※施設詳細(2021/02/05開設時点)
待鳥・鎬 2021年7月25日
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作業スレより、描写抜粋。
随時いろいろ増えたり植えたり生えたりしています。
RPの参考に。
※元スレ
https://tw6.jp/club/thread?thread_id=58187&mode=last50
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●客間
若草色のカーテンの隙間から西日が差し込む。
サンルームを併設した客間には、大きさも形も違うテーブルがいくつも置かれている。一席だけの小さな丸テーブルから、ご近所さんと世間話を楽しむのにぴったりなダイニングまで――その多くはアンティークのようだ。そこに併せた椅子も一つ一つ異なっているので、お気に入りの席を見つけるのも楽しいだろう。
陽当たりで言えば南側に位置するサンルームがお薦めだが、日の高い時間なら、西向きの窓際も悪くない。サイドボードに飾られた一輪挿しの蝋梅が風に揺れると、柔らかな芳香が鼻腔をくすぐる。
部屋の奥にはカウンターが設けてある。家主はここでのんびり本でも読みながら、注文を受けたり楽しそうなお客さんを眺めたりする予定だ。テーブル下の棚には、すでに数冊の本と使い魔の寝床が用意してあった。
此処がどのような建物になっていくのかはまだ分からない。
ただ、訪れた人の笑顔がたくさん見れると嬉しい。
……そう夢想する家主のほうが余程楽しそうな顔をしていたが、それを知っているのは使い魔の羽蛇だけだった。
●前庭
サンルームの外は煉瓦畳のテラス席になっていた。
錆止めの塗装を塗り直したばかりの白いテーブルセットに座ると、前の住人が植えたのだろうか、藪椿の植え込みが路地からの視線を程よく遮ってくれる。
そこからは庭全体がよく見えた。
平棚仕立ての木通の、丸みを帯びた小葉がひらひらと北風に揺れている。
今はまだひっそりと寒さに耐えているが、季節が来ればのびのびと枝葉を伸ばし、零れるような可愛らしい花を咲かせてくれることだろう。
木通棚の他にも、植えたばかりの苗木が数種類。その傍には鉢植えの植物もたくさん置いてある。やはり殆どは休眠期のようで少し心寂しく感じるが、蝋細工のような檸檬色の花だけが、その姿と優しい香で寂しさを紛らわせてくれた。
今はまだ、眠りの季節。
幼い木の枝先でまあるく膨らんだ梅の蕾が、目覚めの時を今か今かと待っている。
●台所
客間のカウンターを抜けて隣室への出入り口をくぐると、そこはキッチンだ。
まず目に入るのは中央に陣取る広い作業台。手作り感のあるシンプルな造りだが、自分に合った高さのテーブルは作業しやすく欠かせない。
そして、壁際に聳え立つのは小さな引き出しが沢山並んだ棚――百味箪笥だ。保管環境を考え、此処には料理でよく使う生薬だけ厳選して置くことにした。乾燥生薬特有の香りが微かに漂っている。
その箪笥とは対角線上、外の光が入る窓際には、ガス台や流しを備えた調理台がある。台の下がちょっとした物置スペースになっており、頭上の吊り棚と合わせれば収納場所には事欠かないだろう。肝心の調理道具はまだ揃っていないが、足りないものはこれからゆっくり集めていけば良い。
ようやく形が見えてきた改装計画。
先は長いが、まずは一歩前進といったところだろうか。
●裏庭
まず目に入るのは小さな温室だ。
広さで言えば三、四畳程だろうか。全面が硝子張りのシンプルな形で、取っ手を付ければまるでカンテラのようだ。
近付いて中を覗くと、風変わりな植物が幾つも見える。その多くはこの辺りより南方に自生するもので、外では冬を越せない彼らのために、温室の中は魔導蒸気機械により一定の環境に保たれている。
カンテラハウスの外は、こちらも沢山の鉢が並んでいた。今は葉の少ないものや地上部が枯れたように見えるものが多く、どれも似通った印象を受けるが、芽吹きの時期になれば多種多様な植物が見られるだろう。
ふと、焚き火の匂いに視線を上げると、母屋の軒下では薪ストーブがぱちぱちと音を立てている。
木箱に腰を下ろし、冷えた手をかざす。乾いた熱気が手に顔に伝わってくる。
こうしてみると冬の寒さも悪くない。
暖を取り、草木灰は肥料に、焼き芋はお腹に。
実に無駄がないのである。
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