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夜光の海に君はさやかで

#アックス&ウィザーズ


●君さやかの浜にて
 美しく暮れゆく浜辺に焚火を囲むふたつの影。
 ひょろりと長く伸びた影の主はアレックス。この春より冒険者としての道を選んだ新兵のひとり。
 その隣、しなやかな筋肉の鎧を纏う長髪の美しい男の名はローラン。年の割に冒険者としての経験は豊富で若くない傷もいくらかあった。それを勿体ないと嘆く女も多々といる、そんな色男だ。
「なあローラン、もう焼けただろうか」
「そう急くな。じきにもっと美味そうな香りになる。それまで待つんだ」
「もう腹が減り過ぎてくたばりそうなんだよ。いいじゃないか、ベストじゃなくても」
「分かっていない。お前は本当に分かっていないなあ」
 気の置けぬ仲とあれば小競り合いも心地よく、遠く彼らを照らす夜光虫の波もくすくすと笑うようにささめき、穏やかな時が流れていた。

 だから彼らは気づかなかった。
 焚火の向こうに揺らぐ二人を見て、何かが歪んだ笑顔を浮かべていることに。

 3分と12秒後。
 さらりとした浜の砂の上に二本の腕が遺された。
 波は変わらず微笑んでいる。

●グリモアベース
「さて、諸君にはこの予知を覆していただきたい」
 事務的というにはやや緊張感を欠いた調子でエドヴァルド・ゼロ(残夢消ゆ・f16086)は語りを続ける。
「転送先はアックス&ウィザーズ。ここに出現する一体のオブリビオンを始末することが今回の目的だ」
 舞台となる浜辺は“君さやかの浜”と呼ばれており、日が沈むと星々の輝きと波に戯る夜光虫とで幻想的に煌めき、それは美しいのだとか。しかしこのままでは哀しくもオブリビオンによる殺戮の舞台になってしまう。
 今回、オブリビオンは肉の美味そうな匂いに釣られて這い出たようだ。
「広大な浜のどこに現れるかは俺の予知の至らぬところであるが、そこはコイツの鼻の利くのを利用させてもらうこととしよう。なに、簡単なことよ。美味そうな鶏の焼ける匂いと『生き物』の匂いがあればいい。『生き物』とはもちろん、何もひ弱な冒険者である必要はないのだ」
 つまり、とエドヴァルドは集った猟兵たちを見回し不敵に笑う。
「――諸君の出番だ。贄となれ、強き者らよ。まずは……そうだな、この冒険者どもの仕事を横取りしてこい。足手まといはいらんからな」
 冒険者たちは浜へ向かったが故に悲劇を辿る。ならば彼らが浜へ向かわぬようにすればよいのだとエドヴァルドは言う。
「発端は彼奴らが受けた酒場の依頼と言えるだろう。内容は鶏型モンスターの討伐というありふれたものだが、こいつの肉はたいそう美味いらしい。で、金稼ぎついでに食料にもありつこうとした結果が予知のとおりだ」
 よって猟兵たちが酒場の依頼を受けてしまえば彼らはこの依頼を目にすることなく別の未来へ向かうことになり、結果として悲劇を免れることができるのだ、と。

「――情報を整理しよう。依頼を受けたらまずは森へ行き、鶏型モンスターを討伐がてら捕獲。その後は“君さやかの浜”にて鶏を焼きオブリビオンを炙り出し、そのままぶっ潰せ。ああ、そうだ、鶏を手っ取り早く見つけるには森の入り口にある揚げ菓子屋のワゴンで餌のドーナツを買ってばら撒くといいだろう。以上だ」
 それきり、エドヴァルドは転送の準備に掛かるため猟兵たちに背を向ける。
「割って入って目前で護るような恰好のつく仕事ではないが、命を救うことに変わりはない。なあ、せいぜい頑張りたまえよ、諸君」
 風に揺れるエドヴァルドの服の裾にはうさぎのぬいぐるみが静かに佇み、主の代わりか、頭を垂れた。


京都
 オープニングをご覧いただきありがとうございます。
 京都(けいと)と申します。
 プレイングの受付開始や終了については適宜雑記、Twitterに記しております。
 Twitter【@keito_tw6】

 ※プレイングの受付は基本的に断章公開後です。
 ※OPに登場した冒険者2名とは接触できません。念のため。

●第一章
 夕刻の森で鶏型モンスターを捕獲してください。
 ドーナツにはすぐ食いつきますし捕獲も簡単です。
 ということでプレイングは森での過ごし方をメインにしていただいてかまいません。
 他の味覚探し、ドーナツを堪能するなど、公序良俗に反しない範囲でご自由にお過ごしください。
 ※探索時間は短めです
 
●第二章
 夜の浜辺にて、捕獲したモンスター(すごく美味しい)を頂きます。
 目的はボスの誘引ですが、急襲等のリスクはありません。
 煌々とした星々や穏やかな波に揺れる夜光虫に照らされ、楽しくもロマンティックな雰囲気です。
 こちらも公序良俗に反しない範囲でご自由にどうぞ。

●第三章
 二章にて誘引したボスと戦います。
 詳細は第二章クリア後、追って導入部分でお伝えいたしますので、プレイング作成はそちらの公開を待ってからをおすすめいたします。
 シリアス、激戦にはならない予定です。
 
●その他
 ・お好みの章にご参加ください。
 ・お知り合いでない方同士でもご一緒していただく場合がございます。
 ・NG事項がございましたらお伝えください。
 ・参加人数によっては過去作より描写量が減る場合がございます。
 ・再送はたいへん有難いです。

 以上となります。ご確認ありがとうございました。
 よい旅へ導けますよう、精一杯努めてまいります。
 どうぞよろしくお願いいたします。
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第1章 冒険 『石にする鶏を捕まえろ!』

POW   :    モンスターが出てくるまで張り込み

SPD   :    モンスターを必死に追いかける

WIZ   :    足跡や聞き込みからモンスターの場所をたどる

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●暮れなずむ森へ
 依頼を受けた猟兵たちが、ひとり、またひとりと森に集う。
「今日はお客が増えそうねえ」
 揚げ菓子屋の女主人が追加のドーナツを並べながら不思議そうに独りごちた。

 空明るくも夜遠からじ。来るべきへ向け、時は止まない。
 まずは軽い足慣らし――猟兵、森を狩る。
バル・マスケレード
ヒハハッ!
誰ぞを石にする鶏なんて有名な伝承だが……
まさか文字通り食いモンにされてるたァな!
ま、俺に狙われたのが運の尽きと思って今生は……。
…………。

……食い意地張った宿主の女が腹の虫鳴らすから締まらねェな、チクショウ。
ええいやめろ、餌用のドーナツに食欲を向けんな!
感覚共有してるから全部筒抜けなんだよ!!

捕獲にあたっては餌を撒き、UCで気配を殺して待つ。
鶏が出たら【忍び足】で近寄って、【ロープワーク】で締め上げて捕獲。
コイツで一丁上がりだ。

……思いの外あっさり片付いた結果、宿主の空腹主張が激しくなる。
わーったよ、余った時間で香草探しにでも付き合ってやらァ!

(※アドリブ連携、なんでも大歓迎)




 微睡む森をたたき起こすような笑い声が響く。
「まさか文字通り食いモンにされてるたァな!」
 バル・マスケレード(エンドブリンガー・f10010)だ。
「鶏は所詮鶏ってェことかね。ま、俺に狙われたのが運の尽きと思って今生は……」

 ぐるるるる。
 ここからひとつ名乗りでもあげてやろうかというところ。やってまいりました、わたくし腹の虫でございます。違うんです、わたくしが悪いんじゃあございません。手に持っている、ソレがいけないんですってば。

「ええいやめろ、餌用のドーナツに食欲を向けんな!」
 寄生主の締まりのない腹の音に一喝するバル。
 この関係、感覚の共有は避けられないもので、空腹ばかりか女の多少の恥じらいまでもバルには筒抜けであった。
「こいつで鶏を釣らなきゃなんねェんだよ。鶏は食えンだ、それまで我慢しろ!」
 少し、身体が素直になったか。すっかり緩んでしまった場の空気を締めなおす為、バルは森の奥へと進んでいく。


「――さて、こんなもんかね」
 ぽろぽろと地面に落ちたドーナツは文字通りの甘い罠。それを仕掛けたバルはというと、森の葉影に溶けるように気配を殺し獲物を待ち構えている。
 するとどこに潜んでいたのか、数分も経たないうちに鶏型のモンスターが現れた。罠だなんて疑いもせず、嬉しそうにドーナツ目掛けて首を前後に振って猪突猛進。ドーナツを口にすればそれは嬉しそうに羽根をばたつかせているではないか。
「……おい、ちょっと和んでんじゃねェよ」
 寄生主の心にふいに湧き出た温かい感情を振り切るように、しかしバルは静かに動き出す。
 そろり、そろり。あっという間に忍び寄り。
 するり、するり、瞬く間にロープで縛り上げ――。
「ヒハハッ! 一丁あがりだぜ」
 身動きも許されぬ鶏は籠の鳥より哀れなもので、つぶらな瞳には困惑の色が窺える。
「だァから同情すんなっつーの!」
 はたから見ればただの一人芝居であるが、当の本人らは至って真面目。互いの存在を主張しあっている。
 そしてその中に於いて特に顕著だったものはというと。

 ぐるるるるるるるる。
 そうです、わたくし腹の虫でございます。聞こえますか、わたくしの悲しいエレジーが。わたくし諦めておりませんからね!

