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新年は売れ残りのケーキと共に?

#キマイラフューチャー


「出番よ、猟兵たち」
 コツ、とヒールの音高らかに。君たちの前に姿を現したのは赤髪の令嬢。
 リグレット・フェロウズ、フルネームでそう名乗ったグリモア猟兵は、傲然と腕を組み、

「クリスマスケーキが、正月を侵略しようとしているの。阻止なさい」

 いかにも人に命令するのに慣れた仕草で、前置きなくそう告げた。
 ……とはいえ、さすがに戸惑った猟兵たちの様子に、説明不足を悟ったのだろう。軽く眉根を上げ、説明を続ける。

「そうね。そもそも、クリスマスと、正月……そういう行事を知っている?」
 当然と答えるか、或いは実感がないか。出身世界とこれまでの生活により異なるだろう、それぞれの反応を見せる猟兵たちに、令嬢は一つ頷いて。
「私は、この単語にはまだあまり馴染みがないけれど。聖者の生誕の祝いと、新年の祝い。大抵の世界には、似たような行事があるものでしょうね。当然それは、旧人類とやらの文化が残る世界――キマイラフューチャーでも、同じことよ」

 ただ、キマイラフューチャーに残るそれは、時に現代同様の文化ではなく、キマイラナイズに奇妙なチューンが加わって、ごった煮の様相を呈している。そこに目を付けた……のか何なのか、『売れ残ったクリスマスケーキ怪人』なる怪人の軍団が町を襲い、キマイラたちが都市機能のあれこれを使って用意したおせち料理を、全てクリスマスケーキに置き換えてしまおうとしているのだという。
「あなたたちに頼みたいのは、まずはクリスマスケーキ怪人たちの殲滅。今回は別段、正しい正月やらクリスマスやらを教える、なんて工夫する必要はないわ。怪人が集まっている広場にあなたたちを送るから、武力で蹂躙しなさい」

 クリスマスケーキ怪人たちは、単体では大した脅威ではない。ただ、首領格が一体いるという。
「そのオブリビオンの名は、パスト・フォーサイス。今回クリスマスケーキ怪人たちを炊きつけたのもコイツね。と言っても、何かしら邪悪な狙いがあるというよりは……単にくだらない悪戯を仕掛けて回りたいだけの、愉快犯の類よ」
 パスト・フォーサイスは、手下を呼び出して攻撃したり、大鎌を振り回して攻撃してくる。ただ、危なくなると自分の人形を呼び出して時間を稼ぎ、逃げの一手に走るらしい。
「確実な殲滅を……と、言いたいところだけど」
 まあ、追い払えればそれはそれでいいわ、とリグレットは溜め息一つ。やたらにしぶとい割に、どうせ大した悪事を働くわけでもない。真面目に付き合うだけソン、という手合いのようだ。いわゆる道化、コメディリリーフ。思い切り地平線の彼方にぶっとばしてでもやれば、仮に生きていてもしばらくは懲りる……だろう。たぶん。

 説明は終わり。そう、愛想なく話を打ち切りかけたリグレットは、ふと思い出したように顔を上げ。
「ああ、そうだ。戦闘が終わったら、そのまま正月とやらを楽しんでくるといいわ」
 キマイラたちの正月飾りを手伝ったり、おせちを用意したり、正しい作法を教えたり。
 ……そういう名目を付けてはおくが、別段、難しく考えることもない。コタツに入って寝て過ごそうが、凧を上げようが、羽根つきしようが、正月の楽しみ方は色々だ。好きに過ごしてくればいい。もしかしたらキマイラフューチャーでは、先も言った通り、UDCアースのような世界のお正月とは異なる、奇妙な風習も残っているかもしれない。
 それこそ売れ残りのクリスマスケーキを食べたって、他の人のお祝いを邪魔さえしなければ、誰も怒りゃしないのである。いや、お腹壊さないかはともかく。

「これから、戦いも本格的になっていくでしょうし――新年くらいゆっくり骨を休めて、仲間と今年の抱負でも語り合ったらいいんじゃない」
 いかにも面倒そうな様子ながら、気遣いらしき言葉を口にする赤い令嬢。意外そうな視線に、ギロ、と睨み返して。さっさと行きなさいとばかり、リグレットは猟兵たちを転移させるのだった。


黒原
 正月は大抵寝て過ごします。黒原です。
 今回より、皆様の冒険をお手伝い致します。どうぞよろしくお願いします。

 1、2章はOPの通りですので、3章についての補足だけ。
 プレイング次第ですが、1月1日に3章に入りたいなという見通しで運営してまいります。
 お連れ様がいらっしゃる場合、相手のIDか【グループ名】を冒頭に記載して下さい。
 逆に一人で過ごしたい、人と絡みたくない、という場合も一言頂けると安心です。
 なお、リグレットは呼べば来ますが、特にお気遣いなく。
 未成年の飲酒など公序良俗に反する描写は描写できませんので、その辺りにはご注意を。

 では、良いお年を。
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第1章 集団戦 『売れ残ったクリスマスのケーキ怪人』

POW   :    恨みのローソク
【ケーキの飾りのロウソク 】が命中した対象を燃やす。放たれた【赤い】炎は、延焼分も含め自身が任意に消去可能。
SPD   :    ふかふかボディ
自身の肉体を【スポンジケーキ 】に変え、レベルmまで伸びる強い伸縮性と、任意の速度で戻る弾力性を付与する。
WIZ   :    生クリームブラスト
【両掌 】から【生クリーム】を放ち、【ベトベト感】により対象の動きを一時的に封じる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​
ウルリィケ・メルランドゥ
「人様の都合で作られて、売れ残って……なんて、ちょっと同情する部分はあるけど……それで他の誰かに迷惑かけてちゃね。さ、君たち!鬱憤晴らしに暴れるなら、このリィケさんが付き合ってあげる」

誰かに作られ、そのまま放置されていた存在として、ほんの少し同情する気持ちはあるものの、静かで平和なお正月が侵略されるのを見過ごすわけにはいかない
怪人の軍団相手に真正面から立ち向かって行きます

戦闘スタイルはバトンをメイン武装に新体操の動きを取り入れキックなども混じえた近距離格闘戦がメイン
日曜朝の武闘派魔法少女のようなイメージです

ユーベルコードは切り札として、強力そうな怪人が出現した場合や仲間がピンチの時に使用します


詩蒲・リクロウ
イベント物は、時期が過ぎれば売れ残ってしまう物です。
しかしっ!
それを、その売れ残った安売りを期待し、求める者も居るのです!
具体的には自分とか!!

このキマイラフューチャーであれ、残ったケーキを求め、必要とする者たちが居るはずなのです!
なので、おせちをケーキに変えるなんてせず、必要とされる場所に!

え、そんな場所あるかだって?

(疑問を抱いた相手に喰いつく触手をけしかける)
ありますよ、今ここに。


餌代嵩むんですよね、この子たち。

本当に、なんだか卑怯で、可愛そうですけど、せっかくのケーキ怪人です。
餌代を浮かせるべく、頑張って退治します。



●生クリームのケーキは当日中に食べた方がいいらしいよ
 広場を埋め尽くすほどの――ケーキ、ケーキ、ケーキ。半額シールの貼られた段ボールをゆりかご代わりに、『売れ残ったクリスマスケーキ怪人』たちはひしめきあい、口々に反・正月の叫びを上げていた。
「大体、なんだクリ、正月って! クリスマスはまだ終わってないクリ!」
「そうだクリ! だって、クリたちがまだ売れ残ってる!」
「クリたち、まだまだいけるクリ! 賞味期限と消費期限は違うんだクリ!」
「「「クーリクリクリ!」」」
 自分勝手な言い分と共に、笑い声(?)が唱和する。

「……いや、だからって、誰かに迷惑かけていい理由にはならないよね?」
「「「クリっ!?」」」
 子供を諭す姉のような口調に、怪人たちの視線が一斉に集まった先にあったのは――高台に佇み、新体操のようなバトンを手にした小柄な影。ウルリィケ・メルランドゥ(空走する蒸気娘:スカイマーチ・スチームドール・f04120)の呆れ顔だった。
「あのね、君たち。気持ちは分かるけど――」
「うるさい、お前に何が分かるクリ!」
 一体の怪人が叫び、両掌から生クリームを噴射する。べたべたとした白い粘液を、しかしウルリィケはくぐり抜けるようにかわし、跳ぶ。数mの高さを一跳びに、空を踊るように舞い降りて。
「――分かるよ」
 勢いのまま、両手を突き出した姿勢のままの怪人の鳩尾にバトンの先端を突き込み。
「誰かに作られたのに……そのまま放置されて」
 下がった顎を、肘でかち上げて。
「同情はする――けど! 静かで平和なお正月を侵略するなんて、許すわけにはいかないよ!」
 新体操のようなしなやかな動きでぐるりと体を回し、全体重を乗せた後ろ回し蹴り。高々と掲げられたすらりとした足を顔面を浴びた怪人は、悲鳴を上げることすら叶わず、数体の怪人を巻き込んで吹き飛んだ。

「え、エグっ……お前、子供の割に戦い方がなんかエグいクリ!」
「うるさいな! わたしは18歳だよっ!」
 殴打。撃沈。撃墜数プラス1。……とはいえ。
(「ちょーっと、数が多いかな……!」)
 素早く視線を左右に走らせれば、彼女は既に怪人に囲まれつつあった。突っ込んだのは早計だっただろうか。足の裏に残る生クリームの不快な感触に顔をしかめながら、
「鬱憤晴らしに暴れるなら、このリィケさんが付き合ってあげる」
 それでも、気丈に胸を張る。そして――猟兵は一人ではない。

「そう、彼女の言う通りです!」
 包囲を破るように割り込み、手近な怪人に大きな拳を叩きつける影――180cmを超す巨体を金属鎧に包み、さらに蓑を羽織った異様な風体のシャーマンズゴースト。詩蒲・リクロウ(見習い剣士・f02986)だ。
「それに、あなたたちは間違っている。確かにイベント物は、時期が過ぎれば売れ残ってしまうものです……しかしっ!」
「クリ!?」
 一体何を言うのか。看過できない言葉に、ほんのわずかな間だが怪人たちの動きが止まり、視線が集まる。
「それを、その売れ残った安売りを期待し、求める者も居るのです!」
 具体的には自分とか。
「このキマイラフューチャーであれ、残ったケーキを求め、必要とする者たちが居るはずなのです……!」
「こいつ……! 無責任なこと言うなクリ! 一体どこにそんな奴がいるって――」
「今、なんて?」
「はぁ!? ……いや、だから、どこにそんな……」
 ぐり、と。リクロウの首が、斜めに傾ぐ。人間の目には無機質にも見える、ルビーのような赤い瞳が、じっと怪人を見つめて。

「抱いてくれましたね、疑問」
「え」

 ――ずるり。 

 謎を喰らう触手の群れ。どこからともなく現れた不気味な触手が、糧となる疑問の感情を求め、次々と怪人たちに絡みつき。
「えっ、ちょっ、待っ……クリーーー!?」
 ごりっ、ばきん、ぐちょ、むしゃり、むしゃり。
(「うーん、助かりました。……餌代嵩むんですよね、この子たち」)
 のほほんとした様子で惨状を見つめ続ける、リクロウの赤い瞳。売れ残ったはずのケーキ怪人も、必要とする者のところに辿り着き、美味しく頂かれ、さぞ本望だったことだろう。触手たちが味わっているのは、残念ながらその甘味ではなかったようだが。

「あ、あの……ありがとう。大丈夫?」
 2人の奮闘により近くの怪人の悲鳴が止んだ頃、おずおずと、リクロウの大きな背中に声をかけるウルリィケ。巨体はゆっくりと振り向き、その、鳥のような顔を近付けて――
「はいっ、もちろん! あなたも無事で良かったです!」
「……う、うん……。じゃあ、次、行こっか」
 頷く蒸気娘は、ちょっと引き気味だった。おかしいね、こんなに人懐っこい笑顔なのに。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

夜桜・雪風
新年に向けて在庫は処分していきましょうね。
たくさんいる敵を破壊し尽くしていいなんて素敵ですね。

ケーキは大好きですが流石にクリスマスケーキは日数が経ってますし、
そろそろ半額でも食べたくないですね。
かわいそうですが、みなさんがお腹を壊さずに年越しできるようにバラバラになって貰います。

【高速詠唱】でユーベルコードを放ちますね。
もちろん【全力魔法】です。【範囲攻撃】でまとめて処分ですね。
時間が経ってパサパサになってそうですが、
まだ柔らかそうなので【鎧無視攻撃】が効果高そうです。

私のやんちゃな魔道書たち、鈴蘭の花びらとなって敵を粉砕しなさい。

【2回攻撃】で敵をたくさん破壊しましょう。
楽しくて素敵です。


浅葱・シアラ
クリスマスとお正月。えへへ、懐かしいな
お父さんとお母さんがね、クリスマスにはいつもシアにケーキ作ってくれたの
お正月にはおせち。
えへ……だから、季節感って大事、クリスマスケーキは、お正月に持ってっちゃダメ、だよ、売れ残りは悲しいけれどね

街の人に迷惑をかける悪いクリスマスケーキ怪人さん
シアがお仕置きしちゃうよ!


使うユーベルコードは「黄金の地獄」
怪人さんの頭に立ってる蝋燭に向かって、シアの中に眠る黄金色の地獄の炎を呼び起こして、勢いよく放つよ
属性攻撃で強化した黄金の炎でその蝋燭、金色に燃やしてあげる!


エギーユ・シュマン
新しい一年を迎えるために準備してるおせちをケーキに変えるなんてとんでもないっすね
そもそも売れ残ったケーキがあるなら言ってくれればよかったっす
おせちもケーキも、美味しく食べてもらうのが一番の幸せのはずっすから

怪人……っていうかケーキっすよねあれ! ケーキっすよね!
今日はケーキ狩りっす! おなかいっぱい食べるっすよ!

狩猟者の本能でケーキ狩りをするっす
スポンジケーキはかぶりついて食べるっす。ふかふかっす
生クリームはスプーン……じゃ量が多そうっすからやっぱりかぶりついて食べるっす。甘くて幸せっす

あちきがちゃんと美味しく食べるから、逃げないで欲しいっすよ
ここにはケーキが嫌いな人なんていないっすから、ね?



