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脱獄幇助はダーティービジネス

作者：JUNK.O

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●政治的取引
　スーツ姿の男が一人、ヒーローズアースの国会議員オフィスを尋ねる。応対する若い議員がコーヒーを差し出し、来客をもてなした。
「うちの先生に取り計らっていただきました。根回しは上手く行くでしょう。あとはそちらで上手く処理してください」
「はい。ありがとうございます。こちらが約束のものになります。私の取引先も喜ぶ事でしょう」
　東洋人のビジネスマンという風体の男は、手にしているジュラルミンケースを議員に差し出した。
「では、先生に宜しくお伝えください。ご協力に感謝致します」
「事はなるべく控えめにお願いしますよ、派手すぎるともみ消すのに苦労しますから」
　議員は軽く笑い、ジュラルミンケースを受け取った。中身が何かは定かではない。

●脱獄事件の裏を取れ！
「ぬ、招集に応じてくれてありがとうぬ」
　ブサイクなケットシーのグリモア猟兵、ハンニバル・エルバッキー（キャプテン・ユニバース・f02423）は葉巻にも似たチューブ型の携行糧食を吸いながら猟兵達を歓迎した。
「それでは早速、今回のオブリビオン案件を発表するんぬ」
　ハンニバルの予知によると、ヒーローズアースの刑務所にて脱獄事件が発生。複数のヴィランが野放しになる。
「ここまでは重要じゃないんぬ。脱獄したヴィランはオブリビオンじゃないし、あっちの世界には多様なヒーローもいるんぬ。他のグリモア猟兵がそっちの案内をしているかもぬ」
　と、語ると事件の要点の説明に移った。
　ヒーローズアースのヴィランは特殊な力を持つ者が多数。これらを収容するための刑務所は過去の時代に造られた魔法の地下迷宮を改装したものだ。
　迷宮の中には魔力が満ち、猟兵とオブリビオンを除いては衰弱したり特殊な力を封じられる。これらの現象を転用してヴィランの力を抑え込み、囚人にしている。
「で、脱獄事件の混乱に乗じて迷宮を掌握、その魔力を取り込もうとしているオブリビオンの存在を感じ取った、というのが前提になるんぬ。長くなってごめんぬ」
　ハンニバルはへちゃむくれた顔を険しくしかめて、詳細を説明する。
「オブリビオンと契約を結び、脱獄を手引きしている政治家が居る様子なんぬ。オブリビオンはビジネスマン風の男。しかしどうやらビジネスマンは迷宮の力には興味がなさそうだぬ。取引先が更に存在するようなんぬ。通常のヴィラン事件はヒーローや他の猟兵に任せて、我々はその政治家の汚職を暴くんぬ」
　曰く、力技で脅してもいい、技量を用いて証拠を集めてもいい、知識を駆使して見つけた汚職を告発してもいい。政治家は通常の人間なので深く掘ればボロを出すだろう。
「オブリビオンとの関与を白日のもとにさらけ出して、首謀者の情報を自白させてこれを追跡、撃破に臨んで頂くんぬ」
　ハンニバルは手を叩き、事件概要の説明を終える。ケコケコとむせてから口より毛玉状のグリモアを吐き出した。
「どうでもいい情報だけど、ビジネスマン風のオブリビオンは東洋人なんぬ。じゃ、現場についたら後は流れで」

第1章 冒険 『腐敗した議員』

POW   :    本人から自白するまで脅す。 SPD   :    悪者との繋がりを暴く。 WIZ   :    汚職を見つけて告発。 👑11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

●現地到着
　このたび汚職に手を染めている議員の名はジェイムスという。
　議員オフィス近くに転送された猟兵たち。ここから彼の身辺を漁るのも、彼が一人になったのを狙うのも自由だ。


