●
アックス&ウィザーズ。
人里離れた場所にて強力なモンスターの目撃情報があったらしく、朝から酒場はその話題で持ちきりだった。
「とっくに廃坑になってたとこを諦めきれずに掘ってた奴が、遂にお宝を掘り当てたんだと」
「お宝?」
「『魂灯る鉱石』って名の光る石って話だけど、今から言ってもお零れにあずかれるかどうか……ここら辺の冒険者はみんな、こぞって向かっちまったし」
酒場のママを相手に悠長に喋っている男たちは、恐らく冒険者では無いのだろう。
光る鉱石争奪戦に間に合いそうにないと聞いても、大して焦った様子がなかった。
「ふうん、良い金になりそうだけどな」
「ま、俺たちは戻ってきた冒険者たちから、いかに安く買い叩くか考えようぜ」
「石なんか買ってどうすんだ」
「加工して高く売るんだよ。なんなら持ち主の冒険者相手に幾らお支払いいただければ研磨しますって商いしても良い」
どうやら彼らは商人であるらしい。
「良いね、それ。綺麗な石があったらアタシの分、とっといておくれよ」
ママが楽しそうに笑った、その時。
「あー、やれやれ、酷い目に遭ったぜ」
当の冒険者が数人、憔悴した様子で酒場へ入ってきた。
「どうしたんだい?」
水とおしぼりを出しながらママが問えば、意外な答えが返ってくる。
「それがさ、聞いてよママ。魂灯る鉱石採りにいったら、カラスに襲われてさぁ」
「カラス?」
ママも商人たちも顔を見合わせた。
歴戦の冒険者たちを集団でつつき回し、彼らがせっかく採掘した魂灯る鉱石を器用に嘴で咥えて、飛び去っていったカラスたち。
普通のカラスと思って舐めてかかれば、きっと痛い目に遭うに違いない。
●
「それでは、此度の依頼についてご説明いたしますわ」
椀種・クルトン(憂き実・f00365)が皆の視線の高さに合わせて飛びながらお辞儀した。
「皆様にはアックスアンドウィザーズのとある廃坑へお出向き願いまして、オブリビオン『宝玉蝶』の群勢の掃討にあたっていただきます」
宝玉蝶の使うユーベルコード をよく確認して、いかに効率的に数を減らすか戦略を練って欲しい。
「以前ヒーローズアーズで殲滅してくださったちゅんちゅんさまと同じように、1体1体の戦闘力は低くてございますから、宝玉蝶のそれはもう美しい見た目を堪能なさったり、新しいユーベルコードの試し撃ちとでもお思いになって、お気軽に参戦いただけると幸いですわ」
しかし、宝玉蝶の群れの存在を予知できても、鉱山のどの辺りに居るのかまでは、判然としなかったらしい。
「恐らく廃坑の入り口から進んでいった先に居るとは思うのですが、奥深くに潜んでいたら探し出すのは至難の業でありましょうね」
そこで、とクルトンは提案する。
「廃坑を今賑わせている『魂灯る鉱石』を採掘なさってはいかがでしょうか。独りでに輝く美しい鉱石だそうで、同じく硬い翅が眩く光る宝玉蝶が、仲間だと思って寄ってくるかもしれませんわ」
魂灯る鉱石を沢山採掘すればするほど、宝玉蝶も数多く誘き寄せられるだろう。
「ですが、採掘作業に集中する為には、廃坑の入り口に群がるカラスをどうにかしないといけないようですの。カラスの妨害にもめげずに、採掘作業、頑張ってくださいましね♪」
クルトンは楽しそうに説明を締めくくって、ぺこりと頭を下げて猟兵たちを見送った。
雨都瑣枝
ご覧くださりありがとうございます、雨都です。
今回のシナリオは、冒険→冒険→集団戦という流れでボスが登場しません。
魂灯る鉱石の採掘や、宝玉蝶との戦闘、最初から最後までキラキラした石尽くしの依頼です。お気軽にお楽しみください。
●第1章について
廃坑での冒険パートです。
『魂灯る鉱石』を採掘しましょう。
鉱石を奪おうとしてくるカラスへの対処はご自由に。
真っ向から立ち向かってバトるも良し、カラスを罠へ嵌めてから悠々と採掘するも良し。
カラスへ散々つつかれながらも、脇目も振らずに鉱石掘りに集中しているのもアリです。
●第2章について
カラスの邪魔がなくなったので、鉱石の採掘に集中。
あるいは、掘り当てた鉱石を研磨したり加工したりしましょう。
金具をつけてアクセサリーにするのも良いですね。
●第3章
宝玉蝶とのバトルに突入です。
彼らのユーベルコードに見惚れつつ、ボコボコにしてやりましょう。
●第2章と第3章のプレイング受付開始について
冒頭に事態の変転や敵さん登場シーンの文章を挟みます。
それが載ったらプレイング受付開始となります。
(シナリオ進行のペース次第では、都合により受付開始を数日遅らせる可能性があります)
皆様のプレイング、楽しみにお待ちいたしております。
第1章 冒険
『素材の回収』
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POW : 正面突破。殴って気絶させてその隙に奪う!
