【1:1】祭囃子
天狗火・松明丸 2020年8月6日
人ならざる者達の賑やかな声が、その場には満ちていた。
とある村里に足を踏み入れると、浮かれ調子の旧鼠が踊りながらも列を成し、
情緒ある笛の音は高らかに、何処からとも無く響く太鼓の振動が伝わってくる。
入り組んだ迷宮化の効力か時代は定かではないが、古い和の雰囲気を感じる事だろう。
目の前に伸びた道を挟んで朱塗りの灯篭が幾つも並び、その合間を的屋が軒を連ねているが、
何より目を引くのは、その奥に鎮座する祭り櫓の存在であった。
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ベルと松明丸
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天狗火・松明丸 2020年8月6日
さて、ようやっと辿り着いたぜ。丁度、祭りの時期に間に合ったらしい。(入り口と見える門を潜る前には、提灯売りと怪しげな面屋――早速お出ましの提灯お化けとのっぺらぼうが店主のようだ。連れ立った青年に向き直り、漸くの到着を告げた)
ベル・ルヴェール 2020年8月6日
(初めて訪れた世界の初めての行事。僕の世界とは全く違う雰囲気で全く違う音楽が流れていた。僕の口が開いたままになってしまう。)ここが。これが祭りか。変な音楽が流れているな。(開いた口を閉じた。のっぺらぼうの店主に手を振ってみる。)
天狗火・松明丸 2020年8月6日
変な音楽? 嗚呼、笛の音か。俺にとっちゃあ普通なんだが、ベルには初めての文化というやつかもしれん。…そういや、お前さんのことは名前くらいしか知らんなぁ。何処から来たんだ?(手を振られたのっぺらぼうは、顔もないのに嬉しげに両手を振り返してきた。それもその筈、人に認識されない妖怪にとって、これがどれほど嬉しい事か。次第に手を振るのを止めて、今度は手招きなどしてきているようだ)
ベル・ルヴェール 2020年8月8日
僕はここではない遠い世界から来た。周りが砂だらけの暑い場所だ。初めての文化とはまさにその通りだ。僕の経験した祭りは笛の音はするけどこんなにもおかしな音色じゃなかったから。(手招きをするのっぺらぼうが珍しかった。精霊の類は良く見かけていたが、顔の無い者を見るのは初めてだ。僕の中の好奇心がむくむくと沸き上がる。)松明丸、この店主が手招きをしている。着いて行くと何かあるのか?(幽世は僕の庭じゃない。僕はのっぺらぼうを指差した。)
天狗火・松明丸 2020年8月9日
ほう、異国の民か。それも世界を越えて? 砂だらけの暑い場所じゃあ、この世界の緑あるところなんかは珍しいだろうな。…おかしいと言われると、お前さんの知る笛の音がどんなものだったのか興味が湧くわ。(子供が初めてのものに惹かれるような光景だ。彼の指差す顔無しの妖怪を顎で示しながら)そいつはベルに面を買って欲しいのさ。うっかり、お前さんの面の皮を剥がれんように、お代はしっかり払っておかんと怖いぞ。(のっぺらぼうは青年の反応に、上機嫌に面を次々取り出した。白い狐に朱塗りの化粧、黒い狸に金の化粧、ひょっとこ、おかめと種類も様々だ。中には異国の物も流れ着いてあるかもしれない)
ベル・ルヴェール 2020年8月10日
僕の聞く笛の音は、蛇を呼び出し操る。凄いだろ?(ひょっとこが何をしたかったのか僕は理解をした。取り出された面の数々に前のめりの姿勢で眺める。見た事も無い面ばかりだった。奥に、見た事のある面もあったが、あれはこの場にそぐわない気がしたので遠慮をした。)(僕は数ある面の中から白い狐の面を選ぶ。)ああ、僕はこの世界の物の価値を知らない。何か物を渡した方が良いか?
