…I… ブルーアルカディアの青い空
プリムララ・ネムレイス 2021年7月5日
飛空艇のタラップがひどく揺れるものだから、思わず前の方の手を取ってしまったわ。おかげで皆の注目を集めてしまったの。
初めて訪れる浮遊大陸の街は活気にあふれていて、露店が並ぶ通りを歩いているだけで嬉しい気持ちになるのね。ここがしばらくの私の拠点。まだ旅は始まったばかり。これだけ人がいるんですもの。きっと素敵な事だって起こるはずだわ。
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ここはブルーアルカディアでの輝きに満ちた時を綴ったページ。
どうかあなたの足跡を残していってください。
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プリムララ・ネムレイス 2021年7月18日
(たっぷり時間をかけて選んだ色とりどりのマカロンたち。小さなバスケットいっぱいにそれらを盛って、着いたテーブルに二人同士。それも向かい合わせじゃなくて妙に距離感の近い隣通しに座り。向かいの椅子二つには甘く漂う虚空をのせて)
お母様がね、隣同士の方がお話が弾むって言うのよ?
向かい合わせは敵対関係。隣同士は友好関係なんですって。お母様とお食事を摂る時はいつも隣に座ってくれたわ。
(端から見れば中の良いカップルにも見えちゃうような位置関係で、歳上の水峯を見上げて)
それで、魔法のお話でしたっけ。いいですよ。なんでもお話してあげるわ。あむ。(マカロンを一口。ふわっと広がるストロベリー!)おいしいです!
プリムララ・ネムレイス 2021年7月18日
(目尻をさげながらバスケットの中の丸たちを味わって、次第に落ち着いたように口元を拭きつつ)私もね、和邇についてもっと知りたいと思っているの。
他にも仲間はいらっしゃるのかしら?それともお一人なの?
水に棲んでいらっしゃるの?お魚が好きでいらして?
どうやって呼吸をしているのかしら。(堰を切ったように興味が沸いてくる。人間は大好きだけど、知らない種族の方もとっても魅力的)
あ、ごめんなさい。私ばっかりね。水峯さんのお話も聞かないと。
加美歩・水峯 2021年7月22日
(少女と同じくらい時間をかけ、数々のお菓子と睨めっこ。籠には大きめなタルトと、小皿に置かれた青い花の砂糖漬けは瓶詰のもの。店主によれば此処ではない、花畑の広がる島にて採れるものであると……)
(席は隣り合って、思わず慣れない居心地の良さに)
ほほう、それは初めて聞いた話だ。誰かと隣合ってくつろぐことなぞ殆ど無いから、いやはや新鮮に想うよ。……お母様、か。愛情の深い良い母親がいるのだな。懇篤ある娘に育ったのも頷ける。
(指先で取った砂糖漬けの花びらを口に運びつつ)……それはそれは、有難う。僕は魔法の類をよく知らないのだが、本によれば様々な体系があるそうな。焔のような現象を弄る者もいれば、より根幹的な概念に干渉する者もいると……ララは何をどう扱えるのか、訊いてみたいのだよ。
加美歩・水峯 2021年7月22日
(美味しそうに菓子を口に運ぶ少女、時間のゆっくりと流れる空間に寛いで)
然らば答えようか。我々は霊力を持つが、あくまで獣の類だ。仲間ももちろん、父も母も友人もいるさ。いたって普通の生態だろう?
(自ら誇りに想う和邇の身、たくさんの質問を投げかけられれば、思わず嬉しくなってしまい)そうだとも。此度はこうして水より出でて人の姿をとっているが、我々は深い海に棲む。魚は好きだぞ、何せ焼くと美味いし生でも美味い。米によく合うのが特に好いな。呼吸か、水の中にてえらを用いるが、内を巡る水により陸でも問題なく活動できるとも……ああ。(思わず喋りすぎたと、少しばつが悪そうに口を止めた、塞ぐようにタルトを頬張る)
プリムララ・ネムレイス 2021年7月24日
(隣の青いお花を見ればあらおいしそう、とお行儀悪く手を伸ばそうとして)いけない、お母様に怒られちゃうわ。
(思い出したように手を引っ込めると、様子を伺うように水峯の顔を覗いて)私のお菓子とお一つ交換していただけないかしら。
(そんな事を言いつつも水峯の紡ぐ言葉に耳を傾けて)貴方にはお母様はいらっしゃらなかったのかしら?ううん、待って。ごめんなさいね。
まずは貴方の質問にお答えしなくちゃですね。(居直るように椅子に浅く座り直して一息。それから自身の中の宇宙に魔力を伸ばして――)
プリムララ・ネムレイス 2021年7月24日
(すると取り出した魔導書がパラパラと捲られてとあるページが開かれる。――《IX︰隠者》の頁)
水峯さんにお水を注いであげて?
