◆【1:1】桜途
ノヴァ・フォルモント 2021年12月11日
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冬の澄んだ空気。
止むこと無く舞い散る夜桜。
帝都の中心にあるこの街は、
長く続く大正時代の様相を色濃く残している。
鳥居をくぐる様に続くこの階段もその一つ。
満開に咲き誇る桜の山。
狼煙の様に伸びる石畳の階段の頂上は、
桜の花弁に隠されて麓からは伺えない。
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花園・椿(f35741)
ノヴァ・フォルモント(f32296)
上記2名の1:1RPスレッド。
20~30レス程できりの良いところまで。
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ノヴァ・フォルモント 2021年12月11日
少し散歩をするだけのつもりだった。道すがら目に留まった階段の先が気になって上り始めてみたものの、未だ終着点は見えそうも無い。鳥居を潜るのだから行き先は何かが祀られている場所か、只向こう側へ続いているだけなのか。小高い山頂を見上げてみるが、煙の様に揺らぐ道筋を桜吹雪が覆い隠す。けれど引き返すにも、既に山腹までは登ってしまっているだろう。折角此処まで来たのだから、一先ず何があるかだけでも確かめてみて損は無い。――そう思い立ち、小休止にと下ろしていた腰を持ち上げた時だった。
ノヴァ・フォルモント 2021年12月11日
(階段の下側から上ってくる人影に気付く。こんな時間に、こんな場所で。それは自分も同じだけれど。此処を通る人ならばこの先の事を知っているかもしれない。)(けれど逆に問われたのは此方側で、ほんの僅かに首を傾げて相手へ向き直る。)――いや、俺は旅の者だから。特に何かを探している分けじゃないよ。……職人?んー、特に心辺りは無いな。さっき言った通りこの辺りの事は詳しくなくてね。
花園・椿 2021年12月12日
旅の方でしたか。それは失礼しました。(察するにこの辺りを散策。又は宛もなく彷徨っている人の様に見える。そうとなればこの上、この階段の先を知らないのも頷ける。)この先に職人――絡繰技師にも近しい方がいらっしゃると聞いて足を運んだのですが、もしや。(いないのかもしれない。無礼であったことを大きな鞄を携えたまま頭を下げ、ゆっくりと上げれば目に飛び交う咲き誇る花弁に目を丸くした。)……本当にこの先、いると思いますか。(自身の目には花弁が淡桃の吹雪に見える。砂嵐や強風の様に進むのは大変では無さそうだけれど、その先に"
人" はいるのだろうか。自身に問う様に、貴方に問う様に呟いた。)
ノヴァ・フォルモント 2021年12月16日
いや、気にしなくていいよ。こんな時間だ、他に人も居ないものな。(自分と同じ様な大きな鞄を携える姿から、相手もこの辺りに来たばかりなのだろうと感じながら。)――カラクリ?……詳しくは無いけれど、糸や歯車で仕掛けを動かしたりする技術だっけ。(頭を下げてくれる姿に、改めて君の方に向き直り柔く微笑み返した。)この先に…。さあ、どうだろうね。でも君は、居ると聞いて来たのだろう。なら自分の目で確かめてみるのが一番じゃないのかな。(君と同じ様に桜吹雪を見上げる。変わらずその先に何があるのかは見えなかったけれど。)
花園・椿 2021年12月18日
お気遣いに感謝します。それで、あなたは桜を見に?(永久に咲く桜のある世界は自分にとってはもう慣れ親しんだものであるが、旅の者には物珍しいのだろうか。首をかくりと傾げた。)はい、絡繰です。糸や歯車で動くもの。中には秘術を使って作られる方もいます。変わり者が多いとも聞きますので、この様な場所に居ても可笑しく無いのです。(頭を上げ、微笑み返す事も無く頷いて。硝子の瞳はその桜吹雪の向こうを見据える事が出来なかった。)そうですね、実際に行ってみれば分かる事です。(其処に自分の求める手掛かりの有無は分からないけれど。)
ノヴァ・フォルモント 2021年12月23日
