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【RP】教えて

葬・祝 2021年7月21日


ある、真夏の夕方の話。

「……あの、」

何時になく、硬い声色だった。
何時になく、硬い表情だった。

「聞きたいことがあるんです、けど」

通りすがりの戦神の服を掴んだまま、悪霊は身の置き場のない様子で僅かだけ俯いた。


☪︎*。꙳
はふりと珮李





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葬・祝 2021年7月21日
(快く受け入れてくれたことに安堵して、彼女を連れて神域の外に出た。神域の中では、話したくないことだったから。その間、白い小さな手が頼る先を逃さぬようにとでも言うように戦神の服を掴んで離さなかったことは、悪霊の意識の内にない)(落ち着いたのは、神域から幾らか離れた場所。霊山からも、桜源郷の宿からも離れた其処は、小さなせせらぎの聞こえる川縁だった。ふぅわり、蛍が黄昏の空に舞う。足を止めて、川縁の岩に腰を下ろした)
…………、……あの。……珮李に聞きたいことがあって。…………考えたんです。ずっと、考えていたんです、けど。私には、分からなくて。あの子にも、聞けなくて。……頼って、良いです、か。
(何から。何て。話せば)(流暢に言葉が出て来ない。視線が揺らいで、また俯く。戦神の服を離せないままの手に、僅かに力が籠った) (無効票)
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岬・珮李 2021年7月21日
(「ああ」「いいよ」)(普段から尻尾を遊び道具にさせているから、この厄災に触れられることにはとっくに慣れている。とはいえ、今日のそれはとても普段と呼べるような様子でもなく。短い了承の言葉を返してからは、とにかく彼が話しやすい場所まで移動するのを手伝った。人気も無い、静かな川縁を選んだのは彼だけれど。先導して歩くのは自分の方だった。この時間の水辺は、少し涼しく感じる。服の端を離すように言うのも憚れて、必然的に隣に座った) 頼っていいって言ったのは、そもそもボクだしね。声かけてくれて嬉しいよ。……とりあえず、ゆっくりでいいから話を聞かせて?
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葬・祝 2021年7月21日
……ありがとう、ございます。
(何から話せば。どうしよう。聞きたいことがあると言ったのは自分なのに。どうしたら、)(ぐるぐる。此処最近煮詰まり続けた頭が脳内だけで、人の心なんか分からないと泣き言を漏らす。変化は疲れるのに。“こわい”から、“いや”なのに。知りたくないって言ったのに。知らなきゃ駄目だとあの子が言うから)
…………その。……少し、前に。“大切”を、多分、知ってしまって。そのあと、“こわい”と“いや”を、……知りました。知らなきゃ駄目だって、言われて。…………でも、知ってから、……何だか、変で。落ち着かなくて。
(感情は、心は、人真似。そうであるのが当たり前で、学んだことを演じているだけで、状況に応じてそれっぽくしているだけで、自分の本当なんて何処にもなかったはずだったのに)(話し始めが此処からで良いのかも、正直、分からない) (無効票)
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岬・珮李 2021年7月21日
(隣から聞こえてくる言葉は相変わらず頼りなく、途切れかけの水滴のよう。聞き漏らさないように文字通り耳を傾けてみれば、ざっくりとはしているものの大事そうな単語はしっかり聞こえてくる) なるほどね。大体わかったよ。 (話が早いと、そう思われるかもしれない。けれど、自分は神である前に人だったのだ。こういった感情についてならば、ある意味専門といってもいい。対して、横にいる幼子は慣れないものに翻弄されているのは明らかで) 一応確認しておくけど、その大切っていうのは。……カフカの事で間違いないね? (無効票)
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葬・祝 2021年7月21日
(こくん)(小さく、頑是無い幼子のように悪霊が頷いた。りり、と小さく鈴が鳴る。あの子のお宿で、お社で、あの子の神域で暮らすために、あの子の愛すべき周囲を巻き込まぬようにと瘴気を封じて姿形を変えた封印具が)
……依頼で。想いを露わにするっていう、水を飲んで。甘くて、甘くて、蕩けるくらいに甘くて、優しい口当たりで。でも、そんなの、私のあの子への想いなんて言われても、……大切なんだってことも、……やっと、説明されて何となく分かったのに。……あの子も、私の手からそれを飲んだから。私の想いとやらが知られているんでしょうけど。何も、……言わなかった。分からないことは聞いて良いって、それが頼ることだって、……あの子が言ったのに。
(恨み言めいた言い方は、今までのこの悪霊ならしなかった言い方だ。それは、安心し切っていた所を急に手を離されて、途方に暮れた子供の言い分ように聞こえたかもしれない) (無効票)
