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奇門遁甲封鎖戦線~譎詐の天秤、敬神崇祖に潜む

#UDCアース


●陥落する八宗兼学の山
 UDCアース世界の日本。その東北地方にある山形県には月山・羽黒山・湯殿山の三つ、それ即ち出羽三山と呼ばれる山岳地帯があった。これらの山岳地帯、羽黒山付近に座する出羽三山神社は、連日報道の注目の的となっていた。その理由は、ある出来事が関係していたのである。
 全国放送でニュースになったある出来事とは、不可思議な事に日本全土総てと言っても過言ではないほどの地域に及び、甚大な害をもたらしていた。

『───と、このような状況になっており、未だ原因が特定に至らないとの事です。尚、調査を継続し原因が特定次第情報開示に務めると───……』

 何処のチャンネルでも同じような内容を放送を続けている。
 そもそも何故こんな状況になっているのか、それはと言えば一週間前に起きた同時多発的な出来事に付随して起こったのだが───。

 遡ること、一週間前。
 七色に輝く隕石が九つ日本全域に落下し、突然の轟音と七色の隕石に世紀末だ、人類滅亡だのと、嘗てのノストラダムスの大予言がもたらした騒ぎのような状態になっていたのだ。

 そして現在も尚、騒動は続いている。。

『えー現場からは以上で………あ、ああああああああぁぁぁ、い"だい"ぃ……い"だい"!
 ゆるし、てくれぇ、ぎゃああああああああああああ』

 血がピタッとカメラのレンズに張り付く。絶叫する現場に居たリポーターを映していた映像がプツンと途切れるその一瞬────女とその後ろの異形な姿の“何か”を見た気がした。

『我らが信仰の賜物──信仰心無くして此処に在る事を認めん』

●霊力を辿って
 グリモアベースの一角に、じっとタブレット状のモニターを眺めている少年の様な風貌の男が居た。君たちの視線に気づくとその男───宮前・紅(絡繰り仕掛けの人形遣い・f04970)は人懐っこく笑いながら手を振る。
「や、集まってくれたんだね。一先ずは有り難うって言うべきかな?
 ──────ところで、みんなはニュースを見た?」
 君たちに近付き軽くお礼を述べた宮前は、タブレットの画面を見せるようにくるりと裏返す。どうやら宮前は今日の朝から話題を独占している、UDCアース世界の事件の報道を見ていた様だった。だとしてもそれが、何かと関係するのだろうか。
「あ、それがどうしたって思ってるでしょ~。
 この隕石落下、実は俺が見た予知と関係してるんだ!」
 宮前の言葉に、猟兵たちは驚くだろう。
 あれは邪神復活の為の起爆剤だと話す宮前は、話を続ける。UDCアース世界の日本列島に落ちた隕石は九つ、落ちた場所はどれも強力な霊力の集まる地域であった。

「このままにしておけば、邪神が復活しちゃうからね……邪神復活の儀式を止めて欲しいんだ」

 実は、あの隕石の影響によって数々のUDCが復活してしまったと言う。それに加え、そのUDCらは邪神復活の儀式を企てているらしく、宮前は予知した事を一つ一つ話すだろう。

「先ずは現地に赴いて調査をして欲しい。俺が予知したのは東北地域、隕石が落ちた場所はわかっても、儀式の場所は違う筈だからね……でも隕石が落ちた場所からはそう遠くない筈」
 ああそれと、見つけた隕石は破壊するようにと付け加えると宮前はUDCアース世界の日本地図をタブレットの画面に表示し指差す。そこには『出羽三山神社』付近の地図が映し出されていた。
「特定出来れば、完全な邪神復活の儀式を止める事が出来ると思う。ただ、それを守るUDCが居ることも忘れないで」
 慎重に言葉を選びながら話す。やや、緊張気味に話す宮前に猟兵たちも少し緊張を覚え始めた。

「邪神復活の儀式を止めても、不完全な邪神とは戦う羽目になる。
 その点を押さえて、どうか覚悟を持って挑んで欲しいな」

 グリモアであるタロットカードを宙に展開すると、猟兵達の立つ床に魔法陣を描く。視界が歪み揺れ、微睡むように淡い光が件の場所へ誘っていくのだった。


LichT
 はじめまして、もしくはお世話になっております、LichTです。今回のシナリオは特殊なものになっております。

●今回のシナリオについて
 総勢9名のシナリオマスターによる合同大型連動シナリオになります。
 本シナリオは他MSのシナリオへ参加しても、時系列的矛盾は発生しないものとなりますので、お気軽にご参加していただければと思います。

●参加MS一覧(担当地区)
 屋守保英(北海道)
 LichT(東北)
 不知火有希哉(関東)
 桃園緋色(中部)
 雪宮みゆき(近畿)
 オノマトP(中国)
 小風(四国)
 Parmigiano(九州)
 るっこい(沖縄)
(以上9名敬称略)

●シナリオ結果について
 本シナリオの結果は、後日リリース予定の決戦シナリオ(七転十五起MS)へ反映されます。

 それでは、今回のシナリオの流れを大まかにご説明します。
 第1章で現地調査を行い儀式場の情報を掴んで下さい。隕石を見つけたらついで程度で破壊をお願いします。
 第2章では邪神を守るUDCを倒し、復活の儀式を阻止して下さい。
 第3章で【???】との戦闘になります。心して挑んで下さい。

 共闘、アドリブ可能であれば、お手数お掛け致しますが文頭か文末のどちらかにご記載下さい。また、単騎で挑みたい猟兵の方や同行者が居る方におきましても同様に、その旨のご記載をお願い致します。

 皆様の素敵なプレイングをお待ちしております。
 こちらもより良いリプレイを御送り出来るよう、精進して参りますので、どうかよろしくお願い致します!
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第1章 冒険 『危険な流れ星の真相』

POW   :    気合で隕石を見つけて調査する。あわよくば破壊する。

SPD   :    自身の持っている技能を用いて調査する。あわよくば破壊する。

WIZ   :    落下地点に何か関係がないか調査する。あわよくば破壊する。

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

 プレイング受付開始しています。
●6月9日~執筆は夜から行いますので、どうぞ宜しくお願い致します!
数宮・多喜
【アドリブ改変・連携大歓迎】

げ、東北ってアタシの実家があるじゃねぇか!
でもって隕石?外宇宙からかよ。

まずは何がなくとも『情報収集』。
アタシのカブ、スマホ、そしてモバイルバッテリーは、
こういう広範囲を足で調べるにはもってこいだ。
他に情報を足で稼ごうって奴がいたら相乗りさせたいね。
情報共有も欠かさない。

落下地点近辺で情報を集めたら、
『世界知識』と照らし合わせて、
出羽三山神社との位置関係を確認。
『地形の利用』をして儀式を隠ぺいしてそうな場所が
直線経路上にないか推理をかける。
アタシは隕石への破壊を含めた対処を優先するけど、
神社や儀式場で動きがあったら
『騎乗』『操縦』『ダッシュ』を駆使して駆けつけるよ!


村井・樹
一つ隕石が落ちるだけでも大騒ぎだというのに、これが全国各地に。

確かに、何かを感じざるを得ませんね

隕石の破壊は勿論急務ですが、隕石が散らばってる地点から、何か読み取れることはあるでしょうか……?