俺の旅は目的地もない気紛れな道のりだから、今回も敢えて桜を見に来た訳ではないけれど。でも此の世界の景色は綺麗で、俺は好きだよ。……変わり者か。何かに秀でた才能を持つ人は、そういった者も多いのかな。(相手の瞳が向く先を見上げて、改めて振り返り)君はこのまま此の先へ行くんだよね。よかったら、少しご一緒しても良いかい?俺も此の先に何が在るのか、識りたくなって。
花園・椿 2021年12月25日
この世界は桜も綺麗ですが、歌劇などの芸能も素敵ですよ。何度も足を運びたくなるものです。(気紛れな旅路のひとつに如何でしょうと呟きながら首を傾げ、落ち着きながらも声を弾ませた。)言い換えれば拘りが強いのです。そういった拘りが良い物を作るのでしょう。ですが、あまりにも辺鄙な所だと向かうのも大変でどうにかしてほしいです。(溜息を一つ零しながら旅行鞄を握り直し、ぱちりと目を瞬かせて顔をあなたの方を向ける。)ええ、この先に行けば私の求めるものが手に入るかと思いましたので。構いませんが、結構な距離になるかと思われますよ。
ノヴァ・フォルモント 2022年1月5日
ふむ、歌劇か…。確かに興味はある、街で探せば歌劇場の様な所も見つかるかな。君もそういった芸能はよく見に行くのかい?(淡々とした口調の中で、僅かに相手の声が弾んだ気がして。)何かに強い拘りを持つ人、熱心な人の姿や話を聴くのは個人的に好きだな。でもそうだね、そのぶん周囲の物事が見えなくなったりというのも往々にしてありそうだ。……おや、君の目的地はそんなに遠いのか。じゃあ道すがら途中まででも。俺はこの桜の山の頂上に何か在るのか、そこまでが今の目的だからね。
花園・椿 2022年1月6日
よく見に行きます。一度見ても細かな所が変わっていたりと、次は何処が変わったりするのだろうと、人が言う「そわそわする」という感覚に近い気がしますね。歌劇場は至る所にありますよ。道でチラシを配る方を見た事がありませんか?(鞄を地面に置いて、金具を外し、開けて中から取り出したのは少しだけ皺の入った公演期間が過ぎたチラシ。こういうのを配る人、と再現してみてば首を傾げてみせた。)私もそういった拘りや熱意の篭った話を見聞きするのは好きですがね。作られた物の想いなど……いつ聞いても、楽しいものです。(微笑みこそはしないけれど、目を伏せて穏やかに話す姿は昔を懐かしんでいた。)ええ、遠く。果ての無い道かもしれません。其処には無いのかもしれません。ですがそれでも往くのです。それでは、共に参りましょうか。(鞄の取っ手を握り直し、一歩を歩もうとする。)
ノヴァ・フォルモント 2022年1月17日
日々舞台に立つ役者や場の空気感。些細な違いに気付いてそれを楽しむのは、確かにそわそわの感覚に近いかもね。(君が見せてくれたチラシを軽く覗き見て。なるほど、と小さく頷いた。)この街に来たばかりというのもあるけど、あまり気にしてなかったな。今度道端で見掛けたら一枚貰ってみるよ。……うん、作り手の想い。どんな気持ちを込めて作ったか、とか。俺も自分の持ち物を作った人がもし分かるのなら聞いてみたいよ。……無いかも知れない道を往く旅は俺も慣れている。でも君の目的の人は、此の先で見つかると良いね。(自分は結局見つからなかった。未だ探している途中なのかも知れないけれど。そんな思いも過りつつ、傍らに置いてあった自分の旅行鞄を手に取った。)
花園・椿 2022年1月21日
もしかしたら「わくわく」の感覚かもしれません。人のいう高揚する、という感情にきっと近くて、ときめきというのを求めたりもするのかもしれません。(貴方がチラシを覗き見てくれたのを確認して、大事そうに鞄の中にしまいこんだ。)中には舞台に出る方がチラシを配っていて、舞台上では知られなかった一面も見れて私はお得、と感じる事もあります。私は父様によって作られた茶運び人形故に、同じ物ですので。どういったもので作られたのかを知るのが好きなのかもしれません。――お気遣いをどうも有難うございます。其れでも往くのです。限りある命を、身体を動かさねば気が済まないのですから。(誰かの為に作られた人形が己のために動くのは唯其れだけ。一歩を踏みしめる足音は重たく、時折軋む体は微かに響いて。)
ノヴァ・フォルモント 2022年2月9日