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岬・珮李 2021年7月21日
また随分と変わったものを口にしたね。けど、なるほど。何かきっかけでもなければ、当分はこのままかもっとゆっくり進むと思っていたけど。 (良いのか悪いのか、急転直下の出来事だったのだろう。理解が及ばぬうちに次から次へと未知が押し寄せてきたのでは、こうなってしまうのも頷ける。少し身を寄せて、小さい背中をとんとん。宥めるように軽く叩く) ああ、落ち着いてよはふり。これはボクの思うことだけど、別にカフカは意地悪をしてるわけじゃないんだよ。理由はいくつかあると思うけど。多分……あの子も、キミと同じようにいろいろ考えている段階なんだよ。きっと。 (無効票)
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葬・祝 2021年7月21日
……あれは知りたくないし気付きたくない、ですよ。どうしてか酔っ払ったみたいで、それ以上聞くに聞けませんでしたけど。
(あやすように背を叩かれた悪霊は、岩の上で片腕で膝を抱くようにこぢんまりと丸まって、膝に顔を伏せた。片手は、相変わらずぎゅうっと、まるで縋るよすがを逃がすまいとするように相手の服の端を握ったままだ。完全に無意識、無自覚なので、恐らく言われるまで手は離さない)(山神は可哀想に、千年以上の想いを味としたものを一気に感じ取ったものだから、まるで強い酒を飲んだかのように一瞬で酩酊してしまったのだけれど。それは、この悪霊には分からない)
……それに。いやだとか、こわいとか。知ってから。……何だか、変で。時々、胸がぎゅうっとして、痛くて、良く、分からなくなる。……知らなきゃ駄目だとあの子に言われました、けど。そのあの子が知りたくないなら、……誰に聞いたら良いか、分からなくなって。
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葬・祝 2021年7月21日
…………、……だから。珮李に。
(小さな声だった) (無効票)
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岬・珮李 2021年7月21日
(彼がこっちを見ていないうちに、小さく口だけが動いた。「カフカめ」)(社の主に少し小言も言いたかったが、この分だと予想通り向こうも今は考え事の真っ最中なんだろう。酩酊を催すほどの想いの甘露に、それを忌避無く甘受したこころ。こんなはずではと思っているのは、きっとお互い様か) うん、大丈夫だよ。ボクが教えられそうなことなら、なんでも教えてあげるから。 (ぽんぽんと、手は一定のリズムで傍らの悪霊をあやす) ねえ、キミは今何を怖いと思う? 何を嫌だと思う? うまく言葉にできなくてもいいから、少し考えてボクに聞こえるように音にしてみて。……大丈夫。ちゃんと答えるから、任せてよ。 (無効票)
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葬・祝 2021年7月21日
(縮こまって小さく丸まった頼りない背は、本当の子供と何ひとつ変わらない。封印具を身に付けて生まれて初めてこの幼さになってしまった小さな体躯は、本性は元より、一番長時間慣れ親しんだ身体でもない。なのに、子供じみている自覚はある。でも、どうして良いか、分からないのだ。あの依頼の日から、もう十日以上経った。でも、考えても、考えても、何ひとつ掴めない。そろそろ、あの山神相手に何時も通りを演じるのも限界が近かった)(変化は、こわくて、変化は、酷く疲れる。知ったら後戻り出来ない予感がずっとある。存在としての本能が、知ることを拒否する。知りたくなんか、ない。厄災が、本当の心なんて芽生えて、理解して、何になる。どうせまた彷徨うのに、そんなもの必要ない。弱みなんて、必要ない。分かっている。知っている。自分には、× × ×には、そんなもの必要ない)
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葬・祝 2021年7月21日
(でも)(でも、だって)(知って欲しいと願われた。あの子に、大切なあの子に、どうか知ってくれと願われた。知ってくれたら嬉しいと。何時だって自分が教えてやるから平気だと。なら、知らないと。あの子が知りたくなくても。自分は、これを知らなきゃ、いけない)(本能の忌避感を抑え込んでいるのは、偏にそれだけが理由だった)
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葬・祝 2021年7月21日
…………、依頼で。あの子に関する記憶を、……一時的ですけど、消されました。名前が、分からなくなって。あの子とのことが、分からなくなって。名前を呼んで良かったのかも、……分からなくなって。必死に記憶を掻き集めても、みっともなく形振り構っていられなくなって悲鳴を上げても、……呼べなかった、のが。……いやで。こわくて。それは、そういうもので、それで良いんだって、……教わって。……あの子を忘れることが。忘れられることが、……こわいと、いやだと、知りました。
(膝に伏せたままの顔は、上がらない) (無効票)