UDCのメメ君とも一緒に捜索・破壊をします
『視力、暗視』で見逃すことがないよう、一つずつ
用意した地図に、発見した地点を印をつけましょうか
『秘匿すべき禁忌の術式』も活用し、隕石の落下地点から何か分かることがあるかも調べてみましょう
隕石の破片が何かの陣を描いていたり、隕石自体に、何か呪術的な仕掛けが施されていたり、隕石が私達をどこかに導くように落ちていたりもするかもしれませんので。

※アドリブ、連携等大歓迎



●調査経過報告1
 鬱蒼と茂る草や木々、天上が見えなくなってしまう位の深碧の葉が太陽の光を斑模様に遮る。そんな山道に、ぽつんと立ち尽くしていた猟兵が一人、グリモアベースから転送され此処にいた。

「げ、東北ってアタシの実家があるじゃねぇか!」

 そういえば!と思い出したように声を上げた数宮・多喜(撃走サイキックライダー・f03004)は、スマートフォンを片手に現在の状況確認に勤しんでいた。
「(って……そんな事考えてる暇があったら、さっさと情報収集しなって話だね)」
 頭を振って、優先すべき事に思考を置く。実家に何かが起こる前に、少しでも多くの情報を得なくてはならない。今は、実家の心配をしているよりもこの調査をすべきだと、そう判断した数宮は、宇宙バイク『宇宙カブJD-1725』に股がっていた。短時間でより広範囲を調べるには、これが一番いい。
「(アタシ向きの仕事じゃないか)」
 数宮は早速、山道を走ろうと発進する───が。

「私も、連れていって頂けないでしょうか?」

 背後から掛かった声にゆっくり停止すると、数宮は振り返る。そこに立っていたのは、柔和な笑みを浮かべた村井・樹(Iのために・f07125)という男だった。
「自身の足で、調査をしようとお考えなのでしょう?
 私も、そうするつもりだったので……あなたが不快でなければ、ですが」
 村井は、控え目にそう言うと彼女の返答を待つ。散らばった隕石を調査するにあたり、他の同行者が居れば様々な視点から意見交換も可能だ。可能性を広げるなら、仲間は多い方が良い。一人よりも二人、という事だ。今回の事件は何かと不明な点も多い、故に何処から手を着ければ良いのか全く分からない。
「(手探りでいくしか無いのが不安ですが…)」
 そう考え耽っていると、ぽんと自分の肩に手を置いた数宮が、不思議そうに首を傾げて見ていた。
「なあ、アンタ大丈夫かい?」
「……ああ……すみません。
 考え込んでいました……何ぶん今回の調査は手探りで行かなくてはならない様ですから」
「確かにそうだけどねぇ……先ずは考えるよりも先に行動した方が早いさ」
 ニッと快活に笑う数宮に、村井はほっと胸を撫で下ろす。どうやら、気分を害してはいないようだ。数宮は村井に「乗りな」と、そう言うと相乗りを促す。

「さ、行くよ!目的地は隕石落下地点付近、よぉく掴まってな!」

 その声と同時に宇宙カブJD-1725は変形する、それは前輪後輪合わせて四輪の特殊なオートバイの形。前後輪は一本に見えるが、二本ずつ独立した構造になっていて自立可能な、V10エンジンを搭載した500馬力のオートバイだ。厳密に言えばオートバイでも無いのだが、兎に角その形に変形した宇宙カブJD-1725は、超高速のスピードで走り抜けていく!
 数宮の【ゴッドスピードライド】によって変形した宇宙カブJD-1725は、ものの数分で隕石落下地点付近まで来るとエンジンを停止する。

「……此処か」

 辿り着いたのは、出羽三山神社と五重塔を繋ぐおおよそ2400もの石段だった。それ自体は普通の事だが、何より異常だったのは────。

「これが、隕石………なのでしょうね」

 出羽三山神社と五重塔を繋ぐ石段の中腹に、巨大な岩──隕石が道を塞ぐ様にそこに在った。これでは出羽三山神社にすら辿り着く事は出来ない。どうやらその奥にも、隕石は落ちているのであろう事が安易に予測出来る。二人は同じ様な大きさの隕石が、中腹から出羽三山神社に続く石段を塞ぐ様に複数個落ちている、つまり建物や木々が隕石によって隠れている事から概ね想像出来たのだ。この先を進むのであれば破壊しながらでないと、進むことはおろか通る事もできない。
「メメ君、奥の方を見てきてくれますか……?」
 村井の声に同調するように、まるで自発的に動いているような動きで メメ君と呼ばれた絡繰人形は動く。呼び掛けに応じた、メメはするりと巨大な隕石を飛び越え、僅かな隙間を縫って奥へ奥へ進んでいく。
「…………成る程、やはり神社に続く石段にしか隕石は落ちていない様ですね」
 村井は確認した隕石を地図に書き込み記す。書き記して行くと分かるのだが、隕石は一直線上に並んでいる事が分かるだろう。
「これじゃあ、儀式場が神社にあっても分からないじゃないか」
 数宮の言葉に、確かにと呟く村井。隕石には術痕も無ければ、呪術的な仕掛けもない。
「(破片という破片が落ちて居ないのも不思議ですがね……)」
 この隕石の落ちた場所には石段の欠片はあっても、隕石が少し欠けた屑石さえも見当たらないのだ。

「取り敢えず、少しでも進んで調べるしかないみたいだねぇ!」
「その様ですね、先ずは破壊と致しましょう!」

 二人の猟兵は先ず一つと隕石を壊す。
 バキッ──バキバキバキッ!
 大きな罅割れる様な音が鳴り響くと隕石が破砕される。壊された隕石の破片は、塵のようにサーっと砂となって消えていく。そして、その隕石があった地面に記された言葉は───。

『平等とは差別がなくみな一様に等しいことである』

 これ以上の事は知ることが出来ないだろう、そう感じた二人は、不可思議な言葉に疑問を覚えつつも先へ進むことになるのであった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

黒鵺・瑞樹
共闘・アドリブ可 【SPD】

世界が違うっていっても、世話になった神社の縁ある月山神社。隕石だとか調査しないわけにはいかないよなぁ。
それにサムライエンパイアの方だが一通り参拝してるしなおさら。

何より由緒正しき神道の神様を祭ってるんだから邪神は遠慮してほしい。

まずは事前調査による座標から、隕石の落下地点の調査を。
【失せ物探し】【野生の勘】で周辺へと捜査を広げ、且つ絞り込んでいく。
暗い所は【暗視】も併用。
隕石は見つけたら壊す。
…ちょっと、いやかなり名残惜しいが邪神絡みならばしょうがない。
宇宙って結構ロマンなんだけどなぁ。


鈴木・志乃
絡みアド大歓迎

七色の隕石とはまた物騒な
解決してのんびり星見が出来るようにしたいねえ

全体通して【学習力】で根気よくやるよ

事前に儀式に都合の良さそうな場所は目星をつけておこう【世界知識】
それなりに拓けていて隕石を置けそうな場所、かなあ
いわく付き、噂がある場所があれば入念にチェック
【コミュ力】駆使して人からも【情報収集】したいね

現場百篇だよ
痕跡は必ず残っているはず
隕石なんてそうそう簡単に運べないんだから

【第六感】で違和感を見つけよう
移動ルートに必ず跡があるはず【失せ物探し】
私だったらどう運ぶか考えてみようか【地形の利用】
何か見つけたら【撮影】で他猟兵に発信
相手の予測が出来れば上々だね



●調査経過報告2
「七色の隕石とはまた物騒な……」
 そうポツりと呟いた鈴木・志乃(ライトニング・f12101)は、周辺を見渡すように森林を掻き分けながら進む。予測するに、儀式には相当な広さが必要であることは分かっていた。しかも此処───出羽三山神社付近には、神社以外に人の手が入り整備されている道や、広い広場は石段などしか見当たらない。
「(道端で儀式をするって訳にもいかない筈だよね)」
 山道はあっても、どの道も獣道のようなものか或いは道が細いかで、とても儀式が行える環境でない。
「まずは事前調査による座標から、隕石の落下地点の調査をするか」
「……そうですね、先ずは落下地点を探った方が良さそうですし、そうしましょう」
 鈴木のそんな様子を見ると黒鵺・瑞樹(辰星写し・f17491)はそう促す。UDCアースではないがサムライエンパイアの方では、世話になった神社の縁ある所であった黒鵺は、少しだけ呆れた様な様子で地図をじっと眺めていた。
「(何よりも、由緒正しき神道の神様を祭ってるんだから邪神は遠慮して欲しいけどな)」
 まあ、相手はわざとそういう場所を選んだのかも知れないが、とそう思いつつ範囲を広げ探す。暫く二人が探していると、巨大な隕石を目の当たりにするだろう。それは自分たちよりも大きく、石というよりかは岩と言った方が良い位の大きさであった。

