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【1:1】隠り世参拝

花仰木・寧 2020年8月6日


町を外れ、山裾を進んだ先にその神社はあった。

長い長い石段はまるであの世とこの世を繋ぐ架け橋のよう。
いくつもの赤い鳥居と社殿が、あたかも空中楼閣のように複雑に入り組んでいる。広いのか狭いのかもよくわからない。
手入れの行き届かぬ叢、灯る火。鵺の啼く声に、過る着物の裾影。
人ならざるものたちの気配が、こちらを窺っている。

それは隠り世の神が住まう処。
神が居るのかは――さて、今はまだ知らぬこと。

***

寧と夕辺さん




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花仰木・寧 2020年8月6日
(石段を半ばまで登ったところで、大きく息をついて足を止めた。階段の行く末には巨大な鳥居が待ち受けている。山の斜面を利用しているのか、それとも迷宮化の影響なのか、確かに神社であるとはわかるが、異様な様相でもあった)……本当に竜神様か、他の神様が住んでいらしたら、どうしましょうね。勝手にお邪魔しても怒られないかしら。……どう思います、夕辺さん。
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佐々・夕辺 2020年8月6日
ぜー、ぜー、ぜー……
(彼女の隣で肩で息をしている妖狐。戦闘労働は管狐に任せきりで、こんな石段を上るのは初めてだった。足が重い。膝が鉛のよう。なのになのに、ちいとも登れた気がしないのだ)
…え? あ、そうね……怒るような神様なら、神社を、閉じているんじゃ、ない? 開かれた場所だもの、きっと歓迎、して、くれる、と、思うけど……けど、…この階段の長さは……いやがらせにも思えるわね……
(ねえ、と相手を見る。持ってきた竹筒を取り出して水分補給)
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花仰木・寧 2020年8月9日
ええ、それは……確かに。(額の汗を拭う。とはいえ、お江戸の飛脚には敵わずとも、大正の女もそれなりには健脚のようだった。少なくとも、後ろの少女狐よりは)(こちらも竹筒に口をつけながら、気遣わしげに彼女を見やる。そのうち、ふらふらと転げ落ちてしまわないかと内心ハラハラしていた)その、半分までは来ましたし、もう少しの辛抱ですわ。あと少し頑張れば……。(励ましながらも、残る道程を見上げれば声音は弱まるばかりだった)(だから、)

――あの。もしお嫌でなければ、抱えてお連れしましょうか。(悪魔が)
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佐々・夕辺 2020年8月10日
は、半分、まで、きた?ほんと?(竹筒を腰にしまい、振り返る。高さにちょっとくらっとした。……確かに結構な距離を上ってきてはいたようだ。成程、疲れたのは無駄ではなかったと)
じゃ、じゃあ、あと半分、頑張りましょう……!(ぐっ、と袴の紐を締め…ようとして)

えっ!? 抱えて!? (寧さんが!?) そ、そんなの駄目よ!そんなご迷惑かけられないわ……!そんな細腕で…私、重いし!
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花仰木・寧 2020年8月11日
大丈夫、夕辺さんの二人や三人くらい、軽々と持ち上げられますわ。力持ちですもの。(悪魔は)
それは確かに、それほど筋骨隆々といった見かけではないかもしれませんけれど……――あら?

夕辺さんにアマラントスをお見せしたこと、ありましたかしら?
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花仰木・寧 2020年8月11日
(女の隣に、しゅしゅんと悪魔が姿を現した)
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佐々・夕辺 2020年8月12日
二人や三人!!!??(寧さんが!?)す、すごいのね。筋骨隆々どころか、すごく細身に見えるけど――え? あまら、何?
(聞き返そうとした刹那、相手の隣に現れた“アマラントス”に)

ひゃああああ!?骨!?
(びっくり仰天尻尾ぶわっ)
ね、ね、寧さん!ととと隣!隣!? 其れは何!? おばけ!?
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花仰木・寧 2020年8月12日
!(こちらは少女の叫び声に驚いて羽の耳がぴっとする)

お、落ち着いてくださいまし、夕辺さん。落ちますわよ! これは悪魔ですわ、……ええと、私のしもべです。おばけではございませんし、おいたもいたしませんので。(恐ろしいものではないのだと告げながら、悪魔を数歩下がらせる)
驚かせてしまってごめんなさい。その、私は悪魔を使役いたしますのよ。
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佐々・夕辺 2020年8月13日
おば、おば、おばば…(落ちないように懸命にバランスを取りながら震えている)
悪魔? しもべ? ……。私の管狐みたいなもの? (腰から竹筒を一本出した。しゅるり、と小さな狐が一匹滑り出て、周囲を泳ぐ)