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岬・珮李 2021年7月21日
うーん。……まあ、それは当然だろうね。大事なひとのことを忘れたり、忘れられたりしたら怖くもなるし。当然嫌だとも思う。そのカフカの言葉は間違ってないし、ボクもそれでいいと思う。 (小さな口に、次から次へとパンを押し込んでいるようなものだ。できる限り小さく千切って飲み込ませなければ、きっと窒息してしまう。並んだ背中で、はたりと黒い尻尾が一度動いて岩を擦る) けど、今言ったよね。忘れられることも嫌だって。自分がカフカのことを、彼に関する記憶を持っているだけじゃ、安心できない。同じように、自分のことをちゃんと認識していて欲しい。……はふり、っていう存在をしっかり見ていて欲しい。……そう思ってるように、ボクには聞こえたよ。 (無効票)
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葬・祝 2021年7月21日
……ずっと前の、依頼で。幻を見せる、と言うのが、あって。カフカ……の、幻に、「誰だ?」って。言われて。その時も、息が詰まって、動けなくなって。多分、あの時も、私は自分だけだったから分からなかっただけで、いやで、堪らなかったんだと、……思い知って。
(それは、絶望を与える、という敵だった。「お前さん、誰だ?」と。見知らぬものを見るような眼差しが、この悪霊の目の前で体現された絶望の形だったのだ。知らなかったから、息が詰まってどうしてか声が出なくて動けなくなっただけで、終わったそれ。でも、今なら分かってしまう。いやだった。こわかった。声も出ないくらい。自分を見るあの金の眼差しが、柔い熱を持つあれが、片方になってしまったあれが、見知らぬものを見るように何の温度も持たなかったことが、いやでいやで、こわかった)
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葬・祝 2021年7月21日
…………、……ねぇ、珮李。カフカに、どうして自分を思い出して死を踏み止まってくれなかったんだって、言われたんです。りゅうこに、カフカと一緒に生きたいってことなんじゃないのかって、言われたんです。でも。でも私は。……何時か手放さなきゃいけないものを、生きる理由になんてしたくないんですよ。
(言葉の中身は彼方此方、飛び飛びだ。纏まりがない。頭に浮かぶことを必死に出力しているだけで、理論立てて順番に話すことが出来ていないのだ。手放さなきゃいけないもの。また、胸が痛む。膝を抱いていた片手が、自分の胸の着物をぎゅっと握った。じくじく。ずきずき。最近、何時もこうだ。どうして、) (無効票)
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岬・珮李 2021年7月21日
(ぱちり。目を瞬かせる) そんなこと、言ったの? (言ったのに肝心要で腰が引けたのか、あの天狗は。仕方ないとは言え、まったくと内心で肩をすくめる。こっちもあっちも、可愛らしいことだ) まあ、そう言ったなら少なくともカフカは、はふりが死んでしまったことが嫌なんだろうね。りゅうこの言葉を補足するのであれば……カフカも、キミと一緒に生きていたいと思っているのかもしれない。 (しゅるりと尻尾を二人の間にねじ込んで、服を掴んだままの手の甲に載せる。ふかふかの、馴染みのある毛並みは多少安心できるだろうと考えて。なにせ、ここから少し切り込みを深くしなくてはいけない)
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岬・珮李 2021年7月21日
はふり。キミが考えていることは、生まれた時から感情を兼ね備えている生き物からすれば、実はそんなに複雑な話じゃないんだよ。でも、キミにとっては少しショックかもしれない。……けど、ボクはキミに嘘は、ボクの神に誓って言わないから。拒絶しないで聞いて欲しい。
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岬・珮李 2021年7月21日
――手放したくないって。そう思ってるんだよ。キミの心は。 (無効票)
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葬・祝 2021年7月21日
(こくん、とまた頷く。自分が死んでから、あの山神がどんどん過保護になっていることも知っていて、長時間お社を空けることもなくなったのにも気付いている。自分の魂を繋ぐための眷属も作って、神域に厄災を受け入れさせて、周囲からのあれそれを跳ね除けて、誕生日には神域を顕現させる術まで譲渡された。少しずつ、あの子が言葉を告げてくれるようになったのも気付いている。大切だとか、想っているだとか。初めて聞くような言葉ばかり。ずっと、自分が勝手に所有して振り回しているとしか、あの子にとってはただの腐れ縁でしかないとしか、知らなかったのに)
……結局居残っているんですから、死んでみたって何も変わりませんでしたよ。あの子は、……あの子には、何時か共に生きて行きたいと願う唯一が居ます。私のものじゃなくなる。