「あったにはあったが………」
「これは……道を塞ぐ様に置かれているだけ、なんですかね?」

 怪訝そうに眉を顰めた鈴木は思考をフル回転させながら、考える。隕石が落下したその場所を見る限りでは、動かされた形跡もなく、どうやらこの隕石を動かし、儀式に使用するために儀式場に持っていった訳でも無さそうだ、とそう結論が出る。
「……少し良いか?調べたいことがあるんだ、志乃は続けてて良いぜ。
 俺は少し気になる事があってな」
 黒鵺はそう言うと鈴木と一回、別行動を始める。彼が取ったのは、完全に“勘”による行動だったのだが。

「───やっぱり、そうか」

 青い瞳を少し細めて呟く。黒鵺は出羽三山神社の周囲の森林を掻き分ける様にぐるっと一周し、あるものを探していたのだ。
「あの神社を囲む様に落ちてるって訳か、この隕石は」
 そう、彼が探していたのは“隕石”だった。勘でしかなかったが、この石段だけに隕石が落ちているのはあまりにも不自然だと思った黒鵺は、出羽三山神社の周囲を調査することにしたのだ。そして、彼の勘は見事当たったという訳である。この事実が、どういう事を意味するのかはまだ分からないが、情報は共有すべきだろう、とそう踏んだ黒鵺が鈴木の方へ向かおうとした、瞬間。
「──、─!──!!」
「ん、何か騒がしいな?
 ……聞こえた方向は志乃が居る方面か」
 何があったのだろうと黒鵺は近づく、そこには杖をついた白髪の老人と鈴木が何かを話している様だった。それだけならば良いのだが、その老人は何か鬼気迫る形相で罵詈雑言を浴びせかけていたのだ。
「おい、アンタどうしたんだ?」
 なるべく平然として話掛けるとやはり、どこか真に迫る様な形相で口を開く。

「お前たちは『猟兵』だろう?だったらここから出ていけ!」

「おいおい、待ってくれよ。俺たちは隕石でやられた此処をどうにかするために来たんだけどな」
「お前たち『猟兵』なぞに此処が救えると思うか?
 我々を救えるのはあのお方だけだ!」
「あのお方?───誰だ?」
 黒鵺がそう聞いてもあのお方はあのお方だ!と言うだけで、何の情報も得られない。
「すみません、瑞樹さん。どうしてもあのお爺さん『出ていけ!』と聞かなくて」
 ばつが悪そうに鈴木はそう言うと、少し前の状況を思い出す。

 それは黒鵺が個別行動を申し出、別々に動いて少し経った時だ。鈴木は情報を得るために、住民に話を聞こうと行動し始めたが、そこで会った老人に思いもよらぬ言葉を投げ掛けられるとは、この時は知るよしもない。
「突然すみません。お爺さん、この場所に曰く付きや噂のある場所はありませんか?」
 粗相のないように丁寧に聞いたつもりだったが、みるみる内に老人は顔面蒼白になり、杖を振り回す。
「やはりお前たち『猟兵』が隕石を壊していたんだな!!
 出ていけ!此処から立ち去れ!」
「隕石はこの場所に悪影響を及ぼしているから、破壊してるんですよ!」
 鈴木がそう言えば、老人は口から出任せを言うんじゃない!と怒鳴り散らす。そして今に繋がると言うわけだ。

 話を聞くとあの隕石は出羽三山神社を守る為の神聖なものらしい。それに、私達──つまり猟兵は敵だという事も言っている。お爺さん以外に話を聞いても、みな口を揃えて同じ事を話すのだ。
「(誰かが、もしくはUDC自身が吹聴してるって事だよね)」
 洗脳、或いは催眠によって住民はUDCの支配下に置かれてしまっているかもしれない、という事を念頭に進まなくてはならない様だ。

 出羽三山神社を囲む隕石と住民の不可解な発言。これが次に生かせるよう鈴木と黒鵺の二人は情報を共有すべく残し、隕石を破壊しながら道を切り開いて行くのであった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ナハト・ダァト
【アドリブ歓迎】
六ノ叡智で周囲を探索

……生命ガ、ざわついているネ
ここにある筈の無イ。あってハいけない力ヲ、微かだが感じ取れるヨ

隕石を発見したら、世界知識、情報収集、地形の利用から
落下地点の位置と場所の意味を推測
また、周囲の生命体への反応から隕石の中身に何かが潜んでいないかも調査してみる

良くなイ物デある事ハ確かダ
星辰というのハ、人に叡智ヲもたらすガ
この場合、厄災を運んできタ。死兆星とでモ言うべきかネ?

これ以上、得られる物モ無いだろウ
破壊しておくヨ
【神の真意】で召喚した生命の樹を用いて破壊
破壊の際に飛び散ってしまいそうな危険なエネルギーは、生命の樹で吸収しておく



●調査経過報告3
 出羽三山神社の付近に着いたナハト・ダァト(聖泥・f01760)は、ゆっくりと見渡す。これまでに得た情報は全て共有されているが、まだ不自然な点は多い。
「……生命ガ、ざわついているネ
 ここにある筈の無イ。あってハいけない力ヲ、微かだが感じ取れるヨ」
 ダァトは周囲に意識を集中させると、【六ノ叡智・美麗(セフィラ・ティファレト)】を使用する。自然が語るままに、彼らの言葉にそっと耳を欹てると、今置かれている状況がよく分かった。それは、何か別の力つまり異質な力の存在が介入していること。ダァトはこの付近から出羽三山神社が何かしらの力に侵食されているのを感じとっていた。少しずつ歩を進めながら注視していると巨大な隕石をすぐに見つけられる。
「(隕石の中に何かが潜んでイるかもしれなイ……)」
 隕石に触れる距離まで近づくと、そっと優しく触れて確かめる。どうやら中には何の生命体も居ない様だと分かるだろう。叩いてみても中に空洞がある感じは無い。
「良くなイ物デある事ハ確かダ
 星辰というのハ、人に叡智ヲもたらすガ
 この場合、厄災を運んできタ。死兆星とでモ言うべきかネ?」
 ふ、と落ちた場所を考える。出羽三山神社の周辺に一周するように隕石が落ちていた。つまり、もし隕石を儀式に使うのであれば、出羽三山神社自体が儀式場になっているのではないか、そう予測出来る。
「とは、言ってモ……」
 この先は進めそうにない。出羽三山神社に続く石段は隕石で塞がれていることは、先の調査で分かった事だ。
「(それニ、情報ヲ共有したことデ分かっタ、住民の洗脳ヲ解くにモ儀式ヲ阻止する他なさそうダ)」
 ダァトは、聞く耳の持たない住民のことを思い出す。他の猟兵が言うに、住民は猟兵を悪と認識し恐れていると。誰かが吹聴したのだろうと、やはりそう憶測を立てた方が良さそうだ。
「(先ずハ、この隕石ヲ退かさなイことにハ進めなイネ……)」

『AIN SVPH AVR』

 【神の真意(セフィロト・ダアト)】──生命の樹を召喚し、纏わりつくように隕石の表面を這うと、生命の樹の急激な成長による幹の圧力で挟まれ、隕石を粉砕。障気が漏れ出さないよう、生命の樹は吸い込んでいく。
「(此で、先に進めそうだネ………ん?)」
 粉砕された隕石の中からボトンと何かが落ちる。ダァトはそれを拾い上げると、それを見る。それはどうやら古い本の様でタイトルは『Rituale resuscitatio:libra』。読むのであれば以下の事が分かるだろう。

●『Rituale resuscitatio:libra』
 Terra sancta .
 Qui credit.
 Agnus Dei.