●闇の社交場
　ジェイムス議員は今夜は上院議員と共にパーティに出席する予定となっている。
　暗黒騎士・アングラング（光と闇の剣を自在に操る暗黒宇宙騎士・f08676）は、このパーティがギャングの主催したものである情報を掴んだ。
「招待状を確認させてもらいます」
「ああ、これでいいか？」
　彼は『スペース豪奢服』を纏い、ドレスコードをしっかりと守る。招待状が必要となるパーティだが、蛇の道は蛇。アングラングは事前に貴族として社交界に顔を効かせて用意。黒服のガードマンに招待状を見せて通過。
　アングラングのユーベルコード【悪党特有のしぶとさ】は自分の美学のために敢えて不利な行動を取れば身体能力が増加する。筋金入りの悪者揃いのパーティに参加するのは少々、危険を伴う。覚悟を固めて会場へと足を踏み入れた。
　フリーのドリンクを傾けて様子を伺う。覇王を目指すアングラングは同じく覇道を征く悪党を見抜いた。
　パーティに列席する恰幅の良い男性。これはギャングだ。白いスーツを着た痩身の男性。こちらはただの富豪。ドレスに身を包む若い女。これは盗賊のヴィラン。
　詳細な出席者のプロファイルまでは把握していないが、アングラングの嗅覚はフィーリングで悪党を見抜く。アングラングは軽食を手に、ジェイムスへの接触を図った。
「失礼する、ジェイムス議員」
「おや、はじめまして。あなたは――」
「アングラングという者だ。よろしく」
　二人は握手を交わす。アングラングはジェイムスの汚職がオブリビオンのみならず一般のギャングにまで及ぶ事を確信した。握手の際にさり気なく盗聴器をジェイムスに取り付ける。
　程なくしてジェイムスはギャングと思しき男と談話する。その会話はアングラングの耳に、盗聴器から紐づけた録音デバイスに届いた。
「此度はジェイムス殿のはからいで私の部下も釈放されて実に助かりましたよ」
「ハハ、私だけの力ではありません。うちの先生にお任せして実現したものです」
「例の東洋人にも感謝ですなぁ、我々からも感謝の品を後ほど手配します」
　やはりこれは献金パーティ。悪党との繋がりは録音した。これも汚職の一部として重要な証拠となるだろう。

成功 🔵​🔵​🔴​

●全ての鍵を握る者
「必要ならば作れば良いだけのことです」
　ヒュペル・エアロ（ウズルダロウムの鍵・f19120）は“鍵”のヤドリガミだ。鍵のかけられたものであれば開けられないものはない。
　ジェイムス議員は現在、パーティに参加中。オフィスは警備員が居る程度で厳重なセキュリティがある以外はガラ空きだ。警備員の意識を『施錠』し、セキュリティに引っかからぬよう全ての機能を『ロック』し、オフィスまで辿り着いた。
　ユーベルコード【無いものは作る】を使えば極めて精巧な鍵を作り出せる。オフィスにかかった鍵は作っては解錠、作っては解錠。
　これには半分、ヒュペルの趣味事情も加わっている。錠前マニアのヒュペルは鍵がかかっていれば何でも開けたがる。
「はァァ……♪」
　恍惚としながらジェイムスのオフィスを解錠して回った。棚を開くと難しい書類がたくさん。物色するが、およそらしい物は見つからない。
　デスクを解錠。カチリ。鳴る音にうっとりとするヒュペル。ファイルに収められた紙に、東洋人がよく使う印鑑を見つけた。それも日本語なのでわかりやすい。
「ふむ……」
　内容をあらためると、脱獄させたヴィランの中には懇意にしている更に上院議員の子供もいるようだ。
「脱獄騒ぎに乗じて高飛びさせる……？」
　これは上院議員に対する切り札として用意したものかもしれない。ただし、この件は今回の事件の深い所までは関わらない。
　後ほど汚職を公表するための材料としてヒュペルはファイルを盗み出し、建物を後にすると自身がかけた全ての鍵を『解錠』した。