SPD : こっそりと。裏をかき、見つかないように…………
WIZ : 綿密に。罠をはったり、行動を読んでいない間に。
👑11
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黒鵺・瑞樹
これ、普通のカラスなのか?
いくら光物に目がないっていっても…、
でもカラスってすごく賢いってアース系の世界で聞いたな。
こっちでもそうなのか。
うんまぁあれだ。つつかれると結構痛いって聞くし、駆除するつもりで対処しちゃってもいいんじゃねぇかな。
どんだけいるかわからんけど、錬成カミヤドリで襲ってくるやつらを一旦さばく。
坑道入りきるまで再度襲ってくるならまたやってみるけど、堂々巡りかなぁ?
賢いって言うならたぶんこれで引いてくれると思うんだが。
●黒対黒
坑道の入り口。
「これ、普通のカラスなのか?」
そこは墓場かゴミ捨て場か、というぐらいに空を黒く染めて群がるカラスたちを目の当たりにして、黒鵺・瑞樹(辰星月影写す・f17491)は呆れるしかなかった。
「いくら光物に目がないっていっても……でもカラスってすごく賢いってアース系の世界で聞いたな。こっちでもそうなのか」
事実、未だ獲物を持っていない瑞樹へ対しては無闇に攻撃せず宙空で様子を窺っている辺り、瑞樹の推測も間違っていないだろう。
「うんまぁあれだ。つつかれると結構痛いって聞くし、駆除するつもりで対処しちゃってもいいんじゃねぇかな」
とりあえず、瑞樹はカラスを誘き寄せる為に鉱物掘りを始めた。
石頭ハンマーとタガネを器用に使って、ゴツゴツした壁面を削るように鉱石を回収。
その大きな石を更に割ると、何度目かで『魂灯る鉱石』の原石が顔を覗かせた。
根気のいる作業だが、途中からはタガネの代わりに黒鵺を使う事で魂灯る鉱石と己が本体との強度比べのつもりになって、気を紛らわせていた瑞樹だ。
そして、キラリと光る原石へのカラスの反応は予想以上に早く、数十羽の大群が一気に瑞樹へ襲いかかってくる。
「賢いって言うなら、たぶんこれで引いてくれると思うんだが」
すかさず、瑞樹は40余りにも及ぶ複製の黒鵺を操り、カラスへそれぞれの脚へ空中で正確に狙いを定めて突き刺していく。
ギャア、と魂切る悲鳴を上げて、一目散に飛び去っていくカラスたち。
「坑道入りきるまで再度襲ってくるならまたやってみるけど、堂々巡りかなぁ?」
心配する瑞樹だが、学習能力の高いカラスだけに、恐らく杞憂に終わるだろう。
少なくとも瑞樹当人は他のカラスたちからも警戒されて、存分に採掘へ集中できると思われる。
大成功
🔵🔵🔵
落浜・語
カラスか…
日頃からやられてんで、痛いのはよーく分かってるから、ド突かれんのは勘弁願いたいな…
やられんのは、うちのカラスにだけで十分。
だからってドつくなっての…(カラスは 米神を ドついた)
カラスにはカラスじゃないが、うん。カラス、頼む。
コードで本来の大きさになってもらって、威嚇と追い払いを。サイズが違うとは言え同類?同種だし、ある程度話が通じればいいが。
それでもこっちに来るのに関しては殺さない程度に奏剣で迎撃。
まぁ、つつかれ慣れてるから多少は気にせず掘るけど。
アドリブ歓迎
一方。
「カラスか……」
落浜・語(ヤドリガミのアマチュア噺家・f03558)は、上空からギャアギャアと喧しく牽制してくるカラスの群れを眺めて、思わず苦笑いする。
「日頃からやられてんで、痛いのはよーく分かってるから、ド突かれんのは勘弁願いたいな……」
その笑顔がいささか強張っているように見えるのも気のせいではあるまい。
「やられんのは、うちのカラスにだけで十分」
——ゴッ!
「だからってドつくなっての……」
いつも語と行動を共にしている首回りの白いカラスが、絶妙なタイミングで語のコメカミをドついた。
「目には目を、カラスにはカラス……じゃないが、うん。カラス、頼む」
ともあれ語は大カラスを召喚し直し、本来の大きさに戻ったところで、群がるカラスらを威嚇し追い払ってもらう事にした。
「サイズが違うとは言え同類? 同種だし、ある程度話が通じればいいが」
自身はマイペースに採掘作業へ勤しむ語。
それだけ、鳥類同士なら話し合いで平和的解決ができるだろうと信用しているのかもしれない。
バサバサバサバサ!!
現に、カラスの大半が自分より図体のデカい大カラスへ恐れをなしたのか、泡を食って飛び去っていく。
ごすっ!
