治療を受ければ、命は助かるはずだ。
しかし。動かすべき手足は、別の小さな蟲たちによってとうに喰い荒らされていた。蟲は止血作用のある粘膜で器用に傷口を覆いながら、肉を抉り取って団子状に加工していく。卵から生まれる幼蟲の餌にするのだろう。
他の猟兵が勝てば、きっと帰れる。けれど――
「……さすがに、ばんじきゅうす、かな……」
体の内側から響く蟲の咀嚼と胎動の音が、か細い声を掻き消した。
大成功
🔵🔵🔵
ヴィリヤ・カヤラ
◎
ディー・ジェイ(f01341)と一緒するよ。
呼ぶ時はDJさん
真の姿解放
今度は私が助ける番だね。
急ぎたいからお願いしてた助っ人さんが
早く来てくれると良いんだけど。
DJさんには全幅の信頼の置いてるから、
アリスに気が向かないくらい
思い切って攻撃していくよ!
ダメージは『激痛耐性』で無視していくね。
それじゃあ、全力で殺すね。
DJさんもいるし【四精儀】の鎌鼬で
邪魔な蟲を倒しつつ動きの阻害が狙えたら良いな。
オブリビオンまでの道が開けば【瞬刻】で接近、
宵闇の蛇腹剣を絡めて斬ってみようかな、
倒すのに足りなそうなら黒月も使っていくね。
終わったら助けて急いで帰らないとね!
DJさん、もう少しよろしくね!
ディー・ジェイ
「ハッハハ、これだけ蟲だらけだと焼き甲斐があるねぇ!」
◎
ヴィリヤ(f02681)に傭兵として雇われてきたぜ!
見計らったタイミングで参戦してほしい、と来れば今が絶好。
帰ったら旨い飯と珈琲奢れよ!
・【隠れ鬼】も用いて今まで一切の気配を隠し、狙い澄ましてきた銃弾を目標に放つ。当たるも逸れるも問題なし、重要なのはヴィリヤが最高のアクションを起こせる隙を作ることだ。
・俺の存在がバレたらすかさずヴィリヤのカバーに回れる位置に移動し、そのまま嬢ちゃんの接近技を邪魔する蟲共を制圧射撃で抑える。
まとまってんならユーベルコードも遠慮なくぶっ放すぜ。
そろそろ"蟲のいい話"陳腐な筋書きの代償を払う時間だぜ、坊や
戦場を駆けて回るヴィリヤ・カラヤ(甘味日和・f02681)の視界の端に映ったのは、息も絶え絶えとなった幼い猟兵の姿。時間の猶予はなさそうだ。一刻も早く敵を討ち帰還しなければ、という使命感が、凍てついた殺意を体に漲らせる。
「……それじゃあ、全力で殺すね」
瞳は深紅の月、翼は真夜中の空。ダンピールとしての力を象徴するかの如き、真の姿の発露。
予め頼んでいた助っ人には全幅の信頼を置いていた。ならばこの身は、敵を屠るのみ。行く手を阻む蟲どもを、風の刃で裁断する。オブリビオンも「時間切れ」を狙っているのだろう、散ったそばから次々と蟲を召喚し、ヴィリヤの移動を妨害してきた。どこまでも厄介な手合いだ、と内心で苛立ちを噛み殺す。一瞬でいい、一筋でいい、道が開ければ……!
背後にご注意、と口の中でつぶやく。
助っ人――ディー・ジェイ(Mr.Silence・f01341)はオブリビオンの後方、AR-MS05の有効射程内に陣取っていた。ユーベルコードに加え、傭兵としてのスキルで姿を完全に消しているディーに気づく者はいない。オブリビオンは前方のヴィリヤに気を取られ、完全に周囲が見えていないようだ。
隙を作るために必要な弾丸は一発でいい。それは針孔を穿つが如く狙い澄ました弾。全て最適化された一撃であるがゆえに。
――タン、と短く乾いた銃声。同時に、オブリビオンが体を無理やり捻る。
ディーの弾丸は頭を掠め、こめかみに広い裂傷をつくった。が、オブリビオンはまだ倒れない。
「読めてるって言っているだろう、こんな展開」
そう吐き捨てたオブリビオンの声はディーには聞こえなかったが、同じときにディーもまた呟いていた。
「……読み通りだ」
相手が何かしらの手段で避けてくることは読めていた。重要なのはヴィリヤが動ける隙を用意することだ。事実、側頭部を負傷したオブリビオンは、焦ったように目元を拭っていた。波状召喚攻撃の手を、一瞬、止めて。
まさに瞬刻。鎌鼬が拓いた道を、夜風が吹き抜けて――ヴィリヤの蛇腹剣は、ついにオブリビオンの脚を捉えた。
ヴィリヤがオブリビオンを斃すまでの間、蟲の始末をするのはディーの役割だ。狙撃位置から素早く移動しつつ、葉巻に火を灯す。煙の代わりにゆるりと立ちのぼるのは空を這う炎。炎の蛇は紙や土くれで出来た蟲を次々と喰らう。
「ハッハハ、これだけ蟲だらけだと焼き甲斐があるねぇ!」
散弾をバラ撒いて蛇に蟲を押し込みつつ、ディーは軽快に笑った。
「DJさん、もう少しよろしくね!」
オブリビオンと交戦しながら発されたヴィリヤの叫びに、火勢を強めてディーは応じる。周囲に蠢いていた蟲の殆どは蛇によって焼き尽くされた。残るは召喚者のオブリビオンだけだ。
「まさかここまで近づかせてしまうとは……でもね!」
哄笑とともに本を繰って喚び出された蟲の鋏が、深々とヴィリヤのやわらかい胴に突き刺さる。
「全部没さ。あんたも、このシナリオも」
けれど、剣士の動きを阻むことは能わず。
「言ったよね。全力で殺す、って」
心身の全ては、一振りの殺意に。それゆえ、もはやどこにも痛みなど存在しえない。黒月の柄を握りしめる左腕から噴き出した血が、刀身に刻まれたルーンを伝う。
斬――紅の三日月が描かれたのに、数刻遅れ、オブリビオンの首が落ちた。
召喚者が消滅したからだろう。庭木の影で息を潜めていた蟲たちのざわめきが止んだ。しんと凪いだ庭で、動ける猟兵は傷ついたアリスに軽い手当を施し、負傷の程度が酷い猟兵を助け起こす。
猟兵は全員が無事に帰還の途に就き、後にはアリスたちが残された。
これより先は御伽の国の物語。しかし、今はアリスの一人が呟いたこの言葉で節を区切ろう。
“めでたし、めでたし”。
大成功
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