ふふ、「わくわく」か。そっちの方がより合っていそうだね。楽しいと嬉しいで心が跳ねて踊るような感覚とか、本当に行動で表れる人もたまに居るけれど。(それを少し想像したのか、小さく笑って。)そういうのはきっと趣味っていうのかな。日々を彩って楽しめる事が在るのはとても素敵だと思うよ。……そうか、君は人形なんだ。確かに生身の人では無さそうだと思っていたけれど。一目見た感じだと分からなかったな。……ふふ、君は前向きで良いね。うん、此の先に何かあるのか。まずは其処まで。(足音とともに時折聴こえる軋み音。気付いたかそうでないのか。君に合わせた足取りで階段をゆっくりと上ってゆく。)
花園・椿 2022年2月10日
(ほわんと脳裏に過ったのは川面から跳ね出た魚。その様に人も跳ねるのかと瞼を上下に動かし、ぱちりと開いた。)不思議な人もいるのですね。川面から飛び跳ねる人がいるなんて。――趣味、ですか。そう仰られると趣味なのかもしれません。日々の彩り、非日常のひとときを。あれらはそんな気が致します。(すらすらと出た言葉は無表情の侭、吐き出された。)こんな話を聞いた事が有ります。猟兵というのは、姿かたちが変わっていても違和感が無いものだと。それ故、でしょうか。はたまた私を作ったお父様が――いえ、何でもないです。(些か言葉が過ぎる気がする。出来が良いのだったのであれば、きっと軋む音なんて気の所為だと思うから。)……後ろを向いてもそこには何も無いのです。(前向きである自覚は特に無く、後ろを向いたところで何も無いときっぱりと言い放った。ゆっくりと登って行く足は頂きへと向かい歩いていく。其処に軋む音は響かなかった。)
ノヴァ・フォルモント 2022年2月21日
――川面から飛び跳ねる?(瞬きひとつ。漸く返された言葉の意味が分かって、小さく納得したような声が漏れた)……普通の人間は、たぶん水の上は跳ねないかな。魚に似てるならまた違うけれど、大抵は地面の上だと思う。(歩みながらもすらすらと淀みなく紡がれる、相手の言葉を静かに聴いていた。 ふ、と途切れた所で軽く君の方へ視線を移して。)……猟兵。此の世界だと認識はされている存在だけど。もしかして君もそうなのかな?何となく、此の世界に住む人達とは違う雰囲気を感じていたけれど。(猟兵同士で同族意識があるわけでもないと思うが。違和感を感じない事に気付けるのは自分も同じ存在だからなのだろうと。)……そうだな、後ろには自分の歩んできた足跡が残るだけだ。でも偶に、昔の事を思い出したりもする。それ自体は後ろを向く事とはまた少し違うのかもしれないが。
花園・椿 2022年2月21日
言葉の通りに受け取れば人も跳ねるものだと思ったのですが(違っているのだろうか。首をかくりと横に傾けて、貴方の説明に耳を傾けた後に首を真っ直ぐに正した)人は地面の上を跳ねる……それなら子供達が跳ねているのを見た事があります。確か縄を使っていました。あれに似ている感じでしょうか(何やら視線を感じる。くるりと振り返って見るは貴方の顔)はい、猟兵です。――ああ、人と違うというのであればそうでしょう。私は人形。所謂、ミレナリィドールという種族ですからそれもあるのかもしれません(貴方によく見える様に掌を見せた。関節の部分に入った線は人形の球体関節の繋ぎ目)そういう貴方も人のようには見えますが(視線は貴方の耳の横より少し上にある角へ)昔、ですか。懐かしむという言葉がそれにあたる様な気が致します(目を閉じて、瞼の裏で思い出すのは過去の光景。ぱちりと瞼を開いて)それはなんだか悪くない様な気が致します。
ノヴァ・フォルモント 2022年3月13日
(不思議そうに話を聴く様子を見て、小さく微笑んだ)……それは子供達の遊びだね。きっと縄跳びってやつだ。俺はしたことないけれど、楽しく遊んでいる様子を見ていると平和だなって思ったりするよ。……そうだな、あれに似ていると言えばそうかもしれない。説明しようとすると案外難しいものだな。(硝子細工のような君の赤い瞳と視線が合えば、ひとつ瞬きをして。)そう、やっぱり。……ミレナリィドール。うん、よく識ってるよ。俺自身はあまり会った事のない種族だから、そういう意味では君は珍しいになってしまうけど。(相手の視線が移った先、捻れる黒角の装飾がしゃらりと揺れ)ああ、うん。俺も普通の人間では無いよ。ドラゴニアンという種族を知っているだろうか?この角も隠そうと思えば何時でも隠せるんだけど(次ぐ言葉は無く、微笑みだけを返して)……昔を懐かしんで、悪くないと思えるのなら。きっとそれは君にとって良い思い出なのだろうな。