(刹那、背後には厳かな意匠の柩が一体。その重たい蓋をずらして伸びてくる死者の腕が、周りを這うように確認すると水差しを掴んで)
あ!やだ!(それを倒してしまったようで、慌てて魔法を消すとあたふたとテーブルと濡れた服を拭い)
ごめんなさい。濡れてしまわなかったかしら。
プリムララ・ネムレイス 2021年7月24日
私の魔法は全てお母様から引継いだものよ。56の魔法と22の大魔法。
炎をだしたり雷を呼び出したり、なんだか色々あるのだけれど特に大魔法の方は分類が難しいの。
これは全部魔女の権能だってお母様は言うわ。その殆どが、失われた遺失魔術の体系なんですって、古代書には書いてありました。
もっと古い歴史を辿ると、私のいた世界には始まりの魔術というものがあるのだけれどそれはご存知かしら。
もともとは始祖魔法の治癒と破壊のエネルギーが――(熱を帯びたように早口に饒舌に)
プリムララ・ネムレイス 2021年7月24日
――という風に権能は築き上げられたのですね。
他にもご質問があればご遠慮無く言ってください。
(少し落ち着いたように水で喉を小さく鳴らすと、キラキラと好奇心やまぬ視線を湛えながら)
お母様も、それにお父様もいらっしゃるの?
それは素敵な事ね。ご両親な愛されて育ったのね。本当に素敵だわ。お仲間もたくさんいらっしゃるなら寂しくなんてないのね?
(自分の頬に手を当てながら、まるで幻想的な物語を聞き入るように隣の和邇を見る)
お米が好きでいらっしゃるのね。では今度水峯さんにはとびきり美味しいお米を探してプレゼントするわ。
そうすれば貴方はきっと喜んでくれるかしら?喜んだ貴方は私とお友達になってくださいますよね?
(バツが悪そうに口を止めた彼の様子なんてお構いなし。マイペースにこの空気を楽しんでいて)
加美歩・水峯 2021年7月24日
(尋ねられれば快く)おお、いいとも。砂糖漬けの見目には惹かれるよな、菫にも見える可愛らしい花だ。
(ひとつ手に取り考える、少女のマカロンの大きさに比べると砂糖漬けの花びらは何とも小さい。ならばふたついやみっつが等価交換か。しかし単純な大きさよりも重さや濃さで計るべきか、まあいいかとバスケットへ渡した花弁は三つ)
ほぅ……(古めかしい魔導書はひとりでに捲られ、現れた柩を食い入るように見つめる。それは厳かながらもどこか、神聖たる雰囲気を漂わせ、伸びてくる萎びた死者の手すらも、同じ空気を纏っていた)
(故に、予想だにしない失態に)はははっ、ははは……いや、すまない。馬鹿にするつもりではないんだ、ただ、存外に指先が不器用なようだったようで。いやいや、興味深いものを見せてくれて有難う。濡れてはいないから安心してくれ。それに、濡れてもさほど問題は無いさ。
加美歩・水峯 2021年7月24日
(少女の話に聞き入る、それは興味深い知識の欠片ひとつひとつを決して拾い溢すことのないようにと)
……ほほう、魔女とは。名こそ本やら何やらで目にするが、古き魔法の生き字引たる存在であったか。古代から続く権能とあれば、なるほど僕が見聞きしたような此処の魔法とは質が相当に違う。多岐も規模も比類にならないのだろうな。
(更に続くのは始祖たる魔法の体系。無論、それは興味深く聞き入るが、魔法の学に乏しい僕にはその言葉の応酬を受けきることはできないようで。要所要所を呑み込みつつ)
……博聞強記、見事な座学を授かった。魔女の跡継ぎとだけあって、いやはや恐れ入るよ。古代より続く、いわば魔法史か。ララの話を聞くまではそのような歴史を意識したことも無かったよ、有難う。ひとつ質問があるとすれば、魔女の代替わりとは随分早くの齢に行われるのだな? ララは貴き立場にあり、未だ若いながらによく立派と思ってね。
加美歩・水峯 2021年7月24日
(煌めく視線を向けられると、思わず口角が緩み始める。少し喋りすぎたことは気にされていないようだと安心して)
そうだな。家族も仲間も、和邇と言うその種そのものが僕は好きだよ。碧い鱗が皆を想い出させてくれる、僕は孤独でないのだと。なればこそ、人のため世のため尽力するのが和邇のためにもなろう。僕はそう思いつつも、何かと興味惹かれるものに呆けてしまうのだが。
(楽しそうな様子の少女に絆されるも、その提案を聞くと)
これはこれは。気持ちこそ有難いが、結構だよ。友とは主従に非ず、その間に貢はいらないと僕は思う。間には唯、心地の良さがあればいい。故に、僕は肩を並べて菓子と談笑を共にするララを、既に友と思っている……それでは、駄目か?
