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まったく新しい世界

#アリスラビリンス


 不思議の国はちいさな世界。
 ちいさな世界はどうして生まれるのか。誰にもよくわからないけれど、気づいたらそこに不思議の国は『在る』。
 ちいさなちいさなウサギ穴が繋がった先にあるそこはもう、一つの不思議の国なのだ。
「誰もいない世界はどうなるんだい?」
「いろいろ好きに作っていいんだよ!」
「本当?」
「もちろんさ!」
 一匹の時計ウサギに先導された愉快な仲間たちは、めいめい自分のおうちを思い描く。

 けれどけれどもご用心。
 美味しそうな餌の匂いは、鋭い牙と爪をもつ獣を呼び寄せてしまうのだから――。


「新しく見つかった世界、アリスラビリンスの中で、まっさらな『不思議の国』が見つかった」
 ミロ・バンドール(ダンピールの咎人殺し・f10015)がグリモアベースで猟兵たちに呼びかけを行う。
「不思議の国は、それぞれが別々の小さな『世界』だ。それらが無数に集まって形成されたアリスラビリンスの中には、手つかずの国というものがある」
 手つかずの国を立派な『不思議の国』たらしめるためには、アリスラビリンスに自然発生する擬似生物『愉快な仲間』達が、おもちゃの街やお菓子の森を造るなどして綺麗に整えていく必要がある。

「いま猟兵の手が必要なのは、一面に砂漠の広がる『不思議の国』だ。砂漠しかない。……今のところは、な」
 『愉快な仲間』たちは不思議な国を綺麗にする能力があるが、まだ自然発生したばかりの『愉快な仲間』はまだまだ知識や想像力に乏しい。そこで、知識豊富な猟兵が手助けを行うことで強固な『不思議な国』を作ることができるかもしれないのだ。

「必要なアイディアは地形の改良案や植物の選定、それに、どのような建物を建てるか。そして忘れてはならないのが、オウガが来た時のための準備だ。自分が『素敵』と思えるものを『愉快な仲間』に紹介してやってくれ。奴らは不思議な能力で易々と作ってしまえるから、それらの具体的な工法や材料を気にする必要はない」
 この不思議の国に元からある砂漠を活かすならば、それに似合うものを考えてみるのが良いだろう。

「今から向かえば、愉快な仲間たちが砂丘の陰で日差しを避けながら歩いているところに合流できる。訪れる人間には友好的だから、話しかけるのは難しくはない。日常をともに過ごしながら『楽しくて、オウガが来ても大丈夫な国』についての提案をしてやってくれ」
 まずはお喋りから始めて、国の基礎を作る。
 大体出来たあとは愉快な仲間が持っている不思議な『空飛ぶじゅうたん』で上空から様子を見ながら続きを造ろう。

「俺は手伝うことが出来ないが、問題はあるまい。それでは健闘を祈る」
 グリモアの炎が赤く灯ると、その先に映る世界では灼熱の日差しが煌々と砂漠を照らしていた。


みづかぜ
 みなさんこんにちは、みづかぜです。初めましての方は初めまして。オープニングをご覧いただき、ありがとうございます。
 微力ではありますが全力で猟兵の皆様の冒険をお手伝いする所存でございますので、宜しくお願い致します。

 新世界『アリスラビリンス』のシナリオでございます。
 国作りのアイディアを『愉快な仲間』たちに伝授してください。
 ランプが本体の精霊っぽい生き物や、手先が器用な猿、賢いオウム……あたりが居るみたいですがどこぞの上映中の映画とは全然関係ありません。

 それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
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第1章 日常 『語らいの小路』

POW   :    楽しく賑やかに語らう

SPD   :    小粋なジョークを交えて語らう

WIZ   :    多くは語らず、ただ静かに一緒に過ごす

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🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​
三千院・溟
【POW】
――素敵な世界ね。空白であれば幾らでも書き込める。
お話をしましょう、愉快な仲間たち。
もっとも、わたしは想像のお話しかできないけれど……。
『彼女たち』も交えればきっと素敵な国ができるわ。

日傘を差して彼らのもとに現れ、話しかけましょう。
これ? これは暑い日差しから体を守れるものよ。これがあれば、ある程度暑くても外を歩けるわ。

砂漠の国であれば、水があるといいんじゃないかしら。
見ているだけでも涼やかな気持ちになるし、噴水なんてあればきっと素敵よ。太陽に雫が反射して、きらきらと輝くの。
あとは……そうね、敵から身を護るならば壁や濠が必要だわ。国の周りに深い溝を掘るのはどうかしら。

アドリブ連携歓迎


天乃河・光
新しい国造り、素敵じゃないか。
私も喜んで協力させて貰うよ。楽しくて、オウガが来ても大丈夫な……それでいて、アリスに優しい国にしたいね。
それじゃ――やあ、ウサギさんたち。楽しそうな話をしているね。どうだろう、良ければ私も仲間に入れてくれないか?

まずは基礎固めということだけど……例えば、砂漠のまま何を作るにしても、まずは地盤を固めなければいけないよね。
……地下に洞窟でも作ってみたらどうかな?地下湖でもあれば、安定して水を得ることも出来そうだからね。
もしくは天然の迷宮、かな。単純だけど、オウガには結構効果的だと思うよ。それに、いざという時はアリスの逃げ道にも使えるだろう?



