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【し】りと【り】【リ】レー小【説】【作】ろ【う】

七那原・望 2021年4月7日


【う】れしい事にロリータさんに楽しみって言ってもらえたので実行に移しまし【た】

【楽】しくみんなでリレー小説を作るので【す】

【ス】レの趣旨はそれだけではないので【す】

【ス】レに投稿するときに最初の一文字と最後の一文字は【】で囲い、その文字を使ってしりとりをしないといけないので【す】

【ス】レに投稿する時、最後が『ん』で終わっても『ん』から発言を始めることは出来るので特にゲームオーバーはありませ【ん】

【ん】が早速着いちゃいましたけ付いちゃいましたけど、とりあえずしりとりリレー小説スレ、すたーとしまし【た!】




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七那原・望 2021年4月7日
【タ】ケシは僕の肩に手を置き、首をクイッと振りながら命じてきた。
「ケンジ、ちょっと体育館裏来い【や】」
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ロリータ・コンプレックス 2021年4月8日
「【や】んのかよ?あぁ?」
僕はタケシに精一杯のガンを飛ばしながら要求に応じる。
(……めんどくさいな……。)
内心ため息を漏らす僕。たけしの誘いがではない。毎回このやりとりをすることが、だ。
「いいか!テメェらちくんじゃねぇぞ!」
タケシがクラスメート達に脅しをかけ、僕達は体育館裏へ向かっ【た】。
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七那原・望 2021年4月8日
【体】育館裏に辿り着くとタケシは早々にデバイスを起動する。

「ケンジ、これが今回のターゲットだ。」

タケシのデバイスからケンジのデバイスへとターゲットのプロフィールが送られる。

「マサト……うちのクラスメイトの弟か……」

「そうだ。いいか、迅速に任務を遂行しろ。万が一しくじれば、わかるな?」
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七那原・望 2021年4月8日
(訂正)
「そうだ。いいか、迅速に任務を遂行しろ。万が一しくじれば、わかる【な】?」
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ロリータ・コンプレックス 2021年4月9日
「『何】言ってんだよ。僕が今まで一度でも失敗した事があったかよ?今までのターゲット保護率は100%だろ?」
僕は鼻を鳴らして息巻いて見せるがタケシは尚も表情を崩さない。
「そうやって調子に乗ってる時が一番危ういんだ。……お前もそんな仲間を何人も見てきてるだろうが。」
タケシが伏し目がちに言う。それは僕への忠告というより己への罪悪感を吐露しているようだった。
「……わかってるよ。今夜やる。本部に伝えてくれ。護送車の手配忘れんな【よ】?」
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七那原・望 2021年4月10日
【夜】を待ち、僕は屋根の上から路地裏を見下ろす。もうすぐ塾帰りのマサトが此処を通る筈だ。

「瘴気が濃くなってきたな」

奴らの狙いは十中八九マサトだろう。
問題ない。いつも通り淡々とこなすだけだ。
ホルスターのナイフに手を掛け、ゴクリと生唾を飲【む】
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ロリータ・コンプレックス 2021年4月11日
【無】機質な雑居ビルの壁、安物で出来ているのがわかる勝手口。灯の灯っていない留守の住宅が軒を連ねるこの路地裏は奴らが仕掛けるには恰好の場所だ。
そして塾が終わり帰路につくマサトが、指示書の報告の時間通りに姿を見せた。塾の疲れで目は半ば虚ろになっている。
瘴気の濃さからして奴らももうマサトに狙いを定めているのが感じ取れる。問題はいつ仕掛けるかだ。先にコンタクトを取っても僕の事を信用させるのは難しい。何しろ事情を説明しても怪しまれる事は確実、頭の中身を疑われる事は間違いない。奴らが姿を現すそのタイミングがチャンスだが、場所によっては安全を確保するのが難しくなる。一瞬の油断が命取りだ。
マサトは路地を進んでいく。表通りからはどんどん遠ざかり人の気配は無くなっていた。ここには護送車も侵入できない。ある程度庇いながらの戦いを覚悟すべきだった。
街頭の間隔が一際長いその場所で闇が揺ら【ぐ】。
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七那原・望 2021年4月13日
「グルルルル……っ!」
奴らの唸り声が聴こえる。あぁ、やはり信用を得る時間がない。今回も強硬手段に出るしかなさそうだ。
僕は音もなくマサトの背後に降りると気付かれる前に首筋に手刀を一振り。彼を一瞬で昏倒させる。
マサトが地面に倒れ伏す前にその身体を支え、担ぎ上げると奴らの殺意が僕に向く。

