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【1:1】誰そ彼

逢坂・宵 2019年2月15日


世界はアックス&ウィザーズ、空が茜色に染まる頃。
見渡すばかりの色褪せたヒースの野に、1人の男の姿があった。

小綺麗な術師の衣装を身に纏い、小高い丘を上っていく。
頭上の天は次第に濃く色づいていき、
動く生物の気配は少ない。



(先着1名様との1:1RPスレッドです。お知り合いでも初見様でも、どなたでもどうぞ)
(キリのいいところ、または1週間返信なしで〆)




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逢坂・宵 2019年2月16日
いえ―――僕の方こそ、いきなり失礼を働きました(宙空に漂う星の精霊は既に平素の穏やかな煌めきを取り戻している。眉尻を下げて軽く礼をし、地面に散らばった缶を掻き集めて再び姿勢をただした)ええ、星の精霊です。僕は星属性の術師でして、彼らとは仲良くやっています。―――ザッフィーロ君(その名はUDCアースのどこかの国で宝石の名前だったと思い出す。そう、目の前の彼の髪のような、目の覚める蒼色の)良い響きのお名前ですね。僕は、ショウ……宵と書いて、ショウと読みます(どうぞよろしく、とそこまで言って相手の視線に気づけば、それを追うようにどこまでも続くヒースの野を振り返る)この世界を―――見ていたんです。人の喧騒が遠く、自然が広がり、こんな場所でも植物は強く生きる。広大な自然のもとで見る星空が、とても好きなものですから。
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ザッフィーロ・アドラツィオーネ 2019年2月17日
宵…か。名は体を表すというが、あながち外れて居ないのかもしれんな。…良い名だ(空を染め上げる紅が地平の彼方へと落ちて行く今の時が過ぎれば直ぐに訪れるだろう星を呼び瞬かせ空を帳で包む時を示す名は、夜の如き髪を持ち星々の精霊を纏う目の前の青年によく合っている。そう思えばついぞと口に思ったことをのせながらも、耳へと届いた声音に目の前の光景へと向ける瞳を細めて)人々の営みがある場所では星々の輝きが地上の灯りと混じり見えぬ事が多いからな。ここならばさぞ星が美しく見えるだろう…と。星見ならば共にしても良いか?ここで夜を明かすつもりだったのだが…一人では味気ないと思っていた所でな(ヒースの花が揺れる革袋を地に降ろしつつ声を投げるも、革袋に何かがぶつかる感覚と共に軽い音が響けば思わず瞳を瞬かせ)…何か飲んでいたのか?溢れて居なければ良いのだが(そして屈み倒してしまった缶を元に戻そうと手を伸ばしている様だ)
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逢坂・宵 2019年2月17日
ふふ、そう言っていただけるととても嬉しいですね。ありがとうございます(名の如しと言った姿かたちを持つ相手にそう述べられれば不思議と常より嬉しく聞こえる。元より素直な性質の相手なのだろう、するりと腑に落ちるように受け取れた)ええ、都会の地上の星もそれはそれで美しいのですが……やはり僕は、綺羅綺羅と煌めく空の星が好きですね。……星見? ええ、僕でよければ是非に(常ならば独り見上げる星空、共有する相手が居るのならその愉しみはより一層感じられるものになるだろう。相手の荷物が地面の何かにぶつかる音が聞こえれば、おや、と目を丸くして)ああ、少々酒を飲もうと思っていたのでそれですね。缶に入っているので、溢れてはいないと思いますが……(先ほどの拾い残しか。缶と小瓶に入った酒はいずれも果実酒の類で、相手の手元のそれを受け取ろうと手を伸ばす。そして、ふと)……アルコールが大丈夫でしたら、それ。飲まれますか?
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ザッフィーロ・アドラツィオーネ 2019年2月18日
(手に取った缶。その文字に思わずといった風情に視線が留まるも、目の前に差しだされた相手の手と共に投げられた声を聞けば、一瞬バツが悪そうに瞳を眇めた後缶を手渡そうと手を伸ばし)…滞在している街にてヒースでエールが造られていたという伝聞を伝えたら酒造の主にこれを頼まれてな。もしやエール類かと、つい…な(革袋から覗く暖かな色の花。その花へ視線を向けた後、先の景色へと視線を向ける。夜の比率が高くなったその空の地平に落ちるか落ちないか―そんな片隅に残る陽が照らす花の赤の人々を豊かにする可能性を思えば自然を口端を緩めていたが、相手の申し出を聞けば視線を戻して)…そうだな。普段は余り飲まんのだが相伴に預からせて貰っても良いか?星見と酒の礼と言えるかは解らんが夕飯がまだなら干肉のスープ位ならばふるまえるゆえ(革袋を引き寄せ火付け石を取り出せば獣避け用に何れも火は必要故、ついでの簡単な物だが…と声を投げた)
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逢坂・宵 2019年2月18日
このヒースでエールが、ですか?(相手から缶を受け取ると同時に耳にした内容に目が瞬いた。この地上を埋め尽くさんばかりに広がるヒースで酒ができる。星の男には耳にしたことがないもので、多大な興味がこもる呟きが漏れた。相手の皮袋に見える可憐な花はそういうことかと同時に納得し、続いた言葉に笑みが漏れた)お礼だなどと、そんな。僕の方からお誘いしているのですから。……聖職者に酒を勧めるのはどうかなと思いましたけれども。干肉のスープ、いいですね。好きですよ(段々と深まる夜の帳。精霊は飲むという行為をせず、独り酒は寂しいと考えていたところだった。相手の手元の火打ち石、たしかにこれから夜が訪れる荒野に夜行性の獣がいないとも限らない。ありがとうございますと礼を述べて、自分も野営の準備に取り掛かる。枯れ草を掻き寄せ、植生のない砂地に集める。星の精霊といえば、さっそく近くのヒースを椅子にしていた)
