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笑え、嗤え、舞台の上で

#ヒーローズアース



 わらえばいい。笑えばいい。嗤えばいい。
 そうすれば、きっとしあわせになれるのだ。
 だから誰もが笑えるような、ド派手な舞台をしよう。
 鬣を燃やしたライオン。カワイイあの子を吊るしたブランコ。投げたナイフはお客サマの身体で受け止めて。歓声、悲鳴が舞台に響く。
 ドキドキするだろう、心躍るだろう、こんなサーカスはじめてだろう?
 なのにどうして、笑わないんだい? 嗚呼、泣くなんておかしいよ。
 こんなに、こんなに、こんなにも。楽しいヤツらを集めたんだ。
 だから、笑わないヤツがおかしいのさ!


「狂気のサーカスへようこそ!」
 メール・ラメール(砂糖と香辛料・f05874)がぱっと片手を上げて、にまにま笑う。
「………と、まあそんなサーカスがくるのよ。ヒーローズアースに」
 それは、ヴィランが率いるサーカス団。しかも、裏で手を引いているのはオブリビオンだ。もちろん、観客はそのことを知らない。
 サーカスとは名ばかりで、行われるのは観客を巻き込んでの一方的な虐殺だ。
 このままでは、何も知らない観客が犠牲になるのだと、メールは言った。
「そうそう! このサーカスを学生新聞の記事にしようとしている少年も見えたの」
 好奇心旺盛な彼は、サーカスが始まる前に舞台裏に忍び込み、誰もが驚くような記事を書きあげようとしているらしい。
 けれど。ヴィランとオブリビオンが関わっているサーカスだ。
 そんなところに忍び込むなんてことをすれば、悲惨な未来が待っていることは想像に容易い。
「だから、まずは彼と協力してサーカスの舞台に潜り込んで、なかからメチャクチャにしちゃいましょう」
 ヴィランが悪さ出来ないようにね、とメールがきゃらきゃら笑う。
 サーカスがメチャクチャにされれば、黒幕であるオブリビオンも出てこざるをえないだろう。
「あ! サーカスのヴィランは悪人だけどオブリビオンじゃないから、殺しちゃダメよ」
 殺したくなる気持ちは分かるけどね、と言いながら。メールは猟兵たちを送り出したのだった。


あまのいろは
 あまのいろはです。サーカスはいいぞ。

 今回はヒーローズアースでの事件です。ヴィランが率いるサーカス団が現れました。
 このままでは何も知らない観客が被害にあってしまいます。
 猟兵の皆様の力で、ヴィランとオブリビオンの、どちらの悪巧みも壊してしまってください。
 また、現場では一般人の少年『ジョイ』が忍び込もうとしています。
 彼と協力してサーカスに忍び込み、起こる悲劇を未然に防ぎましょう。
 1章プレイングは彼と接触後、サーカスの舞台へ潜り込んだ後のもので構いません。


 執筆タイミングなど、マスターページで告知していることがあります。
 プレイング送信前に一度目を通して頂くと良いかもしれません。

 情報は以上です。皆様のすてきなプレイング、お待ちしております。
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第1章 冒険 『狂気のサーカス団』

POW   :    これが俺の曲芸だ!サーカスの一員に成りすまし注目を集め結果的に犠牲を食い止める

SPD   :    サーカスの楽屋に忍び込み情報を集めたり、曲芸に使われる動物を逃がし現場を混乱させる

WIZ   :    サーカスの仕掛けに細工を施し、いざという時に観客を逃げやすくしたりヴィランの邪魔をする

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イリスロッテ・クラインヘルト
楽しもうという精神は良いと思うのです。
でも例えば、ナイフを投げられた人は痛くて楽しくなんかないのです。
それはイリスも楽しくないのです。
だからこんな楽しくないの、止めちゃうのですよ!

えっと…お客さんが混乱しないように
サーカスの邪魔をすればよいなのです?
ではイリスは、飛びましょう!

◆POW:飛んで魅せまshow!
ユーベルコード【希望の虹翼】で飛行乱入なのですよ!
衣装?楽屋から拝借しました!

「さあさみなさま!イリスの空中ダンスをご覧あれ!なのです!」

そのまま聖者の力で虹色の光を振りまきながら
くるくる可愛く踊るのです!
求められれば光の流れで絵なんか描いちゃう!

あ、光るだけなので癒し効果はないのです


クリナム・ウィスラー
アドリブ連携歓迎
青花(f17570)と一緒に

狂気のサーカス、なかなか心躍る言葉ね
でも猟兵である以上虐殺は見逃せない
しっかり阻止して行きましょう

目立つ行動は青花に任せて、私はジョイと動こうかしら
彼を守りつつ観客も守るように動き回るわ
サーカスなら普通の道具や設備、つまり無機物はたくさんあるはず
だから必要に応じて【クライシスゾーン】でそれを竜巻へと変えていくわ
時に観客を守る盾、時にヴィランへの剣として扱うつもり
物を壊すのは大好きなの
オブリビオンの目論見ごと滅茶苦茶にしてやるわ

私は客席をメインに動く予定よ
舞台がきっとよく見えるからそこから青花のサポートも出来るかしら
上手く【情報収集】して連携したいわね


天泉・青花
アドリブ連携歓迎
クリナム(f16893)と一緒に

最初は仲間とジョイと一緒に潜入するぜ
ヴィランが悪事を働こうとしたり、良いタイミングが来たら俺は舞台に乱入しよう
その時は適当に名乗ったりアピールして目立とうか
そんで小道具とか危なそうな物を【陸穿ち】で壊したりしようかな
使うのは右腕に装備した義肢だ、カッコいいだろ?

