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創るべきもののために

#ダークセイヴァー


 ダークセイヴァーにある領主館の一室で、一人の女魔術師が試験管を目の高さで軽く振った。
 研究室のような部屋だった。薄暗い部屋にはいくつかランプが光り、並ぶ瓶にはおぞましい肉塊と化した生物だった肉が浮いていた。
 女魔術師は配下で報告を上げる隷属戦士を振り返りもせず、静かに呟いた。
「……そう。今あの村は誰の支配下にも無いのね」
「はイ。あノ村ニイタ『先生』トよばれタ領主ハ、既に存在シマセン」
「それはいいわね。誰もいないのなら、いただいてしまいましょう。丁度新しい素材が欲しかったところなの」
 片言に喋る朱殷の隷属戦士に嬉しそうに呟いた女魔術師は、手にしたフラスコに試験管の中身を注いだ。
 真紅の液体が透明な液体と反応し、ゴボゴボと泡を立てる。その反応をうっとりとした目で見つめた女魔術師は、ふと眉を潜めるとフラスコを戻した。
「あの村の『先生』は人狼病の治療薬を研究していたようね。その実験台がまだ残っているはず。まずは村を制圧して、実験台を連れてきなさい。賢者の石の研究に役に立つはずよ」
「御意」
「そうと決まれば、早速村に隷属戦士を差し向けなければ。村人を何人か殺して、先生が残した子供を連れて来させないと。ーーケヴィン」
 ケヴィンと呼ばれた、血の染み付いた鎧を纏った戦士が顔を上げる。まだ人間の意思をわずかに残す屈強な戦士が抱える墓石を目ざとく見つけた女魔術師は、ケヴィンに近づくと墓石を取り上げた。
 そこに刻まれた墓碑銘に、女魔術師は邪悪に微笑む。
「あなたの妻も死んだようね。いい機会だから村へ帰るといいわ。昔なじみを殺して、恐怖を植え付けて来なさい。それが済んだら、墓を暴いて骨をここへ持ってきて。いいわね」
「……御イ」
 頷くケヴィンは、何かを欲するように墓石に視線を注ぐ。その視線に気づいているだろうが、女魔術師は見せつけるように墓碑銘をちらつかせるだけで返そうとはしない。
 諦めたように顔を上げたケヴィンは、配下に指示を出しながら部屋を後にする。
 その背中を見送った女魔術師は、くつくつとおかしそうに笑った。
「骨と墓石を目の前で砕いたら、あの魂も屈服するかしら」
 わずかに抵抗する魂が闇に堕ちた時の血は、賢者の石の精錬にきっと役立つことだろう。
 その光景をうっとりと想像した女魔術師の隣で、フラスコの中身がゴボリと音を立てた。


「仕事だよアンタ達」
 グリモアベースに集まった猟兵たちに向かい合ったパラス・アテナ(都市防衛の死神・f10709)は、集まった猟兵達の視線に頷いた。
「以前「先生」と呼ばれた、人狼病治療のために人狼を大勢殺したオブリビオンがいたんだ。そいつが倒れた結果、近隣の女領主が村を掌握するために乗り出してくるみたいだね」
 村に朱殷の隷属戦士の大軍を差し向け、力で威圧して生き残った人狼病の子供たちを攫い、村人達に恐怖を植え付けようとする。
 誰が領主か分からせるために、朱殷の魔術師も村を訪れ力を示すだろう。
「これはチャンスだ。領主館の奥からノコノコと出てきてくれたんだ。この魔術師をここで倒すよ」
 女魔術師を油断させるため、朱殷の隷属戦士が村を包囲するまでは村人達を避難させることはできない。
 先に村の中に入り込むか、背後を突いて襲撃するか。それは猟兵達に委ねられた。
 村人に犠牲は出るかも知れないが、それは仕方ないと割り切ることも必要だ。
「この領主を倒したところで、また次のオブリビオンが統治に来るだけだろう。だがそれまでにはまだ時間はある。オブリビオンの襲撃に心が折られる村人達を、元気づけてやっておくれ」
 恐怖から解放し、力づけてやることができれば、次の領主の悪逆にも耐える力になるだろう。
「悲劇ばかりのダークセイヴァーだがね、それでも人は生きている。村の連中に、力を貸してやっておくれ」
 頷く猟兵達に頷き返したパラスは、グリモアを発動させた。


三ノ木咲紀
 オープニングを読んでくださいましてありがとうございます。
 マスターの三ノ木咲紀です。
 今回は「守るべきもののために https://tw6.jp/scenario/show?scenario_id=9906 」の続編ですが、前作を読んでいなくても全く問題ありません。

 連携・アドリブが入ることがあります。
 NGの方は、その旨お書き添えください。

 第一章は集団戦です。朱殷の隷属戦士を倒してください。
 村人の生死は問いません。
 第二章はボス戦です。領主の朱殷の魔術師を倒してください。
 賢者の石の精錬に心血を注ぐ魔術師です。
 第三章は日常です。
 村人達を力づけてあげてください。
 この章のみ、お声掛けがあればパラスも参加させていただきます。

 プレイングは7月18日以降受付させていただきます。
 それ以前に送られたプレイングは、お返しする可能性があります。

 それでは、よろしくお願いします。
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第1章 集団戦 『朱殷の隷属戦士』

POW   :    慟哭のフレイル
【闇の力と血が染付いたフレイル】が命中した対象に対し、高威力高命中の【血から滲み出る、心に直接響く犠牲者の慟哭】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD   :    血濡れの盾刃
【表面に棘を備えた盾を前面に構えての突進】による素早い一撃を放つ。また、【盾以外の武器を捨てる】等で身軽になれば、更に加速する。
WIZ   :    裏切りの弾丸
【マスケット銃より放った魔を封じる銀の弾丸】が命中した対象を捕縛し、ユーベルコードを封じる。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
👑11
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 女魔術師からの侵攻予告を受け取った村では、議論が紛糾していた。
「あのガキどもを差し出せば、村は襲われないんだろう! なら差し出してやればいい!」
「そんな保証がどこにあるんだい! 次の領主はどんな無理難題を吹っかけてくるか、分かったもんじゃないんだ! なら子供たちを守って一矢なりとも報いたらどうだい!」
「反抗したってかないっこない! あのケヴィンだって敵わなかったんだ! マーサ、妹のあんたはよく知ってるはずだろう!」
「でも! 差し出したりしたら、あの子達がどんな目に遭わされるか分かったもんじゃないんだよ!」
「それは俺達だって同じだろう! 人狼を差し出してきた俺達が、いまさら善人ヅラなんでできねぇだろ!」
「だからこそ! あの子達を差し出したら、アタシ達は何のために……」
「みんな待って!」
 公会堂での紛糾する議論に、幼い声が割り込んだ。
 先生が救おうとしていた子供たち。その最年長であるトムが、きょうだい達と一緒に議論の真ん中に進み出る。
「みんな、ありがとう。僕たちを受け入れてくれて。……みんなで話し合って決めたんだ。僕たちは領主様のところへ行く」
「トム! あんた、自分が何を言ってるのか……」
「分かってる! でも、人狼の大人たちは僕たちを治すために、ひどい目に遭って死んだんだよね」
「誰がそんなことをアンタたちに教えたんだい……!」
 マーサの剣幕に、小男が首を竦めて議場を後にする。小男を睨みつけたマーサは、改めてトムと向かい合った。
「トム……」
「大丈夫だよマーサ。順番が……回ってきただけ、だから」
 恐怖で震えるトムが、気丈に微笑む。マーサはトムに駆け寄ると、思い切り抱きしめた。
「トム!」
「僕たちが、領主様に掛け合って、みんなに、ひどいこと、しないように、お願いするから。だから……!」
 抱き合ったトムとマーサの号泣が響く。
 嘆きに満ちる公会堂を、無慈悲な戦士たちが包囲する。
 迫る軍靴の音に、村人達は恐怖に身を竦ませた。
北条・優希斗
連携OK
…あの医者が用意した設備を利用する為に次のオブリビオンが来た、か
まあ、確かにあの設備を利用したいオブリビオンは星の数ほどいそうだが、それを赦す道理は何処にも無いな
敵が潜入するよりも先に村に潜入
俺達が貴方達を守るから戸締まりをして家で大人しくしていて欲しい、但し何かあれば直ぐに声を出す狼煙を上げる等して直ぐに助けを求めて欲しい旨告げ村人達を避難後、敵と接触
ダッシュ・見切り・残像で肉薄しつつ、先制攻撃・範囲攻撃・薙ぎ払い・串刺し・鎧砕き・早業を加えてUC発動
敵を掃討する
倒しきれなければ二回攻撃・範囲攻撃で追撃するよ
銀の弾丸は弾道を見切り、残像で標的をずらして攻撃を回避
躱せなければオーラ防御


ハロ・シエラ
犠牲も仕方ない、ですか。
ダークセイヴァーでは……いえ、こう言う戦場ではそれもやむを得ない所なのでしょう。
それでも、犠牲者を出さない努力はしたいですめ。

そうなるとここはスピード重視で動く事になりますね。
ユーベルコードで高速移動を行い、背後から【先制攻撃】を仕掛けます。
出来る限り敵を【おびき寄せ】、【早業】の【鎧無視攻撃】で素早く片付けていきます。
傷付く事を恐れている暇はありませんので、痛みは【激痛耐性】で堪えて動きましょう。
また、毒の放射による【鎧砕き】は少しは他の猟兵のサポートになるのではないでしょうか。
とにかく速攻をかけて素早く終わらせます。
村人の方々の命の為にも、私の寿命の為にも。



 朱殷色の鎧の群れが、村に迫る。
 村人に避難を呼びかけるために駆けつけた北条・優希斗(人間の妖剣士・f02283)を、村の老人が呼び止めた。
「もし、そこの旅の方。ここは危ない、早くお逃げなさい」
「あなたこそ危ない。女魔術師の手下どもが来ます。戸締まりをして家で大人しくしくしていてください」
「何故それをしっているのかね?」
 驚いた様子の老人に、優希斗は手早く事情を説明した。少し前に先生を倒した猟兵と呼ばれる存在であると告げられると、老人は優希斗の手を取った。
「頼む! 私達を助けてくれ! 子供を差し出そうが差し出すまいが、私達は殺される! あの連中のやりくちはいつもそうだ!」
「そのために来ました。あなたも家へ帰ってください。但し、何かあれば直ぐに声を出す、狼煙を上げる等して助けを求めてください。直ぐに駆けつけます」
「……いいや。私は村を回って、外へ出ている連中に声を掛けてから帰るよ」
 首を横にふる老人に、優希斗は一瞬黙った。今ここで優希斗が村中を駆けて避難を呼びかけるよりも、村人からの信頼があるであろう老人に任せた方が効率がいいだろう。
「……分かりました。よろしくお願いします」
 老人に避難の声掛けを託した優希斗は、迫る脅威の気配に向けて駆け出した。
 優希斗の視界の端に、立派な建物が見える。
 村外れに建てられた領主の別荘は、今は静まり返っている。
 しっかりとした白い建物の中で、人狼を犠牲にした人体実験が連日行われていたのだ。
 優希斗が眉を顰めた時、暗い朱色の影が視界に入った。
 朱殷の隷属戦士の一団が、今まさに別荘に入ろうとしていた。
 あの医者が用意した設備を利用する為に、次のオブリビオンが来たということか。
「まあ、確かにあの設備を利用したいオブリビオンは星の数ほどいそうだ。だが、それを赦す道理は何処にも無いな」
 別荘の中に入ろうとしていた隷属戦士の姿に、優希斗は駆け出した。
 姿勢を低く保って抜刀。ダッシュで肉薄する優希斗に気づいた時、隷属戦士の腹には深々と蒼月が突き刺さっていた。
 胴を半ば両断しながら引き抜かれた蒼月に、隷属戦士達がマスケット銃を構える。銃弾が優希斗に向けて放たれる寸前、隷属戦士が苦痛のうめき声を上げた。
 隷属戦士に背後から先制攻撃を仕掛けたハロ・シエラ(ソード&ダガー・f13966)は、倒れる隷属戦士には目もくれず駆け出した。
「これが悪魔の力であっても……」
 同時に【ディーモナイザー】を発動させたハロの姿が、ふいにその場から消える。
 次の瞬間、隷属戦士達が動きを止めた。
 高速で移動し、隷属戦士達の背後を取ったハロが放つ無生物すら冒すナノマシン毒の刃が、隷属戦士の鎧を腐食させていく。
 刀身についたサーペントベアラーの露を払い構え直したハロの腕には、毒蛇神の呪いが刻まれていた。
 腕に浮かぶ毒蛇神の刻印に、グリモア猟兵の言葉が思い出される。
「……犠牲も仕方ない、ですか」
 ハロの腕から浮かぶ陽炎のような影は、強い力の代償としてハロの寿命を削っていく。
 この力を使うことで失われるハロの寿命も、「犠牲」ということができるだろう。
「ダークセイヴァーでは……いえ、こう言う戦場ではそれもやむを得ない所なのでしょう」
 それでも、犠牲者を出さない努力はしたい。
 決意を新たにしたハロに、血濡れの盾刃が迫った。
 盾を前面に押し出した猛攻に、一瞬意識が飛びかける。襲う激痛を耐性で無視したハロは、大きく飛び退くと再び地を蹴り隷属戦士の背後を取った。
 ナノマシンに侵食された鎧に、斬撃を叩き込む。声なく倒れる隷属戦士からサーペントベアラーを引き抜くハロが即応するより早く、再び盾が迫った。
 ダメージを覚悟したハロの目の前で、隷属戦士が倒れ伏す。
 砕かれた胴部の鎧から刀身を引き抜いた優希斗の姿に、ハロは知らず微笑んだ。
 ハロの微笑みに表情を緩めた優希斗は、迫る隷属戦士の群れに向けて切っ先を突きつけた。
「多元世界で生まれし刃よ、我が下に集いて踊れ」
 詠唱と同時に現れた215本の剣・刀・短剣が、乱れ舞うように隷属戦士達を切り裂いていく。
 ナノマシンで脆くなった鎧では受け止めきれずに倒れ伏す中、一体の隷属戦士がマスケット銃を構えた。
 放たれる銃弾が優希斗を貫く。だが隷属戦士が捉えたのは彼の残像だった。
 同時に地面を蹴った優希斗とハロの剣が、残った隷属戦士の胴を両断する。
 二振りの剣に胴を真っ二つにされた隷属戦士には目もくれず。背中合わせに構えた二人は、集まってくる隷属戦士の気配に得物を構え直した。
「ここでできる限り足止めをしましょう」
「数が多い。村への侵入をすべて止めることはできないな」
「だから、速攻をかけて素早く終わらせましょう。村人の方々の命の為にも……」
 私の寿命の為にも。
 最後の一言を飲み込んだハロに、優希斗はうなずく。
 二人に迫る第二陣の隷属戦士達の姿に、二人は駆け出した。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