「来いよ。纏めて消してや【る】」
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七那原・望 2021年4月13日
(訂正)

「【グ】ルルルル……っ!」
奴らの唸り声が聴こえる。あぁ、やはり信用を得る時間がない。今回も強硬手段に出るしかなさそうだ。
僕は音もなくマサトの背後に降りると気付かれる前に首筋に手刀を一振り。彼を一瞬で昏倒させる。
マサトが地面に倒れ伏す前にその身体を支え、担ぎ上げると奴らの殺意が僕に向く。

「来いよ。纏めて消してや【る】」
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ロリータ・コンプレックス 2021年4月14日
【ル】ビーのように紅く怪しくギラつく妖魔の瞳を見据える。数は5体。いずれも猟犬のようにしなやかな体躯をした獣で素早い動きをしてくるであろう事は想像できる。
(これは護送車までマサトを担いで逃げ切るのは至難だな。)
僕はナイフを引き抜くと目前に構える。幸い路地は狭い。奴らも横並びで一斉に襲いかかるのは困難だろう。上手く立ち回れば囲まれて袋叩き、なんて事は防げるはずだ。頭の中で作戦を練る時間も僅か。
「があぁるぁぁ!!」
戦闘の妖魔が四つ脚で駆けてくる。大きく開いた口には長い犬歯が生えている。正直お世辞にも噛まれたいとは思えない。
僕は姿勢を低くし、妖魔の顎を下から蹴り上げる!妖魔は蹴飛ばされながらも空中でくるりと体を旋回させて着足した足ですぐさま飛びかかってきた。上段から組み伏せるような強襲!僕は怯む事なく素早く敵の下に潜り込みつつスライディング様に妖魔の腹を切り裂【く】!!
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七那原・望 2021年4月17日
【苦】痛の叫び声が辺りに響き渡る。
「近所迷惑だな。苦情が来たらどうするんだ」
素早く妖魔の心臓を一突きし黙らせると、飛び掛かってきた2体の妖魔を最小の動きで躱し、同時にその首を掻き切っていく。
「残り2体」
流石に妖魔もこちらを警戒し始めたようで、先程までに比べて間合いを取り、隙を見せなくなっている。
さて、どうしたものか。僕の得物はナイフ一本のみ。銃の携行は許されてないし、このナイフを投擲してしまうと最後の一体への対抗手段を失うことになる。

ーー妖魔達の口元がニチャリと歪む。
マズいな。
奴らはこちらの攻撃が届く範囲を完全に悟っている。
そしてこの瘴気の揺らぎは間違いない。
既に奴らは魔術の発動準備を済ませている!