これが何の芸だって?
ほら、ジャパニーズ・カワラワリみたいな?
と言いつつ俺も詳しくないんだが
壊しても大丈夫そうで壊すと目立ちそうなものがあればそれもどんどん穿っていくぞ
硬い物も【鎧砕き】でどんどん壊そう

客席のクリナムも適宜確認して連携するぜ
危ない時は【武器受け】や【咄嗟の一撃】で防御しようか


マーロン・サンダーバード
SPD

スプラッタ・ショーならきちんと年齢制限を設けてだな…そもそもモノホン使ったグロは怒られるぞ?
よーし忍び込んで中から荒らしまくっちゃうぞ!

そういうわけだ、行くぜ太陽おじさん!
「太陽!」

動物はかたっぱしから逃がしちまおう
檻の錠前なんざナイフ一本ありゃ十分、こちとら「破壊工作」のプロだぜ
この投げナイフちゃんと人に刺さるやつじゃないか、危ないなあ全部もらっとこう

太陽おじさんはジョイくんの面倒を見てやってくれ
ジョイ君、彼は太陽!以外通じないからな

中をちょいと荒らしたら団員の反応を見ようか
ヤツらの邪悪さを少年には聞いてもらって、わかったならさっさと逃げよう
場合によっては俺と太陽おじさんが囮になるから




 手にはチュロスにポップコーン。ピエロと戯れる子供たち。
 観客たちは、誰も彼もが楽しそうで。彼らは、何も知らない。ここで非道な出来事が行われるということを。
 客席がゆっくりと暗くなって、開始を告げるブザーが鳴る。観客たちが慌てて席に戻ったころ、舞台にぱっと光が落ちた。―――狂気のサーカスの、幕が上がる。

「狂気のサーカス、なかなか心躍る言葉ね」
 ポップコーンを抱えて客席に座るクリナム・ウィスラー(さかなの魔女・f16893)がぽつりと呟く。
「そうだなー。でも何も知らないヤツらを巻き込むのはどうかと思うんだぜ」
 天泉・青花(シンプル・ハート・f17570)はそう答えながら、手を伸ばして青花のポップコーンを一掴み。
 ふたりの間に座る一般人の少年ジョイは、ふたりを交互に見て視線を漂わせていた。
「猟兵である以上虐殺は見逃せない。しっかり阻止して行きましょう」
 その言葉に、ジョイはクリナムの顔を覗き込んで。困惑の色を更に濃くして問うた。
「……本当にここで虐殺なんて起きるんですか……?」
 何も知らない彼らにとっては、ただのサーカス。何かが起きるまで、信じることは難しいだろう。けれど、何かが起きてからでは遅いのだ。
「残念ながら。でも、大丈夫よ。そんなことはさせない」
「そうそう、俺たちがバシっと解決するからな」
 クリナムは、変わらず舞台を見詰めている。青花はジョイの背を軽く叩くと、笑ってポップコーンを口のなかへと放り込んだ。

 こそり。そろり。
 イリスロッテ・クラインヘルト(虹の聖女・f06216)はサーカス団員たちに見つからないよう舞台裏を移動する。
 楽しもうという精神は良いと思うのだ。誰かが笑ってくれるのも素敵なことだ。
 でも、ナイフを投げられて、それを身に受けたひとはどうだろう。楽しいなんて、絶対に言えない。誰だって痛いのは嫌だ。
 それに、そんなものを見てもイリスロッテは楽しくない。他のひとも、きっとそうだろう。
「だからこんな楽しくないの、止めちゃうのですよ!」
 ちいさな声で宣言。ぐっと拳を握れば、腕に抱えたうさぎのぬいぐるみ、ロッテちゃんの垂れ耳がゆらゆら揺れた。
「えっと……。お客さんが混乱しないように、サーカスの邪魔をすればよいなのです?」
 とはいえ、団員たちがどのタイミングで悪事を働くか分からない。むむむむむ。考えても分からないなら、団員の視線も奪ってしまえばいい。
 団員でない自分が目立った行動をすれば、団員たちも放置は出来ないだろう。
「では、イリスは、飛びましょう!」
 ただ乱入するだけじゃ、きっと印象が弱いだろう。何かを思い付いたイリスロッテは、そろりと楽屋へと忍び込む。

 舞台裏。マーロン・サンダーバード(『サンダーバード』・f18492)は猛獣の入った檻の前に立っていた。
「スプラッタ・ショーならきちんと年齢制限を設けてだな……」
 檻のなかの猛獣たちは、マーロンの姿を見て吼えた。どう見てもひとに慣れているようには見えない。きっと、舞台の上で観客を喰らうのだろう。
「そもそもモノホン使ったグロは怒られるぞ?」
 マーロンは、中から荒らしまくっちゃうぞ!と茶目っ気たっぷりに拳を握る。
「そういうわけだ、行くぜ太陽おじさん! 太陽!」
 マーロンのユーベルコードによって現れた太陽おじさんがマーロンの言葉に反応して頷く。
 正しくは、彼が反応したのは『太陽』というワードのみ。太陽という言葉で通じ合えてはいるものの、彼が誰なのかはマーロンにも分からない。
 マーロンは近くにあったナイフを手に取ると、檻についている錠を何やら弄り―――。暫くすると、錠が外れて落ちる。
「檻の錠前なんざナイフ一本ありゃ十分、こちとら「破壊工作」のプロだぜ」
 マーロンは上機嫌にナイフをくるりと回す。そのナイフがハリボテでないことに気付くと、懐に仕舞い込んだ。
「この投げナイフちゃんと人に刺さるやつじゃないか、危ないなあ全部もらっとこう」
 マーロンがナイフを回収していた背後で、檻がギィと開く音がして。おっと、とマーロンはその場を後にした。