う、…こ、こちらこそびっくりしちゃってごめんなさい。ええと、ええと、あま、あまらんとす? さんも、ごめんなさいね。
じゃああの二・三人運べるというのは、あまらんとすさんの事だったのね。てっきり寧さんが運ぶのかと思って、……恥ずかしいわ。
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花仰木・寧 2020年8月16日
まあ、可愛らしい。夕辺さんは御狐様をお使いになるのね。……この子、お名前はございますの?(しなやかに空を泳ぐ管狐を目で追い、頬を緩めた。とても大きなくくりでは同じようなものと言えるかも知れないが、少なくとも見た目は大違いのよう) まあ、ふふ。寧ろ、私の言葉が足りませんでしたわ。ええ、そう。アマラントスなら、鳥居のもとまでひとっ飛びでお連れできますから。
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佐々・夕辺 2020年8月16日
名前? …名前は、ないわね。いつも管狐とだけ呼んでいるわ。彼らはどこにでもいる精霊が形を持ったものだから。…名前を付けると、愛着とかわくかしら?(アマラントス…きっと彼女が付けた名前だろう、と、相手の傍に侍る悪魔を見た)
いいえ、いいえ。私、いつもおっちょこちょいなの。早とちりで。…じゃあ、あまらんとすさんにお願いしようかしら。寧さんも担いでもらいましょう。参拝する前に倒れたらことだもの。
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花仰木・寧 2020年8月18日
精霊、ですか。では、私も管狐さんとお呼びいたしましょう。……そうね。けれど同時に、個として縛ることにもなるかもしれませんわ。それがあなた方にとって良いことかは、私にはわかりませんけれど。
――かしこまりました。では、アマラントス。優しくお連れしてね。
(目配せひとつ。膝を折りかがみ込んだ悪魔が、片方の腕へと少女を抱き上げる。女もまた、慣れたように反対の腕へと身を任せ、悪魔の肩へと腕を回した。立ち上がれば、彼女たちの視界はぐんと高くなるだろう)
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佐々・夕辺 2020年8月19日
ええ。言っていなかったかしらね、私は精霊使いなの。戦闘は殆どこの子たちにやってもらう事が多いわ。
――名前。そうね。個として縛るという事は、この子たちが何かを司るという可能性を奪う事になるかもしれない。私は、…其れは嫌だなって思うの。
寧さんの悪魔…アマラントスって名前には、何か意味はあるの?

(竹筒を仕舞い、管狐は周囲で遊ばせる。悪魔にひょいと抱き上げられ、視界が恐ろしい程高くなった)
ひょ、ひょーー…!!!? 高い! 高いわ寧さん!巨人になったようだわ……!(思わず悪魔の頭部にしがみつき)
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花仰木・寧 2020年8月28日
私も戦いにおいてはアマラントス頼りですわ。(同じね、と笑う)――“アマラントス”とは、不凋花のこと。決して凋れぬ永遠の花のことです。何と言うか、……少しばかりの、祈りを込めたのだと思います。
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花仰木・寧 2020年8月28日
ふふ、ええ、そうね。巨人の気分を満喫なさって、そのまま、掴まっていらして。(悪魔が僅かに膝を折り、――軽く跳躍する。充分な手加減によって反動は最小限だろうが、それでも一足飛びに手強い石段が遠ざかっていく)