天狗火・松明丸 2020年8月11日
へぇ? 凄いねぇ、こっちじゃ蛇は神聖であったりするものだが、そちらの世界だと使役か何かなんかね。(ところ変われば在り方は様々。相槌を打ちながら、選ばれた白い狐の代わりに丁寧に拵えた魚の干物を布に幾つか巻いて置いた)この祭りに限って言えば、物々交換か銭か、金だな。人の物真似がしたいだけで、中身は何でも良いかもしれん。…なんなら芸事でも良いが、兎に角、構い構われたいのよ。(普段、人には見えぬからと言い添えて)
ベル・ルヴェール 2020年8月12日
(魚の干物が置かれた。正確には僕にはそれが魚の干物だとすぐには分からなかったけど、物と交換をしたと言う事は分かった。)(頭の中で整理をして僕は頷く)この方法なら僕の住む場所にもあるな。多くの者は水を欲しがった。『清めた水を対価に渡す。』のも大丈夫か?(僕は腰に下げた水の袋を見せる。)全部を与える事は出来無いが、一杯ならお安い御用だ。
天狗火・松明丸 2020年8月12日
成る程、お前さんの所の水なら此処にはない貴重な物だろうし、喜ぶやも知れん。…猪口か何かないか?器でも何でも良いんだが。(のっぺらぼうに言ってみるなり、勘定皿の代わりに縁の欠けた白い器が差し出された。その隣には対価の狐面だ)ベル、そこに少しだけ注いでやってくれんかね。のっぺらぼう相手なら、そう多くいれてやらんでも平気だろ。(言いながら、自分は赤い天狗の面と交換した)
ベル・ルヴェール 2020年8月14日
(僕は頷く。欠けた白い器に清めた水を注いでやった。量は少ないけど、妖怪には刺激の強い水かもしれない。もしかしたら、酔っ払ってしまうかも。狐の面を受け取って、僕は水をしまい込んだ。)(狐の面を被る。面白い形をしていた。)酔っ払うかもしれない。一気に飲み干さないように気をつけろ。松明丸。行こう。次の店もその次の店もこうやって水をあげれば良いか?
天狗火・松明丸 2020年8月16日
清めた水がどう作用するか、浄化されたら堪らんなぁ。(妖怪の仲間意識など有りはしない。のっぺらぼうが何匹かの貉と変わり、舌を伸ばして喜んでいるようだった。ほろ酔い程度で済んだのだろう)おう、水が尽きりゃあ脅かしに来るかも知れん。俺も魚の干物と…後は砂金を幾粒か程度なら手持ちがあるわな。適当に買うなり遊ぶなりしようぜ。(赤い灯籠の並ぶ先、妖共が商いする的屋の道へと足を向けた)
ベル・ルヴェール 2020年8月16日
(どこをみても妖怪だらけの祭りは見ていて飽きなかった。僕は妖怪の望む人間じゃない。それが幸いしたのか、一部の妖怪は僕に興味すら示さなかった。けど、楽しさに変わりは無かった。)(しばらく歩くと的屋が見えて来た。あそこに向かっていたのだと僕はようやく理解をした。)あそこはどんな事をする場所だ?(的屋を指差して僕は首を傾げた。)
天狗火・松明丸 2020年8月16日
あー…輪投げしたり、射的で欲しい物を落としたりすんのよ。金魚すくいやら水風船やら…くじ引きもあるみたいだな。(櫓へと続く道を挟み、様々な店が並び立っていた。少し先から響く音頭に合わせて、浴衣を纏ったろくろ首や旧鼠が楽しげに足踏みなどしているようだ。行き交う中には人に似て人ならざる、胡瓜や茄子の馬を引き連れる者もいた)お前さんは気になるものとかあんのかね。
ベル・ルヴェール 2020年8月17日
僕の気になる物か。(すれ違う妖怪達が一番気になっていた。人間みたいに色んな妖怪がいる。でも人間とは外見の特徴も全く違う。野菜だっているんだ。)(歩きながら僕は屋台を眺めた。)松明丸、僕はあれが気になる。あれは金魚だな。金魚は知っている。人間はあれを掬って飼うのだろ?
天狗火・松明丸 2020年8月18日
おお、あれか。俺は魚は喰ってしまうんだが、人間はひらひらしたものや綺麗なものを好んで手元に置くらしいな。(金魚すくいの看板を掲げた店では、水を張った細長い桶に、赤や黒、班目模様をした色鮮やかな金魚たちが優雅に尾鰭を靡かせていた)その物言いだとベルも人間では無さそうだが…気になるなら、やってみるか?