 燦燦と輝く太陽が砂粒を明るく照らし、吹き抜ける風が細かな砂を撒き上げて波模様を作る。この世界には、端から端まで地形に沿って黄金色の絨毯が引かれていた。
 いまはそのほかには何もなく、ただ風が通るだけだ。


「やあ、ウサギさんたち。楽しそうな話をしているね。どうだろう、良ければ私も仲間に入れてくれないか?」
 天乃河・光(アリス適合者の王子様・f19385)が光り輝く白馬とともに黄金の絨毯を踏みしめる。
 気高き光は照り付ける日差しとは違い、聖なる清浄な空気をまとって愉快な仲間たちの火照りを癒す。
「わあ、ようこそ王子様!」
「ごめんなさい、まだ何もないところなんです」
 オウムも時計ウサギもてんやわんや。
 急な来訪でティーセットも何も用意していないから、まずは仲間のランプでお湯を沸かそうとして猿に止められたりもした。
「新しい国造り、素敵じゃないか。私も喜んで協力させて貰うよ」
 オウガが来ても大丈夫で、訪れるアリスに優しい国にしたい。自身もその境遇に惑うはずのアリス適合者でありながら、他者のための輝きとしての使命を帯びた光の想いに偽りはない。
「まずは基礎固めということだけど……例えば、砂漠のまま何を作るにしても、まずは地盤を固めなければいけないよね」
「そうだねぇ。砂のお城は崩れちゃうねぇ。よーし!」
 穴を掘るみたいにしてオウムが脚で砂山をつつくと、大きな家が載るぐらいの平らな岩場が出来た。
「かたーい!」
 時計ウサギが思わずしゃがんでコンコンする。この上なら、砂漠と違ってブーツが沈むこともなさそうだ。
「……地下に洞窟でも作ってみたらどうかな? 地下湖でもあれば、安定して水を得ることも出来そうだからね」
「この中に水を作るんだね。じゃあ……この辺!」
 岩場の適当な地面をオウムがくちばしでつつくと、人が通れる程度の穴が開いて階段状に地面が斜めに削れてゆく。そのまま地中へ羽ばたいていったかと思うと、すぐに地上へ戻ってきた。
「洞窟を作って、地下にいっぱい水を貯めておいたよ! これで乾いても大丈夫だよ!」
「ねえ、その洞窟は崩れたりしない?」
 ウサギ穴よりも大きな穴を時計ウサギは心配するが、オウムは柱もしっかりさせたと自信満々の様子だ。
「水を汲み出すには井戸が便利だよ。あとは――洞窟を利用した天然の迷宮、かな。単純だけど、オウガには結構効果的だと思うよ。それに、いざという時はアリスの逃げ道にも使えるだろう?」
 光は洞窟を利用した封鎖型の罠も提案する。
 敵には厳しく仲間には優しい工夫を凝らせば、敵を疲れさせて追い払うこともできそうだ。
「うん、いいね! どんなのがいいかなぁ」
「穴には一家言を持っているウサギに任せたまえ!」
「あまり狭すぎてもいけないよ。そうだ、水路を変えられるようにすると作戦が広がるかもしれないね」
 世界の表面にはまだ黄金色の絨毯が引かれているが、めくればその下には不思議な水脈洞窟が完成しつつあった。


「素敵な世界ね。空白であれば幾らでも書き込める。お話をしましょう、愉快な仲間たち」
 三千院・溟(チェネレントラ・f19346)が愉快な仲間たちへ声をかける。手に持つ日傘が落とす影に遮られてその表情のすべては窺い知れなかったが、穏やかに言葉を紡ぎほころぶ唇は柔らかに潤う。
「後ろの人は誰?」
「それ、日避けになるの?」
 ランプも猿も溟に興味津々。憑いてる姫君らしき面影は恐ろしくもあったが、溟のプリンセスたる優しさの前では些事であった。
「これ? これは暑い日差しから体を守れるものよ。これがあれば、ある程度暑くても外を歩けるわ」
 溟が手を伸ばして日傘をランプの上にさせば、日差しがやわらぐ。暖められて熱々になった金属の体が少しずつ冷めてゆく。
「こういうの、いっぱいあったら涼しい場所ができるね!」
 ランプはさきほどオウムが作った基礎である岩場の上に、大きなパラソルを刺してゆく。
「うーん、こうかな?」
 どこかで見たことのある植物を思い出したようで、パラソルは椰子の木に変わってゆく。
 国中のところどころに、木陰で休めるぐらいの大きな椰子が生えてきた。オウムは様子を見に飛び立つ。
「水源を作ったなら、噴水なんてあればきっと素敵よ。太陽に雫が反射して、きらきらと輝くの。見ているだけでも涼やかな気持ちになるわ」
「噴水ってどんなもの?」
「そうね、まずは池があって……」
 溟が猿におおよその説明をすると、まあるい池が出来る。中央にそびえる塔から勢いよく水が噴き上がると、溟の言ったとおりに陽の光を受けた水飛沫が白く煌めく。
「わあ、綺麗!」
 湧き上がる水にぷかぷかとランプが浮く。ひんやりして気持ちが良く、この場所が気に入ったようだ。
「でもこの水、どこへ行くのかな?」
 噴水池から流れ出た水は岩場を流れ、やがて砂漠へと吸われていく。
「そうね、敵から身を護るならば壁や濠が必要だわ。国の周りに深い溝を掘るのはどうかしら」
 溢れ出た水を地下洞窟を通して国の端へと流せば、外敵の侵入を抑制できる。溟の提案に、猿は喜んで水場を整えにゆくのだった。
「プリンセス、こちらをどうぞ」
 オウムが椰子の実を葉で包んで丁寧に咥えて運んで戻ってきた。嘴で器用に穴を開けるとストローを刺して両翼を腕のように使い、恭しく溟へと渡す。
「あら、まぁ。ありがとう」
 天然の椰子の実ジュースは程よく澄んだ甘みがして、お喋りに乾いた喉を潤してゆくのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