 とだけ読み取れるだろう。後は掠れていて読めない。ダァトは此が邪神復活の儀式に関与するものである事が理解出来た。
「(Agnus Dei──神の子羊カ。
 急がなくてハ……もう時間がなイ)」
 ダァトは、隕石を踏破して進んで行く。手遅れにならない事を信じて走り抜けて行くしか、今はまだ出来ないまま───。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『狂信の淑女』

POW   :    これぞ、我らが信仰の証
【自身が『異教徒』と判断した相手を消すため】【神への祈りを捧げ続けた両手に】【異教徒を焼き滅ぼす青い炎】を宿し超強化する。強力だが、自身は呪縛、流血、毒のいずれかの代償を受ける。
SPD   :    ああ神よ、我らに愛の手を!
【彼女達の信仰する邪神によく似た姿】の霊を召喚する。これは【異教徒への天罰】や【審判の光】で攻撃する能力を持つ。
WIZ   :    今こそ、生まれ変わるのです
戦場で死亡あるいは気絶中の対象を【神へとその命と魂を捧げんとする狂信者】に変えて操る。戦闘力は落ちる。24時間後解除される。
👑11
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●盲信する女たち
 石段の隕石を破壊し、朱い鳥居を潜ればそこは出羽三山神社の境内であった。三神合祭殿前にある鏡池にはたくさんの蓮の葉がさわさわと風に揺れている。その傍に透明にも見えるような銀色の髪を蓮の葉と同じように揺らして、その女は静かに佇んでいた。
「気付いてももう遅いわ。あのお方はもうすぐ復活するのだから──」
 三日月に口元を歪めて微笑む女。猟兵の一人が『Rituale resuscitatio:libra』という本を持っているのを見ると益々歪に口元を歪める。
「その本には、あのお方の復活に必要なものが書かれていたのよ……。
 Terra sancta ──それ即ち、聖なる地。
 Qui credit───それは信仰を持つ人々。
 Agnus Dei───彼らは神の血を引く贄。
 でも、あれもこれも全部揃ったわ」
 ほくそ笑みながら尚、女は続ける。
「だからもうその本は要らない。
 あとはあのお方が完全に復活するまで私たちが守るのよ」
 女は君たちの方へ近付いていくと、青い火の球をぼうと灯す。

「貴方たちを贄にあのお方を完全に復活させるわ!
 私たちの平等のために!等しい世界を、正しき世界を今ここに!
 ああっ、神よ!我らに力を!」
 
 その言葉を皮切りに、女は君たちに襲いかかって来るだろう。
 さあ、武器を取れ猟兵たちよ。
 偽りの神を打ち砕く為、正しい世界に戻す為に君たちは動き始めるのであった。
鈴木・志乃
何が神だ
サイテーだよ、あんた

あたしの真の姿にかけて
絶対にこんなこと止めてやる

絶対接近してくるはず……
対抗UC【女神の法律】発動
可能なら上から順に重ねがけだ
1燃やすな
2目を開けるな
3口をきくな

【催眠術】で猟兵を異教徒ではなく信者だと誤認させたいなあ
無理なら平衡感覚をなくすぐらいで
それだけでも十分御の字!

【歌唱】の【衝撃波】で体内も精神も揺らす
【第六感で攻撃を見切り】、鎖で【早業武器受けからのカウンターなぎ払い】

【念動力】でそこら辺の砂利とか器物巻き上げて
目潰し、目眩まし、撹乱を狙う
【オーラ防御】常時発動


村井・樹
へぇ、あんたらの信じる神と、それを呼ぶ材料がどんなのか、わざわざ教えてくれんのか?
まだまだ、俺達には情報が必要だったからな、これはありがたいことだ
その親切心、しっかりお返ししてやらないとな?

目にはメメを、UDCと融合して交戦開始

狂信の淑女達を『誘惑、挑発』し、俺の方へ引きつけてやる

天罰?審判?大いに結構

それだけ、そっちも『やる気』なんだろう?
それなら、こっちも『その気』で行ってやるよ

敵の殺意に対し、『カウンター』の一撃を返してやる
俺を疎めば疎むほど、俺を憎めば憎むほど、俺とメメは力を増す

受けた傷以上を返してやる

さあ、それでもまだ信仰心は折れないのか?

※他猟兵との絡み、アドリブ等大歓迎


数宮・多喜
【アドリブ改変・連携大歓迎】

神の血を引く贄、ねぇ……
それがアタシたち猟兵だってんならさ。
アンタ達が呼ぼうとしてる神ってのは猟兵なのかい?
ま、それを読み解く時間はくれないだろうからね……
逆に神鳴る稲妻で瞬く間に蹴散らしてやるよ!

さぁて新技だ!派手に行くぜ!
一気にサイキックの力を高めて【嵐裂く稲妻】を発動!
境内の開けた空間を『ダッシュ』で縦横無尽に駆け巡り、
狂信者どもを電撃の『属性攻撃』と
『マヒ攻撃』込みのタックルで跳ね飛ばすよ!
仮にかりそめの復活をしたとしても、
もう一度ぶちのめすだけさ。

libra、天秤。秤、平等……。
全てのモノに等しく与えられるもの……
まさかこいつら、自分自身が贄になる気か!?


黒鵺・瑞樹
共闘・アドリブ可

ふざけんな!
聖なる地?誰を贄だと?
少なくともお前らにとってじゃない。
ここは古き推古の時代からの神が座す地、願いの地なんだ。
切る!

「胡」を抜く。
分社とはいえ月山神社に奉納されてた刀だ。その権利はあるだろ。
普段は自分自身の方で戦う事が多いが今回ばかりはこっちでだ。

【暗殺】を乗せた【剣刃一閃】で攻撃。もちろん一撃入れたら【傷口をえぐり】確実に殺す。
境内でって不安はあるけどそれ以上にここを汚されるのは我慢ならない。
あとで幾らでも月読さんの罰は受けるさ。
相手の攻撃は【第六感】【野生の勘】【見切り】で回避。
回避しきれなかったら【各耐性】でこらえる。足手纏いになるのだけは勘弁だな。


ナハト・ダァト
そこまデ来るト、最早信仰ヲ通り越しテ執念だネ

まア、私にハ関係の無い事ダ
手早く片付けるヨ

一ノ叡智で神秘性を強化
オーラ防御/呪詛耐性と併せ、信仰から来る攻撃への守りを固める
二ノ叡智で挙動の見切りを行い
カウンターが行える位置に時間を切り飛ばして移動
力溜めを早業で行い、2回攻撃を弱点へ
鎧無視、傷口をえぐるように叩き込む

医術、世界知識、情報収集も用いて瞳から敵の弱点を絞り出す

九ノ叡智では、「信仰心」「光の使い方」「目的」を忘却させる
武器改造、生命力吸収によって
触手から敵が生贄に捧げようとするエネルギーを回収しておく

ヤケになっテ、彼女達ガ生贄になってハ本末転倒だからネ



●神の啓示が下す、運命
 此処に五人の猟兵が居る。その猟兵たちは何の為に存在するのか?
 それは人命救助かもしれない。
 それとも誇りの為かもしれない。
 もしかしたら逃げる為なのかも。
 ───何はともあれ、様々な理由で存在する猟兵たち五人が偶然にも一同に介した、ここ出羽三山神社には異質な力が漂っている。

「へぇ、あんたらの信じる神と、それを呼ぶ材料がどんなのか、態々教えてくれんのか?」

 先ほどまでぎゃあぎゃあと女たちの捲し立てた言葉を聞き終えると、村井・樹(Iのために・f07125)は呆れた様に笑う。村井は敢えてオーバーな身ぶり手振りで話を続けた。
「まだまだ、俺たちには情報が必要だったからな、これはありがたいことだ。
 その親切心、しっかりあんたらにお返ししてやらないとな?」
「ふふふ……無駄よ。貴方たちがどう頑張ろうと結局は無駄なの。
 残念なことね。
 でも、貴方は此処であのお方の一部になるのよ?喜びなさい?うふふ……さあこの聖なる地で贄となって消え去れば良いわ!」
 村井の挑発にも決して動じず、狂気じみた笑みで返す女に怒りを露に怒号を飛ばした人物が居た。

「ふざけんな!」

 黒鵺・瑞樹(辰星写し・f17491)だ。当然だった。これは───その言葉は、自分と所縁のある月山神社と深い繋がりのある出羽三山神社を、冒涜する行為に他ならない。
「聖なる地?誰を贄だと?
 少なくともお前らにとってじゃない。ここは古き推古の時代からの神が座す地、願いの地なんだ。
 ───切る」
 冷静さを欠いている訳ではない。ただ、此処を汚されるのが嫌だった。それだけだ。
 女と黒鵺の距離が、いつの間にか近付いている。女がそれに気づき避けようとしたその時、二人の間を閃光が一瞬通りすぎそして、チカッと眼前を明るく照らす。閃光?いいやそれは閃光ではない───刀だ。黒鵺の打刀『胡』が抜刀されたのである。