ベル・ルヴェール 2020年8月18日
あれを喰うのか?あれが喰える事は初めて聞いた。松明丸の言う通り僕は人間ではない。妖怪でもない。(喰える話は初めて聞いた。僕は金魚を覗き込む。色や大きさは色々とあるけど腹は太らない気がする。)(僕は頷いた。「やってみたい」。人間の遊びを楽しんでみたかった。)ここも水と交換で良いか?
天狗火・松明丸 2020年8月18日
魚なんだから喰えるに決まってるさ。人間が喰ったり、お前さんが喰えるかまでは知らんが。…そうかい、人でないのなら人真似の店すら初めてかもなぁ。砂地だと余計に遊ぶもんもなさそうだな?(此処の店主は浴衣でめかした女のようだ。不自然に前髪を伸ばして片目が覆われているが、大方、お岩かそこらの妖怪だろう。不気味な笑みを浮かべた女は、すくい網ポイと呼ばれる薄い紙を張った道具を一つ差し出してきた)貴重な水だろ。あー…ほれ、すくったら一匹は連れ帰らにゃならんけど、要らなきゃ此処に返しておきな。(ポイをベルに手渡し、代わりに懐から年季の入った硬貨と交換した)
ベル・ルヴェール 2020年8月20日
観賞用だと聞いたから驚いただけだ。(懐から取り出した硬貨と不思議な物が交換された。僕は差し出された物をどんな風に使うのか知らない。)(童が掬う様子をこっそり見た。)(水の中につけて、一気に掬い上げたけど紙は破れてしまった。童は悲しそうだ。)砂漠の遊びも限られている。ラクダに乗って他のオアシスに行くにしても何日もかかってしまうからな。魚は貰う。ここで掬った物は、きちんと面倒をみなきゃいけないと聞いたからな。僕が責任を持って可愛がるよ。(僕はボイと呼ばれた道具を持って童の間に座った。)松明丸はやらないのか?
天狗火・松明丸 2020年8月21日
(観賞用。この鳥の頭には魚は全て食い物に映る故、すっかり忘れていた)…らくだ、は乗り物か? おあしす? よう分からんが、なかなか不便な所だな。楽しみが少ないんなら、金魚を愛でるのも退屈凌ぎにはなるのかねぇ。(相手の問い掛けに少しの思案の後、自分も一つ買う。童を挟んで座り、ポイを水面に薄く浸して紙の面が均等になるよう濡らすと、ふくふくと太った赤い出目金を端に追いやりながら、その下へ静かに静かに潜らせる)お前さんが面倒見るってのは、ちと意外だな。まあ、掬えたらの話だが。
ベル・ルヴェール 2020年8月22日
……ラクダもオアシスも知らないのか?(僕は水の中に道具を沈めようとした。でも驚くような言葉が一つ先で聞こえたんだ。)(ボイが水の中に沈んでいる。水を吸い込んでいるのに形はまだ保たれていて可笑しい。どんな魔法だろう。)意外だとは心外だ。僕はこう見えてきちんとしている。金魚を貰ったらオアシスの皆に見せるんだ。驚くだろうな。
天狗火・松明丸 2020年8月23日
知らんなあ。(それだけを返した。意味は矢張り、分からなかったからだ)こう見えて……ね。はは、そらぁ、此度に連れ帰る金魚がどう育つのか、少し楽しみになったな。(一先ず、オアシスが砂地の場所であることを理解する。それから、手元のポイを金魚へ寄せて、寄せて、水の表面を飛び出す頃にはポイと共に受け取っていた小さな器にひょいと移した)
ベル・ルヴェール 2020年8月24日
(ボイが水面を動く。僕はその様子をずっと見ていた。金魚を掬ったら器の中。隣の童のボイは器に入れる前に破れていたけど、あのボイはまだ綺麗だ。)(僕は「おぉ。」と声を漏らした。)凄いな。(童が悔しそうにしている。僕もボイを水の中に浸けた。)ラクダは動物、オアシスは砂漠なのに人の住める場所だ。(さっきは分かっていないような返事だった。金魚が寄って来るのを待ちながら僕はお喋りに興じる。)