グリツィーニエ・オプファー
ふむ、砂漠の国に御座いますか
こうも乾燥していては喉も渇きましょう
澄み切った水を湛えたオアシスが欲しいところです
然し普通のオアシスでは面白みに欠けますでしょうか
…一体どの様な飲物が宜しいでしょう
『愉快な仲間』に敢えて問い掛けて
彼等の発想による国作りを御助力致します
水源が確保出来たならば
家々に通せば涼しげでしょうし
外敵から身を守る為の策になりましょう

陽射しから逃れる為にも建物は必要不可欠
風通しの良くするならば天井を高くしたり
熱を逃す通気用の塔を建てるのも手で御座いましょうか
皆様ならばどの様な塔を建てたいですか?

皆様が楽しくお話をされているならば
此方も微笑ましく見守るばかり
――良いものですね、ハンス



「ええ、こうも乾燥していては喉も渇きましょう。澄み切った水を湛えたオアシスが欲しいところです」
 椰子の木陰でサボり、いや一休みしていた時計ウサギへグリツィーニエ・オプファー(ヴァルプルギス・f13858)が声をかける。
「奇遇ですねーぇ、僕もそう思っていたところです」
 休んでいただけですよ、というていで体を起こした時計ウサギは背筋を正す。オウガでない美しき来訪者に無礼があってはならない。
「然し普通のオアシスでは面白みに欠けますでしょうか……一体どの様な飲物が宜しいでしょう」
 グリツィーニエは敢えて時計ウサギへ問う。彼らの発想であれば、より彼らの国の為になるからだと考えてのことだ。
「僕は圧倒的に紅茶派ですが、ここは彼らの国なので……おーい、皆!」
 時計ウサギが愉快な仲間たちを呼び寄せると、めいめいに好きな飲み物を聞いて回った。
「飲めれば何でもいいよー!」
「お水が一番だよー」
「ウサギさんは何かいいもの知ってる?」
 突然の無茶振りで時計ウサギが決めることになった。
 そこで冷たいお茶を魔法の蛇口から出てくるようにしたのはなかなかの案だった。オアシスごとに限定のフレーバーも作る遊び心も忘れない。
 砂漠へ迷い込んだ旅人がオアシスを見つけたのなら、水だけではなくどんなお茶が飲めるのか楽しみにできるのだ。

「水源が確保出来たならば、家を造られてはいかがでしょうか」
「おうち!」
「僕らの家が出来るんだ!?」
 オアシスへ水を湧かせるのが楽しくて夢中になっていた愉快な仲間たちは、グリツィーニエに言われて当初の目的を思い出す。
「ええ、陽射しから逃れるためにも建物は必要不可欠でございます。水を引けば涼しげで、外敵から身を守る為の策になりましょう」
「川の上に建ててみようか?」
「橋をつくって、来る方向をしぼれば安心だね」
 どこに作るのかを話し合い、基礎となる平らな大岩の合間合間に水路と橋が出来上がってゆく。
「お家に必要なものは……、壁と、天井かな?」
「左様でございますね。風通しを良くするならば天井を高くしたり、熱を逃す通気用の塔を建てるのも手で御座いましょうか。皆様ならばどの様な塔を建てたいですか?」
「僕はながーい塔がいいな!」
 グリツィーニエの助言により、シンプルな土壁で出来上がった頑丈な家々のほかに、噴水池の広場を臨む好立地には集会場になりそうな大きな建物が出来上がる。一部がにょきっと伸びて物見台にもなりそうだ。
「ねえねえ、バランスを取ってもう一個塔を作ろうよ」
「ええー、難しいなー」
 装飾もなく砂と同化した色ではあるが、集落の原型が出来上がってゆく。
「――良いものですね、ハンス」
 わいわいと賑やかに建物を作り上げる愉快な仲間たちを静かに見守り、グリツィーニエはあたたかな気持ちで従えた鴉に語り掛ける。
 叡智の精霊は短く鳴いて、同意を示した。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 日常 『不思議なアトラクション』

