【個別】例えば、日の暮れていく公園で
新堂・十真 2021年9月6日
9月の6日。
彼女がひとつ大人になる日。
20歳。
この世界の人がはっきりと大人になる歳。
夕日の色が、微かに秋めく9月のはじめ。
閑散とした町の、人通りのない空いた公園。
ちょっと、散歩でもしようか、と。
◆
十真
リグレット
1
新堂・十真 2021年9月6日
……………。
……綻びに気づいてからは、結構早かった。
新堂・十真 2021年9月6日
……………。
いいのかよ、続けて。
リグレット・フェロウズ 2021年9月7日
……………。
意地の悪いひとね。
今この時に
……、……愛想を尽かされるその時になって、続けさせまいと縋り付くなんて、これ以上みっともないこともないでしょう。
溜まった澱は全て受け止めるのが、礼儀だとすら思うのだけれどね。
(そう、今日一番大きな吐息を一つ、吐き出して)
リグレット・フェロウズ 2021年9月7日
でも、いいわ。(顔を上げ)
それは後にして、先に私の話を聞きなさい、十真。
(傲然と、胸を張って、らしくない、みっともない言葉を口にした)
新堂・十真 2021年9月7日
嫌だよ?
ここでお前にペース握らせんの。
新堂・十真 2021年9月7日
いいわ、までは言ったじゃんお前。
そっから先の話を聞くとまでは言ってねえよ俺は。
(無効票)
新堂・十真 2021年9月7日
(一歩、歩み寄って)
リグレット。
リグレット・フェロウズ 2021年9月7日
…………、(それは、言ったけれども)(唸るように口を閉じて)
(正面から見つめたまま。目を細め、近づいてくる姿を見返して)
ええ。――なに、十真。
(硬い声を、返した)
新堂・十真 2021年9月7日
(その手首を取って)
おいで。
(有無を言わさず、腕の中へ抱き込む)
リグレット・フェロウズ 2021年9月7日
(何の抵抗もなく)
(手を引かれるまま――その腕の中に、収まって)
(無効票)
リグレット・フェロウズ 2021年9月7日
……貴方、もしかして。
私の言いたいこと、想像がついた上で、黙らせようとしていない?
(なんて。抱き返すでもなく、拗ねたような、少し小さな声が囁いた)
新堂・十真 2021年9月7日
……俺の中の「リグレット・フェロウズ」は
こんな簡単に腕の中に納まらない。
(無効票)
新堂・十真 2021年9月7日
……俺の中の「リグレット・フェロウズ」は
分かりやすい弱音を俺に吐いたりはしないし
(無効票)
新堂・十真 2021年9月7日
大人なんてわかりやすい区切りを経たからって
自分の決めたことを諦めたりはしないと思うが……
(無効票)
新堂・十真 2021年9月7日
正直、そんなことは全部どうでもよくなってきた。
リグレット・フェロウズ 2021年9月7日
バカだったのね。
(やっぱり。何も変わらぬ、拗ねたような声色で)
(大変に失礼な言葉を、吐息と共に、漏らした)
(無効票)
リグレット・フェロウズ 2021年9月7日
いいこと?