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ザッフィーロ・アドラツィオーネ 2019年2月19日
遠い昔に聞いただけだがな。俺が造られた頃には製造法は失われていたと聞く故、再現できるかどうかは酒蔵の主次第だろうが…と。ああ、心配は要らん。禁止されて居る物でもないからな。…酩酊は罪とされている故、そこ迄は飲まんが(相手が集めてくれた枯草を囲む様に周囲の石を積み上げ応えながらも、昔指上で見た―酒に呑まれ醜態を晒す司祭達の姿が脳裏によぎれば自然と実感がこもる吐息交じりの声音になってゆく。それを振り払うかの様に簡易的な竈を一気に造り終えると一旦視線を上げゆくーが。何気なく向けた視線の先に映るは、まだ弱いながらも存在を主張し始めた星々で)…冬は夜が早いな(夜が色濃くなればさらに輝くだろう星々を想えば僅かに表情を緩めながらも、ふと。目の前の相手へと視線を向け)そういえば先にUDCアースで会ったが…拠点は此方なのか?(あの地よりも此方の方が合いそうだが、と。そう声音を続けつつ火打石を鳴らし始めて)
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逢坂・宵 2019年2月19日
……ああ、なるほど。後に残らず消費されるものを作る職人は、記録などがないことも多いですしね。それでは、酩酊しない程度に楽しみましょうか(『造られた』。常人ではないことを感じ取ってはいたものの、その言い回しに確信した。おそらく彼は、自分と同じく『モノ』に分類されるひとだ。どこかしみじみとした言葉はおそらく『見てきた』ものなのだろう。術師服の裾を掲げて簡易的な風除けとしつつ、相手につられて空を見上げ)ええ、それに空気が澄んでいて美しく見えます。絶好の星見日和だ(南の空にはいくつか煌めく星のなかにもひときわ明るい星が輝いている。あれが天狼星だろう、眺めていると落ち着いた声音の問いが耳朶を打ち)そうですねぇ……星に親しむだけならこの世界はこの上ないのですが、生活するとなるとUDCアースの方が便利で。気持ちは本邸と別荘のような感じです(そう仰る貴方はUDCアースの方が似合いそうですね、と返した)
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ザッフィーロ・アドラツィオーネ 2019年2月20日
ああ。何事も呑まれぬ程が丁度良いからな(風を遮る服の裾にすまんなと礼を漏らしながらも続いた言葉を聞けばふと口元を緩めて)確かにUDCアースは便利だからな。拠点とするには納得だ。治安も良い上に、飯も美味い(そう口に出した瞬間。ふと先日の事が思い出される。そう。あの眠らぬ店で、購買欲の侭…あの半透明の袋が思い切り膨らむまで甘味を買い込んだ、あの姿。酒には呑まれぬながらも甘味欲に呑まれたその己の姿を改めて思えば一瞬視線が逃げるかの様に漂いかけるも一度息を区切る事で留め)…便利過ぎてなんだ、少々恥ずかしい姿を見られたが(もごと口の中で不明瞭な声音を漏らしつつそれを誤魔化す様に枯草についた火が消えぬ様軽く手で空気を送りつつも、相手の視線を辿った先に美しく光る赤い星が見えれば口を開いて)星は北を標す星程しか知識はないが…あの星は常に空で輝いている様に感じるな。そして北を知らせる星は…あれだったか?
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逢坂・宵 2019年2月20日
恥ずかしい姿? はて、なんのことでしょう。それぞれに好物はあるものですし(相手が述べているのはおそらく、先日路地で邂逅した際のことだろう。人の身をとって以降得た嗜好については千差万別。自分の好みが星のそれであるように、可笑しいことなどなにもないというように笑って見せてから)ええ、いまの北極星……ポラリスは、あの星です(す、と立てた人差し指を、小さな柄杓の形に並ぶ星々の柄の先端に向ける。古来、船乗りたちが目印にしたという星は、今宵もほぼ変わらない位置で煌めいていた)不思議ですよね。ひとが文明を築いたその頃からすでに、北極星という星は北を指し示していたなど。北極星とされる星ほど、太陽と月を除いてはひとの文明とともに沿うてきた星もないでしょう(声音にしみじみと感慨がこもる。そうしてからふと気づいたように、すみませんと苦笑した)……少々薀蓄くさくなってしまいましたね。星読みの悪い癖かな。
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ザッフィーロ・アドラツィオーネ 2019年2月21日
…やはり覚えて居るではないか。だが…そう、言ってくれれば助かる。味を識ってからなんだ、甘味欲だけはたてんでな。…情けない事だが(相手の言葉にほっと肩から力を抜き行くが、相手の指が空を向けば自然となぞる様に顔を向ける。常ならば迷いながら見つけるその星だが―向けられた指を追えば己がいつも見ているその星が煌めいていて)人が気付く前から常に変わらず在り道を示す物、か。改めて聞くと本当に不思議で…優しい物に感じるな(己よりも遥か昔から、変わらずある物。そして意図せずとも人を導くその存在にどこか穏やかな感情を覚えれば頬を緩め相手へと視線を向けて)美しい物の背景や歴史を識れるのは楽しく思う故良ければ他にも聞かせて欲しい位だ…と。…宵は本当に星が好きなのだな。やはり、幼き頃から星が好きだったのか?(まだ同族であると気付いて居らぬのか。目の前の相手へ視線を移し行けば青年の様に感じる相手を見遣りゆく事だろう)
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逢坂・宵 2019年2月21日