天狗火・松明丸 2020年8月24日
人の身体より元々の方が多く獲れたろうになあ…(小さくぼやくが喰ってしまわぬ内にと、童の器に自分の器をひっくり返して金魚を泳がせた)俺は家が無いから育ててやれんわ。…ラクダは馬みたいな奴だろ、多分。ベルの国には鉄の箱が飛んだり動いたりはしていなさそうだし、おあしすは、やっぱり分からんわ。砂漠で住める所っつーのは、屋根とかある家なんかね?(屋台などを指差しつつ、集落か何かと予測した。言葉の響きでは残念ながら、まるで想像つかぬものである。その、オアシスというものは)(空になった器を砂地の民の手元に向けて、その動向を見守った)
ベル・ルヴェール 2020年8月25日
僕たち一族は魔法で生み出した木の中に住んでいる。他の民はテント暮らしのようだが、僕たちは砂漠に迷い込んだ旅人を案内しなければならないからな。木だけじゃない。水も火も僕たちの一族は神に祈り、自然の力を借りて色んな物を生み出している。(暫く待っていると一匹の金魚が寄ってきた。見よう見まねで金魚を掬い上げるとボイは綺麗に破れてしまった。)(元気な金魚だったのか。)破れてしまったな。
天狗火・松明丸 2020年8月26日
へえー…まほう?(首を傾げて見せながら)神通力みたいなもんだろか。一族のお前さんが、持ち場を離れて大丈夫なんか? 見聞でも広めに来たとかか。…ベルのところの神というのは、砂漠の民と友好的な関係らしいなあ。(現世から零れた神ばかりの世界が故、何とも言えない顔になってしまったが)(ぽちゃん、と勢いよく水を跳ねて、気付けば薄紙の上を金魚が脱走していたようだ)
天狗火・松明丸 2020年8月26日
…ふむ。そんじゃあ、ベル。どうする? どうやら砂地に金魚は居らんようだし、そのおあしすの民や神とかに見せてやるなら粘ってみる? それとも、おまけを期待してみても良いし、俺が人肌脱ぐも良し。(己の手の中のポイをひらつかせ、金魚を遣った童と並べて青年を見た。自分の手で掬ってみたかったろうな、などと思いつつ)何ぞ、金魚に思い入れがあったようだから。誰かに聞いたんだろ?
ベル・ルヴェール 2020年8月27日
(僕は失敗をしたけどまだ出来るみたいだ。もちろん頷く。僕は金魚が欲しい。)神通力みたいな物かもしれない。自然の力を借りて、不思議な現象を起こすことが出来る。僕は一族の中でも一番年寄りだからな。誰も僕の行動には文句をつけない。万が一のことがあっても僕はすぐに一族の元に駆けつける事が出来る。(水を注ぎながら話をした。もう一度するなら今度は僕が対価を払う。受け取ったボイを沈めて金魚を待った。)聞いた。その人が覚えているかは分からないけどね。
天狗火・松明丸 2020年8月28日
不思議な現象とは、どんなもんだか気になるが。借りを作るっつーことはよ、返さにゃならんものな。(話す内に、緩やかに游ぐ真っ赤な金魚がポイの近くを掠めた。他のものより小ぶりであろう朱は、まだ薄い紙の上でも穴を開けにくかろう。運良く隅の方まで流れていく)一族の長であったりする? 帰るべき場所へ瞬時に戻れるのは楽だな――っと、静かに、ゆっくりポイを上げて水面に近付けりゃあ良いよ。(動向を引き続き見守る姿勢。金魚屋の店主が驚かそうか見計らっているのを見つけて、しぃ、と黙らせておいた)ベルが覚えとるなら、十分だろ。見せびらかしてやったら良いわ。
ベル・ルヴェール 2020年8月29日
(言われた通りに僕はボイをゆっくり動かして水面に上げた。そこから素早く器の中に入れる。)(小さい金魚を器の中に入れることが出来た。)出来た。小さな金魚だけど初めての金魚だ。松明丸は教えるのが上手いな。僕でもあっと言う間に掬う事が出来た。僕は覚えている。覚えているからこの金魚を見せよう。驚くかもしれないな。