護りきれるか?たった一本のナイフで、妖魔の魔術攻撃の雨から。

「いや、愚問だな。僕は一度だってターゲットの保護を失敗したことはない」
僕はナイフを構え直【す】。
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ロリータ・コンプレックス 2021年4月18日
「【隙】がないなら作るっきゃねぇよなぁ!?」
僕は背後に飛び退き倒れていた妖魔の一体を強引に蹴り上げ、そのこと切れた妖魔に体当たりをかまし、そのままの勢いで前方の妖魔に突っ込んでいく。
これぞ即席シールドバッシュ!
予想外の行動に一瞬妖魔達の反応が遅れる!慌てたようにかまいたちのような魔術で迎撃してくるが妖魔の盾を貫通して僕達にダメージを与えるまでには至らない。
そのまま内一体に妖魔の死体ごと体当たりをかます!このまま敵の体勢を崩せれば……!しかし敵もそこまで甘くはなかった。標的を逃れた一体はすぐさま魔術を再構築し、いく筋もの闇色の槍を放ってく【る】!
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七那原・望 2021年4月21日
「【る】っあぁぁっ!」
ここまで来たら回避は不可能。腹を括るしかない。
僕は体当たりの勢いそのままに盾にしている妖魔の死体にナイフを突き立てる。
対妖魔用に特別なコーティングを施している刃は妖魔の身体をバターのように通り抜け、そのまま向こう側の妖魔をも刺し貫く。
急げ。駆け抜けろ。止まるな。
4体目の妖魔の活動が停止する。けれど足は止めない。
体当たりの慣性に従って倒れ掛かろうとする身体を大きく足を出して無理矢理歩かせる。
足を止めれば槍に貫かれる。
進め。進めこのまま駆け抜け【ろ】!
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ロリータ・コンプレックス 2021年4月24日
――【路】地にぼたぼたと黒い雫がしたたり落ちる。舗装されたアスファルトに黒い染みが広がる。……もしも時間が昼間ならこの染みは赤茶けた色に見えたのかも知れない。
妖魔の放った槍は僕の脇腹を大きく抉っていた。
「……くそったれえぇぇ!」
痛みを自覚してしまう前に、渾身の力で二体の妖魔からナイフを引き抜くと踏み込んだ足を軸に体を旋回させ、振り向きざまにナイフを統合する!
……手応えアリと口を歪めていた妖魔の表情が驚きに変わった刹那、その眉間に深々とナイフが突き刺さった。
「ざまぁ……みやが……れ」
これでもう動く敵はいない。後はマサトを護送車まで運ぶだけ――
先程体当たりをかました妖魔の死体の上に倒れかかり、次の行動を脳裡に描く。しかしその思考はゆっくりと闇に飲まれていく。僕の横に横たわるマサトの体を視界に収めつつも僕の意識は闇に飲まれていっ【た】――。
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ロリータ・コンプレックス 2021年4月24日
統合→投合
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七那原・望 2021年4月30日
「【体】育館裏、か……」
妖魔と戦ったあと、ほぼ必ず見る景色に僕はうんざりする。
ここは体育館の隠された入口から繋がる秘密基地。組織の拠点という体育館の裏の顔。通称『体育館裏』だ。
僕はあの後意識を失って、いつもの様に医務室で処置を受けていたようだ。
「お目覚めになられましたか。わかっていると思いますが絶対安静です。瘴気の浄化を終えて傷が癒えるまではベッドの上から動かないように」
「わかっています。あぁ、くそ。暇だな」
ドクターとのこのやり取りももう何度目か。
傷は痛むし寝るくらいしかやる事がないし、最悪の気分【だ】。
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ロリータ・コンプレックス 2021年5月6日
「【誰】か見舞いにでもこねーかな。タケシの奴でも構わないけど、もっと華のある美少女とか。」
はあ、とため息を吐きながら下らない妄言を垂れる。ドクターは美人だが仕事熱心が過ぎて下らない冗談一つも通じない。最初は何度も俺なりのコミュニケーションを試みたのだが今や逆に俺がドクターのペースに合わせた儀礼的な会話をするに至っている。