(そう微笑んで語る、しかしそのとびきり美味しいとまで言う米の存在は少し気になる。何れは世界を渡りつつ食べ比べよう、などと思いながら)
プリムララ・ネムレイス 2021年7月26日
お花を食べられるなんてまるでマルハナバチになった気分ね。
私ね、小さくてふわふわした生き物が好きなのです。
ほかにも精霊や人間も大好きですわ。みんな一生懸命で愛おしい。
そしてその中に新しく加わったものがあります。
それは和邇。誇り高い水の霊獣さん。でも本当はこんなに優しくて素敵な方。(友と言われればニッコリと微笑んで、思わず両の脚を交互に揺らせばエディブルフラワーがフワリと笑う)
ふふふ。でもお米は貰ってちょうだい。私の心がそうしたいってうるさいの。(少しづつ崩れる敬語。お母様は言いました。親しき中にも礼儀が肝要。でもそれを思い出すのはきっと夜が更けてから)
プリムララ・ネムレイス 2021年7月26日
魔女の代替わりの話だったかしら。
それはとても簡単なお話です。
お母様が亡くなる時、お母様の中にあった魔法と知識は、子の中へと引き継がれるの。
ですからもしお母様がまだまだお元気で、この先100年の刻を生きたとするなら、私は110歳のお婆さんになってもまだ魔女にはなれないのでしょう。
でも、お母様は亡くなってしまいました。そして私は私の力で何もしてない。
何かを成し遂げ得るなら、それはきっとこれからの事と思っているの。
お母様は言っていました。
立派な魔法使いになりなさいって。
人には善き行いをしなさい。
善きお友達を沢山つくりなさい。
そして必ずまた森に――
(そこまで機嫌よく喋ってから不意に口を噤む。今までの笑顔が萎れるように、瞳を細めて虹彩を広げて)
ごめんなさい。なんでもないわ。
ねえ貴方の故郷はどこにあるのかしら?やっぱり海の底?
鱗が碧いと兄弟でぶつかってしまいそう。
だってそうでしょ?海も一緒に碧いもの。
加美歩・水峯 2021年7月27日
好みに加われたのなら、それは実に嬉しいよ。ああ嬉しい限りだ。そうまで言われては断るのもまた無礼。然らば是非とも頂こう。美味しく艶を蓄えるよう、好く炊かねば。(あまりにも幸せそうに語るから、内心はすっかりと絆された。素敵などと言われれば猶更。友と語り合う時間とは何にも代え難い愉しみで、だからこそ、何気なく投げかけた質問の応えに表情が固まる)
……そうか母親は。これは、僕は不躾なことを尋ねてしまった。いや、よく解ったとも、有難う。
(数々の古代魔法。その引継ぎなど、唯では果たされないことなど少し考えれば解ることだったろう。少女が並べたお母様からの言葉というのは、確かに違いなく、無償たる母の愛のことば。脳裏には親子の睦まじい時の現像が浮かび、少しばかり胸に痛みを感じる。)
(だからこそ。目の前の華奢な少女の、その足で自ら世界を旅するという姿があまりに美しく思えた。昔、冒険譚に読んだ主人公のように)
加美歩・水峯 2021年7月27日
始まったばかりの旅路、その幸先たるや最良と言える。何せ誇り高き和邇を友にしたのだから。そう、だから違いなく成し遂げ得る。それに足る人だと僕の目には映っているよ。
……ん、いや。(少女の様子がほんの一瞬、変わったように見えた。いや、間違いないだろう。けれどその内を知る術も理由も僕には無い。それは知らなくて良いこと、好奇心に蓋をして)
ああ、僕らは海に棲まう。何処かに留まるのでなく、その流れ、その海たる意思に合わせ生きるのだ。
確かに鱗は海によく溶け込む。底ともなれば日も届かない夜の世界。しかし、目でなく水で知覚するのだ。周囲に満ちたその水を我らは感覚として扱える。故にぶつかりもしないし、至って問題なく泳げる。奇怪な仕組みだろう?
(そう語って人差し指を空に立てる。それから空気中に舞う水分を集め、爪ほどの大きさの金魚にして見せる。さて、先ほどまでの笑顔に戻ってくれるだろうかと、無意識の内に考えていた)
プリムララ・ネムレイス 2021年7月29日
不躾とは思わないわ。だって人が死ぬのは当然の事なんですもの。(脳裏に浮かぶ故郷の情景はひとまずどこかへと押しやる事に成功しました。横に座る友に励まされてにっこりと微笑みます)
そうですね。私は沢山の素敵なお友達を作りたいの。
だから、水峯さんのような素晴らしい方とお会い出来た事は本当に奇跡の贈り物だと思っているわ。それこそ私にとっての数少ない成し得た偉業。
貴方の求めには私の全てをもって応じたいと思っているの。困った事があったら友の私に声をかけてね?
プリムララ・ネムレイス 2021年7月29日
水の中の全てが、貴方の世界ということなのね?
まるで魔力に満たされた空間のよう。それを魔法なしで熟してしまうなんて、とっても不思議ね。
わっ!(指先に現れた小さな小さな金魚。ふわふわひらりとドレスの様なヒレを翻して宙に舞う姿は、愛らしい妖精のようで)
なんでしょう!とっても可愛らしい!