リーヴァルディ・カーライル
…ん。生憎だけど子供達を連れて行かせる訳にはいかないわ。
貴方達の蛮行を黙って見過ごしてしまえば、
あの子らを護り救おうとしていた彼らに申し訳が立たないもの。

第六感が捉えた目立たない魂の存在感を、
左眼の聖痕で生前の姿を残像として暗視し、
心の中で祈りを捧げて手を繋ぎ【断末魔の瞳】を発動

心の傷口を抉るような精神攻撃を呪詛耐性や気合いで耐え、
全身を覆う死者達の呪詛のオーラで防御と
生命力を吸収する闇属性攻撃の反撃を同時に行う

敵の殺気から銃撃を見切り回避しつつ、
怪力の踏み込みから空中戦を行い接近、
呪力を溜めた大鎌をなぎ払う2回攻撃で仕留めていくわ。

…今、その鎧の呪いから解放してあげる。眠りなさい、安らかに。


シリン・カービン
【WIZ】

首根っこを押さえた『小男』を室内に放り込み、
静かですが有無を言わせぬ声を公会堂に響かせます。
「繋がれた命の意味を考えなさい」

住民達に入り口や窓を家具で塞がせ自分は窓から屋根へ。
「外のことは任せて」

屋根の上で身を隠しながら、投網弾に磁気の精霊を宿らせた
【スピリット・バインド】で公会堂に侵入しようとする
隷属兵を狙います。
数体纏めて捕縛したら精霊に呼びかけ磁力を発生。
武器も鎧も互いにくっつきあって身動き取れなくさせます。
動きを封じたところで鎧の隙間を狙い撃ってとどめ。

敵から死角になるように動きますが、
銀の弾丸を撃たれたら集中して見切ります。
当てられても通常弾で反撃を。

アドリブ・連携可。



 隷属戦士の襲撃に怯える公会堂のドアが、大きく開かれた。
 反射的に身構える村人達を安心させるように微笑んだシリン・カービン(緑の狩り人・f04146)は、一転冷たい目を暴れる小男に浴びせかけた。
 村から逃げようとしていた小男の首根っこを捕まえて、ここまで連れてきたのだ。
 シリンと村人達の視線に、小男はたじろいだように小さな身体を更に縮める。
「なっ……なんだよ!」
「あなたは、子供たちに大人の人狼達の末路を教えたそうですね」
「お、俺ぁこいつらが知りてぇっていうから教えてやっただけで……」
「このタイミングで子供たちにそれを伝えれば、自分から進んで領主のところへ行く。それを狙ったのでしょう?」
 シリンの言葉に、小男は図星を突かれたように黙り込む。そんな自分をごまかすように、甲高い声を上げた。
「ガッ……ガキどもが領主様のところへ行けば、俺達は殺されずに済むんだよ! 今日までそうやって食い繋いだんだ。今更一人や二人増えたからって……」
「繋がれた命の意味を考えなさい」
 静かな、だが有無を言わさない声が公会堂に響く。シリンの言葉に、公会堂内がざわついた。
「けど、そいつの言うことも一理あるんだよな……」
「子供たちは可愛そうだけど、ねぇ」
「俺達には、どうしようもないんだ。全てあの領主が悪いんだ」
「そうよ私達は悪くないわ」
 ざわつく公会堂内に、シリンは唇を噛んだ。
 オブリビオンに抵抗する術を持たない村人達にとって、「人狼を売れば身の安全が買える」という状況は、「人狼を売る」という行為を正当化させるのに充分なものだったのだ。
 言い返そうと口を開いたシリンの腕を、リーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)は軽く叩いた。
 現れたリーヴァルディは、ざわつく村人達によく通る声で語りかける。
「……ん。生憎だけど、子供達を連れて行かせる訳にはいかないわ」
「な、なんだよ! 何の権利があってそんな……」
「貴方達の蛮行を黙って見過ごしてしまえば、あの子らを護り救おうとしていた彼らに申し訳が立たないもの」
 怯える子供たちを見つめたリーヴァルディは、この村で共に戦った仲間達に思いを馳せた。
 そして、かつてこの村にいた領主のことも。
 人狼病の子供たちを治そうとして、人狼病の大人たちを人体実験により虐殺した先生と。
 子供たちを守るため、生かすために人狼病の大人たちを先生に供給し続けたマリアと。
 二人のオブリビオンの呪いは、今もなお村人達の中で生き続けている。
 おそらく最後の一人になるまで、ずっと。
 この呪いを、今こそ解かなければ。騒ぎ出す村人達を鎮めるように、リーヴァルディは声を上げた。
「……今、先生たちの呪いから解放してあげる」
「外のことは任せて。あなた達を苦しめるオブリビオンは、私達が倒す」
 二人の言葉に、公会堂内がざわつく。
 すれ違うように訪れた仲間に中のことを託した二人は、外へ出ると迫る朱殷の隷属戦士たちと向かい合った。


 公会堂の外へ出たリーヴァルディは、迫り来る敵の気配に目を閉じた。
 周囲に漂うわずかな気配を探る。
 朱殷の隷属戦士達の気配に息を潜める魂達の存在を、第六感が捉える。
 かつて隷属戦士達に殺された村人達の魂を探り当てたリーヴァルディの魂は、その姿にそっと近づいた。
 怯える彼らに祈りを捧げる。心に響く悲劇を悼み、共感して手を差し伸べる。
「あなた達の悲しみを、怒りを、……救いを求める心を、私に貸して。共に魂に安寧を」
 リーヴァルディが差し出した手を、霊魂達がおずおずと取る。目を開き、現実世界を視認した時【断末魔の瞳】が発動した。
 左眼の聖痕がわずかな光を宿し、リーヴァルディの身体を包み込む。飛翔能力を得る寸前、凶悪なフレイルがリーヴァルディを襲った。
 霊と対話するリーヴァルディを叩き潰そうと迫るフレイルが、ふいに離れた。
「させません!」
 屋根の上で身を隠しながら機を伺っていたシリンが放つ投網弾が、隷属戦士達に覆いかぶさる。
 公会堂に迫る隷属戦士の第一波をまとめて捕らえた網に足を取られ、転倒した隷属戦士達に、続く戦士たちもドミノ倒しのように倒れ込む。
 動きを止められた隷属戦士達が網を破ろうとした時、シリンの声が響いた。
「磁気の精霊よ、彼奴を縛れ」
 シリンの呼び声に応えた磁気の精霊が、投網に宿る。強力な磁気の宿った網は隷属戦士達の鉄の鎧を強力に縛り付けた。
 磁力を帯びた鉄の鎧は、磁石となり隷属戦士達を縛る目に見えない鎖と化す。
 身動きが取れなくなった隷属戦士達に、大鎌が迫った。
 霊の加護を得たリーヴァルディの大鎌ーー過去を刻むものが、動きを止められた隷属戦士達に迫る。
 怪力で踏み込み飛翔し、推力を得たリーヴァルディの大鎌が次々と隷属戦士達の首を狩っていく。
「……今、その鎧の呪いから解放してあげる。眠りなさい、安らかに」
 鎧から解放されるように立ち上った霊が、光の玉となり宙へ昇り消えていく。
 その姿を見送ったリーヴァルディが小さく一礼した時、周囲に虹の霧が立ち込めた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

シン・コーエン
シンさん(f04752)、アオイさん(f04633)の二人と共に。

◆方針 村の中で村人を守りつつ殲滅戦。シンさんが開けた道に立ち、突っ込んでくる敵を殲滅する。

UC:灼閃・連星を使用。
灼星剣に【風の属性攻撃】を纏わせ、【UCを使用した2回攻撃・範囲攻撃】。斬撃には【衝撃波・念動力】を重ねて威力増強。
連れだって来ようが、突進して来ようが、敵の全てを全力で斬り捨てる!

敵の攻撃には、【見切り・第六感・オーラ防御・武器受け・戦闘知識・拠点防御・地形の利用】を組み合わせ、状況に合わせて回避か受けを行う。

「ここから先は行き止まりだ。そして逃がすつもりもない。せめて魔術師の呪縛からは解き放ってやる。」


アオイ・フジミヤ
シンさん(f04752)コーエンさん(f13886)と

公会堂の村人には外に出ないようにお願いする
過去に後悔があるならば抗ってほしい
そのためにもあなた達を私達に守らせて下さい

たとえ私ひとりの力は及ばなくても
2人のヒーローがいてくれるから大丈夫

UC発動
虹の霧の粒子を増やし辺り一帯に濃霧を張り巡らせる
村人が隠れている場所の入り口を分かりづらくし、私達の姿も隠して撹乱させる

シンさんが作ってくれたルートを来る敵はコーエンさんに任せる
他の敵はシンさんと手分けして対峙
衝撃波を放つ
もしくは敵の周りの霧の粒子を結合して凍らせ動きを止める
霧を氷に変えて盾代わりにして受け流すように

悲劇を繰り返させたくない


シン・バントライン
シンくん(f13886)、アオイさん(f04633)の二人と

◆方針
村の中で村人を守りつつ殲滅戦

村人には公会堂から出ないように注意喚起。
アオイさんの霧に隠してもらいながらUCを展開する。
宝珠を放り投げて赤牡丹の花弁に。
広範囲攻撃をしながら突破して来る敵を第六感と野生の勘で察知。
舞う花弁に隙間を開け、シンくんの元に敵を誘導。
なるべく道を細く一本道にして敵が一気に雪崩れ込まないよう注意を払う。
多方向から突破される場合は自分が剣で対応。
2回攻撃で打ち損じないように。
弾丸も第六感を駆使して飛んでくる方向を読み、剣で受ける。
もしUCが封じられた場合もそのまま黒剣で攻撃。

「仲間というのは頼もしいものですね」


木元・杏
まつりん(祭莉・f16554)と

マーサも子供達も、村の皆も守る
わたしは先に村中に入り込み、公会堂の中へ

村人の中に紛れ、
皆、集まって?
幅広の刀にした灯る陽光でオーラを飛ばし、村人を包み込んでオーラ防御を展開

【白銀の仲間】で見えない狼の群れを呼び出す
公会堂に入ってきた隷属戦士を体当たり攻撃して弾き飛ばして?

フレイルが村人に当たらないよう距離を取り、入った敵を攻撃させる
近付いた敵はわたしが刀でフレイルを受け止めそのまま叩き切る

子供を差し出す、それは、あなた達にも守る大切なものがあるから?
でも、守られ続けた最後には、自分の守りたいものに守られることになる
それでもいい?
いつまでこの子達に守ってもらうの?


木元・祭莉
アンちゃん(f16565)と。

今回は、耳も尾も出したままで、先行して内部へ。
マーサおばちゃん!
よかった、今度は間に合った!

マリアばあちゃんとも、約束したしね。
トム、人狼は天寿を全うするまで生きなきゃだよー。
……せんせーも、そう言ってた。

中に集まった猟兵の人たちと協力して、受け持ち区域を決めて。
包囲をできるだけ引き付けてから、中の守りはアンちゃんに任せ。
おいらは、外へ出る!

重装兵相手だから、今回は棒術。
敵の攻撃は、身軽に飛び跳ねて躱す。
耳と尾を見せつけて敵を引き付けつつ、公会堂から離れる。

十分距離が取れたら奥の手!
人狼舐めんなー!

『BwWooyyeeーーーーー』(魂の咆哮)

守るって約束したんだ!




 時は少し遡る。
 耳と尻尾を出したまま公会堂に駆け込んだ木元・祭莉(木元村のヒマワリわんこ☆・f16554)は、ざわつく公会堂内には構わずマーサに駆け寄った。
「マーサおばちゃん! よかった、今度は間に合った!」
「マツリ! あなた、どうして……」
 興奮が落ち着いたのか。現れた祭莉の姿に、マーサは目を真っ赤にしながら上ずった声を上げた。
 軽やかな足音を立てながら駆け寄った祭莉は、マーサの目を覗き込む。
「助けに来たんだ。ーーマリアばあちゃんとも、約束したしね」
「マーサも子供達も、村の皆も守る。だから安心して?」
 祭莉の後ろから駆け寄った木元・杏(微睡み兎・f16565)もまた、マーサ達に微笑みかける。
 その笑みに安堵したように、マーサが少しだけ頬を緩めた。
「先生を倒してくれたあなた達が来てくれたら、安心ね」
 マーサの言葉に、トムが驚いたように一歩下がる。猟兵達を交互に見上げるトム達に、アオイ・フジミヤ(青碧海の欠片・f04633)が微笑みかけた。
「ひさしぶりね、トム。皆も、元気にしてたかしら?」
「お姉ちゃん!」
 柔らかな笑みを浮かべて視線を合わせるアオイの姿に、子供たちが一斉に駆け寄った。
「お姉ちゃんのお歌、僕覚えてるよ」
「私も!」
「みんなでよく歌うんだよ」
「そう。嬉しいわ」
 アオイに駆け寄っては口々に話しかける子供たち一人ひとりに、丁寧に答えを返す。
 和らいだ空気の中、ただ一人トムだけが距離を取って佇んでいた。
「トムも、アオイおねーちゃんの歌うたうの?」
 無邪気に話しかける祭莉から、トムは一歩下がって距離を置く。その姿にびっくりしたように目を見開く祭莉に、トムは、祭莉と杏を交互に見つめた。
「君たちが、その……先生や、マリアを……?」
「そう。おいら達が倒した」
「……」
 祭莉の声に、トムは俯いた。
 人狼を殺戮し、村人達を支配していたオブリビオンだが、トムにとっては大事な家族だった。非道いことをしていたと知っても、すぐに嫌いにはなれない。
 複雑そうな表情のトムに気づいたのか。祭莉はふと真面目な表情を浮かべるとトムの手を取った。
「トム達が、マリアやせんせーを大事に思ってたのは知ってる。けど、倒したことは後悔してないし正しいって思ってる。だって」
 握られる手のあたたかさに何も言えないトムに、祭莉はとびきりの笑顔を向けた。
「トム。人狼は天寿を全うするまで生きなきゃだよー。……せんせーも、そう言ってた」
「先生も……」
 唇を噛んだトムの目から、涙がこぼれ落ちる。泣き崩れるトムを遠巻きに見つめる村人を見渡した杏は、複雑そうに顔を見合わせる大人たちへ問いかけた。
「子供を差し出す、それは、あなた達にも守る大切なものがあるから?」
「そうだよ! 俺たちだって我が身がかわいい子供たちがかわいい! それは悪いことなのか?」
 杏の問に、叫ぶように応えた男の目をじっと覗き込む。たじろぐ男に、杏はなおも続けた。
「でも、守られ続けた最後には、自分の守りたいものに守られることになる。それでもいい? いつまでこの子達に守ってもらうの?」
「じゃあ! 俺たちはどうしろっていうんだ! 領主に逆らって皆殺しになればいいってか?」
 狂ったように叫ぶ男に、アオイは静かに首を横に振った。
「過去に後悔があるならば抗ってほしい。そのためにも、あなた達を私達に守らせて下さい」
 アオイが静かに村人達に告げた時、戦闘の音が響いた。
 公会堂近くで、仲間がついに敵と交戦したのだ。立ち上がったアオイは、村人達を見渡した。
「皆さんは公会堂から出ないでください。なるべく壁から離れて」
「アンタが戦うのか!? ならオレたちが……」
 立ち上がったアオイの華奢な手に、村の男が焦った声を上げる。立ち上がりかけた男たちを座らせたアオイは、仲間達を見渡した。
「たとえ私ひとりの力は及ばなくても、たくさんのヒーローがいてくれるから大丈夫」
「皆、集まって?」
 村人達の前に立った杏は、幅広の刀の形にした灯る陽光でオーラを灯した。
 オーラ防御が場を包み込む。同時に詠唱を開始した杏は、【白銀の仲間】を召喚した。
 見えない狼の群れが、公会堂の真ん中で身を寄せ合う村人達の周囲に展開する。
 その時、ドアが破られた。
 裏口から中へ侵入してきた朱殷の隷属戦士が、村人達へフレイルを振り上げる。恐怖の叫びを上げる村人達がパニックを起こすより早く、杏は動いた。
 召喚した白銀の仲間が隷属戦士に一斉に襲いかかる。大きくフレイルを振り回しながら村人へ迫る隷属戦士を、杏は灯る陽光で受け止めた。
 睨み合うことしばし。見えない白銀の仲間に弾き飛ばされ、態勢を崩した隷属戦士に、杏は刀を振り下ろす。
「ここは、わたしが必ず守る。だからまつりん……頑張って」
 両断され、黒い煙となって消えた隷属戦士を見送った杏は、次の襲撃に備えて剣を構えた。