時々、まるでキツツキのように背中をつついてくるカラスが居ても、語は奏剣を振り鳴らして適当にいなすと、
(「まぁ、つつかれ慣れてるから多少は気にせず掘るけど」)
そのまま魂の灯る鉱石掘りへ没頭するのだった。
大成功
🔵🔵🔵
涼風・穹
【心情】
……歴戦の冒険者達を手玉に取るカラスって…
まあ、少なくともオブリビオンではないみたいだけど、新手のモンスターとかじゃないのか…?
【行動】
取り合えず《贋作者》でビー玉か金属片のような適当な光り物を作り出して、少し離れた辺りに撒いてみてカラスがどの程度寄ってくるのか確かめる
もし延々と集まってくるようなら光り物を作り続ける
俺の《贋作者》ならビー玉位の大きさのものなら幾らでも作れるといっても差し支えないけど、カラスは無限にいたり無尽蔵の体力がある訳でもないんだから何回か光り物を持ちかえればそのうち満足するか疲れるかしてもうこなくなるだろう
カラス達がいなくなったなら改めて鉱石掘りを始めるとするさ
●囮作戦
「……歴戦の冒険者達を手玉に取るカラスって……」
と、カラスの群れの圧倒的な存在感や行動力へ舌を巻くのは涼風・穹(人間の探索者・f02404)。
「……まあ、少なくともオブリビオンではないみたいだけど、新手のモンスターとかじゃないのか……?」
彼がそう疑うのも無理からぬ事で、実際につつこうと襲い掛かってくるカラスは、その恐怖心も相まって実物以上に大きく見えるものである。
「さて……」
穹はまずカラスをどうにかしたいらしく、実物を模した偽ビー玉や偽金属片を模造し始める。
多少造りは粗くても——否、荒いからこそ光をよく屈折させた上で跳ね返すそれらは、穹の手の中でキラキラと眩く照り映えている。
「ほら、餌……じゃなかった、光り物だぞ……」
穹は坑道の入り口から少し離れた辺りへ光り物を撒いてみて、果たしてカラスがどの程度寄ってくるのか確かめようと思っていた。
「カー、カー……!」
「ギャア、ギャア!」
だが、効果は想像以上で、カラスたちは穹が視界に入った瞬間彼へ襲い掛かって手の中の光り物を奪おうと必死であった。
「カラスにモテても嬉しくないんだが……」
おかげで坑道から離れた位置で光り物を与える事となったが、それはそれで好都合と贋作を続ける穹。
「ビー玉位の大きさのものなら幾らでも作れるし、カラスだって無限に湧いたり無尽蔵の体力がある訳でもないんだから」
何回か光り物を持ち帰ればその内満足するか疲れるかしてもう来なくなるだろう——カラス相手に持久戦の覚悟を決めて、せっせと偽ビー玉作りに励むのだった。
大成功
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ヒナ・ローレンス
光る石……とても綺麗なんでしょうね、楽しみです。
長居すればどうしてもカラス達に見つかってしまいますから第六感で鉱石のありそうな場所に目星をつけましょう、身を隠しにくい開けた場所でなければいいのですが。
鉱石、小さい欠片であれば持ち運びやすくてよさそうですね。
見つけたら大事にしまっておきましょう。
どうしてもカラス達に騒がれてしまうようでしたら、あまり気は進みませんがUCの弾ける光で脅かせないでしょうか。
レムリア・クラウンハート
警備をかい潜ってお宝を回収する。すごく怪盗っぽいことが出来そう、ですね。
という訳なので、カラスさん達を避けて、こっそり採掘することにしてみます。
プログラムとかユーベルコードとかは……なくても大丈夫そうかな。採掘する時にちょっと使うくらいで。
それでは、録画用のソフトを起動して、マスクを忘れずにつけてっと。
───怪盗クラウンハート、華麗に参上よ!