いけないわ。水で覆わないと。(杖を人振りすると水滴が集まって金魚を包み、おまけに上にはプリムラの花を乗せて)
ふふ。これでもう安心ね。
プリムララ・ネムレイス 2021年7月29日
(そんな事をしているとガヤガヤと集まる人の群れ。燥ぐ声と煌めいた魔法が人々の感心を集めてしまったようで)
あら?なんだか人が沢山集まってきてしまいました。
皆さんともお友達になれるでしょうか。
(珍しい秘蹟を一目見ようとお店は大混乱。私はそのどさくさの中で大事な旅行鞄が無くなってしまっている事に、まだ気づかないでいるのでした)
加美歩・水峯 2021年7月31日
人の中には、いいや人の多くは。当然の死を受け入れられず嘆くのだよ。ララは強いよ。強いとも。
それは嬉しいよ、若き魔女の力添えとあらば心強いことこの上ない。無論、僕にも頼り給えよ。困った事あれば、友の僕に。
(碧水の金魚を見て笑う姿。よかった、やはり笑顔の方が似合うなと密かに微笑みつつ。その魔法で彩られた金魚は思わず惚れ惚れする素敵な姿に)
おお、随分と美しい姿に仕立てて貰えたなぁ。小さな宝玉のようだよ。紫水とサクラソウ、大切に……ん。(気付かないうちに店内には人が賑わっていたようで。集う人々に少しばかりため息を、目立つことは控えるべきだったろうか、と)
そうだな。ひとりひとりと仲を深めるには、いささか時間がかかり過ぎるかもしれない。それに、良い人ばかりではないさ。
……此度、僕たちの憩いの場、あまり邪魔してくれるな?(少し大きめの声でそう言うものの掃けた人は僅かばかり。少し面倒、かもしれない)
加美歩・水峯 2021年7月31日
(何気なく目を向けた先、花と水でおめかしした金魚。その挙動が変わり始める。人々の方へとゆっくり泳ぎながら、その間を縫うように。集う彼らの注目はそちらへ移り、席の周りはすぐに閑散と)
(懐の中、袖の中。慌てて弄るも特に異変は無し。となると……)
時にララよ、持ち物は揃っているか。あの金魚は、人の失くしたものを探して泳ぐ性質がある。あちらに泳いでいったろう、何か落とし物をしたかと思ってね。
さて、ん。……はぁ。(人が捌ければ自ずと気付く。古めかしい装飾の、少女の傍にあった大きな鞄。騒ぎに乗じてすっかり立ち消えたとなれば、これは間違いなく)
(ため息ひとつ、それから水差しに指を鳴らす。中から更に無数の金魚があふれて泳ぐ。彼らの作る碧水の線は、何者かの足取りを追うように店の外へ続いていた)
プリムララ・ネムレイス 2021年8月2日
(宙を泳ぎ始める金魚に、あらあらと心温かくしながら見守っていたのだけれど、水峯の言葉に気づけば見当たらない大事な大事な旅行鞄。あの中には旅に必要と思って持ってきた全ての物が詰めてありました。とすれば大変。鞄がなくては旅を続けられなくなってしまいます)
無いわ。私の鞄。一体どうしてでしょう?さっきまで私の足下に置いて置いたのに。
(店の外へと出て行く金魚さん。それに続いて溢れだした沢山の同族さんたちは列を成してかの足取り、いえ、ヒレ取りを追うのでした。その様子を尻目に隣の頼もしき友人に請います)
プリムララ・ネムレイス 2021年8月2日
私、胸を張って貴方にあのような事を言ったばかりだというのに。
お恥ずかしいお話ではあるのですが、さっそく友の貴方に頼る事になってしまいました。
お願いです。一緒に私の大事な鞄を探しては下さいませんでしょうか。
(瞬時に張り巡らせた魔力の網は、尚も追跡を続ける金魚たちの気配を捉え続けていました。その影たちはやがて路地裏にある建物の裏口の前で止まります建物の中からは数人の人の気配。身を潜めるような息遣いをそこから感じ取るのでした)
見つけました。
加美歩・水峯 2021年8月6日
きっと……誰かが自分の荷物と間違えた。と、思いたいものだ。僕は荒事が得意じゃないんだ、そんなものは旅路の妨げでしかないのでね。
(その水の成した金魚の往く路を感知して、席を立つ。どうせ唯の薄汚い盗人、二人の脅威になりえないと思いながらも、確かに焦る鼓動を鎮めて)
……いやいや、構わないさ。友の間に損も得も不要と言っただろう。むしろ手伝わせてくれ給えよ、なぁ。(手を差し出して笑えば、自身の中の焦りさえ希薄になっていく。少女がその魔力を集中させる様子を感じ取れば、息を呑んで見守る。続く言葉に安堵して)
お互い、探し物が得意だったのは幸いだ。何、後は少しばかり尋ねれば終わりなのだから。では行こうか、鞄の中身を弄られては実に好くない。さっさと返してもらわねば、な。
加美歩・水峯 2021年8月6日
(駆け足気味に街を往く、日の光に照らされ透き通る金魚は曖昧な痕跡を残しながら、遂には路地裏へと集まっていた。覗けばそこは年季の入った小さな建物で、今は使われていないようにも見える。愚衆が隠れるにはおあつらえ向き、と。)
さて、荒事は嫌だな。騒ぎになればひたすらに面倒、折角の穏やかな旅のひと刻が台無しだよ。ただ口頭で、口頭にて終わらせよう。
……では。
(深呼吸をひとつ、古い木製の扉を蹴り開けた。薄暗く埃の舞う中へと一歩進めて、大声で叫びかける)
なあなあ、どうやら荷物を取り違えたようじゃあないか?