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葬・祝 2021年7月21日
(手の甲を擽る柔い感触に、人真似の表情が抜け落ちた視線がゆっくりと手の甲を見下ろす。柔らかくて、あったかい。生き物は、生きているものは、あったかい)(初めて触れた生きているものが。あの子が、あったかくて。だから、あったかいものが好きで。あの子の翼が好きで。だから、もふもふしたものが好きで)(振り返っても、振り返っても、作り上げて来たこの“はふり”にはあの子との記憶ばかりで。あの子のことばかりで)(どうせ、どうせ何時か手放すのに)(他ならぬあの子が、他の誰かと生きて行くことを望んでいるのに)
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葬・祝 2021年7月21日
(嘘は言わないと、拒絶をしないで、と願われる言葉に、躊躇いがちに頷くより早く。「手放したくない」。聞こえたその言葉に、ひゅ、と息をし損ねたように喉が鳴った。反射的に上げた視線は、呆然と、何の表情も作り損ねたまま。ただ僅かに見開かれた鏡面の眼だけが、相手を映す。はく、と小さく唇が慄いた)(それは、)(それは、考えるべきことじゃないはずだ。自分が、× × ×が考えて良いことじゃなかったはずだ)(だって、だって手放さなきゃ)
…………、ッ、な、ん、……そんな、の、違っ、
(動揺のあまり、言葉が乱れる。反射的に違うと言い返そうとした声が、「拒絶をしないで」と願われた言葉に従うように詰まる)
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葬・祝 2021年7月21日
(違う。違うはずだ。あの子の意志を妨げる気なんて。妨げたことなんて、一度もない。ないのに)(何でこんな風に考えるようになってしまったんだろう。その日が来たら、おめでとうございますと笑って、見送って、あの子を手放して消えるだけのつもりだったのに)(それだけのつもりで。数百年、あの子の恋を見続けて来たのに)(“私のものじゃなくなったあの子なんて、見たくない”)(違う!!) (無効票)
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岬・珮李 2021年7月22日
――ようやくこっち見た。 (無理やり引き剥がしたって、すぐに隠れていただろう顔を。漸く視線が捉えた。すかさず両手を伸ばして、真っ白な両頬を包んで。下げることを引き止める) 落ち着いて、ゆっくり呼吸をするんだ。大丈夫、大丈夫だからね。 (悪霊に呼吸など、もはや意味はないと知っている。それでも、まるでひとが心を落ち着かせるためにするようなことが、今の彼には必要なのだと理解している) キミが、カフカを手放したくないと思うことを否定したいのは分かるよ。だって、大事なんだものね。大事だからこそ、その日が来たらちゃんと手放さなくちゃって思ってるんだよね。それは、とても偉いし、美しいことだけど。……ちょっと時間、かけすぎちゃったね。
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岬・珮李 2021年7月22日
ねえ、はふり。ひょっとしたらキミはまだ、以前のような不安も苦しみもない。心を知らぬものに、今なら引き返せるかもしれないと思っているかもしれないけど。――あいにくと、とっくに手遅れだよ。もし、引き返すタイミングがあったとするなら。それは、カフカに出会う1秒前までだ。 (ここ最近で急にと思っているかもしれないけれど、単に積み重なったものが決壊しただけで。きっかけはもう、はるか昔の話なのだ) 不変というものはまず存在しないからね。何事も、常に変化をし続けている。……それは、キミは勿論。カフカだってそうだよ。
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岬・珮李 2021年7月22日
カフカがキミに答えをくれなかったのはきっと、自分自身の変化に気がついてしまって。それをどう消化するのかに悩んだんじゃないかな。すぐに答えが出なかったから、キミに言葉をかけられなかった。だからね、今のキミとカフカはお互い様みたいなものだよ。 (そう考えると面白くて、微笑ましい。ああ、と思い出したように呟いて) それとね、はふり。既定路線みたいに言ってるけど――例のお姫様がカフカを選ばないって未来も、普通に可能性あるからね? (無効票)
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葬・祝 2021年7月22日
(頬にぬくもりが添えられて、相手と視線が絡む。表情の抜け落ちた幼い顔は、その瞳だけが怯えと恐怖と混乱を孕んで揺れていた。はく、はく、と声なく唇が震える。違う。違う。違う。そんな。違う。音なく、繰り返される譫言。首がほんの少し、小さく横に振られる。やだ。ちがう。ちがうのに。あの子の意志を妨げる気なんてないのに。なかったのに。ただ、一緒に居ただけだったのに)
なん、なんで、ちが、わたし、わた、しは。私、ちが、ちがう、ちがうのに、ちがう、私は、そんな、ちが、う……!