●花畑を舞う蝶とはらぺこ
「……素敵ですね」
 柔らかな微笑、分厚い数冊の魔導書を小脇に抱えた落ち着いた物腰。女性らしい、それでいてすらりとした長身の肢体を包むのは落ち着いたモスグリーンと、白のロングスカート。済み切った青い瞳の奥に――

「たくさんいる敵を、破壊し尽していいなんて」

 ――その容姿にまるで似合わぬ、生来の破壊衝動を秘めて。物騒な囁きと共に、夜桜・雪風(まったりデイズ・f00936)は前に出た。
 色めき立つ怪人たちに顔を向け。
「私も、ケーキは大好きですよ」
「な、なら、お前も食べるクリ! ケーキは幾らでもあるクリよ!」
「賞味期限切れじゃないですか」
 ばっさりである。小さく、溜め息とも言えない吐息を漏らしながら、雪風はぱらぱらと魔導書の1冊を捲り。
「流石に、クリスマスケーキは日数が経ってますし……そろそろ半額でも食べたくないんです。だから、可哀想ですけど、みなさんがお腹を壊さずに年越しできるように」
 
 ――バラバラにしてあげます。

 続く言葉と、精霊に語り掛ける呪文が重なって聞こえたのは、その卓越した高速詠唱の技術故か。瞬きの間に魔導書たちは鈴蘭の花びらに姿を変えて、怪人たちを薙ぎ払う。
「く、クリーーー!?」
 重ねる呪文は、魔力を全力で、連続で。連続して吹き荒れる魔術の花嵐に、悲鳴を上げて吹き飛び、逃げ惑う怪人たち。
 空高々と跳ね上げられた一体の怪人を見つめながら……知ってか知らずか。雪風の口端は少しずつ釣り上がっていく。白い頬を紅潮させ、先程よりも熱を帯びた吐息を漏らし。

(「あぁ――たのしくて、すてき」)

「って、ちょーっと待ったーー! っす!」
「……あら?」


 ふさふさとした尻尾を揺らし、真っ赤なケープを風になびかせ。狩猟用のロング・ボウを片手に、人狼の射手、エギーユ・シュマン(はらぺこ狩人・f05780)はキマイラフューチャーの未来的な街並みを駆け抜ける。生まれ育った森を離れて幾星霜、まるで正反対の環境にあっても、その健脚は健在だ。
 ととっと地を蹴り壁を蹴り、大きく跳躍。矢筒から引き抜いた矢を2本まとめて弓につがえ、金髪の女性――雪風の背後に忍び寄ろうとしていた2体の怪人を同時に射ち抜きながら、慌てて制止の声をかける。ダメだ、彼女の戦い方は自分にとって都合が悪い。
 だって、
「そんなにドカンドカンしたら、食べるところがなくなるじゃないっすか!」
「え、食べるんですか?」
 驚いた様子の雪風に構わず、足を止めずに駆け回りながら、彼女の死角を補うように射つ、射つ、射つ。一発当てても油断しないのが狩猟のコツだ。生命力に溢れた食材は、矢の1本では止められない、止まらない。各地で美味しい物を食べ歩いてきたエギーユは、それを誰より知っていた。
 あの怪人食べたいっす! という気持ちを隠しもしない狩人に毒気を抜かれたのか、雪風も少しばかり魔法を加減し始めてくれているように見えた。その姿に満足して一つ頷き、エギーユは一際大きく地を蹴り、高々と宙を舞う。
 つがえるは、今日用意した中でも飛び切り出来の良い、特別な矢。
「逃げないで欲しいっすよ! 今日のごはんは――」
 放つユーベルコードの名は、『狩猟者の本能』。つまり言い換えれば、おなかぐーぐーぺっこぺこ。動き過ぎてそろそろ耐え難い空腹感と、あの頭美味しそうっす! という仮にも人型の生物に向けていいのか危ぶまれる食欲が、ぎりぎりと引き絞る矢に異常な力を込めていき。
「――クリスマスケーキで、決まりっすから!」

 射ち抜く。
 見事、既に大分逃げ腰になっていた怪人の背を射ち抜いた矢に、未だ宙を舞うエギーユもにっこり。今日見た中で、あれが一番生きの良いケーキだ。彼女の狩猟者の本能がそう告げていた。

「……って、ん?」

 空中で逆さまになった、エギーユのフードから。ぽろりと、青い何かが零れ落ちた。


 ――浅葱・シアラ(黄金纏う紫光蝶・f04820)は、夢を見ていた。

 毎年、お母さんとお父さんが作ってくれたクリスマスケーキ。一度、私が変なこと言ったせいで、どっちがケーキを作るか喧嘩になっちゃったこともあったっけ。
 あの時、お母さんが作ってくれたケーキは、和菓子風。練り切りで作ったサンタさんは、付けヒゲ以外はお父さんそっくりで。
 あの時、お父さんが作ってくれたケーキは、お父さんと同じくらい可愛らしくて、チョコでお母さんと私の顔が描いてあった。
 ほんとに喧嘩してるのかな、なんて。思わず、家族みんなで笑っちゃったんだ。

 クリスマスには、みんなの大事な思い出がこもってる。
 けど、それはお正月だって同じことだ。
 売れ残りは悲しいことだけど、街の人に迷惑をかける悪い怪人さんは……。

 ……。……えっ、怪人さん?

 疑問を感じ、ぱち、と目を開けた瞬間。
「ひ、ひぅぅっ……!?」
「うわっ、い、いつの間に入ってたっすか!?」
 エギーユのフードから放り出されたフェアリーは、空中でくるくる縦に回りながら悲鳴を上げた。実は、突っ込んでいく狩人の背中を守ろうとくっついてきたはいいが、予想外に激しい動きに、フードの中で目を回していたのである。
 なんとかバランスを取り、蝶のような輝く翅を小刻みに羽ばたかせ。ふるふると青い髪を振って、目の前の怪人に向き直り。
「あ、赤ずきん、さん! ……後ろは、任せて!」
 人見知りの癖を抑え込み、構えた剣の先に力を集中した。父から受け継ぐ、血潮の中の地獄の炎。母から受け継ぐ、魂に帯びた黄金の光。二つの力を束ね、タクトのように剣をかざせば、煌々と輝く黄金の炎が蝶のように軽やかに舞い飛んで、怪人たちの頭の蝋燭の炎を塗り替え、そのまま全身に燃え広がっていく。
「悪い怪人さんは……シアが、お仕置きしてあげる!」

 その様子を見たエギーユは、ふっと口元を緩めて地を蹴って。
「赤ずきん、じゃなくて。あちきはエギーユっすよ。エギーユ・シュマン! あと、できたら燃やし過ぎないで欲しいっす、食べるとこなくなるんで」
「……! ……シアは、浅葱・シアラだよ! ……えっ、食べるの?」

 ――舞い散る鈴蘭、蝶の妖精の炎。そして、2人を援護するように的確に放たれる狩人の矢。
 猟兵たちの攻勢に、怪人は着実にその数を減らしていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

天通・ジン
おせちとかクリスマスとか聞いたことはあるけど、俺のスペースシップにはなかったな

まずはケーキ怪人戦だね
Xmasも終わってどこか物悲しく処分されていくケーキ……かわいそうだけど、放置するわけにもいかないよな

熱線銃で早撃ち勝負といこうか
銃の狙撃で味方を支援し、戦闘を優位に運べるよう試みるよ

で、相手がふかふかのケーキで伸びる攻撃をしてきたら、機敏に躱して見せようじゃないか。うまく回避に成功したら、伸ばされた部分めがけて熱線銃をユーベルコード【クイックドロウ】でお見舞いしよう

広場が燃えて被害が広がらないよう、敵の火攻撃はなるべく無効化したいな

特に誰かと一緒に参加はしてないけど、連携描写OK
アレンジ歓迎


コーディリア・アレキサンダ
…………緊張感に欠ける敵だね。
食べ物を粗末にするようで申し訳がないのだけれど……放っておくともっと粗末なことになりそうだ。
今年のうちに終わらせてもらうよ。



「――――とはいえ」

ボクの悪魔の中にケーキの彼……彼女? 一旦、彼としておく。
彼と同じような能力を持った悪魔がいるだろうか?
…………ああ、いる?
生クリームは液体だし水域の公爵がいける?
そう……。

釈然としないものがあるけれど、それなら教えてあげよう。
悪魔らしく、ね。


「全智の書」より、水域の公爵の権能を起動。
生クリームには生クリームを放って無効化を狙おうか。

……しかし、見るだけで胸焼けがしそうな光景だね。ボクは好きだけど。



●AからZまで、全てを識る者
「クリスマスケーキにおせち料理、か。聞いたことはあったけど……俺の船にはなかったな」
 ガチリと熱線銃の安全装置を解除しながら。自身と同じグリモア猟兵の言葉を思い出し、青年は独りごちる。
 名を、天通・ジン(AtoZ・f09859)。航宙集団第一中隊第二小隊デア・フィンケンに所属する、若きパイロットだ。
 星の海に生まれ落ち、宇宙を渡る船をゆりかごに育ったスペースノイドの彼にとり、現代日本の行事はまだ馴染みが薄いようだった。

 だが、そうなると聞き捨てならないのが、売れ残りクリスマスケーキ怪人である。アイデンティティを否定された……というよりは。
「クリスマスを知らない……クリ……!?」
「なんて可哀想な奴クリ……。ほら、持ってきたケーキやるから、一緒に食べるクリ!」
「きっと、一緒に祝ってくれる家族も友達もいなかったんだクリね……大丈夫、これからはクリたちが一緒クリ」
 なんか同情された。

「いや、そうじゃなくて……いいか、始めようぜ」
「クリーっ!?」
 情が移っても困る、そう呟きざまのクイックドロウ。10分の1秒にも満たない時間で抜き放たれた愛用の熱線銃が文字通りに火を吹き、反応する間もなく、怪人の一体の頭、もといケーキに穴を開けた。怪人たちはまさかの裏切りに色めき立つが、ジンはとうに戦闘体勢だ。
 伸縮自在の槍のように放たれたふかふかボディの拳を、アスファルトに身を投げ出して前転しながらかわし、起き上がりざま再びのクイックドロウ、そして連射。二条の熱線が、まず伸び切った腕を焼き切り、続けて怪人本体を撃ち倒す。追撃に放たれたクリームを飛び退ってかわすと、蝋燭の炎を放つと見た怪人を牽制して出鼻をくじき――
 ――だが、
「っち……!」
 数が多すぎる。全てを対策するには、彼一人では手が足りない。気付けば周囲は完全に怪人に囲まれ、一斉に放たれた生クリームの雨が降り注いだ。咄嗟に腕で顔を庇うが、そんなもので降りかかる全てを防ぎ切れるわけもなく――

「事象観測、測定」
 その時。少女の声が、響いた。


 ――時は、少し遡り。

 コーディリア・アレキサンダ(亡国の魔女・f00037)。銀髪赤瞳、そして見るからに日光を浴び慣れていなさそうな白い肌。仲間内では引きこもり、なんて揶揄されることもあるレトロな魔女が、物陰に退避して戦いの様子を伺っていた。ブラスターガンナーらしき青年の奮闘は見事なものだが、こうして距離を取って見てみれば、徐々に包囲の中に巻き込まれ、逃げ道を失っていくのが見て取れた。怪人に誘い込まれているというよりは、単純な、多勢に無勢という状態だろう。
 無論、彼女とて観光に来たわけではない。助力の手立てを考える――とはいえ。

「ケーキの彼……彼女? 一旦、彼としておくが」
 ふむ、と一つ頷き前置いて、誰にともなく、語りかける。
「ボクの悪魔の中に、彼と同じような能力を持った悪魔がいるだろうか?」
 当然、誰からも返答はない。けれど、何かが耳に入ったかのように、魔女はなぜか頭痛を堪えるような顔をして。
「…………ああ、いる?」
「生クリームは液体だし水域の公爵がいける?」
「そう……釈然としないものがあるけれど」
 矢継ぎ早に「会話」を続けながら、溜め息一つ。銀の指輪を嵌めた左の指先を、右の肩に触れさせると。つう、とそのまま左胸まで滑らせて。

「事象観測、測定――完了」
 その身に宿した『全智の書』(アルス・ノヴァ)を、起動する。


 『全智の書』は、対象のユーベルコードと同権能を持つ悪魔の力を借り、それを再現。相殺する魔法だ。そしてその精度は、事前に対象の力を観察することで跳ね上がる。
 生クリームの雨を、「水域の公爵」の力を借りて――もしかして甘党なのだろうか、などと下らないことを考えたりもする――再現し、相殺したのをはじめ。戦いを横で観察していたコーディリアが片端からケーキ怪人の攻撃を防げば、ジンの熱線銃が辺りの怪人を殲滅するのに、そう時間はかからなかった。

「しかし、ああ、なんというか」
 さっきはありがとう、と声をかけてきたジンに軽く首を振って返してから――魔女は、胡乱げな目を青年に向ける。ジンもまた、その視線に困ったような苦笑を浮かべ。
 攻撃は防いだとはいえ、その未来的なボディーアーマーも、短く切りそろえた明るい茶髪も、べたべたと――恐らくコーディリアが放ったものを含めた――生クリームにまみれていて。
「……見るだけで、胸焼けがしそうな光景だね」
 ボクは好きだけど、とは、ちょっと言えなかった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ミコトメモリ・メイクメモリア
そっか……キミ達にも色んな思いがあるんだね
心中察するよ
ところで売れ残りのケーキはどこにあるのかな?
うん、大したことじゃないんだけどこれだけ恨みつらみがあるってことはさぞかしたくさんあるんだろう?
いや、いいんだ、わかってる。その無念はボクがはらしてあげるから、ほら。
出しなよ。ケーキを。そんな造形しててまさかないなんて言わないよね。

ボクにケーキを!!!よこせ!!!