 敵の気配に駆け出した祭莉は、迫る隷属戦士に如意みたいな棒を手に大きく跳ねた。
 人狼の耳と尻尾を隠そうともしない祭莉の姿に、隷属戦士達が迫る。
「人狼ダ」
「人狼ノ子供ダ」
「捕ラエロ」
 隷属戦士達の攻撃を身軽にいなし、迫るフレイルを見切って棒を地面に突き刺す。
 棒高跳びの要領で隷属戦士達の上空へ跳ぶと、向かい側へと着地した。
 地を蹴り駆け出す祭莉の周囲を、虹色の霧が覆った。霧に視界を塞がれた隷属戦士の攻撃が宙を切り、地面を深く抉りこむ。
 別の隷属戦士が祭莉に向けて盾を手に突進を仕掛けた時、赤い牡丹の花弁が舞った。
 広範囲にダメージを与える味方のユーベルコードに、不意を打たれた隷属戦士の動きが止まる。
 その隙を突いた祭莉は、鎧の隙を如意みたいな棒で深く突く。そのまま払い、返す柄で隷属戦士の頭を強打した祭莉は、敵を引きつけながら距離を取った。
 味方のユーベルコードは祭莉を守る。虹色の霧と赤い花弁が舞う中を巧みに移動し、引きつけ距離を取る。
 だが、数にものを言わせた隷属戦士が、盾を手に祭莉を取り囲む。
「捕ラエロ」
「人狼ヲ捕ラエロ」
 盾を手ににじり寄る隷属戦士達に、祭莉は叫んだ。
「人狼舐めんなー!」
 怒りと決意を載せて、大きく息を吸い込む。迫る隷属戦士達に、魂の咆哮が放たれた。
『BwWooyyeeーーーーー』
 公会堂を取り囲む隷属戦士達に向けて、無差別に放たれる魂の叫びが建物をビリビリと揺るがせる。
『守るって約束したんだ!』
 祭莉の心を乗せた咆哮が、隷属戦士達を打ち倒していった。


 時は少し遡る。
 公会堂の外を警戒していたシン・バントライン(逆光の愛・f04752)は、駆け寄るアオイに軽く手を上げて応えた。
「シンさん! コーエンさん!」
「アオイさん。中の様子は?」
 駆け寄るアオイの姿に、バントラインは心配そうに声を掛けた。
 村人達の事前避難はできない。ならば公会堂を死守する作戦へと変更したのだが、肝心の村人達がパニックを起こしたりしては元も子もない。
 バントラインの懸念は、アオイの笑顔でかき消された。
「大丈夫です。村人達は落ち着いていますし、杏さんがついていてくれています」
「そうですか。良かった」
「なら後は、ここを守り抜くだけですね。連れだって来ようが、突進して来ようが、敵の全てを全力で斬り捨てる! 誘導と援護をお願いします」
 戦いの気配に、どこか楽しそうなシン・コーエン(灼閃の・f13886)に、心強く頷きを返す。
 さっき敵の先遣隊とも言える一団が来たが、今すぐそばに隷属戦士の姿はない。だが確実に、敵の本隊は迫っていた。
 味方猟兵達と打ち合わせ、周囲への警戒態勢を整える。灼星剣を抜き、低く構えて迎撃の姿勢を整えるコーエンに、敵が迫った。
 公会堂を包囲するように押し寄せる朱赤の鎧の群れに、アオイは即座に詠唱を開始した。
「私の“海”、楽しもうか」
 重ねた指の間から、虹色の霧が溢れ出す。公会堂の周囲を波のように包み込んだ虹色の霧は幾重にも重なり、濃霧となって迫る隷属戦士達の行く手を惑わせた。
 アオイの詠唱に合わせて、バントラインはキラキラした宝珠を放り投げた。
「東風不爲吹愁去、春日偏能惹恨長……我が心を春嵐と成す」
 虹色の海に抱かれるように消えた宝珠は、バントラインの詠唱と同時に無数の赤牡丹の花弁に変化した。
 虹色の霧の波間からあふれる、赤い花弁の奔流が朱殷の鎧を撃つ。
 霧に隠れて不意を打つバントラインの攻撃は、隷属戦士を容赦なく打ち付ける。動きを止めた隷属戦士に、アオイが衝撃波を放った。
 二連続の攻撃が、隷属戦士を黒霧へと返していく。虹色と赤の霧に黒が混じった時、悪い視界の影から銀の弾丸が放たれた。
 場に満ちる霧に、視界が塞がれるのは猟兵達も同じ。第六感と野生の勘で敵の位置を把握していたバントラインに、その隙を抜けた攻撃が走る。
 ダメージを覚悟し剣を構えたバントラインの前に、氷の盾が現れた。
「シンさん!」
 現れた氷の盾が、銀の弾丸を弾く。
 隷属戦士の攻撃を一瞬早く察知したアオイが、意思の力で周囲の霧を氷結させ盾を作り出したのだ。
 銀の弾丸を回避し、弾道を読んだバントラインは第六感で隷属戦士の所在を探り当てると黒剣を振るった。
 君不知亡国恨に裂かれた隷属戦士を見送るバントラインに、アオイが駆け寄る。心配そうなアオイを安心させるように、バントラインは微笑んだ。
「ありがとうございます。仲間というのは頼もしいものですね」
「ヒーローも頼もしいです」
「え?」
 アオイの言葉に、バントラインはアオイに聞き返すが、アオイはクスクス笑うだけだった。
 笑みを納めたたアオイは、赤い花弁が一筋切れた道へ視線を向ける。
 その視線の先を追ったバントラインは、作戦が功を奏しているのを確認した。
 赤い花弁を避けた隷属戦士達が、薄くなった道へ誘導されるように向かっているのが見える。
 その先に感じる、激しい戦闘の気配。響く剣戟に、アオイは心配そうに呟いた。
「コーエンさんは大丈夫でしょうか」
「シンくんなら心配ない。彼は強いからね」
 心配そうに目を細めるアオイを安心させるように、バントラインは敢えておどけたような声を出す。
 実際、コーエンは強い。そして戦いを楽しむ余裕もある。
 バントラインとアオイが生み出した花弁と霧は、味方猟兵を助けてもいる。
 それぞれの場所で戦う仲間達を想ったバントラインは、面布の向こうで目を細めるとアオイに迫る隷属戦士に黒剣を振り下ろし霧へと還す。
「そうね。私達はコーエンさんの負担を少しでも軽くしなければ」
 笑みを納めたアオイは、迫る隷属戦士に衝撃波を放つ。
 フレイルを構えた隷属戦士がバントラインに攻撃を仕掛けた時、悲痛とも思える咆哮が響いた。
 人狼の咆哮に、隷属戦士達が動きを止める。その隙を突いた二人の連撃が、隷属戦士達を次々に霧へと返していった。


 激戦を極めていた。
 二人の誘導により集められた隷属戦士達が、次々にコーエンに攻撃を仕掛けていた。
 振り上げられるフレイルを見切り、がら空きになった胴に灼星剣を叩き込む。
 風属性を纏った刃が隷属戦士を真っ二つに叩き割り、その勢いで次に現れた隷属戦士を突き刺し引き裂く。
 細く長く作られた道に沿って現れる敵が全てではない。ダメージを覚悟して回り込んでくる隷属戦士の攻撃を第六感で察知したコーエンは、飛び交うマスケット銃の銀の銃弾を灼星剣で受け止める。
 舞うように戦うコーエンは、知らず口元に笑みを浮かべた。
 味方の援護で、この道へ来る隷属戦士の数は限られている。だが隷属戦士の数は多い。一瞬でも気を抜けば、容赦ない攻撃に晒される。
 戦いの場でしか味わえない高揚感。戦人としての一面を前面に出したコーエンは、連続する戦闘を心から楽しんでいた。
 オーラ防御で打ち付けてくる盾を受け止め、胴を切り裂いたコーエンは迫る気配に咄嗟に身を引いた。
 一瞬前までコーエンがいた場所に、フレイルが叩き込まれる。大きく地面を抉ったフレイルを引き抜く大男に、コーエンは剣を構えた。
「お前がケヴィンか」
「名乗ル名ナドナイ。俺はたダ、任務を全ウするだケだ!」
 再び大きく振り上げられたフレイルが、コーエンに迫る。咄嗟に剣を横に構え、刀身に鎖を巻き付け防御を図る。
 勢いを削がれたフレイルの鉄球が、コーエンの頭を打ち付ける。一瞬飛んだ意識の中に、わずかに残った映像が映し出された。

 非道を重ねる女魔術師に立ち上がったが、囚えられ呪われた鎧を与えられた。
 人としてはその時死んだ。
 妻と娘にもう一度会う。それだけで人の意思を保っていたが、二人とも死んだという。
 せめて墓石を取り戻さなければ、今まで意識を保った甲斐もない。

 流れ込んできたケヴィンの意識を意思の力で振り払ったコーエンは、睨み合いながら灼星剣を消した。
 同時にバックステップ。フレイルを振りほどいたコーエンは、改めて剣を構えるとケヴィンに向き合った。
 態勢を整えたケヴィンは、改めてフレイルを構えた。
「ドケ。中ノ子供を連れテ戻らなけレば」
「子供を連れて戻っても、望むものは手に入らないぞ」
「嘘をつくナ!」
 空気を震わせるような怒声に、コーエンは一瞬だけ黙祷する。
 この男も、女魔術師の犠牲者だ。おそらく、今まで斬り伏せてきた隷属戦士全員も。
 救うことができない魂を救うために、コーエンができることはただ一つだった。
「ここから先は行き止まりだ。そして逃がすつもりもない。せめて魔術師の呪縛からは解き放ってやる。……唸れ、灼星剣!」
 詠唱と同時に、灼星剣が輝きを増す。威力を増した剣を構えたコーエンが踏み込むと同時に、ケヴィンもまた地を蹴る。
 交差する剣とフレイル。ケヴィンが相打ち覚悟でフレイルを振り上げた時、人狼咆哮が響いた。
 響く人狼の叫びに、フレイルが一瞬止まる。人狼病に罹っていた娘を思い出したのか、回避すらしないケヴィンに灼星剣が迫った。
 初撃に続く二刀目が、ケヴィンを切り裂く。【灼閃・連星】を受けたケヴィンは、最後の力で空に手を伸ばす。
「迎えだ」
 コーエンの声に、虹色の霧が人の姿に変わる。ケヴィンを迎えに来たように手を差し伸べる大小二つの人形の霧に、鎧の奥の目が優しい光を帯びると鎧が黒い霧と化す。
 隷属戦士が空に解け、虹色の霧が晴れる。
 誰もいなくなった公会堂前に、魔力が集った。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『朱殷の魔術師』

POW   :    その技、興味深いわ
対象のユーベルコードを防御すると、それを【鮮血の石が煌く杖に記録し】、1度だけ借用できる。戦闘終了後解除される。
SPD   :    美しく踊って頂戴?
自身が装備する【硝子瓶から追尾能力を持つ鮮血の刃】をレベル×1個複製し、念力で全てばらばらに操作する。
WIZ   :    朱く赤く紅く咲きましょう
全身を【薔薇が香る瘴気】で覆い、自身が敵から受けた【喜怒哀楽の感情の強さ】に比例した戦闘力増強と、生命力吸収能力を得る。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​


 公会堂前の広場に現れた魔法陣の中央に、女が降り立った。
 背中に流した長い銀の髪に、朱殷のドレス。杖と薬瓶を持った姿は、錬金術師のようにも見えた。
 冷酷な目をした女魔術師は、周囲を見渡すと失望の声を上げた。
「……無能ね」
 心底嫌そうな声を上げた女魔術師は、わずかに残った盾の欠片を踏み潰した。
「人狼を連れてくることさえできないなんて。本当に無能。でも困ったわ。無能でもいないと困るの。……そうだわ」
 子供のように手を叩いた女魔術師は、目を閉じ呪文を唱えた。
 女魔術師の周囲に、魔法陣が浮かび上がる。中から猟兵達の体格に合わせた朱殷の鎧を召喚すると、警戒する猟兵たちへ手を差し伸べた。
「あなた達に、私の新しい朱殷の隷属戦士になる栄誉を与えましょう。あなた達ならば間違いなく、素晴らしい隷属戦士になれるわ。手下として村人全員を隷属戦士にして与えてあげます。希少な血を持つ人狼を手放そうというのです。優しい私に感謝なさい」
「ふざけるな!」
 怒りの声を上げた猟兵が、ユーベルコードを放つ。
 ひらりと避けた女魔術師は、心底理解できないといった目で猟兵を見た。
「私の隷属戦士となる栄誉を理解できないの? 賢者の石の精製が成った暁には、あなた達は私の手下として思うままの栄光を手にできるというのに」
 首を横に振った女魔術師は、鎧を消すと硝子瓶の蓋を開けた。
 ゴボリと音を立てながら、鮮血の刃が溢れ出す。弄ぶように刃を操った女魔術師は、猟兵たちへ向けて解き放った。
 回避した先の地面が大きく裂ける。刃を手元に回収した女魔術師は、楽しそうに嗤った。
「結局、今までと同じね。あなた達を死ぬほどの目に遭わせてから、鎧を与えましょう。抵抗する魂が鎧に侵食されていくさまを見るのは楽しいの。せいぜい綺麗な声で鳴いて頂戴?」
 くつくつと嗤う女魔術師に、猟兵達は駆け出した。


※第三章のプレイングは7月26日(金)より受付させていただきます。
※第二章の間違いです。すみません。
館野・敬輔
【SPD】
アドリブ連携可

…すまない、遅くなった
ここから僕も加勢しよう

生憎だが、お前の言っていることは何一つ理解できない
しかも横取りを企んでいるとはな

…ああ、怒りが抑えきれないよ
人狼も村人達も、そしてケヴィンさんも平然と道具扱いするとは

お前が得られるのは、新しい戦士ではなく「死」だ
ここから生きて帰れると思うな!