腹の傷はどうなってんだろう、と手を怪我の箇所にあてがってみたがご丁寧に俺の元の体型よりも分厚く巻かれた包帯からは何もわからなかった。
「あら、越前様、いらっしゃいませ。鳳翔院様の病室ですね?3番の部屋ですよ。」
先程退室したドクターの声。そきて噂をすればタケシの奴が顔を見せにきたらし【い】
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七那原・望 2021年5月7日
「【い】つもお前は任務が終わると医務室に運び込まれてるな」
「ほっとけ。任務は完全に遂行したし、僕はこの通り生きている。今まで通り僕の任務成功率は100%のままだ」
タケシは僕の反応を見るといつものように大きなため息を吐く。
「今朝も言ったがお前、いつか死ぬぞ」
朝のやり取りと同じ罪悪感を秘めた目でタケシは僕の事をじっと見据える。
「かもな。でも僕はこれ以外の生き方は出来ない。それはお前が一番良く知ってることだろ?それよりもだ。マサトはどうなった?医務室にはいないようだ【が】」
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ロリータ・コンプレックス 2021年5月10日
「【頑】張ってくれた誰かさんのおかげでな。かなり瘴気に蝕まれてたが、無事に浄化と記憶操作を施して一昨日には家に帰してある。」
「そうか、良かった……って待て。一昨日だと?今日は何日だ?僕はどんだけ寝てた?」
「安心しろ、三日しか経ってない。まだ学校の留年が確定するまで5日も猶予があるぞ。良かったな。」
……顔から血の気が引くのが感じられる。
「……しばらく絶対安静って言われてんだけど……?」
「おぅ、そうか、お大事にな」
タケシはにこやかに笑って返してくる。こいつ、わかっててやってやがるな。
「……今から学校行くわ。」
「やめとけやめとけ。ドクターに殺されるぞ。」
くっそ。留年したら呪ってやる。
「まあ、どうでもいい話は置いといてだな、ケンジ、実は学校なんかよりもかなり困った事態になってる。」
どうでも良くねえ。
「……お前とマサトを護送する任務を担当した3人のキャリアーのうち一人の行方がわからな【い】」
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七那原・望 2021年5月18日
「【い】まなんて?」
「だからキャリアーの内一人が行方不明だと言っている」
「そんな……それは……」
ーーありえない。
僕もそうだがキャリアーには瘴気の影響を緩和し、なおかつ身体能力を大幅に強化するナノマシンが投与されていて、そのナノマシンは発信機やバイタルの測定器等の機能も有する。
だからこそ僕は妖魔とも生身であそこまで渡り合えたし、倒れてすぐに回収され、迅速かつ適切な処置を受ける事が出来ているのだ。
そして仮に死んだとしても、やはりナノマシンが母体の死を教えてくれる。
だから、ありえない。
だってもしそんな事がありえてしまうなら……
「ナノマシンが無効化されでもしない限りは……」
「あぁ。少なくともジャミングの反応はない。文字通り反応がロストし【た】」
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ロリータ・コンプレックス 2021年5月18日
「【タ】ケシは……いや、組織はどう見てるんだ?」
「さてね?俺みたいな一介のエージェントには知る由もないな。」
肩をすくめて見せるタケシ。相変わらずわざとらしい。
「ただ、考えられる可能は限られるな。一つはナノマシンが機能しなくなるほど、全身をこっぴどく損傷された可能性。丸焼きにされて消し炭にでもされたなら一応成り立つな。」
「馬鹿いえ。妖魔がそんな事をする意味がない」
「そうだな。同意見だよ。ならもう一つの可能性。追跡不可能な場所へ連れ去られた可能性だ。」
試すように見てくるタケシに僕はため息で返す。
「……なるほどな?いつも妖魔の奴らは何処からか忽然と現れる。ーー魔界、【か】?」
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七那原・望 2021年5月28日