あ、戦闘はユーベルコードで、見つめた相手を仲間の攻撃射線上にぽいっと転送させちゃうよ。争いは嫌いさ、ボクはケーキを食べたいだけなんだ


ジャガーノート・ジャック
(ザザッ)
聖夜を守る為に戦ったかと思えば、今度は聖夜の残滓を討ち取る為に戦うとは。
――いや、問題ない。どうあれ敵性存在は殲滅する。

(ザザッ)
判定にはSPDを用いる。
使用UC:『Craft: Bomb』。
生成爆発物は『凍結弾』。

伸縮性も弾力性も凍結して仕舞えば無為に化すと判断する。

可能な限り複数体を纏めて狙える様な位置を狙い投下(使用技能:『スナイパー』 + 『なぎ払い』)。
――本機は敵の伸縮性・弾力性を無力化する事に尽力するとし
撃破そのものは他猟兵に任せるものとする。

本機の行動指針は以上、実行に移る。オーヴァ。
(ザザッ)


ミーユイ・ロッソカステル
……あの女の指図で動くのは気が乗らないのだけれど、ね。

はぁ、と溜め息をついて、戦場へと。

【wiz判定】

品質に違いはないだとか、ケーキ自体に罪はないだとか、御託はどうでもいいのだけれど。
……私、売れ残りを買う趣味はないの。貧乏臭い。

などと挑発して、自身のユーベルコードたる歌「夜との戦い 第3番」を歌いましょう。

歌によって私を敵視した相手を……なんて発動条件ではあるけれど。
まあ、あれだけ挑発すれば存分に敵視してくれるでしょ。
……別に、偽らざる本音なのは間違いないけれど、ね。


月輪・美月
売れ残ったケーキ達……怪人になるほど未練があったのでしょうね、同情する所はありますが

恋人の居ないこの身に、お正月のこない、永遠のクリスマスは辛すぎる……さっさと片付けて、お正月はこたつでのんびりさせて貰いますよ

僕の影で作った狼さんでよければ、その余ったケーキ全て喰らいつくして差し上げましょう

さあさあ、おいでませ、僕の狼さん、その誇り高き牙で、哀れなケーキ達を喰らいつくせ

はい、ご馳走様でした。次の人生……ケーキ生は売れ残らないように祈っていますよ

【影によって作った巨大な狼で、敵を飲み込み殲滅する】
セリフの追加、他キャラとの連携など、大歓迎です



●プリンセスのお望みのまま
(「あの女の指図で動くのは気が乗らないのだけれど、ね」)
 浮かぶのはいけ好かないグリモア猟兵の顔。とはいえ、そういうわけにもいかない。溜め息を付き、怪人たちからよく見える高台に進み出るのはダンピールの令嬢だ。ミーユイ・ロッソカステル(微睡みのプリエステス・f00401)は、耐え難い眠気を払うように、艶のあるリップのような赤い髪を透き通るほど白い指先で梳き、けだるげに口を開く。
「――品質に違いはないだとか、ケーキ自体に罪はないだとか、御託はどうでもいいのだけれど」
 風になびく、鮮血のような紅。そして、歌うように涼やかな……それでいて誘うように艷やかな甘い声に、怪人たちの視線が集まって。

「私、売れ残りを買う趣味はないの。貧乏臭い」

 ビシリ。お貴族様発言に、一瞬で空気が凍りつき――
「言ったな、クリ!」
「言ってはならんことを、クリー!」
(「……堪え性が、ないのね!」)
 瞬時に激昂した怪人たちが次々に放つ生クリームの雨に、内心、舌打ち。ミーユイの狙いは、この後に続く歌で敵意を集めることだった。歌い出す前にここまで集中攻撃されては効果は半減だ。とはいえ、簡単に白濁塗れになって衆目を喜ばせてやる気もない。慌てて――と、見た目には思わせないのが貴種たる振る舞いであり、あくまで優雅に――唇を開き――。

 空から爆弾の雨が降り注ぎ、生クリームを消し飛ばした。

「…………え?」
 どかどかと響き続ける轟音に、ぽかんと、はしたなくも小さく口を開いて驚きの声を漏らしてしまう。その時、赤の歌姫の背中から、ひょっこりと姿を現したのは――
「……姫様?」
「やあ、姫様だよ。あ、続けていいよ、そのまま引き付けて。ううん、惹き付けて、かな?」
 紡がれた呼称に機嫌良く胸を張る、ミコトメモリ・メイクメモリア(ポンコツプリンセス・f00040)。ミーユイとはまた別の意味で華のある、そして人の上に立つことに慣れた貴族の、否、王族の娘。現在も猟兵たちの集う一つの国を暫定的に治める、名実共の「お姫様」だった。
「……続けるのは、構わないけれど」
 今も降り続く爆弾の雨は、一体何なのか。爆音に眉を顰めて説明を求めるミーユイの視線に応えるように、ミコトメモリは、その小さな手に似つかわしくない無骨な通信機を取り出した。さらりと、腰どころか足元まで伸びる髪を軽く払うと、形の良い耳に押し当てて。
「うん、いい感じ。撹乱を続けて。凍結弾への切り替えタイミングは指示するからさ。――――オーヴァ」

 ザザッ。


 ――ザザッ。

「Wilco. 作戦行動を続行する。オーヴァ」
 姫君の通信に応じるは、黒豹を模した機械の鎧を纏う異形の影。
 ジャガーノート・ジャック(オーバーキル・f02381)が狙撃ポイントに選んだのは、隣のビルの屋上であった。
 爆弾――とミーユイの目には映っていたが、実際のところは榴弾というのが正確だ。各種の擲弾を生成するユーベルコード『Craft: Bomb』によって次々と生み出した爆発物を、時に目視で、時に無線の指示に従い、追加兵装のスロウアーから射出、怪人の群れの中に投下していく。
 スナイパーが十全の役割を果たすためには、スポッターが必要だ。本来のそれとは違えど、着弾地点を間近で確認するミコトメモリの指示を受けることによって、その援護は飛躍的に効果を増していた。
(「しかし。聖夜を守る為に戦ったかと思えば、今度は聖夜の残滓を討ち取る為に戦うとは」)
 一時、過る思いを、けれどジャガーノートは機械のように正確な援護射撃、ならぬ援護爆撃を続けながら無言で振り払う。
(「――問題はない。どうあれ、敵性存在は殲滅するだけだ」)
 雑念を払い、レンズ越しに観察する戦況は、既に決定的と言えるほど、猟兵に有利に進んでいた。

(「――――これは、歌か」)
 爆撃の中、離れたこの場所にさえ届く歌声。それは、ミーユイの歌う『夜との闘い 第3番(ケンプファー・ナハト)』。
 美しくも勇ましいその曲調に怪人たちが敵意を向ける毎に、闇――否、「夜」が戦場を侵食し、星々から放たれる光と熱の奔流が怪人を焼き尽くすのが見えた。
 「夜」から逃れた怪人を爆撃で誘導しつつ、時に凍結弾でスポンジケーキ化を妨害。戦場を俯瞰し、前線からの指示まである以上、それは簡単な仕事だとすら言えた。
 いつしか、戦場の誰もが――電子の海に生まれたジャガーノートですらも歌声に聞き入りかけるほどに、歌が戦場を支配する頃には。怪人どもは見る間に数を減らしていき……変化に気付いたのは、その時だった。
「戦場から離脱する敵影がある。オーヴァ」
 通信機からは、「大丈夫、計算済みだよ。オーヴァ」とだけ、返事があった。


「や、やってられるかクリー!」
「戦略的撤退クリ! まずはあの中クリ!」
 赤の歌姫はカウンター狙い。爆撃は空から絶えず降ってきて、白の姫君はサポートに徹している。
 となれば、「屋根の下に隠れる」のは当然の発想だ。そもそもケーキ怪人たちの目的は正月の打倒であり、猟兵ではないのだから。
 彼らが目指したのは、ビル。いわばジャガーノートの足元であった。
 ミーユイの歌が地上に作り出した星空から逃れるように、闇に包まれたビルの扉を蹴り開けて――。
「――貴方たちには、同情するところはありますが」
「「クリっ!?」」
 瞬間。ビルの暗がりの中に、突然闇を切り取ったように「白」が浮かび上がった。
 月輪・美月(月を覆う黒影・f01229)。誇り高き黒き2頭の人狼の間に生まれた、純白の影狼である。
 彼は、星空よりもなお昏い、夜闇の影をこそ友とする。ぱちりと指を鳴らし、おいでませ、と囁けば、闇の中から黒い巨大な影の狼が起き上がり、次々と怪人に食らいついた。反撃に放たれる蝋燭の炎を物ともせず、ぞぶり、ぞぶりとケーキ状の頭部を食い尽くしていく。
 美月は、その怜悧な金瞳に、悲鳴を上げてその牙から逃げ回る怪人たちの姿を映し――そして、遠目にビル内の様子を伺うミーユイの姿をちらっと見てから。
「正月の来ない、永遠のクリスマスは――恋人の居ないこの身には、辛すぎる」
 ふぁさ、と前髪を指先で払い。見栄を切ってみせた。
「…………………………」

「――危険な役割を任せてしまいましたね。大丈夫でしたか、素敵なお嬢さん」
「え、えぇ……まぁ」
 怪人が粗方片付くと、ミーユイに歩み寄り声をかける美月。……つれない返事にも聞こえるが、微妙に二枚目に徹し切れなかった彼のセリフを聞き流してくれたのは、彼女なりの優しさだろう。あと、豊満な胸元にちらちら落ちる視線に気付かないフリをしてくれていることも。
 それにしても、
「……おや、僕に待ち伏せを押し付けていった姫様は?」
 美月の問いに。ミーユイは、ひらり、と手で示す。


 分からない、わからない、ワカラナイ。
 ついに最後の一体になってしまった売れ残り、改め、生き残りケーキ怪人は、自分がなぜ屋外にいるのか分からなかった。
 ビルの中で巨大な黒狼に押し倒されて死を覚悟したはずが、今、彼を踏みつけるのは――ミコトメモリ・メイクメモリア。先程から戦場をうろちょろしていた小柄な女だ。

「聞きたいことが、あってね」
「……な、何クリ……?」
 自分を見下ろす姫君の視線に圧され、思わず、会話に応じる。
「うん、大したことじゃないんだけど。これだけ恨みつらみがあるってことはさぞかしたくさんあるんだろう? ――売れ残りのケーキ」
「ケーキ」
「いや、いいんだ、わかってる。その無念はボクが晴らしてあげるから、ほら」
「まあ、その、すり替え用の……」
「出しなよ。ケーキを。そんな造形しててまさかないなんて言わないよね」
「ク、クリ」
「栗じゃない! ボクにケーキを!! よこせ!!!」

 説得開始、数分後。 
 ミコトメモリは、賞味期限切れのクリスマスケーキをたくさん手に入れた!
「よーし! あ、もういいよ、はい、食べちゃって」
 ぽいっと。引き寄せた時と同様、『記憶の欠片』越しに怪人を覗き見て、強制転移(テレポート)。美月の下へと送り込み、
「おっと……仰せのままに、姫様」
「結局!? じ、地獄に落ちろクリー!」
 影の狼が、最後の怪人を喰らい尽くす。
「はい、ご馳走様でした。次の人生……ケーキ生は売れ残らないように祈っていますよ」
 美月の言葉には、思わず苦笑して同意する者も多く。一件落着、とばかり、一息をついたかと思えば――。

「――ぎゃーっははは! もう終わったと思ってんじゃねえだろうなー!」
 新たなオブリビオンの声が、響く。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『パスト・フォーサイス』

POW   :    来い!俺様の手下どもっ!!質より量で押し潰せ!!
【相手している猟兵の10倍の数の雑魚キャラ】が現れ、協力してくれる。それは、自身からレベルの二乗m半径の範囲を移動できる。
SPD   :    おりゃおりゃおりゃおりゃおりゃおりゃおりゃ!!!
【武器を使った怒涛の連続攻撃】を発動する。超高速連続攻撃が可能だが、回避されても中止できない。
WIZ   :    俺様は逃げるから、後は任せたぞ!俺様ちゃん人形!
自身が戦闘で瀕死になると【逃げる時間稼ぎ用の巨大パスト君ぬいぐるみ】が召喚される。それは高い戦闘力を持ち、自身と同じ攻撃手段で戦う。
👑17
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秋冬・春子
「むっ……いったい誰!? まさか、新たなる敵の増援!?」
 とかなんかさっきまで戦ってた風を装いながら、戦闘に参加してみるわね!
 実際はお酒を飲んでいて遅刻したから、さっき漸く現場に辿り着いた事は内緒よ!
 片手には慌ててたからか武器じゃなくて酒瓶を持って来てるけど、気にしないで。
「今ここで、お正月を取り戻させて貰うわよ! そうして、二度とクリスマスなんて繰り返させない!」
 みたいに、若干、クリスマスへの恨みつらみを交えつつ、戦いを始めたいところ。お酒を飲みながら、恥を捨てて。

※キャラ同士の絡みやアドリブでの動き等、歓迎しております。


雪華・グレイシア
さっきのケーキたちの焼き回しだね。芸がないんじゃないかな、キミ
あとその下品な笑い声も聞くに堪えない

使用するユーベルコードは愛歌ー咆哮せよ霜の巨人ー
【歌唱】と共に霜の巨人を召喚して、召喚された雑魚キャラたちを凍らせながら叩き壊していこうか
ほら、雑魚キャラは雑に倒されるのがぴたりだろう?