鮮血の刃を「地形の利用、第六感、見切り、残像」で回避、ないしは「武器受け、オーラ防御」で防御した後
「2回攻撃、怪力」を乗せた【憎悪と闘争のダンス・マカブル】の「カウンター」18連撃で斬り刻む(※味方攻撃なし)

…さあ、僕と死の舞踏を踊ろうか
お前が死ぬまで付き合ってもらうぞ!!


ハロ・シエラ
私には趣味の悪い鎧を纏うつもりはありません。
それにその栄光と言うのも手に入らないでしょう。
ここであなたは骸の海へ還り、研究を続ける事ができなくなるからです。

さて、敵はユーベルコードを真似てくるようですね。
私は武器を強化するユーベルコードで挑みます。
攻撃するのに激しく動かないといけないのに体力を使うのが欠点ですが、その欠点もやはりコピーされるでしょう。
後は体力勝負。
相手の動きを【見切り】、【早業】で積極的に攻撃を仕掛けていきます。
とは言え敵の武器も強化されています。
【第六感】で攻撃を察知し【カウンター】で返していきたい所です。

まぁ、借用されなければそれでも構いません。
それはそれで有利ですしね。



 悠然と微笑む女魔術師は、ふと顔を上げるとハロ・シエラ(ソード&ダガー・f13966)の姿をまじまじと見つめた。
 小柄なハロの姿に頷いた女魔術師は、指をつい、と宙に這わせると朱殷の鎧を召喚した。
「可愛らしいお嬢さん。あなたにはこの鎧が似合いそうね。見て。胸元の血痕が花みたいに見えるでしょう? きっと似合うわ」
 まるでドレスを見立てるかのように嬉々として朱殷の鎧を差し出す女魔術師に、ハロは心底嫌そうに吐き捨てた。
「私には趣味の悪い鎧を纏うつもりはありません」
「私の側近として立つのに、このくらいの鎧は必要よ? 女の子なのだもの。お洒落くらいしなければ私が恥ずかしいわ」
「あなたの側近として立つことも、絶対にあり得ません!」
 一筋の共感もなく女魔術師を切り捨てたハロは、驚きに目を見開く女魔術師に指を突きつけた。
「それに、あなたはあなたの言う栄光とやらも手に入らないでしょう。ここであなたは骸の海へ還り、研究を続ける事ができなくなるからです」
「なんてことを言うの? 私が研究を続けられない? 有り得ないわ。そんなことを言う子はお仕置きしなければね」
「黙れ」
 二人の会話を黙って聞いていた館野・敬輔(人間の黒騎士・f14505)は、腹の底から沸き立つ怒りに大きく首を横に振った。
「生憎だが、お前の言っていることは何一つ理解できない。しかも横取りを企んでいるとはな」
「横取りだなんて、人聞きの悪い。あの薬が混じった人狼の血を無為な浪費に費やすより賢者の石錬成の礎になった方が、ずっと世界の役に立つ。そうではなくて?」
 理解できない敬輔に理解できない、といったように女魔術師は首をかしげる。その様子に、敬輔は手を握り締めた。
「無為な浪費……?」
 言うに事欠いて、この女魔術師は人狼が真っ当に生きることを「無為な浪費」と断じたのだ。
 青白い炎のような怒りを顕にする敬輔に、女魔術師はわざとらしく自身を抱きしめた。
「あら怖い。あなた怒っているの?」
「ああ、怒りが抑えきれないよ。人狼も村人達も、そしてケヴィンさんも平然と道具扱いするとは」
 女魔術師への怒りに、右の青の瞳が輝く。黒剣を鞘走った敬輔は、地面を蹴り駆け出した。
 迫る敬輔に、女魔術師が手にした薬瓶の封を切る。薬瓶から迸る犠牲者の血が鋭いナイフとなり、敬輔を切り裂かんと迫った。
 鮮血のナイフを第六感で見切り、回避する。自動で追尾してくる血の刃に腕を切り裂かれながらも、オーラ防御で痛みを堪え動きを止めない。
 踊るような敬輔の動きに、ハロも合わせた。
 敬輔と同時に駆け出したハロは抜き放ったリトルフォックスで女魔術師に迫る。小柄なハロの素早い動きに、レイピアは遺憾なく応えて鋭い突きを女魔術師に穿つ。
 連撃を仕掛けるハロの長い黒髪が、一瞬遅れてついてくる。その髪はどんなドレスよりも、今のハロを美しく彩っていた。
 ステップを踏むようなハロの動きに合わせて、敬輔は大きく踏み込んだ。
「……さあ、僕と死の舞踏を踊ろうか。お前が死ぬまで付き合ってもらうぞ!!」
 軽やかで鋭いハロの攻撃に合わせて、怪力を乗せた敬輔の連撃が迫る。攻撃力を増した【憎悪と闘争のダンス・マカブル】がその名の通り踊るように女魔術師に迫る。
 敬輔の動きに合わせて、女魔術師も舞う。軽やかにステップを踏みながら回避を試みる女魔術師の動きを、ハロのリトルフォックスが蜂のように刺して牽制を掛ける。
 ユーベルコードによる高速の連撃と、それに呼応する女魔術師のステップ。それらの動きにぴたりと合わせるレイピアの動き。
 三人の戦闘は、円を描くように舞われる情熱的なダンスだった。
 連撃に体力を消耗したハロの隙を突いた女魔術師の攻撃が迫る。
 第六感で辛うじて回避したハロは、消耗した体力に知らず笑いを浮かべた。
「吼え猛れ、『シルバーフォックス』!!!」
 詠唱と同時に、レイピアが霊力開放状態となる。殺傷力を増したレイピアが、女魔術師に迫った。
 敬輔の連撃の終わりに合わせて解放されたシルバーフォックスの刀身が淡く輝く。強力な力を得たシルバーフォックスが女魔術師を穿ち、深いダメージを与えていく。
 早業から繰り出される直線的な動きに、女魔術師もステップを変える。鋭い直線となったダンスに、女魔術師は杖を振り上げた。
「その技、興味深いわ」
 シルバーフォックスが刺さった杖から赤い光が溢れ出し、ユーベルコードを記憶する。杖を霊力開放状態とした女魔術師は、杖を振り抜いた。
 杖から放たれる衝撃波がハロに迫る。襲い来る衝撃波を防御するハロに、女魔術師は次々に衝撃波を放った。
「どうしたの? さっきから動きが鈍くてよ?」
「それはあなたです」
 衝撃波を第六感で回避したハロは、大きく踏み込むとカウンターで女魔術師を貫く。
 無尽蔵の体力で二人の攻撃を捌いていた女魔術師の膝が、ふいに折れた。
 ユーベルコードと同時にコピーした疲労が、女魔術師を襲う。ダンスを中断させた女魔術師に、ハロと敬輔の渾身の一撃が同時に翻った。
 女魔術師の口から、血が一筋流れる。よろりと立ち上がった女魔術師は、攻撃態勢を整える二人を振り返った。
「わからないわ。道具を道具として扱って何がいけなくて?」
「人狼も村人も、あなたの道具などではないからです」
 油断なくレイピアを構えるハロに、女魔術師は大きく首を振った。
「道具ではないなら手下ね。それならいいでしょう? 私の戦士たち」
「お前が得られるのは、新しい戦士ではなく「死」だ。ここから生きて帰れると思うな!」
「威勢のいいこと。あなたはあなたの鎧を朱殷に染めて隷属させてあげましょう!」
 高らかに笑う女魔術師に、二人は同時に攻撃を仕掛けた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

シリン・カービン
【WIZ】
祭莉(f16554)、杏(f16565)の力になるために。
他の猟兵にも積極的に助力を。

この村に関わりを持った者の怒りは察するに余ります。
この怒りが敵を強化するのは理不尽極まりますが、
敵の攻撃を受けなければ生命力は吸収されないはず。

【スプライト・ハイド】で姿を消し、
攻撃を受けようとしている仲間に駆け寄ります。
手を掴んで透明化し、そのまま引いて攻撃を回避。
敵の死角で手を放し奇襲に繋げます。
疲労が溜まる前に離脱して解除。
精霊猟銃で狙撃しつつ次のタイミングを測ります。

疲労を滲ませながらも、仲間の損耗を抑え
敵を消耗させるために続けます。
見ていますか、村の民。
私は何も諦めない。

アドリブ・連携可。


館野・敬輔
【SPD】
アドリブ連携歓迎
※2回目なので成功数到達後は却下可

所詮お前にとっては何もかも道具か
自分の思うが侭に動き、使われなければ意味がない

(底冷えした声で)
…なら、お前を「何も使えない」絶望に叩き込むだけだ
死と言う名の絶望にな

他の猟兵の戦闘中に「目立たない、地形の利用」で隠れながら移動
用意されている朱殷の鎧を「鎧砕き」で全て砕いておく

女魔術師が気づく、もしくは鎧を全部砕いたら
背後から「2回攻撃」+【憎悪と闘争のダンス・マカブル】
2度目だが身体への負荷は考えない
鮮血の刃は「見切り、第六感、武器受け、オーラ防御」で回避か防御

生憎だな、ご自慢の鎧はもうないさ
最後まで死の舞踏を踊りやがれ!



 召喚され宙に浮く朱殷の鎧が、空中に不気味に浮かび上がる。
 胸元に薔薇の花のような朱殷の染みを持つ鎧に、シリン・カービン(緑の狩り人・f04146)は眉を顰めた。
 この鎧は、抵抗した村人達に与えられた。その呪いは魂を侵食し、かつて守ろうとした村人達を殺す尖兵となったのだという。
 隷属戦士となった者の、犠牲者の家族や友人の怒りや悲しみはいかほどのものだったのだろう。
 どれほどの嘆きを、悲しみを生み出したのか。
 呪われた鎧は、このままにしておいたら女魔術師を倒した後も禍根を残しかねない。
 同じことを思ったのだろう。隣に立つ館野・敬輔(人間の黒騎士・f14505)は、激しい怒りを辛うじて飲み込むように歯を食いしばった。
「こんな鎧で、人を道具にされてたまるか……!」
 女魔術師と距離を取った敬輔は鎧を砕こうと接近を試みるが、女魔術師の注意は戦闘中も鎧に払われている。下手に近づいて朱殷の鎧を発動させられるとこちらが不利になる。
 敬輔を振り返ったシリンは、そっと手を差し出した。
「敬輔さん。……あの鎧を砕きましょう。私の手を取って」
 シリンの声に頷いた敬輔は、華奢な手に自分の手を重ねる。
 剣士の手を握ったシリンは、ユーベルコードを発動させた。
「いたずら妖精いたずら妖精、その手を繋げ」
 詠唱と同時に視界がゆがむ。姿を完全に消した二人は、注意深く朱殷の鎧に近づいた。
 激戦に気を取られた女魔術師が、二人に気づく様子はない。鎧の間近まで近づいた敬輔は、手を離すと黒剣に力を込め朱殷の鎧に叩き込んだ。
 聖なる精霊を召喚し、銃弾に宿したシリンの精霊猟銃が同時に放たれる。斬撃と銃弾。二つの違う攻撃に晒された朱殷の鎧に、雷のようなヒビが入った。
 呪われた鎧が呪われた音を立てて破壊される。再び手を繋ぎ透明になった二人は、一足飛びに鎧に近づく女魔術師の背後へと駆けた。
「私の傑作が……!」
「生憎だな、ご自慢の鎧はもうないさ」
 断末魔のような破壊音に駆け寄る女魔術師の背中が、袈裟懸けに斬られる。
 同時に放つシリンの精霊猟銃の銃弾が穿つ。不意打ちで攻撃を仕掛けたシリンは、疲労でぐらつく視界を叱咤した。
 透明になるユーベルコードは、術者の疲労を招く。ここで倒れ込んでしまいたいが、仲間の損耗を抑え、敵を消耗させるために戦うのをやめない。
「私は何も諦めない。あなたを倒し、鎧を破壊し、全ての脅威が去ったことを村の人達に見せるのです!」
「ならばあなた達を倒し、脅威は永遠に存在するのだと村人達に示して差し上げましょう!」
 高らかに宣言した女魔術師は、薬瓶の封を切ると敬輔に向けて放った。
 鮮血の凶刃が、敬輔に迫る。その刃が敬輔を切り裂く瞬間、その姿が消えた。
 再び【スプライト・ハイド】を発動させたシリンは、敬輔の手を取ると駆け出した。
 攻撃を回避し、死角へ回り込み攻撃を仕掛ける。シリンの精霊猟銃に狙い撃ちされた女魔術師は、杖を弄びながら小さく笑った。
「あの鎧を錬成するのも、意外と時間と手間がかかるのよ? 私の期待に見合うだけの役に立ってくれるかはわからないけれどね」
「所詮お前にとっては何もかも道具か。自分の思うが侭に動き、使われなければ意味がない」
「それ以外、何だというの?」
 心底不思議そうに首を傾げる女魔術師に、敬輔は底冷えした声を上げた。
「……なら、お前を「何も使えない」絶望に叩き込むだけだ。死と言う名の絶望にな」
 体の底から湧き上がるような青白い怒りに身を任せた敬輔は、黒剣を抜き放つと女魔術師に迫った。
 槍のように駆ける敬輔に、衝撃波が迫る。全てを切り裂く攻撃を見切り、第六感で避けた敬輔は再び【憎悪と闘争のダンス・マカブル】を放った。
「怒りと憎悪、そして闘争心を力に替えて……貴様を斬り刻む!!」
 敬輔の右の青い目が輝き、黒剣が疾風のように閃く。女魔術師に向けて放たれる18連撃に、身体が悲鳴を上げる。
 全身を襲う負荷に、寿命が削られる嫌な感覚。それらを全て無視した敬輔は、身を焼き尽くすような怒りに任せて女魔術師を切り刻む。
「最後まで死の舞踏を踊りやがれ!」
「敬輔さん!」
 我を忘れるような攻撃を繰り出す敬輔に、女魔術師の反撃が迫る。
 杖の一撃が叩き込まれる寸前、敬輔の姿が消えた。
 タイミングを見計らい敬輔の手を引いたシリンが、再び透明になり距離を取る。
「無茶をしないでください!」
「……シリンさんこそ」
 少し冷静さを取り戻した敬輔は、疲労感で立っているのがやっとのシリンを気遣う。
 目を見交わした二人は、何もない空間に目をやる。
 これで、少なくとも見える範囲では朱殷の鎧の呪いは防げただろう。
 頷きあった二人は、得物を手に取ると駆け出した。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

木元・祭莉
アンちゃん(f16565)と(シリン姉ちゃんに手を振り)。

わあ。
頑張ってた仲間に掛ける言葉、「無能」だけ?
おばちゃん、キレイだけど、性格悪いね!