「わーったよ、余った時間で香草探しにでも付き合ってやらァ!」
 なんだかんだと言いいはするが、これが運命共同体の宿命か。バルの足は女の目的の元、再び動き出すのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

無明・緤
【SPD】
ささやかに善行を積むのも悪くない
いまのおれはそういう気分だ
鶏もしばらく食ってないし!(舌なめずり)

酒場で鶏型モンスターの討伐依頼を受けて森に着いたら
風上で揚げたてドーナツの袋を開き、置いて隠れる
匂いにつられてヤツらが来るのを待ち伏せよう

油断して啄んでる所を捕まえてもいいが…
わざと急所を外して脅しの一撃、追いかけっこを楽しむ
ご馳走を美味く食うには腹を空かせた方がいいだろ?
ということで、まてー!

鼠をいたぶるように【フェイント】を交ぜて
ちょっかい出しつつ追い詰め
逃げ足が鈍った所を飛びかかり仕留める

絞めたモンスターは絡繰人形に持たせておく
腹に詰めるための茸も探しとこうかな
ダシが出て美味いんだ


雨煤・レイリ
戦いは避けられないことを考えると、一概には言えないけれど
直接に戦いから守るんじゃなく、こういう護り方も良いものだね

揚げ菓子のドーナツは多めに購入
腹ごなしがてら自分でも食べつつ
大半は餌にして誘き出し

引き上げれば袋状に吊り上げられる網の罠を、地面に仕掛け
罠を中心にある程度の広範囲に、ドーナツを屑状にして撒く
中心近くには大き目のものを置いていく
待伏せは樹上にて
縄の端を足先に引っ掛けておけば罠の作動も一瞬だ

ドーナツを食べつつ来るのをのんびり待つ
後で焼いて食べるなら付け合わせも欲しくて
キノコにししとう、ネギにパプリカ…やっぱり串焼きが良いかなぁと
もっと美味しく食べるにはどうしようかなと想像を廻らせてるね




 ここに並んであるのは大きな影と小さな影。
「ささやかに善行を積むのを悪くない」
「うん、こういう護り方も良いものだね」
 無明・緤(猫は猫でしかないのだから・f15942)が大きく頷けば、雨煤・レイリ(花綻・f14253)が穏やかに応える。
「鶏もしばらく食ってないしな!」
 緤が不敵に目を細め舌なめずりをするのを見てレイリは楽しそうに微笑むと、まだ暮れぬ空へと視線を移し双眸を細む。戦い自体を避けることが出来ないのは残念けれど。それでも――。
 いま為すべきことを為すため、猟兵たちは狩りの道へ一歩を踏み出すのだった。

 森に入って間もなく、彼らは鶏型モンスターの群れを視認した。近くにはひらけた場所もあり、罠の設置にはうってつけだ。ここ以外の狩場を探す理由もないだろうと、二人はさっそく各々の準備に取り掛かることに。
 風向きまでも計算するのはさすがは鼻の利くケットシーと言ったところか。大胆な態度とは裏腹に、緤は慎重に捕獲作戦を進めていく。
 対するレイリも餌の配置まで配慮を尽くした罠を設置し、今はもう樹上で高みの見物である。自由な方の足をぶらぶらと遊ばせながらゆったりと座り、時を刻む森の音に耳を傾けドーナツを齧れば初夏の幸せが広がった。
「やっぱり甘いものはいいなぁ。……あれ、キミは袋ごと置いちゃったの?」
 落とした視線の先には同じく鶏を待ち伏せる緤の姿が。両手を空にした彼を不憫に思いレイリがお裾分けを提案してみるも、首を横に振って。
「胃の具合を調整しているところなんだ。この後は追いかけっこもせねばならん」
「胃の……あぁ、なるほど。わざとお腹を空かせているんだね」
 そういえば彼は最初から鶏だけを見ていたっけ。レイリは納得しながら遠慮なくドーナツをぺろり。大半は罠に使ったけれども、それでも多めに買っておいたものだから小腹は十分に満たされた。
「んー美味しかった。甘いものは元気がでるね」
 幸せの吐息が緤の腹の虫を刺激したのをレイリは知らない。


「――来たね」
 レイリが罠に続く足先のロープを引き上げる。結果は上々。何羽か袋に捕えあげたようで、袋の中はバタバタとにぎやかだ。
 一方で緤は。
「まてー!!」
 鶏と追いかけっこの真っ最中。鼠を弄ぶ猫のように、敢えて急所を外して鶏を誑かす。必死の逃亡も虚しく、負った傷の数に堪えかねた鶏たちが一匹、また一匹と転げていく。そこにすかさず飛びかかれば一丁上がりである。
 余裕に満ちた見事な狩りではあったが、一部始終を眺めていたレイリにしてみれば、ただただ愛らしい猫の戯れが展開されているように映ってしまい思いがけず頬が緩んでしまう。ふさふさの尻尾もゆったりと横に振れ。
「猫ちゃん可愛いなぁ」
 なごなごな呟きは森の風に乗り、誰にも捕らわれないまま消えていった。

「随分と手応えのないヤツらだったな」
 仕留めた鶏を絡繰人形に持たせながら緤が言う。
「でもお陰で少し余裕があるみたいだね」
 空の様子は来た時とほとんど変わらない。海へと抜ける道を行くすがら、食材を探すことくらいならば許されそうだ。
「ちょうど良い、茸も探しとこうかと思っていたところだ」
「本当? 俺も同じこと考えてたよ。キノコにししとう、ネギにパプリカ……」
 やっぱり串焼きが良いかなぁとかさ、鶏を待つ間ずっと木の上で考えてたんだ、と少年のようにキラキラとした瞳で。
「茸は腹に詰めるといいぞ。ダシが出て美味いんだ 」
「わぁそれは美味しそうだね。いや、美味しいよ。絶対美味しい」
 屈んで緤と視線を合わせたレイリの頬が緩む。
「どうやら話が合いそうだ」
 真っ直ぐに視線を返した緤も逸る気持ちを抑えきれぬといった様子。なんてったってドーナツを見送ったのだからお腹はぺこぺこだ。
「それじゃあ、他にも合いそうなものがないか一緒に探しながら浜を目指さない?」
 レイリの提案に緤は頷きひとつ。二つの影がそわそわと歩み始めた。
「ところでネギやパプリカって森に生えてる?」
「……多分生えてない」
「ええ……そんな……」
「生えてない……が、似たようなものならばあるかも知れんな」
 だってここは幻想にあふれる不思議な森なのだから。ともすれば、もっともっと美味しい食材だって手に入る可能性だってあるのだ。諦めてはいけない。
「いろいろ見つかるといいね」
「なに、見つけてやるとも」
 にやと笑った緤の小さな顔には、艶やかな黒ヒゲがピンと胸を張っていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ロク・ザイオン
(森番は森を守るが故に、森とその恵みをよく知る。
【地形利用】しながら【野生の勘】で鶏の魔物を【追跡】、追い込もう。
ドーナツ撒けば簡単だとは言われたが、走り回るのが好きなのである。
若干薄暗くなっても【暗視】でへっちゃらだ)

(なので買ったドーナツはちょこちょこもぐもぐ食べている)
……おいしい。

……おれの声が、嫌じゃないなら。
あまり喋らないけど。
…………誰かと一緒の狩りも、構わない。


フィン・クランケット
ドーナツに、チキン!
(こほん)
いえいえ、ここはオブリビオンを倒して、きっちり平和を取り戻さなくちゃいけませんよね
ええ、猟兵の出番ですとも!

酒場で依頼を受けたら、ドーナツ屋さんのドーナツを多めに買い込んで、いざ森へ
鶏型モンスターを退治し始めます
遠くにいるのはUCで、近くのは薙刀で
あんまり森に被害出したくないですよね…妖精さん、モンスターだけを的確に倒してくださいよぉ?

倒しながら、予備のドーナツもぐり
えへへ、今の内にちょっとドーナツの味見したって怒られませんよねぇ、とパクパク
(袋ガサガサ)
あ、結構食べちゃった…!

…よし!エネルギーも補充したので、後はまとめて倒しちゃいますよ!
チキンさん、覚悟ー!!




「ドーナツに、チキン!」
 静かな森にフィン・クランケット(蜜柑エルフ・f00295)の高らかな宣言が響き渡る。いつものふやふやとした声の主とは思えぬ、凛とした彼女の髪色みたいに元気な声だ。
 ――コホン。
 咳払いひとつ。いや違う、オブリビオンを倒しに来たのだ、と己の身を引き締め。
 しかし彼女の手元を見てみるとどうだろう。袋にいっぱいのドーナツは撒き餌用と呼ぶには多すぎやしないか。たくさんの幸せを抱えてご満悦のフィンであったが、それらしいポイントを見繕えば惜別の時を悟り、顔いっぱいに悲壮感が滲み出てしまう。
「うぅ……勿体ないけど……えいっ!」
 後ろ髪をひかれつつも小さく千切ったドーナツを一思いにばら撒く。実はそれでも大半は彼女の腕に残ったままだったけれど。
「じゃああとは妖精さん、お願いしますね」
 ふぅとため息を吐くように囁き助けを乞えば、現れたのは幾多もの氷の柱。それは森の木々、木の葉の間を縫って走り、目標のみを貫く勇敢なれど思慮深い刃だった。
 フィン自身も準備運動がてら近場の鶏を薙いでみれば、弱い鶏たちはドーナツひとつ食べきる前に皆のされてしまう。
「ありゃ、一瞬で終わっちゃっいましたねぇ。ごめんなさい、鶏さん……と、あれはなんでしょう?」
 フィンが目にしたのは森を駆ける獣のような影。獣――いや、あれはロク・ザイオン(明滅する・f01377)だ。まるで己が育てた庭の如く森を縦横無尽に駆け回っている。反射的に声を掛けようとしたフィンであるが彼女が仕事中と気付けば今は静かに時を待つと決め、ドーナツ片手に見守ることに。
 ロクは撒き餌を使わず己の肉体を以て狩りを成さんとしていた。茂みに隠れ、木枝を伝い、木の葉の音を隠れ蓑に。備わった勘を利用しては鶏たちの先へと回り込み、あれよあれよと浅い洞穴に追い込んでいくその姿は鮮やかにて美しさも伴うものだった。