来てみたはいいものの、ボクの欲しい物は持ってなさそうな輩だから、雑魚キャラの相手に専念して
親玉の相手は他の猟兵たちに任せるよ
ああいう品性のない輩と会話をするのは趣味ではないし、ね


レイラ・エインズワース
キミが首魁ってわけネ
見てるだけじゃ我慢できなかったってわけカナ

ここまで多いとこっちも数で相手しないとネ
ユーベルコードで呼び出した軍勢で敵集団を割って入って、味方ケルベロスの道を作るヨ
烏合の衆と指揮官つきの軍隊、どっちが有能か試してみル?
一丸になって動かして、孤立した雑魚から討ち取っていくネ
連続攻撃は回避優先
余裕があれば攻撃後の隙を狙ってみたいナ
ぬいぐるみが現れたら、寸断するように軍勢を動かして退路を塞いじゃうネ
もし、数が少なかったら解除して本体の私が攻撃しようカナ
過去の夢はここでおしまい
夢から覚めるじかんダヨ

絡み・アドリブ・台詞追加も歓迎ダヨ
好きに動かしてネ


作図・未来
こいつが今回の騒動の親玉と見て間違いなさそうかな。
皆が気分よく年を越す為だ、退治させてもらうよ。

僕は死者の舞踏で戦おう。
敵は集団戦をお望みらしい。数には数で勝負だ。
人数が多いなら舞台が映えるね。舞うように剣で斬りつけ、冷気と血によって舞台を美しく彩ろう。

ボスの相手自体は他の猟兵に任せるよ。適材適所というやつだね。
僕はその戦いを邪魔しようとする雑魚を止めることに専念する。
舞台の主役は、君たちじゃない。申し訳ないが、僕の霊と踊ってもらおう。

ただ、ボスが逃げようとした場合は霊たちで妨害はさせて貰う。
幸いにもこちらの数も多いからね。冷気の束縛でもなんでもいい。止まってもらうよ。

さあ、幕を下ろそう。


九十九曲・継宗
大きな害が無いとはいえ、人の迷惑になっているのは事実ですから……
少々痛い目にあってもらいましょうか。

何はともあれ近づかないと話になりませんが、少々邪魔者が多いようですね。
まずは周りから斬って捨てましょう。

多少数が多いとしても刃が通るのであれば問題ありません。
首、胴、脚……とにかく最小の動きで斬り捨てます。
と言っても、流石に全員の相手をしていては日が暮れますね。

隙を見て脚部の絡繰を起動。
装着した車輪で一気に親玉に接近し一閃。

これで首を落とせればいいですが、逃したとしても恐怖心は与えられますかね。
これでちょっとは大人しくなればいいのですが……



●クリスマスケーキ怪人、再び
「せっかく惨めな売れ残りどもに、最後に一花咲かせてやろうと思ったのによぉ! ひっでー奴らだな、猟兵!」
 ぐるぐると身の丈ほどの鎌を回し、煽るような声を上げるオブリビオン、パスト・フォーサイス。口振りの割には悔しげですらなく、猟兵たちの敵意の視線を楽しんでいるようにさえ見えた。

「はぁっ……はぁっ……いったい誰!? まさか、敵の増援!?」
 まず相対したのは、秋冬・春子(宇宙の流れ星・f01635)だ。彼女は息も絶え絶えの様子で、三十路が見えてきた割には美しい頬を赤く染め、誰何の声を上げる。
 ちなみに、息が荒いのは遅刻して今走ってきたところだからであり、
 顔が赤いのは遅刻して酒を飲んでいたからであり、
 彼女は遅刻してその辺で酒を飲んでいたので、増援も何もまだクリスマスケーキ怪人の顔を見ていない。
 なお、善良なる猟兵諸氏の誤解を招かないために補足しておくと、前哨戦での活躍が人の目に映らなかった猟兵が次の戦いで前に立つことはままあることであり、これはあくまで春子の自己申告である。

「ふん! 増援がお望みか? そうだよなぁ、苦労して倒した敵がまた出てきちゃ困るよなぁ――出てこい、俺様の手下どもっ!!」
 まさか相手が今来たばかりとは知らないパスト・フォーサイスが得意げに振るった鎌が、空を切る。切り裂かれた空間から呼び出されるのは――そう、売れ残りのクリスマスケーキ怪人だ。ぞろぞろ、ぞろぞろ。その影は尽きることなく――少なくとも数十、否、百は下るまい。

「これは……少々、邪魔者が多いようですね」
 刀の柄に手をかけ身を沈め、緊迫した声を上げる九十九曲・継宗(機巧童子・f07883)。まずは周りを切り伏せる――そう思っていた継宗だが、少々、数が多い。自身の刀と機構をどう組み合わせるか――僅かな思案に沈む彼の方を、ポンと叩く者があった。
 振り向けば、そこには――にっと明るい笑みを浮かべる白い士官服姿の女、春子。自身もグリモア猟兵であり、継宗の稼働年数のちょうど倍の齢を重ねてきた経験豊富な女は、彼を安心させるような笑みを浮かべ。
「大丈夫よ、少年。とりあえずは――」
「とりあえずは……?」
「お酒を飲んで落ち着きましょう」
「ええ……えっ?」
 一升瓶を取り出し、おもむろに口を付けた。

 ごっ。ごっ。ごっ……。

「ぷはァーっ!」

「あ、あの……?」
「……もう始めていいかクリ……?」
「あと、一気飲みは身体に悪いクリよ……」
 なぜか一緒になって困惑する継宗とクリスマスケーキ怪人たち。もはや身体の心配をされていた。
 集まる視線に、春子はゆっくりと顔を上げ……。

「…………よ」
「「「……クリ?」」」
「日本酒にクリスマスケーキは合わないのよぉっ!」
「「「クリーっ!?」」」

 据わった目をした春子は、怪人の大群の中に単身突っ込んでいく。「二度と、クリスマスなんて繰り返させない!」「一人寂しくお酒を飲み、目を覚ませば二日酔いに包まれた26日……そんな、悲しい女をもう生み出さないために……!」――漏れ聞こえる叫びに実感しか籠もっていないのは、きっと気の所為だ。
 なお、愛機のスクーターは酒瓶と間違えて置いてきてしまったし、飲酒運転になるので、武器はない。空になった酒瓶のフルスイング、そしてヤクザキックに、怪人は高々と宙を舞う。その様はまさに恥知らずの獣。秋冬・春子、28歳の冬であった。

「…………はっ」
 その様を呆然と見守っていた継宗も、我に返るや否や、愛刀を握り直し、続けて怪人たちに切り込んでいった。和洋折衷の着物の裾を翻し、狙うは首、胴、脚……とにかく最小の動きで、春子の突撃によって浮き足立った怪人を無力化していく。
「予想外のこともありましたが……刃が通るのであれば、問題ありません」
 キン、と軽い音と共に柄に刀を収め、崩れ落ちる怪人を背に呟きながら――視線は、機会を伺うように、敵の首魁の動向に向けて。


「な、なんだあいつクリ! 怖いクリ!」
「っていうか、先にいたはずのクリたちの仲間はどうしたクリ!? もう全滅クリ!?」
 秋冬・獣・春子の剣幕に浮き足立ち、早くも逃げ腰になり始める怪人たち。それを、

「――さっきのケーキたちの焼き回しだね。芸がないんじゃないかい」
 身も凍るような温度の囁きと共に、振り上げられた霜の巨人の足が、逃げ道を塞ぐように蹴散らした。身の丈3m近い霜の巨人の肩に腰掛けるのは、スカート姿の怪盗「少女」――雪華・グレイシア(アイシングファントムドール・f02682)だ。
 焼き回し、というだけあって、怪人たちは先ほどまで以上に歯応えがない。蹴り上げられれば易々と舞い上がり、凍てついたスポンジの身体は地面に落ちると共に砕け散り、虚空に消えていった。
「スポンジケーキだろうがなんだろうが、凍ってしまえば同じだね。……とはいえ」

 怪盗は、パスト・フォーサイスに怜悧な視線を向ける。オブリビオンは、思うように進まない戦況にイラついているのか、幼子のように地団太を踏み、当たり散らし始めてていた。
「……下品な姿だね。見るに堪えない」
 溜め息。当初は親玉狙いを考えていたグレイシアだが、ああも品のない相手と言葉を交わすのは趣味ではない。どうやら、「彼女」が奪うべき宝の類を持っているようにも見えないし。
「あちらは君たちに任せるよ、猟兵諸君。打ち漏らしてくれるなよ」
 その一言で思索を打ち切って。霜の巨人は、聖夜の残滓を蹴散らしていく。

 ――雑魚キャラは、雑に蹴散らされるのがお似合いだろう?

 そんな、面倒そうな怪盗の囁きと共に。


 怪盗の視線に気付くこともなく。手下の不甲斐ない有り様に、パスト・フォーサイスは地団太を踏みながら、檄を飛ばしていた。
「ええい、何を遊んでやがる……物量だ、物量! まとまれ! お前ら弱いんだから、質より量で押し潰せ! まだまだ数では有利だろ!」

「――そうは、」「いかないんだナ」
「……ああん!?」

 突然の声と――ひやりとした不吉な気配に、慌てて顔を上げるパスト・フォーサイス。そこには、彼の予想外の光景が広がっていた。

 左を見れば、手に手に剣を握った、無数の人型の霊――作図・未来(朝日の死者のタンツ・f00021)が呼び出した『死者の舞踏(ライヒェンタンツ)』。
 右を見れば、華美な武装に身を包んだ領主と、その近衛兵たち――レイラ・エインズワース(幻燈リアニメイター・f00284)の幻燈に照らし出された、『強欲なる領主の夢(リアニメイト・グリードロード)』。

 戦況が混乱する隙をついて2人の死霊術師の紡いだ魔術は、数だけならばもはや怪人の残党を上回るほどの亡霊を呼び起こし、包囲するように布陣していた。

「集団戦をお望みなんだろう? 数には数で勝負といこうか。それにしても――人数が多いと、舞台が映えるね。ああ、あの巨人も、とても良い絵だ。利用させてもらおうかな」
 劇作家のような口ぶりでオーブをかざす未来が操るのは、かつてこの地に眠った死者の霊だ。キマイラフューチャーというこの土地で、剣を握った兵士たちが眠ったのは、果たしてどれだけ昔のことか――。過ぎ去った時間の長さに未来が目を細める間にも、死霊たちは踊るように剣を振り、ケーキたちを追い詰めていく。
 彼らが剣を振るう度、ぞくりとするような不気味な冷気が広がって、近くで大暴れする霜の巨人のそれと相まって、みるみるうちに怪人の動きを鈍らせていった。
「舞台の主役は、君たちじゃない。申し訳ないが、僕の霊と踊ってもらおう」

「……うーん、お見事だネ。ボクの『リアニメイト』は、あそこまでの大群じゃあないケド」
 悪戯っぽく笑い、杖の先に下げたランタンをゆらりと揺らすレイラ。紫の輝きが映し出すのは、ハッピーエンドを目指して描かれる未来の舞台とは、似ているようでまるで違うものだ。彼女が描けるのは、百の年月を数えた幻燈がかつて照らした、過去にありし一つの夢に過ぎない。
「潰えた夢を数えヨウ。繁栄への願い、富への渇望――全てを手中に収めんとした領主の見た夢」
 それが過去の幻だとしても、今再び、夢は舞い戻る。
 不相応な夢を抱いた強欲なりし領主は、それでも確かに、人を率いる才を併せ持っていたのだろう。近衛兵は「群」として生き物のように動き、怪人たちを追い詰め、孤立した者から速やかに討ち取っていく。
「烏合の衆と指揮官つきの軍隊、どっちが有能か試してみル? ……って。もう、結論は出てるカナ」

 ――さあ、舞台の幕を下ろそうか。
 ――さあ、夢から覚めるじかんダヨ。


「くっそ、調子に乗りやがって! 分かってねーみたいだな! こんな雑魚共なんて、何回だって呼び出せばいいんだぜー!」
 イライラとした様子で叫び、再び大鎌を振り上げるパスト・フォーサイス。
 ――だが、同じ手を二度許す猟兵たちではなかった。

 最初は、からから、カタカタと、歯車が噛み合うように。
 次第に、ギャリギャリと、高速で地面を擦るように。
 奇妙な音に、訝しげにオブリビオンが顔を上げた時。
「流石に、こんなことを繰り返していては日が暮れますからね」
「うおっ……!?」
 異様な速度で懐に飛び込んだ継宗が、刀を抜き撃った。その脚部からは絡繰り仕掛けの車輪が展開し、しっかりと地面を噛んでいる。
 ビシリと。『風魚』と銘された刀を咄嗟に受け止めたパスト・フォーサイスの鎌に、ヒビが走った。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ウルリィケ・メルランドゥ
「本当は色々言いたいことが有ったけど……そうね、あなたみたいないたずらっ子には、ええ、お姉さんがおしおき、してあげましょう!!」

UC:スカイステッパーや技能:ダッシュ、ジャンプ、スライディングを駆使して相手の連撃を避けながらお仕置き(頭にげんこつ)を狙います

ただし相手が子供っぽい容姿やお姉さんらしい言い回しについて挑発して来た場合、自分へのダメージは気にせず接近し、ものすごいお仕置き(バトンでの一撃や絞め技)を狙うようになります

どちらの場合でも、相手が倒れたり反省した素振りを見せれば満足して隙を見せます
後者の場合、あまりにも捨て身or大人げない様子に他の参加者から止められてしまうかもしれません


ウェンディ・ロックビル
君は二つの許されざる罪を犯しました……。
ひとつっ!食べ物で遊んじゃいけません!
ふたつっ!クリスマスにまつわるモノで人を傷つけるなんて許しません!
よって!ニコラウス家諸法度にのっとり、君をこらしめます!

SPDで対決するよぉ。連続攻撃?そっちがそうくるならこっちだって考えがあるもんね!
敵の連続攻撃に「最速乱舞」で対抗するよー!
踊るように敵の攻撃を避けながら蹴り返ーす!僕のダンスについてこれるかなぁ?
上手くいくかはさておき、派手に動いて味方が何かする時間を稼げたらいいなー、って思ったりー。


ジャガーノート・ジャック
(ザザッ)――新たな敵性存在と思われる対象の音声を傍受。
討伐対象とし認定。
これより撃破に移る。

(ザザッ)
SPD使用。
使用UC:『Snipe Laser』。

武器の形状から敵の攻撃が近接攻撃に当たると推察。
敵の攻撃射程外からの狙撃で攻略を図る。

せっかく高台にいるのだ、場所はこのまま移動せず任務を継続。
技能『スナイパー』により命中精度の向上を実現。
友軍への『援護射撃』を実施し後方からの攻撃支援を担当する。
可能であれば『援護射撃』には
チャージビーム以外にも通常の熱線も使用、敵への牽制として放つものとする。

本機の行動指針は以上、実行に移る。オーヴァ。
(ザザッ)

*アドリブ等歓迎



●年の瀬の宙に舞う
「チックショー……! やっぱ雑魚はダメだな! いいぜ、望み通り俺様ちゃんが相手してやるよ!」
 苛立ちも極まった様子で継宗を大きく弾き返すと、ぐるぐると鎌を回し始めるオブリビオン、パスト・フォーサイス。小柄な少年のような容貌、道化た言動に反して、その佇まいには隙がない。その鎌の一撃をまともに受ければ、歴戦の猟兵であってもただでは済まないだろう。

「君は、二つの許されざる罪を犯しました」
 ざ、と足音を立て、恐れる様子もなくオブリビオンの前に立つ影が一つ。
 浅黒い肌に銀色の髪がよく映える、キマイラの少女――ウェンディ・ロックビル(能ある馴鹿は脚を隠す・f02706)だ。その顔には、余裕の――というよりも、どこかのんきな印象を与える、気楽な笑みを浮かべて。