少しばかり、話を伺おうか。
(揺らいだ人影へと、その目を凝らした)
プリムララ・ネムレイス 2021年8月8日
(――今からおよそ四半刻前
その飛空艇から降りる乗客達は観光客が多く、皆身なりの良い人達ばかり。
その中でも目の前を歩く二人には特に目を引かれました。
男性の方は異国の情緒を思わせる優雅な白い袖。
女性の方は、慣れぬ旅に胸を踊らせる高貴な仕立てのドレス。
タラップでの覚束ない足取りに、見知らぬ街の店の所在を尋ねるその佇まいは、宛ら不慣れな道を行く物知らぬ旅人の様です。
少年は彼らの後ろを静かにつけるのでした。キャスケットを目深に被り、その瞳の色を隠しながら。)
プリムララ・ネムレイス 2021年8月8日
(少年には夢がありました。いつか自分の船を買い、仲間と共にこの大空を駆け回る大きな夢が。
しかし、貧困はいつだって自分たちの前に立ちはだかり、邪魔をしていきます。
油塗れになってコツコツと飛空艇の整備や煙突の清掃で稼いだお金は、酒浸りの父親に奪われてしまいます。
家賃が払えず、住処を追われた仲間もいました。
皆お金の為に酷い仕打ちを受け、体中に痣を作る毎日でした。
いつしか少年達は、生きる為にそして夢を諦めない為に、盗みに手を染めるようになったのでした。
お陰で、お金の気配を嗅ぎ取る嗅覚だけは人一倍になりました。
空に浮かぶ世界は、機械の油と
魔獣の血の臭いで満たされています。そんな臭いを感じさせない存在にこそ、黄金が潜んでいる事を経験で知っていました。)
プリムララ・ネムレイス 2021年8月8日
(焼き菓子のお店に二人が入っていくのを確認すると、少年は仲間たちに目配せをします。
一人は路地裏へ、一人はお店の入り口脇へ、一人はお店の裏口へ、そしてもう一人はお店の中へ。
皆、標的の持つ大きな大きな鞄が狙いなのでした。
彼らの周りに人だかりが出来ます。どうやら彼らは店内で見慣れぬ魔法を披露しているようです。俄に店内が騒がしくなり始めました。
行動を移すには今しかありませんでした。
そうして、少年たちはそれぞれの役割の為に動き始めます。自分たちの大いなる夢の為に――)
プリムララ・ネムレイス 2021年8月8日
(その建物は古い倉庫になっていました。沢山のウッドコンテナが積み上げられ、獣臭い香りがそこから漂ってきます。水峯さんの問いかけに応じる様にコンテナの影から4人の少年が姿を現しました。足下に転がるのは、そうです。私の大切な旅行鞄)
ありました。その鞄。私のなんです。返して下さい。
(私が続いてそう声をかけると、男の子たちは意を決した様にポケットからナイフを取り出すとこちらへとその刃先を向けてくるのでした。その様子に私は思わず隣の水峯さんを見上げます)
どうしましょう。お話をする気は無いみたいですね。
こういう時はどうしたらいいのでしょう。殺してはだめなんですか?