「すごかったですねぇ」
 ロクが仕留めた鶏と共に洞穴を出ると、待ってましたとばかりにフィンが賑やかに近寄ってきた。
「こんにちはぁ。あなたも猟兵さんですよね」
 静かに頷くロクの口元がもごもごと動いているのに気づいてフィンが笑う。
「えへへ、ドーナツ美味しいですよねぇ。私はもう全部食べちゃいましたけど。あなたのお口にも合いましたか?」
 似た髪の色、瞳の色――それなのに、ロクの瞳にフィンはとても眩く映り、太陽を見上げたときみたいに目が細まってしまう。それがなんだかこそばゆくて、逃げるように顔を背けながら大地に向けて声を絞り出す。
「…………おいしい」
「ですよねぇ! 私、みっつも食べちゃいました」
 えっへん。何故か胸を張るフィン。頭のあほ毛さえ誇らしげに見える。そんなフィンを見てロクは表情ひとつ変えず、しかしそっとドーナツを差し出した。
「え! いいんですか!」
 なんて、言葉のわりにもう手が出ていたり。
 ロクはこくこくと頷き、伸びた手にドーナツを添えてやる。
「わぁ、ありがとうございます。ドーナひゅ、んんまりふわなかったんれすね?」
 ドーナツ、あんまり使わなかったんですね――とロクは理解した。野生の勘で。
「……走り回るの、好きだから」
「うんうん、見てましたよぉ。びゅんびゅんシュッシューって感じですっごくカッコよかったです! そして綺麗でした」
 身振り手振りで狩りの場面を再現するフィンに、ロクは目をぱちくり。思いがけず褒められてしまったものだから無口に拍車がかかってしまい、ただ佇んでいる。
「――あ、それとですねぇ。さっきから思ってたんですけど、あなたの声ってなんだか猫ちゃんみたいですね」
 ロクの目が、また輪をかけて大きくなる。
「ほら、ごろごろにゃーんのゴロゴロって喉が鳴るみたいな感じだなぁって思ったんです」
 さっきまで狩りの俊敏な動きを真似していたかと思えば、今度は両手を猫の手にしてにゃんにゃんとふやけて笑って見せるフィン。
 ひょっとしたらこの鑢の声が嫌がられるかもしれない――なんて、そんなこと彼女相手に要らぬ心配であったのだとロクは思い知らされた。
「…………ロク」
「え?」
「ロク。おれの名前」
「わわわ、申し遅れました! 私はフィンっていいます。よろしくお願いしますね、ロクさん」
 服の裾で慌ててドーナツの粉を払い右手を差し出すフィン。斜陽に照らされたロクの顔は、明るく輝いていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

キッテン・ニコラウス
【時計塔区】
マシロ、まさかその説マジで信じて……るわけないわよねバラすの早い!!

そんな感じでいつも通りに会話しながら
ドーナツを細かく砕いたのをバラ撒いて鳥型モンスターをおびき寄せるわ
余ったドーナツは私達の昼ご飯ね
っていうかなんなら買ったその場で食べるし行く途中でも食べるわ
ん、マシロはそれだけでいいの?(マシロの倍食べながら)

鳥型モンスターが現れたら【アイス・ランス・ショット】で即座に串刺し!
よし、さすが私……
マシロごめんね、でっかい風穴いっぱい開けちゃったけど、素材剥ぎ取れるかしらこれ?

あ、研究費用で落としたのってそういうこと!?

アドリブ・絡み大歓迎


白・ケルビン
【時計塔区】
ねぇねぇ、キッテン 知ってる?
ドーナツは真ん中に穴が空いてるからカロリーがゼロなんだって!
嘘だよ

というわけでドーナツ買ってきましたー、じゃじゃーん!
あ、費用は研究経費で落としたから
あとはモンスターを待つだけ!待ってる間はドーナツ食べてもいいなんて、ぜいたくだねー!
ほら、キッテンも食べなよ 甘いものは脳の回転にいいんだって!

モンスター出たらどうしよっかなぁ、やっぱ素材剥ぎ取りはロマンだと思うんだけど!
あー、考えただけでわくわくしちゃう!!


……ところでドーナツって、食用と思い込みがちだけど、意外と調合材料によいのでは??




 小さくてキラキラしたまぁるい穴は美しい青――白・ケルビン(イミビ・f00974)の澄んだ瞳で満たされていた。
「ねぇねぇ、キッテン 知ってる?」
 ドーナツ眼鏡越しに話しかけた相手は頼もしい友人、キッテン・ニコラウス(天上天下唯我独尊・f02704)だ。
「やめなさいよ。目の周りが砂糖だらけになるわよ……」
「ドーナツは真ん中に穴が空いてるからカロリーがゼロなんだって!」
 友人の気遣いも虚しく、ケルビンは得体の知れない知識を前のめりで披露する。
「マシロ、まさかその説マジで信じて――」
「嘘だよ」
 温度差が激しい。
「バラすの早い!!」
 それでも信じているよりはマシかとキッテンはため息を吐く。しっかり者のキッテンとあってもケルビンの舵取りは容易ではないのだ。
 
 じゃじゃーんと買ってきた袋いっぱいのドーナツを天真爛漫に披露するケルビン。キッテンも満更ではないようで、袋から漂う匂いを楽しんで素早くひとつまみ。彼女らの日常が窺える何気ないやり取りは女の子同士のよくある光景――まさか彼女たちが強大なオブリビオンの討伐に向け動いているなど一見では誰も想像できないだろう。
「こんなもんでいいかしらね」
 ドーナツの欠片を森の小道にばら撒きながら働き者のキッテンが問う。
「上手ー! さっすがキッテン! あとは待ちながらドーナツを食べるだけだね」
 ぜいたくー、とふやり笑ってさっそくドーナツをぱくつく気ままなケルビン。
「おいひぃ。ほら、キッテンも食べなよ。甘いものは脳の回転にいいんだって!」
「ありがと。っていうかさっきからちょこちょこ食べてたわよ」
 盗み食いは結構得意なのだと舌を出して茶目っ気たっぷりにおどけてみせるキッテンは普段とは違った魅力に溢れていて、男子が見たらそのギャップにころりといっただろう。
「えっ、ずるい! まぁ、でもいっぱいあるからいっか。あ、費用は研究経費で落としたから遠慮しないでね」
「研究経費? そういうところはしっかりしてるわね……」
「えへへ。ねぇ、モンスター出たらどうしよっかなぁ。やっぱ素材剥ぎ取りはロマンだと思うんだけど!」
「鶏の素材剥ぎ取りっていったら何かしらね」
「うーん……定番は羽根かな。あとは前脚とか鶏冠とか?」
「ふぅん。じゃあせせりとかぼんじりとか?」
「それ焼肉じゃん」
「ドラムとかキールとか」
「揚がっちゃってんじゃん! もう、キッテンふざけてるでしょ!」
 彩り溢れる声と豊かな笑い声が森に響く。女子の会話は尽きることを知らないようだ。
 

「あ! 鶏さん来た!」
「本当にドーナツにまっしぐらなのね」
「あの勢いだとすぐ食べ切っちゃいそう、ほら! キッテンはやくはやく!」
「大丈夫よ、一瞬で終わらせてあげるわ。……っていうかマシロは何もしないのね」
 強くは言わない。だって、どうせ自分ひとりで足りるから。彼女にしてみればこの程度、軽めの跳躍にも満たぬのだ。
「――さ、いくわよ。大人しく串刺しになりなさい!」
 すらりと美しく伸びた腕を天にかざせば、召されるはおびただしい数の氷の槍。餌をつつく鶏たちより明らかに多いそれは一切の容赦なしに降り注ぎ、確実に対象を貫いた。
「わぁーすごーいキッテン! 鶏さんが穴だらけ! 穴だ……あああ!!!」
 さっきまで元気に餌をむさぼっていた鶏の群れは今はもうない。力なく駆け寄ったケルビンの足元に広がるのは歪な肉の塊と、散った羽毛と、損傷した臓器である。
「あー……マシロごめんね。素材剥ぎ取れるかしらこれ」
 便宜上そう言ってみたが、パッと見でアウトなことはキッテンにも分かっていた。
「う、う……ロマンが……夢が……」
 ぐすんぐすん。気慰めに羽根を広い集めてみるもだいたい血に染まっており、見つめるケルビンの背が丸く落ち込む。
「ごめん、ごめんって! あっ、ほら、まだボスのオブリビオンが残ってるじゃない。そいつで挽回しましょうよ」
「……キッテンちゃんと協力してくれる?」
「も、もちろんよ」
 少々の妬ましさをスパイスに愛らしい上目遣いで訴えられては首を縦に振るしかないキッテン。元より友情に厚いタイプの彼女にはダメ押しの一手と言えよう。
「やったー! ふふ、オブリビオンはどんなのかなぁ。レア素材採れるといいなぁ」
 潤んだ瞳は幻だったか、あっという間に上機嫌。
「……ところでドーナツって、食用と思い込みがちだけど、意外と調合材料によいのでは??」
「あ、研究費用で落としたのってそういうこと!?」
 ケルビンの奇想天外な実験意欲に終始振り回されるキッテンであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 冒険 『夜襲に備える』