なに、情けないなどと負い目を感じる必要はありませんよ。甘味が好きで、それで何か支障がありましょうか(好きなものに惹かれ求めるのは当然のことだと笑いかけた。確かに相手の―――上背のある体格のいい男性というイメージからは離れているが、食物嗜好を恥じる理由にはならないのだと。そうして、視線を合わせてから)……僕の薀蓄があなたの知識となるならば、喜んで。そう、星は何も言いませんし呼びかけもせず、ただしるべとなり、時には人に災いをもたらすものですが……その美しさが、在りようの変わらなさが、僕にとってはたいへん好ましい。ああ、それは……(そう言えば彼には言っていなかったか。言葉を切り、自分の前で両手を合わせる。そして開いた掌の上には、鈍い真鍮色に光る、錬成カミヤドリで作った己の本体の―――複製)僕はヤドリガミです。アストロラーベ……古い時代の天図盤が本体ですから、もともと星に縁があるんですよ。
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ザッフィーロ・アドラツィオーネ 2019年2月22日
見る者によって救いにも畏れにもなる、か。星とはその時々の人々の心を映す鏡の様な物でもあるのかもしれんな(口からそうぽつりと声音を漏らしながらも視線の先に現れた真鍮の色。その色を捉えれば一瞬瞳を見開くも、納得するかの様に目元を緩め)…天図盤か。ならば星に詳しい事も納得が行くな(人々の星に馳せる想いと星に纏わる物語、そして確かにそこに在る星の理を記た想いの結晶の様なそれをみれば納得したかの様な声音を漏らしつつも、腕を引き掌を天へ向け軽く息を吹きかけると同時―金台に紫を食んだ青と光沢の有る銀が輝く指輪がその中央に収まれば僅かに疎まし気に己の本体である青を見つめ)俺も同族だ。…幼き頃等ないというに、変な事を聞いてしまったな(そして手を握り本体を模したそれを霧散させつつ再び相手の手の中の天図盤へと視線を向けなおせば、目前の精巧なそれを眺めつつ本当に見事だな…と、ついぞ口から漏らしてしまうかもしれず)
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逢坂・宵 2019年2月22日
……指輪、ですか(目の前の彼の本体は、美しい輝きを放つ大粒の青色と、透明な銀色があしらわれた洋風のそれだった。ひとがたを模した姿が深い青色の髪と見透かす銀瞳にも納得がいく。美術品には詳しくないが、どこか宗教的な雰囲気を感じさせるそれは相応の地位にある人々とともに在ったのだろうか。彼の視線に昏いものを見た気がして目を瞬かせたが、続いた言葉に思わずと言った風に笑って)いいえ。むしろ、幼き頃にあたる時代はいつだったかなど、考えたことがなかったことに気づきましたよ。僕らの親―製作者と居た期間など、永く生きていれば瞬きの間でしょう(手中の天図盤に注がれる視線には興味と、いくばくかの敬意を感じる。本体の模倣品とはいえそのような目を向けられるのは、少し誇らしく思えて)せっかくですから、今夜はこれを使いましょうか。指せる星は限られていますが、星見の彩りにはなりましょう。
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ザッフィーロ・アドラツィオーネ 2019年2月22日
…ああ。司教の為につくられたものだ。…余り己自身でも見る事は少ないがな(今も右手袋の下に嵌る、己の本体。手袋にて隠されているそれへ自然と視線を落とし掛けるも、相手の笑みに思わず瞳を瞬かせて)…製作者か。その者を親と思えば兄弟、と呼べる物がこの世にまだ居るかもしれんな。もし現存しているのならば、会ってみたいものだが(依頼され己を造りし金細工職人の元に居た時間は瞬く間で。普段思い出す事も―そして存在も半ば忘れかけては居たのだが…共に作られていた宝飾品を思えば自然と、そんな言葉が口に出た。どの様な者の元でどの様な人生を見て来たのか―そう思考を巡らせかけるも、美しい天の図を持つ相手から向けられた声音が耳朶へと届けば表情を緩ませて)…良いのか?天図盤は初めて故、見方すら解らぬのだが…星見のが居るからな。言葉に甘えさせて貰おう
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ザッフィーロ・アドラツィオーネ 2019年2月22日
(そして人間だと先生とこのような場合は呼ぶのだったかと。少し楽し気に声音を漏らしつつも、パチリと。軽く火が爆ぜ小枝が崩れる小さな音が鼓膜へと届けば、すっかり忘れていたのか慌てて革袋から小さな野営用の鍋を取り出し水を満たした後、鍋へ掛けているようだ)
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逢坂・宵 2019年2月23日
……なるほど。あなたの装いは、そうして(合点がいった。ヤドリガミは意識を得てより以前の在り様に縛られることも少なくない。彼の昏い表情も、おそらくそこからきているものなのだろう。ここにはない己の本体を意識の端に思い出し、続いた相手の述懐にさらに目を丸くして)……兄弟というものの存在はなおさら、思考の外でした。貴方にも、僕にも……兄弟と言えるものがいるかもしれない(耳にした言葉をなぞるように繰り返す。己が本体を造りあげた者は寡作ながら名職人と謳われる人間だった。自分が今ここにいることを思えば、兄弟がいる可能性は確かにあった。新しく知識を得た子どものように、相手の話に聞き入り)……もし居たら、会ってみたいですね(そう頷いて見せてから、表情を和らげた相手にもちろん、と答えて)ぜひ、ご説明させてください。はは、僕が先生なら……ザッフィーロ君は生徒ですね。聞き上手そうな生徒で楽しい時間になりそうです。
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ザッフィーロ・アドラツィオーネ 2019年2月24日
ああ…こう在る様造られたものだからな。ならばその様に生きるのが物として道理であろう?(己の身に注がれる相手の視線に気づけば、小さな吐息を漏らし僅かに首を傾がせながら声音を漏らしつつも、目を丸くした相手の漏らす声音を聞けば僅かに顎を引き頷いて)…ああ、同じ場所から巣立って行った兄弟たちはどの様な軌跡を辿ったのだろうな。UDCアースの美術館等巡り探し求めてみてもいいかもしれん…と。宵はアースを拠点として居ると言っていたが…造られたのもアースなのだろうか?