(私のその何気ない言葉に少年達がビクリと体を震わせたようです。そこから次第に溢れだす恐怖の感情が甘く私の心へと滲み込んでいくのがわかります)
加美歩・水峯 2021年8月11日
(その影の正体など、薄汚い盗人の集いとばかり思っていた。しかし、現れた4人は存外に若い少年そのもの。汚れた衣服に見え隠れする生青い痣、その生い立ちを察するには十分過ぎた)
(だが、だが。彼らに宿るその瞳は……)
時に、妨げになる者を殺めることを、善し悪しで論じるなど僕には出来ないよ。その命題はあまりに難解だ。けれど、今ここに在る僕等に相応しいか否かと答えるならば。
……駄目だララ。それは好くないよ。
(語りかけた後、懐より取り出したのは白鞘の小刀。鞘を払えば蒼白い刃がまろび出て、躊躇せず己の片腕へ突き刺した。ある少年は目を瞑り、ある少年は青ざめて震える)
(その肉は抉られず、礫を投げた水面の如く揺らいで唯その刃を受け入れた。引き抜けば傷のひとつと無く)
……と。驚かせてすまない。でも言いたいことは分かってくれたかな、少年達。残念にも脅しの材料にならないんだ、ソレではね。
加美歩・水峯 2021年8月11日
そんな訳なのだから。さっさと鞄を返し給えよ。
だが、何。身の上話のひとつでもあるならば、少しばかり聞こうか? 君等どうやら訳ありに見える。
(静寂、鍔付き帽子の少年が口を開く。その苦痛に満ちた日々と、しかして失わずに抱き続けた大いなる夢の旅路。震える声で絞り出されるソレ等は、斜に構えれば同情を誘っているように聞こえるかも知れない。無論、彼らが罪人であることに変わりはない。けれど)
(実に、実に困ってしまった。僕はこういう類の者らが嫌いじゃない。不意に上がった口角を無理矢理抑えて、そして)
……ララ、此度大切なものを盗まれたのは君だ。この不幸にして無謀な少年達を近衛に突き出すも見逃すも自由。
だが先ほども言ったように殺すのは好くない。何故かと問われれば、いつか仇と咎の刃がその細い首へと向けられる。それをねじ伏せると、更に多くの新しい刃がね。
旅人とは唯、自由であるべきだ。そんな血濡れの首輪は似合わない。
プリムララ・ネムレイス 2021年8月12日
とても意外でした。この子達も物語を抱えていただなんて。街ゆく人々の中で物語を持つ方にこんなにも出会えるなんて。(プリムララは重大な勘違いをしているのでした。物語と呼ぶのは人々の過去、歴史、その人の歩んできた人生の軌跡。彼女は、自身とごく限られた者にしかそれは持ちあわせていない物だと思っていたのです。言い例えるなら、草露に溺れる小さな羽虫。光に群がる蝶の類い。餌を追い求めるハイエナの群れ。それくらいに機械的に他人を見ていたプリムララ。ただ、自分のような例外も僅かにいる。それが誰かはわからないけれど。外の世界を知らないプリムララにとって、人の痛みを理解する以前の彼女の目にはそんな風に世界が映っていたのでした。)
プリムララ・ネムレイス 2021年8月12日
(水峯さんの言葉は、まるで現実の刃の様に自身の首の周りに突き立てられていくのを感じました。そうして両の手からは、あれ程渇望した自由が零れ落ちてしまうのです。そんな事はまっぴらごめんでした)
お母様がいつも私に言い聞かせていた事はそういう事なのでしょう。貴方の言う通りなのかもしれません。
それに、この子たちが可哀想。檻に閉じ込めてしまうのも出来ません。
私の黄金を差し上げましょう。そうすれば、きっと貴方たちの夢が叶うわ。
プリムララ・ネムレイス 2021年8月12日
(少年たちは恐る恐る私から黄金を受け取るのでした。そうして足早に建物から逃げていきます。ただ一人、最後に遅れた一番小さい男の子だけは、水峯さんに向かってぺこりとお辞儀をしていくのでした。それを見送ってから転がっていた旅行鞄を取り戻します)
魔法で解決してしまえばきっと直ぐなのでしょう。けれども、そうするとまた問題が起こってしまうという事を教えて頂きました。ありがとうございます、水峯さん。
お母様は仰っていました。魔法は手放してしまった方が良いって。
私はその意見は極論だとは思っていますが、水峯さんのお陰で何となくその真意を理解した気がします。(表も裏もなく、晴れ晴れと笑顔を浮かべます。両手で鞄を大事に抱えて彼へと向き直りました)
水峯さんの貴重なお時間を私のせいで無駄使いさせてしまいました。ごめんなさい。
それに、一緒に探して頂けてとても嬉しかったの。本当にありがとうございます。
加美歩・水峯 2021年8月13日
……それが愉しくとも、退屈でも。違うことなく皆に物語がある。そして僕はソレが大好きでね。ああ実に、今日は濃ゆい日だよ。本当に。
(煌めく黄金、それは見紛うことなき本物だろう。随分な気前に少々驚きつつも、少年達の大きな助けに他ない。盗人には正に僥倖、身の丈には不相応な収穫。されど彼らの行く末をただ祈り、見送る。気付けばひとり、僕に頭を下げて行った。小さな4人の背に向けて、ひらひらと手を振りながら)
いやはや、此度は大事にならず本当に良かった。しかしながら、アレは貴重な黄金だろう? 少年達に好転が訪れれば何よりだが、ララは好かったのかと思ってね。
(続いて紡ぐ言葉を聞いて、どこか申し訳なく顔を逸らす)
いいや、いいんだよ。礼には及ばない。それに元はと言えば、考えなしに水で遊んだ僕に責があるだろう。だからまぁ、役に立てたのならば……良かったよ。
加美歩・水峯 2021年8月13日
(輝く笑顔を浮かべたララを見れば微笑んで返す。暗い倉庫から出て、湿った路地裏からも出て、既に西日の差す通りへと)
ララの母は、異能も異形も無しに人が人と言葉により交わり、その手を重ね通じることを尊きとしたのだろうな。それは実に好い。脅威も力も要らないなら無くていい。
……けれども、動乱の世にて。魔女たる権能の力は確かに必要とされているだろう。ただ善き目的に寄り添い用いれば、いつかその極論は果たされるかも知れないな?