POW   :    体力に任せて寝ずの番をする

SPD   :    罠や警報器を仕掛ける

WIZ   :    地形などを利用して迎撃態勢を整える

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●君さやかの浜にて
 狩りを終えた猟兵たちが浜のひとところに集い始める。
 浜に転がり調理を待つ鶏型モンスターの数を見るに、狩りの首尾は上々のよう。しかしこれはまだ序の口。穏やかに寄せる波の狭間――本物の脅威はそこに潜んでいるのだ。

 陽は間もなく海に沈み、輝きを取り戻した星々と夜光虫が浜辺を照らすだろう。
 迫りつつあるその時に向け、今は備えよ、英気を養え。
ロク・ザイオン
※フィン(f00295)と

フィン。
…いいにおいがするな。
(火を起こす。肉を捌く。
これは得意なのだが、「味」に関しては大雑把な森番である。
森で出会ったキミの味付けに、ごろごろ唸りながら全幅の信頼を寄せていた。
次々に品物が湧くポシェットには目を丸くする。
魔法のようだ)

…海。光るのか。
はじめて見た。
…星は、水の中にもあるのかな。

(あの水面の星の下に魔物がいるのか。
【野生の勘】で警戒している。
肉の香りでくらくらしているけれど、している)

……これは。知っている。
カレーだ。カレーは好きだ。
……おいしい。
そっちは。知らない匂いがする。
それも。

(ガツガツ食べているけれど、しているのだ)

※肉食です
※大食らいです


フィン・クランケット
ロクさん(f01377)と!

ごろごろしてるの、やっぱり猫さんですねぇと微笑ましく思いつつ
味付け担当、頑張っちゃいますよ!!

ふふふ、よくお気づきですねロクさん…
今回の依頼、チキンを食べると聞いて色々持ってきちゃいましたぁ
ジャジャーン♪
味付け用の香草やカレー粉等に塩コショウ
付け合わせのポテト
スープ入れたジャーとか何でもポシェットから取り出す

夜光虫、きれいですねぇ
ロクさんの呟きに、一瞬きょとんとした後
うふふ、そうですね
海には雪も降るぐらいですから星もありますよ、きっと

警戒に関しては、ロクさんの事信頼しきって

それはカレー味のやつ―ってよく食べますね…!?
負けてられませんっ

※雑食エルフ
※食い意地が凄い




 火を起こし、肉を裂く。下準備はロク・ザイオン(明滅する・f01377)の仕事だ。狩りに引き続きその手際は鮮やかで無駄のない見事なもの。
 そして。
「さぁ、ここからは私の出番ですよ!」
 まな板に鎮座する鶏肉を前にフィン・クランケット(蜜柑エルフ・f00295)の腕が鳴る。
 腕まくりもバッチリ決めるその姿はロクの瞳に頼もしく映り、彼女の料理は初めてなのにも拘らず自然と期待が高まった。
「きっと美味しくしてみせますからねぇ。さて、まずは……」
 調味料を求め手を伸ばした先にあるのはごく普通のポシェット。フィンのトレードマークだ。
 そこから取り出した白ワインで臭みをとって、さらに臭み消しのハーブを詰めて念を押し、あとは軽く塩をふりふり。
「よしよし完璧です!」
 薄化粧の鶏肉を火にくべれば食欲をそそる香りが瞬く間に広がっていくではないか。
「わわ、まだ全然焼けてないのにすごくいい匂い……これは期待大!! ですよ!」
 ロクは匂いにあてられたのか、頷くというよりはもはや頭を振って同意を示した。
 アルコールの蒸発する香り、脂の焼ける香り、ハーブの蒸された香り――全部が一緒になって迫ってきて、お鼻がとても幸せなのだ。
「――フィン」
 親愛と信頼を込め、喉を鳴らす。その音色はやはり猫のようにフィンを絆して。
「……いいにおいがするな」
 そわそわとしたロクの興味がどこに向いているのかは目線を追えばすぐに分かった。
「ふふふ、よくお気づきですねロクさん……」
 ジャジャーン♪
「今回の依頼、チキンを食べると聞いて色々持ってきちゃいましたぁ」
 頭の毛をぴこぴこと揺らしながら調味料を並べ、これはね、あれはね、と丁寧な解説付きで。
「あ、付け合わせのポテトもありますよぉ」
 今度はごろごろとジャガイモが転がってきた。
「それとそれと、もちろんスープもありますから」
 ごとん。スープジャーまでこんにちは。
 ロクの瞳孔はこれ以上ないくらい大きくなって、出てきた品々とフィンの小ぶりなポシェットとを行ったり来たり。
 だってそれはまるで魔法みたいで、だとするとフィンは魔女なのだろうか――そう思ってそっと彼女を覗き込めば弾けるような大きな笑顔。
「わくわくしちゃいますね、ロクさん」
 ああ、やっぱり彼女は。
 陽を生み出す橙の魔女だ。


「海、光るのか」
 それは初めて見る海の顔だった。
「夜光虫、きれいですねぇ」
 そういう名のとても小さな生物が沢山集まって光っているのだとさり気なく知識を授ける姿は子を育む母のよう。
「……星は、水の中にもあるのかな」
 フィンは目を丸くした。水の中の星だなんて考えたこともなかった。あの水面の下はどうなっているか、フィンは知らない。
 ――けれど。
「……うふふ、そうですね」
 フィンは柔く笑んで。
「海には雪も降るぐらいですから星もありますよ、きっと」
 海中プラネタリウムだって、きっと。だって世界は出逢いで満ちているのだから――。

 ちょっと話し込んでいるうちに辺りはすっかり出来立ての香りで満たされていた。
 時折り水面を眺めては警戒の色を示すロクであったが、それも辛うじてといった様子。とにかく言うことを聞かなかったのは鼻のやつで、波の動きを読みたいのに真逆の方向にある肉の存在を何度も知らしめてくる。肉食獣のつらい性質だ。
「んーおいしい!」
 そんなロクの苦労も知らず、警備は彼女に任せると決め込んだフィンは遠慮なしの舌鼓を打つ。
 しかしフィンとて何もしていなかった訳ではない。紙皿の上に並べられたチキン懐石、これらを手際よく拵えてみせたのは紛れもない彼女。
 だから、いただきます前のつまみ食いだって許されたいところ。
「ずるい」
 堪えかねたロクもとうとう居直り、一切の遠慮なしに肉に食らいつき始めた。野性味溢れるその食事風景を見せつけられてはフィンもスイッチが入ってしまう。
 フードファイターさながらの爆速で食事を進める二人は鶏肉に負けないくらい燃え盛っていたとか。

「……これは。知っている」
 香ばしいスパイスの匂い、エキゾッチクで神経を刺激する香り……これは。
「カレーだ。カレーは好きだ」
「そうです、それはカレー味のやつ――ってよく食べますね…!?」
 言い終わる前に平らげられてしまった。
「……おいしい」
 ごっくん。荒く咀嚼した肉は口を満たし、喉を満たし、胃を満たす。
「そっちは。知らない匂いがする」
「焼肉のたれで味付けしたお肉ですよ。焼肉のたれというのは、つまり無敵の調味料です!」
 ごっくん。複雑な味と香りが肉を包んでいておいしい。
「それも、知らない」
「これはガーリックパウダーとチリパウダーで……あ、ちょっと辛いですよ!」
 ごっくん。ピリピリと舌が痺れ、強い香りが鼻をつく。ちょっと苦手かもしれない……いや、でも、やっぱりおいしい。
 次々と皿を空にしていくロク。
「うう、このままじゃ私の分が……負けてられませんっ!」
 それが嬉しくもあり悔しくもあるフィンは、志新たにフォークを握り直すのだった。

 水面は静か――まだ、大丈夫。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

白・ケルビン
【時計塔区】
わたしもう、おなかいっぱいだなぁ
ドーナツでペース配分間違えた……キッテンにあげるよ、とりにく
その代わり、素材はちょうだいね?

!! 調味料的ポーションお探し?
それならこちらをじゃじゃじゃじゃーん!
燃えるようにからーくなるポーションです!えへへ!
…………あ、ごめん間違ったコレ炎でるやつだ

それにしてもキッテン、よく食べるよね……
でも、星空が綺麗なのは同意!学園じゃ建物に阻まれて、ここまでよく空が見えないもんね
潮風に当たりながら星を見て、ああ、なんだか眠くなってきちゃった……
というワケで、おやすみ


すやぁ
(起きない)(疲れてる)(前日徹夜)(潮風が心地よい)(わたしは風だ)(スヤリティ高い)


キッテン・ニコラウス
【時計塔区】
さぁて!お楽しみの鶏肉ターイム!
これの為にお腹を減らした甲斐があったわー
え、ドーナツ?軽いおやつじゃん?

普通に焼くだけだとつまらないわよね
マシロ、何か良い感じの魔法薬持ってたりしなーい?
うん、そのドーナツにひったひたに染み込ませたやつ以外でね

あ、良いじゃない辛いの!スパイスの効いたのもあ゛っ゛つ゛!?
私が焼き肉になるとこだったあ゛っ゛つ゛!!