POW   :    体力の続く限り遊ぶ

SPD   :    スタイリッシュな楽しみ方を編み出す

WIZ   :    「愉快な仲間」達や「アリス」、他の猟兵との交流を楽しむ

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 こがねに光る大砂漠に岩盤が敷かれ、地下を通る水が不思議の国に恵みをもたらす。
 国の端には大河が出来て、余所者を遮る。
 砂漠の昼は灼熱、夜は極寒。
 ときおり現れるふしぎなオアシスはそんな極端な温度差から人間を守り、歓迎する。
 湧き出る清涼な水と不思議な蛇口から注がれるお茶で体を癒して、やっとたどり着ける街には土壁で出来た頑丈な家々と大きな集会所がある。
 まだ装飾はされていないけれど、この国に似合うデザインを誰かが教えてくれるだろうか。
 椰子の木がまばらに生えているけれど、もっとたくさん植物が生えていてもいいかもしれない。
 もしも砂漠を越えられるようなオウガが街までやってきてしまったら、秘密の地下通路で洞窟へと逃げられる。
 愉快な仲間たちがウサギ穴を通って他の国へと逃げるころには、オウガは迷宮で足止めされてしまっているだろう。

「出来上がった街を空から見てみようよ」
 ランプが口からもくもくと吐き出した精霊が、いつの間にか取り出した絨毯の一巻きをくるりと開いて敷く。
 二、三人なら余裕で乗れそうな大きな絨毯は宙に浮き、風になびく。
「これで空を飛べるよ! ちょっと揺れるけど、大丈夫だよ」
 ジェットコースター並みの速度や進路で飛べるけれど、魔法のじゅうたんは降りたいと強く意識しない限りは乗っている人を放り出すことは無い。アトラクション感覚で楽しんでしまえるのだ。
「どこを見て回りたいか、言ってくれればその通りに飛ぶよ!」
 それならば。
 街をもっと良くするための視察を口実に、思いっきり楽しんでしまってもいいかもしれない。
白木院・雪之助
ほうほう、これは立派な国が出来ておるではないか。
お主らが作ったのか?良い働きをしたであるな。
魔法のじゅうたんに乗せてくれるというのであるか!
……こほん。我ほどの者がこれくらいで浮かれるわけがなかろう。
ほれ、さっさと飛ぶである。この国に足りないものを我が見つけてやろうぞ!

ふーむ……。飾り気が足らぬのか?
水があるのであればそれを用いて氷像でも作るである。
我の力も貸す故、溶けぬようにしておくぞ。【属性攻撃・呪詛】
もしも敵が侵入したならば、そやつに雪玉を投げる防衛装置も組み込んでおくか。

よし次はあっちに作りに行くぞ!
我はもっと空を飛びたいと……いやなんでもないであるぞ!


指矩・在真
えっ、ジェットコースターみたいな魔法のじゅうたん!?
それすっごく楽しそ…げふん、効率よく街の様子を眺めるのによさそうだね
別に遊びたいななんて思ってないよ、ホントだよ?(目が泳ぐ)

せっかくなんだから、他の猟兵さんや愉快な仲間さんと一緒に全体をぐるっと見て回りたいよね
文字や地図で知ることよりも見て感じることの方がずっと多いんだし、全体像を共有することでやりたいことに優先順位がつけやすくなるかも

そういえば高いところから落ちるときは両手を上げるのがすごく楽しいじゃなくてマナーとか、そんな話を聞いたことがあるなー?
強要はできないけど、知っている身としてはやらなきゃだなー?

絡みアドリブ等大歓迎



「ほうほう、これは立派な国が出来ておるではないか」
 砂漠と同じ黄金に陽を照り返す塔の天辺に、ふわりと真白が降り立つ。白木院・雪之助(雪狐・f10613)がふさふさな豊かな尾をゆらすと、清浄な冷気が辺りを涼ませる。
 また降り立つは生命出づる大海のごとき藍。電脳世界の申し子である指矩・在真(クリエイトボーイ・f13191)が瞬時に周囲を解析すれば、苛烈な太陽を受ける砂漠の表面や地中にいくつもの快適な空間が確認できた。
 塔の上から見渡す『不思議の国』にはいま、広大な砂漠にオアシスが点在し、都市には固められた泥で出来た頑丈な家が並んでいた。
「お主らが作ったのか?」
「そうだよ! 僕たちはこういうのが得意なんだ」
 問いかける雪之助に対して得意げに胸らしきところを張るランプにドラミングをする猿。
「すごいね! 大変じゃない?」
「良い働きをしたであるな」
 在真の感心に愉快な仲間たちはドヤ顔で応える。雪之助の神様らしい優しげな視線は、もうそれだけでご褒美にも思えた。
「わーい! もっとほめてほめて!」
「ねぇねぇ、そろそろじゅうたんにも乗ろうよー」
 盛り上がる仲間たちを諭すように、オウムが宙に浮かぶじゅうたんを足先で掴み、すいすいと引っ張ってくる。
「魔法のじゅうたんに乗せてくれるというのであるか!」
「うん、上から見たら早いんだよー」
 謎の力で浮くそれは見た目には何の変哲もない敷物だが、ソリのようなスピードが出るという事前情報だ。
「えっ、ジェットコースターみたいな魔法のじゅうたん!? それすっごく楽しそ……げふん、効率よく街の様子を眺めるのによさそうだね」
 在真の食いつきは抜群だ。彼の能力的にも、近づいて詳細なデータを取得するのには大きな意義がある。全体像を共有することでやりたいことに優先順位がつけやすくなれば、自ずと必要な要素も満たしやすくなるだろう。
 ただ魔法というだけでこんな絨毯がそのような動きをするのか、と雪之助も興味津々であった。
「別に遊びたいななんて思ってないよ、ホントだよ?」
「……こほん。我ほどの者がこれくらいで浮かれるわけがなかろう」
 雪之助も在真も、国の創成という本分を忘れてはいない。たぶんきっと。
「やったー! よろしくねー」
 愉快な仲間たちに促されるままに、靴を履いたまま乗ってみる。
 体重で僅かにたわんでしばらくは上下にふわふわとしていたが、絨毯は猟兵たちの重さを把握すると、塔を離れて空へと飛び出す。
「ほれ、さっさと飛ぶである。この国に足りないものを我が見つけてやろうぞ!」
 緩やかな助走を付けて、向かうは国の端から端――。