「【可】能性の話だがな。実際キャリアーの反応がロストした地点では空間が歪曲した痕跡があった。」
「妖魔が現れた時の痕跡ではなくか?」
「あぁ。妖魔が現れた時とは空間歪曲時の波長が異なる。」
タケシに渡された端末には妖魔出現時の波長パターンと今回の波長パターンが比較するように映されていた。
「なるほど。いつもの波長パターンに比べてかなり乱れがあるな。まるで無理矢理空間を歪めたよう【な】」
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ロリータ・コンプレックス 2021年5月29日
【な】んだろう、何か気になるな。違和感がある。
「なあ、ちなみにそのキャリアーはいつ行方不明になったんだ?作戦中か?」
僕の問いにタケシはかぶりを振った。
「いや、作戦後だ。いつから目をつけられていたのかは定かじゃないが……」
「……ナノマシンの瘴気中和システムが働いていたのなら作戦後に奴らが追跡できるはずはない……よな?」
「あぁ、護送車はジャミングシールドで感知されないようにしてあるし、目視でも追跡されないようにアジトは複雑な地下トンネルを抜けないと辿り着けない。お前もここの正確な場所はわからないだろ?」
……ますますもって不可解だ。奴らの科学力が僕達以上というのは考えにくい。
その時だった。壁にかけてあった僕のジャケットとタケシのズボンのポケットからけたたましいアラートが鳴り響【く】。
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七那原・望 2021年6月8日
【空】間歪曲現象を告げるアラート。それはつまり妖魔の出現を意味する。だが、この波長は。
「嘘だろ……?」
気が付くと僕は見知らぬ場所にいた。
身体が重い。比喩表現ではなく、押し付けられるように身体が重く、歩くこともままならない。
重力が大きいのだろうか。
更に周囲に視線を向けると炎を葉のように生やした燃えない木が無数に立っており、近くには血の池が広がっていた。
明らかに地球じゃない。
「此処が……魔【界】……?」
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ロリータ・コンプレックス 2021年6月12日
「【い】やはや恐れ入ったな。もう大抵の事には驚かなくなったと思っていたんだが……。」
振り返るとタケシがすぐ横に立っていた。手には僕のジャケットとナイフを持っている。
「タケシ……まさかわざとこの空間に飛び込んで来たのか?」
僕の疑問に、しかしタケシはゆっくりと被りを振った。
「買い被りすぎだ。空間に飲み込まれるのが避けられそうに無かったから咄嗟にお前のジャケットとナイフを引っ掴んだだけだよ。」
そう言ってジャケットとナイフを僕に投げてよこす。
「それよりどうだ?動けそうか?腹の痛みは?」
ケンジが首を傾けて問うてくる。僕は組織のロゴの入った寝巻きの上からジャケットに腕を通してホルスターのベルトを装着する。
「へ。僕を誰だと思ってんだ?これくらい屁でもねえよ。」
なんて事はない。そうアピールするように歩いて見せるが、腹部に走る激痛に思わず眉間に皺が寄ってしまい、額には脂汗がにじもうとしてい【た】。
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七那原・望 2021年6月23日
「【戦】いの傷がまだ癒えてない状態で動けというのも酷だったな」
僕はタケシに向けて非難の目を向ける。
コイツ、間違いなく分かっていて訊いてきたな。
僕が絶対安静である事をタケシは知っている。
つまりこの後にタケシが言う言葉は。
「ひとまず俺単独で偵察に出てくる。お前はどこか物陰にでも身を潜めて待機していろ。わかるな?これは上官命令【だ】」
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ロリータ・コンプレックス 2021年6月30日
「【だ】が断る!僕が最も好きな……ごふっ」
僕がセリフを言い終わるより早くタケシの拳が僕の鳩尾を捉えていた。……普通そこ狙うか?恨みがましい目を向けるがタケシは取り合わず、僕を近くの茂みに寝転がすとさっさと行ってしまった。

