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千代砌

鈍・しとり 2020年9月17日


 
 
はじめに刀があった。




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鈍・しとり 2020年9月17日
長く祭壇に座した刀はいつしか祈雨の道具となった
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鈍・しとり 2020年9月17日
人ある所に人の道あり
人知及ばぬ外の道あり
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鈍・しとり 2020年9月17日
刀は神と共にあり、刀は神であった
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鈍・しとり 2020年9月17日
雨は神からの慈悲であり
途絶えるは神の罰である

『わたしは刀であり神である。』
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鈍・しとり 2020年9月17日
かの祈言は命と成りて
刃金のうちに宿りたり

『この人をみよ。』
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鈍・しとり 2020年9月17日
刃金のうちに命あり
命は人の光なり

『この人をみよ。』
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鈍・しとり 2020年9月17日
栄光なり


『この人をみよ。』
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鈍・しとり 2020年9月17日
『この人をみよ。』
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鈍・しとり 2020年9月17日
『この人をみよ。』


太陽の下に新しいものはない。
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鈍・しとり 2020年9月17日
『この人をみよ。』


恩寵と真実に満ちたり。
光は命を覆はざりき。
恩寵と真実に満ちたり。
空の空、すべては空である。
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鈍・しとり 2020年9月17日
旱魃が続いていた。
太陽は常に空にあった。
長く光の恵みのみが地にもたらされた。

光は命を覆はざりき。

祈雨の声は枯れ、光のもとに人は道を失った。
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鈍・しとり 2020年9月17日
『神よ、神よ、なぜわたしを見捨てられたか。』


空の空、すべては空である。

この乙女は誰か、
曙のように現れ、月のように美しく、太陽のように輝き、
この乙女は誰か、
衣を剥がれ縄をかけられ、四肢を奪われ、
この乙女は誰か、
案山子にあらず、
わたしの声を聞き届けてくれた、ニンゲンの子よ。
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鈍・しとり 2020年9月17日
『この人をみよ。』


恐るべきこと、彼女は人であり光である。
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鈍・しとり 2020年9月17日
『この人をみよ。』


声なき力なき刃金がある。

道具に宿る神成らず、
長い年月経てもなお、
声なき力なき刃金である。
わたしは刀である。
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鈍・しとり 2020年9月17日
『わたしは刀である。』
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鈍・しとり 2020年9月17日
かつて刀のうちに命あり。
神成す前に人の身を斬り、付喪の道を外れたり。
かくして妖めた果ては鈍ら、雨乞い刀の、

その名を死虜と云いにけり。
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