ふふん、この私にかかれば、カラスの行動を読むなんて実に容易いことね。まずは遠くからじっくり観察してみましょうか。
おっと、観察のついでに地形の把握をして、侵入・脱出のルートを決めておくことももちろん忘れないわよ。
●憧れ色々
「光る石……とても綺麗なんでしょうね、楽しみです」
ヒナ・ローレンス(今はまだ小さな光・f06137)は、魂灯る鉱石の美しさはいかばかりかと華奢な胸を期待に膨らませていた。
「とはいえ、長居すればどうしてもカラス達に見つかってしまいますから……」
それでいて作業時間は最小限に留めてさっさとズラかるべき、と見極めて、懸命に第六感を働かせるヒナ。
魂灯る鉱石がありそうな箇所は、幸い上空のカラスたちの視界には入らぬ、奥まった横穴の先である。
「鉱石、小さい欠片であれば持ち運びやすくてよさそうですね」
額に汗してハンマーを振るいながらそんな事を考えるヒナ。
換金する気など毛頭なく、ただ純粋に魂灯る鉱石を手元に残したいと思うが故の控えめな願望であろう。
「ありました……!」
そんな彼女の願いか通じたのか、力を込めてかち割った鉱物の中から出てきたのは、ヒナが両手で持つには充分な小ささの光る石であった。
「綺麗……」
ガラスのように透き通った表面もさることながら、淡く燐光を帯びた原石は磨く前から既に神秘的な趣を湛えて、ヒナを魅了する。
ヒナは大切そうに石を抱えるや、坑道からの脱出を試みる。
「光は此処に、安らぎは彼方に」
ギャアギャアと煩く待ち構えるカラスたちへは、召喚した光る蝶をけしかけて、目眩しを図った。
「!?」
カラスたちは彷徨い出てきた光る蝶の霊へ我先にと突っ込み、弾ける光がどこに消えたのかと探し回っては翻弄されている。
その隙に、たかたかと外へ向かって駆け出すヒナ。
せっかくのお宝を奪われずに済みそうだ。
さて。
(「警備をかい潜ってお宝を回収する。すごく怪盗っぽいことが出来そう、ですね」)
レムリア・クラウンハート(電子の大怪盗・f20176)は、カラスをまるで宝飾店の警備に喩えるという独特の感性を発揮してほくそ笑んでいた。
いそいそと怪盗らしいマスクを装着して、録画用のソフトを起動する辺り、鉱物採掘の一部始終を怪盗の証拠として記録に残すつもりらしい。もしかすると防犯カメラの代わりだろうか。
「───怪盗クラウンハート、華麗に参上よ!」
ともあれ、華麗に名乗りを上げるレムリア。
「ふふん、この私にかかれば、カラスの行動を読むなんて実に容易いことね」
流石は電子の海といずれは七つの海も股にかける大怪盗、無闇に坑道へ突撃せず、遠くからじっくりとカラスの観察を開始。
ついでに地形の把握にも努めて、いかに怪盗らしく鮮やかに侵入と脱出をこなせるか、最短ルートの目星もつけたようだ。
しばらくすれば、カラスにつつかれた冒険者の落とし物である『魂灯る鉱石』の原石が、録画映像だけを残して消え失せているに違いない。
大成功
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第2章 冒険
『魂灯る鉱石』
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POW : 肉体労働で採掘、岩石をどける
SPD : 採掘した石を美しく研磨する
WIZ : 鉱脈を読み解き、大物を探す
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●誰にも邪魔されずに
各個撃破、正面交渉、囮作戦、目眩し、襲撃回避。
カラスへの対応にも色々あれど、猟兵たちの努力の甲斐あって、ようやく坑道は静けさを取り戻した。
後は、宝玉蝶を誘き寄せて一羽残らず倒すのみ。
その為にも、まずは魂灯る鉱石を好きなだけ掘り出して、より美しく光を放つよう、綺麗に磨き上げると良いだろう。
任務が終わったら鉱石は自由に持ち帰れるので、好きに加工してくれても構わない(アイテム発行はありません)。
淡く青白い光を宿す『魂灯る鉱石』。
傍目には粗方掘りつくされたように見える坑道だが、まだまだ彼らは鉱物の中で猟兵たちの訪れを待っている筈だ。
黒鵺・瑞樹
【SPD】
特に欲しいわけじゃないから、程々に採掘したら研磨するか。
まぁ研磨しても特に使用目的もないんだが。
後々アクセサリにしてもいいように手を抜かないようにするぐらいか。
丸みを帯びるような形にしていこう。
少なくとも五個は欲しい気がする。
自分でも何に使うのかわかってないけど、たぶん勘でこのぐらいって言ってる気がする。
さてこんだけやったんだ。宝玉蝶もやってきてほしいもんだ。
●その使い道
「さて……これだけあれば充分かな?」
特に自分が欲しいわけじゃない——というだけあって、黒鵺・瑞樹が採掘した『魂灯る鉱石』の量は、本人の思惑通り程々であった。
「まぁ研磨しても特に使用目的もないんだが」
それでも、後々アクセサリにしてもいいように、決して手を抜かず磨き上げるつもりの瑞樹。
この辺りに彼の真面目な性格が窺える。
「少なくとも五個は欲しい気がする」
ノミとヤスリを器用に使って、宝飾品らしく丸みを帯びた形状へ削っていく。
(「自分でも何に使うのかわかってないけど、たぶん勘でこのぐらいって言ってる気がする」)
それは、魂灯る鉱石を後々誰かへ譲り渡す予感か、それとも誘き寄せられる宝玉蝶の頭数の予想か。
瑞樹自身判然としない勘に突き動かされながら、魂灯る鉱石を磨きに磨き抜いて、見事球状の裸石へ仕上げてみせた。
採掘場所の影響か揃って青白い光を宿す原石たちは神秘的で、数珠の玉にも使えそうな趣である。
「さてこんだけやったんだ。宝玉蝶もやってきてほしいもんだ」
魂灯る鉱石が淡い光を放射する様を眺めて、そろそろ戦闘態勢を整えるべきか、と気を引き締める瑞樹だ。
大成功
🔵🔵🔵
涼風・穹
『魂灯る鉱石』は粗方掘りつくされたともなると表層には無いだろうな
坑道がしっかりした造りなのか確認して、それなりに頑丈そうなら一気にいくか
《贋作者》でバズーカのような派手に爆発する類の重火器を作り出してその火力で一気に掘り進める
……周囲を確認しながらやるけど、万が一にも衝撃で坑道全体が崩れそうになったりすれば即座に脱出する
……これを人力で掘り進めたりしたならどれだけの労力が必要だったろうな…?