 舞台の上に、青花が立っている。
 ヴィランである団員たちは一瞬驚きはしたものの、犠牲になることが変わらないのなら、構わないと思ったのだろう。青花を舞台の上に招き入れた。
 けれど。青花は彼らのそんな悪巧みを知っている猟兵なのだ。ヴィランたちの目論見は、もちろん壊されることとなる。
 青花は舞台にあったマジックの道具らしきものに目を付けた。切断マジックに使うものだろう。でも、きっとそれも誰かを犠牲にする悪趣味な道具のひとつ。
 青花はつかつかとそれに歩み寄ると、――――勢いよく叩き割った。破片が舞台へ飛ぶ。
「何の芸だって? ほら、ジャパニーズ・カワラワリみたいな?」
 義肢を見せつけながら、青花が笑う。止めようとヴィランが駆けつけようとするが、彼らの動きを風が阻害した。
 観客席のクリナムが、ユーベルコード、クライシスゾーンで竜巻を起こし、ヴィランの足を止めたのだ。
 観客は、破壊も竜巻も演出のひとつだと思って盛り上がっている。
「物を壊すのは大好きなの」
 嵐と破壊の神だからだろうか。竜巻を起こすクリナムはどこか楽しそうに呟く。
 無機物を次々に竜巻に変えヴィランの動きを制しながら、観客に被害が及ばないようにクリナムは目を光らせていた。
「オブリビオンの目論見ごと滅茶苦茶にしてやるわ」
 もう滅茶苦茶かしらね、と言うクリナムの横顔を、控えめに見詰めるジョイの肩をとんとんと何かがつっつく。
 マーロンだった。マーロンは、舞台裏から拝借した投げナイフをジョイに見せながら言う。
「ジョイくんかな。ヤツらの邪悪さは分かったかな。アレもソレも、人を傷つける道具だぞ」
 舞台の上で壊されていく道具を指差しながら、分かったらここから逃げよう、とジョイに告げた。 
「ここはほら、危ないし」
 舞台の上で破壊を続ける青花と、隣で竜巻を起こしているクリナムをちらりと見ると、ジョイはこくんと頷いた。ふたりの強さを見て、自分に出来ることはないと思ったのだろう。
「いい子だ! よし、太陽おじさんはジョイくんの面倒を見てやってくれ。ジョイ君、彼は太陽!以外通じないからな」
「えっ」
「恥ずかしがらずに! ほら! 太陽!!」
「……た、太陽?」
 躊躇いつつの言葉でも、ふたりの間では何かが通じたようで。太陽おじさんがジョイと出入り口へと向かっていく。

 舞台の上では猟兵が、舞台裏ではマーロンが逃した猛獣が暴れている。
 ヴィランたちは予想外の出来事が起こっていることを知りつつも、対処が出来ない。舞台は、猟兵たちの独壇場だった。
 あとは、どうやって観客たちを無事に逃がすか、だ。観客はまだ、演目の途中だと思っている。劇場から無理に追い出すことは出来ない。
「ではイリスは、飛びましょう! 飛んで、お客さまを誘導しちゃうのです!」
 ユーベルコード、希望の虹翼で虹色の翼を得たイリスロッテは舞台上空から舞い降りる。観客たちが、イリスロッテに目を奪われる。
「さあさみなさま! イリスの空中ダンスをご覧あれ!なのです!」
 イリスロッテの衣装は楽屋から拝借したもの。虹色の翼と相まって、その美しい姿はサーカス団員そのもの。
 それに、衣装を拝借したイリスロッテは、意図せずしてファインプレーを決めていた。衣装を失った団員たちは、舞台に出ることすら叶わない。
「さあ、こちらへ! イリスと一緒に遊びましょう!」
 虹色の光を振りまきながら、イリスロッテが劇場を舞う。光るだけで癒す効果はないけれど。イリスロッテを見詰める観客たちの顔は、癒されていそうだった。
 くるくると舞うイリスロッテは光で空中に絵を描き、観客たちとふれあいながら、観客たちを出口へと誘導していく。

 観客たちは、狂気のサーカスを後にすることが出来るだろう。これで、観客たちに被害が出ることはない。すべて、猟兵たちのおかげだ。
 けれど。ヴィランに力添えしていたオブリビオンの姿はまだ現れていなかった。それを倒すまでは、解決したとは言えない。
 猟兵たちは、劇場でオブリビオンが現れるのを待つ。舞台のカーテンが、不穏にゆらり、と揺れた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『氷雪女王』

POW   :    見誤ったな、愚か者が!
【ダガーくらいの大きさの氷柱 】による超高速かつ大威力の一撃を放つ。ただし、自身から30cm以内の対象にしか使えない。
SPD   :    避けてみるがいい!
【杖を掲げる 】事で【大型のシロクマ】に変身し、スピードと反応速度が爆発的に増大する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    受け取るがいい、妾が祝福を!
自身の装備武器を無数の【氷の花片 】の花びらに変え、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
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 観客のきえた舞台の上で。コツリコツリとおとがする。それは、オブリビオン『氷雪女王』の足音だった。
「………なんてこと」
 氷で出来たヒールを鳴らして舞台の上に現れた彼女は、客席を一瞥すると不快感を隠さずに顔に表した。
「妾の舞台を邪魔するとは、いい度胸だの」
 つめたいつめたい声で。氷雪女王は誰に向けるでもなく、ぽつりとそんな言葉を溢す。
「覚悟は出来ておろうな?」
 舞台に残る猟兵たちをきろりと睨み付ければ、ひゅう、と冷たい風が吹く。―――氷雪女王が杖を掲げる。それが、戦いのはじまる合図だった。
クリナム・ウィスラー
アドリブ連携歓迎