「っ!あ───ぁ?………血、血が、いや、いや、嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌いやぁあああああああ!」

 【剣刃一閃】───これは黒鵺の一撃だ。暗殺するように絶妙なタイミングで飛び足で近付き、そして抜刀と同時に斬り付けたのだ。血が宙を舞い、この血を濡らしていく。
「おっと、随分派手に叫ぶな?……ああ、そうか。
 おまえら死ぬのが怖いのか」
 村井は冷淡に本心を見透かすように言い放つ。女たちがその言葉に少し反応を見せたのを見過ごさなかった。
「ご名答、ってか?そりゃあそうだ、誰だって死ぬのなんて怖いさ。
 なあに、何も恥じることはねえよ」
「ち、違う違う違う違う違う違う違う違う違う!!!
 お前たちは我が神のあのお方を何も知らないから、そう言っているだけだ!
 私たちが血を流すのが嫌なのは、私たちの垂れ流した血でこの地を汚すのが、見るに耐えないだけだ!」

「へえ、だったら血を流したくなければこんなこと止めなよ」

 女のその言動に鈴木・志乃(ライトニング・f12101)は冷酷に言う。こんな下らない神が居てたまるか。この地の住人に偽りの信仰を植え付けて、命を捧げよと簡単に命を強奪するやり方は、認めない。
「止める?……そんな選択肢無いわ。ねぇ、貴方たちはどうして此処の宮司や禰宜、参拝者がこーんなに居ないのだと思う?」
 また別の女が悪戯に笑って鈴木の方へ近づく。
「………」
「あれ?黙っちゃった。
 アハハ!そんな拗ねないでも教えてあげるわよ。
 それはね………あのお方の一部になったからなのよ!」
 ああ、なんて素敵なんでしょうっ!と興奮気味に話す女はずる、と何かを引き摺って来てはどさりと目の前に落とす───それは何の変哲もない、血が通っていたであろう肉塊。それはつまり死体だった。
「───…が──だ」
「えぇ……なあに?聞こえないわぁ?」

「何が神だ」

 こんな事見過ごして言いはずが無い。この地に態々赴いて、思い思いのままに参拝して、色んな願いを込めた人々が、こんな神の為に命を奪われるなんて、最悪だ。
 誰もが鈴木と同じ気持ちだった。人の命を何だと思っているんだと、人の命は重く軽いものでない事は誰だって分かる筈だのに何故と、悔しい思いが込み上げてくる。
「サイテーだよ、あんた」
「全く、彼女ノ言う通りダ。
 ……もウ、そこまデ来るト、最早信仰を通り越しテ執念だネ。
 まア、私にハ関係の無い事ダ。手早く片付けるヨ」
 これまでずっと黙ってやり取りを聞いていたナハト・ダァト(聖泥・f01760)はそう言って、目映い光をその身に宿し始める。鈴木はその動きに合わせて、誘引作戦を決行する。
 女たちは挑発した村井、誘引している鈴木、妙な動きをしているダァトの元へ散り散りに動く。
「綺麗に三方向に分かれテしまっタ見たいだネ」
「だったら個別に対処するまで、だろ」
 三人は素早く、女たちの力をなるだけ分散させたままにする為に行動する。だが、行く手を阻むように女たちは猟兵たちの前に出る。そして、ダァトに向かって青い火が放たれる。直撃を喰らったダァトは、仰け反る……こともなく平然として攻撃を受け止めていた。

「効かないヨ。もっとも、そレ以前にキミたちハ自身の体を心配した方が良いト思うけどネ」

 ダァトが使用したのは【一ノ叡智・王冠(セフィラ・ケテル)】。これは自身を強化するもので、先ほど宿した目映い光はこれを使用した事を表していた。神秘性を強化することで、何人たりとも近付けさせないようなオーラを纏い、防御を底上げする。更に、オーラを重ね合わせるように纏って攻撃をさせたのだ。
 女はぐらりと揺れた体を無理に動かす。実は女たちが使う信仰の証の攻撃には、デメリットがあった。身体能力を超強化するものの呪縛、流血、毒のいずれかを受けるのだ。そして今現在、女の身体からは尋常でない程の流血をしている。
「まだ、まだよ……私は絶対に」
 血走った瞳でもっと、もっと力を!と青い火を灯す。そんな様子を滑稽だなと鈴木は思いながら、女たちの手段を封じる術を講じる。
「これ以上の狼藉は許されません」
 鈴木の言葉で、少し空気がピリッとした様な感じはしたものの何も変わらない。
「あら?どうしたの?不発?アハハハハ!
 そんなこともあるのねぇ」
 心底愉快そうに笑う女はもう一度自身を強化する為に、炎を────。

「燃やすな」

 青い炎を灯そうとしたその瞬間。女たちの身体を激痛が襲う。全身が引き裂かれるようなそんな痛みが、襲っていた。
「貴方、何を!?止めなさい、このっ───猟兵風情が」

「目を開けるな」

 あまりの痛さに暴言が飛ぶ。それでも鈴木は手を緩める事なく、制約をかける。鈴木のその制約は女たちが瞬きをする度に破られ、そしてまたもや激痛を伴う。目が何かに貫かれたのではないかと思うくらいに痛い。痛い。痛い。
「痛い痛い痛いいた───……!」

「口を聞くな」

 【女神の法律(メガミノホウリツ)】───聖者のオーラが命中した対象にルールを宣告、そして破られたらダメージを与える。そんなユーベルコードだ。
 口を聞けば全身が傷付き、目を開けば激痛が襲う、攻撃手段である青い炎を灯せば、全身が火傷を負う位の痛みが襲う。

「八方塞がりだろうねぇ、この状況」

 好機を待っていた数宮・多喜(撃走サイキックライダー・f03004)はそう呟く。少し同情せざるを得ないこの状況に、数宮は言葉を続ける。
「神の血を引く贄、ねぇ……それがアタシたち猟兵だってんならさ。
アンタ達が呼ぼうとしてる神ってのは猟兵なのかい?
ま、それを読み解く時間はくれないだろうし、もう答えられないだろうけどね」
 横目でちらと、数宮は阿鼻叫喚の女たちの様子を眺めていた。なんとも憐れな女たちだ。だからといって罪を許す気にもならない。女たちはいくら殺られようとも立ち上がって向かう。猟兵よりも数が多い事を良いことに、何度も何度も何度も何度も向かってくる。
「随分、威勢が良いねぇ………だが神鳴る稲妻で瞬く間に蹴散らしてやるさ!」

『稲妻のごとく、駆け抜ける……!』

 そう言い放った数宮の身体を包み込む様な球状のオーラに似たもの。それは数宮が発動したユーベルコード【嵐裂く稲妻(ストレガ・オーバードライブ)】だった。攻撃軽減をする電撃を伴う球状サイキックバリアをその身に纏い、防御する技だ。
「悪いけど、此処で貫かれな!」
 数宮は広い境内を駆け巡る。そして、徐に女たちの元へ突っ込んで行く様に、タックルを喰らわせる。

「え…………、あ、ぁあああああああ!」

 タックルした途端、女たちの身体を稲妻が駆け抜ける。数宮のユーベルコード【嵐裂く稲妻(ストレガ・オーバードライブ)】にはもう一つの役割があった。それはバリアに付与された、雷とマヒ攻撃の効果が関係している。そう───これはつまりその身を防御する技でありながら、攻撃も兼ね備えた技であったのだ。
「こ……こんな事して言い筈が無いわ!
 貴方達には天罰が下るわ!神の審判には逆らえない。貴方も私もね」

