11の怪物『バシュム』
~エンドブレイカー!・滅びの大地東端~


「あれは……何だ!?」
 数多のアビリティを操る屈強の冒険者達が、驚きの声を上げる。

 それは、空中に浮かぶ巨大な赤い蛇であった。
 ここはかつて大魔女スリーピング・ビューティが支配していた「滅びの大地」の東端……近年では幾つかの都市国家が復興し、繁栄を迎えようとしているが、それでもこの地は変わらず危険である事に変わりはない。冒険者達も、危険な魔獣や、万能の魔神エリクシルとの遭遇すら覚悟しての探索行であった。

 だが、歴戦の彼らは即座に理解した。
 あの怪物は、この世界に居てはならないものだ。

 無論彼らは知る由もなかったが、その蛇の名は『バシュム』という。
 万能の魔神エリクシルを従える『11の怪物』で唯一、エリクシルを創造する力すら持たぬ無能。
 できることといえば、ただ「毒液を吐く」事のみ。
 だがバシュムは、ただそれだけで、11の怪物の頂点に君臨しているのだ。

 バシュムがゆっくりと口を開く。
 即座に冒険者達が息絶え、水は腐り、風が止み、土が崩れ落ちる。
 とうの昔に大地に姿を変えた筈の「大地母神」の悲鳴が聞こえる。
 この日、バシュムの毒により、世界は終焉に至る病カタストロフを注ぎ込まれたのであった……。