もっとも何が善きかなど、僕も解らないけどもね。偉そうにララに語っておきながら、はは。未だ迷いの中なんだ。
(どこか情けなくなり頭を掻く。ひとつ咳払いをして)
ああ、いや。とにかく、本当に鞄が無事で何よりだ。心より安堵しているのだよ。
さて、と……
(見渡す街には未だ人通りは多くも、先ほどより多少は減っているようだった。皆、そろそろ帰る刻合いだろうか、などと。僕の暇は未だ顕在、とも。)
プリムララ・ネムレイス 2021年8月19日
はい、あの黄金はお母様から頂いた物です。ですが、黄金はただ眺めていても私は面白いとは思いません。
ちゃんと価値ある事に使うからこそ、その輝きに意味があると思っていますから。
正直、黄金をどう使えばいいのかまだよく分かっていないのですけど、あの子達の物語が見ていて幸せな物になれば良いなって思っちゃいましたから、それがきっと黄金の正しい使い道なのかもしれないってつい。
(黄金で買える物の中で、果たして魔法や自然が生み出す幻想に優る物はあるのでしょうか。水峯さんと共に並んで表を歩けば少年達に渡した黄金とは比較にならない程に美しい輝きが双眸に差し込みます。そんな輝きにも優る価値があるとするならば、それはきっと人々を変える力そのものなのかもしれません。そしてその価値は、その人自身の価値に比例していくのだとも思ったのでした)
プリムララ・ネムレイス 2021年8月19日
あら?ちょっと待ってください?(不意に私は立ち止まります)
みんなって本当の本当にみんななのですか?比喩でも誇張でもなく、本当に全ての人が物語を持っていらっしゃるという事なのかしら?
それでは、飛空艇の船員さんも、お店のオーナーさんにもみんな物語が?(予想外の答えに驚き、そして想いを馳せます。その物語はいったいどういうものなのでしょう、と。恋人との約束を果たす旅路?それとも、美しい宝石との邂逅の道行?すれ違う人々全てに、それこそ星の数程いる全ての人たちにそれぞれ物語があったなんてそんな事。だとすればなんというスケールなんでしょう。そう驚かざるを得ません)
そうなのね。そうだったのですね。私、勘違いをしていました。
あれ?という事は何も人に限った話でも無いのかしら。全ての妖怪や魔物、それともこの子たちにも同じ事が?(遂には西日を背に踊るように舞う羽虫達にも空想を伸ばしかけて、ハッと手を叩きます)
プリムララ・ネムレイス 2021年8月19日
いけないわ。私ったらお話に夢中で忘れていたの。貴方のお薬探し。まだ全然終わっていないもの。(キュッと私は鞄の取っ手を両手で持ち上げて視線を泳がせます)
水峯さんは本当にお人好しだわ。私の鞄の心配よりも貴方のおお遣いを果たさなくちゃいけないのに。
(もう半刻もしない内にすっかり陽は落ちて、夜の帳が下りる事でしょう。その日の航行を終えた飛空艇の最終便が船着場に到着するのが見えます)
どうしましょう。水峯さんのお薬探しはまだ猶予があるのかしら。私はここで一泊していくつもりなのだけれども、困った事に宿もまだ探していなかったわ。
水峯さんはもう宿を取られたのかしら。
(外の世界がこんなにも捜し物と発見に満ちた世界だとは思いもしませんでした。それだけ退屈しないという事なのかもしれません。私の旅の期待感は高まるばかりです)
加美歩・水峯 2021年8月20日
なるほど。それは確かにその通りだと思うよ。貯め込んだとてそれは手段、使わねば意味がない。もっとも彼らには僥倖とも言うべき桁外れな収穫だったろうが、その先は僕等の知るところではないんだろう。ああ、いつか彼らの駆る船に出逢えたりしたら、好いが。
(他愛のない話をしていたつもりが、急に立ち止まる少女。僕も併せて止まればそれを見やる)
んん。それはそうとも。物語、言い換えればそれは人生だろう。みな一人ひとりに家族が在り友が在り、時に恋が在り別れも在り。それを言葉に紡げば物語になる。
けれども……若き魔女の物語と出逢えることなど実に珍しい。そして貴き水の遣いの物語も同様。ははは。
(仰々しく笑いつつ、彼女の目線の先に飛ぶ羽虫を見る。疑問を聞けば)
うーん?どうだろうな。意識や記憶、そして営みが彼らにもあるなら……あるいは。
加美歩・水峯 2021年8月20日
(急に手を叩く少女。そして口にした言葉は─―)
薬……あっ。……はは、いやいやいや。もちろん忘れてなどいない、ああ覚えていたとも菓子屋に向う途中頃までは。はは、はぁ。いいんだ、案じないでくれ。僕に課せられたお遣いを、僕自身が失念していたのなら弁解は無い。それに急ぎなのは鞄の方だったろう。
(これまた情けなく笑みを浮かべるしかなく、頭を掻いた。船の最終便は終えたようだったが)
僕はこれからさっさと薬屋に行くよ。そしたら泳いで……いや、飛ぶと言った方が正しいか。それで独りで帰るとも。宿は此処でなく少し離れた島の街にあるんだ。主も待っているしな。
しかしララは宿をとるなら、もう今の刻には向かった方が良いかも知れないな?