引き続き青花(f17570)と共に

あら、サーカス団員にしては動きにくそうな服装ね
貴方達が黒幕?
それとも本命がいるのかしら
どちらにせよ倒していく事に変わりはないのだけれど

相手の氷の花吹雪はこちらも【クライシスゾーン】で相殺出来ないか試してみるわ
もし彼女に接近したい猟兵がいるならその手助けになれると良いのだけれど
道を切り開くなら任せておいて
その分全力で相手を叩いてきて頂戴

変身したり氷柱を作ったりといった行動を阻害するように立ち回るわね
今回もサポート寄り、後衛寄りで動き回るわ
前に突き進むのは青花に任せるつもり

目には目を、嵐には嵐を
私だって海の魔女よ、氷の女王には負けないわ


天泉・青花
アドリブ連携歓迎

引き続きクリナム(f16893)と一緒に

お、なんか美人が出てきたな
でもオブリビオンだろ?
それなら遠慮なく戦わせてもらうぜ

戦闘が始まったら【ダッシュ】で出来るだけ相手に接近
相手が射程距離まで入ったら右腕の戦闘用義肢『穿ち釘』で【ヴァリアブル・ウェポン】だ!
優先するのは命中率、確実に攻撃を当てて相手の数を減らしたいな

細かい氷はクリナムに任せるが、大きめの氷柱による攻撃は避けきれないかもな
その時は【武器受け】で義肢で受けられないか試してみるぜ
どうしようもない時は【咄嗟の一撃】でカウンターだ

戦闘中はとにかく突き進んで動き回るつもりだ
後ろはクリナムに任せるぜ




「お、なんか美人が出てきたな」
「あら、サーカス団員にしては動きにくそうな服装ね」
 いつもと変わらぬ声で、青花が言う。横に並ぶクリナムも、彼のそんな軽口に乗るように言葉を返す。
「でもオブリビオンだろ? それなら遠慮なく戦わせてもらうぜ」
「そうね。どちらにせよ倒していく事に変わりはないのだけれど」
 氷雪女王の視線がゆったりとふたりに向けられる。ふたりを見る視線は変わらず冷たい。
 ふたりに対する言葉の代わりにカツンと杖で床を叩けば、杖が砕けるようにして氷の花弁へと形を変えた。
「無礼者どもめ。受け取るがいい」
 いくつものいくつもの氷の花弁が氷雪女王の周りを覆う。氷がステージライトを受けてきらきらと輝くその様は、ただのパフォーマンスならばとてもうつくしいことだろう。
 けれど、違うのだ。彼女はオブリビオンで。その花弁ひとつひとつに悪意が込められている。
「……妾が祝福を受けて眠れ!!」
 きらきらと輝く氷の花弁が一斉に猟兵たちへと向かって飛んでいく。
 けれど、クリナムは顔色ひとつ変えず、避けようともせず、客席に立っていた。氷の欠片が彼女へと迫って―――。
 だが、氷の花弁は彼女には届かない。クリナムの目の前で氷の花弁は粉々に砕け、砂のようになって彼女の足元へ落ちていく。
 クリナムのユーベルコード、クライシスゾーンによって引き起こされた竜巻が、花弁を巻き込みすべて砕いたのだ。
「私だって海の魔女よ、氷の女王には負けないわ」
 目には目を。嵐には嵐を。クリナムの竜巻は氷の花嵐にも一切引けを取らない。
 氷の花弁を巻き込み、砕き、猟兵たちの動きをサポートする。青花は、竜巻の間をすり抜けるようにして、氷雪女王の前に躍り出る。
 氷の花嵐に巻き込まれ血を流しながらも、青花はそれを気にしなかった。
 流れ出る真っ赤なそれは、確かに青花のものなのに。彼は思い込んでいる。自分は機械だから。頬を伝うこの生暖かい液体は、自分のものではないのだと。
 傷を受けても真っ直ぐに突き進んでくるなんて、そんな無茶をするとは思っていなかったのだろう。
 氷雪女王が青花を視界に捕らえた時にはもう遅い。青花は氷雪女王に対して右腕を振り被っていた。義手がステージライトの光を受けて、ぎらりと光る。
「さーてと! お返しだ!」
 ユーベルコード、ヴァリアブル・ウェポンで命中率をあげた青花の一撃。避けることは叶わない。直撃を受けた氷雪女王の身体が砕けて―――。
 ―――数を増やした。飛び散った欠片が氷の花弁と混ざり、溶けあい、形を成したのだ。
 一回りちいさくなった、ふたりの氷雪女王は忌々しげにふたりを睨みつける。だが、クリナムも青花も動じることはない。
「厄介ね」
「おう。でもなんとかなるだろ!」
「……そうね、倒れるまで倒せばいいだけだわ」
 クリナムによって巻き起こされる竜巻のなか、青花がまた氷雪女王へ向かって駆けていく。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

マーロン・サンダーバード
こいつはまたクールそうなレディがやってきたな
だがちょっとクールすぎる。俺の黄金銃でホットにしてやらなきゃな
…下ネタじゃないよ?

おっかないのは杖と見た
愛銃ライジングサンで杖や手を狙い撃ちして【武器落とし】を狙いつつ
距離は一定に保つ、杖の外、そして銃の間合いだ
ジャンプやスライディングを駆使してな
ここはサーカスの舞台だ、縦横無尽に動けるはずだ

そして隙が出来ようものなら【クイックドロウ】で黄金銃を抜き
「紅炎の黄金銃」をブチかます!こいつは熱いぜ
ライオンの火の輪くぐりにゃ使えねえくらいにはな!
氷の花片は消火にでも使ってな!