(なんだかんだ無害な調理が出来て食べ終わる)
あー、お腹いっぱい!星も綺麗!最高のロケーションね!
このまま星を眺めながら寝……
ヤッバ普通に寝かけたわ!!
オブリビオンに寝込み襲われるとこ……マシロ?
ちょっとマシロ起きなさいマシロー!!

アドリブ大歓迎




「さぁて! お楽しみの鶏肉ターイム!」
 キッテン・ニコラウス(天上天下唯我独尊・f02704)の機嫌は上々。
 美しい金の髪は波風に揺れて水面の輝きを返し、小麦の肌は砂浜によく映える。程よく肉付いたしなやかな肉体、均整のとれたこれのどこにあんな量のドーナツが収納されたというのか。
「わたしもう、おなかいっぱいだなぁ」
 対照的にうだつの上がらないのは白・ケルビン(イミビ・f00974)で、ペース配分を間違えたと口を尖らせる。こちらは華奢な身体に見合った収納量のよう。
 ――いや、キッテンと比べてしまっては相手が悪いというものだろう。
 だって、ほら。
「え、ドーナツ? 軽いおやつじゃん?」
 この調子だ。更にまさかのまさか、鶏に向けて胃のスペース確保もばっちりだとか。
「わたしより食べてたのにキッテンの体ってどうなってるの? いいよ、キッテンにあげるよ、とりにく」
 そ・の・か・わ・り。
「素材はちょうだいね?」
「はいはい、分かってるわよ。本当に研究バカなんだから……さ、そんなことよりチキンチキン!」
 彼女たちの集めた鶏は諸事情により既にパーツに解れており調理がし易そうだ。怪我の功名である。
 とりあえずいくつかを適当に火にくべてみたものの。
「うーん……やっぱり普通に焼くだけだとつまらないわよね」
 ケルビンの結晶がわくわくドキドキを察知してキラリと輝く。
「マシロ、何か良い感じの魔法薬持ってたりしなーい?」
「きた!! 調味料的ポーションお探し?」
 待ってましたと鞄をまさぐるケルビンの呼吸は荒く興奮が見て取れる。この娘はとかく研究の類になると涼やかな容姿も形無しなほどに熱を持ってしまうのだ。
「よし、じゃあ出来立てほやほやのコレを――」
「うん、そのドーナツにひったひたに染み込ませたやつ以外でね」
 仁義なき却下。姐さんの言うことは絶対である。
 しかしめげないケルビン。手練れのセールスマンのようにすぐさまプランBを提案する。
「それならこちらをじゃじゃじゃじゃーん! 燃えるようにからーくなるポーションです! えへへ!」
「あ、良いじゃない辛いの!」
 スパイスの効いたこれなら鶏肉にきっと合うわと嬉々として受け取るキッテン。
 さっそく鶏肉に振りまいてみると――。
「あ゛っ゛つ゛!?」
 次の瞬間、彼女は鶏肉に負けないくらい燃えあがった。
 否、正確に言うと燃えあがったのは彼女の残像と、金の毛先。狩猟豹の反射神経は伊達じゃなかった。
「…………あ、ごめん間違ったコレ炎でるやつだ」
「やらかしに対して謝罪の程度が軽くない!? 私が焼き肉になるとこだったあ゛っ゛つ゛!! まだあ゛っ゛つ゛!!」
 確かに避けたはずなのに、微かに残った炎は意思を伴うようにキッテンに纏わりついてくるではないか。
「あ! さてはこれユーベルコーあ゛っ゛つ゛!!」
「はい、キッテン。辛いのはこっちね」
「順番!! 先に!! 消しなさい!! 炎!!」
 花盛りの乙女二人、浜の誰より賑やかだった。


 その後も紆余曲折ありはしたが、なんとかそれなりのキャンプを満喫した二人。
 今はゆったりと食後のひと時を楽しんでいる。
「あー、お腹いっぱい! 星も綺麗! 最高のロケーションね!」
 サラサラとした砂に身を任せ、天を仰ぐ。
 星と夜光虫の薄暗い灯り。
 さざ波と潮風のそよぐ心地よさ。
 膨れたお腹に、程よい疲労感。
 いくら夜襲が近いと言われたって、こんなの――。
「ああ、なんだか眠くなってきちゃった……」
 当然、眠たくなるに決まっている。
「ほんと、このまま星を眺めな、がら……寝……」
 キッテンの囁きも徐々に波音に混じり霞んでいった。
 遠く聞こえる賑やかな喧噪は仲間の猟兵たちのものだろう。なんて頼もしい。ここはもう彼らに任せてしまっても良いのではないだろうか――睡魔の甘い誘惑が目まぐるしく脳内を駆け巡る。

 …………。
 ………………。

「……ってヤッバ普通に寝かけたわ」
 睡魔と重い瞼を振り払って飛び起きたのはキッテン。さすがの委員長である。
「オブリビオンに寝込み襲われるとこ……ってマシロ?」
 反応は返らず、変わりに規則正しい寝息がすやすやと。優しく撫でる潮風と砂浜に温かく包まれながら、彼女はそれはそれは幸せそうに眠っていた。
「ちょっとマシロ起きなさいマシロー!!」
 眠るケルビンの肩を焦り揺さぶるキッテン。
 いつオブリビオンが襲ってくるとも知れないのに眠らせたままではおけない。それと何より単純にずるい。
「んぁ……わたしは……か、ぜ……」
「はぁ!? がっつり寝ぼけてんじゃないわよ!」
 今度はもちもちの頬を摘まんでむにゅむにゅしてやった。
 しかし生憎と昨晩徹夜を決め込んでいたケルビンはまったく起きる気配がなく、段々と可哀そうになってきたキッテンは慈悲深くも少し寝かせてやることにした。
 頬にかかった髪をチーターの尻尾で掬ってやれば、笑って丸まる小さな背。
「――まったく、まだまだ子どもなんだから」
 美しく細む双眸を月明かりが優しく照らす。

 波がさざめき、水面が笑った。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

雨煤・レイリ
【洋燈】で参加
捕まえた鶏、一羽はお腹にキノコや野菜を詰めたり
森で採れた野菜と一緒に串焼きに。
人並みには料理もできるけど、協力して作っていこう
一緒、が楽しいよね

きのこを入れたら美味しいって話は
鶏を捕まえに行った時に一緒になった猫さんに教えて貰ったんだ
ね、出来上がりが楽しみだね

俺も昔はお腹が満たされればそれで充分だったんだけど
最近は美味しいもの色々食べたいなって…ちょっと贅沢になっちゃった
それに美味しいものは一人より、誰かと一緒に味わえるのが嬉しい
炎をみるサラちゃんの目が、キラキラしてるし
奈緒ちゃんにも美味しいって思えて貰えたなら
鶏を捕った甲斐があったし
誰かが楽しそうな姿が見れるってやっぱりいいね


サラ・ティアヘス
【洋燈】で参加させていただきますね

折角ですので、鶏型モンスターの味に舌鼓を打ちたいところ
早速、調理に取り掛かりましょう

「なるほど、きのこを…。それは素敵なアイデアですね」
想像しただけで、少し目が輝いてしまったような気がいたします
不思議なもので、昔は必要なかったというのに、
人の身を得てからは食事の楽しさというものを覚えてしまいました
「確かに、こうした時間を享受できるのも、とても贅沢で、幸せなことです」
中に詰める食材を切ったり、味付けのお手伝いをした後、火の具合を確認
「ああ、ちょうど良さそうですね」
灯にまつわるヤドリガミなので、炎は好ましく
目を細めつつ、肉が焼けるのをのんびり待つといたしましょう


新井・那緒
【洋燈】で参加するわね。

折角だし…すごーく美味しいと評判の鶏、是非とも食べてみたいわ。
お二人とも包丁を持つ手が手馴れているし、お料理は効率良く分担できそう。
「きのこを…それは良いことを聞いてしまったわね」
想像しただけでも美味しそうで、自然と微笑みがこぼれてしまう。
「美味しいものを美味しいって思いながら食べられるのって、とても幸せなことだと思うのよ」
贅沢だって良いじゃない、人生には潤いだって必要だもの。
そんな雑談を交わしながら、お野菜を切ったり…串焼きも作るなら、串に刺したりとお手伝い。

そう、だからね。
とっても美味しい鶏さんを少し食べ過ぎてしまうのだって、仕方のないことだと思うのよ、私。




 海からも仲間の猟兵たちからもそう遠くなく、でも他より少し静かなところ。
 雨煤・レイリ(花綻・f14253)が陣取ったのはそんな穴場。
「よし、ここにしよう」
 後ろを振り返って手を大きく振れば、サラ・ティアヘス(燎火の従士・f05269)と新井・那緒(あなたに笑顔を・f05092)が翡翠色の笑顔で応えた。
「これは良いところですね。さすがレイリ様です」
「本当に。この場所、なんだか不思議と落ち着くわ」
 二人のお眼鏡に適ったのが嬉しくて、レイリの大きな尻尾がふわりと揺れる。尻尾に巻き上げられた砂が風に舞うことなくさらさらと浜に還っていったのは、ここが風の少ない岩陰だからだろう。
「――では早速、調理に取り掛かりましょうか」
「ええ、折角だものね。……でもどう調理しようかしら」
「はい、俺から提案。お腹にキノコや野菜を詰めたのと、あとは串焼きなんてどうだろう」
「それは……ああ、聞いただけでお腹が空いてしまいそうです」
「ふふ、そうね。とっても美味しいお料理ができそうだわ」
 そうと決まればさっそく包丁を握る三人。噂に聞くすごーく美味しい鶏を前に、浜辺のお料理会が幕をあけた。