「罪ぃ!? 知らねー、なッ!」
 振り下ろされた鎌をひらりとバク宙で避けざま、パストの顎に蹴りを叩き込む。
「ひとつ! 食べ物で遊んじゃいけません!」
「ガッ……こんの、テメー!」
「ふたつ! クリスマスにまつわるモノで人を傷つけた!」
 大して堪えた様子もなく今度は切り上げられた鎌を、空中で身を捻ってかわし、更に一蹴り、二蹴り。その生まれにまつわる思いからか、蹴り足には先程よりも力が籠もり。
「だーかーら! 知らねーって! 言ってんだろッ!」
 ぶぅんと一際力強く振り抜かれた鎌の――刃の側面に、ふわりと降り立って。
「よって――ニコラウス家諸法度にのっとり、君をこらしめます!」
 顔面に蹴り、一閃。


 すごいな、と。
 ウルリィケ・メルランドゥは、その戦闘に、思わず目を丸くした。

「おりゃおりゃおりゃおりゃおりゃおりゃおりゃーー!!!」
「ふふーん、おっそいおっそーい。僕のダンス、遠慮なく見ていってよー」
 とにかく、速いのだ。霞むほどの速さで振り回される大鎌。そしてそれ以上に目を引くのが、その刃をかいくぐりながら、空中を舞い踊るようにカウンターの蹴りを叩き込み続けるキマイラの少女だった。本人が先程口にしていたところに曰く、"三十六界最速" のスカイ・ダンス、『最速乱舞(ファストステップ・ファステスト)』。
 同じ空駆けるダンサーであるウルリィケの目から見ても、少なくとも速度という一点において、彼女は突出していた。

(「けど、いつまでも見てるわけにはいかないね。本当は色々言いたいことが有ったけど……」)
「あなたみたいないたずらっ子には――ええ、お姉さんがおしおき、してあげましょう!」
 気合を入れ直すような一声と共に、嵐のような高速戦闘に飛び込んでいく。まずは刃をかいくぐるようにスライディングで足払い。
「うおっ……うっぜー! 邪魔すんなよ!」
「そういうわけには、いかないでしょう!」
 苛立ったように振り下ろされる鎌を、不自然な体勢で飛び上がるようにかわす。秘訣はレオタード姿の足下を包む戦靴、『ジーヴェン・ガイスター』。大気を圧縮して機動力に変換し、アクロバティックな動きを可能にしていた。さらにユーベルコードを用いて空中でステップを刻み、敵の背後に回り込み、
 ――と、ここでウェンディの蹴りがパストの鼻っ面を直撃。思わずのけぞった頭部に、ゴチンとゲンコツを叩き込む。
「痛っづゥ……!」
「効くでしょう、リィケ姉さんのおしおきは」
 当てずっぽうで振り抜かれた鎌を、もう一度空を蹴って回避。空中ですれ違ったウェンディの、「お姉さん、やるねぇ」と言わんばかりの視線に「君もね」、と笑い返して。

 戦闘は、どんどんと加速する。闇雲に振り回される刃をかいくぐりながら、2人のスカイダンサーは、空を蹴り、時に地を蹴って、戦いを舞い続ける。無論、常に一方的な展開ではない。時には刃が肌をかすめ、少女たちにも無視できない傷が積み重なっていく。それでも、舞って、舞って、舞って――

 ――と。その時だった。
 ウェンディのトナカイの耳がピンと立ち、チーターの尾がぶわ、と逆立って。彼女は何かに気付いた様子で、一瞬、辺りを見渡すと。

「――伏せてっ!」
「え!? わ、分かったわっ」
 それまでののんびりとした口調からは珍しく、鋭く言い放ちながら跳び退るウェンディの姿に、咄嗟に姿勢を低くするウルリィケ。
 パスト・フォーサイスは、それに訝しげな顔をしながらも、チャンスを逃すものかと大鎌を振り上げて――


『――チャージ完了まで残り秒数、10秒』

 ケーキ怪人への支援爆撃を終えた後も、ジャガーノート・ジャックは変わらずビルの上に居座っていた。
 敵軍の増援と思われる対象の音声を傍受し、敵性存在と認定。確認した武器の形状から、攻撃が近接攻撃に当たると推察。近距離に移動するよりも、このまま援護を続けた方が有効だと判断したためだ。

『5』

 兵装を切り替え、屋上に設置した簡易的な砲座に、異形とも言えるほど巨大な右腕を固定。
 内蔵された熱線銃に、全エネルギーをチャージする。

『4』

 選択したユーべルコードは『Snipe Laser』。
 現在の出力において、有効射程は320メートル余り。長距離狙撃に十分とは言えずとも、この戦場において遠距離からの介入を実現するには十分だ。

『3』

 最大の問題は、言うまでもなく、友軍への誤射だ。近接戦闘を狙撃で援護する行為は、大きな危険を伴う。こうも激しい戦闘なら、尚更だ。
 その身を包む黒豹を模した兵装の機能を駆使して、眼下で繰り広げられる超高速戦闘をズームし、分析し、機を伺う。
 もしも、タイミングを誤れば最悪の結果も――。

『2』

 演じろ。兵士はしくじらない。機械はしくじらない。

『1』

 全エネルギーのチャージが終了する瞬間。
 キマイラの少女が何かを叫び、友軍の2人が敵から距離を取った。これなら、撃てる。確実に。
 察知された理由は分からない。先程と違い連携は取れておらず、観測装置の類も確認できなかったはずだ。或いはこれが、野生の勘というものか。獣の姿を模してはいても、ジャガーノートには到底理解できない概念だ。
 ただ。その行動に、称賛と、感謝と、そして何がしか理解不能な、しかし不快ではない思考のノイズを感じながら。

『――――照射』


 極太の熱線が。パスト・フォーサイスの鎌の先端を、消し飛ばした。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

ミコトメモリ・メイクメモリア
その時間稼ぎは「知って」いる――――――。
直接戦闘には不向きだからね、最後の最後、キミの切り札を潰すのに全力を注がせてもらおう。

キミが死に際にぬいぐるみを呼び出すことを、ボクは未来で知っている。
その出現位置に事前にもう一つのユーベルコード《時を刻む記憶の欠片》で攻撃。現れた瞬間、その可愛い頭を破壊してあげる。

他のみんなが頑張ってくれるなら、思い切り時間をかけて、力を込めた【全力魔法】を放つよ。
傍から見たら、逃げ回って戦ってないように見えるかも知れないけど。
お姫様は前に出てガツガツするものじゃないのさ――――ううん、ごめん嘘。本当はちょっと怖いんだ、守ってくれるかな?


コーディリア・アレキサンダ
ううん……。
いや、能力は間違いなく本物だ。侮ってはいけない。
彼にはしっかり責任を取ってもらわなければ。――ああ、今度のは彼でいいんだ。わかりやすくていい。

「とりあえずキミも少し食べていきなよ、生クリーム。たくさんあるから」

その辺りに散らばっている生クリームをさっきのように操って……動きを阻害してあげよう。
けしかけて来たのが彼なら後処理までやってくれないと、勿体ないからね。
しっかり味わってくれ。ボクはお腹いっぱい。小食なんだ。

敵が逃げ始めたら『縛り、支配するもの』を起動。
逃げる彼自身、偽物、どちらも鎖で縛ってしまえばそこでおしまいだ。

それじゃあ、後は任せたよ。


アレクシス・アルトマイア
はいはい!すこし遅れてしまいましたか?
いえいえ、本番はこれからですね。
正月飾りにお料理に、従者の仕事は盛りだくさん。

……あれ、まだ早いですか?
こほん。
それでは、まずは大掃除とまいりましょう。
【SPD】重視に効率的に。
皆さんのサポートを行います。
援護射撃に二回攻撃で、雑魚をサクサク倒しましょう。

直接狙われてしまったら、とても怖いですね。
手足を打ち抜いて回避したいですが、どなたか助けていただけないでしょうか。
ええ、その方が効率が良い戦いというものです

小さな子供といえど、容赦は致しませんよーっ
逃げていかれたら、せっかくですし射撃しましょう

…追ってる暇はありませんでしたね
さあ、準備に取り掛かりましょう




「うお――ウッソだろ!?」
 驚愕の声を上げながらも、そこからのパスト・フォーサイスの判断は早かった。
 懐から取り出したカプセルを地面に叩きつければボンと煙が弾け、膨れ上がる『巨大パスト君ぬいぐるみ』。
 それは囮というよりむしろ巨大な壁として、猟兵たちの視線を遮った。

 無論、黙って見逃す猟兵たちではない。
 酒瓶、斬撃、霜の巨人に死霊術。蹴撃、バトン、熱線銃。
 或いは、更に数種類。
 無数のユーベルコードがぬいぐるみに突き刺さり――

 ――大爆発した。

「ぎゃーっははは! 悪いな猟兵共! また遊ぼうぜぇ!」

 今度こそ完全に、猟兵たちの視界を塞ぐ轟音と閃光。
 耳障りな高笑いと共に、パスト・フォーサイスが逃げていく。
 歯噛みする猟兵たちだが、グリモア猟兵の言っていた通り、いったんその目論見を挫くことには成功したと言える。いささかの後味の悪さを残しながらも及第点、無事に新年を迎えることができたのだ――


 ――――以上が。
 ミコトメモリ・メイクメモリアの垣間見た、「未来の記憶の欠片」である。

●大掃除の終わり
「うお――ウッソだろ!?」
 驚愕の声を上げながらも、そこからのパスト・フォーサイスの判断は早かった。
 懐から取り出したカプセルを地面に叩きつけ――

「悪いけど、それは未来で『知って』るんだ」
 消えた。
 《未来を変じる時の欠片》――そして、《君を送る記憶の欠片》。ミコトメモリ自身の未来の記憶の欠片越しに覗き込んだカプセルを、手元にテレポート。そのたおやかな指先で優しく受け止める。
 衝撃を与えれば膨らみ、膨らんだ後に衝撃を与えれば爆発する。ならば、膨らむ前に奪い取るのが最善手――咄嗟の判断だったが、無事、発動を防ぐことに成功したようだ。
(「お姫様はぐいぐい前に出るもんじゃない。ただ全力を費やして、最後の最後、キミの切り札を潰すくらいが精一杯さ」)

「そんなのアリかよ、オイッ!?」
 驚愕の叫びを上げながらも、既に逃走の姿勢に入っているパスト・フォーサイス。こうなれば全力で走るまでと駆け出して、

 ――たぁん。

「はいはい! 少し遅れてしまいましたか? いえいえ、本番はこれからですね!」
 それではまずは大掃除!
 レースの目隠しに顔の半分を隠しながらも、隠れようもない花咲くように愛らしい笑顔を覗かせて。アレクシス・アルトマイア(夜天煌路・f02039)の無骨な銃が火を噴き、パスト・フォーサイスの膝頭を撃ち抜いた。

「いっ……てぇなー!」
「あら? 本当に頑丈なのですね! 小さな子供といえど、容赦は致しませんよーっ」
 たぁん、たぁん、たぁん。
 よろめき、飛び上がりながらも歩みを止めないオブリビオンの姿に、アレクシスはスカートを翻し、太腿のガンベルトから二挺目の拳銃を引き抜いた。両手に構えるフィア&スクリーム。間断なく放たれる正確極まりない射撃に、しかしそれでもパスト・フォーサイスの逃げ足は止まらない。
「むむむっ。少し威力が足りませんね――どなたか助けていただけないでしょうか!」
 射撃、暗殺、連撃。その特技は多岐に渡れども、彼女の本質は主の背後(ビハインド)に控え、付き従う者――すなわち従者(サーヴァント)だった。どうにも、自分が一番前に出るよりも、誰かの援護に回る方が肌に合っているのである。

「――では、その役はボクが担うとしよう」
 権能選択、限定状態での顕現――承諾確認。
 涼やかに言い放った唇から、歌うような呪文が響いた。レトロな魔女姿、コーディリア・アレキサンダの背後に光り輝く巨大な魔方陣が浮かび上がり、
「我身に宿る悪魔、毒剣の大蛇――敵を捕らえなさい」
 魔方陣の「向こう側」から姿を現した無数の鎖が、蛇のようにうねりながら、パスト・フォーサイスを縛り上げていく。無論、咄嗟に身を捻ってかわそうとするも、
「ふふっ。感謝いたしますっ」
 そのサポートこそ従者の本分。アレクシスの銃弾が的確に四肢を撃ち抜き、その動きを見事、牽制してみせた。

「う、おお……!? クソっ、離せ! 離せってんだよ!」
「まあ、そう焦ることはないさ。とりあえずキミも少し食べていきなよ、たくさんあるから」
「あぁ!? 食うって何を――」
「何って、決まっているじゃないか」

 ――生クリームさ。
 コーディリアは、先程借り受けたままの水域の公爵を活用し、おまけとばかり、辺りに広がる戦闘の痕跡、生クリームをパスト・フォーサイスの頭からぶちまける。

「わっ、ぷ! テメー、何すんだ!」
「だから、決まっているだろう? ……けしかけたのはキミなのだから。後始末も、キミが最後まで、責任を取るべきだ」

 そう。完全に拘束され、今やパスト・フォーサイスは足を止めている。
 そして、その隙を黙って見逃す猟兵たちではない。
 辺りはすっかり、完全に包囲され。

 それはまるで、ミコトメモリが幻視し、そして砕いた未来の焼き直し。
 無数のユーベルコードが、身代わりならぬパスト・フォーサイス自身に次々と突き刺さり――

「チックショォォォ! 覚えてやがれぇぇぇ!!」

 ――大爆発。


 これにて、一連の戦いは一件落着。
 「逃がしても仕方ない」とグリモア猟兵に言わしめたオブリビオンもきっちりと仕留めて百点満点、聖夜の残滓にまつわる騒動はここに幕を下ろした。

 そして。

「――これからが本番です。正月飾りにお料理に、仕事は盛りだくさん。さあ、準備に取り掛かりましょう!」
 ぱん、と手を叩き。アレクシスは笑顔で、そう呼びかけた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『年中行事は大事ですからね』

POW   :    行事に必要な力仕事を手伝う

SPD   :    行事に必要な飾りや道具をつくる

WIZ   :    行事に必要な作法等のお手伝いをする

👑11
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●あけましておめでとうございます
 こうして、キマイラフューチャーに、猟兵たちの守った、平和な新年が訪れる。
 グリモア猟兵も話していた通り、正月の過ごし方は色々だ。初日の出を見ても、3が日を寝て過ごしてもいい。
 正月になってからこの地を訪れたって構わないし、キマイラたちと触れ合うこともできる。もちろん、親しい誰かと過ごすのもいいだろう。

 それでは。
 あけまして、おめでとうございます。
浅葱・シアラ
月輪・美月(f01229)と一緒に楽しいお正月を送りたいなって
美月って呼ぶね

声掛けられちゃって思わず「ひうっ!」なんて悲鳴上げちゃうけど。
美月の顔見て思わず安心して笑顔浮かべっちゃった……えへへ……

シアはね、お父さんとお母さんとお雑煮を食べて、お年玉貰って、初詣行って……えへへ、楽しいんだ

今年の目標とか願い……
えへへ……シアも、美月と仲良く、したいな……もっともっと
美月の綺麗な顔、しっかり、恥ずかしがらずに見つめたいの

えへ……ねえ、美月、もしよかったらこの後……一緒に初詣、行こ?
なんて誘ってみたり
ひぅぅ……男の子誘うなんて恥ずかしい……


月輪・美月
浅葱・シアラ(f04820)さんと一緒に楽しいお正月を
シアラさんの事は、シアさんと呼んでいます

一人寂しくこたつにみかんでもと帰ろうとした所、可愛い友人の顔を見つけて正月を一緒に過ごす事を提案します

シアさんの所はお正月ってどんな感じでしたか?
僕の所は……今年一年の目標とか、こうあってほしい……といった願いを言ったり、とかですかね

そうですね、今の僕の願いは、シアさんともっと仲良くなれたらいいな……なんて

普段はちょっとナンパ少年な所もありますが、シアさん相手だと、誠実で素直な感じだと嬉しいです。胸とかは見たくなっても我慢しますから!!!