「こいつはまたクールそうなレディがやってきたな」
 マーロンは指で拳銃の形を作ると、からかうように氷雪女王に向けて打つ素振りを見せた。
 けれど、氷雪女王はマーロンを一瞥すると、すぐにふいっと視線を逸らす。マーロンはやれやれと肩を竦めて。
「だが、ちょっとクールすぎる。俺の黄金銃でホットにしてやらなきゃな」
 氷雪女王は視線を戻すと、刺すような冷たい視線をマーロンへ向けた。嫌悪感すら見てとれるその視線を受けて、マーロンはあっと口元を押さえる。
「……下ネタじゃないよ?」
 下ネタじゃないよ。第六猟兵は全年齢対象の健全な猟兵活動を推奨しております。
 けれど、マーロンの弁明は逆に氷雪女王の逆鱗に触れる結果となったようで。刺すような冷たい視線をより冷たくして、氷雪女王はマーロンを見ずにガツンと舞台に杖を叩き付ける。
「もうよい。黙れ、痴れ者」
 氷の花弁が嵐となって、マーロンへ襲い掛かる。けれど、マーロンは氷雪女王とは一定の距離を保ち、付かず離れず、氷雪女王が武器を持つ手を狙い打つ。
 何度めかの銃撃の結果、マーロンが放った弾丸は、見事氷雪女王の手に命中。武器をその手から弾いた。
 杖を失った氷雪女王へ、マーロンが一気に距離を詰める。だが、やられたままでは終わらない。巨大な氷柱が彼女の上空に現れた。
「―――見誤ったな、愚か者が!」
 鋭い氷柱の先端が、マーロンを突き刺そうと彼に向かって落ちる。けれど、マーロンは足を止めなかった。
「なあに、狙い通りだ。こいつは熱いぜ、ライオンの火の輪くぐりにゃ使えねえくらいにはな!」
 銃口が、氷雪女王の額にぴたりとくっついた。顔は見えないが、マスクの下でマーロンが笑った気がした。
「これが太陽の熱さだぜ! GOLDEN GUN!!」
 引き金に力を込める。ガチンと音がして、放たれた銃弾には灼熱の炎を纏っていた。氷雪女王の身体が太陽の炎に包まれ、溶けて形を失っていく。
「氷の花片は消火にでも使ってな!」
 太陽の炎の前では、氷雪女王の悲鳴すら聞こえなかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アリア・ミッチェル
これが噂に聞くオブリビオンかい。あまりあたし達と変わらないもんだね。
あぁ...っと....、これはあたしの力は必要かい....?

一応現状を把握して仲間の手助けをするよ。
久しぶりに暴れたいもんだねぇ。

【行動WIZ】
とりあえずコイツをぶっぱなしてみるか...。
今回自前の武器『fuga-BWV891』を肩に担いで構える。狙いが定まったら【電光弾銃砲殺生術式・追撃の旋律】を発動。

遠距離の援護は任せなってね!......え?違う...?何が。

アドリブOK


ルージュ・フェリスティ
外からも聞こえてきたぜ、暴れ回ってる音がなぁ...。

観客がおおかた出てきたのを確認してテントの中を覗き込む。

うひー。やってるやってる、闘いってのはなんでこうもおっかないのかねぇ...?

そろりとテントの中に侵入し、何食わぬ顔で現在奮闘している仲間に助太刀する。


うむ...「早業」で女王の背後に回り込み、UC【業火の剣】で一気に溶かしてやる。
我ながらなんて完璧な作戦だろう....。

【アドリブ等々歓迎】




 人影がテントを揺らした。
 ルージュ・フェリスティ(怠惰なダンピール・f03096)が、観客が出てきた頃合いを見計らってサーカスへとやってきたのだ。
「外からも聞こえてきたぜ、暴れ回ってる音がなぁ……」
 元気なもんだ、と呟いたルージュは物憂げに鉄塊剣、chaleurを握る。剣が纏った炎がちろりと揺れた。
 そろりと気付かれないようテントのなかに潜り込めば、既に猟兵たちが派手な戦闘を行っている最中。
「うひー。やってるやってる、闘いってのはなんでこうもおっかないのかねぇ……?」
 飛んできた氷の欠片を片手で払う。あまりの騒ぎに気付かれないほうが不思議だと苦笑い。
 面倒なことこの上ないけれど。放っておくほうが面倒なことになりそうだ。ルージュが構えれば、chaleurから燃える炎は大きくなり、ぱちりと火の粉が舞った。

「あぁ…っと……、これはあたしの力は必要かい……?」
 時を同じくして、アリア・ミッチェル(Fighting women・f19177)もサーカスの観客席に立っていた。
「これが噂に聞くオブリビオンかい。あまりあたし達と変わらないもんだね」
 ひとの形をするそれは、未来を食い潰すようなものには見えない。けれど、彼女らはそれでも敵なのだ。周囲の確認をしながら、アリアがビームキャノン、fuga-BWV891を担ぎ上げる。
「何はともあれ、仲間の手助けさ! 久しぶりに暴れたいもんだねぇ」
 とりあえず、と担いだビームキャノンの照準を氷雪女王に向ける。アリアの唇がにんまりと弧を描いた。
「……とりあえず、コイツをぶっぱなしてみるか……」
 呟くと同時に。アリアの指が引き金を引いて。放たれたロケット弾が氷雪女王に向かって真っ直ぐに飛んで行く。
「逃げようってんなら逃げてみなよ……、ほぅら、さっさと腹くくりなっ!!」
「―――なん、」
 気付いたときにはもう遅い。不意の一撃は氷雪女王が反応する隙も与えず、派手な音をたてて爆ぜた。着弾点では炎が揺らめいている。
「遠距離の援護は任せなってね!」
 次のロケット弾を装着しながら、アリアが笑う。その威力は、もはや援護とは言えない。
「いや違うだろ! それもう援護じゃなくて攻撃じゃねぇの!?」
「……え? 違う……? 何が」
 危うく巻き込まれそうになったルージュの言葉に、アリアは首を傾げた。きょとんとした顔は、あっ、これは分かっていない顔だ。