天狗火・松明丸 2020年8月30日
…良かったな。何よりだ。驚く顔は俺も好いと思うから、そりゃあ楽しみだろうな。(何処となく満足げに口端を歪めるていると、店主が今し方掬ったばかりの金魚を透明な袋に入れてくれたようだ。そちらに向かって差し出している)そいつ受け取ったら、そろそろ櫓を見に行かん? 言ってた歌と踊りを見学したら、帰りがてら食いもん買ってみようぜ。お前さんさえ良けりゃあだが。
ベル・ルヴェール 2020年8月30日
行く。(僕は二つ返事で頷いた。この世界は知らない物が多かった。金魚を受け取った僕は無くさないようにしっかりと持って歩く事にした。)松明丸が言っているのはあの高い建物だな。あそこから攻撃をするのかと思ったよ。違ったみたいだ。
天狗火・松明丸 2020年9月2日
嗚呼。…そうよ、あの高い屋根ついた所な。太鼓を叩いて愉快に踊っておるが、櫓も俺の知る昔々は弓矢を射て敵を払う為に在った様だし、間違っても無いかね。城を守る為に、元は在ったって話だ。(過ぎゆく景色に、ふわりと浮かぶ綿飴や、悪い笑みを乗せた口だけの林檎飴を売る屋台、跳ねる焼き団子屋などが流れて行く。次第に近付いてくる太鼓と笛の音、内側に響く祭囃子が一層大きく鳴り出した頃。じゃりじゃりとした足音さえを掻き消して辿り着いたのは、紅白目出度い色彩で出迎える櫓と、その周りをぐるりと囲って浮かれて踊る妖怪達の大広場だった)
ベル・ルヴェール 2020年9月3日
やっぱり。あの上から攻撃もしていたのか。あれだけ高い所にあれば、空を飛ばないと下から倒す事は出来ない。上手いな。(僕は感心した。カクリヨでは太鼓を叩く妖怪がそこで太鼓を叩いていたけど元はあそこから攻撃をしていたらしい。)(近付いてみると思ったよりもかなり高かった。)周りの妖怪達はあの太鼓に合わせて踊っているのか。変な笛の音もここから聞こえたんだな。松明丸。僕たちも踊ろう。
天狗火・松明丸 2020年9月6日
まあ、今は平和と言やあ平和なんだから祭りに変じているようだが――何だって?(見物だけかと思っていたが、まさかの声に一瞬、目を剥いた。賑やかしい中に混ざって踊る自分が想像出来ずに暫し唸って)嗚呼、否、ベルが混ざってみたけりゃ是非踊ってくると良い。俺は此処で手拍子でも打ってるからさ。
ベル・ルヴェール 2020年9月7日
松明丸は踊らないのか。それは残念だな。僕は行って来る。(僕は輪の中に混ざって一緒に踊った。奇妙な踊りは知らなかったけど妖怪達は親切だった。)(僕に盆踊りを教えてくれたからだ。僕は両手を挙げたり奇妙な動きをして一緒に笑った。)僕は踊りが好きなんだ。祭り事があれば僕も良く踊る。(音楽に合わせて手拍子もする。)
天狗火・松明丸 2020年9月8日
(太鼓の音頭に合わせて右へ左へ、ゆらゆらと皆が舞って足踏み行進。存外楽しげなようで宜しい事だが、己はと言えば手拍子すら何故だか全く噛み合わない)へえ。此方の祭り事とはまた違いそうだが、踊るのは同じなのか。…何故、こうも陽気な音には人も妖も集まって踊ったりするんだろうな。(共に円を描きながら、佳境を迎える祭りの音色にずれた掌を打ち鳴らし続けた)
ベル・ルヴェール 2020年9月10日
踊りは楽しい。踊りは知らなくても自由に適当に踊れる。だからこうやって集まるのでは無いか?僕はそうだ。知らない踊りでも、踊ると楽しい!(僕はかみ合っていない拍手を聞いて笑った。太鼓の音も笛の音も僕の世界には無い奇妙なリズムを奏でていたけど僕は楽しかった。)(踊る度に僕の装飾が鳴る。その音を近くにいる妖怪に褒められた。)(暫くして僕は踊りの輪から外れた。)僕は満足したよ。松明丸はどうだ?