……しかしおかしな事ばかりだな。僕達を意図的に魔界に呼んだからには直ぐに敵襲に遭うと思ったのに……。どこからか監視してるのか?
敵襲がなかったのは今の状況ではまさに僥倖。僕がこの有様ではケンジも分が悪いどころではない。
僕らを狙った敵がこの近くにいるならこのチャンスをむざむざ見逃すとは思えない。
この転移は敵の妖魔が意図的に発生させたものだと思ったが何かが違う?……ケンジもそれに気づいて僕を放置して探索に向かったのかもしれない。
そんな事を考え始めた頃。タケシが早くも戻ってきた。顔に微妙な笑顔を張り付けて……
「喜べ、ケンジ。どうやら割と簡単に元の世界に戻れるかもしれない【ぞ】?」
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七那原・望 2021年7月9日
【ぞ】んざいな扱いでタケシは拘束した妖魔を転がす。
タケシは襲撃を受けたのか。しかしそんなものが一体なんの役に立つのだろうか。
「既に検証は済んでいるが、妖魔は転移を開始する十数分前くらいから頭部に紋章が浮かび上がる。この妖魔もそうだ。」
「それがなんだって言うんだ。つまりもうすぐそいつは僕達の前から逃げ出すということだろう?」
僕の指摘に対してタケシは深いため息をつく。なんだかムカつく態度だ。馬鹿にしているのか?
「妖魔の中には武器を持つ者もいるだろう?つまり妖魔に触れているものは一緒に転移されると推察できるわけだ。」
「仮にそうだとして俺達が安全に転移出来る保証はあるの【か】?」
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ロリータ・コンプレックス 2021年7月15日
「【考】えてもわからないことに時間を使うな。早く捕まれ。」
……ご尤も。しかしタケシも大概だ。
不満ながらも妖魔の足を掴む。直後。妖魔から光の大洪水が押し寄せる!瞼越しだが網膜に光が突き刺さる!