「天罰?審判?大いに結構」

 女たちが死体を狂信者に変え、数宮に襲い掛からんとしたその時、数宮の代わりに攻撃を受け止めたのは村井だった。村井は続けてカウンターを喰らわせる。
「それだけ、そっちも『やる気』なんだろう?
 それなら、こっちも『その気』で行ってやるよ」
 紫のオーラを纏った村井は、女たちとの間合いを一気にぐんと詰めると攻撃する。女たちは段々と圧倒され仰け反っていく。
 【目にはメメを(トウゼンノギャクシュウ)】。これを村井は使用していた。UDC(メメ)と融合することで紫のオーラを纏い、敵から受けた敵意、殺意、怒り等の負の感情に比例した、戦闘力及び生命力の増強をするというものだ。
「どう、し、……て、ど……して!!!」
 全身から血をだくだくと流した女が叫ぶ。恨むような声で、憎むような声で。だがそれも逆効果だ。女たちが疎めば疎む程、憎めば憎む程に力が増強されるのだから。

「……話すのモ辛いだろウ、打ち消そうカ」

 猛追を止めることはなく続けて打ち出した攻撃は、ダァトの【二ノ叡智・知恵(セフィラ・コクマ)】。それは周囲の生物の完全致死量を操作する抗体を放ち、狂信者へと変異した人々を相殺する技。ダァトは傷口を抉るように叩き込み、弱点を突けば狂信者たちは物言わぬ屍となってバタバタと倒れていく───。

「嫌よ、こんな……こんな結末認めない!認めないわ!」

 血を吐きながら、女は否定する。
「……止めなよ。あんたその身体じゃ、もう」
 鈴木は少し眉を顰めると、仕方ないと言うように溜め息をついて。近付くと、ある事をする。
「ぁ…………?」
 女はぼうっと鈴木を見つめる。少しすると一変して笑う。
「ああ、そうねもう私たちは終わりだわ……!
 だから、貴方も一緒に……ね?」
 狂ったように笑う。そして自殺するように女が首を絞めようと手を伸ばし、鈴木にもそれを強要する。
「(催眠術は成功したみたいだけど……まさか、こうなるとはね)」
 自殺なんて、そんな事で終わらせない。罪は償って貰わないと、そう思いながら苦肉の策で念動力を使って、草木、破損した建物の欠片、石等を巻き上げる。巻き上げられたそれらは女たちの目を潰し、目眩まし、撹乱に陥れる。

「libra、天秤。秤、平等……。
 全てのモノに等しく与えられるもの……
 まさかこいつら、自分自身が贄になる気か!?」
「だろうネ…。
 でも、ヤケになっテ、彼女達ガこれ以上生贄になってハ本末転倒だからネ」

 数宮は驚きを隠せないまま、ダァトは苦虫を噛み潰したような声でそう言う。

「だが、俺には止める手立てがない……くっ、どうすれば」
「……悪いけど俺もだ」

 黒鵺、村井共に女たちの暴走を止める術がなかった。だったらどうすれば、ぐるぐると思考回路をさ迷う。

『ShDI AL ChI』

 そんな最中、ダァトの声が境内に反響する。
 【九ノ叡智・根幹(セフィラ・イェソド)】───それは女たちの信仰心、光の使い方、目的を忘却させるものだ。
 忘却した女たちは、ぽかんとその場に突っ立っていた。何を信仰していたのかも、何をしていたのかも、目的を忘れ、光の使い方も全て綺麗に忘れてしまったのだ。生贄に捧げようとするエネルギーも奪って、可能性を潰す。

「……さテ、此処で終わろうカ。
 これ以上ハ…………もう十分だろウ」

 彼のその言葉を最期に彼女たちの視界は暗転した。


 此処に五人の猟兵が居た。彼らは自身の誇りや正義の為に動く生き物である。時には命を救い、時には魂を還し、そして時には彼らの居住地を守る為に動く。今日を戦い抜いた彼等は明日もきっとこれからも戦い続ける。
 一仕事終えた境内には静けさが戻り始めていた。心なしか少しだけ、嫌な障気も薄れた気がする。

 全てを元に戻すまであと、もう少し───打ち砕いた敬神崇祖から見えるは、天秤。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『『天秤卿』リブラ』

POW   :    等しくあれ、我々のブラキウム
【自身の体を巨大な天秤】に変形し、自身の【赤く輝く鉱石のような物】を代償に、自身の【攻撃力と平等を求める歪んだ正義感】を強化する。
SPD   :    等しくあれ、我々のズベン・エス・カマリ
対象のユーベルコードを防御すると、それを【対象が無意味な破壊のために使用した様に】、1度だけ借用できる。戦闘終了後解除される。
WIZ   :    等しくあれ、アストレアの名の元に
【召喚した冒涜的な輝きを放つ女神】から【対象が行った戦闘の光景を思い出す光】を放ち、【怨嗟の声等罪悪感を誘発する光景の脳内展開】により対象の動きを一時的に封じる。
👑11
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●平等とは神の下だけで成り立つ
 静閑な境内──しかしそれは平和な時を告げるモノでは無かった。
「あまりにも静か過ぎないか……?」
 猟兵の一人がそう呟くと、君たち猟兵はその異質さに気付く事が出来るだろう。よく五感を研ぎ澄ませば、様々な事が知る事が出来る。風も無ければ、生き物が存在する気配も無い。

『全ての者が等しく美しく生きられる世界を』

 無機質なような、女か男かも分からない声が境内に響く。

『だのに弱者を虐げるとは、ああ嘆かわしい』

 それは天秤卿リブラであった。リブラは君たちの前に忽然と姿を現せば、周囲に隕石を出現させる。その不可解な行動に疑問を覚えつつも、君たちはある感情に襲われるのを感じるだろう。それはリブラと相対した途端の気持ち悪さ、気味の悪さ、であった。

『等しき世界の為に……猟兵、お前たちを罰す』

 リブラはその言葉を最後に君たちに襲い掛かって来る。

 気を付けて欲しい、此は君たちが対峙した事のあるリブラとは訳が違う。リブラ君たちに対し以下の特殊行動を恒常的に取るだろう。

 対象の弱点となる幻影を見せる幻術の使用。

 尚、上記の幻術を消す方法は、リブラの周りに出現した隕石の破壊によって一時的に解除される。
 心して挑んでくれ。君たちの武運を祈る。



●リブラ戦について
 今回のリブラ戦では、リブラの特殊行動が恒常的に発動します。
 【猟兵たちの弱点となる幻影を見せる幻術】
 それは人でも、状況でも構いません。プレイングにはその【弱点】となるモノをプレイングして頂きます。どうかよろしくお願い致します。

 また、幻術から一時的に解除される方法は、リブラの周囲に出現した隕石の破壊となります。

 以上の事をご留意下さりますようお願い致します。
ナハト・ダァト
◆弱点
過去の己
その容姿は人型とは程遠い
脊索動物の様な姿
頭部に触手を多量にはやした黒いナメクジ

…何だネ
こんなモノで惑わそうトしテ…
ム。今ノ映像ハ……
いヤ。私にハ記憶ガ無イ
であるなラ、この光景モきっト

苦悶の間に触れる物が2つ

狂気や苦悩に耐性を得る栞
狂人の智慧

ある少女との約束
いざないの苺香

そして、囁く「啓示」


そうダ
私にハ、これがあル
悩ム必要なド無イ
真偽ヲ問ウ必要モ、無イ
今の私ガ私なのダ

……さテ、ようやク頭ガすっきりしたヨ
これデ容赦なク
君ヲ殴れル

平等ヲ強いる事こソ不平等ダ
世界ハあるがままニ
流れゆくままガ美しイ
強制ヲ強いルなド、無粋極まり無イ

その天秤ごト、二度と量れぬ様ニ破壊しよウ
――厳正ニ、罰ヲ下すヨ



●Through every dark night, there's a bright day
 いつの間にか闇の中に立っていた。真っ暗であるのに何故か触手の様なものが蠢いているのがはっきりと分かる。脊椎動物の様な姿のソレは、頭部に触手を多量に生やした黒い蛞蝓の様にも見えた。
「…何だネ。
 こんなモノで惑わそうトしテ…」
 ナハト・ダァト(聖泥・f01760)は訝しげに呟く。だが、その瞬間頭の中に割り込んで来たのは、ダァトの記憶───その映像を認識した時、ダァトは此処にあるソレが己であると自覚したのである。
「ム。今ノ映像ハ……いヤ。私にハ記憶ガ無イ。
 であるなラ、この光景モきっト」
 そう、ダァトには記憶が無かった。だからこの映像もこの異形のソレもきっと惑わす為のモノだと、そう信じるしかない。しかし、この妙に現実味を帯びたその光景はダァトにとっても、直ぐにそうでないと真っ向から否定できるモノでは無かった。ダァトは視線を少し下に落とし、思考が疑心暗鬼で埋まり悶々としていくのをどうにかしようとまた考える。
「(真偽ガ分からなイ……私ハ)」
 本当は何者なのだろうか───ぐっと握った拳がふと何かに触れた。
「?」
 手が触れたのは、あらゆる狂気への耐性を得る栞【狂人の智慧】と、金の鎖の中心に紅い花が揺らめく、少女との約束【いざないの苺香】。
 そして己に囁く「啓示」がダァトの意思を強固にする。