血の赤色、好き?
おいらも好きだよ。
自分と敵のはね。生きてるってかんじ、する!

でも、他の人のは見たくないなあ。
だって、嫌そう。
嫌がる人に嫌なコトしちゃダメなんだよ!(知ってた?って顔)

そっか。
おばちゃん、ダメな人だ。
まあ、オブリビオンだもんね。しょうがないね。
じゃあ、倒すね!

舞踊の緩急つけた体術で、血刃をいなし。
舞扇の影を次々と投射し、近接で爆破。
目晦ましと同時に、夢の絆で侵食。
墓石、どこ?

他の絆を横取りしてるから、ダメになるんだよ。
骸の海で反省してね!


木元・杏
まつりん(祭莉・f16554)と
シリンや知ってる人の顔を見ると少し安心する
これが、人の絆
絆を押し付ける貴女には一生わからない……(首をこくん)
ん、もう死んでたね

中の村人達を思う
どうしようもない、仕方ない
そう思う気持ちは「仕方ない」
貴女が村を襲う、それは貴女がオブリビオンだから「仕方ない」
わたしが仕方ないと諦められないのは、まつりんが人狼病という事実
それ以外にわたしの感情が揺さぶられる事はない

今貴女がまつりんを狙っても
大丈夫、皆もいる
魔術師には何も与えず【華灯の舞】
うさみみメイドさん、行って
まつりんの爆風を隠れ蓑に近接させて、目潰し
払われても魔術師の長い髪を掴みロープ代わりに
反動も利用し回し蹴り




 時は少し遡る。
 鎧を破壊しようと間合いを測るシリンと敬輔をチラリと見た木元・祭莉(サムシングライクテンダネスハーフ・f16554)は、女魔術師の気を引くように前に出た。
「わあ。頑張ってた仲間に掛ける言葉、「無能」だけ?」
 心底げんなりした様子で女魔術師に言った祭莉に、女魔術師は心底不思議そうに首を傾げた。
「人狼の子供を攫ってくる。無抵抗な村人達に力を誇示する。ヴァンパイアなら誰でもできるおつかいさえできなかったのよ。私が「無能」と呼んで意識を向けてあげるだけ感謝してほしいくらいだわ」
「おばちゃん、キレイだけど、性格悪いね!」
「あなたは、可愛いけれど、口が悪いわね」
 太陽のような笑みを浮かべる祭莉と、妖艶な笑みを浮かべる女魔術師と。楽しげに微笑み合うが、お互い目は笑っていない。
 一触即発な空気に、木元・杏(微睡み兎・f16565)は静かに口を開いた。
「……どうしようもない、仕方ない。村の人達は皆そう言っていた」
 猟兵達の活躍で、公会堂の中にまで侵入した隷属戦士の数は多くはなかった。その全てを倒すことはできたが、村人達の心に残した傷は浅くない。
 身を竦め、支配に怯え、毎日をただやり過ごす。そのことが染みついてしまっている。
 実際、猟兵達がいなければマーサがどれほど抵抗しようとも人狼の子供を差し出しただろう。
 女魔術師の支配を受け入れ、災禍が通り過ぎるのをただ待っていただろう。
 村人達に、抗う術はないのだから。
「仕方ない。そう思う気持ちは「仕方ない」。貴女が村を襲う、それは貴女がオブリビオンだから「仕方ない」」
「あなたは物分りがいいのね。私は支配者。あなた達は隷属者。支配者の私が望むことを叶えるのが、隷属者の使命であり喜び。そうは思わなくて?」
「思わないわ」
 きっぱりと言い切った杏に、女魔術師は諭すように微笑んだ。
「それはあなたがまだ幼くて、私に隷属する歓びを知らないからよ。安心なさい。鎧を受け入れ隷属戦士になったら、至上の歓びが待っているわ」
「わたしが仕方ないと諦められないのは、まつりんが人狼病という事実。それ以外にわたしの感情が揺さぶられる事はない。だから、あなたの隷属戦士になんて死んでもならない」
「そう。なら、死になさいな!」
 苛立ったように吐き捨てた女魔術師の全身から、薔薇の香りが立ち込めた。
 同時に溢れ出す瘴気が、女魔術師を包み込む。朱殷のドレスを包み込んだ深紅の瘴気を纏った女魔術師は、杏に向けて衝撃波を放った。
「朱く赤く紅く咲きましょう? あなたの血の緋も見せて頂戴?」
 杏を切り裂くために放たれた衝撃波の前に、祭莉が躍り出た。杏を庇った祭莉が交差させた両腕が裂かれ、血が溢れ出す。
 痛みに眉を顰めた祭莉は、手のひらに流れてくる血を握り締めた。
「おばちゃん、血の赤色、好き?」
「この世で一番、素晴らしい色だと思うわ」
 祭莉の血をうっとりと見つめ体力を回復する女魔術師に、祭莉は頷いた。
「おいらも好きだよ。自分と敵のはね。生きてるってかんじ、する!」
「そう、なら……」
「でも、他の人のは見たくないなあ。だって、嫌そう。嫌がる人に嫌なコトしちゃダメなんだよ!」
 知ってた? と問いかける祭莉の表情に、女魔術師は不思議そうに首を傾げた。
「彼らは嫌ではないのよ。だってこの私が与える痛みだもの」
「……そっか」
 話がまるで通じない女魔術師に、祭莉はむしろ清々しい笑みを浮かべた。
「おばちゃん、ダメな人だ。まあ、オブリビオンだもんね。しょうがないね」
 軽く笑った祭莉は、その場で軽くジャンプすると地面を蹴った。
「じゃあ、倒すね!」
 一足飛びに間合いを詰めた祭莉の回し蹴りが、女魔術師に迫る。攻撃を杖で受け止めて振り回す遠心力に乗じた祭莉は、一旦距離を取り着地する。
 身軽な身のこなしに、女魔術師は楽しそうな声を上げた。
「あなたも踊りが好きなのね。いいわ。見ていてあげる。美しく踊って頂戴?」
 ガラスの小瓶の蓋を開けた女魔術師は、迸る血を祭莉に差し向けた。
 生き物のように祭莉を追尾する血の刃を、舞踊のような身のこなしで回避していく。
 すぐそこまで迫った血刃を素早く避け、ギリギリまで引きつけゆっくり回避する。
 血の刃と一緒に踊った祭莉は、手にした舞扇を女魔術師に放った。
 ひと連なりの動きとして放たれた舞扇の幻影が、次々と投射される。
 直後に爆破。舞扇が上げる派手な爆炎の向こうに、うさみみメイドさんが現れた。
 祭莉の爆風を隠れ蓑に近接したうさみみメイドさんは、女魔術師の目を狙い攻撃を放つ。
 反射的に杖で払われたうさみみメイドさんは、手をのばすと魔術師の長い髪を掴んだ。
 銀の髪をロープ代わりに反動をつけながら回り込み、死角から蹴り込む。
 一瞬視界を奪われた女魔術師に、夢の絆が侵食した。
『墓石、どこ?』
『返して』
『返してよ』
「うるさいわね。あんな石ころに何の価値があるの?」
 叫んだ女魔術師は、強引に夢の絆を振り払う。不愉快そうに視界を取り戻す女魔術師に、祭莉は舞扇を構えた。
「他の絆を横取りしてるから、ダメになるんだよ。骸の海で反省してね!」
「私はこの世界に、もう一度生を得たの。賢者の石を精錬するために!」
 叫んだ女魔術師は、背後で響く断末魔のような破壊音に振り返った。
 破壊された朱殷の鎧に、顔色を変えて駆け出す。その背中に杏は静かに言った。
「これが、人の絆。絆を押し付ける貴女には一生わからない……ん、もう死んでたね」
 杏を振り返りもしない女魔術師に、杏はこくん、と首を傾げた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

シン・コーエン
シンさん(f04752)・アオイさん(f04633)の二人と連携し、前衛で戦う/◆方針 「性格悪そうなおばはんが出てきたな。これ以上、近所迷惑振りまく前に斬ってしまおう」/◆対策 POW:灼星剣持ってないと借用しても使えません。 SPD及び借用UC:【見切り・第六感・残像・武器受け・オーラ防御】を組み合わせ、回避と受けを使い分けて対応。 WIZ:アオイさんにお任せ。必要なら【衝撃波・風の属性攻撃】で【薔薇が香る瘴気】を【吹き飛ばす】/◆攻撃 【ダッシュ・ジャンプ・空中戦・空中浮遊・残像・念動力】による空中殺法的な動き&死霊との連携で翻弄し、UC&【2回攻撃・衝撃波・風の属性攻撃】で縦横4分割


シン・バントライン
シンくん(f13886)、アオイさん(f04633)の二人と

この世界には人を人とも思わないこういうオブリビオンが本当に多い。
そういうヤツほど人に興味を示す性質の悪さ。
ただ普段はイラつく敵にもこの二人となら心が凪いでいる。
「…シンくんの言う通り性格の悪そうなオバはんですね。斬ってしまいましょう」

UC展開。
死霊二体を呼び出してシンくんを背後に隠しながら先行させる。
お互い交互にフェイントをかけながら攻撃させ狙いを絞らせない。
敵の行動は第六感と野生の勘で読む。
狙いは杖。
杖を破壊出来たら魔術師も攻撃しダメージを与える。
後はシンくんにお任せ。
UCがもし消えたら剣で対応。

敵能力への対応はアオイさんに一任。


アオイ・フジミヤ
シンさん(f04752)シンくん(f13886)と

さっきの戦士達の中にも村のひと、いたんだよね
残酷……あんな想いを聞きたくもないと心が重くなる
でも2人の掛け合いに笑ってしまう、心が軽くなる
そうだね、あんなおばはん退治だね!

後衛から2人を支援
UCを高速詠唱、相手UCを波で流して相殺を狙う
SPDに対してはOPで見ているので対応は可能なはず
POWとWIZに関しても他の猟兵達の戦いを見て記憶

特にWIZのUCに注意、シンくんたちの攻撃の際に集中して対応
シンさんに攻撃が及びそうなら衝撃波で邪魔をする

仲間に手を出さないで
守りたい想いなんて気持ちも、あなたには理解できないでしょうけれど

〇アドリブ歓迎



 連撃を受け距離を取った女魔術師の姿に、シン・コーエン(灼閃の・f13886)は軽くため息をついた。
 猟兵達の連撃を受けて、女魔術師にも余裕がなくなってきたのか。ヒステリックな様子を見せ始める女魔術師の姿は正直醜い。
「これはこれは。性格悪そうなおばはんが出てきたな」
「本当に、人を人とも思わない。この世界にはこういうオブリビオンが本当に多い」
 コーエンの言葉に深く頷いたシン・バントライン(逆光の愛・f04752)は、後ろで手を握り締めるアオイ・フジミヤ(青碧海の欠片・f04633)を振り返った。
 戦いを見守るアオイの顔色が、心なしか良くないように見える。
 さっきまで戦っていた朱殷の隷属戦士達は、女魔術師に呪いの鎧を与えられた村人達の成れの果てだという。
 ケヴィンもこの村の出身だというが、その他にもこの村のひとがいたのだろう。
 アオイ達を襲った、朱殷の隷属戦士達の大軍。あれほどの数の人々が、鎧に囚えられ魂を殺されてきたのだ。
「残酷……」
 ぽつりと呟いたアオイは、蘇る朱殷の隷属戦士達の断末魔に頭を振った。
 あんな想いを聞きたくもないと、重くなる心を何とか叱咤する。そんなアオイに、コーエンはおどけたように肩を竦めた。
「ああいうおばはんは、これ以上近所迷惑振りまく前に斬ってしまおう」
「……シンくんの言う通り、性格の悪そうなオバはんですね。斬ってしまいましょう」
 冗談めかして返すバントラインが差し出す拳に、コーエンが拳を重ねる。
 二人の掛け合いに、アオイは思わず笑った。
 笑うと心が軽くなる。この二人がついてくれていれば、どんな辛いことだって乗り越えられる。そんな気がした。
「そうだね、あんなおばはん退治だね!」
 合わされる拳に、アオイも拳を合わせる。三方向から合わされた拳を乾杯するように離したコーエンは、隙を見せた女魔術師に向けて矢のように駆け出した。
 大きく振りかざした灼星剣を、女魔術師に向けて叩き込む。その攻撃を読んで避けた女魔術師の行く先に、死霊騎士の持つ剣が迫った。
 辛うじて受けた杖の奥で、女魔術師が歯を食いしばる。動きを止めた女魔術師に、死霊蛇竜の顎が迫った。
 食らいつくす勢いの鋭い牙に、女魔術師が苦痛の声を上げる。
「この、爬虫類風情が!」
 叫ぶ女魔術師は、杖を大きく振るい邪竜と騎士を振り払うと距離を取った。
 手にした杖を構え、詠唱を開始する。その声を聞いたアオイは高速詠唱を開始した。
「朱く赤く紅く咲きましょう」
「私の”海”、全部流そう」
 女魔術師のユーベルコードが周囲を赤く染める。その赤と薔薇の香りを洗い流すように、翡翠や瑠璃色の海が溢れ出す。
 せめぎ合い、拮抗するユーベルコードは紫色には染まらない。やがてアオイが放つ青い海が全てを押し流すように女魔術師を薙ぎ、ユーベルコードを消し去っていく。
 消し去られたユーベルコードに、女魔術師は目を見開く。
「隙ありです!」
 言い放ったコーエンは、低い姿勢から一息に女魔術師との距離を詰める。
 下段からの攻撃を警戒する女魔術師の視線が地面へ向いた時、そこにコーエンの姿はない。
 地面を蹴り大きくジャンプしたコーエンは、振りかぶった剣に勢いを乗せて女魔術師に斬りかかる。
 そのまま念動力で自分の身体を浮かせたコーエンは、空中から斬撃を放った。
 咄嗟に反応し、杖で攻撃を受け止めた女魔術師と睨み合う。
 ギリギリと食い込む刃に、杖を大きく払った女魔術師は態勢を立て直す。同時に放った衝撃波がコーエンを切り裂く前に地を蹴り駆け出した。
 低い姿勢のまま駆けたコーエンは、下から上に勢いよく切り裂く。バックステップで避けた女魔術師に、死霊騎士が迫った。
 無言で振りかぶる剣に合わせて、邪竜のブレスが叩き込まれる。
 コーエンの攻撃が当たろうが避けられようが、確実に女魔術師にダメージがいく。
 連携攻撃を受けた女魔術師は、術者であるバントラインを睨みつけた。
「あなたの攻撃は邪魔なの! 消えなさい!」
 女魔術師が、死霊達を召喚するバントラインに向けて衝撃波を放とうとする。その動作を見極めたアオイは、対抗するように衝撃波を女魔術師に放った。
 不意打ちのように放たれる攻撃に、女魔術師の狙いが狂う。公会堂の壁を崩壊させる衝撃波に、建物の中から悲鳴が聞こえる。
 村人達の存在に、女魔術師は勝ち誇ったように微笑んだ。
「そういえば、人狼がそこにいるのね。先に連れてきてしまいましょうか」
「村人達にに手を出さないで」
 凛と言い放ったアオイは、女魔術師の目を覗き込んだ。
「守りたい想い なんて気持ちも、あなたには理解できないでしょうけれど」
「理解できないわね。私は何も、村人を殺し尽くすだなんて言っていないの」
 アオイの視線を真っ向から受け止めた女魔術師は、公会堂を指差した。その先には避難した村人が、先生の治療を受けた人狼の子供たちがいる。
「私はただ、珍しい血を持つ人狼を差し出せと言っただけ。村人は大事な血液源だもの。狩り尽くすようなことはしないわ。賢者の石の精錬に支障が出るもの」
 子供のように純粋な目で首を傾げる女魔術師に、バントラインはため息をついた。
 凶悪なオブリビオンほど、人に興味を示す性質の悪さ。普段なら嫌悪感から悪態の一つもつくが、今は不思議と心が凪ぐ。
 バントラインは、ともに戦う二人を改めて見る。一人でこの女魔術師に相対していたら、もっと苦戦を強いられただろう。
 背中を預けられる、背中を支援できる二人の存在が、バントラインの心から苛立ちを消し去り気持ちを安定させていた。
「シンくん!」
「消え去れ!」
 意識を逸らす女魔術師に、コーエンの灼星剣が迫る。
 同時に死霊騎士と死霊邪竜が、二方向から女魔術師に攻撃を仕掛ける。
 息の合った三連携に、女魔術師の迎撃の手が一瞬止まる。どの攻撃を受け止めるのかで勝敗が決まる。迷ったのはほんのわずかな時間。女魔術師はコーエンの攻撃を受け止めた。
 一瞬の悩みが女魔術師の態勢を不利なものにした。
 振り返りコーエンの剣を斜めに受け止めた女魔術師の杖に、ヒビが入った。
 その瞬間、コーエンは叫んだ。
「灼光の刃よ全てを両断せよ!」
 詠唱と同時に、【万物両断】が発動する。女魔術師の杖を両断した灼星剣は、その勢いのまま女魔術師を縦に真っ二つに引き裂く。
 同時に、女魔術師の背中に走る死霊騎士の剣が胴を両断するように横に切り裂く。
 縦横に切り裂かれた女魔術師に、止めとばかりに死霊邪竜のブレスが炸裂した。
 血を吐き、地面に膝をついた女魔術師が、折れた杖を手に立ち上がる。
「この……人間風情が! 賢者の石を精錬するという崇高な目的を理解しないだなんて!」
「目的のために手段を選ばない。お前に掛ける慈悲はない!」
 灼星剣を突きつけるコーエンに、女魔術師は歯ぎしりで応えた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