天狗火・松明丸 2020年9月12日
自由に適当に…? はは、確かに、お前さんなら輪の中の決まり決まった流れも、自在に掴めて楽しめていそうだな。(不器用に叩いた掌も、彼の装飾の鳴る音も、笛も太鼓も、周りの妖怪が奏でる足踏みも。この時ばかりは面白可笑しく重なり合って響いていた。満足げに輪から抜け出した男に寄って、頷く)――俺も満足だ。ベルの珍妙な踊りも観られたことだしなあ。上手いこと、上手いこと。
天狗火・松明丸 2020年9月12日
(乾いた音をまた鳴らして、そろそろと帰る為の踵を返しながらも空を見上げる。祭囃子も程なくして止むところ――丁度その時だ。どん、と太鼓よりも芯に響く音が巡り、一筋の光が駆け昇って、火の粉を花と咲かせた。花火だ)
ベル・ルヴェール 2020年9月12日
(どこかで爆発のする音が聞こえた。僕は肩を揺らして立ち止まる。)敵か?!(辺りを見渡しても武器を構えた人はいなかった。)(みんなが空を見上げて笑っていた。僕にとっては不思議な光景だったけど同じように空を見上げると炎が散っていた。)……キレイだな。あれは花火か。
天狗火・松明丸 2020年9月13日
…へえ。そういう顔もするのか、ご馳走さん。(驚きを主食とする者の性。からからと戯れに笑って、煌めく花を咲かせる空を珍しくもなく一瞥してから、またも適当加減で歩き出す)見たこと無かったか? 花火のある時代を組み上げた迷宮の一つだったみたいだな。…そら、祭囃子まだ続いているようだし、土産に何ぞ買ってでも行こうぜ。
ベル・ルヴェール 2020年9月14日
空に打ち上げる物は見た事無い。僕が打ち上げる物はせいぜい火だな。こんな風に散らない火だ。同じように爆発はするけどこんなに綺麗じゃない。(僕は空を見上げたまま歩いた。近くを歩いていた妖怪の子も一緒になって空を見ていた。)土産か。松明丸のオススメはあるか?この世界ならではの土産。一族の皆に見せたい。
天狗火・松明丸 2020年9月18日
おやまあ、そりゃあちゃんと見んとならんな。火の玉を打ち上げるのも、其れは其れで面白そうだが……そうか。此れは綺麗と云うのか。(小さな童と大きな童――砂の民の事である――を見比べて、何故だか然して変わらんなどと思いつつも。並ぶ店先の跳ねる鯛焼きや熱い熱いと叫ぶ餅、目玉らしきを飾り付けた林檎飴などを順に指差して)此処らの食い物は皆、喋るしな。気に入りの子でも連れりゃあ良えさ。
ベル・ルヴェール 2020年9月19日
全員喋るのか。それは皆も驚くだろう。お喋りにも困らない。(並んだ奴らを順番に眺めた。特に気になったのは跳ねるたい焼きだ。本物の魚のように跳ねていて面白い。)(目玉を付けた林檎飴も面白かったけど子供が泣くかもしれないと思った。)これにしよう。跳ねる魚を五個。本当はもっと欲しいけど全員分は流石に買えないな。水と交換で良いか?(水を見せながら僕はたい焼き屋の店主に訊ねた。)
天狗火・松明丸 2020年9月21日
(言うや否や、欠けた茶碗が二つ並べられた。跳ねる魚に焼き目を付けていたのは、貧相な形をした赤い鬼。堂々たる体躯の青い鬼が水が杯を満たすのを見届けて、焼き立ての魚を五匹を素早く捕らえて袋へと仕舞った。ぎゅっと力強く口を縛り――『タベテ!タベテ!』『私ヲ食ベテ!』『俺ガ一番美味イゾ!!』『海ヘ帰リタイ…』等々、賑やかな其れが色黒な手に渡る)……逃さんようにな。特に熱い内には口に飛び込みたがるから、気を付けんと。(自分も一尾、木の葉の銭で買って。元来た道を指し示す)
天狗火・松明丸 2020年9月21日
(鮮やかな金魚と跳ねる鯛焼きを手にした砂の国からの来訪者と、片や翼を生やした妖怪と。囂々たる祭囃子が続く中、花火の照らす帰り路を、その二人は行くのであった)