……では。ここらで、此度は別れの時間と云ったところかな?
プリムララ・ネムレイス 2021年8月24日
家族に恋。読んだ本達にはそんな言葉が幾度となく出てきたものでした。
それはきっとこの世の全ての生命が持つ物語を描き出していたのですね。どうしましょう。水峯さんが大好きと仰られるのもわかるわ。
私も色んな物語を覗き見てしまいたくなってしまいました。
プリムララ・ネムレイス 2021年8月24日
(頭を掻く水峯さんの言葉に空を見上げます。黄金色に染まる雲達は、空中都市の果てへと逃げこむ様に流れていて、やがてその雲を追いかけるように星空のカーテンが引かれることでしょう)
嫌です。別れたくありません。折角お友達になれたのに、ここで貴方を薬屋へと行かせてしまえば私達はこの広大な世界の中でまた離れ離れになってしまうのでしょう。
とても寂しいわ。
もっと私の隣でお話を続けて欲しいの。
(そう彼に詰め寄ると、行き交う人々がチラチラ、こちらを気にするように見ているのがわかりました。少し、私の声が大きかったようでした)
でも貴方には、貴方の帰りを待つ人がいるのですね。
空を泳ぎ、雲を掻き分けて着いた遠い先で。
その人は貴方が薬を片手に元気に戻るのを待っていらっしゃるの。
(名残を惜しむように眉を下げて、私は懇願するように彼へ言葉を紡ぐのでした)
プリムララ・ネムレイス 2021年8月24日
また、逢いに来てください。
心から友の貴方を待ち望んでいます。
今度は貴方の主について聴きたいわ。
貴方の家族のこと、貴方の冒険や貴方の物語を。
終わりがあるから、次の楽しい時間があるのです。
この時間の終わりは、次の貴方との楽しい一時へ繋ぐ物と信じています。
どうか、気軽に再び逢いに来てください。煌めく魔法のように、私の前に現れて下さい。
プリムララ・ネムレイス 2021年8月24日
この言葉、受け売りなんですけどね。(そう笑って、最後に貴方へ感謝を口にするのでした)
出逢ってくれて、ありがとうございました。
加美歩・水峯 2021年8月26日
(言葉を交わし合う、その内に既に空は昏く濃く)はは、世界ひとつ広く、その上幾多の鏡像が並ぶ。それは想像すら湧かない広大な庭だ。僕もララと此処で立ち別れ、何れも逢えないとなれば胸が苦しいとも。(人目を憚らない声色に、視線の向くのを敢えて気にはせず、応えるように大きな声をもって返す)……ああ、残念にも僕には役目があるし、僥倖にも僕は良い主がいる。然し、必ずまた逢おうじゃないか。親愛なる友の絆はそう易々と途切れはしない。ふとした処で、思わずまた顔を合わせるかも知れない。それまでにはその、僕の物語もより分厚い本にしておこう。はは、とはいえ名残惜しいものだ。愉しい時間と云うのは……何故、すぐに終わるのか。
加美歩・水峯 2021年8月26日
魔法か、若き魔女をうならせるほど煌めく魔法に成るには、少しばかり大変そうだ。さて、次の暇があれば僕もまた世界を巡らねば。石と鉄の造り出す雑多にして鮮やかな世界、それから常しえの桜が咲くセピアの世界。いいや、星海織りなす世界もまた良い。どれも一度は見てみたい。(最後に大きく一礼、それは仰々しい仕草でもって)此方こそ、出逢ってくれて有難う。ララ、友の旅路に祝福が溢れんことを祈っている。次に出逢うとき、その本の頁がどれほどになっているか、僕もまた愉しみにしているよ。
それでは、しがない和邇はこれにて失礼。また逢おう。ではな。(くるりと翻せば袖が舞う、背中を向けて歩きながら片手をひらひらと振って別れを告げる。その歩みにはどこか名残惜しさが在り、)
加美歩・水峯 2021年8月26日
(その姿は疎らな人の往来に紛れて、すぐにでも見えなくなるだろう。)
プリムララ・ネムレイス 2021年8月26日
(彼の背中を見つめながら、風に吹かれた小枝の様に手を振ります。そうしている間にもいくつもの想念が胸中へと去来するので、私は身を僅かに震わせながら時の流れが緩慢になったかのような錯覚を覚えるのでした)
またね
(呟いた声はあまりにか細く、きっと彼の耳には届かないでしょう。気づくと私の周りにはいくつもの魔法陣が展開していました。音も無く現れる聖櫃。その中から伸びる無数の手が、未練がましく彼の背中を追い掛けて⎯⎯)
プリムララ・ネムレイス 2021年8月26日
(次の瞬間には全ての魔法は消え去っていました。まるで初めから何も無かったかのように。やがて時の流れが元に戻り、人々の行き交う路地を見渡しますが既に彼の姿はありません。そうして私は夕暮れに溶け込むように、人知れずその場を立ち去るのでした)