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【本殿 壱】埃まみれの神様

御巫・夢羽 2019年1月6日


薄暗い部屋の中を歩く毎に埃が舞う。どれ程使われていなかったのかもわからない神社に、誰の許しを得たわけでもなく、こっそりと侵入する物影が一つ。




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御巫・夢羽 2019年1月6日
(薄暗い本殿の中。歩く度に床が軋む。床に穴が開かないよう、これ以上埃が舞わぬよう、慎重に歩を進めて辿り着いたのは幾年放置されたかもわからない御神体の前だった。)
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御巫・夢羽 2019年1月6日
……まさか、ここでもこの場所に神社があるなんて思いもしませんでした。
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御巫・夢羽 2019年1月6日
ここの神社でも、跡継ぎが見つからなかったのでしょうか。息子に宮司を継がせたかったのに、神様なんて信じないと家を出て、それっきり帰ってくることがなかったり……したのでしょうか。
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御巫・夢羽 2019年1月6日
……まぁ、それはないですよね。きっとここは、私の知る神社ではありませんもの。
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御巫・夢羽 2019年1月6日
(無礼を承知で御神体が奉られる敷居を越え、手が届くほどの近くに身を寄せる。それほど大きくはない御神体に被った埃を手で払う。)
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御巫・夢羽 2019年1月6日
ちょうど良いなんて、失礼でしょうけど……私、今住むところに困っています。知人も居ないのです。だから神様、私がここに身を置くことを許してください。掃除くらいなら私にもできますから……どうか……。
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御巫・夢羽 2019年1月6日
(祈りを捧げたところで、目の前の御神体が何を語るわけでもなかった。これは自分の不法滞在を許してもらうための言い訳。人間というのは都合の良い時ばかり神様を信じるものなのかもしれないなんで、それこそ今考えるべきではないのだけれど)
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御巫・夢羽 2019年1月6日
……忘れてました。強くならなきゃいけないんでした……んっ!じゃあ、そういうことだから、明日からよろしくお願いね。あなたにとっても悪い話じゃないはずだもの、許してね。
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御巫・夢羽 2019年1月6日
(誰が見ているわけでもないのに口調と態度を改めて、御神体を後にする。今日はもう遅いから、また明日出直そう。ここなら神様が居るのだから、寂しいことなんて何もないのだからと自分に言い聞かせて。)
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矢羽多・景 2019年1月28日
(唯一の人気のなくなった本殿。少しの間を置いて現れた青年は、恐る恐ると中を覗き込み)…こんにちはぁ。なんて、誰もいやしないか……思ったより中は立派な造りなんだなぁ。少しお邪魔しちゃうね、神様。
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