 丸々と肥えた鶏も手際の良い三人にかかれば瞬く間に小さな肉の塊に。レイリが森で狩ってきたキノコや野菜たちも可愛らしいサイズに切り揃えられ、ボウルの中で次の工程を待っている。
「鶏のキノコ詰めは俺に任せて」
 なんでも、鶏狩りのときに一緒になったとある猫に極意を聞いたのだとか。
「なんかね、入れる順番や相性があるんだって」
 親切な猫の言葉を思い返しながらキノコを見繕うレイリの瞳は真剣そのもの。なんと言っても、この一品の味はすべて自分の手にかかっているのだから。
「なるほど、きのこを……。それは素敵なアイデアですね」
 エメラルドの瞳に炎を映したサラは新たな知見に瞳を輝かす。
「本当に。それは良いことを聞いてしまったわね」
 那緒も細く美しい指先で肉や野菜を串に指しながらなるほどと頷き、心のノートに書き留めた。本当に想像しただけでも美味しそうで、那緒の優しい顔にどんどん幸せが広がっていく。
「――美味しいものを美味しいって思いながら食べられるのって、とても幸せなことだと思うのよ」
 食べ物がそこにあり、それを活かす知識と術を持っていて、それを美味しいと思う心や余裕があること――当たり前のようで決して当たり前ではない。那緒はいつも通り穏やかな顔をしていたが、言葉には確かな芯があった。
「俺も昔はお腹が満たされればそれで充分だったんだけど……」
 今は少し贅沢になってしまった、とレイリが眉を下げて笑う。美味しいものを色々食べたいと思うようになってしまったのだと。
 そしてなにより――。
「それに美味しいものは一人より、誰かと一緒に味わいたいなって」
 そう、今みたいに。
「確かに、こうした時間を享受できるのも、とても贅沢で、幸せなことです」
 二人の言葉をじっくりと咀嚼してからサラが頷く。彼女の瞳は焚火に優しく揺れ、己が一部の炎を懐かしそうに眺めていた。
 ヤドリガミたる彼女の本質は道具――すなわち、食事を必要とするものにあらず。しかしこうして肉体を得、ヒトに混じるようになって、いつしか食事の楽しさというものを覚えたのだ。
「あらあら、贅沢だって良いじゃない、人生には潤いだって必要だもの」
 少し生真面目になった雰囲気を和らげたのは、那緒の零した笑い声のヴェールだった。
「ほら、すごく美味しそうな匂いがしてきたわ。これをたくさん食べて、美味しいって皆で笑って……たくさん贅沢しちゃいましょ」
 鍵盤の上を転がるような美しい音色で二人に語りかけ、ね、と小首を傾ぐ。それは抗うことのできない天使のお誘いで。
「――那緒様にそう言われてしまっては、かないませんね」
「そうだね。そもそもこんなにいい匂いを前に“マテ”だなんて俺には無理だよ」
「本当にとってもいい匂いがしてきたわ。もう食べられるかしら」
 気付けば香ばしい匂いが辺り一帯に充満しており、料理の完成を告げていた。
「ああ、ちょうど良さそうですね」
 焚火の具合を確認したサラの頬が緩んだところを見ると出来は上々なのだろう。見守るレイリと那緒も期待に目をみひらいている。
 さぁ、夕暮れ料理教室はもう解散――プログラムは星空ディナータイムへ。


「わ! 美味しい……!!」
「まぁまぁまぁ、なんて美味しいのかしら」
 料理を口にすれば次々にあがる感嘆の声。驚きながらも幸せそうに頬を包む二人の女性を眺め、レイリも安堵し喜びを頬に浮かべた。
「二人が喜んでくれたなら俺も嬉しいよ。……誰かが楽しそうな姿が見れるってやっぱりいいね」
 例えば今日は、料理の味に思いを馳せて瞳を輝かせる洋燈の君や、料理の美味しさに頬を緩ます天使の君を見ることができた。なんて幸せなことだろう。
「鶏を捕った甲斐があったなぁ」
「そう言うレイリ様は召し上がらないのですか?」
「まさか。ちょっとしたレディファーストだよ」
「あら、それじゃあレディな私から紳士な貴方にお裾分けよ」
 那緒が丸焼きと串焼きを取り分けてレイリに渡してやる。実はもうお腹がなる寸前だったレイリは喜びに耳をはためかせ、礼もそこそこに肉を口へ。
「……!! おいしい!」
 香ばしい鶏肉にはキノコの香りが移り、弾力を残しつつも柔らかな肉質は舌に優しくまとわりついて口の中がいつまでも幸福で満たしてくれる。
「やはりあのキノコは大正解でしたね」
「ふふ、レイリさんと猫さんに感謝しないとね」
 三人仲良く紙皿をいっぱい並べ、頬を膨らませ――なんて幸せで平和な光景だろう。
「へへ」
 ふと笑い声が落ちた。レイリだ。
 サラと那緒は顔を見合わせたあと、レイリを見て首を傾げる。
「ご、ごめん。なんか楽しくって、幸せだなって思ったら自然と声が出ちゃった」
 恥ずかしそうに、しかし笑顔を隠さぬレイリの口元には犬歯が輝いて。
 淡い月光はサラと那緒の柔らかな表情を照らし、空気は優しさで満ちている。
「謝らないでください」
「ええ、私もとても幸せな気持ちよ」
 頼もしい仲間と共にここに在り、五感を共有できて。
 そう、だから――。
「とっても美味しい鶏さんを少し食べ過ぎてしまうのだって、仕方のないことだと思うのよ、私」
 新たな串焼きに手を伸ばした那緒が言う。
 こんな素敵な夜だもの、皆でたくさん笑いながら、今日はもう少し贅沢をしてみようか。

 揺れる水面に夜光が瞬き、空にはひとつの星が流れた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

無明・緤
【SPD】
罠(鶏の焼ける匂い)を仕掛けて
オブリビオンを待つ

他の猟兵達の近くに陣取って鶏の調理
警戒の目は多い方がいい
それに、大勢で食べる方が旨いだろ

森で採れたものを鶏の腹に詰めて鍋で丸焼きに仕立てる
茸の他にネギみたいな草やパプリカ代わりの赤い木の実も入れた
ちゃんと見つけてきたんだぜ(褒めろ。と髭を動かし)

鶏を焼く間にUC【エレクトロレギオン】
小型機械兵を夜闇に紛れて岩陰や上空に静かに展開し
周囲を哨戒させる

焼けたら切り取り味見
一番美味そうな所はバディペットにやる
おれは腹八分にとどめて奴が来るまで海でも眺めてるよ
…夜光虫は刺激で発光するって聞いた
石で水切り遊びして、光の軌跡を夜の海に描いて楽しもうか




 無明・緤(猫は猫でしかないのだから・f15942)はここでも決して気を抜かなかった。
「よし、ここがいいだろう」
 周りには仲間の猟兵たち。波打ち際までの多少の距離はもしものときの命綱になり得よう。
 警戒の目は多い方がいいし、背を預けられる仲間は近い方がいい。
 それに――。
 大勢で食べる方がきっと美味しいだろうから。

「さて、そんなに時間もないからな。早速取り掛かろうか」
 視線を上げれば美しい海、見上げれば美しい空。そんな魅力的な景色を振り切ることができたのは猟兵としての使命感と――。
「さすがに腹が減ったな」
 この限界寸前の空腹のおかげである。
 鶏を狩り、おやつのドーナツも食べず、次いでは未知を求めて森を探り。
 ここまでずっと休まずにきたが、その甲斐あって緤の前にはたくさんの食材がひろげられていた。
 こだわりの茸は勿論のこと、ネギみたいな草やパプリカ代わりの赤い木の実まで、全部全部この鼻で嗅ぎ付けたのだ。
 豪華で目に楽しい食材の数々が仲間たちの羨望の対象になるのはごく自然なことで、満更でもない緤は得意になって食材と調理の知恵をお裾分け。
 ピーンと張った髭が何度も誇らしげに揺れ、黒猫の艶々とした毛並みは暫し月明かりのスポットライトを浴びたのだった。


「いってこい。よろしく頼むぞ」
 念には念を。緤は小型の哨戒機をいくつか召喚し、浜辺を隈なく警戒させる。
 その間に自分は鶏を焼き、匂いを以ってオブリビオンを誘い込むのだ。まったくもって無駄のないプロの仕事である。

「そろそろ焼けたか」
 様々な食材の織り成す芳醇な香りが風に乗り、敏感な猫の鼻を擽った。さすがの緤も辛抱堪らない。
 猫の手で器用にも鶏を切り分ければ熱を持った蒸気がむわりと舞って小さな顔を覆う。
 一番脂の乗った美味そうなところはバディペットの名もなき君への貢ぎ物に。
「まだ熱いからな、ゆっくり食べるんだぞ」
 ごろごろと喉を鳴らして上機嫌な彼女に緤も表情を和らげ、やっと自分もひと口。
 見立て通りの味に満足しながらも腹八分目とした決意は決して反故にはせず、少し胃を満足させたところで食を止め、波打ち際に近づいていった。
 手頃な石を見繕って海に投げれば、鋭く波を切る石に刺激された夜光虫たちが競うように発光する姿が目に美しい。
 それを不思議そうに眺めていた三毛猫がふいに海に飛び込もうとするのを優しく制しながら、緤は鋭利な眼差しで水面を眺む。

 どこもかしこも美味そうな匂いでいっぱいだった――戦いの時は、遠くない。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『貝塚の女王』