花園・椿 2022年3月26日
(ほうと息を吐く様に納得すれば小さく頷いた)縄跳び。そんな遊びがあったのですね。何時の時代も子供たちの笑う顔は良いものです、平和の証と言っても過言ではないです。(瞬きをせずにじいっと見つめていた瞳は乾燥もしない。けれど真似をする様にぱちりと瞬きをして、そうでしょうねと呟く)私も私の家族以外のミレナリィドールとは会った事がないので珍しいものだと思います。(開いた掌を握り締めて、ゆっくりとおろした手はぱんと手を打った)聞いたことはあります。ドラゴニアン。竜の姿をする方もいらっしゃるという。(視界の中で揺れた黒角の装飾は、綺麗に輝いているように見えて、ふと思って言葉にする)隠さずとも良いと思います。自分の好きな様にしても良いと思います。私も女給の身であれども、好きな様にしております。(階段を一歩上がる。給仕するには少々不釣り合いなスカートは弧を描いているが、動いても尚シルエットは崩れずに揺れた)
ノヴァ・フォルモント 2022年4月21日
(見つめ返され、真似をするように瞳を瞬かせた君に柔く微笑んで)ミレナリィドールでも君のように見た目で分かる人も居れば、人間と全く変わりない姿をしている人も居たりするからね。案外気付かずに会っている可能性はあるけれど。……君のご家族も。君と同じ様な人形の身体を持っているのか。 ふふ、知ってたか。そうだね、俺みたいに人に近い姿にも、竜に近い姿にもなれる種族だ。自然と何方かが定着して、同じ姿を取り続けている者が多いけれど。俺自身も、自分の竜の姿は知らないからな。……何かを隠すのは、その必要があるからかもね。ふふ、俺も今は自由気まま。好きなようにしている方だと思うよ。(旅をするには少々取り回しのし辛いこんな格好をしているのも。自分が好んでしている事だから)女給の身?普段は何処かの店で働いているって事なのかな。
花園・椿 2022年4月24日
態々出逢ってから「人間です」「人形です」などとは言いませんもんね。(それはそれで面白そうですが、と零すものの顔色は全く変わらず。)ええ、私の家族は同じ父様の手に因って創られたので。今は何処にいるのやら。元気にしていたら宜しいのですが。(気には掛けているものの、溜息を一つ零して目を伏せる。嘗てのあの光景は、今ではもう遠く。)竜の姿をご存知無い。(ぱちり。驚いたように瞳を丸くして瞬かせた。)誰しも己の知らない所はあるでしょう。かくいう私も、私の体の中はあまり知りませんし。(かつり、ヒールを鳴らして貴方の方へと振り向いて軽く頭を下げる。)ああ、申し遅れました。私、サクラミラージュのミルクホールにて女給をやっております。花園・椿と申します。
ノヴァ・フォルモント 2022年5月12日
ふふ、確かに。そんな自己紹介はなかなか聞いたことがないな。でも、敢えて問われたくない事情の人も居るだろうし。姿を変える理由は人それぞれなのかもね。……そうか、同じ人の手で創られた。それならご家族も君と見た目は似ているのかな。(溜息と共に零される言葉を聴いて、僅かに双眸を伏せ)たとえ離れていても、君が気に掛けている限りは何処かで繋がっている。家族の縁ってそう言うものだと思うな。 俺の場合は、生まれ育った時から周囲も人の姿だったから。これが当たり前だと思ってた。広く外の世界を知るようになってからだな、同じ種族でもより竜に近い姿をとる者が居るんだって分かったのは。でも今更になって姿を変える必要も無い。俺が知らないのはそんな感じの理由。(改めての自己紹介に、自分も軽く相槌を打ち微笑み返す)椿か、そういえば君の髪を飾る花もツバキだね。俺はノヴァというよ。普段は吟遊詩人のような事をしながら旅をしてる。
花園・椿 2022年5月13日