北条・優希斗
連携・声掛け可
…これなら先生の方が余程マシだったな
あの先生は人狼を救うという願いを大義名分に人体実験を行なっていた
許される事では無いが、まだ信念があると思えた
だがお前にはあの先生の様な信念は毛程も感じられない
さっさと骸の海へ沈め、愚者の魔術師(UC発動)
UCで鮮血の刃の軌道を見切り、残像で自分の標的をずらしつつダッシュ+戦闘知識+地形の利用で攻撃を回避しながら夕顔でカウンターして締め上げて動きを束縛する
そのまま先制攻撃+ダッシュで肉薄、月下美人と蒼月を引き抜き串刺し+傷口を抉る+鎧砕き+早業+二回攻撃で斬撃を放って切り刻む
死角からの刃はオーラ防御で弾く
「どうした? この程度か魔術師様?」


リーヴァルディ・カーライル
…ん。まだ気付いていないようね。
お前は戯れに人狼を狩ろうとしていたようだけど、
ここが既に吸血鬼を狩る場に変化していたことに…。

“写し身の呪詛”を使い存在感のある自身の残像を形成
殺気を発して敵の第六感に訴え攻撃を集める囮にしつつ、
空中戦を行う“血の翼”を広げ上空から目立たないように接近
敵の動作を【吸血鬼狩りの業】で見切り【元型】を発動

…錬金術の行程は分解と解析、そして再構築。
ならばその過程を妨害すれば…お前の術は機能しない。

敵の生命力を吸収する瘴気を中和するオーラで防御し、
錬金術を解体する魔力を溜めた大鎌で敵の装備を砕いた後、
怪力任せになぎ払い傷口を抉る2回攻撃を行う

名付けて、愚者の型…なんてね



 叫ぶ女魔術師に、北条・優希斗(人間の妖剣士・f02283)は嫌悪感も顕にため息をついた。
「……これなら先生の方が余程マシだったな」
 優希斗の声に、女魔術師はぴくりと顔を上げた。折れた杖を握り締めた女魔術師は、優希斗をゆらりと睨みつけながら底冷えのする声を上げる。
「……どういうことかしら?」
「あの先生は人狼を救うという願いを大義名分に人体実験を行なっていた。許される事では無いが、まだ信念があると思えた」
 思い出される先生の信念。子供の人狼を救うという執念。その思いは歪み、決して許されるものではないが、少なくとも子供たちには笑顔を向けていた。
「だがお前には、あの先生の様な信念は毛程も感じられない。研究者としても下の下だな」
「言うに事欠いて、この人間風情がぁっ!」
 鬼のような形相で優希斗に向けて叫んだ女魔術師は、一際大きな薬瓶の封を切った。薬瓶からは鮮血と共に怨念も溢れ出し、新しい犠牲者を求めて優希斗に迫った。
「死になさい! この私をあんな医者崩れの下に見たこと、死んでも後悔させてやるわ!」
「うるさい。さっさと骸の海へ沈め、愚者の魔術師」
 鮮血が優希斗を引き裂く刹那、蒼穹の瞳が未来を見抜いた。
 複雑に絡み合うように襲う鮮血の軌道を見切った優希斗は、その全てを回避する。
 攻撃を避けた優希斗を、鮮血が追尾する。その操作に嗜虐的な笑みを浮かべる女魔術師は、ざわりと感じる存在感に振り返った。
「……ん。まだ気付いていないようね。お前は戯れに人狼を狩ろうとしていたようだけど、ここが既に吸血鬼を狩る場に変化していたことに……」
「私を、狩る?」
 怒りも顕にした女魔術師の視線の先で、リーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)が言い放つ。
 冷徹に見下すリーヴァルディの姿に、女魔術師は衝撃波を放った。
「小娘が。私を狩ろうだなんて大口、二度と叩けないようにして差し上げるわ!」
 集中させた衝撃波がリーヴァルディを襲う。胴を真っ二つに両断されたリーヴァルディの姿に、女魔術師は勝利の笑みを浮かべた。
 その笑みが直後にひきつる。真っ二つにされたリーヴァルディからは血が一滴も流れることはなく、霧のように消えていく。
「どこに消えたの!?」
「ここよ」
 冷静な声が、上空より響く。写し身の呪詛が映す残像を消したリーヴァルディは、広げた血の翼を羽ばたかせると急降下しながらユーベルコードを発動させる。
 迎撃するように杖を構えた女魔術師の動きが、ふいに止まった。
「背中がお留守だ」
 動きの甘くなったユーベルコードを回避しながら放つ鋼糸が、女魔術師を締め上げる。
 動きが止まった女魔術師に、リーヴァルディが迫る。
 上空から鷹のように急降下したリーヴァルディが発動させた【吸血鬼狩りの業・元型】が女魔術師を切り裂く。
 大鎌に込められた魔力で袈裟懸けに斬られた女魔術師に、優希斗の連撃が迫った。
 ダッシュで女魔術師の懐に肉薄した優希斗が抜き放った月下美人と蒼月で串刺しにする。
 そのまま傷口を抉り斜めに引き裂かれた女魔術師の身体を、早業と二回攻撃で文字通り切り刻む。
「どうした? この程度か魔術師様?」
「人間にしては、なかなか……やるじゃないの。でも残念。小娘の必殺技は、私が使わせてもらうわ。その身をもって思い知りなさい!」
 二人の攻撃を受けた女魔術師は、口の端から血を流しながら折れた杖を振り上げた。
 杖の宝玉が血の色に輝き、無敵の奥義が創造されようとする。
 必殺のユーベルコードが発動される寸前、宝玉に大きなヒビが入った。
 女魔術師が籠める魔力に一瞬だけ持ち直すが、内側から破裂するように音を立てて壊れた。
 断末魔のような破壊音を上げる宝石の破片を浴びた女魔術師は、驚愕に目を見開く。顔面を蒼白にし、過呼吸を起こしたかのように荒い息を繰り返す。
「そん、な……。賢者の石に最も近づいた私の宝玉が、どうして……」
「……錬金術の行程は分解と解析、そして再構築」
 着地し、立ち上がったリーヴァルディは、振り返ると女魔術師に教え諭すように自身のユーベルコードを解説する。
 オブリビオンとなってから常に上位者だった女魔術師は、「教えられる」という行為自体にその高いプライドが傷つけられた。
 それこそが、女魔術師にとっての奥義とも言えるものだった。
「ならばその過程を妨害すれば……お前の術は機能しない」
 言い切ったリーヴァルディは、大きく踏み込むと大鎌を振りかぶった。
 同時に優希斗の二刀も放たれる。
 怪力任せになぎ払い、傷口を抉る過去を刻むものと、早業から放たれる月下美人と蒼月と。
 女魔術師から引き抜いた得物の露をを、二人は同時に払う。
「名付けて、愚者の型……なんてね」
 二人の連携を受け、膝をついた女魔術師は高笑いを上げる。
「私は賢者! 賢者の石を精錬するために、何度でも蘇るわ……!」
 そこから先の言葉は、全て意味を成さない叫びとなる。
 高笑いを上げた女魔術師は、黒い霧となって消えていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『失うで終わらせない』

POW   :    体を動かして肉体的癒しを

SPD   :    沢山料理を作ってお腹を満たす

WIZ   :    知識を与えて知的好奇心を刺激させる

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​


 戦いは終わった。
 破壊された壁から恐る恐る出てきた村人達は、去った脅威に歓喜の表情を浮かべた。
 全身で喜び合う村人達に、小男が口を尖らせた。
「でもよぅ、どうせすぐ他の領主が来るんだろう? そいつはどんな奴なのか、分かったもんじゃないだろう? 人狼のガキで見逃してくれるのかい?」
 小男の指摘に、水を打ったように静まり返る。
 鍬を手にした村の青年は、猟兵達を見渡すとがっくりとうなだれる。
「情けないが、俺達の力じゃ領主達に太刀打ちできない。俺達は戦い方も知らないしそれに……朱殷の戦士になるのはゴメンだよ」
 その言葉に、否定の意見は出てこない。
 お互いに顔を見合わせた村人達に、マーサはため息をつく。
「……本当に。あなた達がずっと村を守ってくれたらいいのだけど」
 マーサの声に、猟兵たちは首を横に振る。この事件を見届けたら、猟兵たちは村を去らねばならない。その後に訪れる新しい領主の理不尽に、力を貸せるかはわからないのだ。
 猟兵ではない村人達は、それぞれの力で生きていかなければならない。
 ため息に沈み込む村人達に、猟兵は歩み寄った。

 ご連絡
 第三章のプレイングは8/2~8/4朝までにお送りください。
 8/4中には完結する予定です。
 第三章にはお声掛けがあればパラスも登場致します。
シン・バントライン
シンくん(f13886)、アオイさん(f04633)と

この世界を出てしまった私が言えることは無いのかもしれない。
そんな私をいつも救ってくれるのは隣にいる仲間達だ。
聞こえてくる言葉の数々に背中を押され…否、背中を押したくて言葉を紡ぐ。

「私の故郷はこの世界のとても寒い場所でした。昔はいつも何処か違う場所へ逃げたいと、そうすればきっと幸せな毎日が待っていると、そんな事を思っていました。でも何処へ行っても私は私なので特に変わらなかった。人はいつだって自分次第です。幸せは自分の手で勝ち取るものです」
幸せな世界に居たっていつも泣いている人だって居る。
そしてこの世界でいつも笑顔だった人達を今でも覚えている。


シン・コーエン
WIZ
シンさん(f04752)・アオイさん(f04633)と
最初に「村人には家族と生活がある。それを犠牲にして戦っても、勝てる見込みも低い」
「だが他の村を見ると、この村で人狼が続けて狙われたのはたまたまだ。次は普通の人間こそが狙われる危険もある」
と正直に語り
「逃げ隠れ戦う事を組み合わせて危険を減らす事はできる。
周囲や上空から見つかりにくい山林の中に、隠し砦を複数作り、非常用の食料や先生の遺産等を貯蔵する。遺産は猟兵が壊した事にすれば良い。
領主に目を付けられたり危険が身に迫った人は、そこに逃げて潜伏する。 普段は可能な限り隠し砦内で戦闘訓練する。帰る迄の間、俺が戦い方や訓練方法を教えよう」
と提案


アオイ・フジミヤ
シンさん(f04752)シンくん(f13886)と

(2人の言葉を聞いて)
私、今も戦うの怖いんです
非力で満足に刀も振れないし
役に立たないことも多い

でも大事な人を、友達を守りたいと思う
守り切れるかなんてわからないけれど
戦っても戦わなくとも怖いなら
一秒でも多く笑って生きるための選択をしたい

どこかの村と合流するのもいいでしょう
少しでも平和な場所を探すのもいいかもしれない

でもシンさんの言う通りどこで生きても最後は自分達で不条理に抗うしかない
ならシンくんが言ってくれたように、生きるため何かしてみませんか

あと、どうか人狼の子達を”家族”にしてください
あなた達を護ろうとしたこの子達に
もう悲しい選択をさせないで


リーヴァルディ・カーライル
…ん。それで、また力がない事を言い訳にして、何もしないつもり?
その言葉を“先生”の犠牲になった人達の墓前で宣えるなら、好きにしなさい。

…確かに、この平和は一時のものかもしれない。
だからこそ、貴方達は多くの事に備えるべきよ。

…たとえ敵を倒す事ができなくても構わない。
再び私達のような存在が現れるまでの時間が稼げるように…。

…生き残る為に、足掻き続ける。
それが、犠牲になった人達にできる唯一の償いだと思うから…。

…やる気が出た人は手伝って。
地形の把握、防壁の修復と強化。有効な罠の配置。
呪詛を用いて“砕けた魔剣”から手に入れた戦闘知識で、
影絵の兵団を指揮すれば帰還するまでにある程度の形にはなるでしよう。