●チュートリアル的追加描写:辺りの雰囲気の参考にどうぞ
(「――――虚しい」)

 月輪・美月は、大仰に天を仰いだ。
 否、つまらない、というわけではないのだ。
 依頼の後、キマイラフューチャーの街並みを歩いてみれば、門松、餅つき、羽根つき遊び。思い思いに正月を楽しむキマイラや、時に猟兵らしき姿が見られた。現代日本の正月の街並みといえば、寒いだけで人がいないイメージだったが、キマイラたちが闊歩するこの世界の正月は、なかなかに楽しげで。それでいて社交的な彼らの輪に入っても、きっと楽しめるだろうと、そう思えはした。
 思えはした、けれど。

(「やっぱり、どうせなら美しい女性と過ごしたい……」)
 そういうことだった。ここでその辺の可愛い子を引っかけよう、とはならないのが、彼の善良というか、朴訥な部分ではある。
 まあ、せっかく来たのだし、今すぐ帰るのも勿体ない。話によれば、【その辺の建物にあるお正月関連のあれこれは使ってもいいし、食べてもいい】らしい。元々、惑星全てが都市リゾート化しているキマイラフューチャーのことだ。その辺、実に大らかのようで。

「一人寂しく、その辺のコタツでミカンでも食べて帰りますか……。……ん?」
 首を傾げたその先に。青い、小さな影が飛んでいた。

●2019/1/1 午前
「……シアさん?」
「ひうっ!?」
 後ろから突然かけられた声に、浅葱・シアラは飛び上がった。もとい、元々飛んではいるのだが。
 振り向けば、そこにいたのは、ここ最近ですっかり見慣れた顔だった。

「……美月! どうしたの?」
「いえ。のんびり、歩いていただけです。良ければご一緒しませんか?」
 安心したような笑顔を浮かべ、ひらひらと顔の近くまで飛んできたシアラ。彼女がこくこく嬉しそうに頷く姿に、美月もまた頬を緩める。少々ナンパなところがある美月と言えど、この光景を前に邪念は沸きにくい。……たぶん。そんなには。シアさんスタイル良いなぁ、とか思うことがないわけではないけれど。
 
「シアさんの所は、お正月ってどんな感じでしたか?」
「シアはね、お父さんとお母さんとお雑煮を食べて、お年玉貰って、初詣行って……えへへ、楽しいんだ。お母さんの振袖は綺麗で、お父さんの振袖は可愛くて……。美月は?」
 歩きながら問いかける美月に、楽しげに思い出を話すシアラ。一部おかしなところがあった気もするが、あまり大きな文化の違いはないようだ。そう頷いて、美月もまた思い出を振り返る顔をする。
「僕は、そうですね……」
 親戚が多いものだから、いつも集まって賑やかで……喉まで出かけたそんな言葉を、軽く呑み込んで。
「シアさんのところと、似たような感じだと思いますよ。あとは、今年一年の目標とか、こうあってほしい……といった願いを言ったり、とかですかね」
「今年の願い……」
「ええ。そうですね、今の僕の願いは、シアさんともっと仲良くなれたらいいな……なんて」
 にこりと甘い笑顔を浮かべ、小さな妖精に微笑みかける美月。その言葉に、シアラも、小さな頬をほんのりと赤く染めて。
「えへへ……シアも、美月と仲良く、したいな……もっともっと。美月の綺麗な顔、しっかり、恥ずかしがらずに見つめたいの」
「…………ありがとう、僕もですよ」
 よく言われます、なんて言いたげな涼しい顔をして笑う美月。ちょっぴり反応に間があったのは、ご愛敬だ。
「えへ……ねえ、美月、もしよかったらこの後……一緒に初詣、行こ?」
「ええ、もちろん。喜んで」
 内心の恥ずかしさを押し殺して誘うシアラに、もちろん美月は快諾。さて、キマイラフューチャーの神社、ちゃんと神社なのだろうか……そんなことを考えながら、お正月の街並みを歩いて――飛んで――いくのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ウルリィケ・メルランドゥ
パスト・フォーサイスの撃退後は怪人の被害を受けた場所の掃除などを行い大晦日までを過ごしました。

年が明ければ、キマイラフューチャーの街の中の一番高い所へユーベルコードと技能を駆使して跳び登り
そこで毛布とココア(決してコーヒーが飲めないわけではなく、そういう気分だった)で暖を取りながら、生まれて初めてみる初日の出が登ってくるのを待ちます
同じ場所へやってきた相手には友好的に対応

「おや、君もこの特等席から見物かい? わたしはウルリィケ……リィケ、とでも呼んでよ」

「これが……うん、単に日付が変わった以上に、実感というか感慨深いものがあるね」

「はじめまして世界、あけましておめでとう……これから、よろしく」


ジョン・ブラウン
【マクスウェルの止まり木】の皆と行動、呼び方は基本名前を呼び捨てだよ

えー……なに、初詣ぇ?
僕は眠いからいいよー……ほら敬虔なクリスチャンだからさぁ……
ミサも基本寝てたけど……

って感じで誰かに手を引かれながら渋々行くんだけど
着いた辺りで目が覚めて、1番テンション高くおみくじ引いたり鈴をガラガラ鳴らしたりするよ

作法とか分からないし教えてくれたら真似しようかな

寮に帰ったらスゴロクとかトランプ持って来るから皆で遊びたいね!
このバドミントン難易度高くない!?

寮の仲間の顔をプリントして作った福笑いも用意したよ!
本物よりイケメンになったじゃんトーマ

ピート、顔の方を寄せるの反則じゃない?


新堂・十真
正月だの新年だの。
年が明けた程度で特別ぐちゃぐちゃいうこともないだろ。
単なるいつもと同じ休日だ。

……まあ神社で初詣くらいはしとくか、一応。
知り合いに会う前にちゃっちゃと済ませて帰って寝る……。

って、なんだ……手際がよくねえな。
参拝客が来すぎで手ぇ回ってねえんじゃねえか?
仕方ねえ、暇だし少し手伝っていくか……力仕事は得意なほうだし。
作法だのなんだのはよく分からねえから男手の必要なとこだけ手を貸していく感じで……。

……「マクスウェルの止まり木」の寮仲間が初詣に来たら
必至で顔を隠しながら道具やら資材やら運ぶのに専念するわ。
なるべく他人の振りする。


メルエ・メルルルシア
【マクスウェルの止まり木】の皆と行動、呼び方は基本名前を呼び捨て
フィアラの事はチビと呼ぶ

20歳のフェアリー、寮のお姉さん的ポジション(だと自分は思ってる)

まったく、この寒い中、出歩くとか正気かよ……こういう日はなあ、妖精サイズのこたつで、みかんをチビに剥いてもらいながらテレビでも……え、皆いくの、ならオレも行くけどー? 保護者は必要だしな、保護者(ぶつぶつ文句言いながら楽しそうについていく)

今年も、いいや、これからずっと、お前らが健康で楽しく過ごせますように……っと。妖精さんは、お前らの長い旅の導き手だからな。お願いすることなんてこれしかねえよ、ほら、ちびっこ達はお年玉!大事に使えよ


エギーユ・シュマン
お餅、お餅を食べるっすよ!
おせちはもうたらふく食べたっす。あ、でもまだあるなら頂くっすよ。

おっと、今はお餅が優先だったっす。
お雑煮を探すっす。そういえばキマイラフューチャーにお雑煮ってあるんすかね?
まあでもそうっすね、あろうがなかろうが自分で一番好きなお雑煮を作ればいいっすよね。

というわけであちきは材料を買って温かい空間に引きこもるっす。
中にこたつも用意して準備万端っすよ!
でも一人はちょっと寂しいっすね。現地の子供たちとか猟兵の人とか誘ってみるっすかね。
暖かくて美味しいお正月をすごすっすよー!

あ、中身の描写をすることがあったらつゆは澄ましの醤油仕立てで具材はお任せするっす。


フィアラ・マクスウェル
希望【マクスウェルの止まり木の皆と】
呼び方は全員名前の呼び捨てです

私が管理する寮の皆と初詣に行きます
なんだかウダウダしているジョンはそのまま手を引いて連れてきますね
格好は振袖姿、黒髪ですし似合っていない……ということはないと思います

賑わう様子に目をぱちくり、でもそれだけ平和ということですし、小さく笑みを浮かべて私たちも参加します
「今年もまた、皆に良いことがありますように」
願うことは毎年同じです

人混みの中に見知った顔を見かけたら、声をかけるのもやぶさかではありません
特に金色に髪を染めている寮の住人などはすぐわかるかも
手が足りないというのならば、お手伝いもいいですね
作法等なら、知識として十分に


ピート・ブラックマン
【マクスウェルの止まり木】の面子と
呼び方は名前呼び捨て

初詣か。折角の新年だし行ってみるか
保護者なら俺がやるから、行きたくねぇならメルエは家に居てもいいぜー、と意地悪を言っったり

割と初めての体験なので、物珍しそうにあたりを見ながら
作法も知らねぇけど、まぁ見よう見まねでやってみるさ
こういうのは気持ちが大事ってね
願い事は秘密

ほら、折角の新年なんだ
そっちのお嬢様方もたまにはにっこりしたらどうだ?

寮に帰ったら、ジョンに付き合う
何だかんだでノリノリだなジョン
しかし、俺で福笑いやって面白いか? 顔なんていくらでも変えれるんだが


秋冬・春子
【マクスウェルの止まり木の】のみんなと
女の子はちゃんは男の子はくん付け

一年の始まりは初詣から始めなくっちゃね!
保護者役は既にいることだし、着物でも着て気合い入れて行きましょうか!

屋台とかあるなら、ベビーカステラやお好み焼きたこ焼き、キマイラフューチャーぽい何か木明な食べ物とか買い漁って、他のメンバーにもっていきたいわね! 勿論、私も食べ歩き!

願い事はみんな幸せで過ごせますようにって在り来たりなもの。

寮に帰ったら、日本酒を空けるわ。
お正月はお祝いでお酒が飲めるぞー! ってなもんで騒ぎ始めるわ。着物を着ている? 知ったことではないのよ!

※アドリブや他のキャラとの絡みも歓迎です!


五山・万華
【マクスウェルの止まり木】のみんなと参加するぜ
うぉぉ、行くぜ初詣!って騒ぎながらどんどこ太鼓を鳴らして無理やり渋ってるやつらを連れ出すぜ!
リグレットも太鼓叩いてさそおうっと。他人の振りとかされたら寂しいぜ!
みんな名前は基本呼び捨てな。
お願いはやっぱり宇宙最速のレーサー!これしかない!
うぉぉ、オレはやるぞー!ってやる気を燃やすぜ。

家に帰ったらみんなで遊ぶぜ。むしろピートの顔で福笑いしてぇな。

※他の人との絡みやアレンジ大歓迎だぜ!


ミーユイ・ロッソカステル
【マクスウェルの止まり木】の皆と。基本的には寮の面子の名前は呼び捨て。

……あなたもよ、性悪女(リグレット)。
なんて悪態をつきながらも、なんだかんだで声をかける。

初詣……って、サムライエンパイアあたりの文化じゃなかったの?
……どこにでも似たようなのはあるのね。
などと言いながらも、なんだかんだで内心は楽しんで。
いでたちは外人が振袖に身を包んだといった姿、作法には詳しくなくともその場でフィアラに教わる、周囲を見るなどして習得してみせて。
もちろん、日中のお出かけなら愛用の日傘は欠かせず。
……振袖に洋物の日傘、というアンバランスなスタイルだけれど。

……まぁ、知った顔の無事くらいは、祈っておきましょうか。


ミーナ・ペンドルトン
【マクスウェルの止まり木】の人には積極的に絡みに行くね。
地元じゃお正月と言えば七福神巡りとか八幡宮だったなー。
こっちのお正月は雑然としてるね。

新年といえば初詣、初詣といえば甘酒だよね。
それも米麹で作ったのがいいよね。
アルコール入ってないからちっちゃい子でも安心だからねー。
あったかいの配り歩くよ。
「あんまり動いてないと寒いでしょ、風邪引かないように甘酒飲んであったまってね」
働いてる人にも持ってかないとね。
「おつかれー、甘酒どうぞ」にへらと笑い

誰に対しても~くん、~ちゃん呼び


十河・アラジ
ボクは初の日の出を見に行くよ。
毎年新年は家で家族と過ごしているんだけど、
今年は猟兵としての仕事があるって言い訳をしてね。
どうしてもダークセイヴァー以外の世界での日の出が見てみたかったから……
あ、でも言い訳だけじゃなくって、なにか困ってる人がいたり手伝えそうなことがあればボランティアもするつもりさ。
新年初善行、ってね。


もしかしたら同じように日の出を見に来た人と出会うこともあるかもしれないね。
その時は一緒に日の出を眺めましょうって誘ってみるのもいいかもだ。

キマイラフューチャーの初の日の出、そして朝焼けの空……どんな光景なんだろう……楽しみだなぁ。


四葩・イカヅチ
【マクスウェルの止まり木】の皆々様と!へへ、嬉しいですねィ
せっかくですし、とびッきりの晴れ着で参りましょう!さァさァ皆様も粧して粧して!
万華のネェさんと一緒に騒がしくうろちょろと
派手に楽しくやりたいモンで!