 仲間たちの指示で細かいところまで見てもらおうとして、絨毯は頑張ってあちらこちらを飛び回る。
 水辺を求めて飛ぶ鳥の群れを追い越して、急制動にならないようにくるりくるりと横方向に大きく曲がる。
 つづらに折れた先にはヘアピンどころか安全ピンの一周カーブを描いて、もう一度オアシス巡りを逆方向から再開する。
 でたらめな軌道を飛んでいるようでいて、しっかりと国のデータは集まっている。
「そういえば、高いところから落ちるときは両手を上げるのがすごく楽しい……じゃなくてマナーとか、そんな話を聞いたことがあるなー?」
 在真の情報によると、なんとかアースと呼ばれている世界の遊園地ではそれが一般的という話だ。
 今まさに何もない高みから洞窟の入口を目指すかどうか議論して、魔法の絨毯はゆっくりと旋回していた。
「では……マナーならば仕方がなかろう?」
 雪之助は絨毯の毛足を掴んでいた両手を挙げて岩窟を見下ろす。向かう先までの高低差、距離ともに相当なものだが、今までに魔法の力で絨毯から滑り落ちるような感覚はちょっとだけしかなかった。だからきっと、放しても大丈夫だと信じられる。
「強要はできないけど、知っている身としてはやらなきゃだなー?」
 在真も絨毯から手を離して、恐る恐る肩の高さから頭の上へ。途中で触れたセーラー襟が上昇気流に乗ってはたはたと翻った。
「それじゃあ、洞窟の中も見よう!」
 愉快なオウムの掛け声で魔法の絨毯は落ちるように一直線。加速して目指すは洞窟の中だ。
「うわーーーーーー!」
「ふっ、うおーー!!」
 猟兵だから空から滑り落ちるぐらいは何だってことはないのだが、一切の制御を人任せにして地面に突っ込んでいくのはまた別のスリルだ。
 不思議な力で大丈夫なはずだけれど、もし絨毯の魔法にも限界があるとしたらひとたまりもない。
「ちょっと速過ぎるかもねー」
 猿が呑気にそんなことを言ったのは、洞窟に入る寸前。
「なぬ?」
「ええっ!?」
 速過ぎたらどうなる、と猟兵たちが訊ねる前に魔法の絨毯は真っ暗な洞窟の入口に吸い込まれるように突入し、視界が慣れる前に激しい水飛沫を上げた。

「ふーむ……。飾り気が足らぬのか?」
 水気を吸った狐尻尾を極厚のタオルで揉むようにして乾かして、雪之助が在真のまとめたデータをそう評する。
「砂漠地帯は仕方ないけど、人気(ひとけ)のする所にはもうちょっと華が欲しいかなー。この洞窟もそうだしね?」
 壮大な自然を思わせる洞窟とその底を流れる水脈の姿は荘厳ではあったが、全体的に土色なのは否めない。
「水があるのであればそれを用いて氷像でも作るである。我の力も貸す故、溶けぬようにしておくぞ」
 雪之助が絞ったタオルから滴る雫に神気を込めると、忽ち宝石のような氷の粒と化す。
「氷だー! つめたーい!」
「何作る? 雪だるま?」
「ねね、ライオンなんかどうかなー?」
 氷を分けてもらった愉快な仲間たちは、それを核にして大きな氷を造ってゆく。
 在真の呼び出した『レオくん』の姿を参考に、洞窟が防衛線であるシンボルとなる守護獣も出来上がっていった。
「もしも敵が侵入したならば、そやつに雪玉を投げる防衛装置も組み込んでおくか」
「うんいいね、それ強そうー!」
 氷のたてがみに細工をして、機関銃のように雪を投げる仕組みも完成する。愉快な仲間たちの手早い仕事は、洞窟の他の飾りつけにまで及んだ。
「よし次はあっちに作りに行くぞ! 我はもっと空を飛びたいと……いやなんでもないであるぞ!」
「ボクも、もっといっぱいオアシスと街を見に行きたいなー!」
 こうしてそうしてまた一周、魔法の絨毯で不思議の国を巡る旅は何度でも再開したのだとか。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『チェシャ猫』

