【1:1】堅香子の声
セロ・アルコイリス 2020年5月11日
*
晴れた空はどこまでも高く。
吹き抜ける風は、どこかで咲いた梔子の香りを運んで来る。
空に届けと広く枝を伸ばした大樹の幹は、大人が三人で囲んだって足りやしないくらい。
その枝のいちばん高いところに設えられた、ツリーハウス。
いつかの旅人がしばらく暮らして、そして去って行ったらしい。
そのツリーハウスを見上げる枝の上に座って、ひとを待つ。
遠く望む山々では、きっと堅香子が花開いているのだろう。
*
速度は無理なく、ごくのんびりと。
夜風が吹いたら、きっとおしまい。
お相手は約束済の。
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境・花世 2020年6月1日
たまも助けてくれたの? ありがとうね、うん、ぜんぜんだいじょう――(やさしい申し出にはたと口を噤む。花の眸がみるみる楽しげにきらめいた)ぶ、じゃないかも。背中に乗っけて空に近い場所まで攫ってくれる? 魔法使いなシーフさん。
セロ・アルコイリス 2020年6月2日
あんたが望むなら、空の果てまでだって奪い去りますよ、華の勇者サマ。――なんてね。(軽く笑って見せたなら、腰に下げた鍵をひと撫で。風の魔力を脚に纏って枝の上で背を向けて屈み)はいどうぞ。竜にゃなれませんが、青い鳥が空へとお連れしますよ。
境・花世 2020年6月5日
(青い鳥の背にためらいもなくぴょいと乗り込む。勇者の重さなんかでは揺るがない頼もしさに、緊張の高鳴りは高揚へと変わっていく)
(それはきっとワクワク、という軽快な音を立てて)
境・花世 2020年6月5日
いいよ、セロ、飛んでって、――連れてって!
セロ・アルコイリス 2020年6月7日
(太い枝が大きくしなるほど強く蹴ったなら、広げた枝葉が視界の下方に飛んで行く。耳許を風が過ぎて、そして)
(木漏れ日が拓けて青空が視野いっぱいに広がった。見下ろしたなら、少し下にツリーハウスの屋根が見えるだろう)
境・花世 2020年6月9日
(青い鳥の背から見晴かす世界は眩く広大で、どこまでも境界線なんてなくて)
(さあと頬を撫ぜる風には甘い花のにおいが清々しく、馨る)
――セロ、すごい、この景色ぜんぶ、ふたり占めだ! すごい宝物!
(やっぱりきみは偉大なシーフだと、攫われた獲物がきらきらと笑う)
境・花世 2020年6月9日
(宙にいたのはきっと、然程長くはない時間。けれどそれはあざやかに眸へ焼きついて、やがてふうわりとツリーハウスの前に降り立っても、興奮はなかなか冷めやらない)
ふふ、わあい、ここからの眺めもきれいだねえ。中に入ってもいい?
セロ・アルコイリス 2020年6月18日
(軽い足取りでツリーハウスの前へ降り立って、勇者を降ろす。あかるい声で告げられた称賛に口角を緩めて)どうぞどうぞ!(扉を開けて彼女を招き入れた。大きなひと部屋。左手にはまた扉。正面には大きく壁を切り抜いて窓をとってあるので、覗き込めばまた眼下に景色を臨むことができる)(あまい花の香がする)
セロ・アルコイリス 2020年6月18日
掃除はしたんで安心してくださいね。どきどきは落ち着きました? 飲み物は紅茶でいいです? おれはミルク入れますけど、花世はなにか入れます?(彼女以上に特別製なのだろう人形の心臓はことりとも音を立てぬまま)
境・花世 2020年6月20日
紅茶で、なんにもいれなくてだいじょうぶ。わあ……!
(招かれるや否や大きな窓に駆け寄って、雄大な景色に見入っている。清冽な風に髪が靡いて、それから薄紅の花もさやさやと揺れていた)
境・花世 2020年6月20日
ずっと見ていたくなっちゃうなあ。セロがアックス&ウィザーズに住み着いてるのは、こういう景色がすきだから?
(窓の外を眩しげに眺めたまま。背後でお茶を淹れる気配がしていて、どこかくすぐったいような心地がした。きみの場所にいるのだと)
セロ・アルコイリス 2020年6月21日
はーい、了解です!(扉の向こうに消えて、用意したティセットを窓の傍のテーブルに置いて、紅茶を淹れて)(同じように窓の向こう側に目を細めて)
セロ・アルコイリス 2020年6月21日
綺麗でしょ? ええ、好きなんです。ただアックス&ウィザーズにずっと居る理由は……まあ、師匠と一緒に過ごした世界だから、ですかね。
(かちゃりとティカップを置いて、どうぞと席へ彼女を促して)
花世はずっとUDCアース、ですか?