 猟兵達に力なく礼を言った村人達は、肩を落とし家路に就こうとする。
 村人達を呼び止めようとしたシン・バントライン(逆光の愛・f04752)は、言おうとした言葉を失い息を詰まらせた。
 丸まった彼らの背中に故郷の人々の姿が重なり、知らず面布の下で眉根が寄る。
 バントラインもまた、ダークセイヴァーの生まれ。村人達の気持ちは痛いほどよく分かる。自分はそこから逃げ出した。逃げ出せたのだ。
 村人達に……故郷に残した親類縁者達に何も言えずに握ったバントラインの左拳を、アオイ・フジミヤ(青碧海の欠片・f04633)がそっと包み込んだ。
 驚いて見下ろすバントラインの視線に、アオイは微笑み頷きを返す。
 アオイの反対側に立つシン・コーエン(灼閃の・f13886)が、力強くバントラインの右肩を叩くと一歩前に進み出た。
「……確かに、お前達の言う通りだ。お前達には家族と生活がある。それを犠牲にして戦っても、勝てる見込みも低い」
 コーエンの声かけに、村人達は立ち止まる。振り返った鍬を持つ青年は、地面を見下ろしながら絞り出すように言った。
「そうだよ。だから全員は諦めるしか……」
「だが他の村を見ると、この村で人狼が続けて狙われたのは、たまたまだ。次は普通の人間こそが狙われる危険もある」
 コーエンの声に、村人達が息を呑む。
 閉鎖的な村でも、たまに行商人は通る。彼らから他の領主達の噂話も聞くのだろう。コーエンの指摘は村人達の不安の核心を突くものだった。
 包み隠さず語る言葉に、鍬の青年はカッとなったようにコーエンに歩み寄った。
「お前に! お前に何が分かるっていうんだよ! 俺はお前達みたいに戦えない! 仕方がないじゃないか!」
「……ん。それで、また力がない事を言い訳にして、何もしないつもり?」
 頭に血が登った青年に、リーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)の静かな声が響いた。
「……なんだって? もう一回言ってみろよ!」
 青年が怒りの矛先をリーヴァルディに向ける。怒りと諦観に満ちた鍬の青年の目を、リーヴァルディは覗き込んだ。
「何度でも言うわ。あなたは今、自分は力がない弱者だから、更に力がない者を差し出して命乞いをする。それは仕方がない。そう言ったの。……その言葉を“先生”の犠牲になった人達の墓前で宣えるなら、好きにしなさい」
 リーヴァルディは静かに、真っ赤になった青年の声を真っ向から受け止める。真摯な視線を受けた青年は、うろたえたように息を詰まらせると再び肩を落とした。
「……済まない。感情的になっちまった」
「構わないわ。……確かに、この平和は一時のものかもしれない。だからこそ、貴方達は多くの事に備えるべきよ」
「備える……っていったって、どうすればいいんだよ? こんな田舎の山奥じゃ、ろくな柵も無え。蓄えだって、毎年冬を乗り越えるのに精一杯なんだよ」
「この村を出て、隣町の親戚の家に身を寄せた方がいいかねぇ」
「そうだな。人狼を取られ朱殷に取られ、この村も随分寂しくなった。次の領主が来る前に逃げ出すのも、備えかも知れないな」
 口々に言い合う村人達に、バントラインは顔を上げ一歩踏み出した。
 仲間達の励ましは、バントラインの心も同時に力づけてくれた。
 立ち止まり、身動きが取れないバントラインをいつも救ってくれるのは、隣にいる仲間達だ。
 聞こえてくる言葉の数々に背中を押され……否、背中を押したくて言葉を紡いだ。
「……私の故郷はこの世界の、とても寒い場所でした。昔はいつも何処か違う場所へ逃げたいと、そうすればきっと幸せな毎日が待っていると、そんな事を思っていました」
 言いながらも、言葉が少し震える。
 猟兵となり、この世界を出てしまったバントラインが言えることは無いのかもしれない。
 この世界に留まり、この世界で日常を積み上げる人々のことを思わない日はない。だが、故郷に戻る決断もまたしなかった。できなかった。
「でも何処へ行っても私は私なので、特に変わらなかった。人はいつだって自分次第です。幸せは自分の手で勝ち取るものです」
「アンタは強いから勝ち取れたんだ。俺達はそんなに強くないんだよ」
 悟ったように語る老人に、アオイは静かに首を振った。
「村の皆さんが怖いように。私、今も戦うの怖いんです。非力で満足に刀も振れないし、役に立たないことも多い」
 アオイの告白に、村人達が一斉に顔を上げた。
 アオイは先生を倒した時も、女魔術師を倒した時も来てくれた。戦場に立ち、仲間を助けて戦況を整えるアオイは、村人達には勇敢な猟兵の一人として見ていたのだ。
 だが、アオイ自身は攻撃する術をあまり持たない。戦いだって好きじゃない。
 それでもアオイは戦うのだ。理不尽に抗うために。抗う者たちを守るために。
「だ、だけどあなたはアタシたちを守ってくれたじゃないか」
「それはただ大事な人を、友達を守りたいと思ったから。守り切れるかなんてわからないけれど」
 顔を上げたアオイは、集まる視線に微笑みかけた。
 集まった村人達の一人ひとりと目を合わせながら、アオイは自分の気持をまっすぐに伝えていく。
「戦っても戦わなくとも怖いなら、一秒でも多く笑って生きるための選択をしたい。どこかの村と合流するのもいいでしょう。少しでも平和な場所を探すのもいいかもしれない。……でもシンさんの言う通り、どこで生きても最後は自分達で不条理に抗うしかない。ならシンくんが言ってくれたように、生きるため何かしてみませんか」
 優しく強いアオイの言葉に、村人達が聞き入る。
 辛い世界で生きる人々を、少しでも助けたい。そんな思いは、頑なな村人達の心を優しく解きほぐしていった。
「……たとえ敵を倒す事ができなくても構わない。再び私達のような存在が現れるまでの時間が稼げるように」
 ダークセイヴァーに生きる人々を本当に救うには、この世界の闇を払い、オブリビオン・フォーミュラを倒さなければならない。
 それにはまだ、時間がかかる。その時まで、生きなければ。
「……生き残る為に、足掻き続ける。それが、犠牲になった人達にできる唯一の償いだと思うから……」
 真摯な猟兵達の言葉に、村人達が顔を合わせた。何かを相談するように目を見交わした村人達は、やがて頷くと一歩前に出た。
「……分かった。確かにここで村を解散させても、行った先も余裕がある訳じゃない。俺達は最後まで、この村で足掻いてみるよ」
「ありがとうございます」
 村の青年に微笑んだアオイは、成り行きを静かに見守る子供たちを呼び寄せた。
 人狼病に罹り、先生の実験のために孤児にさせられた子供たち。身寄りのないこの子たちの行く末も、村人達に託さなければならない。
 子供たちの肩に手を置いたアオイは、村人達を見渡した。
「あと、どうか人狼の子達を”家族”にしてください。あなた達を護ろうとしたこの子達に、もう悲しい選択をさせないで」
「……もちろんよ。この子達はもともと、村の連中の子供だから。村で育てましょう」
 頷いて請け負うマーサに、村人達も頷く。
 一つになった村人達に、小男が口を尖らせた。
「でもよぅ、具体的にどうするんだよ? 俺達だって馬鹿じゃねぇ。何かできるならとっくにしてるぜ?」
 不満を口にした小男が、腕を組みながら前に出る。
 その姿に、コーエンは口元に笑みを履いた。
 この小男は、村人の不安の、弱い心の代弁者だ。逆に言えば、この小男を納得させることができれば、自然と村人達にも伝播するだろう。
「真正面から領主達に戦いを挑むのは得策じゃない。だが逃げ隠れ戦う事を組み合わせて危険を減らす事はできる」
 村人達を集めたコーエンは、村周辺の地図を持ってこさせると対策を練った。
 周囲や上空から見つかりにくい山林の中に隠し砦を複数作り、非常用の食料や先生の遺産等を貯蔵する。遺産は猟兵が壊した事にすれば良い。
「……領主に目を付けられたり危険が身に迫った人は、そこに逃げて潜伏する。 普段は可能な限り隠し砦内で戦闘訓練をする。帰る迄の間、俺が戦い方や訓練方法を教えよう」
「分かった。俺達はやるぞ」
 力強く頷いた青年たちに、小男が動いた。
 その場からこそこそと逃げ出そうとする小男の襟首を、リーヴァルディは素早く掴んだ。
「な、何すんだよ!」
「……それはこっちのセリフ。やる気が出たなら手伝って」
「お、俺はやる気なんて……」
「具体的なやり方、聞いていたでしょう。教えるからいらっしゃい」
 村周辺の広域地図での打ち合わせが終わった男たちの前に、リーヴァルディは村周辺の詳細な地図を出した。
「村の周囲に、最終防衛ラインを築くわ」
 地形を把握し、破壊され放置された防壁や柵の強化をする。朱殷の隷属戦士達の進軍経路から想定される、新しい領主の軍勢に対抗するための有効な罠を配置する。
 森の中の秘密の砦と、村の周囲の防護策と。練られた計画に、小男は天を仰いだ。
「それだけの仕事を俺達だけでやれって? 無茶言うんじゃねぇよ!」
「あなた達だけじゃないわ」
 相変わらず逃げ腰な小男に、リーヴァルディはユーベルコードを詠唱した。
 召喚された255体の【影絵の兵団】が、リーヴァルディの前に整然と並ぶ。リーヴァルディは兵団に、村人達を手伝って防壁の強化を命じる。
「これで、帰還するまでにある程度の形にはなるでしよう」
「よし! じゃあ後は任せて俺は寝てる!」
「影絵の兵団は戦闘用。細かい作業は向いていない。……それに、彼らは手伝うだけ。動くのはあなた達。今度こそ、自分たちの力で村を守るの」
 リーヴァルディの声に、村人達は力強く頷いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

北条・優希斗
敬輔(f14505)パラスさん同行
他の方との絡みもOK
彼等が不安に思うのは当然だろうな
まあ、俺に何が出来るのかと言われると何ともし難いが…
敬輔さん、どうした?
ジャガイモのガレットを作るから手伝って欲しい?
構わないよ
まあ、俺は材料を切りそろえる位しか出来ないけれど
折角だしバーのマスターさんであもるパラスさんにも手伝って貰おうか
パラスさん、こう言う時に手軽に出来る料理はありますか?
早業で材料を切って敬輔さん達の料理の手伝いをするよ
食事をしながら村人達の愚痴位は聞く
「新たな領主は確かにまた現われるかも知れません。ですが皆さんが諦めなければ、また奇跡は起きるかも知れません。それだけは忘れないで下さい」


館野・敬輔
【SPD】
優希斗さん(f02283)、パラスさん同行
他者との絡みも可

まあ、村人達の反応は当然だよな
だったら今だけでも、美味しい食事で気を休めてもらえれば

僕はジャガイモのガレットを作るよ
優希斗さん、ちょっとお手伝いをお願いしたいのだけど
ジャガイモを千切りにしてもらっていいかな?

僕はスパイスを用意して鉄板を熱して
…って優希斗さん切るの早いな!?(驚く)
後はジャガイモの千切りとスパイスを混ぜて
鉄板に薄く広げて焼けば出来上がり
後でパラスさんの料理も手伝うよ

香草茶も用意して
出来上がった料理と一緒に振る舞うな
もちろん、他の猟兵にもね

村人の話にはしっかり耳を傾けるな
今だけでも、不安を全部吐きだしてほしいから


シリン・カービン
この救いの無い闇の世界に抗う術。
それは生きる意志を、本能を奮い立たせること。

狩りのために村の外へ。
大きな獲物を仕留めて戻ります。

村の広場に火を起こし、
手際よく獲物を捌いて、大きな肉を串焼きにします。
肉が焼けたら自ら豪快にかぶりつき、
村人に肉の塊を突きつけます。
「食べて下さい」

この肉は私の血肉となって私を繋ぐ。
命は失われても終わらない。
人狼の子供達、鎧に囚われた大人達。
犠牲になった者を悼む心があるのなら、
食べなさい。そして生きなさい。

食べて、力をつけて、心を奮い立たせて。
生き抜く意思に彼らの命が繋がれるのだから。

パラスにも串を勧めます。
察して豪快にガブリと行ってくれそうですね。

アドリブ・連携可。




 男性陣が隠し砦と防壁を作るために出払った村の中で、北条・優希斗(人間の妖剣士・f02283)は村を見て回った。
「おぉ、旅の方。ご無事でしたか」
 掛けられる声に振り返った優希斗は、朱殷の隷属戦士の襲撃時に避難を手伝ってくれた老人の姿に表情を和らげた。
「あなたこそ。ご無事でしたか」
「生きた心地はしませんでしたがね。本当にありがとう。ささ、何のもてなしもできませんが、こちらへどうぞ。ところで、うちの孫娘は年頃で……」
「では失礼します」
 怯えの中から不穏な空気を察した優希斗は、半ば強引にその場を後にする。村娘の夫となれば、必ず村を守ってくれる。老人の下心に、パラスはくつくつと笑った。
「アタシの予知の範囲じゃ、今のところオブリビオンは来そうにないんだけどね」
「彼等が不安に思うのは当然だろうな。まあ、俺に何が出来るのかと言われると何ともし難いが……」
 老人の期待に応えてやるのは、最初から除外とするとして。
 村を見回った優希斗は、公会堂前の広場で鉄板を用意する館野・敬輔(人間の黒騎士・f14505)に声を掛けた。
「敬輔さん、どうした?」
「優希斗さん、ちょっとお手伝いをお願いしたいのだけど。ジャガイモを千切りにしてもらっていいかな? ジャガイモのガレットを作ろうと思って」
 簡易的なかまどを作る手を休めた敬輔は、籠に入ったジャガイモを優希斗に示した。
 村の備蓄食料として提供されたのだが、かまどを組むのが意外と手間取りそこまで手が回らない。
 敬輔の依頼に、優希斗は頷いた。
「構わないよ。まあ、俺は材料を切りそろえる位しか出来ないけれど」
「お願いします」
 会釈した敬輔は、かまど組みを再開する。故郷の隠れ里で得た技能でかまどを組み終えた敬輔は、火種を用意し鉄板を乗せた。
 その間、五分ほどか。顔を上げた敬輔に、優希斗は大きな鉢いっぱいのじゃがいもの千切りを手渡した。
「切れたよ」
「ありがとうございます……って優希斗さん切るの早いな!?」
 驚きながら受け取った敬輔は、綺麗に切り揃えられたジャガイモに目を見開いた。
 これだけの量のジャガイモだ。切るのにもっと時間がかかると思っていた敬輔の声に、優希斗は包丁を手の中で回した。
「早業は戦闘だけに使う訳じゃないからね」
「助かります」
 一礼した敬輔は、手早く火を熾すと鉄板を加熱した。火力を調整しながら鉄板を熱し、スパイスと混ぜたじゃがいもの細切りを丸く鉄板に広げる。
 じっくり焼き上げる手慣れた姿を見ながら、パラスはふと尋ねた。
「それにしても。敬輔はどうしてジャガイモのガレットなんて作ろうと思ったんだい?」
 その問いに、敬輔はじゃがいもに目を落とした。
 故郷の隠れ里を壊滅させられ、猟兵に覚醒して何とか命を拾った時のことが頭によぎる。
 故郷を襲ったのもオブリビオンだった。理不尽な力で日常を奪われ、絶望の淵に立たされた時に敬輔を力づけてくれたものの一つは、「食事」という日常だった。
「……オブリビオンを恐れる村人達の反応は当然だよ。だったら今だけでも、美味しい食事で気を休めてもらえればって思って」
「そうかい。腹が減ると碌な考えも浮かばないからね」
 深く頷くパラスに、優希斗は軽く笑みを浮かべた。
「折角だし、バーのマスターさんでもあるパラスさんにも手伝って貰おうか。パラスさん、こう言う時に手軽に出来る料理はありますか?」
 首を傾げながら尋ねる優希斗に、パラスは少し考え込んだ。丸く焼かれたガレットを見てマーサを呼ぶ。
 何か尋ねたパラスは、小麦粉とチーズと水を持って二人の元に戻った。
「鉄板があって、主食はパン。家畜がいるならチーズもあるだろう。……ピザでも焼こうか。手伝っておくれ」
 パラスの要請に、優希斗は快く頷く。
 打ち粉をした板の上で生地を捏ね、薄く伸ばして鉄板に乗せる優希斗と、焼き加減を見ながらチーズと具材をトッピングしていく敬輔。
 二人の姿に、村の女性達が一斉に熱い視線を送る。村一番の美人風の女性が、一段落した優希斗にそっと話しかけた。
「……皆さん、明日には帰ってしまわれるんですよね?」
「そうですね」
 頷く優希斗に、女性は不安そうに目を潤ませた。
「また、あの領主様みたいなヴァンパイアが、この村を支配しに来るんですよね? 私、怖くて……」
「新たな領主は確かにまた現われるかも知れません。ですが皆さんが諦めなければ、また奇跡は起きるかも知れません。それだけは忘れないで下さい」
「は、はい。ところで……」
 頬を赤く染めた女性は、なおも優希斗の気を引こうと話しかける。
 そんな会話を聞きながらガレットとピザを焼き終えた敬輔は、かまどの火を保温程度に落とす。
 ひと仕事終えた敬輔に、村一番の可愛い風の女性が不安そうに話しかける。
 香草茶を振る舞いながら話を丁寧に聞く敬輔の周りには、年頃の娘たちが代わる代わる話しかけている。
 皆の話を真面目に聞く敬輔は、頷きながら香草茶を勧める。
 いつの間にか日も暮れ始めた公会堂前の広場に火が焚かれ、肉の焼けるいい匂いが漂ってきた。