POW   :    キャット・マッドネス
【殺戮形態】に変化し、超攻撃力と超耐久力を得る。ただし理性を失い、速く動く物を無差別攻撃し続ける。
SPD   :    チェシャ・スクラッチ
【素早く飛び掛かり、鋭い爪での掻き毟り攻撃】を発動する。超高速連続攻撃が可能だが、回避されても中止できない。
WIZ   :    ストレンジ・スマイル
【ニヤニヤ笑い】を向けた対象に、【精神を蝕む笑い声】でダメージを与える。命中率が高い。
👑11
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ミカエラ・マリット
んー、よくわかんないけど。
オウガってのがせめてくるんですよね?(ハンマー素振り)
愉快な仲間さんたちは避難済みましたかー?

ところで、どこからくるんでしょ、そのオウガさん。
うわぁ、こわいかおのネコさん。
えーと、おにさんこちらー!

防衛拠点にした所までおびき寄せて。
雪玉機関銃、一斉はっしゃー!
ほらほら弾幕うすいですよー。

オウガさんの視界が雪でふさがれたら、とりあえずハンマーでぶん殴っておきますね。
でもってしっぽつかんで、びったんびったん床にたたきつけ!
どーくつ壊れそうなら、お外にぽーいってしますよ。

わー、まだいきてる。
んじゃ、おかわりいっちゃう?いっちゃう?
(ぼんやりした口調で割とえげつない子)


神楽坂・神楽(サポート)
 アルバイトでUDCエージェントをしている明るく元気な女子高生です。

「とうちゃーく!」
 足の速さを生かして、走って現場にやってきます。[足が速い①]

「よーし、いっくよー!」
 敵の攻撃を見切りつつ、走って一気に近付きます。[身が軽い①][足が速い②]

「バイト代になれー!」
 パンチやキック、敵を掴んでの振り回し、近くにある物の投げ付けなど、持ち前の運動能力のみをもって敵と戦います。その威力は、本気で行動すると「衝撃波」が発生するほどです。[力が強い①]
 基本的に敵の目的だとか境遇だとかそういったことは一切気にせず、モグラ叩きのモグラを叩くが如く敵をボコボコにします。



「とうちゃーく!」
 神楽坂・神楽(バイトエージェント・f21330)がテレポートをしたかのような神速の駆け足で洞窟内にたどり着く。さすが、足が速い!
 道すがら見てきた『不思議の国』には灼熱の太陽が照りつけて、アリスや不思議な仲間たち、猟兵といった好意的な来訪者だけをオアシスへと招くようになっていた。
 筋トレには少々強い日差しだったけれど、神楽のスピードには紫外線ですら追いつけない。
 招かれざるオウガはその熾烈な環境に侵攻を諦めるか、幸運を頼り消耗しながら獲物を求めるしかなかろう。
「んー、よくわかんないけど。オウガってのがせめてくるんですよね?」
 にゃんこあくすはんまーをぶんぶんと素振りしてネコ顔の残像を見せるミカエラ・マリット(撲殺少女・f23163)は、アリスラビリンスを形成する小国『不思議の国』における原則をおさらいしていた。
「そうだね、私たちが呼ばれたのもその為だろうし」
 神楽がひんやりした氷像でクールダウンをしながら答える。平和な国であっても、オウガの侵攻をいつか受けるときがくる。出来たばかりの小さな国であってもそれは例外ではなかった。
「ゆかいな仲間さんたちは、ひなんすみましたかー?」
「大丈夫だよー!」
「いざとなったら、流されて逃げるよー」
 遠くでちょこまかと動く小さな影にミカエラが声を掛けると、洞窟内を反響して面白おかしく重なった声が返る。
「ところで、どこからくるんでしょ、そのオウガさん」
「んー、来るとしたら入口か、水路かな?」
 神楽が見て回った限りでは、洞窟の入口は一つに絞られていて大軍勢を各個撃破できる造りになっている。地上と地下を循環する水の廻りだけは堅い岩盤の隙間を通っているが、そこを敢えて通るには急流に耐えられる必要があるだろう。
「とりあえず入口を注意して見ておけば、確率は高いかなー?」
 光が漏れだす方向を神楽が指したとき――ざぶざぶと掻き分けるような水音が真逆にある洞窟内の滝から響き渡った。
「ニャァァァァんだとこの野郎ォォ!!」
「……ってそっちか!」
「うわぁ、こわいかおのネコさん」
 チェシャ猫と呼ぶにはあまりにおぞましいそれは、オウガの一種だ。ずぶ濡れで毛並みもしおしおになり、異形感もマシマシになっている。
「暑くて喉が渇くから川の水を飲もうと思ったら、こんなところまで……なんて卑劣な罠ニャァァ!」
「それは罠じゃないけど……ま、いっか」
「えーと、おにさんこちらー!」
 追いかけてくるチェシャ猫の注意を惹き、神楽とミカエラは洞窟の入口を目指す。そこにはライオン型の守護像があって、察知した侵入者へとたてがみを向けている。
「雪玉機関銃、一斉はっしゃー! ほらほら弾幕うすいですよー」
 ミカエラの号令とともにたてがみから放たれる雪玉が、チェシャ猫の視界を不意に白く染める。
「冷たいニャァン!」
「よーし、いっくよー!」
 寒さと白さに怯み、足を止めたチェシャ猫へと神楽が迫る。
「バイト代になれー!」
 シェイプアップのためのシャドーボクシングのような流麗な動きであるにもかかわらず、神楽の拳圧はチェシャ猫の肉を揺らがせて骨を軋ませる。
「そーれ」
 たまらず身を護ろうとしたチェシャ猫の頭上へ、ジャンプしたミカエラがハンマーを振り下ろす。
『にゃ~ん』
「ギニャアア」
 チェシャ猫の悲鳴とにゃんこあくすはんまーの鳴き声が重なった。そのままノーガードになったチェシャ猫の尻尾を掴み、ミカエラは軽々とチェシャ猫を振り回す。
「イデデデ、ニャアア!」
 叩き付け、ぽいっと投げた先では神楽がチェシャ猫をナイスキャッチ。ミカエラと同じように、尻尾を掴んで振り回す。
「バイト代、バイト代♪」
 一撃入れるたびに給与明細の猟兵手当的な項目にボーナスが入る感覚がする。
 そんな神楽の気持ちを知ってか知らずか、チェシャ猫の視界には金貨のようなキラキラが見えた。
「いい加減にするニャアア!」
 尻尾をくねらせ、やっとのことでチェシャ猫は間合いを取る。
「わー、まだいきてる。んじゃ、おかわりいっちゃう? いっちゃう?」
 表情はぼんやりとしたままだが、ミカエラのえらぶ言葉はどことなく楽しそうでもある。
「お前ら……皆殺しニャー!」
 二人にさんざん振り回されて、ずぶ濡れだった毛皮もすっかり乾いたチェシャ猫が本来のふさふさ感を取り戻す。
 そのまま殺戮形態へと姿を変えると――超スピード鬼ごっこが始まったのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