採掘用に使うダイナマイトが凄い発明で巨万の富を生んだというのも分かるぜ…
掘り進めていけば魂灯る鉱石もそのうち出てくるだろう
首尾よくそれなりの量が見付かれば《贋作者》で荷車を作成してありったけ持ち帰るとするさ
一方。
ドゴーーン……!!
坑道の最奥へ仕掛けた炸薬を、景気良く爆発させているのは涼風・穹。
「『魂灯る鉱石』は粗方掘りつくされた……ともなると、表層には無いだろうな」
そう見極めをつけると、坑道自体がしっかりした造りなのか確かめて、それなりに頑丈と判断した結果がコレである。
穹お得意の贋作者を用いて、バズーカ並みに派手な爆発を起こす重火器を作り出し、その火力で一気に掘り進めようと考えたのだ。
ドーン! ドーーン!!
(「……これを人力で掘り進めたりしたならどれだけの労力が必要だったろうな
……?」)
採掘用に使うダイナマイトが巨万の富を生むぐらい凄い発明とされたのも頷ける——と悦に入る穹だが。
砲弾で破壊した大量の鉱物の中に魂灯る鉱石が含まれていないかどうか、一つ一つ確認する作業もまた大変だと思うのは、果たして気のせいだろうか。
「首尾よくそれなりの量が見つかれば『贋作者』で荷車を作成して、ありったけ持ち帰るとするさ……」
とはいえ、荷車を引いて帰る必要があるぐらいの量を掘り出すと息巻く穹だけに、重火器使用に伴って細かい作業量が増大する事も、充分想定の範囲内なのかもしれない。
大成功
🔵🔵🔵
落浜・語
幾つか手に入ったし、これ以上はいいか。
自分で使い道があるわけではないし、とりあえずはおびき寄せることができる程度まで磨いて、あとはそれから考えよ。
あぁ、お帰りカラス。ありがとうな。
持ち歩いている巾着の中の菓子をカラスに与えつつ、自分は鉱石を磨いていく。
どの程度やればいいのかわからないんで、様子を見ながらやる。
にしても、手間のかかる相手だな…どちらも。
●石磨き
他方。
「幾つか手に入ったし、これ以上はいいか」
落浜・語もまた、瑞樹同様に控えめな採掘量で満足したらしく、早々と研磨作業へ移っていた。
「自分で使い道があるわけでもないし、とりあえずおびき寄せることができる程度まで磨いて、あとはそれから考えよ」
あくまで依頼の目的である宝玉蝶殲滅の作戦として、語は魂灯る鉱石の見た目を綺麗に整えていく。
「カァ?」
すると、カラスたちとの対話が終わったのか、大カラスが後ろから語の手元を覗き込んできた。
「あぁ、お帰りカラス。ありがとうな」
「カァ、カァ!」
語は巾着の中のお菓子をカラスに与える傍ら、鉱石の研磨も続ける。
「にしても、手間のかかる相手だな……どちらも」
至極穏やかな表情で零すからには、愚痴では無いのだろう。
カラスの面倒を見るのと同じぐらい楽しそうに、それでいて磨き過ぎぬよう細心の注意を払って、鉱石の面倒も見る語。
カラスが巾着の中の菓子を粗方食べ終わる頃には、魂灯る鉱石は淡く澄んだ光を放っていた。
それを見つめる語の瞳も、達成感に満ちて輝いている。
大成功
🔵🔵🔵
レムリア・クラウンハート
やっぱり、綺麗な物を物理的に戴くのが一番しっくり来るわ。
……でもこう、インパクトに欠けるわね。もうちょっと盛り上がりがないと動画にしにくいわ……
そうだ。宝玉蝶とやらもまだ現れないみたいだし、折角だからもっと綺麗で大きい奴を探してみようかしら。
この鉱石について検索して、坑道内のマッピングもして……どこでどれぐらい採れたか、も一度確認してみましょうか。
それらの情報を元に、大きな鉱脈がありそうな箇所を割り出し、そして掘る。完璧なプランだわ!