「案内ご苦労。礼を言うぞ。」
目を開くと僕の目の前には切断された妖魔の首が転がっていた。
(そう言うのは生きてる内に言ってやれ。)
……さっきまでいた病室、だろうな。
「お早いお戻りでしたね」
ドアの開く音、続いてドクターの声。
「鳳翔院様は無断脱走の罰として拘束LV4に引き上げます。」
「な!?不可抗力だ!そんな死刑囚みたいな扱いないだろ!」
「あぁ、それで頼むよ。ついでに瘴気洗浄機の中に三日程ぶち込んでやれ。」
ーーた、タケシィ!
「ところで、ドクター。車を手配してくれ。本部に向かう。」
「残念ですが越前様、それは出来ません。」
「何?」
僕もタケシ同様?を浮かべる。
「……本部は、ほぼ、壊滅しまし【た】。」
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七那原・望 2021年7月18日
【タ】ケシは血相を変えてドクターに詰め寄る。
「何があった!俺達が向こう側に飛んでいたのはせいぜい1時間程度だろう?!その短期間であの本部が壊滅したというのか!」
「はい。お二方があちら側に転移したのを皮切りに各地のアジトに大量の妖魔が出現。その際に多くの人員や設備は転移入れ替わるようにあちら側へと流れ、残された人員は皆……」
ありえない、等とは言えない。現に僕達は今しがた見てきたのだ。地獄のようなあの光景を。
設備だってどれだけ無事かはわからない。場合によっては転移先が木の上の炎の中だったり、もっと悲惨な環境だったりするかもしれない。
大量の妖魔に飛ばされた以上僕達のように同じ場所に飛ばされる可能性も少ないだろうし、少なくとも戦闘能力のない総司令等の要人や設備すら近くになかった非武装のエージェントは……
「それじゃあ僕達は……?」
「はい。人類は、敗北しました。たった1時間で、為す術もな【く】……」
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ロリータ・コンプレックス 2021年7月20日
「【く】そっ!奴らを甘くみすぎてたか!ドクター、パソコンを借りるぞ。」
言うが早いかタケシは診療室のパソコンに向かう。
「……。くそ!真っ先にシステムが落ちたのか!」
「はい。真っ先に社内ネットワークがダウンした模様です。」
「そんな事を奴らにできるのか!?」
思わず横槍を入れて叫ぶ。知能の高い妖魔がいたとしてもこちらの文明や技術に精通しているとは思えない。
「……あぁ、ケンジ、お前の言う通りだ。これは……間違いない。人間の仕業だ。」
『……!!』
僕は勿論、ドクターの顔にも戦慄が走る。
タケシは財布からカードを取り出すとドクターに投げる。
「3000万位は入ってる。ケンジを3日で動けるようにしてやってくれ。」
「……わかりました。」
「あぁ、それと治療が終わったらそいつに諜報部のアクセスキーを渡してやってくれ。」
「お、おい!?タケシ、お前何を!?」
「じゃあな、回復したら美味いもんでも食いに行こう【ぜ】」
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七那原・望 2021年8月14日
【絶】対に行かせてはならない。僕の直感がそう告げている。
このまま行かせてしまったら、タケシは間違いなく死ぬ。
妖魔と手を組んだ人間。或いは妖魔を使役している人間。
それはもはや妖魔以上に厄介な手合いだ。
そんな存在にタケシ一人で勝てるのか?いいや、無理だ。
タケシは自分が死ぬ事を理解している。だから僕にアクセスキーを託したんだ。
止めないと。だがどうやって?
タケシを生存させる為に必要な言葉が、まるで思いつかな【い】
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ロリータ・コンプレックス 2021年9月1日
「【行】くなーー!」
痛みで頭に酸素が回らない中必死で発した言葉は自分でも驚くほどシンプルだった。
タケシはそんな僕に振り向いてその顔を見るとあからさまに落胆した顔を見せた。
「ケンジ、お前俺と連んでどれくらいになるよ?心配すんな。飯の約束も特別なモン食わせてやるよ。そうだな、フグなんてどうだ?……あぁー、この辺にフグのうまい店あったかな?ドクター、知らないか?」
「……は?」
いきなりの無茶振りにドクターの視線が宙を彷徨う。……なんだ?一刻を争う状況でフグの話……?フグ……といえば毒だよな?……まさか……!
「……調べましょう。」ドクターがパソコンの前に立ったその瞬間、僕は対魔用ナイフをその心臓目掛けて貫いた!!
「!!」
ドクターがひどい形相で振り向くと条件反射で僕の頭を鷲掴みにせんと手を伸ばす!が!それよりも疾くタケシの飛び蹴りがドクターの身体を宙に浮かせ、彼女の聴診器のベルトで墜としにかか【る。】
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七那原・望 2021年9月18日
「【留】守にしている内に随分と好き勝手してくれたじゃないか。なあ、ドクター?」
「ガッ!なっなぜっ!」
「こんな事態だ。内部犯を疑うのは当然だろう?本部の崩壊が知らされた時点で俺は組織の人間全員に疑いの目を向けていた。常に状態を管理していて、一緒に魔界にも飛ばされていたケンジを除いてな?」
タケシは聴診器のベルトでドクターを締め上げながら語る。既に確証を得ている以上、ただ気絶させるのではなく文字通り殺しに掛かっているようだ。