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ザッフィーロ・アドラツィオーネ 2019年2月24日
(出身が同じならば共に見つけ易いかもしれんが、と。そう続けつつ革袋から干肉を取り出すと同じく取り出した小さなナイフで適当に削ぎながらゆっくりと泡を浮かし始めた湯の中に入れ)では先生、俺でも探せるシリウスの…その傍にある星座等を教えてくれんか?目印となる物がないと、折角教えて貰っても見失ってしまいそうでな(そして残った干肉を包んでいた布で包みなおし革袋に戻すと其の侭赤と丸い芋を取り出し膝の上に置きつつもふと、口元を緩め)折角教えて貰うのだからな。後に見て、今日という日を思い出せるものが良い
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逢坂・宵 2019年2月24日
そうですね。僕らヤドリガミは、どう足掻いても物としての道理から抜け出せない……(その呟きは僅かばかりの自嘲を込めて。星見のために造られた自分が、呪いの如く星との縁を切れないでいるのと同義なのだろう。それはまるで、作られたその時からヤドリガミとなった今でも生き方を定められているようだ)歴史的な価値、芸術的な価値が高いものならば、何百年の時を経ても存在している可能性がありますしね……、ああ(ヤドリガミはサムライエンパイアで顕現するが、時代を鑑みればエンパイア風にそぐわない己が本体の出自からすると当然の言葉だろう。相手の問いには是と返し)そのとおりです、生まれはUDCの欧州でした……いつかの持ち主が僕の本体を持ったままサムライエンパイアに転移したのです。きみも似たような境遇であるとお見受けしますが(名前。司祭。その威容。いずれも彼の出自はエンパイア国外であることを示すもので)
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逢坂・宵 2019年2月24日
……ああ、とても美味しそうだ。スープの出来上がりを待つうちに、少々星空解説といきましょう(火の傍らの石に腰をかけ、頭上の空を見上げた。刻一刻と色を濃くして黄昏時から宵闇のそれへと移り変わる夜のキャンバスには、星々がその姿を現していて。手にしたアストロラーベの目盛りを変える。今現在、2月の空を示すように)それでは、わかりやすいものから。あのシリウスは、全天一明るい星とされています。その、少し北西に……きれいに星が三つ並んでいるのが、見えますか?(人差し指を立てて指し示しながら、ちょうど三つ星をそのまま伸ばしていくとシリウスに当たりますね、と説明していく。冬の空は澄んでいて星が美しく瞬く、絶好の星見日和だ)
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ザッフィーロ・アドラツィオーネ 2019年2月24日
ああ。人の為に造られ人に使われる為に生まれたものだからな。…人の何にでもなれる可能性、という物が羨ましくもなるが…光も水も地も神の祝福も全て人の物とされて居る故、仕方ないと割り切るしかなかろう(胸中に澱の様に溜まり渦巻く人に対する複雑な感情。それに蓋をし隠さんとするかのように一度瞳を閉じゆっくりと瞬きながら表情を隠す様に口元に笑みを敷くーも。続いた声音を聞けばふと笑みを深くして)ああ、俺も同じ様なものだ。所有者を移しつつ最終的には盗まれその者とエンパイアに渡る事になったが…と。宵も欧州か。俺も欧州故、もし造られた場所が近ければ肉を得る前に所有者同士どこかですれ違っていたやもしれんな。…それに、近ければ現存した兄弟達もその付近に収められておるやもしれん。…今度共に故郷参りでも行ってみるか?
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ザッフィーロ・アドラツィオーネ 2019年2月24日
(故郷、といっても記憶の中のそれとは全く変わって居るのだろうが―どこか懐かし気な色を漏らしつつ軽い口調を口に乗せれば、適当に膝の上に置いた野菜をナイフで適当に切り沸騰しきった湯の中に落としながらも相手の手の中の星図盤の目盛りへ興味深げに視線を向けた後、示された星へと視線を向けて)…ああ、あの等間隔にならんだあれか。その上にある赤い星はまだシリウスを見つけるに迷っていたころ、よく間違えかけたのを覚えて居るな(腕を伸ばしシリウスと相手が示す三つ星を手袋越しに指し示しながらも、つと。僅かに指を上にあげれば、青く輝くシリウスとは対照的な赤い星を指ささんと試みて)
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逢坂・宵 2019年2月25日
光も水も、地も神の祝福も、この世全ての万物はヒトのため、ですか。……僕らがヤドリガミとして意識を持ったのも、なんらかの意味があるのでしょう(それは感想と言うより疑問のような声音となって呼気とともに吐き出された。物としての範疇を超えられない自分たちは、本当にそれ以上の『何か』を生み出せないのだろうか。常の笑みで塗り潰し損ねた感情の発露は、相手が同じ憂いを持つ同族だからこそか)伝来も、作の出も同じというのは驚きました。意識しないところですれ違うどころか、ここまで同じなら同じヒトの手にあったかも知れませんね……ふふ、故郷参りも兄弟さがしも、きみとならとても楽しそうだ。
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逢坂・宵 2019年2月25日
(ぜひ行きたいです、と微笑みとともに意気込んで見せた。手がかりは多くはないが、今はどうなっているかはわからない故郷をひとりで巡るなどは退屈にすぎた。誰かと向かうというのなら、それはきっと良い旅になるはずで)ええ。きみが先ほども仰っていた赤い星……あれはペテルギウスといいます。シリウスと違って赤いのは、年老いた星は赤く巨大になるからで―あの星は全天で太陽を除いて最も巨大な恒星と言われています(天文の教書をそらんじるように、口からはすらすらと解説の言葉が流れ出る。相手が示した指の先に輝く星は、燃え盛る炎の色だった。それから、と言葉を切って相手のかんばせへと視線を移す。空いた手で酒の缶の入った鞄を引き寄せてから)……冬の大三角というものがあるのですが、ご存知でしょうか。
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ザッフィーロ・アドラツィオーネ 2019年2月26日
…少なくとも俺はその考えの元造られたからな。俺を造らせた司教ならばきっと万物と同じく人の為になる様、人の言う神が肉を持たせ人に与えた、とでも言うのだろうが…(そう声音を続けつつも、記憶を手繰る様に一度言葉を途切らせた後口を開いて)…以前宵と同じ名の少女に聞いたのだが。ヤドリガミは人間の想いの元産まれるのだそうだ。己を救う神さえ想像の中創り出し、それに万物は己らの物と言わしめる人のその貪欲な妄執が物にさえ肉を与えそう在りたらしめるのならば…意味など全て、人の中にあるのだろう(人を赦す道具として造られ在り続けながらも物である己自身に当然与えられる赦し等なく―溜まり続けた感情の澱を消化せんとする、己なりに出した、答え。肉を持たせたものが人ならば、人が己ら物にとっての神なのだろうと。そう思えば己の在り様への感情はきっと、複雑ながらも常ならば飲み込めている…のだが)
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ザッフィーロ・アドラツィオーネ 2019年2月26日
(だが―同族故の気安さからかついぞ口が軽くなりすぎた。そんな己を戒めんとするかのように軽く頭を振りつつも、相手の呼気交じりの声音に、己と同じく迷いの様な物を感じれば視線を向けて)…宵は己の在り方に不満があるのか?(ふと。そんな言の葉が自然と口から洩れて行く。しかし続いた言の葉を聞けば気を切り替えるかの様に肩から力を抜いて)ならば、落ち着いたなら共に行ってみるか。俺を最初と最後に所有していた者達がいた地はイタリアとイギリスという国になっているらしいが…途中居た国は己自身把握しておらんからな。気ままに旅をするのも、悪くはないだろう…と。…年老いた、か。変わらぬと思う物でもやはり、時と言う物はあるのだな(肉と野菜の香りの滲む湯気が辺りに満ちる中、長く長く空に在った印たる赤く光る星を見やっていたが、視線を感じれば緩い動作で僅かに身を捩り顔を向け)北の星とあの赤い星は解るが…三角、か…?