「そうダ。
 私にハ、これがあル。
 悩ム必要なド無イ。
 真偽ヲ問ウ必要モ、無イ。
 今の私ガ私なのダ」

 過去に囚われていては駄目だ。私は今を生きている“ナハト・ダァト”の人生の物語の創造主なのだから。思考の全てを、瞳に映る光景をクリアにして、ダァトはふうと一息間を置く。
「……さテ、ようやク頭ガすっきりしたヨ。
 これデ容赦なク。
 君ヲ殴れル」

 ダァトの言葉が途切れるのと同時に暗闇が明ける───。夜が明けて朝になる。そんな光が目の前を包み込むと、そこは見覚えのある神社の境内であった。
『隕石を破壊せずして破ったか……猟兵、やはり平等なる世界には不必要だ』
 境内に立つのは、天秤卿リブラ。リブラは不気味な声でダァトに語りかける。
『何時如何なる時にも、人々は平等であって欲しいと願ったことはあるだろう?
 平等こそが───救いだと。そう思わないか?』

「平等ヲ強いる事こソ不平等ダ。
 世界ハあるがままニ。
 流れゆくままガ美しイ。
 強制ヲ強いルなド、無粋極まり無イ」

 ダァトはリブラの声を否定する。盲目的に信じて、平等のためと言って弱者を救い強者を迫害する───それこそが矛盾だと気付きもせずに話すのだ。
 天秤とは名ばかりのそのUDCをダァトは破壊する。

「その天秤ごト、二度と量れぬ様ニ破壊しよウ。
 ───厳正ニ、罰ヲ下すヨ」

 【五ノ叡智・厳正(セフィラ・ゲブラー)】

『ALHIM GBVR』

大成功 🔵​🔵​🔵​

鈴木・志乃
【記憶】
親友が自分を守って死んだ
義母が戦いに出て帰らなかった
今現在大切な人が自己犠牲を払った

お願いだからこれ以上
いなくならないで

UC発動

【第六感失せ物探し】の【祈り】を籠めた鳥でその幻想を【なぎ払う】
失われた希望、愛、感謝、記憶と【手を繋ぎ】
何度でも立ち上がるよ
やりきれない想いは【破魔】を乗せた【歌唱】の【衝撃波】で爆発させる

私の大切な人は皆私を置いていく
自分を平気で犠牲にする

オーラ防御展開

もう限界なんだ
一人ぼっちは

でも

【第六感】で攻撃を【見切り】鎖で【武器受けしカウンター】
破損物は【早業念動力】で巻き上げ咄嗟の盾と敵への攻撃

言葉を記憶のままに呟く
『きみを置いてはいかないから』



●Answer
 これは、いつ頃の記憶だっただろうか鮮明に覚えている筈だのに、ぼんやりとした映像が目の前を過る。
 いつもの日常。いつもの毎日。
 そんなありふれた光景が彼女の瞳にどう映っていたのかは定かではない。だが、その至極平凡な毎日がどれほど幸せか、彼女はその味を知っていた。
「(………)」
 目を瞑りながら鈴木・志乃(ライトニング・f12101)は、背筋を伝う冷たい汗を抑えようと、心を落ち着かせる。
「(なんで……こんな)」
 鈴木がそんな事をぽつりと心の奥で独りごちたその瞬間、さっきまでぼんやりと映写されていた映像が、はっきりと鮮明な色を映して鈴木を飲み込んでいく。
「!」
 その映像は鈴木にとって辛い記憶の光景。幸せな事ばかりぼやけて映し、辛い事だけをはっきりと映し出す、不良品の瞳(レンズ)をこの時だけは、少し恨んだ。

『───!』

 嘗て親友だったあの人が何かを叫ぶ。それは自分の名を呼んだのかもしれない、もしくは危ないと叫んだのかもしれない。何を言っていたのか今はもう思い出せない。
 死人に口無し。
 親友は私を庇って───死んだ。

『行ってきます』

 最後に見たのは笑顔だった。怖いくせに気丈に振る舞って、笑って私と別れた。
 これが私と義母のさいごだった。
 死んだのかすら分からない。確かめる術も、無い。
 あの日の笑顔を境に彼女は消えた。

『あなたを守る為なら───』

 この位些細なモノだ、とそんな事を彼は言った。私の周りに居る大切な人は、いつもその身を擲ってでも守ってくれる。自己犠牲を払うのを見ているのは嫌だ。隣に、側に居てくれるだけで充分なのに。
 あの時彼は私の為に自己犠牲を払った。

(お願いだからこれ以上、いなくならないで)

 少女のか細い声が、虚空に吸い込まれて消える。
 ピィィと遠くで甲高い鳴き声が聞こえたのを合図に、光る鳥が映し出していた映像を侵食する。
 瞬く間に、その空間は見覚えのある光景に様変わりしていた。光る鳥が映し出していた幻想を切り裂いたのだ。これこそ彼女の使用したユーベルコード【旅立ち(テイクオフ)】が引き起こした結果なのだ。

 喪失した希望、愛、感謝、記憶を離さぬように自分の掌で包み込む。
(何度でも立ち上がるよ)
 決して屈したりしない。そう心に決めて歌を紡ぐ。歌に言葉を乗せて自身の中にあるやりきれない想いを、ぶつける。

(私の大切な人は皆私を置いていく。
 自分を平気で犠牲にする)

 鈴木を包み込む淡い光は、自身を守る防御壁となる。

(もう限界なんだ。一人ぼっちは。

 でも)

 天秤卿リブラは、鈴木を攻撃する。しかしその攻撃は命中することなく、受け流される。淡い光を放つその鎖はリブラの攻撃を防ぎ、跳ね返す。

『きみを置いてはいかないから』

 私は大切な人たちを守るために、誰一人としてひとりにしない。
 させない。

大成功 🔵​🔵​🔵​

数宮・多喜
【アドリブ改変・連携大歓迎】

……おい。
なんで、お前がいるんだ。
アンタは、アタシが、確かに、あの時……
準!なんで今、また、アタシの前にいるんだよ!
そんなに、そんなに還りたかったのか!?
あの街に!あの、騒がしいけど退屈で、それでも平和だったあの時に!
あの言葉は、アタシに言ってくれた「ありがとう」は嘘だったのかよ……!
ああもう、訳が分からねぇ……!

思い切り錯乱して、UCを展開しながら周囲を無軌道に走り回る。
敵味方無差別に被害を与えるかもしれない。
……なるべく味方に当たって欲しくはないけど。
その途中で偶然隕石を破壊して正気に戻るかもしれないね。
そしたら特攻。
アタシの『覚悟』を冒涜した報いを受けさせる!