 全く、とルージュは溜息を吐いて。溶けずに難を逃れ、また形作ろうとしていた氷雪女王の背後に早業を用いて回り込む。剣を振り上げれば、地獄の炎が高く、高く燃え上がった。
「本当、これで終いにしてくれよ……、業火の剣」
 ルージュが剣を振り下ろせば、氷雪女王の身体を炎が覆う。地獄の炎は、対象を焼き尽くすまで消えない。
「この、この妾が、こんな……、……こんなぁ…っ!!!」
 氷雪女王の、口惜しむ声が聞こえた。けれど、それも段々とちいさくなっていく。
 炎が消えたときには、もう、これ以上の氷雪女王が現れることはなかった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​




第3章 ボス戦 『極楽鳥』

POW   :    いや悪いのはお前らだから
全身を【言葉を拒絶する暴風】で覆い、自身の【行いに対して向けられた批判】に比例した戦闘力増強と、最大でレベル×100km/hに達する飛翔能力を得る。
SPD   :    風が、俺の味方をしてくれている
【長い髪で風の流れを感じることで】対象の攻撃を予想し、回避する。
WIZ   :    俺は許さん……そしてこいつも許すかな!?
【罪の意識】の感情を与える事に成功した対象に、召喚した【雷光を纏った極彩色の鳥】から、高命中力の【七色の雷撃】を飛ばす。
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「あっれー? 女王ちゃんやられちゃったの?」
 軽薄な声がした。焦げた天幕のなかから現れたそれは、軋んだスポットライトが、それの姿を顕わにする。
 オブリビオン『極楽鳥』。彼こそがサーカスを裏で操る黒幕の正体。彼はずり、ずり、と何引き摺っていた何かを、雑な動きで投げ捨てる。
 どしゃり、と、水っぽい音がして。サーカスの舞台に赤色が飛び散る。それは、サーカスの舞台に使われるはずだった獣だった。
 獣はもう、動く気配はない。彼の赤く染まった手は、彼がそれを殺めたのだと明白に物語っている。
「もうさー、裏でコイツらが暴れまわって大変だったワケよ。可哀想に、こんなになっちゃってさー」
 舞台に飛び散った赤色を踏んで極楽鳥が舞台の上を歩く。ぺたりぺたりと、赤い足跡が伸びた。
「でも俺悪くないよね? お前らが全部悪い」
 そう言い放つ彼の、奇抜なマスクから見える目だけが、楽しそうに歪んでいた。
マーロン・サンダーバード
こいつはまたイカしたマスクだ、親近感が湧くが…
残念だな、銃使いと剣使いってのは水と油なんだ

決着をつけようじゃないかミスターパラダイスバード
俺は太陽の使者サンダーバード!狂気の舞台に幕を引きに来た男だ!

空を飛ぶってんなら俺も対抗して「太陽の使者」発動!
太陽の黄金銃を【クイックドロウ】からの【先制攻撃】で口火を切らせてもらおうか
飛び回って間合いを取りながら黄金銃とライジングサンの2丁拳銃で弾丸の雨を浴びせ
かと思えば一気に接近して【零距離射撃】を叩き込む

いくら暴風を身にまとおうが、拒絶しようが
それでも太陽ってのは光を当てるもんなのさ
ってわけだ!太陽属性のきらめく弾丸を食らいな!




「決着をつけようじゃないかミスターパラダイスバード」
「イイねえ、観客がいないのが残念だけど、おいでよォ」
 極楽鳥が挑発するように、くいくいと指でマーロンを誘う。挑発されたように思われるのは心外だが、彼を倒すためにマーロンは来たのだ。
「俺は太陽の使者サンダーバード!狂気の舞台に幕を引きに来た男だ!」
「アッははァっ! やれるものならやってみなァ!?」
 言葉と同時にマーロンは太陽の黄金銃を引き抜くと、その引き金を引く。銃弾が極楽鳥に迫るが、彼は動かずににまりと笑みを浮かべる。
 極楽鳥のまわりに、風が吹き荒れる。銃弾は風に巻き込まれ、極楽鳥に当たることなく逸れた。
 お返しとばかりに極楽鳥は飛び上がると、風の力も借りてマーロンへと距離を詰める。
「いくら暴風を身にまとおうが、拒絶しようが、それでも太陽ってのは光を当てるもんなのさ」
 マーロンも負けじとユーベルコード、太陽の使者を発動。
 空へ飛び上がったマーロンは、太陽の黄金銃とライジングサンの二丁の拳銃を使い、銃弾を雨あられのように撃ち込み、極楽鳥を近付かせない。
「太陽属性のきらめく弾丸を食らいな!」
「熱いのはキライだってーの!!」
 剣で銃弾を切り落として凌ぎながら。風の力を借りて一気に加速。マーロンへと迫ると、極楽鳥が剣を振り被った。
「こいつはまたイカしたマスクだ、親近感が湧くが……」
 マーロンの目の前で極楽鳥の顔が楽しそうに歪む。剣がマーロンの身体を切り裂くと思われたが、マーロンも笑ってみせる。
「残念だな、銃使いと剣使いってのは水と油なんだ」
 極楽鳥の顔の前に、太陽の黄金中を付き付ける。銃口を額に向けると、間髪いれずに引き金を引いた。短く爆ぜる音がして。
「………だから、俺は熱いのキライって言ったよねぇ」
 ほぼ本能でそれを察知した極楽鳥は、銃弾をギリギリのところで逸らしたようだ。
 けれど、はは、と嗤うマスクの布が切れている。それだけではない。極楽鳥の耳に穴が開いていた。耳から溢れる血をぐいと拭いながら。極楽鳥は嗤ってみせた。