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逢坂・宵 2019年2月26日
……それは、僕らヤドリガミは存在意義も、こうして在る意味も、そしてその生き様さえも……ひとの想いのもと、ひとのためになることを定められているということですか(司教のもとに在ったという彼。様々な人間模様を見てきたに違いない相手がそう理解し、解釈し、吐露している。対して、自分はどうか。長く本来の使い方をされず、ただ歴史的価値と芸術的観点のみで保管され、只管に日月ばかり積み重ねてきたこの身には、思考の元となる種は微々たるものだ。まして現在は主―所持者の居ない自分にとっては、ひとのためという言葉が遠く聞こえる。どう答えるべきか言いあぐねていると、投げかけられた問いが耳朶を打った。不満? 己が心に問うてみる。そうして帰ってきた答えは、)……不満など、そんな人間らしい感情ではないのです、きっと。ただ、僕は不安なのでしょう。星は……天体は、そして緯度や日時すら測れても、自分の行く末は示せず測れない。
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逢坂・宵 2019年2月26日
そのような身で……唐突に、動き歩ける四肢を得て、もの思う思考を与えられた。目覚めた時には、示してくれるひとなど居ませんでした。きっと、どう生きるべきか……わからないのです(そこまで言って、口を閉じる。いくらなんでも喋り過ぎた。相手とはただ二度邂逅しただけだというのに。しかし、続く落ち着いた低い声音に強張る口元が解れて)イタリアと、イギリス。僕の生まれはベルギーですが、その後国を転々としていますから……さまざまな国を回り、現在の様子をこの目で見るのも、きっと楽しいでしょう(手にした天図盤を膝の上に置く。鍋から漂う食欲の湧く香りに目を細めつつ、もう一度手を掲げる。すっかり闇色となった天に仄黄色く輝く星を指し示した)ええ、シリウスとベテルギウスを結んで、少し東側……ほぼ正三角形になる位置に、少し明るい星が見えます。あれがプロキオンという星で、これらの星から成る三角形は冬の大三角といいます。
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ザッフィーロ・アドラツィオーネ 2019年2月27日
…飽く迄も俺の考えだが、な(同じ物と言えど、己と相手の辿ってきた道行は当然違うもので―そして辿る道の数だけ思い考える事は違うだろうと。そう思考すれば先迄の饒舌さとは裏腹に一度息を吐いた後声音を漏らし行くも、続けられた言の葉を聞けば僅かに迷う様に視線を伏せかけた後、相手へと移動させて)…どう生きるべきかは己自身が識っているのではないか?習わずとも魚が泳ぎ方を識り鳥が飛び方を迷わぬ様に、人がかくあれと願った通り俺はこの様に生き、宵は星と共に生きている。…逃れられんだろうその生き方がきっと道行、なのではないか、と…な。星の如く朽ちる迄の長い道の先に何があるか―どの様な物になるかは俺自身も解らんが…自身で決める事も出来ずに所有者を渡らされるよりも良い状況だと、そうは思わんか?
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ザッフィーロ・アドラツィオーネ 2019年2月27日
(それに、肉さえあればこの様に同族と会う事も出来ると。緩めた口元共に僅かに瞳を眇めた瞳を宵へと向ければ己自身にとっても今日の邂逅は幸いだと、そう言わんとするかのようなどこか柔らかな声音を続けていたが、向けられた指先へと視線を移して)ああ、あの北の星よりも小さいながらも輝くあの星だろうか…と。…本当に、知らずに見るのと識り見るのと何故こうも見方が変わるのだろうな(今まで目に映りながらもただ瞬くのみに感じていた星々が、相手の説明を受けると共に形を作って行く様を知覚すれば思わずその形をなぞるかの様に視線を移していたが、煮込まれた鍋の底からこぽりと湧き上がってくる泡の音が耳朶へと届けばスープへと視線を落として)…そろそろ肉も柔らかくなった頃合いかもしれん。…煮詰まる前に一度食事にするか(そして革袋から取り出したカップに小さなレードルでスープを注がんと試みつつ相手へと視線を向けて)
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逢坂・宵 2019年2月27日
……星と、ともに(言われて瞠目した。確かにそうだ。己は天体を観るために造られ、美術品として過ごしてきたものの、造られたときに込められた願いは天体とともに在ることだ。逃れられないそれがこれからも歩む道行き。まるで氷が解けて沁み行くように、率直な言葉が腑に落ちた。膝の上の己が複製に視線を落とす。鈍いこがね色をしたそれは、このような薄闇の中でも際立つような金属質の輝きを見せている)……そう、そうですね。僕たちはこの生き方を変えられず、その生き方しかできない。けれど、この四肢があり、考える思考があるからこそ、同族とも会って―故郷を巡るなんてことも、できる(自分の在り様を確かなものにできるのだと、肯いた。それから目が醒めたような表情を浮かべると、はあ、と長い溜息をついたと思えば頭痛がするように片手を額へと当てて)……本当、きみには実に情けないところを見せてしまいました。お忘れください。
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逢坂・宵 2019年2月27日
(まったく自分は何をしているのか……そんな感情を擁きもうひとつため息をつこうとするも、鼻腔をくすぐるスープの匂いに気が抜けたらしく頬の緊張が緩んだ。相手の変わらぬ柔らかな声音が先ほどまで毛羽立っていた感情を落ち着ける。普段感じない食欲を、この時ばかりは強く感じた)ええ、おそらくその星です。……星に限りませんが、見るだけで美しいものは数多いですが、味方を変えるとさらに趣深く……奥行きを感じるものです。北極星と、シリウス、ベテルギウス、プロキオン。これらの位置を知るだけでも、見るのがより楽しくなると思いませんか(美しいものは美しいだけではなく、その知識を得た時こそが本当の快さなのだと思うと述べた。相手が言葉とともに鍋に向き合う。そうですねと首肯して天図盤を手で挟み消したなら、自分も鞄に手を伸ばす。どれにしようかな、と迷いながら)酩酊しない程度となりますと、あまり酒精は強くない方が良いですね?
