…IX… 碧水編む人へ
プリムララ・ネムレイス 2021年8月26日
親愛なる水峯様へ
ふと見上げる空に星は見えず、どうやら今度は私達が星々を照らす番になってしまったかの様に感じております。
私の四方を取り囲む四角い建物達は、昼に貯めこんだ陽の熱を夜に放っているようで、今も滲むような汗が私を苦しめるのでした。
水峯さまはお元気でしょうか?
今頃はどちらの世界に赴いていらっしゃるのだろうかと、貴方様を想う毎日でございます。けれども夜空の星は見えず、誰もその答えを報せてはくれません。
もしもこのお手紙が届くのならと一縷の望みを籠めて、こうして筆を執っております。
先日の水峯さまとの出逢いは、私にとってかけがえのない宝物となりました。
食べたこともないお菓子。
見たこともない魔法。
感じたこともなかった生命の物語。
その全ての出来事が、瞼を閉じればまざまざと蘇って来るのです。
私は今、猟兵への依頼に応じる為にUDCアースへ来ています。
こちらの雰囲気はかの街とは異なり、魔法を拒絶するかのような営みで溢れておりました。
そんな風景の中にも、例えばカフェーの椅子、薄暗い路地裏、そして晴れ渡る蒼い空を目にした時などは貴方様と過ごした一時を重ねて見てしまいます。
どうかお元気で。
また貴方様と再会できる日々を心待ちにしております。
追伸
こちらでもまた素敵な方との出逢いがございました。
いつか巡る世界の中でお会いした際にでもゆっくりとお話できたらと思っております。
プリムララ・ネムレイス
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プリムララ・ネムレイス 2021年8月26日
… 出会いの章 …
“水峯さんの印象”
飛空艇に乗って降り立った地は空の世界。
ブルーアルカディアへと観光で赴いた先で出会った男の方だったわ。
とても優しく、穏やかで、平和を愛するようなすごく素敵な方。
一緒にお喋りをして、お菓子を食べたりなんかしてとても楽しかったの。そんな事をしていると大切な鞄を盗まれてしまったりして大変だったわ。
でもね、私は彼とのその出来事の中でとても大事な事を学ぶ事になるの。
私は、物語というものは、ほんの限られた一部の人しか持ち得ない物だと思っていたのだけれど、物語を誰もが抱えている物だという事を水峯さんから教えて頂いたわ。優しく、諭すように。
お別れは本当に本当に寂しかったけれども、きっとまた逢えるって思っているの。今から楽しみね。