成功 🔵​🔵​🔴​

クリナム・ウィスラー
アドリブ連携歓迎
青花(f17570)と一緒に

貴方が本当の首謀者ね
ならさっさと死んで頂戴
存在自体が不愉快よ

今度は【呪詛】を籠めた【魚魔女の使役術】を使うわ
食われて削られて苦しんで惨たらしく死になさい
魚達には出来るだけ相手の動きを邪魔をするように立ち回らせるわね
そして魚の群れに罪の意識は存在しない
だから敵の技には邪魔されないと思うけれど……

私もこんな奴に罪の意識なんてないわ
どれだけ苦しんでも自業自得でしょう?
でも万が一攻撃が来そうなら出来るだけ警戒しておくわね

敵を苦しめるのが私の役割なら全力でぶっ飛ばすのが青花の役割
……でもあまり無茶はしないで
貴方のそういう部分、見てて良い気分はしないわよ


天泉・青花
アドリブ連携歓迎
クリナム(f16893)と一緒に

酷い事しやがるな……もっと酷い事しようとしてたけどよ
何にせよこいつを倒せば解決するんだ、さっさとやるぞ

俺は敵と言葉は交わさない、そんな必要ねーし
耳も怪我してるし使いたくないだろ
暴風を腕で【武器受け】したなら【ダッシュ】で前進
殴れる距離まで来たら【鎧砕き】を乗せた【陸穿ち】でぶっ飛ばす!
俺は別にお前の行動を批判するつもりはない
だってオブリビオンってそういうもんだろ?
それなら俺はぶん殴るって答えを返すだけだぜ

多少の攻撃なら【咄嗟の一撃】を返すつもりで食らいつく
心配してくれるのは嬉しいけど、俺の役割はこいつを殴る事だしさ
次はまともなサーカスに行きてぇな




 ごぽり、と水のおとがする―――気がした。
 極楽鳥が振り向けば、そこにはクリナムと青花が立っている。ふたりの侮蔑の込められた視線が心地よいとでも言うように、極楽鳥はにんまりと笑い掛ける。
 極楽鳥が何か言うよりはやく、クリナムが口を開く。
 ―――貴方が本当の首謀者ね。極楽鳥へ問うた彼女の声は、海の底よりもつめたい響きで舞台に響いた。
「さっさと死んで頂戴。存在自体が不愉快よ。………青花」
「おう。何にせよこいつを倒せば解決するんだ、さっさとやるぞ」
 名前を呼ばれた青花が、極楽鳥に迫る。いつものように明るく快活な言葉は、今の青花にはない。気のいい彼だからこそ、オブリビオンのしたことは許せないのだろう。
 批判を、断罪をしたいわけではない。オブリビオンはひとに災厄をもたらす、そういうものだと分かっている。でも、分かっているからこそ、引くことは出来ないのだ。
「だから俺は、ぶん殴るって答えを返すだけだぜ」
「耳のひとつふたつで止まる俺じゃねェんだなあ!!」
 風が吹き荒れる。暴風は舞台装置を巻き込み、どんどんと大きくなっていく。巻き込まれた機材に当たったら、無事ではすまないだろう。
 けれど、青花は止まらない。風も、巻き込まれた機材も、義手の腕で受けると、暴風の中心にいる極楽鳥へとまっすぐに突き進んで行く。
 普通に考えたら、無謀とも言える行動だ。けれど、青花は止まらない。止まることを知らない。例え腕が壊れたとしても、変わらないのだろう。
 極楽鳥へとあと一歩まで迫ったときには、青花の身体は惨憺たる有様だった。
 流れる血は止まらず、生身の身体は傷だらけ。血が入った目は霞んでいるようだ。機械の義手も、形が歪んでしまっている。
「バカか? 死地へヨウコソォ!!」
 そんな青花は敵ではないと思ったのだろう。極楽鳥が楽しそうに嗤って、剣を振り被る。

「現世の水面へおいでなさい―――……」
 その時だった。静かなこえが、凛と響く。極楽鳥も一瞬、視線を奪われた、その瞬間。ごぶりと水のおとがして、クリナムのまわりに深海魚の群れが次々に現れる。
「―――……そして好きなだけ喰らいつけ」
 クリナムによって召喚された、深海魚の霊たちが極楽鳥へと襲い掛かる。極楽鳥は、啄ばむようにまとわり付く深海魚たちを鬱陶しそうに、それらを退けようと剣を振るう。
「あなたみたいな奴に罪の意識なんてないわ。どれだけ苦しんでも自業自得でしょう?」
「はは!! なあ! それいいなあ! 俺とサーカスやらない!?」
 自らの苦境をも楽しむようなその声に、クリナムは耳障りだわ、と呟いた。―――嗚呼、耳じゃなくて、口が裂けてしまえばよかったのにね。
「お前の相手は俺だろう!! 砕け、壊れろ!!」
「ナンパの邪魔するなってーの!!」
 青花が踏み込む。極楽鳥が、剣を横薙ぎに振るう。
 青花の拳が届くよりも、極楽鳥の剣先が青花の腹部を抉るほうがはやいと思われた。―――けれど。深海魚の長い尾ひれが、極楽鳥の視界を遮った。
「―――ッ、邪魔ァ!!」
 極楽鳥の動きが止まる。剣すらも恐れず前へと踏み込んだ青花の拳が極楽鳥の頬を捉え、直撃を喰らった極楽鳥は後ろへと吹き飛ばされた。
 騒々しい衝撃音のあと、舞台が崩れ落ちるおとがする。極楽鳥の姿は、砂埃が邪魔をして見えない。
 極楽鳥がすぐこちらへ向かってくる様子がないことを確認すると、クリナムが青花へ歩み寄る。
「……ねえ。あまり無茶はしないで。貴方のそういう部分、見てて良い気分はしないわよ」
 青花に手を差し伸べながら。労わるようなその声は、先ほどまでとは打って変わって穏やかで。
「心配してくれるのは嬉しいけど、俺の役割はオブリビオンを殴る事だしさ」
 青花はやはり、自分の傷なんて気にしていないようで、飄々と、何事もなかったかのようにクリナムの手を取った。
 青花の身体を引っ張り起こそうと、細い指先にくっと力が込めらて。ふらりと立ち上がった青花は身体に付いた砂埃を軽く叩くと、次はまともなサーカスに行きてぇな、と呟いた。
 すこし遅れて、ばかね、と言うクリナムの声は、どこか優しくて。けれど、霞んだままの青花の目には、彼女がどんな表情をしているかは、映らなかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