ふふっ、帰って活動報告の動画を編集するのが今から楽しみね。
●続編制作中
同じ頃。
「やっぱり、綺麗な物を物理的に戴くのが一番しっくり来るわ」
レムリア・クラウンハートは、先程撮り終えた『出没、怪盗クラウンハート~アックス&ウィザーズ編』を自分で見直していた。
「……でもこう、インパクトに欠けるわね。もうちょっと盛り上がりがないと動画にしにくいわ……」
編集するにも展開の起伏が少ないと感じて、途方に暮れるレムリア。
「そうだ。宝玉蝶とやらもまだ現れないみたいだし、折角だからもっと綺麗で大きい奴を探してみようかしら」
まだまだ時間はあるのだからもっと大きな鉱石を盗み出せば良いと思いついた。
まずは、魂灯る鉱石がどこでどれぐらいの量採れたのかもう一度確認すべく、酒場へ向かって駆け出す。
そして冒険者たちから得た情報を元に、羊皮紙へ手書きで坑道の地図をマッピング。大きな鉱脈がありそうな箇所を絞り込んで、いざ採掘開始。
「これぞ完璧なプランだわ! ……ぜーはー」
アックス&ウィザーズならではの方法——地道に足で集めた情報を頼りに、ようやく念願のツルハシを振るうレムリア。
ここまでで充分ドキュメンタリー動画が撮れそうなぐらい働いているという事には、幸か不幸か気づいていない。
「ふふっ、帰って活動報告の動画を編集するのが今から楽しみね」
大きな鉱脈を前に気合を入れる彼女が、穹の無慈悲な重火器によって鉱脈ごと吹っ飛ばされないよう祈るばかりである。
……それはそれで、予期せぬハプニングとして猟兵ならではの目玉にはなるかもしれないが。
大成功
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第3章 ボス戦
『宝玉蝶』
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POW : 育つ宝石
戦闘中に食べた【清らかな水】の量と質に応じて【宝石の輝きが増し】、戦闘力が増加する。戦闘終了後解除される。
SPD : 極彩色の鱗粉
自身が装備する【煌びやかな宝石の粒】をレベル×1個複製し、念力で全てばらばらに操作する。
WIZ : 秘宝の光
【眩い宝石の輝き】が命中した対象を高速治療するが、自身は疲労する。更に疲労すれば、複数同時の高速治療も可能。
👑11
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●不思議な輝き
猟兵たちが魂灯る鉱石の研磨を始めたのと時を同じくして。
鉱山の奥深くでも密やかな動きかあった。
美しくカットされた宝石のような翅を持つ蝶、宝玉蝶が、坑道を目指してか宙を漂い始めたのだ。
面積が大きな前翅は宝石のマーキーズ・カット、種類によって形がまちまちの後翅はペアシェイプ・カットに似ているものの、実際はどんなカットのダイヤよりもずっと複雑な光を放っている。
ある個体は希少なピンクダイヤモンドのような、愛らしくも冴えた輝きを。
ある個体はラピスラズリのような、深い海の中で凍てつく氷にも似た眩さを。
とても生き物とは思えぬ硬質な翅を広げ、淡くも美しい光を発して、ひらひらふわふわ羽ばたいてくる。
猟兵たちが掘り進める坑道から洩れる外の光を目指して。
彼らが手にする同族によく似た光へ吸い寄せられるように。
宝玉蝶たちは今、坑道へその姿を現す。
その類い稀なる美しさを、惜しげも無く外気に晒して。
だが、いかに綺麗でもかの者たちはオブリビオンに他ならない。
猟兵たちは宝玉蝶を1頭残らず仕留めるべく、坑道にて意気揚々と待ち構えているはずだ。
黒鵺・瑞樹
宝玉蝶をおびき寄せるためにも、磨いた鉱石は見えるところある方がいいんだろうか?
正直無くさないようにしまい込んでおきたいんだけど。
右手に胡、左手に本体を構え、UC剣刃一閃でよってきた蝶を片っ端から攻撃していく。
念のため【暗殺】【傷口をえぐる】でダメージ増狙い。
相手の攻撃は【第六感】と【見切り】で回避。
場合によっては本体のナイフで【盾受け】受け流し、そして【カウンダ―】叩き込む。
戦いに支障がない程度に宝玉蝶の観察はしておきたいな。
折角綺麗なんだし。
●対峙
坑道。
「宝玉蝶をおびき寄せるためにも、磨いた鉱石は見えるところある方がいいんだろうか?」
黒鵺・瑞樹は、せっかくピカピカに磨き上げた鉱石を戦闘中のドサクサで失くしては堪らないと対処に苦心していたが。
「正直無くさないようにしまい込んでおきたいんだけど」
そうしている間にも宝玉蝶の群れはこちらへ真っ直ぐ向かってきたため、安心して鉱石の玉を荷物へ仕舞う瑞樹。
「やっぱり見た目通りに硬いのだろうか」
右手に胡、左手に黒鵺を構えると、寄ってきた蝶を片っ端から斬りつけていく。
バキィッ!