人それぞれ……いえ、ものそれぞれ、でしょうかね。それに今見えている姿が本当とは限りませんし。家族は私とは随分違う様な気が致します。しかし、父様の手に因って創られた傑作品にあることには変わらないのです。(瞳を伏せて思い出すのは家族の顔。蘇る記憶にゆっくりと瞳と唇を開いて、物申す言葉の数々は誇らしげに。)生活に支障もなければ姿を変える必要もありませんものね。 ええ。冬に咲く椿の花を模して造られた、ミレナリィドールですので。吟遊詩人。様々なものを見て回っているのですね。そうしたら私の家族とも出逢っているのかもしませんね。いつかは様々なお話を聞いてみたいものです。(くるりと前を向いて。とん、とん、と一定のリズムで階段を上がり、その先には何もなく。ただ墓標だけ。)
花園・椿 2022年5月13日
――ああ、また駄目でしたか。(残念そうな顔もせずに、その墓標に近寄り、しゃがみこんで一撫で。)少し前に亡くなられていたようですね。(鞄の中から取り出した手記帳に罫線を引いて、再び鞄に仕舞いこんだ。)ああでも、桜が綺麗です。此処で少し休憩してからまた歩むのもいいかもしれませんね。
ノヴァ・フォルモント 2022年5月13日
……同じ人の手で創られたのに、随分と違うのか。それは、敢えて創り手が同じにしなかったのかな?と、俺が感じた憶測に過ぎないけどね。 まあ確かに、人型で居る方が何かと都合は良いだろうな。特殊な世界を除けば、この世の中は人間の数が圧倒的に多い筈だから。 そっか、だから名前も椿。……吟遊詩人という肩書は、旅路のついでみたいなものだ。何かを伝え歩いているとか、そういった高尚なものでもない。うん、世界各地色々な場所を旅して来たよ。君が興味を惹く話題かどうかは分からないけど、機会があれば。
ノヴァ・フォルモント 2022年5月13日
(颯爽と先をゆく君を追い掛けて。階段の先には桜に囲まれた墓標が佇んでいた)……そのお墓は。椿の知っている人のものなのかい?(淡とした素振りの君を見て、何方かは判断出来なかった。軽く小首を傾げて訪ねてみる)
……そうだな。流石に足が少し疲れたかもしれない。(来た道を見下ろせば、だいぶ長い階段を上ってきたことが見て取れて)
花園・椿 2022年5月13日
私たち家族は花に因んで創られたので。四季の花に準えて作ったので、似ないのですよ。――思えば似せようと思えば作れた筈なのに。変な父様です。(己の居た環境ではそれが当たり前だったから。家族とは似るものなのか。そう不思議そうに目蓋を上下させて首を傾げた。)父様の傑作。冬の娘である私は椿の花に因るものなのです。芸に高尚も低いもないでしょう。いつかの機会があれば、御耳を傾けさせて頂きたい所です。
花園・椿 2022年5月13日
(ゆるりと首を振るい、はっきりとした物言いで答えた。)いいえ知りません。ですが、私の家族、父様の行方の手掛かりになる方だとは思っていたのですが……人との時間の流れは違うものですね。(ゆっくりと立ち上がって持ち上げたのは自分の鞄。)私は先にお暇します。まだまだ歩む先は沢山ありますので。
ノヴァ・フォルモント 2022年5月20日
四季の花か。そうだね、それなら似ないのも納得出来る。造り手、――君の父様が抱く椿の花のイメージが君自身なのかな。 ふふ、ありがとう。客観的にそう思って貰えるのは弾き手として素直に嬉しい。うん、機会があればその時は。君が望む音色を奏でられると良いな。
(首を横に振る仕草を見て、小さく瞬きをした)……そうか、椿はその人を訪ねて此処に来たのだっけ。そう遠くない内に、目的の人に巡り会えると良いね。(その様子だと既に幾つもの場所を探して来たのだろうか。君の想いが途切れない内に辿り着けることを密かに願って)椿はもう行くのだね。俺は、暫く休んでいくよ。此処から見える景色をもう少し眺めていたいし。(そうして、自分は鞄を地面に置いた。去る君の背に、気を付けて。と一声掛けて)
ノヴァ・フォルモント 2022年5月20日
改めて周囲を見渡せば、視界に広がる桜の海。遠く眼下に瞬く光は帝都の煌めく街並み。――美しい景色だった。けれどこんな辺鄙な場所に残された一つの墓標。生前は余程変わった人か、この景色がたいそう気に入ったのか。見知らぬ他人が抱く理由は定かではないけれど。
今宵の聴手は物言わぬ墓標のあなたと、愉しげに花揺らす桜の木々達だけ。置いた旅行鞄から三日月の竪琴を取り出して腕に抱える。もう一巡り景色を瞳に映し、静かに弦を爪弾いた。紡ぐ音色が去りゆく君の元にも届いたかは、識れない。
……〆