萩原・誠悟
アドリブ連携歓迎

手負いの鳥か、今ならこの老いぼれが相手でも不足はあるまい?
構えたまえ、この元・人斬りが相手になろう

出方を伺いたいし、こちらもサムライブレイドを抜きつつまずは【挑発】だ
【残像】で回避を試みつつ隙が出来たら振ってきた剣に【踏みつけ】で対処しよう

私の図体を考えると肉薄しすぎるのは危険だな…
寄られすぎた時は自慢の【逃げ足】で距離を取ろう

よく聞け、君の行いは非難されるべきクソ行為だ!

…わざと相手のUCの条件を満たして発動へ誘導
そこへフック付きワイヤーで【グラップル】し、【カウンター】でUCを叩き込む

かつて私は兄弟分を殺され、その復讐に人を斬った者だ
私に言われる筋合いは無かったかも知れんな




 くらくらする。血を流しすぎた。なんとか膝に力をいれて立ち上がる。
 ふらふらする。ちくしょうめ、と悪態を吐いて、砕けた瓦礫を蹴っ飛ばした。
「………なーんで、そんなに怒ってんのかなア。あー、もう。ボロボロじゃん?」
「手負いの鳥か、今ならこの老いぼれが相手でも不足はあるまい?」
 声がして、思わずその場を飛び退く。まだ足が動くことを確認すると、笑みが零れた。ああ、まだ終わらない。
 声のした方に視線を向ければ、鉄のかおりがした。――――ああ、これが俺に最後を連れてくるのか、と、そんなことを思った。

 萩原・誠悟(屑鉄が如く・f04202)の持つ、サムライブレイドが鈍く光った。
「構えたまえ、この元・人斬りが相手になろう」
 真っ直ぐに極楽鳥を見据えて。けれど、飛び退いた彼はすぐには構えない。今までに受けた傷が重いのだろう。誠悟の動きを伺っているようだった。
「そうか、こないのか」
「こっちにも都合があるんだよ。分かる? オッサン」
 それでも極楽鳥は顔に笑顔を貼り付けたまま。誠悟を煽るような言葉を吐いた。極楽鳥を見つめる誠悟が、口を開いた。
「よく聞け、君の行いは非難されるべきクソ行為だ!」
 誠悟の言葉を聞いた極楽鳥の表情がぴくりと、不快を示すように動く。
 彼を非難するとどうなるのか。もちろん誠悟には分かっていた。だから、彼に煽られた訳ではない。これも、誠悟の狙いのひとつだった。
 近付こうとしないなら。逃げようとするのなら。彼の動きを誘導してやればいいのだ。
「だーかーらー!! どうして俺のこと悪いっていうのかなァ!?」
 風が吹いた。今までのなかでもいちばんに強い風が、極楽鳥の周りで渦巻いている。サーカステントがべりべりと音を立てて剥がれていった。極楽鳥が誠悟へと向かって飛びあがる。
「俺は皆を笑わせて幸せにしてあげたいだけなのにさ!!?」
 そんな彼の言葉は、なんだか悲痛な叫びのようで。誠悟が僅かに顔を歪めた。
 誠悟は彼がどんな人物であったのかは知らない。どうしてこうなってしまったのかも知らない。
 ―――けれど。誰かの死と、誰かの涙と、誰かの血の上にしか成り立たない幸せなんて、正しい訳がないのだ。
「君は本当に、そう思っているのか!!」
 言葉とともに、何かが放たれる。それは、フック付きワイヤーだった。
 誠悟へ一直線に飛んでいた極楽鳥は、回避しようとするが間に合わない。極楽鳥の身体をぐるりとワイヤーが回って、逃がす間を与えずその身体を締め上げた。
「――――ッな、あ?!」
「そんなの、悲しいとは思わないかね」
 ワイヤーに捕らえられた極楽鳥が落ちてくる。誠悟がその身体を断ったのは、一瞬。

「ああ、クソ!! こんな、……ああ、もっと、笑わせて――……しあわせに……」
 極楽鳥の身体が崩れていく。最後の言葉は彼の身体とともに、ちいさくなっていって。
「かつて私は兄弟分を殺され、その復讐に人を斬った者だ」
 風に乗って目の前に流れてきた、彼のマスクの一部を掴めば、それはぐずりと崩れて消えてしまった。
「――――……私に言われる筋合いは無かったかも知れんな」
 なにもなくなった掌を見つめてから、ぎゅうと握る。
 復讐と言って、人を斬った。そこに笑顔はなく、どこまでもどこまでも、血のにおいがしていた。
 サーカステントが剥がれて、崩れたサーカスには光が差している。見上げた空は清清しいほどに青くて。すべての演目を終えたサーカスは、どこまでも静かだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年06月30日


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#ヒーローズアース


30




種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は庚・鞠緒です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


挿絵イラスト