POW   :    おいしいおいしい、モットチョウダイ
自身からレベルm半径内の無機物を【肉を溶解する水流】に変換し、操作する。解除すると無機物は元に戻る。
SPD   :    痛いトお腹ガへっちゃうモン
自身の身体部位ひとつを【無数の貝殻でできたドラゴン】の頭部に変形し、噛みつき攻撃で対象の生命力を奪い、自身を治療する。
WIZ   :    アナタもトッテモおいしソウ!
対象のユーベルコードに対し【精神力を弱らせる邪光】を放ち、相殺する。事前にそれを見ていれば成功率が上がる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

●狩る者は
 最初に気付いたのは誰だっただろうか。
 ――いや、きっと全員同時だった。

 それは水面から顔を出した岩の上に座っていた。
 そう、ただ座っていただけ。
 それでもその異常なまでの食欲はもはや殺気の域に達しており、猟兵たちが気が付かないでいられるものではなかったのだ。

「わぁ! 今日ハ晩御飯がイーッパイ」
 少女のように無垢に笑って、美しく歪んだ唇を濡れた指先でなぞる怪物。
「……でも、こんなニたくさん食べラれるカナ?」
 ――あぁ、ソウだわ。
「おいしソウなコから食べちゃイまショウ」
 ソコのアナタもイイし、アッチのキミもおいしソウ。あのニオイもキになっちゃう。
 アア、モウ我慢デキないの。
 
 たぷん。
 悪食の女王が海に消えた。
 ――急いデ行くカラ、待っててネ。

 女王は今に浜辺の猟兵たちに迫るだろう。
 彼女は難敵であるが多くの餌を前に判断力を欠きつつある為、その優柔さを利用すれば上手く立ち回ることが出来るかもしれない。
 
 優しき水面が暴君に泣いて飛沫をあげる。
 ああ、願わくば美しき浜辺に静かな夜が戻らんことを――。
無明・緤
残りの鶏を咄嗟に咥え
匂いを振りまくように敵の方へ駆け出して囮になる
寝てるやつもいた筈だ、今のうちに起きてくれよ
【逃げ足】活かし波打ち際を命がけの追いかけっこ
捕まえてごらんなさい、なんてな!

…沢山運動したら腹が減るだろ、日中のおれみたいにな
貝殻ドラゴンに変化して距離を詰めてきたら
近くに隠したからくり人形へコマンドを飛ばして
【操縦】/【スナイパー】モードに移行、貝塚の女王に標的設定
そして噛みつかれる寸前で
UC【猫をこころに、ニャンと唱えよ】を使って回避試み
適当な味方の元にテレポート!

狙いは飯が目前で消えて惑うその一瞬
自慢の髭をふるわせて人形へ発射指示
フック付きワイヤーで痛い一撃と拘束を食わせてやる




 ――来た!
 無明・緤(猫は猫でしかないのだから・f15942)は食べ残しの鶏を口先で掠め取ると、敵へ向かって駆けだした。
 風を切り脅威へとひた走る彼の脳裏には浜にあった仲間の姿が写真のように鮮明に蘇る。
 彼らはあそこの岩陰に、彼女たちはあそこにいて……そうだ、一人は眠っていた。ならばどうかこの隙に起きてくれと自らの危険も顧みず祈りを捧げる緤。
 夜光に照らされた漆黒の毛並みは高尚に輝いていた。

「ワァ、アナタ、猫ってやつカシラ?」
 果敢に対峙する緤の姿は思惑通り女王の目に留まる。
 まだ水の滴る身は艶めかしく照り、獲物を前に恍惚とも言える表情を浮かべては食欲という名の殺気を放っていた。
 くんくんと鶏の匂いを楽しんではいるが、紫煙の瞳はまっすぐに緤を捕らえている。
「ふふ、小さくテ可愛いノネ。……胃ノ準備運動にはもってコイだわ」
 緤の毛が激しく逆立だった。
 動物としての本能が、目前のソレは決して相容れぬ相手であると訴えかけているのだ。
「……いいだろう。じゃあこう言ってやろうか――」
 “捕まえてごらんなさい”ってな。
 刹那、緤は砂を蹴り波打ち際を駆けた。
 最後に見たのは女王の無邪気な笑み。きっと嬉々として自分を追いかけてきていることだろう。
 故に後ろを振り返る余裕などない。ただ持てるだけの力、否それ以上を以って全力で浜辺を走り抜けるのみだ。
「猫はすばしっこいッテ聞いたケド、ホントね。でも――アタシ、もう欲しくなっちゃッタ」
 元より空腹を拗らせた女王であったので餌を長く追う気概もなく。
「いっただっきマース」
 伸ばしたのは右手――いや、正確には“右手だったもの”。
 それは今や貝殻龍の頭部をかたちどり、本来であれば至ることのない領域にまでうねって突き進み緤を目掛けて食らいつかんとす。
 未だ全速力で逃走を続ける緤の背すら、その尋常ではない食い意地の気配を感じ取っていた。
 ――そろそろか。
 濡れた砂を蹴り、勢い良く跳び上がる。高く、高く。もっと高く。
 そして空中で身を翻し、まみえた龍の首に叫んだのだ。
「お前の勝ちだ! 味わって食べろよ」
 緤の言葉が届いたかは知れない。
 分かるのは明確な食の意思。
 龍の口は、貝がひらくようにぱっくりと大きくあいて緤を迎えんとしている。
 小さな猫の体があそこに収まるまであと1秒もないだろうという、その時だ。
「うにゃ~お」
 猫がひとつ、可愛く鳴いた。
 それを哀れな子猫の断末魔と信じた龍は勝利に奮い立って大口をとじる。
 
 ――しかし。

「!?」
 女王は困惑した。
 彼女の感覚が捕らえたのは紛れもない“無”であったのだ。
 ああ、美しい顔が不機嫌に歪んでいく――。
「何デ……ッア!!」
 次の瞬間、女王の身体は大きく弾かれ、水面に沈んだ。

「猫のお味はいかがだったかな?」
 浜辺から聞き覚えのある声がする。
 大きな月を背にし無機質に輝くロボット、そしてその足元に佇むシルエットは――緤だ。
「ッ! アナタっ、……どう、シテ!」
「どうもこうもないさ。お前はおれに逃げられ、コイツに殴られた。ただそれだけのことだ」
 ピンと張った髭を月光が滑り、消えていく。
「――どうしても知りたければ、答え合わせくらいはしてやらんでもないぞ」
 逆光に隠れた緤の表情は窺い知れない。
 悔しさに唇を噛む女王の表情こそが、勝負の行方を物語っていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

バル・マスケレード
……食い意地張った宿主のせいでちと腹のもたれる感覚が伝わってきてたトコだ。
食後の運動ってやつと洒落込もうじゃねェか。

一面に広がる海、地の利は敵にある。
下手な反撃は隙を晒すだけ……まずは剣を構えての【武器受け】に徹する。

美味そうな「餌」に目移りして、俺達から注意が逸れた時が好機。
仮面である俺自身を【投擲】して、女王サマに被せてやるのさ。
UCによるほんの数秒の意識の乗っ取りで、動きを止める。
他の猟兵がドデカい一撃かますにゃ十分な隙だろ?
手を借りられねェ時は、宿主に剣でも突き立ててもらうとすっかね。

ヒハハッ、被られ心地の悪ィ体だ!
ほら、食えるモンなら食ってみろよ!
腹ァ壊しても知らねェけどなァ!!




「食後の運動ってやつと洒落込もうじゃねェか」
 闇に紛れ、バル・マスケレード(エンドブリンガー・f10010)が動き出す。
 食い意地の張ったどこかの誰かのおかげで少々肉体のコンディションが悪いが、それもこの運動が解消してくれるだろう。
 おおよその地形は把握している。もちろんその活かし方も、利が敵にあることも。

「なァ、オンナってのはどうしてこうも食いたがるんだ?」
 女王と対峙したバルがまず口にしたのは煽り文句、或いは純粋な疑問。
「さァ。知らナイわ。食べてナイとお腹ガへっちゃうダケだモン」
 退屈そうに女王が言う。
 彼女にとって食事は唯一。食欲こそが還ったこの身体に与えられた唯一の使命だったのだ。
「ハッ! 違いねェな! ほらよ、腹ごしらえでもしやがれ」
 貢ぎ物は丸々と肥えた鶏一羽。それは女王を前にこれ以上ないくらいひれ伏し、寄せては返す波の飛沫を浴びている。
「……まぁ。ドウモありがトウ」
 ふ、と細まった紫煙の瞳はバルを鋭く射って値踏みし、そのまま数秒。
 華奢な生物の肉体に脅威は無いと判断すると、ついに鶏へと視線を移し生唾を飲み込んだ。
 
 ――が、次の瞬間。
 
 女王の視界から鶏肉が消えた。
 ああ、なんたる不敬。バルが蹴り飛ばしたのだ。
「なァんてな! ヒハハ! 餌が欲しけりゃ取ってこいよ。犬ッコロみてェにな!」
「ッ! このっ!!」
 女王の大きな尾ひれがバルを押し潰さんと振り下ろされる。
 怒り任せのこの一撃を辛うじて漆黒の鎖で受け止めたバルは、規格外の重量に女の身体が軋むのを感じ。
「っと……こいつァ重てェなァ! やっぱ食いすぎなんじゃねェか?」
「……!! アナタ、ちょっと失礼ネ。――でも、近くデ見たらアナタもとっても美味しソウ」
「……悪ィがこれは簡単に食わせらんねェ代物でなァ!」
 ――てめぇがその気ならば全力で抵抗してやるぜ。
 だから先に鶏で腹を満たした方がお前の為だとバルが甘く囁いた。
「ほら、波に呑まれて海に沈みかかってやがるぜ」
「……ッ」
 空腹という指令に忠実な女王は思わず振り返ってしまう。
 その焦燥に歪む横顔こそがバルの求める好機とも知らず――。
「!?」
 女王の身体は彼方にある鶏を見つめたまま動かない。
 つりあがった目と三日月に笑う口元とで鶏を見つめたまま、動かない。
 バルによる肉体支配――それは一瞬の出来事だった。