一ノ瀬・千智
連携アドリブ歓迎。
【POW】で判定するぜ。

ようバケモノ、力比べと行こうぜ?
俺もちょっとばかり反則技を使わせてもらうがな?

【一人アリス】を使用、『不思議の国のアリス』に登場するグリフォンへとその身を変化させるぜ。

わりーけど、覚えたてでまだこの身体は慣れてねーんだ。
力加減が利かねーかもしれねぇけど、勘弁しろよ?

背の翼で空を飛び、真っ向からボスに突撃して嘴で相手と真っ向勝負を吹っ掛けるぜ。
ちょっとでも拮抗すりゃ十分、鉤爪で相手を掴んで思いっきりぶん投げようとしてみるぜ。
勿論その際は拠点をぶっ壊さないように注意するぜ。
連携の際は背中に誰かを乗せて走り回ったり、この図体で相手の盾になってりしてみるぜ。



「ようバケモノ、力比べと行こうぜ?」
 その透き通るようにうつくしい痩身と儚げな声色に反して、一ノ瀬・千智(エスペランサ・f19318)の口調は力強く男性的だ。
「美味そうなアリスだニャー! さっさと食わせるニャ」
「俺もちょっとばかり反則技を使わせてもらうがな?」
 一目見て千智を餌と判断したチェシャ猫の声に重ねて、千智は物騒な宣言をしていた。
『アリスの物語、開始。登場人物が一人、その名は──』
 千智によって紡がれるのはアリスの物語。開かれた絵本を通して変化した千智の姿は鷲の頭と翼をもつ獅子『グリフォン』であった。
「わりーけど、覚えたてでまだこの身体は慣れてねーんだ。力加減が利かねーかもしれねぇけど、勘弁しろよ?」
「ニャーン!? さっきまでのむしゃぶりつき甲斐のありそうなアリスはァ!?」
 焦るシェシャ猫を意に介さずグリフォンとなった千智はその翼で滑るように低く宙を駆け、一気に間合いを詰めると嘴による正面突きを食らわせる。
「鳥の口は痛いニャ! 喰うのはこっちニャー!」
 反撃に千智を掴もうとするチェシャ猫だが、千智はチェシャ猫の爪よりも一回り大きな鷲の鉤爪を開く。
「誰一人、お前には喰わせてやらねえよ!」
 爪同士がぶつかり切創ができるのも厭わず、チェシャ猫の腕を鷲掴みにした千智は勢いよく飛翔する。
 上昇の勢いのままに放り投げられたチェシャ猫は、天井と床による二重の叩きつけで目を回していた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

指矩・在真
連携アドリブ等歓迎

ね、猫っぽいのにかわいくない…!?
オウガだし、うん、退出してもらおっか

命中率が高いなら、そもそも対象になることを避けるべきかな
ボクあまり打たれ強くないからね!痛いのはごめんだよ!
『情報収集、迷彩、目立たない、戦闘知識』で相手の死角を取るように動こう
ベストは真後ろかな、一番気づかれなさそうだし
そしてこっちの存在に気づかれる前にUCで動きを止める!
効果があるうちに『属性攻撃、2回攻撃、早業』で一気に畳みかけるよー!