丈夫なダガーやナイフの刃が翅と奏でた打撃音は、生物を斬ったとは到底思えぬ乾いた音。
それでも、宝石がそのまま巨大化したような翅が砕かれて細かな宝石の粒となり、光の粒子のように広く飛び散る様は、思わず目を奪われるぐらい綺麗で幻想的な光景だ。
硬い筈の石がまるで水のように翅の中を流動的に動いて見えるのも、宝玉蝶の持つ特性なのだろう。
「せっかく綺麗なんだし今のうちに観察しておこう」
瑞樹は、宝石の輝きを増した宝玉蝶の群れが
煌びやかな鱗粉を飛ばしてくるのへ、第六感を働かせて回避しつつ、避け損ねたものは盾受けの要領で黒鵺を使うと、
「ただ事務的に倒すのも勿体ないしね」
カウンターとばかりに流れるような剣戟を叩き込んだ。
翅を斬り裂かれて力尽きた数頭が、儚い光の余韻と共に、ひらひら地面へ墜落していく。
大成功
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レムリア・クラウンハート
話に聞いていた通り、幻想的で綺麗な蝶ね。
オブリビオンであることがとても残念だわ。そうでなければ、何匹か捕まえていたというのに……
ま、仕方ないわね。宝玉らしく、全部綺麗にカットしてあげるとしましょうか。
【グッドナイス・ブレイヴァー】を使用、ドローンを展開。
まずはカメラ目線で挨拶から……あーあー、マイクテストオッケー。
御機嫌よう、“後援者”の皆様方。
今宵は美しき宝玉の蝶達との、素敵な舞踏会の光景をお届けするわ。
私の華麗なステップと剣さばきから、どうか最後まで目を離さぬよう。
共闘・アドリブ歓迎よ。ネームバリュー効果で視聴者がたいりょ……失礼、何でもないわ。
一方。
「話に聞いていた通り、幻想的で綺麗な蝶ね」
レムリア・クラウンハートは、宝玉蝶の群れへ素直に見惚れながら、
「オブリビオンであることがとても残念だわ。そうでなければ、何匹か捕まえていたというのに……」
なかなかに大きな野望を語っていた。流石は大怪盗の発想である。
「ま、仕方ないわね。宝玉らしく、全部綺麗にカットしてあげるとしましょうか」
自信満々のレムリアが真っ先に手をつけるのは、自分の動画の撮影準備。
召喚した動画撮影ドローンを辺りへ飛ばしては、カメラ目線で挨拶から始める。
「……あーあー、マイクテストオッケー」
自分でも生配信映像を確かめつつ、レムリアは続けた。
「御機嫌よう、『後援者』の皆様方。今宵は美しき宝玉の蝶達との、素敵な舞踏会の光景をお届けするわ。私の華麗なステップと剣さばきから、どうか最後まで目を離さぬよう……」
別の世界で彼女の配信を楽しみにしている人々の為にも負けられない——宝玉蝶へダガーを構えたレムリアの瞳が真剣味を帯びる。
次の瞬間、動画視聴者の多くが画面の向こうで歓声を上げたに違いない。
——バキャッ!
レムリアがダガー片手に宙を舞った刹那、薄紫の巨大アメジストのような宝玉蝶の翅が、硬質な音を立てて盛大に砕け散ったのだから。
レムリアの剣捌きもさる事ながら、やはり宝玉蝶の翅がキラキラと光の雨のように舞い散る様は絵もいわれぬ美しさで、きっと動画の再生数を稼いでくれるだろう。
また、視聴者の応援によって強化されたダガーの斬れ味は鋭く、1頭の宝玉蝶へ高速治療する暇すら与えずに見事引導を渡したのだった。
大成功
🔵🔵🔵
源・ヨーコ
綺麗なバラには棘がある、とはよく言ったものっすねー。
ぜひお持ち帰りしたいんすけど、そういう訳にはいかないっすよね。残念極まりないっすが、やらしていただくっすよー。
〇POW
いかに硬そうに見えても、鉱物なら衝撃や熱に脆いんじゃないっすかね?
この鍛えた鉄拳に【ブレイズフレイム】で炎を纏わせ、[鎧砕き][怪力]で心気発勝! 核を狙いすましてぶち抜くっすよ!
●燃えよ鉄拳
同じ頃。
「綺麗なバラには棘がある、とはよく言ったものっすねー」
源・ヨーコ(鉄拳制裁・f13588)も、他の猟兵たちの例に漏れず、宝玉蝶の美しさへ感心していた。
「ぜひお持ち帰りしたいんすけど、そういう訳にはいかないっすよね。残念極まりないっすが、やらしていただくっすよー」
綺麗で可愛い物が好きな乙女心か、宝玉蝶を見て素直に瞳を輝かせるが、元よりさっぱりとした性格らしく、切り替えも早いヨーコ。
「いかに硬そうに見えても、鉱物なら衝撃や熱に脆いんじゃないっすかね?」
と、宝石特有の脆さに目をつけて、両の拳を打ち据えながら気合いを入れる。
その刹那、日頃から鍛えていて細かな傷の絶えない鉄拳から、拳全体を覆うように地獄の炎が噴出。
「心気発勝! さあ、核を狙いすましてぶち抜くっすよ!」
宝玉蝶を一撃で仕留めるべく、煌めく青い翅へ拳を力一杯減り込ませた。
バキャッ!!