(一緒に、居たかっただけだったのに)
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葬・祝 2021年7月22日
(時間を、掛けすぎた)(初めて生きているものに触れて。ぬくもりを知って。柔らかくて、あったかい。生きているものを知って。笑うことを知って。他愛もない会話をすることを知って。甘い物が美味しいと知って。護るってこんなに大変なんだと思い知って。あの子を奪われぬようにと所有印を刻んで。やがて、あの子が恋をして、女の姿だと傍に近付けなくなった。なら、と女の姿を取らなくなった。あの子が恋を成就させて、数十年、あの子と離れた。ある日、あの子が泣きじゃくっていた。死んだ女の名を呼んで、金の目が溶けてしまうんじゃないかってくらいに、泣いて、泣いて、笑うことも忘れて泣き続けて。居なくなるつもりだったのに、泣き続けて死んでしまうんじゃないかと思って、足を止めてしまった。泣き止むまで、何日でも傍に居た。やがて泣き止んだあの子は、また笑って、魂を待つと言ったから、その日までまた一緒に居ようと思って)
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葬・祝 2021年7月22日
(また、あの子が女を見付けて、また、また、その繰り返し。あの子は少しずつあまり泣かなくなったけれど、それでもあんまり泣いたあの日を知っていたから、立ち去れなくて。桜の香りで哀しそうな顔をするから、春がきらい。嗚呼、そうだ。きらい。きらいだ。きらいだから。あの女にも、無関心で居たかった)(だって)(だって、あの子は私だけのものだったのに)(積み重なって、積み重なって、積み重なった感情の山。知らなかっただけで、出し方を知らなかっただけで、それは確かにずっとずっと、人知れず、己さえ知らずに其処に在った)(とっくの昔に手遅れなのだ)
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葬・祝 2021年7月22日
(ふるふる、と小さく首を横に振る。変化は、こわくて、変化は、疲れる。いやだ。知りたくなんかないのに。知って欲しいって、あの子が。どうして。胸の着物をぎゅうっと皺が寄るほど握り締める。ずきんずきんと痛むそれが何かも分からず、もうどうして良いかも分からなかった。泣き方も知らなければ、泣き喚くことすら出来やしない。痛くて、痛くて、こわくて、くるしい。知るな。知りたくない。知るな。頭が痛くて、本能が喧しい)(けれど、カフカもそうなのだと言われて、一度強く唇を噛む。だって、あの子もそうなら、逃げられない。逃げたら、置いて行ってしまう。あの子を、泣かせたくない。いやだ)
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葬・祝 2021年7月22日
(震えた息を、言われるままにゆっくり吐き出す)
……あの子は、片目を、力を、彼女に差し出しています、から。彼女は、何時か神になる。同じ永遠を、一緒に生きるんだと、ずっと。
(今にも泣いてしまいそうな鏡面の眼差しは、涙を知らぬまま。微かに震えた声は、それでも山神の名で拒絶と逃走から踏み止まった)(あの子の恋が叶わない、なんて。想像したこともなかった) (無効票)
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岬・珮李 2021年7月22日
(感情の波が一気に押し寄せているだろう様子を前に、できることといえば大丈夫と優しく語りかけるくらいだ。溢れ出すものを前にして、どれほど辛いだろうか。分かるのは当人のみだから、せめて和らげるものを提供しようとした。頬を支えたままの手で、そこに無い涙を拭ってやるように親指で擦り) 繰り返して、繰り返して。それがどんなに同じに見えても、最後まで同じとは限らないよ。いや、同じじゃいられないんだよ。殆どはね。確かに、カフカの想いはとても一途なものだけど……お姫様にしたって、やっぱり完全に以前と同じ存在じゃあない。
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岬・珮李 2021年7月22日
だから、キミが想像している未来なんていうのは架空でしか無いんだよ。ましてや、一途って話ならキミも相当なものだ。 (ふふ、と笑って。もう一度深い呼吸を促す。長年に渡って溜め込んでいたものを自覚するのだから、すぐに全て飲み込めるはずなんて無い。けれど) だからね、はふり。キミはちゃんと、欲しがって良いんだよ? 自分の大事な存在を。全てを見つめてきた、神狩・カフカってひとのことを。自分のものにしたいんだって、叫んで良い。キミ自身がそれを許さなくても、ボクが許すから。