「だからカマをかけさせてもらった掛けさせてもらった。ケンジにも教えてないが、そもそも諜報部のアクセスキーなんて存在しないんだ。電子データはハッキングに弱いっていうのが上の言い分でな。データは全て紙媒体なんだ。」
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七那原・望 2021年9月18日
タケシが確証を得たのはそこか。つまり……
「ドクターは元諜報部所属。だから先の言葉を否定しなかった時点であれはドクターじゃない、と。」
「そういう事だ。もっとも、ナノマシンの反応には異常がないからドクターの身体を乗っ取っているとか操っているとか、そんなところだろうがな。さてドクター。いつからすり替わっていたん【だ】?」
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ロリータ・コンプレックス 2021年9月22日
「【だ】……rgきsmらに!!」
ドクターが声を発した瞬間、体から黒い触手がタケシに襲いかかる!
この至近距離で防ぐ手立ては無い。タケシの四肢や肩、腹などを貫き蠢いている。
「……慈悲を乞うって選択は無いってか。仕方ないな。……ふん!」
タケシが筋肉を収縮させると先程まで蠢いていた触手は動きを鈍らせる。
「ケンジ、遠慮は無用だ。」
僕はコクリと頷くと先程突き立てたナイフを抜き取り、代わりに右手の手刀をドクターの体内に突き刺す!そして心の臓を掴むと周囲の血管諸共引っこ抜いた。拍動するたびにつけた傷から血を噴き出している。僕はその心臓に思い切り噛みちぎる!間もなく心臓は活動を停止した。……しかし尚諦めが悪いらしくその目から殺意は消えていない。大したもんだ……今度はナイフを大きく振りかぶってその頭蓋に叩きつけた!
「ぐ、がぁああーー!」
最後の咆哮。そしてドクターはその場に崩れ落ちた。
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ロリータ・コンプレックス 2021年9月22日
「タケシ、大丈夫か!?」
敵が生き絶えたのを確認するとタケシの身を案ずる。
「何も問題ない。お前より遥かに軽症だ。しかしよく気づいてくれた。こいつ、俺の方には全く隙を見せなかったからな。重症のお前にはあまり警戒してなかったようだが。甘さがあって助かった。」
「しかし、本部は大丈夫なんだろうか?」
「そのことだがな、あの本部をいくら内部から手引きしたやつがいたとしてもわずか一時間で落とせると思うか?」
僕は僅か逡巡するが
「ないな。本部のセキュリティは人類の叡智の結晶だ。仮に敵が数人紛れ込もうと内部のシステムや構造が把握できるとは思えない。」
「ああ。あのドクターのセリフはブラフだ。このパソコンのデータもおそらくダミーだろう。これも今回使うつもりだったかは怪しいな?俺たちが帰還した事は予想外だった筈だ。それで本来なら違う作戦のために用意したシステムを急遽起動した。なかなかの曲者だった【な】」
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ロリータ・コンプレックス 2021年9月26日
とりあえずだいたい話は一息ついたので企画者ののぞみゅん様の方で上手いこと【完】にしちゃってくれるとありがたきー。
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七那原・望 2021年9月26日
了解なのです
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七那原・望 2021年9月26日
【謎】はいくらか残ったがな。とタケシは笑ってみせる。僕にはその笑顔が何処か寂しげに見えた。
「さて、敵の侵入を許した以上このアジトは破棄するしかない。これから俺はこのアジトの全データを消去し、その後全設備を破壊する。お前は今回の事件の報告書を纏め、本部に速やかに提出しろ。被害状況は拠点一つ、そして幹部一名だ。」
「それはわかったけど手伝わなくていいのか?」
「ここは俺一人で大丈夫だ。お前はお前のやるべき事をやれ。その後は自宅待機だ。次の配属先は追って知らせる。」
「そうか、わかった。」
必要なデータを手早く纏め、僕は足早にアジトを後にする。
去り際に嗚咽をもらす声が聞こえ【た】。
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七那原・望 2021年9月26日
【大】変な目にあったが、それもあっという間に日常の波に飲まれ過去になる。
あれから数日後、本部から通達があった。
次の配属先はアメリカ。まさかの海外だ。
幸い英語はしっかり叩き込まれているから会話に支障はないが、文化の違いや時差にしばらくは戸惑う事になるかもしれない。
それからタケシはあれから間もなく組織を辞めたらしい。
今は記憶処理を施された上で平穏な日々を送っているそうだ。
組織としては微々たる損失だろうが、僕はこの一件で僕の周りを取り巻く全てを失ったという事か。
「はは……は……」
思わず笑いがこみあげる。
「それでも僕の戦いはまだ終わらないんだな。あぁ、いいさ。元より一度は捨てた人生だ。タケシのように心が折れるまでは、戦うさ。」
荷物を纏め、僕は住み慣れた部屋に別れを告げる。
「さぁ、行く【か】。」
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七那原・望 2021年9月26日
【完】
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