大成功 🔵​🔵​🔵​

●闇の騎士
「貴方がたには議員との繋がりを自白してもらいます」
「ぐっ、動けねえ……ヒーローかお前は」
「ヒーロー？いえ、私は騎士です」
　ユーベルコード【闇の魔力】でギャングを締め上げているセシリア・サヴェージ（狂飆の暗黒騎士・f11836）、黒鎧に身を包む高潔な暗黒騎士だ。
　彼女はジェイムス議員と繋がりを持っているというギャングの根城に立ち入り、襲ってきたギャングを一人残らず暗黒の波動で捕らえていた。
「どうします？このまま首の骨を折ることも可能ですよ」
　毅然とした目でギャングを睨む。ギャングはセシリアが本気であるという凄味を感じた。
　いくら度胸のあるギャングでも狂戦士の持つ殺気には耐えられず恐怖した。
「わかった、言うから命は勘弁しろ！ジェイムスとはビジネスパートナーだ、それ以上の事はない！」
「どんなビジネスをしているか、それを語ってもらいたいのですよ」
　セシリアは「こうすることも可能だ」というように暗黒の波動で、先に襲いかかってきた際にギャングたちが手にしていたナイフを丸めて潰す。
「……こっちの麻薬ビジネスを黙認してもらうよう協力してもらってた！それと捕まったやつの減刑！」
　どうにもジェイムス議員は多岐にわたる“ビジネス”を行っている模様。
「して、今回の脱獄の件に対する関与は」
「ドサクサ紛れにうちの連中も逃した、サラリーマンを自称する東洋人がうちにも接触してきたんだ」
「そのサラリーマン、何処の組織の者ですか」
「そこまでは知らない、本当なんだ！」
　オブリビオンに対する情報は得られなかったが、しかし汚職の証人は
「法廷でも正直にお願いしますよ、さもなければ――」
　今度は椅子を粉砕。ギャングたちはすくみあがり、法廷での証言を約束した。彼らは証言による自身の減刑を望めるため、喜んでジェイムスの汚職を語るだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​

●そして議員は捕まった
「お客様に心地よく使ってもらえるよう、しっかりと掃除すること」
「へい、わかりましたと……」
　数宮・多喜（撃走サイキックライダー・f03004）はUDCアースの平凡な一般人だった。失踪した友を探すために猟兵となり、オブリビオンと化した友を葬った。いまは彼に何が起きたのかを探している。
　彼女は清掃員に変装し、献金パーティーの裏に潜り込む。雇い主のギャング幹部は今ごろ自身の組織の者が締め上げられている事も存じない。
「しっかし、豪奢な会場に比べてずいぶんと汚いトイレだねぇ」
　トイレに配属された多喜は掃除がおざなりになっているのを見て呟いた。
　モップを片手にトイレの清掃を行いながら、ユーベルコード【超感覚探知】を用いたテレパスで情報を集める。
　途中、トイレを利用するジェイムス議員とすれ違う。何事もないと装いながらも、個室トイレに入る彼の心中を掴む事に成功した。
「……なるほどね」
　ジェイムスは現在、件の東洋人との連絡をやり取りしていた。
　東洋人は自ら『サラリーマン』と名乗り、数多くのヴィラン組織やギャングに「仕事」を斡旋。
　サラリーマンは今回の雇い主である『雷使いのヴィラン』とジェイムス議員の仲介役に過ぎないようだ。
　大金に目がくらんだジェイムスは刑務所へのコネや上院議員を利用してサラリーマンに協力している。
　サラリーマンは現在、『雷使いのヴィラン』に協力すべく、脱獄騒ぎのあった刑務所にいる様子。ジェイムスはトイレから去っていく。
　献金パーティーが終わり、ジェイムスがリムジンに乗ろうと会場をあとにすると、彼の目の前には猟兵とヒーローが待っていた。
　集まった証拠からジェイムスはあえなく捕縛され、彼らの導きで警察に突き出される。刑務所を操ったものが刑務所送りに。皮肉な話だ。
「ともあれ、次は脱獄騒ぎのあった刑務所、だねえ」
　多喜は仲間の猟兵たちに情報を共有し、刑務所へ向かうよう促した。