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岬・珮李 2021年7月22日
だから約束。ちゃんと、カフカと話をしてあげて? あの子に嘘をつかないで、自分自身にも嘘をつかないで。思うことを言って、キミが欲しい物を教えてあげて。……言葉にしないと、なんにも伝わらないものだよ? (無効票)
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葬・祝 2021年7月22日
(頬を、目の下を優しい指がそっと撫でて行く。頭が痛くて、ぐらぐらする。吐き気さえ感じるようなそれは、オーバーヒートしてしまったようなそれだった。脳の過回転。知らなかったはずのものが、一気に押し寄せて、無理矢理に回路を繋げて行くようなものだった。小さな震えが止められなくて、もう一度唇を噛む。強く。ぶつりと皮膚を噛み切るまで。聞きたくなくて、こわくて、知りたくなんかない。でも、嗚呼そうだ。でも。殺されるなら、× × ×じゃない何かになってしまうなら、文明の発展と解明によってなんかより、そんなものなんかより、あの子が良かった)(宥めるような、慰めるようなその指に、ぎこちなくそっと擦り寄った。たすけて、なんて誰かに救いを求めることすら知らない妖は、持て余すそれらを己の中で何とか噛み砕こうと、ただただ、必死だった)
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葬・祝 2021年7月22日
(千年と少し。ずっと、ずっと、ずっと。振り返っても振り返っても、あの子のことしかなかった。あの子が笑うから。あの子が泣かないように。あの子の意志を妨げぬよう。あの子が甘い物が好きだから。あの子が幸せになれば)(私の中に刻んででも無理矢理にでも残したかった。あの子の中に縋り付いて爪を立ててでも残したかった。忘れたくなくて、忘れられたくなくて、飽きてしまいたくなんてなくて)(何時から、こんな、)
…………あの子の恋を、邪魔なんてしたくなかった。でも。……でも、私は、……“私だけのものじゃないあの子なんて、見たくない”。だから、今度の永遠が実ったら、……カフカの元からは消えようと、思って。居て。
(訥々と。小さく震えた少年の声は、そのまま、幼子のようだった)
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葬・祝 2021年7月22日
…………言っても。良いんです、か。私。いやだって、私だけのもので居てって、……願っても、良いんですか。
(頬に手を添えられていて、俯くことが出来ない。けれど、揺れて怯える眼差しが伏せられる。まるで叱られることを、嫌われることを恐れる子供のような、そっと、小さな声)(この悪霊は、本当の意味で何かを欲しがったことなんて、なかった。戯れで欲しがってみせることはあっても。全ては、嫌だと言われれば笑ってなかったことにしてしまえる程度のものでしかなかった。酷く、無欲なそれでしかなかった)(でも)(今こうして、たったひとりを手放したくないと、いやだいやだいやだと、生まれて初めて駄々を捏ねて、胸が痛くて苦しくて泣けもしないのに泣きそうな顔をしている) (無効票)
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岬・珮李 2021年7月22日
いいよ。というか、それを言う権利は誰にも奪えないんだよ。神様だって手出しできない。 (してくるような無粋な手が仮にあるなら、それらは自分が斬って捨てよう。せっかく自覚して、せっかく芽吹き始めた大事な種を。幼子のように怯えて震える彼を。損なわせるものなんて、今更あってはいけない) 大事だからこそ離れていくのを見送るだけなんて、あんまりにも綺麗すぎる。ボクはね、キミもカフカも大事だから。二人が笑ってるほうが嬉しいよ。 (両手を離す。髪が乱れないように、軽く手のひらを置いて撫でて) あと、約束を被せるようで悪いけどもう一つ。――諦めちゃ、だめだよ。その想いも、心も。怖くても立ち止まらずに、痛くてもどうか前に進んで。 (ね? と小首をかしげて言い聞かせるように囁いた) (無効票)
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葬・祝 2021年7月22日