境・花世 2020年6月22日
うん、わたしはUDC組織の監視下に置かれてるから、基本的にはあっちにいないといけないんだ。猟兵仕事の名目でよく脱走しちゃうけど!
(呼ばれて席につくさまは、花びらがふうわり舞い降りるようなかろやかさで)
(いいにおい、と片方しかない眸をほそめて湯気立つ杯を傾けた)
セロ、師匠がいたんだねえ。どんなことを教えてもらったの?
セロ・アルコイリス 2020年6月23日
かんしか。……監視下。(変換するのに少し時間が掛かった)(一幅の絵のような立ち居振る舞いの彼女の対面の椅子に腰掛けて、己の分にミルクを足す)
そりゃまた……物騒ですね。なんでか、ってのは、訊いても?
セロ・アルコイリス 2020年6月23日
おれは師匠に魔法を教わりました。
おれが今こうして猟兵として魔法使いやれてんのは、師匠のお蔭です。
境・花世 2020年6月24日
うん? だってわたしのこれ、邪神だからね。猛獣注意みたいなかんじ。
(右の眼窩を埋める大輪の牡丹を指して、からりと答える。道端に偶々咲いていた花の名を教えるくらいの、なんの衒いもない重さで。ゆえにすっかりと興味はきみの話に移ってしまったらしい)
境・花世 2020年6月24日
魔法使いの弟子! わあ、セロがいろんな属性の魔法を使えるの、だからだったんだね。師匠はきみに、どんな風に教えてくれたのかな。厳しい修行の日々だった? 楽しかった?
(そう付け足したのは、白い頬に浮かぶ色がとても柔らかだったから)
セロ・アルコイリス 2020年6月27日
なるほど、邪神。(違う世界には違う理があるものだ。興味深げに肯きつつ)
……王さま、綺麗なのにな……。(ぽつり、呟く。そこに彼女の苦痛の有無など察せられるほど『出来て』もおらず、ただ純粋に)
セロ・アルコイリス 2020年6月27日
へへ。実は魔法らしい魔法使えるようになったのは結構最近なんですけどね。
師匠にゃ魔法を教えるってテイで生き方を教えてもらった気がします。師匠、魔法は使えるのに教え方すげー下手でしたから。(へらりと笑って、魔力浴びたマフラーと鍵に触れる)楽しかったですよ。……ううん。うれしかったんだと、思います。
境・花世 2020年7月1日
(ほろりと零れたきみの感想に口許だけでかすかに笑う。綿菓子の髪をふわふわに撫でたくなったけれど、テーブル越しなので我慢した)
きみに生き方を教えてくれて――きみがうれしい気持ちになるくらい、大切にしてくれたんだね。でも師匠の気持ちわかる、セロはかわいいからなあ。
セロ・アルコイリス 2020年7月12日
(わきわき動く指を見つめた)
かわいいです? へへ、やったぜ。花世はかわいいっていうか綺麗ですからね!
大切に。……そうですね、してくれたんだと思います。おれに名前をくれたのも、師匠ですから。
セロ・アルコイリス 2020年7月12日
でもね、花世。
花世とあの神さまに会ってからは、師匠のこと思い出すと、また喉が苦しいんですよ。
……花世も、そういうひと、居ます?
境・花世 2020年7月18日
うん、あの時――狂ってしまった神さまとの戦いのときに、話したね。一緒にいるとうれしくて。逢えなかったら、胸がいたい。喉が苦しい。
「すき」はどっちもつれてくるんだよって。
境・花世 2020年7月18日
(やわらかな風がそれぞれの髪を揺らして、さあっと通り過ぎてゆく)
(ほんの少し目を瞑って――なにかを呑み込むよう淡く微笑った)
いるよ。きみも、師匠のこと、すきだった?
セロ・アルコイリス 2020年7月26日
うん──。(彼女の言葉を目を瞑って聴いて)
(まだ暖かな風が髪をくすぐっていくのを感じる。あまい香りは梔子の? それとも牡丹の?)
セロ・アルコイリス 2020年7月26日
変ですよね。前から、大好きなのに。
おれは、もう一緒にいられないから、なんですかね。
花世。あんたの「すき」なひとは、一緒に居てくれます?
境・花世 2020年8月2日
(窓辺には光の粒子がきらきらと零れて綿菓子の髪を縁取る。それは、やわらかく形のない何かへ輪郭を与えるようにも見えた)
一緒にいて笑っていても。想うと喉が苦しくて、――泣きたくなるよ。セロとおんなじ。
セロ・アルコイリス 2020年8月12日
……おれは、師匠にゃもう逢えねーけど。一緒に居ても、泣きたくなるんですか。
(それは)(ああ、なんと言えばいいのだろう、このココロは)
(苦しいのは、楽しくないのでは、ないのか)
……花世はすきで、うれしい、です?