大成功 🔵​🔵​🔵​

第2章 集団戦 『サラリーマン』

POW   :    シークレット・ガン 【手に持つアタッシュケースに内蔵された兵器】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。 SPD   :    エンシェント・マーシャルアーツ・カラテ 【カラテ】による素早い一撃を放つ。また、【武器を捨て、スーツとネクタイを脱ぐ】等で身軽になれば、更に加速する。 WIZ   :    情報解析眼鏡 【スマート・グラスで敵の情報を解析し、】対象の攻撃を予想し、回避する。 👑11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

●深層への関門
　刑務所に赴いた猟兵達。奥深くには魔法使いの時代の名残が残る。
　サラリーマンはここでビジネスパートナー『雷使いのヴィラン』の仕事を手伝っている。
　サラリーマンはゆっくりとした拍手で猟兵達を出迎えた。
「どうやらジェイムスは失敗したようですね……。ですが、もう彼の役割は終えましたから。ここから先は私の仕事です。さて、お覚悟を」
　眼鏡の位置を直しながら、サラリーマンはアタッシュケース片手に猟兵達を迎撃する構えを取った。




●暗黒騎士はバイクに跨る
　ユーベルコード【人機一体】で装甲服に変形した宇宙バイクをまとう数宮・多喜は自身ごとバイクにトランスフォーメーション。その背に暗黒騎士・アングラングが跨る。
　サラリーマンのアタッシュケースが開くと内臓されたマシンガンがあらわになった。猟兵達に挨拶代わり銃弾斉射。
　多喜は巧みに銃弾の合間を縫って回避を取りつつも接近、敵の眼前でアングラングは跳躍して膝立ち着地。
　光と闇の二振りの剣による攻撃でサラリーマンへ攻撃するアングラング。二刀流がサラリーマンのスーツを裂く。
「このスーツ、結構と価格が張るのですよ？」
　サラリーマンは残念げな顔でマシンガンを放つも、銃弾はアングラングの剣で切り払われる。
「銃撃には分が悪いかもしれんな！」
　連続発射される弾丸を捌くので精一杯だが、バイクからパワードスーツ姿にトランスフォームした多喜が素早く踏み込みスライディングで足元を崩す。
「足元がお留守ッ！」
　転倒したサラリーマンを更に掴み、グラップリングで組み伏せる。
「危険な代物は遠ざよう」
　アングラングはサラリーマンの所持する仕込みアタッシュケースを、黒い輪郭が浮かぶほど強いサイコキネシスのユーベルコード【暗黒念力】で遠ざけた。
　組み伏せられても体術で多喜を蹴り飛ばし、ブリッジ跳ね起きで転倒から立ち直ったサラリーマンは一時的にアタッシュケースを諦めて東洋に古代より伝わるマーシャルアーツ・カラテの構えを取った。
　非常に素早い一撃だが、バイクをまとう多喜はカラテを上回る高速移動により距離を取って回避に成功。
「距離を取っちまえばご自慢のカラテも届かないねぇ！」
「……遠近両対応、見事ですね」
「こちらも忘れてもらっては困るな！」
　多喜に接近しようとするサラリーマンはアングラングが暗黒念力で弾き飛ばす。
　アングラングはなおも二刀流でサラリーマンに攻撃、カラテと剣のぶつかり合い。剣に対して互角に応戦できるところからはサラリーマンの技量の高さが伺える。
「これは少々分が悪い……」
　サラリーマンは跳躍してアタッシュケースの回収に向かう。多喜が変形したバイクは高出力のメーザー光線を照射し、サラリーマンへ追撃。光線の直撃は避けるが、その熱量はサラリーマンの髪を焦がすには充分。
「どこの世界でもリーマン稼業は気楽にいかないようだね？」
「時にはこうした“仕事”を行うのもサラリーマンの務めです」
　アングラングはバイクに変形した多喜へ再び跨がり、距離を取る。サラリーマンはアタッシュケースを再び手にすると、肩の汚れを払った。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