敵の攻撃に当たらないよう、『見切り、野生の勘』で警戒は忘れずにだね
普通にあの爪と牙は痛いだろうし、あまり近づきたくないや…
いやお仕事だし頑張るけどね?でも痛いのは嫌い!


クレア・フォースフェンサー
そろそろ骸の海に還ってもらおうかの、猫殿。
新しくできたばかりのこの国に、過去からの来訪者は不要。
おぬしのような邪な者なら、なおさらじゃ。

光剣を構え、ゆっくりと近付いていく。
敵が殺戮形態に変化するようなら、【能力反転】を用いてユーベルコードを弱体化させる。
また、逃げるそぶりを見せたなら、その動きを見切り、光弓で尻尾を地面に縫い付ける。

理性を無くした者との戦いなどつまらんでな。
おぬしにはその魂に恐怖と痛みをしっかり刻んでから、骸の海に還ってもらうぞ。

さて、猫殿。
切られた後、誰にどのように食べられたいか訊いておこうか。
人を食いに来たんじゃ。当然、逆に食われる覚悟くらい持っておろう?



「そろそろ骸の海に還ってもらおうかの、猫殿」
 白いコートの裾と煌めく金髪が揺れる。
 クレア・フォースフェンサー(UDCエージェント・f09175)が構えた光剣が洞窟内部を照らしていた。
「餌があるのに、帰るなんて勿体ないニャァ」
「新しくできたばかりのこの国に、過去からの来訪者は不要。おぬしのような邪な者なら、なおさらじゃ」
 歩みはしたたかに、ゆっくりと。相対する両者は視線でお互いを牽制しつつ、仕掛けるべきその時を窺う。
「(ね、猫っぽいのにかわいくない…!? オウガだし、うん、退出してもらおっか)」
 一方で、洞窟の闇に紛れて機を窺う者もいた。指矩・在真(クリエイトボーイ・f13191)が守護獣であるライオン像の背をなで、落ち着いて細く長くひと呼吸。
 息を殺して、狙われることなくチェシャ猫に奇襲をかけようとする算段だ。
 蛇が這うように在真が岩陰を進む最中に、クレアへと攻撃を仕掛けたのはチェシャ猫であった。
「オマエ、美味しそうニャア!」
 妖しく光る瞳がより濃い血の色を帯び、禍々しい爪が鋭さを増す。
「リバース・コード」
 チェシャ猫が飛びかかる一歩手前でクレアが囁くように詠唱すると、チェシャ猫の瞳に落ち着いた赤い色が戻ってしまった。
 素に戻り、急に強張った身体を制御できないチェシャ猫へとクレアが光剣を振るう。
「マ゛ーンン!」
「理性を無くした者との戦いなどつまらんでな。おぬしにはその魂に恐怖と痛みをしっかり刻んでから、骸の海に還ってもらうぞ」
 クレアが描いた光線が、チェシャ猫の脇腹を裂くように弧を描く。
「やりやがっニャ……アァ?」
 光に貫かれたまま決死の反撃にと剛腕ごと振り下ろされる爪は、しかし、クレアへ至ることはなかった。
「(普通にあの爪と牙は痛いだろうし、あまり近づきたくないや……)」
 チェシャ猫の真後ろ方向、水路際に隠れた在真が生じさせた『ハック・ユア・マインド』による刹那の忘却が、チェシャ猫を止めた。
 仄かに煌めく水飛沫に擬態してはいるが、在真が宙に展開した画面がチェシャ猫の行動目的を操作し、封印していることを示している。
「かたじけないっ」
 在真へと目配せして一閃、クレアが横薙ぎに光剣を振りぬく。チェシャ猫の割かれた腹から零れる真っ赤な血流は、胃が空であることを示していた。
「さて、猫殿。切られた後、誰にどのように食べられたい?」
「この程度で勝ったと思うニャァ! 食べるのはこっちニャ!」
 チェシャ猫は、腰から下を地に置き去りにしてでも喰らいつかんと全身を伸ばし、大口を開けてクレアの頭を狙う。
 だが、血塗られた牙がクレアに突き立てられる前にチェシャ猫の毛皮が凍り付く。在真の早業で、目も舌も、霜に覆われて白く凍る。
「お仕事だし頑張るよ!」
 水色の画面をわずかに震わせるとともに、在真が起こした衝撃波がチェシャ猫の頭を砕いていった。
「人を食いに来たんじゃ。当然、逆に食われる覚悟くらい持っておろう? ……もはや聞こえてはおらんか」
 クレアが首を斬ると、チェシャ猫の凍てついた頭部が地に落ちる。硝子細工のように砕け散り、残された身体とともに靄のように消えていった。


 敵の消滅を伝えると、愉快な仲間たちがわあっと奥から飛び出してくる。
 怯えて震えながらも猟兵たちを信じていたのか、洞窟に隠しておいたごちそうと飲み物の瓶を抱えて、テーブルクロスや花飾りを呼び出そうとしている。
 今宵の宴は、この国にとって忘れられない思い出になるだろう――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年03月30日


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#アリスラビリンス


30




種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


挿絵イラスト