(生まれてしまった時から厄災でしかなかった妖は、生まれた時から追われて彷徨うものだった。何も分からず生きる意味もないけれど本能でただ生きて彷徨っていただけのそれが、休む間もなく追われ、傷付けられ、殺され掛けて、何も吸収しないはずがないのだ。幼い少年の姿をした奇跡に出逢う前に、妖の中には、己が排除されるべき厄災だということが世界にとっての当然として刻まれていた。だから、怯えられ忌避され憎悪され嫌悪されることは当たり前で、何時か少年の手を離すことも当たり前で、幸福の場からは立ち去るのが当たり前で、何かを求めるなんてことは思い付きもしなかった)
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葬・祝 2021年7月22日
(それなのに。引き留めたい。いやだと言いたい。こんな風に胸が痛いのも苦しいのもいやだ。渡したくない)(与えられた切っ掛けで決壊して、濁流のように溢れて妖を翻弄する感情は、あの子が欲しいと悲鳴のように叫んでいた。とらないで。奪わないで。私のたったひとつ。数百年積み重なり続けた、子供のような唯一の願いを、戦神の優しい声が、頭を撫でる手が肯定する)
…………っ、……は、い。
(呼気が震える。息なんかしなくて良いのに。身に付いた人真似を全て放棄することがこわい。表情は抜け落ちたまま、作れそうにない。こんな時のための表情なんて、知らない)(でも。でも。許されている。良いんだと、肯定されて、頭を撫でられている。厄災の塊を身内だと、どうでも良くないと言ったひとが、そういうのなら。それで、良いのか)(小さく、首が縦に振られる)
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葬・祝 2021年7月22日
(嗚呼、そうだ。諦めたくなんか。手放したくなんか、)(ないんだ)(望むことを。願うことを。お前の意志を妨げるかもしれないことを)(どうか、)(許して) (。)
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岬・珮李 2021年7月22日
……よし、良いお返事。 (ぱっと笑って、満足げに頷いた。自分が伝えたいこと、教えたいことは全て言えたと思う。言葉がしっかりと通るように、一言一言に想いを乗せた。それで、結果的に苦しませる部分も出てしまったかもしれないけれど。済まないと思いながらそれでもいいと、本気で向き合ったつもりだ) まあ、今急に色々言われたし。ゆっくり整理したりもしたいでしょ。キミのペースでいけばいいよ。はふり。 (すっかり暗くなった空を見上げる。視界の前を、ほの明るいホタルが通り過ぎた) ……さて、それじゃあお社に戻る? 急ぐものでもないし、ゆっくり歩きながらさ。 (。)
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葬・祝 2021年7月22日
(頬から手が離れて、反射のように相手の服をもう一度掴み直した。あたまいたい。きもちわるい。ぐらぐらする。つかれた。精神の不調は霊体に出る。きっと、まだしばらくは色々考えて飲み込まないといけない。急に血が巡り出したように、どくどくと脈打つような感覚。死者に、霊体に、そんなものないから、全ては錯覚でしかないけれど。厄災の己が、死者が、先を望んでも良いのか、あの子を希っても良いのか、まだ悩むけれど)(それでも。少なくとも。目の前の相手は、それを良しとして背を押してくれるのだと知った)
……戻ります。まだ、……色々、考えたいですし。
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葬・祝 2021年7月22日
ただ、今夜は、……あの子と顔を合わせる自信がないので。
(小さく、弱い声が言う)(「帰ったら引き付けておいてあげるから、部屋に入って眠っちゃいなよ」)(戦神が笑って、服を掴まれたままで殊更ゆっくりと先を歩き出す。それに相変わらず引き続きあやされていることを自覚しながら、蛍火の夜道を歩く)
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葬・祝 2021年7月22日
(この日、初めて)(厄災の妖は、己の本音を知ったのだ)(たったひとり、あの子を、誰にも、渡したくないのだ、と)(その本音がどうなるかは、未だ、)
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葬・祝 2021年7月22日
【〆】
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