●神々の鍵
「マシンガン、それとマーシャルアーツ……封じてしまいますか」
　遠巻きにサラリーマンを観察していたヒュペル・エアロ。ユーベルコード【扉は繋ぐもの】を使うと不思議な扉が現れた。
　対になる扉は肩を払うサラリーマンの真横に出現し、封印する力を持った神の鍵を突き攻撃に用いる。
「どうも、こんにちは」
「おっと？」
　サラリーマンはヒュペルの攻撃をアタッシュケースを握る右腕で受ける。敵はこれが相手の手を『施錠』し、封印してしまう一撃とは知らない。
　至近に近寄られた為、マシンガンを敢えて使うまでもないとカラテを使って応戦するサラリーマン。
「一つギアを上げて行きますか……」
　殴り合うため一時的にアタッシュケースを手放そうと試みるサラリーマン。だが、その手はアタッシュケースを握って離せない。
「くっ……これは」
「残念、仕掛けさせてもらいました」
　サラリーマンのマーシャルアーツは身軽になれば攻撃が加速するユーベルコード。しかし、握った手の自由が効かない今やビジネススーツを脱ぐ事も困難！
　攻撃速度は落ちるが仕方あるまい。サラリーマンは機転を効かせ、握ったままのアタッシュケースを振り回して応戦した。
　ヒュペルはアタッシュケースにより腹部を殴打されるが、カウンターにサラリーマンの顔面に殴りかかる。鍵を握った拳は簡易ナックルダスター！
　『眼鏡をかけた男を殴りはすまいな？』とは著名なヴィランの言葉だが、その言葉を残したヴィランも即時殴られていた。ヒュペルの拳は無慈悲にもサラリーマンの顔面に命中！そのままネクタイを握り、サラリーマンを引き寄せる。
「今回の首謀者について喋ってもらいますよ？」
「……私とてビジネスマンとして矜持がある、顧客の情報は漏らしてなるものか」
　サラリーマンは自由の効く左手でネクタイを握る腕を捻り上げて脱出。握った手は『施錠』により封じた、しかしアタッシュケースそのものを封じるには今ひとつ攻撃が浅かった。

成功 🔵​🔵​🔴​

●215本の剣
　サラリーマンは左手で傾いたメガネを直した。
「悪いですが、ここで皆様を食い止めるのが私の仕事でして」
　マシンガンの斉射による攻撃。高速のカラテが封じられた今、弾幕を張り対策するのがベストと判断した。
「私たちの仕事もあなた方を倒すことです」
　セシリア・サヴェージも自分の仕事を果たすべくサラリーマンに立ち向かう。暗黒のオーラが膜のように彼女を覆い、皮膚をかすめるも直撃はそらす。
「なかなか物騒なカバンをお持ちですね」
　遠距離に対応する攻撃。セシリアはユーベルコード【死翔の黒剣】で暗黒魔法の剣を複数生み出した。
「ほう……魔術の剣ですか。しかし、直線軌道であれば」
　サラリーマンは身をそらして回避、しかし直線を飛ぶ黒剣は牽制。念動力で操る黒剣が4本、サラリーマンを変幻自在の軌道で翻弄する。サラリーマンは避けるのが精一杯、銃撃の照準をあわせる事もかなわない。
「くっ、ちょこざいな……！」
　撃ち落とそうと試みるも、様々な動きを見せる黒剣に銃弾を当てるのは困難！
「無数の剣に貫かれ、無残な屍を晒すがいい」
　セシリアは攻撃の手が止んだのを見て、高速詠唱で召喚できるすべての黒剣を呼び出した。その数たるや総計215本！
　215本の黒剣はサラリーマンを360度くまなく囲う。それはもはや絶望と諦念の表情を浮かべる敵の姿も見えなくなるほどの黒いドーム状になっていた。
「さようなら」
　セシリアの号令で一斉に突き刺さる黒剣。サラリーマンの骸は黒剣に覆われて黒い塊にしか見えなかった。
「さて……監獄内に行きましょうか」
　他の猟兵に速やかに向かうよう促す。諸悪の根源はすぐそこだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