一応はエンパイアの育ちですからねィ、お作法は仕込んで頂きまして。
キマイラの皆様も気になるようでしたら教えて差し上げましょう!
なァに、間違えたらやり直しゃいいンです。神様が見てらっしゃるのはアンタ方の心なンですから!

帰るときゃ皆々様揃ってご一緒に。ね、ね、良いでしょう?
へへ。なンだか嬉しくってふわっふわしちまいますや!


富波・壱子
キマイラフューチャーにもお正月ってあるんだね。
どんな感じなのか気になるけど、まずはお参りしようかな。神社、あるよね?

他の世界のお金でも大丈夫か分からないけど一応お賽銭も入れて、パンパンと大きく手を打ち鳴らしてからたっぷり時間をかけてお祈りするね。

良いことがありますように、友達が増えますように、美味しいものがいっぱい食べられますように、世界が平和でありますように、それからそれから…………。

このまま生きていられますように。たくさんお願いした最後にそう祈って、お参り終わり!

さぁ、初詣も終わったし美味しいものでも食べにいこうかな。甘酒とかお餅とか、お正月ならではって物いっぱいあるよね。楽しみ!


九十九・九
【マクスウェルの止まり木】の皆と
二人称は基本的に名前の呼び捨てだね
アドリブや台詞追加、絡みの追加も歓迎だ、やりやすいように動かしてくれよ

こういう行事ははじめてなのだが、だからこそ目新しくて楽しいものだね
幸い手先は器用だから、必要な道具や飾り付けがあれば手伝おうか
働くのは私ではなく周りを飛んでる手の機械たちだがね

いや、皆も楽しんでいるようで何よりだ
ここで手を合わせて願いごとを言えばいいのか?
ではそうだな、今年もみな幸せで健康に過ごせるよう祈っておくよ
恥ずかしいから言わないがね

さて、私もおみくじを引いてみようか
ついているといいのだけれどね


アレクシス・アルトマイア
【SPD】飾りや道具作りを頑張ってまいりましょう!
リグレットちゃんが暇そうならお手伝いをお願いしてしまいましょうか。
そう、良い感じの角度ですね。お上手ですっ

甘酒とかおせちとかも作りましょうね
周りをとんとんとして……(世界の法則に思いを馳せる)
…………ええ、トントンして、新鮮な素材をふんだんに使って。
とびきり美味しいおせちを皆さんにごちそういたしましょう。
張り切ってたくさん作ってしまいますよ。

その後はまったりと、振り袖なんか着ても良いかも知れません
甘酒なら未成年でも大丈夫ですよ
リグレットちゃんや皆さんに振舞って楽しく正月を過ごしましょう。
雰囲気で酔ってしまうこともあるかもですが。



●2019/1/1 11:20 『奇舞羅神社』前
「……ここが、神社……だよね?」
 さらりとした灰色のロングヘアをかき上げて。富波・壱子は首を傾げた。
 ぱちくりと瞬かせたオレンジ色の瞳が向く先にあるのは――敷地の入り口で見つけた、なんだかよく分からない一対の石像である。犬なのか猫なのかゴリラなのかサメなのかよく分からないが、よく見れば片方は口らしき部分を閉じ、片方は開けている。そうすると、これがこの地なりの阿吽の像、狛犬ということだろうか。

「うん、多分間違いないよね。聞いた道順通りだし……」
 神社、あるよね。そんな疑問を覚えた壱子は、ここに来る道中、楽しげに餅をつくキマイラに声をかけ、神社の場所を確認していたのだ。少し前の年末に道に迷った経験を生かした、実にスマートな行動というやつだ。
 狛犬(仮)に見守られるように境内に入ると、入れ違いに出てきた白い髪の人狼の青年と青い髪のフェアリー――この世界には珍しい取り合わせからすると、彼らも猟兵だろうか――と、お互いぺこりと頭を下げてすれ違う。お正月の神社というと人込みでごった返すイメージだったが、幸い、ここではそこまででもないようだ。というか、境内の一角には屋台が集まり、何やら人込みができているのが見える。どうやらキマイラたちには、お参りよりもそちらの方が人気らしい。

 そちらも気にはなるけれど。ところどころ妙にカラフルな電子パネルに置き換わった石段を登って、一直線に壱子が目指したのは向拝所――いわゆる賽銭箱の前だ。
 他の世界のお金でも大丈夫かな、大丈夫だよね、こういうのは気持ちだし。そう自分に言い聞かせながらチャリンと穴の開いた小銭を放り込み、ギンゴンガンとテレビウム型の金の鐘――鈴の代わりにぶら下がっていた――を鳴らして。元気良く、大きく柏手を打つ。

(「良いことがありますように」)
(「友達が増えますように」)
(「美味しいものがいっぱい食べられますように」)
(「世界が平和でありますように」)
(「それから、それから――……」)

 たくさんたくさん、尽きることなく。まさかキマイラフューチャーまで来て、願いの届く先が邪神ということもないだろう。なら言ったもの勝ちだ。思いの向くまま、たっぷり時間をかけて、浮かんだ言葉を並べ立てていき。そうして最後に胸の奥に残っていたのは、

(「――――このまま、生きていられますように」)

「……うんっ、お参り終わり!」
 
 ぴょんと跳ねるように元気よく。壱子は、先程見えた屋台の方に駆けていく。甘酒、お餅、それにお雑煮。きっとお正月らしい、美味しいものが色々あるだろう。
 だって、あれだけたくさん願ったんだもん。一つくらい、すぐに叶ったっていいはずだよね――。

●2019/1/1 11:30 『奇舞羅神社』屋台広場
「はい、どーぞっす。熱いから気を付けるっすよー」
 革製のチョーカーが印象的な、自分に似た色の長髪をストレートにした少女に雑煮のお椀を渡し。橙の瞳を輝かせる彼女の姿を見て、内心(うぅ、いいなぁ……っす)と溜め息をこぼす。

 ――はらぺこ狩人、エギーユ・シュマンが、お腹を空かせながらもお雑煮屋台を取り仕切っているのには、山よりも高い訳があった。

 明け方、初日の出に照らされるキマイラフューチャーの街並みを駆け回っていたまでは、とても良かった。
 なにせこのキマイラフューチャーという世界、都市のシステムをあれこれすれば、出来立ての食べ物が飛び出してくるのである。しかも正月ピックアップでもやっているのか、出てくるのは豪華なおせち料理ばかり。よくよく考えれば狩人の商売あがったりだが、美味しい物をお腹いっぱい食べられる分には文句なしだ。

 ただ、重大な問題が一つだけあった。
 立地の関係なのか、どこで何回試しても、出てくるお雑煮が白味噌仕立てだったのだ。これはこれで美味しかったが、今日、エギーユの舌が求めていたお雑煮は、澄ましの醤油仕立て。かくなる上は自分で作るしかないっす! と、食材と調理場を求めて再び旅立ち、そして、神社の境内でお雑煮屋台を開くキマイラの子どもたちに出会ったというわけだ。

 幾らでも食べるものが手に入る環境が悪いのか、それともたまたまなのか、子どもたちのお雑煮はてんでなっていなかった。放っておけずに手を出し口を出し、エギーユ謹製・理想の雑煮が完成したのがほんの1時間前。そして、エギーユと子どもたちの歓声がきっかけとなって客が集まったかと思えば、見る間に長蛇の列ができ、とても自分で食べる暇がなくなったのが、ほんの55分前である。

「はいはい、ちゃんと並ぶっすよー! あっちの看板が最後尾っす!」
 目下エギーユの心配事はといえば、まず、いい加減にお腹が空いたこと。朝からさんざんおせちを詰め込んだはずだが、なにせ目の前には自分が作った理想の雑煮。彼女の小さなお腹は早くもぐーぐー悲鳴を上げていた。まあ、これは行列が落ち着いたらお雑煮を持って帰り、子どもたちとコタツでのんびり過ごすとして。
 もう一つの心配事は、そろそろ材料が足りなくなってしまいそうなことなのだが――。

 そこまで考えたエギーユは、ふと行列の向こうに視線を向けて、ぱあ、と顔を明るくした。

「ちょっとー、遅いっすよー……十真!」
「うるせえ。重いんだよ、これ」

●2019/1/1 11:40 『奇舞羅神社』屋台広場
 正月だの新年だの、年が明けた程度で特別ぐちゃぐちゃいうこともないだろ。
 単なるいつもと同じ休日だ。

 ――朝、起きた時にはそんな風に斜に構えていた新堂・十真が、昼前の今、神社の屋台に食材を搬入しているのには、海よりも深い訳があった。

 まぁ一応済ませとくか、と初詣に来たまでは良かった、と思う。
 作法などよく知らないのでクソ寒いのに手水場で適当に手を洗い口をゆすいで、賽銭箱の前では二拝二拍手一礼だけして100円玉を放り込み、引いた占いが中吉で悪い気がしなかったので、ついでに妹にでも押し付けるかと家内安全のお守りも買って、気分良く帰るところだったのである。
 全く捌き切れていない、お雑煮屋台の長蛇の列を見るまでは。

 なんでも、エギーユと名乗った猟兵の少女の特製雑煮が評判に評判を呼んでしまったらしい。義姉の店もたまにこうなってたな、と一度思ってしまうと、放っておくのも新年早々に寝覚めが悪い。初夢の夢見が悪くなってもたまらないという、そう、実に不良らしい自分本位な理由で、あり合わせの材料で『最後尾はこちら』の看板を作って行列を整理してやれば、そのままなし崩しで裏方作業を手伝わされる羽目になってしまった。

 ビルのあちこちを適当にコンコンすれば食材が出てくるとはいえ、エギーユが細かく指定した食材を全て集め、担いで持って帰るのはなかなかに重労働だった。
 キマイラの子どもたちが「トーマ、トーマ!」と騒ぎながら何人かついてきたものの、重い物を持たせるわけにもいかない。申し訳程度に幾つかの軽い食材だけを選り分けて持たせ、汗水垂らして帰ってきたというわけだ。

「……まあ、いいけどな。どうせ暇だったし」
 搬入もひと段落。屋台の裏に腰掛けると、ずず、と、子どもたちと一緒に雑煮をすする。なるほど美味い。行列ができるわけだ。
 実家で毎年食べていた雑煮とも、今彼が暮らしている寮で、去年、そして恐らく今年も妖精が作ってくれる雑煮とも、また違う味付け。
 ……そう考えたところで、ふと、十真の頭を嫌な予感がよぎる。

 そういやあいつら、今朝、初詣がどうとか騒いでたな……。そう思いながら、境内に視線を向けて。 
「んげっ……」
 思い切り顔をしかめ、餅を頬張ったまま顔を伏せた。

●2019/1/1 9:20 「マクスウェルの止まり木」1of4
 ――ここで一度、時を遡ろう。

「……ねえ、蝙蝠女」
「なによ、性悪女」
 グリモア猟兵、リグレット・フェロウズは、ギロリと、物言いたげな目つきで傍らのミーユイ・ロッソカステルを睨みつける。
 2人の装いは、柄のよく似通った振袖だ。どこか似た赤系の色合いの髪をアップにまとめ、和装に身を包んだ金瞳の令嬢たちの姿は、鮮やかを通り越して艶やかで。本人たちは決して認めはしないだろうが、まるで「外国から訪れ、日本文化を楽しもうとしている美人姉妹」といった様相だった。

「私は確か貴女から『皆行くものなんだから』と言われて、朝から支度をしたはずね。自分のメイドを駆り出して」
「……ええ、そうね? 彼女、着付けまで出来るなんてね。私も感謝しないと」
 平然と頷くミーユイをもう一度睨んで、リグレットが視線を移した先にいたのは。

「えー……なに、初詣ぇ? 僕は眠いからいいよー……ほら敬虔なクリスチャンだからさぁ……ミサも基本寝てたけど」
「まったく、この寒い中、出歩くとか正気かよ……こういう日はなあ、妖精サイズのこたつで、みかんをチビに剥いてもらいながらテレビでも見て、酒飲んで……」
 朝までゲームでもしていたのか、まだ寝ていたい様子のジョン・ブラウン、そして小さな身体に寒さが堪えるらしいフェアリーのメルエ・メルルルシア。早々にゴネる2人の姿であった。

「まあ、そう言うものではないですよ、ジョン、メルエ……リグレットも。新年の祝いは、私たちの故郷でだって、大事なしきたりだったでしょう?」
「そうそう、1年の始まりはやっぱり初詣からよね! あ、でもお酒は後で付き合うわ!」
 柔らかく微笑みながら姿を現し、眠たげなジョンの腕を引いてみせるのは、一際小柄ながら寮長を務める少女フィアラ・マクスウェル。その隣で朗らかに笑うのは、一度キマイラフューチャーから取って返してきた秋冬・春子だ。この2人もまた、既に振袖姿に着替えている。雰囲気こそ正反対、年も倍は違えども、それぞれに長い艶やかな黒髪を持つ2人の女性には、和装が実によく似合っていた。

 そして更にダメ押しに響いたのは――なぜか、太鼓の音。
「うぉぉ、行くぜ行くぜ初詣! ほらリグレットも、そんな気が進まねぇ顔してねぇでさ!」
 どんどこどんどこ、階段から降りてきた男勝りな金髪の少女、五山・万華が騒々しく太鼓を叩いてみせれば。
「せっかくですし、とびッきりの晴れ着で参りましょう! さァさァ皆様も粧して粧して!」
 パパンッと手を叩いて絶妙の合いの手を入れてみせる、四葩・イカヅチ。こちらはサムライエンパイアの出だけあって、装いも気合バッチリだ。はだけた着物からは入れ墨が覗き、一見すると怖い姐さんといった風情だが、その表情は仲間たちとのお出かけに向けて、実に楽しげだった。
 これにはさしもの悪役令嬢も観念した様子で溜め息一つ、「分かった、分かったから、もう少し静かになさい」と頭痛を堪えるような表情で手を振ってみせ。