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ザッフィーロ・アドラツィオーネ 2019年2月28日
…いや、俺こそすまんな。同族というものもあるだろうが…つい口が滑った(相手の思案するかのようなその様子を見やりながらも、続いた言の葉を聞けば、ふと。小さな吐息を漏らしつつ僅かに口元を緩め声音を返す。己もだが―元が物、という血の通わぬ器物故か迷いがどこか生じるのだろうか。どこか己と同じ様な迷いや複雑な感情を抱いていた様に感じる相手のどこか緊張を纏ったその雰囲気が緩めば、その様子に安堵するかの様に僅かに肩から力を抜き瞳を細めつつレードルを鍋に戻して)…きっと、宵が聞き上手なのだろうな。あの星々の様な美しい物ではないが…俺自身の中のただ在るだけの感情すらもあの星の見方を示すかのように表に現されてしまう(夜空に煌めく―先程教えられた星々へ一度視線を向け声音を漏らしつつも、掻き消えた天図盤と共に投げられた言の葉を聞けば視線を戻して)
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ザッフィーロ・アドラツィオーネ 2019年2月28日
ああ、酒精の低い軽く喉を潤せる程度の物があれば。あと甘ければ甘いほど嬉しいが…。…いや、そうなると逆に欲に負け呑まれる心配が出てしまうか(甘い味覚への欲がついぞ口につくも、酒に呑まれるおそれに気付けば僅かに眉を下げ瞳を眇めつつ酒精が弱い軽い飲み口の物を頼むとそう声音を続けながら己も器を持っておらぬ右手で革袋を探る。そしてフォークを取り出し器に差し入れればスープが満ちた器を相手へと差し出して)…少し熱いかもしれん故、火傷せんようにな(緩い湯気が立ち上るその向こうなみなみと注がれたスープの中には僅かに煮崩れた馬鈴薯と大き目の肉の他に、鮮やかな人参の紅が存在を主張しているかもしれない)
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逢坂・宵 2019年2月28日
……不思議と、きみにはついあれこれ喋ってしまいますね(口が滑った、と言うからには先ほどの言葉はやはり彼の裡の本心なのだ。此れまで残してきた己の道程こそが自分が此れから歩む道標、そんな単純なことすら見失いかけていた。迷いは塵を残さず霧散したわけではないが、道を切り拓く程度には不自由しないだろう)……僕が聞き上手と言うなら、それはきみが話し上手だからなのでしょう。お話を伺うに、きみも……僕と同じ迷いを抱えていらしたようにお見受けしますが(ヤドリガミはひとつ残らずすべての個体が器物という前提つきだ。その裡に迷いを抱える同族、いや同類の数は知れないが、こうして腹を割り話せる機会のなんと貴重なことだろうか。暗がりに揺れる相手の横顔、煌めく銀瞳がまるであの空に輝く天狼星のように見えた)……でも、僕たちはきっと選べるのです。行く末は己が存在に刻まれているとしても、きっと――そのやり方を、選べるはずだ。
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逢坂・宵 2019年2月28日
(表現するならば決意したように。先ほどの声音よりは強く、そう言いきってから)……ザッフィーロ君は、本当に甘味がお好きなんですね(外見で中身は推し量れないが、やはり強面に似合わぬ味の嗜好はどこか可愛らしく見える。和やかに笑みつつ、わかりましたと肯んずる。UDCアースで買った酸味のある柑橘の果実酒なら然程酒精も強くなく、甘くもないか。その前にと差し出された器を両手を伸ばし受け取った。立ち上る湯気が夜気にも白く映える)わ、ぁ……(覗きこんだ器の中身に目を丸くした。ほくほくと煮立った芋に肉、目にも鮮明な人参。シンプルな料理ではあるが、漂う色濃い野菜の匂いにすきっ腹がくぅと鳴った)とても、美味しそうです。ありがとうございます……猫舌なので少々冷ましてからいただきますね。こちらをどうぞ(器を膝の上に置いて片手で支える。もう片手で鞄を探り、柑橘の酒缶を拾い上げると相手の方へと差し出して)
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ザッフィーロ・アドラツィオーネ 2019年3月1日
(相手の問いに一瞬瞳を瞬かせながらも、僅かに視線を漂わせた後瞳を向ける。同族だからか、それとも似た迷いを持つ者同士だからなのだろうか。己の中の迷いを問われれば、己の中の胸中を探るかのように瞳を細めつつ口を開いて)…迷い、か。確かに、望まれた通り人々を赦し祝福する者として在ろうとはしているが、己の罪は無条件で赦されるのだとそう信ずる人間を見るとどうしても、心が騒ぐ時もある。故に、己の在り様に納得しているといいながらも、惑い立ち止まっているだけなのかもしれんと不安になる時もままある…が。そうだな。そう真っ直ぐに言われたならば…後に振り返った時―迷いの中確かに自身が選び進んできた道なのだと、そう胸を張って言える日もくるのだと信じてみても良いのかもしれん、な(迷いを振り切るかの様な相手の声音。その声に軽く顎を引き頷きながら薄く笑みを浮かべていたー…が。続いた言の葉を聞けば一瞬動きを止めた)
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ザッフィーロ・アドラツィオーネ 2019年3月1日
…だからその、改めて言ってくれるな。自分で選んだ物の一つとはいえ…その、似合わん事は俺自身解っている故…(気恥ずかしさか軽く目元を左手で擦りつつ僅かに身じろぎかけるも、相手の手へと渡った器と声音を捉えれば自然と肩から力を抜ける。そして温まる故あまり冷めぬ内になと僅かに口元を緩め声音をなげながら再びレードルへと手を伸ばし簡単で素朴な味ながらも、きっとまだ冷えるだろう野外では体を温める事の出来るだろうそれを軽くかき混ぜ己の分をよそっていたーが。相手の手の中の缶を見れば座っている石へと一旦器を置いた後、差し出されたそれを受け取って)爽やかで食事に合いそうだな。…すまんが相伴に預かる(そして珍しそうにラベルをみながらも甘味を求めUDCアースに入り浸っている為か、慣れた手つきで缶のタブを指に掛け開けていたが、ふと、なにやら動きを止め)そういえば先にも違う種類の缶を見たが…宵は酒には詳しいのか?