境・花世 2020年8月13日
――しあわせ、だよ。
境・花世 2020年8月13日
ときどき泣いてしまうくらい苦しくても、なんにも叶わなくても、もう二度と逢えなくなったとしても、出逢うことができて、しあわせだって思うんだ。わたしの中に満ちていて、消えない、光っている、気持ち。
セロ・アルコイリス 2020年8月19日
(彼女が綻ぶと同時にあまやかな花の香が届いた気がしたから)
セロ・アルコイリス 2020年8月19日
……すきは、さみしくてくるしいけど、しあわせもいっぱい連れて来るんですね。
……うん。
……それなら、おれも判る気がします。(言って紅茶をひと口。遠く流れる雲を見る)
……おれは花世が泣くより、笑ってて欲しいですけど。
境・花世 2020年8月24日
さみしいって想えるのは、すきで、うんとしあわせになった証だもの。満ちる気持ちを知らなかったら、失うこわさも苦しさもわからないままだ。だから……きっときみは、そのひとと居てしあわせだったことを、しあわせが何かを、理解るようになったんだね。
境・花世 2020年8月24日
(空にたなびく雲と、柔らかな綿菓子の髪はやっぱり良く似ている。ふわりと溢れた気配は、視線を向けずともきっと伝わったろう) 今、笑ってるよ、
セロ・アルコイリス 2020年9月1日
さみしいは、すきの副産物ですか。
ああ、でも──失うこわさを識るのが大切なのは、……判るような気がします。じゃないと、いつの間にか呆気なく失くしちまいそうですから。
……しあわせ、(想いを馳せる。淡く微笑むともだちの気配はあたたかく)
セロ・アルコイリス 2020年9月1日
はい。識ることができたと、……思います。
けど。……話を聞いてると、花世はそのすきな人とずっと一緒に居てーとは、思ってねー、んですか?(離れてもいいと、仕方ないと、そう聴こえたから)
境・花世 2020年9月3日
時の流れは川みたいなものだって、本で読んだよ。いつかは海へと辿り着いて、歯車で出来たきみも、花の根付くわたしも、さみしい神さまだって、みんなおんなじに混ざりあう。だから、ずっと一緒にいられなくてもだいじょうぶなんだ。 (どこか透明な声がそう云った。空に滲みだした橙は、世界をゆっくりと甘い色合いに染めていく)
セロ・アルコイリス 2020年9月11日
いつか、みんなおんなじになる? おれと花世も? あの神サマも?
……だから、(一緒にいなくても、……しあわせ)(告げる相手の赤橙に照らされた横顔は、相変わらず綺麗で、繊細で)
セロ・アルコイリス 2020年9月11日
……花世も、神サマみたいだ。
あんたが……神サマがそう言うなら、きっと、そうなんでしょう。んで、そうなら、……確かに淋しくねーですね。(そよそよ。吹いた風は、熱を始めていただろうか)
境・花世 2020年9月14日
そうだよ、さみしいけどさみしくない。途中で泣いても、胸がぎゅっと苦しくなっても、最後には大好きだったことだけ持っていけばいい。
(振り向けば淡い綿菓子の髪は夕陽に染まって、オレンジキャンディの甘さに見えた。テーブル越しに手を伸ばす、そのままでは届かない距離で)
セロ・アルコイリス 2020年9月22日
うん。
けど、……おれは我儘なんですかね。最後まで待たない今も、大好きなひとと一緒に居てーと思っちまうんですよ。(今みたいにね。喉奥で告げて、伸ばされた手の意図には気付かぬまま、少し身を乗り出してその手に指先で触れる。神サマの体温は識らない。大好きなヒトの温度だった)
境・花世 2020年10月1日
(互いに手を伸ばして、望んで、そうしてやっと触れる指先。残光に色づいた花が蕩けるように綻んだ)
ふふ、そっか。わがままでも最後まで一緒にいたいと思うのは、誰にも縛ることの出来ないきみのココロだね。わたしとは違う色とかたちをした、セロだけのココロ。
境・花世 2020年10月1日
(ぎゅっと握り込めば、互いに確かにそこにいる)(空っぽの花と人形のなりをして、そのくせあたたかな温度を湛えて)
…――ねえ、きみは、その願いを大事に抱えておいで。
セロ・アルコイリス 2020年10月7日
(握られた手を、引き寄せて。額に軽く当てるような仕種で)
……ええ。折角『おれの』ココロですから。
お別れは淋しくないけど、我儘なココロは、大切に、します。
……そんで、おれは我儘だから。
淋しくはなくても、花世もすきなひとと少しでも長く共に居られるよう、勝手に祈っておきますよ。(少し、少し。温度を失い始めた空から風が吹いて、虹浴びる髪を揺らした)
セロ・アルコイリス 2020年11月9日
(隣の牡丹の香りは梔子の強い香に負けないだろうか。薄暗闇の帳が空を覆い始めるまで)
(ひそやかに語らう堅香子の声が、ふたぁつ)