果たして、紅蓮の炎によって翅が熱されて硬度を幾許か失っていたのか、それとも鍛え上げられたヨーコの拳は硬い岩石ですら余裕で貫くのか。
ともあれ宝玉蝶の翅は粉々に砕け散ると、光る鱗粉を儚く撒き散らしながら、地面へ墜落したのだった。
大成功
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落浜・語
これがオブリビオンじゃなきゃ、綺麗だな、で終われるんだが、そうも言ってられないな。
奥の方で発破してた人もいるみたいだし、多少は派手にやっても問題なさそうだな。数も多いし『人形行列』使って、纏めて吹っ飛ばしてしまおうか。
まぁ、坑道壊して他に迷惑かけるのもあれなんで、召喚する人形は必要最低限で。なるべく数の固まっているところに人形を集めて、蝶のほうで壊してくれなければ石でも投げて爆破。
反響凄そうだし、耳だけ塞いどいたほうがよさそうだな。
涼風・穹
【心情】
……魂灯る鉱石よりも宝玉蝶の方が金になりそうな気がする…
生きた宝石なんて名目で好事家にでも売り付ければ結構な額を出すんじゃないか…?
【戦闘】
《天駆》で空中を蹴って、空中での方向転換や移動速度の調整をする事で立体機動を行いながら宝玉蝶へと接近して『風牙』で斬ります
感覚としては空中にも足場があるみたいな感じか…
短時間でも三次元的に動けるなら飛んでいる相手とでも充分戦えそうだな
【戦闘後】
もし宝玉蝶の死体(残骸?)が残っていれば回収して、カラスにやられた歴戦の冒険者達がいる酒場へ向かい、採掘した魂灯る鉱石共々商人達へ高く売りつける
……最も、本当に上物と思える魂灯る鉱石は売らずに持ち帰るけどな…
●虫には発破を
「これがオブリビオンじゃなきゃ、綺麗だな、で終われるんだが、そうも言ってられないな」
落浜・語は、宝玉蝶の群れを前にして、神妙な面持ちで思案していた。
「奥の方で発破してた人もいるみたいだし、多少は派手にやっても問題なさそうだな」
いかに手早く数を減らすか考えた結果、『人形行列』を使って纏めて吹っ飛ばしてしまおうかと思い至る。
(「まぁ、坑道壊して他に迷惑かけるのもあれなんで」)
そうと決めれば、てきぱきと必要最低限の人形たちを喚び出す語。
宝玉蝶が固まって飛んでいる真下へ人形を集めて、まずは蝶の方から彼らを壊してくれるかと期待した。
「反響凄そうだし、耳だけ塞いどいたほうがよさそうだな」
語が耳を塞いだ瞬間。
ちゅどーん!!
思惑通りに宝玉蝶たちが人形へ向かって極彩色の鱗粉をせっせと振りかけてくれた為、人形らはその性能を遺憾なく発揮、ダメージを受けた事によって連鎖爆発した。
どーん! どーん!
人形1体が木っ端微塵に吹っ飛ぶ度に、宝玉蝶も爆風に煽られて無残に焼け焦げた翅を閃かせ、ふらふらと数頭が下へ落ちていく。
破裂音が響く毎に宝石の屑がキラキラと地面へ降り注ぐ様は、まるで高さのない打ち上げ花火のような趣である。
ともあれ、人形が全て消えて無くなる頃には、残り僅かな宝玉蝶も皆全滅している事だろう。
同じ頃。
「……魂灯る鉱石よりも宝玉蝶の方が金になりそうな気がする……」
涼風・穹が宝玉蝶へ抱いた感想は、彼らしい客観性と正直さが同居していた。
「生きた宝石なんて名目で好事家にでも売り付ければ結構な額を出すんじゃないか……?」
オブリビオンを生きたまま売りつけるのは夢物語でも、しっかりと引導を渡した後なら——穹は尚も考えを巡らせる。
さて、そんな穹が飛んでいる宝玉蝶相手に挑んだのは、あえての接近戦。
『天駆』を発動して空中を何度も蹴りつけ、方向転換や移動速度も調整しながら宝玉蝶へ肉薄。
「……本当に、空中にも足場があるみたいな感覚だな……」
初めての体験に妙な感慨を覚えつつ、眼前へ迫った宝玉蝶へ風牙で斬りかかった。
「短時間でも三次元的に動けるなら、飛んでいる相手とでも充分戦えそうだな」
返す刀で別の個体も斬り捨て、風牙を用いた近接戦闘の可能性が広がった事へ満足する穹。
その後は、他の猟兵たちが斬り伏せた宝玉蝶の残骸をせっせと回収すると、例の酒場へ向かって商人達に商談を持ちかけた。
荷車で運んできた採掘量の魂灯る鉱石もさる事ながら、やはり宝玉蝶の類い稀な美しさは、幾ら砕けているとはいえ商人たちを驚かせたようだ。
(「……尤も、本当に上物と思える魂灯る鉱石は売らずに持ち帰るけどな……」)
虫——しかもオブリビオンの死骸だろうと何であろうと、金になる物はしっかり換金する、穹の逞しさが垣間見えた瞬間であった。
大成功
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