第3章 ボス戦 『終わりを告げる雷鳴・イカズチ』

POW   :    紫電雷装 全身を【迸る稲妻】で覆い、自身の【闘志】に比例した戦闘力増強と、最大でレベル×100km/hに達する飛翔能力を得る。 SPD   :    サンダーボルトブレーカー 敵を【超高出力の雷鳴を纏った鉤爪】で攻撃する。その強さは、自分や仲間が取得した🔴の総数に比例する。 WIZ   :    グレートハリケーン 自身からレベルm半径内の無機物を【複数の超次元竜巻】に変換し、操作する。解除すると無機物は元に戻る。 👑11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

●蓄える魔力
　牢の連なる監獄を進んだ先。電力を操るヴィラン、終わりを告げる雷鳴・イカズチは監獄の深部で迷宮の魔力を蓄えていた。
　彼女は全身に帯電して、猟兵たちを一瞥する。
「サラリーマンを倒したか、腕が立つようだな！さあ、どこからでもかかってこい！」
　イカズチは威勢よく叫ぶと、テスラコイルが如く全身より魔力の雷を放った。








●イェーガー、アッセンブル！
　先行するセシリア・サヴェージ、バイクに変身した数宮・多喜とそれに跨る暗黒騎士・アングラング及びヒュペル・エアロ。
「全員揃いましたね」
「ああ、連携して奴を討つぞ」
　アングラングがバイクから飛び降りると、セシリアの隣に膝立ち着地。
「雷使いのヴィラン、聞いた時からワクワクが止まらなかったんだよねぇ……」
「前衛は皆に任せます」
　人型に変形する多喜はヒュペルを隣に降ろす。
「1対4か……今日のアタシは調子がいいんだ、1人1分で仕留めてやろうッ！」
　イカズチは放電しながら猟兵たちに向かい駆け出す。その動きはまるで瞬間移動の如し！

●暗黒with暗黒
　全身を迸る稲妻で覆ったイカズチは飛翔を織り交ぜ縦横無尽に猟兵を翻弄する。
　彼女が狙い定めた前衛。セシリア、アングラングの二人は共に系統は違えど暗黒の力を操る騎士だ。
「電光石火の動き、斬りつけるのは難しいですね……」
「ああ、あの機動性は厄介だ。ここは一つ、協力して封じられるか？」
「やれるだけやってみましょう」
　意識を研ぎ澄ませるセシリアは敵の殺気を捉えた。接近し、雷の乗った拳を放つイカズチに対し、ユーベルコード【闇の魔力】でカウンターを行った！
「……暗黒の力を思い知るがいい」
　暗黒の波動は念動力によりイカズチの動きを鈍らせる。一方のアングラングはユーベルコード【輝く心の鎖】をフォースセイバーから放った。
「私の暗黒の力、今は支援に捧げよう……なるべく早く頼むぞ！」
　輝く鎖で縛り上げれたイカズチ。高速の動きは封じられ、セシリアは暗黒剣により二度、三度とイカズチを斬りつけた。
「クッソ……邪魔だァーッ！！」
　全身より迸る電流が鎖を伝ってアングラングに流れた！
「あっ、待っ……」
　放たれた電流は待ってはくれない！感電するアングラング！だが、アングラングへ向けて電流を流しているうちにセシリアに対する警戒は疎かになっていた！
　暗黒の波動を乗せた剣は衝撃波を放つほどの威力！渾身の一撃がイカズチを斬り裂いた！
「チィッ……、1人1分と言ったがアレは訂正する」
　アングラングの鎖が解ける。二人の協力により疲弊したイカズチの動きは全力でかかった時よりは鈍っていると体感できる。