決めたこと、なんて。
私のこだわっていたこと、なんて。
そんなもの
…………、
(無効票)
リグレット・フェロウズ 2021年9月7日
……ぜんぶ、嘘よ。
貴方に対する嘘じゃない。
自分への、嘘。
(自嘲、するように。頬を、持ち上げて)
ああ……「リグレット・フェロウズでなくなる」だけは、本当かしらね。
誰かの思いをただ容れる、だなんて。長く持ってきた自分を致命的に投げ捨てることが、怖くて。
今更の、幼い日の夢にしがみついて、それが叶えば信じられるだなんて言い訳をして、結論を先送りにして逃げ出した。それだけのこと。
……下らない理由だと、間違った過程だと、理解した上で固執した拘りが。譲れぬ決断と呼べるほど、立派なものですか。
(無効票)
リグレット・フェロウズ 2021年9月7日
筋の通らない我儘を受け入れて、甘えさせてくれた時間は。
私にとって、倖せだと思っていたわ、十真。
――でも、私は。
簡単に捕まるし、強くもないし、ただ誕生日を節目に、子供らしい未練に踏ん切りを付けるべきかと思ってしまう程度の。
そんな、つまらない、貴方を失望させる女よ。
(言いながら。そっと、貴方の胸を、押し返そうとするように手を当てた)
(その手に、力は入っていなかったけれど)
新堂・十真 2021年9月7日
んなっ
…………。
(急にバカ呼ばわりされて、ちょっと面食らうが)
(無効票)
新堂・十真 2021年9月7日
…………。
(聴く。聴く。ただ、彼女を腕の中にとらえたまま)
(腕の中から聞こえてくる語りを、ひたすらに聞いて)
(聞いて、聞いて――そして、出てきた結論めいた言葉には)
(無効票)
新堂・十真 2021年9月7日
…………。
(その胸に、押し返そうとする力を感じて――)
(無効票)
新堂・十真 2021年9月7日
いや、別に良いよ、それで。
(いっそう、強く。――前よりもずっとずっと強くなったその腕で、もっと抱き寄せてやる)
だからさ、俺は……自分の中で作ってた……それを守らなきゃと思ってた
「リグレット・フェロウズ」は、もう良いんだって。
(無効票)
新堂・十真 2021年9月7日
俺しか見えないお前にしてやる。
リグレット・フェロウズ 2021年9月7日
……………………、
(あなたの、腕の中)
(少しばかりの、沈黙を経て)
(無効票)
リグレット・フェロウズ 2021年9月7日
面倒な女よ、私。
きっと貴方が昨日まで思っていたより、何倍も。(ぼそりと)
(無効票)
リグレット・フェロウズ 2021年9月7日
今も。
「嘘吐き。信じられない。人を勝手に抱き寄せておいて、失望したようなことを言ったもの。あれは本気だったわ、意地悪」って責めたいの、必死に我慢しているの。
だから、言ってあげない。もう見えてない、とか、そんな、綺麗で薄っぺらい言葉、絶対。
(そんな。拗ねた、そうとしか取れない声色を漏らしながら――)
(押し返そうとする、本当はそんな気もない、形だけの動きをやめて)
(無効票)
リグレット・フェロウズ 2021年9月7日
(緩く、あなたの背に、腕を回して)
(間近の、瞳を見て)
(無効票)
新堂・十真 2021年9月7日
知ってる……って言いたいとこだけど、想像以上かもしれない。
……でも大丈夫だよ。
(無効票)
新堂・十真 2021年9月7日
……回りくどい言い方はしてみせたけど
俺は今日だっていつだって、お前に向けてる言葉なんて全部「愛してる」の言い換えでしかないし……
……20歳、大人だろ。
もうそろそろ俺も、上品なやり方じゃなくて良いかな、って――結局、それだけのことだったんだけど。
(見上げてくる、その瞳を、笑みに薄めた目で見返して)
(無効票)
新堂・十真 2021年9月7日
…………。
(無効票)
新堂・十真 2021年9月7日
……じゃあ、先ず
(鼻先を寄せる。長い睫毛の動きも、分かる距離で――)
その、よく回りすぎる口から止めようか。
(無効票)
新堂・十真 2021年9月7日
(唇を重ねて――)
リグレット・フェロウズ 2021年9月7日
…………私も、言い換えるわ。
(熱い吐息と共に、囁く)
(よく回るのは、お気に召さないそうだから)
……ふたつ、いっぺんに。
(無効票)
リグレット・フェロウズ 2021年9月7日
(あなたしか見ない)
(愛してる)
(だから、つまり。回りくどく言い換えるなら――)
(無効票)
リグレット・フェロウズ 2021年9月7日
………………それと、愛してるわ。
(ちょっと迷って、片方だけは)
(やっぱり、そっと付け足した)
新堂・十真 2021年9月7日
(少しの間、まだ、吐息の届く距離で)
(すぐ傍で紡がれる言葉に耳を傾けて)
(無効票)
新堂・十真 2021年9月7日
……もっと可愛げのある言い方がないもんかね。
(なんて、言葉を返しながら)
(喋る唇が、まだ名残で熱いな――と、)
(無効票)
新堂・十真 2021年9月7日
ん。
俺も前からずっと愛してる。
(やっと、そんな素直な言葉を交換出来て、めでたしめでたし――)
(無効票)
新堂・十真 2021年9月7日
(というには、人生は読み物のように区切りよくはないわけで)
あと、もう一回。
(言葉を交わすのも、触れ合うのも、唇を重ねるのだって、まだまだ足りないから)
(無効票)
新堂・十真 2021年9月7日
(もう少しだけ長く、彼女の誕生日を祝う時間は――)
(つづく)