●Blasphemy?
「……おい。
 なんで、お前がいるんだ」
 驚いた様子を隠せないまま数宮・多喜(撃走サイキックライダー・f03004)は口を開く。
「アンタは、アタシが、確かに、あの時……」
 視線の先には、一人の男が立っていた。それは数宮のよく知る人物であり───この世に居る筈のない人間だった。
「準!なんで今、また、アタシの前にいるんだよ!」
 これが幻想であるという事も忘れ、数宮は男に叫ぶ。

「そんなに、そんなに還りたかったのか!?
 あの街に!あの、騒がしいけど退屈で、それでも平和だったあの時に!
 あの言葉は、アタシに言ってくれた「ありがとう」は嘘だったのかよ……!」

 視界がぼやけていく。瞳から熱い何かがぽたりと落ちる。彼が今此処に存在しているという事は、これまで積み重ねて来た時間が、誓った覚悟が、全て無かった事にされている状況に他ならなかった。

「ああもう、訳が分からねぇ……!」

 どうして、という困惑と覚悟を踏みにじられた憤りと悲しみが自身を更に困惑させる。

【嵐裂く稲妻(ストレガ・オーバードライブ)】

 錯乱した感情をどうにかしたくて、数宮は周囲を無軌道に走り回っていく。電撃が周囲を破壊してゆく。この幻想を、偽りの光景を。完膚なきまでに。
 バンッ────。
 重い音が聞こえた。雷は何かを貫き破壊した。そして……徐々に数宮を惑わしていた幻想が崩壊していく。

「アタシの『覚悟』を冒涜した報いを受けさせる!」

 天秤卿リブラだけは許さない。
 此が神への冒涜だとしても、こんな奴の考える平等なぞ受け入れる訳がない。

 数宮は『覚悟』を胸に、リブラに断罪を下す。

大成功 🔵​🔵​🔵​

黒鵺・瑞樹
アドリブ・共闘可

はっ、等しくだと?
どうせそれだってお前の押し付けたもんだろうが。
少なくともここに座す神々は平等だ。
山の田の海の豊穣を人々が願い、祖霊を祭る。
自然の厳しさと恵を象徴する場所の一つ。
それは等しく人々に与えられているんだ。

幻影に一瞬気がとられるかもしれないが【第六感】で否定。
自覚はないが真の姿解放。
その一端で目の色が金色に変わり、原因となる隕石は破壊。
【目立たない】ように移動しリブラに対して、胡で【暗殺】のシーブズ・ギャンビットを仕掛ける。
相手の攻撃は【第六感】で【見切り】回避する。

弱点
心を揺らがせるものなら、想いを寄せるあの子の姿。
今は告げる事はないけれど、いつかと願っている相手。



●Falling down
「はっ、等しくだと?
 どうせそれだってお前の押し付けたもんだろうが」
 反吐が出ると、黒鵺・瑞樹(辰星月影写す・f17491)は天秤卿リブラに言い放つ。彼がそうなるのもまた然りだった。縁の深いこの神聖な神社は黒鵺にとって大切な場所だ。リブラから視線を外さないまま黒鵺は続ける。

「少なくともここに座す神々は平等だ。
 山の田の海の豊穣を人々が願い、祖霊を祭る。
 自然の厳しさと恵を象徴する場所の一つ。
 それは等しく人々に与えられているんだ」

 リブラの言う平等はあまりにも『平等』とかけ離れていて、寧ろ差別的な『平等』だと、そう感じた。力関係を平等にするために強者を屠り、弱者の味方になる。
 黒鵺が耐えきれずリブラに仕掛けようとしたその時。目の前に颯爽と現れたのは自分の大切な人だった。

 想いを寄せるあの子の姿。
 今は告げる事はないけれど、いつかと願っている。

「(いいや、違う。これは………)」
 頭を振る。これが猟兵たちを惑わしている幻想だと分かっていても、やはり現実味を帯び過ぎて信じてしまいそうだ。

 そんな事を考えている内に、黒鵺の瞳は金色に変わる。
 それは彼の真なる力を解放する為のもの。

【シーブズ・ギャンビット】

 暗殺の要領で、気配を消しリブラの体を打刀である胡で切り裂く。

 そして落ちる。

「ここに座す神々は、お前とは格が違う。
 お前が居るべきは此処じゃない。敢えて言うなら───奈落だろ」

大成功 🔵​🔵​🔵​

村井・樹
【弱点】
『少年』の姿をした『僕』が語りかけてくる姿
「痛いことしないで」「喧嘩はやめようよ」「僕はそんなの嫌だよ」

……この、ムカつくもんを見せやがって!
元々逃がす気なんざねぇが、お前をぶっ倒す理由がもう一つ出来たな

……『紳士』、お前に言われるまでもなく分かってるよ
アイツをぶん殴るのもそうだが、このままこっちの足並みを乱されるわけにもいかねぇ、だろ?
『失敗作』を散り散りに召喚し、隕石の破壊に向かわせる

幻覚が緩和された後に俺も動く

『盾受け』の構えで接近した後、盾や俺の影に隠して偽メメを操作
俺自身は『フェイント、誘惑』し敵の注意をこちらに引き付ける

その間に、偽メメで『騙し討ち』だ



●No missing……
「痛いことしないで」

 目の前にいる幼い子供の口から出た言葉はそれだった。少年は少し困ったように眉を下げながら、また言葉を吐く。

「喧嘩はやめようよ」

 その少年───『俺』は『僕』とは違う人格の一つ。この小さな少年は『僕』だろう。

「僕はそんなの嫌だよ」

 並べ立てられた言葉に『俺』、つまり村井・樹(Iのために・f07125)は苛立ちを覚えていた。これは、あの天秤卿リブラによって見せられた幻覚だという事も理解している。
「……この、ムカつくもんを見せやがって!
 元々逃がす気なんざねぇが、お前をぶっ倒す理由がもう一つ出来たな」
 鼻息を荒立てる事もせずに、静かな怒りを露にして言う。村井は目を細めて、『僕』に分かるように心の中で独りごちた。

(……『紳士』、お前に言われるまでもなく分かってるよ)

 今、目の前には幼少期の自分しか居ない。それはリブラがわざとやった事なのだろうが、それでも此れを見せるなんて悪趣味にも程がある。
(アイツをぶん殴るのもそうだが、このままこっちの足並みを乱されるわけにもいかねぇ、だろ?)
 だから───倒す為に先ずは現実に戻らないとな、とそう決めてからの行動は早かった。
 周囲の地面からすうっとすり抜ける様に出てきた影は、ある場所を目指し走る。その影は、少年のような背格好のものから大人まで大小様々。影たちは映し出す幻想を破壊する。

【失敗作(ハートレスエゴ)】

 村井は影を『失敗作』と呼んだ。彼らは『少年』にも『紳士』にも『不良』にもなれなかった。内包した様々な人格の……いいや。人となり、の残滓の様なものなのかも知れない。
 周囲から何かを砕く音が聞こえる。それは岩のようなものではないかと安易に想像出来るだろう。その音が聞こえ始めると僅かに別の音が混じってくる。
「(薄れてきたか………)」
 少しして目の前に居た過去の少年は消え失せ、この閉塞的な空間から解放される。ここは、神が座する聖なる地。
 村井は、リブラに標準を定めると真っ向から向かっていく。
『狂気に陥り血迷ったか』
 正面切って向かって来た村井にリブラは嗤う。随分とまあ余裕綽々といった態度だ───だがまあ、そっちの方が都合がいい。懐からスッとハンドガンを取り出すと、弾丸を撃ち込む。
『当たらない』
 弾丸は真っ直ぐ直線に軌道を描いて、リブラの足元に被弾する。当たらないんじゃない、当てないんだ。

『どうせも───ぁ、が、ぁぁぁああああああああ!』

 正直、幻想を見せられた時、どう打破すべきか迷った。その位動揺してしまったのだ。けれど相手が油断して、本質を相手を見誤っているのならば、勝算は格段に上がる。村井は偽メメをこっそりと影に潜ませ仕込んでいた。それをリブラは見落としていたのだ。

「この位で見逃すと思うなよ」

 誰かが言った、その言葉を最期に意識が途絶えた。



 不完全な邪神を猟兵たちの行動によって倒し、邪神復活の儀式を完全に食い止める事が出来た。それでも失われた犠牲は多かった。残された人々は敢えなく散ってしまった人を弔い、猟兵たちはその場を去る。

 これからもずっと時は回っていく。
 毎日の日常の中で、また多くの人を看取る事になるかもしれない。だが猟兵たちはそれ以上に多くの人を救い、この先を守っていくのだろう。
 そう、ゆっくりと。

 Without haste, but without rest.

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年06月24日


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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠アルム・サフィレットです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


挿絵イラスト