 時は少し遡る。
 弓を手にしたシリン・カービン(緑の狩り人・f04146)は、村の猟師たちと一緒に周囲の山へと分け入った。
 村の若者達が立ち上がり、女魔術師に抵抗した時腕利きの猟師たちも多く殺されたのだ。
 以来、山に入って狩猟をするということも少なくなってしまい、若い猟師たちは経験を積むこともないのだという。
 その話を聞いたシリンは、故郷の森で培った狩猟の術を教えながら獲物を追った。
 戦いに備え、いざとなれば持久戦に持ち込むのであれば動物性タンパク質は必須。肉は干し肉や塩漬けにして保存できるし、普段の食事のタンパク源ともなる。
 狩猟をしながら山の地形を覚えるのは、やがて来るであろう領主への抵抗戦の力となる。
 この救いの無い闇の世界に抗う術。それは生きる意志を、本能を奮い立たせること。
 狩猟本能もまた然り。
 地形を把握し、獲物の状況を把握したシリンは、若い猟師たちにも獲物を獲らせながら森の奥へと分け入る。
 大きな成果に、猟師たちが沸き立つ。成功体験を与えて村に戻ったシリンは、手早く猪を解体した。
 猟師たちが獲った獲物は、それぞれに解体させる。彼らが獲った獲物は全て保存食にするが、シリンが獲った猪はこの場で食してしまう。
 ガレットとピザが焼ける、いい匂いを嗅ぎながら手早く猪を捌いたシリンは、大きな肉を串に刺した。
 塩を振り、火で炙る。やがてほどよく焼けた肉から、いい匂いが立ち上がる。
 串を何本か手にしたシリンは、ガレットとピザを焼き終え村の女性達と話をする優希斗と敬輔に串を差し出した。
「どうぞ」
「ありがとう」
 受け取った二人に頷いたシリンは、女性たちにも串を渡す。
 渡された串焼きに目を丸くする女性たちの目の前で、シリンは自分の串にかぶりついた。
 豪快にかぶりつき、猪の肉を平らげる。口の周りの肉汁を拭ったシリンは、あっけにとられる女性たちを促した。
「食べて下さい。……あなた達も」
 火の回りに集まってくる村人達に、シリンは大きな肉を突きつけて回る。串を受け取った村人達は豪快に肉にかぶりついた。
 一日中動いて腹をすかせた村人達は、一心不乱に肉を食べた。伸びるお代わりの手に、シリンは次の肉を焼く。
 その間に、優希斗と敬輔は村の人達皆にピザとガレットを振る舞って回る。
 ガレットを手にした女性たちは、新しいじゃがいもの食べ方に目を輝かせた。
「ガレット? こんな食べ方があったのね」
「芋は茹でるか煮るかしか、しなかったからねぇ」
「チーズも合いそう!」
 はしゃぐ女性たちの側を離れた優希斗と敬輔は、ピザとガレットを仲間の猟兵達に勧めに行った。
 それぞれの仕事を終えた猟兵達も加わり、焚き火を囲んだパーティが始まった。
 美味しい食事を前に、お互いの健闘を称え合う。猟兵達のおかげで見える展望に、村人達の目に光が戻っていった。
 美味しそうに頬張る村人達は、本当に久しぶりに満たされたお腹をさする。満足そうに息を吐いたマーサは、ぽつりと呟いた。
「こんな美味しい料理、ケヴィン兄さん達にも食べさせてあげたかった」
 マーサの呟きに、場がしんと静まり返る。村人達が失った者の大きさにため息をついた時、シリンは立ち上がった。
「この肉は私の血肉となって私を繋ぐ。命は失われても終わらない」
 シリンの言葉に、村人達は黙って聞き入る。
 先生に売られた人狼達、鎧に囚われた大人達。村が生き延びるために払った代償の大きさ、重さに涙が落ちる。
「犠牲になった者を悼む心があるのなら、食べなさい。そして生きなさい。食べて、力をつけて、心を奮い立たせて。生き抜く意思に彼らの命が繋がれるのだから」
 シリンの説得に、村人達が涙を拭いて大きく頷く。
 宴には加わらずに見守っていたパラスに、シリンは肉の串を差し出した。
「パラスも」
「……アタシもかい?」
 目を丸くするパラスに、シリンは大きな肉の串を持ったまま真っ直ぐに見つめた。
「もちろん。あなたも命を繋いでいくのだから」
 シリンの言葉にやがて頷いたパラスは、豪快に串にかぶりつく。
 一息に食べきり、口元を手の甲で拭ったパラスは手の中で串を弄んだ。
「……こんな食べ方。最前線を思い出すよ」
 ぽつり呟くパラスに、シリンは頷きを返す。
 真面目な空気が漂う宴に、にぎやかな音楽が響いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

木元・祭莉
アンちゃん(f16565)と。

あ、パラスせんせーだー!(わーい)

マーサおばちゃんとトムたちに紹介しなきゃ。
あのね、前も今日も、せんせーが危ないって予知してくれたんだよ!
だからきっと、次も大丈夫!(根拠なき断言)

あ、さっきのおっちゃん。
んー、勝てないのは仕方ないよね。
でも、負けないでね?

おいらたち、次も来るから。約束するから。
だから、諦めずに粘ってて。約束だよ!
ん、指切り!
嘘ついたら、針千本の刑だからねー♪(にぱ)

アンちゃん、踊ろ!
マーサやトム、人狼や猟兵のみんなとも踊るよ!

全員とハグして。
次は新しい芸、増やしてくるー♪

町外れに、ケヴィンたちの墓碑を立てて。
……骸の海から、みんなを見守っててね?


木元・杏
まつりん(祭莉・f16565)と

パラス(一礼して挨拶)

マーサ、トム
誰かを犠牲にする以外に
皆で耐える方法、負けない方法
皆で話し合えたら、いいね
それは一番難しくて、マーサ達にしか出来ない「勇気」の出し方
諦めないで
(勇気を渡すように手をぎゅっと繋いで)
わたしは……(まつりんの姿を見て)
約束する、また来る
そしていつか一緒に人狼病治す
わたしも諦めない

まつりん?(とと、と寄っていって)
うん、踊ろ?【Shall we Dance?】
うさみみメイドさんは子供達の輪に入って

楽しめなくても大丈夫
少しの間だけど、動きも気持ちも、ゆっくり休ませて
……苦しいは、疲れるから

墓碑の隣に、向日葵の種を植える
どうか、見守って




 村の楽器を持ち出した村人が、収穫祭のにぎやかな音楽を奏でる。
 空の串をぼんやりと弄ぶパラスに、木元・祭莉(サムシングライクテンダネスハーフ・f16554)は大きく手を振った。
「あ、パラスせんせーだー!」
 明るい笑顔を浮かべながら駆け寄る祭莉に、パラスは顔を上げる。ぴょんぴょんと飛び跳ねながら呼ぶ声に、パラスは近づいた。
「何だい?」
「パラスせんせーを、マーサおばちゃんとトムたちに紹介しなきゃって」
 祭莉と話をしていたマーサとトムが、パラスに会釈する。表情を変えず会釈を返すパラスに、マーサとトムが戸惑い顔を見合わせる。そんな二人に、祭莉は無邪気に話しかけた。
「あのね、この前も今日も、せんせーが危ないって予知してくれたんだよ! だからきっと、次も大丈夫!」
 根拠なき断言に胸を張る祭莉に、パラスは苦笑いをこぼした。
「できるだけのことはする。それ以上は知らないよ」
「そんな……」
「自分達のことは、自分達で始末おし」
 紋切り型に言い放つパラスに、マーサとトムが不安そうな表情を浮かべる。それでも言葉を足さないパラスに、木元・杏(ぷろでゅーさー・あん・f16565)は軽く会釈をした。
 不安そうなマーサとトムに向き合った杏は、静かに語りかけた。
「マーサ、トム。誰かを犠牲にする以外に皆で耐える方法、負けない方法。皆で話し合えたら、いいね」
「そうね。そうできたら一番いいんだけど。……そうなる前に来てくれたら嬉しいわ」
 ぽつりと漏らされるマーサの本音に、杏は首を振った。
 マーサ達は危ないところを二度連続で猟兵達に助けられた。
 また助けてくれたらいい。危険な目にも辛い目にも遭いたくない。それは人間の心理として当然のことだ。
 だが、予知がなければ猟兵達は来ることができない。その予知も万能ではない。
 猟兵達に依存するのは、お互いのためにも良くないことだった。
「それができるかは、分からないの。だから、もしすぐに来れなくても耐えなきゃいけない。……それは一番難しくて、マーサ達にしか出来ない「勇気」の出し方」
 戸惑うマーサとトムの手を、杏はぎゅっと握った。
「諦めないで」
 強く在らねば生きていけない。マーサ達はそんな世界に生まれ落ちてしまったのだ。
 いつか猟兵達が闇を晴らすその時まで、強く生きてほしい。そのための勇気を渡すように握る杏の手を、マーサは泣きながら握り返した。
「そう……ね。そうよね」
「大丈夫だよマーサ。今度は僕が守るから。皆の前でマーサが守ってくれたみたいに、今度は僕が。大丈夫。もう犠牲になるなんて言わないから」
「ありがとうトム。ありがとう……!」
 トムを抱きしめるマーサに、杏は安心したように頷いた。
 この二人なら、この二人がいる村なら、きっと大丈夫。どんな領主が来たって、耐えぬける。
「わたしは……」
 杏は祭莉の姿を探して視線を漂わせた。
 弱気になっていた鍬の青年を見つけて明るく話す背中に、誓いを込めて手を握る。
 祭莉も人狼病に罹っている。明るく無邪気で暗さを欠片も感じさせないが、その寿命は短く月夜に狂う恐怖と狂気を抱えている。
 マーサとトムが誓ったように、杏も誓った。
「約束する、また来る。そしていつか、一緒に人狼病治す。わたしも諦めない」
「そうだね。アンが諦めないなら、私も諦めない」
「僕も諦めないよ。一緒に病気を治そう!」
 希望に満ちた二人に微笑む杏を、祭莉が大きく手を振って呼んだ。


 マーサとトムと別れた祭莉は、肉を頬張る鍬の青年に手を振った。
「あ、さっきのおっちゃん」
「おっひゃんじゃない。おにいひゃんだ」
 食べながら反論する青年に、祭莉は明るく微笑む。肉を何とか飲み込んだ鍬の青年は、興奮したように祭莉に話しかけた。
「お前、すごいな! 戦いを物陰から見たけど、小さいのにすげー! 俺もそんな力があったら……」
 自虐的に手を見る鍬の青年の下に潜り込んだ祭莉は、その目をじっと覗き込んだ。
「んー、勝てないのは仕方ないよね。でも、負けないでね?」
「負けない……?」
 使い古された新しい言葉に、青年が目を見開く。オブリビオンには勝てないと嘆いていた青年は、その言葉に雷を打たれたかのように立ち止まった。
「おいらたち、次も来るから。約束するから。だから、諦めずに粘ってて。約束だよ!」
「……ああ! 約束する! 勝たなくていいんだ。負けなきゃいいんだ。ありがとう。なんだか心が軽くなったよ!」
「ん、指切り! 嘘ついたら、針千本の刑だからねー♪」
 にぱっと笑った祭莉は、青年と指切りを交わす。指切った祭莉は、その手をぶんぶん振ると杏を呼んだ。
「アンちゃん、踊ろ!」
「うん、踊ろ?」
 二人で手を取り合った祭莉と杏は、ユーベルコードを詠唱した。
「集い花 咲き誇りて 憩う庭 想い溢れ」
 詠唱と同時にあふれる歌に、猟兵も村人も一緒になって手拍子を送る。
「音楽スタート?」
 杏の声と同時に、うさみみメイドさんがふわりと宙に浮く。
 はしゃいだ声を上げる子供たちの輪の中で、うさみみメイドさんは軽やかに踊る。一緒になって踊る子供たちの輪に、猟兵や村の大人たちも加わって踊る。
「次は新しい芸、増やしてくるー♪」
「楽しみにしてるよ!」
 全員とハグする祭莉に、村人達も笑顔でハグを返す。
 炎を囲んで踊り明かす、楽しい夜は更けていった。


 翌日。
 町外れに建てられたケヴィンたちの墓碑の前に、祭莉はそっと花を供えた。
「……骸の海から、みんなを見守っててね?」
「苦しいは、疲れるから。だから、安らかに……」
 墓碑に語りかける祭莉と杏に、猟兵達も祈りを捧げる。
 墓碑の隣に植えられた向日葵の種は、芽吹いて花を咲かせるだろう。
 いつか満開の向日葵の花畑を、安心して歩ける日が来るように。
 祈りと誓いを捧げた猟兵達は、立ち上がると村を後にした。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年08月04日


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🔒
#ダークセイヴァー


30




種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は玖・珂です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


挿絵イラスト