(そうして)(あっという間に、鳥居のもとまで辿り着いた)
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佐々・夕辺 2020年8月29日
そうね、寧さんが直接戦うのは…想像できないわ。だってこんなにおしとやかだもの。(自分は宙を飛ぶくらいはするけれど)枯れない花……ロマンチックだわ! いいわね。でも、ちょっと可愛いお名前だわ。――祈り? 其れはええと…死なないで、とか、いつまでも元気に、とか、そういう?
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佐々・夕辺 2020年8月29日
わ、わ、判ったわ!捕まっていればいいのね!?(悪魔の頭をわしづかみせんばかりの勢いだったが、悪魔に視界という概念があるのなら申し訳ないかぎりである。尻尾をぴるぴる震わせて)ひゃ、あああああ―――!?(軽い跳躍なので反動はないが……高い! びっくり! 石段をあっという間に飛び越えていく! 目を白黒させている間に、短い旅路は終わり)……す、すごい。もう着いちゃった……さ、さすがに此処からは自分の足よね。ありがとう、アマラントスさん。寧さんもありがとう。(お礼を言って、その頼りある肩から降りようとする)
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花仰木・寧 2020年9月5日
……いいえ、もっと身勝手な願望よ。決して、アマラントスの身を案じてつけたわけじゃない。(ほろ苦く笑って、矛先を変えるように夕辺さんは、と首を傾げてみせる)夕辺さんのお名前は、どなたがおつけになったの? 少し珍しいけれど、雅やかな響きの名ですわね。
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花仰木・寧 2020年9月5日
(当然悪魔にもまなこは存在するが、当の悪魔本人が文句をつけなかったのだから特に問題はなかったのだろう。内心どう思っていたかはわからないが)(少女と女を地面へ下ろした悪魔は、物言わず青い瞳を見下ろしてから静かに女の影へと戻っていった) このくらいはお安いご用ですわ。あれも私の中に籠もってばかりではつまらないでしょうし。――さて、いよいよこの先は神様の領域ですわね。もう階段はないと信じたいものだわ。(巨大な鳥居を見上げてから、まずは一礼した)
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佐々・夕辺 2020年9月13日
身勝手な? …でも、素敵だわ。枯れない花。きっとアマラントスさんはうれしいと思うわ。(ほんのりと目元を和らげて)
私の名前。…雅やか、というか…私がサムライエンパイア出身だからかしらね。由来を聞いたことはないし、両親はもういないので判らないけれど…夕方に生まれたから、とかそういう理由じゃないかしら。(ころころと笑う。冗談交じりだが、褒められる事自体は嬉しい)
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佐々・夕辺 2020年9月13日
(するりと影に消える悪魔を見送る。)影に潜ませるって便利ね…(思わずつぶやいた。自分の管狐は竹筒が依り代なので)
そうね。此処からは歩いていかないとダメね。まずは手水舎で手を洗いましょう。
(鳥居に一礼して境界を躊躇いなく跨ぐ。ひゅるりと吹いた風はどこか冷たくも感じて、ほうと息を吐いた)
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花仰木・寧 2020年9月18日
――ありがとう。(柔く表情を溶かして笑った) “ゆうべ”。……では、たそがれがあなたの色ですのね。私、あの頃合いの、昼と夜が混じり合う滲んだ空の色、大好きですのよ。
(急くことはなく、けれど真っ直ぐに手水舎へ向かう。柄杓を取り上げて、手水を使い――そうっと境内を見渡した。人の姿はない、ように見受けられる。けれど、)
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花仰木・寧 2020年9月18日
……静かですけれど、なんだか、(見られているような、気が)
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佐々・夕辺 2020年9月20日
黄昏。…そうかもしれないわね。青い空が紫色になって、橙になったかと思えば藍色になる。不思議な色よね。
(手水舎で手を注ぐ。左、右、左、持ち手。)……(空を見上げる。精霊が泳いでいる。けれど…)

うん。……私も、何故かわからないけれど緊張しているわ。
精霊たちじゃない何かが、見ているような。…ご挨拶しましょう。そうしたら少しは視線も和らぐかも。
(冗談交じりに目を向けたのは本殿)
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花仰木・寧 2020年10月26日
(世闇を縫うような、鵺の声に視線を上げる。――社殿の屋根へ)……神様と、それからあやかしたちの住処になっているのかもしれませんわね。恥ずかしがり屋さんのようですけれど。(緊張を押し隠すように、口元に笑みを刷いた。少女の冗談へ頷きながら、楚々とした足捌きで本殿――神前へ辿り着けば、ひとつ、息をついて)……――。(迷いのない動作で、拝礼する)
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花仰木・寧 2020年10月26日
お騒がせして、ごめんなさいね。できれば、仲良くしてくださると嬉しいのだけれど。(誰にともなく、そう言葉を投げかけて)
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佐々・夕辺 2020年10月29日
あやかしって、此処に住めるのかしら。神社だから嫌いかと思っていたけれど……嫌いならそもそも神社を作らないわよね。確かに、住処にしている子もいるかもしれないわ。
(頷いて、本殿の前へ。二礼、二拍、一礼。己は精霊信仰の身ではあるが、一応神様へのあいさつくらいは礼儀として覚えている)

……あ。
(ふわり、と風が吹いた。秋らしくない穏やかな風。泳いでいく精霊が何を告げているか、聞かずとも判る)
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佐々・夕辺 2020年10月29日
きっと仲良くしてくださるわ、寧さん。だっていま、優しい風が吹いたもの。さあ、じゃあ周りを回りましょう。裏にも小さな神社があるかもしれないわ。(神社には確か、小さなお社もあるのだと聞いた事がある。そ、と相手の手に触れ、軽く引っ張ろうと)
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花仰木・寧 2020年11月1日
あら、確かに。けれど、この世界に人間はとても少ないと聞きますもの。此処に神様が御座すのなら、あやかしと共に暮らせた方が寂しくはないのかもしれませんわね。(あやかしが果たして信仰を持つかどうか、わからないけれど。ご挨拶を終えた足が砂砂利を踏む。不意に吹いた穏やかな風に、女は少女のような声を聞くことはできないけれど、心地よさそうに眼を細めて)――まあ、本当に? だとしたら嬉しいわ。(触れた手を緩く繋いで、慌てないでと柔く笑う)
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花仰木・寧 2020年11月1日
(ふたり手を繋いだ影が、清庭を歩いていく。ちいさな発見や、あるいは出逢いなどもあったかもしれない。女と少女の隠り世の散策は、あともう少し、いくつもの土産話を抱えて――夕暮れに帰り路が染まるころまで続いたのだった)
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花仰木・寧 2020年11月1日
(〆.)
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