「随分と騒がしいな。何かあったのか、具体的には古代のオーパーツでも見つかって――おやおや、皆、随分と着飾って。ああ、今日は元旦だったか?」
「初詣ってやつか、折角だし俺も付き合う……なんだ、メルエは気が進まないのか? なら留守番しててもいいぜ、保護者役なら俺が――」
「ま、待てってピート、皆行くんならオレも行くって! うん、これだけいるんだ、保護者は一人じゃ足りないだろ、な」
 騒ぎを聞きつけ、金髪碧眼の機人魔導士、九十九・九と、大柄な体をライダースーツに包んだブラックタール、ピート・ブラックマンも合流。皆の様子に、メルエもまた気が変わったようで。なんだかんだと楽しそうに、ふよふよと「チビ」ことフィアラの頭の上に――止まりかけ、せっかく綺麗にセットした髪を崩しちまうかとUターン。代わりに、ちょうど元栓やら戸締まりやらを確かめて戻ってきたミーナ・ペンドルトンの上に着地する。ミーナもそれを、にへらと笑って受け止めて。

「では、出発しましょうか」
 小さな寮長の号令に、皆が笑顔で――もとい、あきらめ顔だったり半分寝ていたりも混じっていたが――頷いて。
 【マクスウェルの止まり木】総勢10+1人、大所帯の出発である。

●2019/1/1 11:50 『奇舞羅神社』屋台広場 あるいは「マクスウェルの止まり木」2of4
 そして再び、お昼前。

「十真。部屋にいないと思ったら、先に来ていたんですね。屋台、手伝いましょうか」
 雑煮のお椀を手に、屋台の裏を覗き込んできたフィアラの優しげな、それでいてどこか心の奥まで見通されそうな赤い瞳に、十真は他人のフリを諦めてゆっくり顔を上げた。
「別にいい、俺も成り行きで手伝ってるだけだ。初詣に来たんだろ、とっとと行ってこいって」

「まーまー、そう言わないで、十真くん。あんまり動いてないと寒いでしょ、ほらこれ、風邪引かないようにあったまって!」
「そうだね。猫の手も借りたい、という有り様じゃないか。手なら貸すよ、私の手ではないがね」
 にこにこ笑うミーナの顔に、ついさっきまで食料調達に行って大汗かいてたよ、とは言えず甘酒のカップを受け取れば、九が周囲に機械の手を浮かべてみせる。
 屋台の外に目をやれば、
「さァさ、寄ッてらッしゃい、見てらッしゃい! おいしいお雑煮ですよォ! ――へへ、新年早々、皆々様とお店ができるとは。楽しいですねィ」
 イカヅチが朗々とよく響く声で客寄せ中。あまりに堂々とした呼びかけに、キマイラたちがさらに集まってきているのが見えた。春子に至っては早くも屋台を巡ってきたのか、両手いっぱいにベビーカステラやお好み焼き、たこ焼き、よく分からない食べ物までを抱えて戻ってきたところ。
 全く、なんて騒々しくてお人好しな奴らだと、十真は自分のことを棚に上げながらカップの中身をぐいっとあおり……あれ、いや、一人おかしかったな。まぁいいか。胸の奥に広がる暖かさの――当然、甘酒の熱だ――前には、段々どうでも良くなってきて。

「ったく……そういや、お前らだけか?」
 屋台に集まってきた寮生は、自分を除いて5人。ふと気になって首を傾げた十真に、フィアラは口元を緩め、境内の方に顔を向けて。
「他の皆は先にお参りに。私たちはこちらが落ち着いてから、交代で行ってきますよ」
「だから、手伝わなくて良いっつってんのに……」

●2019/1/1 11:50 『奇舞羅神社』境内 あるいは「マクスウェルの止まり木」3of4
「おー、凄い、テレビウム型だ。お金を入れて、この鐘を鳴らせばいいんだよね?」
「前に並んでいたキマイラたちは、そうしてたわね」
 ここに来るまでの眠たげな様子は何だったのか、率先して目を輝かせ、奇妙な形の鐘に飛びつくように、ガランガランと鳴らすジョン。隣でそれに応じつつ、見よう見まねで小銭を入れて手を合わせるのは、日差しが苦手なのか、振袖姿にはミスマッチな洋風の日傘を携えたミーユイだ。
 その作法には危なっかしいところもあるが、わざわざ突っ込むような人間はここにはいない。
「それで良いと思うぜ! 作法なんて気持ちでいいんだって、さっきイカヅチも言ってたしな!」
 強いて言えば、勢いで保障する万華くらいのものだ。

 物珍しげにそんな様子を眺めていたピートは、ふと隣で仏頂面を決め込むリグレットに視線を落とす。
「おいおい、せっかくの新年なんだ、たまにはにっこりしたらどうだ?」
「……けれど、ここは神を祀る場なのでしょう。私、この世界の宗教を信じてはいないのだけど」
 小声で言い返す令嬢の顔の横に、ひょいと後ろから妖精が顔を出して。
「細かいこと言うなって、お嬢。初詣はなー、神様に向けて、自分が誓いを立てるもんでもあるんだぜ。チビが昔そう言ってた」
「…………ふぅん」
 大人ぶってそう諭すメルエの言葉に、そっけなく頷いて。それでも何かしら感じ入るところがあったのだろう、黙って前に進む後ろ姿に、一行の保護者役を自任するピートとメルエは顔を見合わせて笑い。自分たちも鐘を鳴らしに向かう。

「よーし、全員終わったな! ちゃんと願いは言ったか? オレはなー、『これからずっと、お前らが健康で楽しく過ごせますように』、だ! 妖精さんは、お前らの長い旅の導き手だからな!」
「俺はもちろん、宇宙最速のレーサーだぜ! これしかねぇ!」
「……まぁ、知った顔の無事くらいは、ね」
「なんだ、そういう流れか? けど、悪いな、俺の願い事は秘密だ」
「私もノーコメント、よ」
「ふんふん、性格出るよねこういうの。僕はねー……」

 思い思いにわいわいと、今年の願いを語り合いながら。彼らはお参りを済ませ、仲間が先に様子を見に行った屋台広場へ向かっていくのだった。

●2019/1/1 12:20 『奇舞羅神社』屋台広場
「――それで、私はなんで屋台で働かされているのかしら……!?」
「うふふ、良い感じの角度ですね。お上手ですっ」
 振袖姿のまま、気付けば包丁を握っていたリグレット。隣でほんわか笑ってみせるのは目隠しの従者、アレクシス・アルトマイアだ。
 この依頼、そして正月休暇を案内したグリモア猟兵として、一応問題が起きていないか辺りを見回ってくると、寮の同居人たちと一旦別れたのが運の尽き。気付いた時にはアレクシスのペースに巻き込まれ、おせち料理の屋台で調理の補助をすることになっていた。
 なお、アレクシスもまた振袖姿。銀の髪をアップにまとめ、朝焼けを思わせるような新年らしい色合いの着物に、朱色の菊の柄が麗しい。――そして、その格好で、リグレットをなだめすかして持ち上げながらも、アレクシスは数倍……どころではない、分身でもしかねない速度で調理を進めていた。

「……これ、本当に私、必要? そもそも料理ができる女に見えて?」
「まぁまぁ、いいではありませんか。あっちの屋台でお客さんが集まりすぎていて、人手が足りないのです」
 なんでも、せっかく雑煮の屋台に集まったキマイラたちに、それ以外のおせち料理も振る舞ってやりたいのだという。ビルでコンコンすればあれこれ出てくるとはいえ、やはり狙った物を出すのは難しい。伊達巻、かまぼこ、栗きんとん。数の子、昆布巻き、車海老――お雑煮のほかにも美味しいおせち料理は山ほどあって、それぞれに願いが込められているのだから、キマイラたちにも余さず味わって欲しい。
 どうやらますます伸びていくあちらの大行列にも同居人が絡んでいるようであるし――大体なんで手の形をした機械が飛び交い、列の整理をしているのだ――、そう言われれば、リグレットとしては投げ出し辛いところ。結果、実に嫌そうな、客商売の最中とは思えないような凶悪な表情で、それでも律義に言われるがまま包丁を振り下ろしているのである。

「人混みが落ち着いたら2人で甘酒でも飲みましょう、リグレットちゃん。アルコールは少ないですから、未成年でも大丈夫ですよ」
「……まぁ、いいけれど」
 17歳のリグレットは溜め息一つ。猟兵となってからは未成年扱いということで自重しているが、いわゆるファンタジー世界である故郷では立派な成人、食前酒程度は嗜んでいた。そう考えれば、興味は沸かないでもなくて。
「まあ、私、雰囲気でちょっぴり酔ってしまうかもですが」
「やっぱり帰っていいかしら。この上に酔っ払いの介抱なんて、御免なのだけど」

 令嬢と従者、主従ならずとも凸凹した性の2人は、噛み合うのか噛み合わないのかよく分からない会話を続けながら、キマイラたちにおせちを振舞っていった。

●2019/1/1 16:20 「マクスウェルの止まり木」4of4
 夕刻。初詣を終え、寮に戻った寮生たちは、思い思いの元旦を楽しんでいた。

「うわ、見てよこれトーマ、本物よりイケメンになった。こっちに合わせたら?」
「おンや、混ざッちまいやしたね。ミーユイのネェさんの目が、ジョンのニィさんのぬいぐるみのヒレに」
「……これはさすがに、あんまりではないかしら……?」
「え、僕、こいつの顔なんて刷ったっけ……」
 ジョンのプリントアウトした、寮の仲間の顔の福笑いで盛り上がったり。

「俺の顔でやって面白いか? 顔なんて幾らでも変えられるんだがな……」
「――待てよ。じゃあピートの顔で福笑いをやればいいんじゃねぇか……!?」
「うおっ、おい……!」
 福笑いを根本的に誤解している万華がピート(本物)の顔をかき混ぜたり。

「ははっ、チビたちは元気だなー」
「あらメルエちゃん、コップが空よ。ほら」
「おっ、悪いな春子。……そろそろ晩飯の用意もしないとなんだけどな、オレ」
「まあまあ、いいじゃない、もう少し」
 大人らしく、盃を傾けあったり。

「お汁粉は、豆が命だー! はーい皆、お餅は焼いたのと煮込んだののどっちが良い?」
 ミーナが鍋ごと持ってきたお汁粉に、揃って歓声を上げたり。

 そんな、いつにもまして賑やかな皆の様子を見つめ、フィアラは、ふ、と柔らかく微笑んで。
「おーいチビ、お汁粉だってよ! いらねーのかー?」
「ええ、今行きますよ……あ、お餅は煮込んである方が好きですね」

(「――今年もまた、皆に良いことがありますように」) 

 縁あって、止まり木に集った家族に幸いを。
 毎年同じ、年が明ける度に神社で想う願いをもう一度。心の中で、繰り返した。

●2019/1/1 6:10 『キマイラ春架洲』
 ――最後に、もう一度時間を遡ることとしよう。

 元旦の朝。十河・アラジは、コツコツと黒い脚甲を打ち鳴らし、ひたすら、長い長い階段を昇っていた。彼が目を付けたのは、辺りにそびえるビル群の中でも一際高い建物だ。入り口の案内板の消えかかった文字はかろうじて『キマイラ春架洲』と読み取れたが、この世界の旧人類にとってこのビルがどういった意味を持っていたのか、もはや知る者はない。
 無論、それはアラジにとっても同じことだ。彼にとって、今大事なことは一つだけ。

(「――初日の出を、見たい。ダークセイヴァーとは違う、別の世界の」)

 毎年、新年は家族で過ごしていた。それに不満があるわけじゃない、けれど。
 今年は猟兵としての仕事があると言い訳をして、彼はこの地に足を運んでいた。 

「おっと、ここが最上階かな」

 そうして。ようやく辿り着いた金属製の扉に手をかけて。軋む扉を、ぎぃと開けば――

「……あれ、先客かな?」

 屋上には、毛布にくるまる小柄な少女の姿があった。

●2019/1/1 6:20 『キマイラ春架洲』屋上
「おや、君もこの特等席から見物かい?」
 ふ、と微笑み。ウルリィケ・メルランドゥは、ビルの中から現れた、聖職者然とした少年に笑顔を向けた。
 そうして、ふと、記憶を辿るように首を傾げ。
「……確か、外で……ついさっきまで飾り付けの手伝いをしていたよね?」
「そういう君も。キマイラたちと事件の後片付けをしているのを見かけたよ」
 年末の戦いに参加して以来、ウルリィケはキマイラフューチャーを駆け回り、汚れたり壊れたりしてしまった町の「大掃除」に明け暮れていた。そしてアラジもまた、家族への言い訳を言い訳のままにするのは気が引けて、「新年初善行」に励んでいたのだ。
 そうして、日の出を前に、こうして同じ場所に辿り着いて。……お互い、なんとも似通ったことを考えたものだと、2人してくすりと笑い合い。
「わたしはウルリィケ……リィケ、とでも呼んでよ。ココア、飲むかい?」
「ボクは十河・アラジ。よろしく、リィケ。もらってもいいかな」

 そうして2人は並んで座り。日の出を待つ間、のんびりと言葉を交わし合った。
 キマイラたちの様子、それぞれの出身地のお正月。ウルリィケはビルの中からではなく、外からスカイステッパーを駆使して登ってきたこと。それに、別にコーヒーが嫌いなわけじゃないけど、今日はなんだかココアの気分だったこと――近い年だと思いこんでいたウルリィケが7つも年上だと分かり、思わず敬語になってしまった時は、ちょっぴり彼女を不機嫌にさせてしまったが。

 ――そうして待っていれば、時はあっという間に過ぎていき。
 徐々に白み始めた地平線の先、ビルの合間から、輝く太陽が顔を出す。
 眼下に広がるキマイラフューチャーの未来的な町並みを、太陽だけはどの時代も変わらず、鮮やかに照らして。

「これが……うん、単に日付が変わった以上に、実感というか感慨深いものがあるね」
 ウルリィケの言葉に、返すこともできず。ただこくりと頷いて、アラジは呆然と、その光景を見つめていた。
 横目にその様子を見たウルリィケは、口の中でくすりと笑みを漏らし。同じように、太陽に向き直って。

「――はじめまして世界。あけましておめでとう」

 これから、よろしく。


 こうして、キマイラフューチャーに、そして36の世界(ワールド)に、夜明けが訪れた。
 世界は急速に姿を変え、猟兵たちはこれからどんどん、大きな戦いの渦中に巻き込まれていくだろう。
 けれど、それでも――親しい人と、新たな友と、共に暮らす家族と。いつかこうして、また新たな年を迎えよう。
 それぞれの胸に、それぞれの思いと誓いを抱いて。

 新たな時代が、始まっていく。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年01月03日


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#キマイラフューチャー


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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は百目鬼・明日多です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


挿絵イラスト