●紫電の蹴り
「お疲れさん、おかげで互角に遣り合えそうだ」
　多喜は痙攣して地面に倒れるアングラングを見やり、電撃の衝撃波やメーザー光線をを放ちながらダッシュで監獄の床を壁を天井を駆け抜ける。
「アタシのサイキックで繰り出す電撃と、どっちが上かねぇ？ここはひとつ、どっちの『圧』が上か決めようじゃねぇか！」
「面白い！このイカズチ、電『圧』には確固たる自信がある！」
　超高出力の雷鳴で出来た鉤爪を、壁を蹴って回避する多喜。鉤爪は壁を切り裂いて焼け跡を残す。
「私をお忘れですか？」
「こンの……ッ！」
　セシリアが放つ暗黒の波動が再び宙を舞うイカズチの動きを鈍らせ、その機を見て加速する多喜！
「助かるね！ギアを上げていくよ！」
　オーバートップの最高速に達した多喜、人機一体を維持したまま限界まで加速して更に変身と遂げる！
「エンジン、サイキック、全開……超・変・身！てぇいやぁぁぁぁぁ！」
　熱と電撃を纏った超高速の飛び蹴りがイカズチに向かう。イカズチは雷鳴の鉤爪で叩き落とそうと試みるも多喜のスピードが勝った！
　ユーベルコード【黄昏砕く脚】がイカズチの腹部を直撃！
「カハッ……！」
　生半可な電撃であれば逆に吸収しエネルギーと変えていたところだが、多喜のクリムゾン・トラッシュ・キックの電圧がイカズチの電圧を上回った！
　多喜は着地すると超変身したパワードスーツの各部を開放し、余剰エネルギーの放熱を行った。

●そして鍵は開けられる
「こちらも正面からいきましょう。といっても、ボクではなくこちらの方が……」
　ヒュペルは宙に鍵をかざす。ユーベルコード【鍵は開けるもの】にて異界への封印を解くと、泣き続ける星の娘の御霊が呼び出された。
「あまり直視することは勧めません。皆さん、目と耳と脳を塞いでください」
「脳を塞ぐってどうしろっていうのさ！？」
「そうですね……では非常口を開けます」
　ヒュペルが鍵で開けた非常口。多喜は速やかに無防備に痙攣しているアングラングを回収する。セシリアも一旦非常口へと退避。
　一時避難を促したヒュペルは星辰の彼方より引き寄せられた、外なる星の娘に告げる。
「さあ、あの娘が貴方が星へ帰る術を知る者かもしれません」
　非常口の向こうからは何かがうごめく音が聞こえる。おぞましい何かが起きているのは確かだ。
　超次元竜巻で抵抗していたイカズチの脳裏に焼き付いたのは星の光と嘆き、手か脚かわからぬ触手。
「……そろそろ頃合いですかね」
　音が止んだのを確認し、扉を開けた先。精神に異常をきたしたイカズチはもう動かなくなっていた。精神に異常をきたした末に目や耳から血を流し死亡。その魂は骸の海へと還っていった。
「ハッ……オブリビオン！我が暗黒の力で貴様を」
「終わってる終わってる」
　闘志を燃やし目覚めたアングラングに、多喜が肩を貸した。

●汚職事件解決
　ヒュペルが見つけた汚職の証拠。これによりジェイムス議員は法廷に。
　また、セシリア、多喜、アングラングが掴んだギャングとの繋がりも有利な証拠として働いた。
「脱獄したヴィラン達、ヒーローがちゃんと捕まえたようです」
「刑務所も機能を取り戻したそうです、これでボク達の仕事は終わりですね」
　セシリアとヒュペルは事件の収束を見届けた。猟兵達の活躍により、この度のヒーローズアースを揺るがす汚職事件は解決したのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

最終結果：成功 完成日:2019年06月26日 宿敵 『終わりを告げる雷鳴・イカズチ』 を撃破！