「離ッ、レロ!!」
 徐々に身体の自由を取り戻す女王。
 まずは口、そして手。
 不快極まる顔面の違和感を引き剥がそうとしたその刹那。
「――カッ、はっ……!!」
 女王の腹に突き立てられたのは細身の短剣、突き立てたのは同じく細身の女。
 闇に呑まれたその顔は終ぞ言葉を発することなく、淡々と職務を果たし、女王から離れていく。
「ヒハハッ、被られ心地の悪ィ体だったぜ!」
「……グ、ァ……オ、マエラ、二人、いたノネ」
 喘ぐ女王が落ちた視線を戻したとき、彼らは最初と同じ一人に戻っていた。
「なァ、まだ“俺”が美味そうに見えるか?」
 仮面が笑う。
「ほら、食えるモンなら食ってみろよ! 腹ァ壊しても知らねェけどなァ!!」
 星々の瞬く夜空に、夜光の踊る水面。
 美しいこの浜辺には異質ともいえる、甚振りにも似た笑い声が響き渡った。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フィン・クランケット
ロクさん(f01377)と!

むむ、出てきましたねっ(まだ食い意地汚く鶏齧りながら)
ごくんっ、よし、おなかいっぱい
エネルギーフルチャージっ!行きましょう!
ロクさん、どうかご無理なさらず!

ロクさんは前衛が得意とのことでお任せし、自分は中後衛からサポートに
先ずはUCを発動
海の中からヒット&アウェイされたら大変ですし、海を凍らせて帰り道と水流の手段を断たせて頂きますね
ついでに、まだ身が濡れてるはずの女王様も凍らせ、動きを多少なりと阻害するように

確かに一部では(納得してないけど)もちもちだの、ぷにぷにだの言われる私ですがっ
だからって食べさせてあげたりはしませんよ?
あ、もちろん、ロクさんのこともっ!


ロク・ザイオン
※フィン(f00295)と

(もぐもぐごくん)

……フィン。後ろ任せた。

(焼けた肉をいくつか掴み、片手に山刀。
フィンが凍らせてくれた海を【地形利用】し強襲。
力を削ぐ光は、こちらが力を使う直前に放たれる筈だ。
仕掛ける前に敵の眼前に肉を放り投げて気を反らす)

……。
燃え落ちろ!!

(これは今無駄にしてしまったお肉のぶん!
髪を解き「轟赫」39本を束ねて一つに、山刀に纏わせて斬りつけ【2回攻撃、傷口を抉る】)




 ロク・ザイオン(明滅する・f01377)の瞳は浅瀬の女王を捕捉し、鋭さを増す。
 遠いとも近いとも言い難い距離。ともすれば、女王ならば一瞬で詰められるかもしれない距離。
「むむ、出てきましたねっ」
 横からぴょこんと芽吹くように現れたフィン・クランケット(蜜柑エルフ・f00295)は口元こそ食に割けど、女王に注ぐ視線に隙は滲まない。
 二人は言葉なく、しかしお互い示し合わせたように視線と決意を交え、頷く。
 
 ――ごくり。
 
 一緒に最後の鶏肉を飲み込めばエネルギーはフルチャージ。
「よし、おなかいっぱい。行きましょう!」
「……フィン」
 一歩先にいたロクがフィンを振り返る。
「後ろ任せた」
「……はい! ロクさん、どうかご無理なさらず!」

 フィンはやや高台に位置取り、戦場全体を広く視野に収めていた。
 そして考える。
 地形の活かし方、ロクの活かし方を。
 海の制し方、女王の制し方を。
「――よし! ロクさん、道を作ります!」
 ロクは振り返らない。
 だって道は前に出来るものだから。
 だってフィンを信じているから。
「これは、あなただけの氷樹の森です。あなたの狩りをまた見せてくださいね、ロクさん」
 フィンが夜空に手をかざせば、呼ばれた雪花がはらはらと舞い。
 地の季節を歪め割り出るのは氷の大地。
 海へ向かうほど高く鋭く伸びる氷道はロクを誘って輝きを放ち、踏み込んだ彼女を驚くほどの暖かさで迎えた。
 空を舞う雪の花々も続くように氷の大地へ降りてきて、その身を荘厳な大樹に変えていく。
 それはさながら――。
「氷の森だな」
 途端、フィンの動きが俊敏さを増した。
 ここには足を取る砂もない、纏わりつく海水もない。
 あるのは友の育む森だけだ。

「痛い……ドウシテ。何デ。お腹ガ空いたヨ……」
 小さな世界に生きてきた女王は森というものを知らなかった。
 空を舞う花も、知らぬうちに身に纏わりついていたこの透き通る氷も、すべてが理解の及ばぬことだった。
 そんな中、ひとつだけ確かなこと。
 こちらに駆けてくるオレンジ色の光のような何かが己の“餌”であることだ。
「寒くテ、痛くテ、お腹ガ……お腹、ガ……」
 相次ぐ猟兵たちの攻撃を受けた女王はすでに満身創痍で、今は自ら狩りに行くことも叶わない。
 しかし今にあの餌がここに聳え立つこの氷の崖から降ってくるだろう。

 ハヤク! ハヤク!! ハヤク!!!

 待ちきれない女王ははしたなくも大口をあけ、口の端からは粘度の高い涎が垂れ落ちた。
 ハグ、ハグ、と小刻みに身を乗り出す様は痙攣のようで、最初に抱いた彼女の印象とは程遠い。
 そして血走って赤みを増した紫煙の瞳がついに、そう、ついに餌の姿を捕らえたのだ。
 
 崖から勢いよく飛び出した餌は月光を背負い、重力に身を任せて落ちてくる。
 女王にとってこれは最後のチャンス。逃せばこの身は空腹に負けてしまう。
 故に女王は持てる力のすべてを邪光に託し、餌を迎えた。

 バクン!!
 ――アア、美味しい! ナンテ美味しいの!!
 
 女王は気付かなかった。
 欲を満たす己の真上に、新たな影が落ちんとしていることに。
 華奢な影の背には轟轟と燃ゆる赫。立派な鬣を携えた獅子にも見えるそれは――森からいずる狩人だった。
「燃え落ちろ!!」
 ロクの指令を受けた轟赫が一斉に放たれる。
 炎の鬣が照らし出した女王は、あろうことかまだ食に気を取られ恍惚としているではないか。
「ア……熱……美味し、イタ……イ、あれ、ナン……で」
 胃に収まった鶏が食欲を抑え、やっと痛覚を呼び戻す。
 しかし時すでに遅し。
 砂浜に横たわった肉体は徐々に炎に蝕まれ、美しい鱗も歪んで剥がれ落ちていく。
 煌々と輝くロクを見上げた瞳も虚ろに揺れては夜光の光を宿すのみである。

「ロクさーん!」
 終焉を察したフィンが前線へと駆け寄った。
「……フィン、まだ危ない」
「だーいじょうぶですってばぁ!」
 これでもいっぱしの猟兵ですから、と調子良さげに女王を覗き込むフィン。
 はく、はく。血に濡れた唇が、動いた。

 ――アナタ、柔らかくて美味しソウね。

「ギャッ!!!」
「だから、まだ危ない」
 飛びのいたフィンを片手で庇いながら、ロクは瞳で女王を制止する。
「たっ、確かに一部ではもちもちだの、ぷにぷにだの言われる私ですがっ!」
 ロクの肩越しに抗議するフィン。
 自分ではもちもちでもぷにぷにでもないと信じているし、食べさせる気もないのだ。
「あ、もちろんロクさんのことも食べちゃだめですよ!」
「……ふふ、大丈夫。本当ハ……もう食欲が湧かないノ。身体もモウ動かないシ」
 これは終わりの合図だと、女王は知っていた。初めてではなかったから。
 諦観を感じ取ったフィンとロクは最低限の警戒を残し、見守るように女王を見下ろしている。
「アタシ、また還る、……のね」
「……ええ、そうです」
「――ねぇ、お願いガあるノ」
 それは食欲以外に女王が持った初めての欲だった――否、その瞬間から、それはもう女王ではなかったのかもしれない。
「なんだ」
「…………終わらせテちょうだい」
 ――フィンとロクが再び視線と決意を交え、頷いた。


 君さやかの浜に季節外れの雪が降る。
 しんしんと降り注ぐ雪は波打ち際に横たわる人魚に触れて、爛れを覆った。
 全部全部やさしくくるむ。痛み、苦しみ、悲しみまでも。
 新雪のドレスを纏う人魚の身体には一筋の光にも似た炎が寄り添い、交わり燃えた。
 全部全部やさしく溶かす。痛み、苦しみ、悲しみまでも。
 そうして人魚は海に還った。
 炎と氷と共に帰った。
 
 ――アリガトウ。 

 星も、月も、水面も砂も――みんな揃ってさやかに笑う。
 人魚の話はこれでおしまい。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年07月18日


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#アックス&ウィザーズ


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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


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※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はニキ・エレコールです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


挿絵イラスト