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逢坂・宵 2019年3月1日
(司祭。赦し。人々。なるほど、彼は神に仕える者の元で唯一主の名のもとに人々に秘蹟の指輪として告解に赦しを与えていたらしい。整った眉を寄せて吐露するさまはやはり、同類なのだと確信を深めて)……これは僕の勝手な解釈ですが、きみは確かに赦しの指輪として在り、その生きかたはヤドリガミの核に刻みつけられ、抜け出せはしないでしょう。けれど今は……きみはきみの思うように、その在り方を決められるのではないでしょうか(一度言葉を切る。これから己が言う言葉を心の中で反芻するように間をとってから、相手のまなざしをじっと見据えた)僕には、きみが真に神を敬愛しているようには受け取れません。だからそのように思うのは、そう在って使われてきたからこその想いでしょう。これからは……赦しを与える相手も、その時も。きみの判断で選んでもいいのでは、ないでしょうか。だってきみは、もう誰かに使われているなど器物ではありませんから。
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逢坂・宵 2019年3月1日
(己の意に沿わぬ赦しを与える必要はないのだと、そう伝えた。己が身は宗教観とはあまり縁がない。だからこそ、司祭服を身に纏う相手に―世が世なら発言した瞬間不敬と斬り殺されても仕方がないだろう。けれどそれだけは伝えたかった。続いた言の葉、軽く目元を押さえる相手に笑みを深める)いいじゃないですか、甘いものはひとの身を魅了しますからね。それに、親しみを感じる要素というやつですよ(からからと小さく笑い声をあげて言葉を返す。UDCアースの日本ではこれをギャップ萌えと言うのだったか。相手に缶を渡し終えたなら、自分の分もと鞄を漁っては葡萄の酒缶を取り出して、膝の上に器を置いて空いた両手でプルタブを開けたとき、投げられた問いにううん、と首を捻り)……詳しい、と言うほど酒を知っているわけではありませんが、たしなむ程度には飲みますね。今夜のように、星と精霊に乾杯したい夜などに、酒精の低いものを飲むことが多いです。
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ザッフィーロ・アドラツィオーネ 2019年3月2日
敬愛している様に受け取れない、か。その神というのは人にとっての神か?それとも…先に言った俺達を造った人、の事か?(己へと向けられた藍色のそれ。その視線に気づけば己も未だ迷いの揺れる瞳を向けかけるも、すと瞳を細めその色を隠しつつ先から浮かべた緩い笑みを向ける。そして逡巡するかの様に首を傾がせつつ口を開いて)人が信ずる神が人の想いの元に産まれ今も望まれる侭見守り続けているのならば、その在り様に敬意と抱かん訳にはいかぬだろうな。そして高々数百年想いを向けられただけの俺達とは違い何千年もの人々の想いを受けた存在だ…存外今も星々の如く高い場所から視ているのかもしれん…が。…もし人にとっての神が居るのだとしても。人を赦す為だけにある道具である俺にとっての神ではない。それ故、肉を与えた人が物である俺の神であると―そう思えた時確かに救いを見たのだ。だから…揺らしてくれるな
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ザッフィーロ・アドラツィオーネ 2019年3月2日
(己を慮っての言葉なのだろう。それが解るからこそ芯にしている物が揺れるのが己でも解る。自然と下がる眉を誤魔化すかの様に眇めた瞳を向けかけるも、真っ直ぐに向けられたその視線の眩しさから逃れるかの様に瞳を閉じれば自然と懇願するかの様な吐息交じりの声音を漏らしていたが―が。相手の口元から洩れる笑みに先の空気が僅かに緩めば、満ちた緊張を散らさんとするかの様に表情を緩めて)…そうか。そう言われればそういう物かと思えるのが不思議だな。甘味欲に負ける己の身は恥でもあると…聖職者ならばどの様に動くか、そう考え生きてきたが。だが、己にとって心地よい物を探し認め生きるのも良いかもしれん(口元を緩めつつも続く声音に視線を向けて)いや、以前蜜の様に甘いワインを舐めた事があるのだが知ってはおらんかと、な。…先迄は聞いてどうするのかとも考えてはいたのだが…在り方を決めても良いというのならば、多少欲に生きてもよかろう?
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逢坂・宵 2019年3月2日
……ひとにとっての神です。ひとらが信じる父なる神、と言いましょうか(そう答えるも、続く独白に視線を下げる。神に仕える身のひとに使われた彼は、主の望むままに人の罪を神の名のもとに赦す行為とともに在ったのだ。じわじわと、自分が先ほど言い放った言葉がそれを否定してしまったような気がして視界が暗くなる。けれど、『司祭』の信じる神を敬愛していないのは確かで)……そうです、そういうことです。僕らにとっての神は僕らに肉を与えたそれで、ひとにとっての神とは違う。僕にとっての神も、金属のこの身を造り上げた職人ではなくヤドリガミとして肉体を与え給うたその存在です。ですから……何と言ったらいいんでしょうか。己が罪に向き合わず赦しを求めるひとに、騒ぐ心を持つきみに赦しを与えるものは、きみ自身しかいないのです。赦しを願うひとに思うところがあったとしても、それはいけないことではないはずだと……そうお伝えしたかった。
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逢坂・宵 2019年3月2日
(ともすれば否定の言葉にも映るかもしれない。けれど彼は、彼がひとを赦してきたというのならば、誰が彼を―みずからのその裡に凝り貯めた『ひとの罪』を赦すのだろうか。それはきっと同族の他人でもなければ、ヤドリガミと化した身のその裡にあるのだろう)聖職者であることもけっこうですが、僕たちヤドリガミに肉を与えた『神』はきっとこう申しましょう。肉を与えたまま、己が感じたままに行動せよ、と(だから欲のまま甘味を求めても良いのだ、と悪戯っぽく微笑んだ。続いて、相手の話す言葉に興味をそそられたように目を瞬かせ)蜜のように甘いワイン……? 蜂蜜酒などは知っていますが、それでしょうか。UDCアースではミードと言いまして、確か欧州で普及しているものだったはずです。故郷めぐりの時にさがしてみてもいいかもしれませんね。
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ザッフィーロ・アドラツィオーネ 2019年3月3日
赦したくない相手は赦さずとも、か。…ああ、そうだな。もう、己の中で消化はしてはいるが…肉があったならばこの手でどうにかしていたかもしれんと。そう思う相手も、過去にいた。…そんな己の心が恐ろしくより厳しく律していた所もあるやもしれん(己こそが正義だと疑わず己に救いも赦しも求めなかった、その相手。先の戦争にて暴かれそして己の中消化した相手への暗い感情を思い出せば小さく吐息を吐きつつも、相手の言葉を消化するかのようにゆっくりと瞬いて)…己で己を赦す…という事は今は想像出来んが。そうだな、少しずつ変われたならば幸いな事なのだろうな(そして相手の笑みに応えるかのように笑みを返せば、手の中の缶と、傍らにて湯気を立ち上らせるその器へと視線を向けてた後、首を傾けて)…では、今は己の感じたままこの手にある酒と暖かな食事を楽しむ事にしようか
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ザッフィーロ・アドラツィオーネ 2019年3月3日
(そして手の中の缶を相手の缶へ寄せるかのように軽く掲げた後、口に寄せた缶から流れるそれを一口飲み込む…も。少しの逡巡の後二度三度と喉を揺らす。冷たい外気の中にあったせいか冷たくそして爽やかな甘みが喉に落ちて行けば、ふと一度呼気を漏らした後一人では手にした事のないそれへと視線を向けて)…今まで水と同じく喉を濡らす為だけに口にしていたが…この様に味わいながら楽しむ為にのむというのも悪くはないな(僅かに下がる眉は未だ感じてしまう罪悪感からかもしれないが―今はこの時間を楽しみたいというかの様に再び缶へと口を付けて)蜂蜜酒…確か蜂蜜が原料だったか?口にした物は芳醇な葡萄の香がしていた故、原料は葡萄なのだろう。菌の付着が甘みを齎すと言っていたが…そうだな。欧州ならばきっと見つかる事だろう(フランス辺りに行けば見つかるだろうか…と。どこか甘味に対する情熱に通じる様な真剣な声音をもらしているかもしれない)
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逢坂・宵 2019年3月3日
……そう思うきみの心も、きっと間違ってなどいませんよ。いま振り返りこうして吐露できることこそ、僕らがただのモノではない証なのでしょう。その感情に理由づけを求めるより、素直に感じたまま感じることはどれほど尊いものでしょう(理由を求めてしまえば、思考ある生き物はきっとそれに責任転嫁をする。思いを抱えてなおそれに他の理由を求めず秘めていた相手はやはり、性質として気高いものなのだろう。口元に仄かに笑みを刷いてから)きっと、己で己を赦すということはこういうことだったのだと理解できる時が来ます。根拠はありませんが――僕は、きみならいつかは、そう思います(向けられた笑みに安堵したかのように緩く破顔した。そして相手の動作に倣うように手中の缶を相手の方へと軽く掲げて、同じタイミングでひと口喉に流し込む。微炭酸がはじける感覚と、果実の味わいが口の中に広がった。僅かな酒精が喉を越えてゆく)
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逢坂・宵 2019年3月3日
美しい星空のもとで、酒と食事を楽しむ贅沢と……こうした行為を分かち合える相手がいればこそ、と思いますね。普段、ただの生存のための作業になっているような食事や飲酒より……ずっとずっと、味わい深い(実は食欲が薄いのであんまり食べないんですよね、と白状するように話した。しかし今は夜気に燃え上がるたき火が暖かく、手にしたスープの器から伝わる熱も心地よくそして野菜の匂いも食欲をくすぐる。缶を岩の上に置き、少しだけ暑さの飛んだスープをひとくち口に含んでみた。熱かった)……えっ、やはり葡萄のワインなんですか? それは初耳だな……そうですね、フランスあたりはワイン用のブドウの栽培が盛んと言いますから。そこにも立ち寄りましょうか(あそこもここも、と相手と歩く故郷めぐりのプランはどんどん膨らんでいく。まだ見ぬもの、まだ聞かぬもの、まだ感じていないものに対する期待に心をはやらせながら、夜はそうして更けてゆく)
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逢坂・宵 2019年3月3日
(二人のヤドリガミの話を傍らのヒースの上でずっと聞き届けていた精霊は、やがて中空へと舞い上がれば夜空の彼方へと飛んで行く。誰そ彼時を過ぎて本格的な夜を迎えた冬の空は、今夜も満天の星だった。明日の夜も、その未来の夜も、変わらずそこに在り続けるだろう―――この世界が在る限り)
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逢坂・宵 2019年3月3日
(〆)
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