【1:1】くらげとわたがし
宵雛花・十雉 2020年7月14日
ぴちゃん――
蛇口から零れた水が音を立てる。
目の前にはお盆、それから2人分のグラスと飲み物。
まだかな……気持ちばかりが急いてしまう。
見えない何かに導かれるまま、手持ち無沙汰なオレの指はグラスを弾いていたのだった。
清廉を求めてやまないかのように。
+++
お相手:
ティア・メル(f26360)
0
宵雛花・十雉 2020年8月24日
んー、危ない時もあるけどね。けどなんていうかさ、探偵として依頼を受けてると、こんなオレでも必要として貰えるのかなって……そんな気分になれるんだ。(自嘲気味に笑いながら、大きな瞳を見返した)
ティア・メル 2020年8月24日
んにー。こんななんて、ぼくの前で言わないでよ。(席から立ち上がって彼の近くに寄ると頰を包むべく小さな両手を伸ばした。あまやかな声に純度の高い笑みを添えて)今、十雉ちゃんと一緒に居るぼくが十雉ちゃんを必要としてるんだよ。他に何か要る?
宵雛花・十雉 2020年8月24日
あ……ご、ごめん。(頬を包まれれば、条件反射的に身動きをやめ、真っ直ぐに相手の目を見て)
そ、そっか。ティアちゃん、オレのこと……必要だと思ってくれてるんだ。
ティア・メル 2020年8月24日
必要だよ。必要じゃなきゃ、一緒に居ないし、此処にも来てないよー。(つめたいゆびさきで頰をしっかり包む。のんびりとした湖面の眼差しを注いで)ぼくは今、此処に居るよ。それが一番、十雉ちゃんを必要としてる証拠。
宵雛花・十雉 2020年8月24日
うん、ありがと。(そうだ、彼女がこうやって一緒にいてくれることがそもそも自分にとっては幸せなことで)
……じゃあもし、いつかティアちゃんがオレのこと要らなくなったら、ティアちゃんはいなくなっちゃうの?
ティア・メル 2020年8月24日
んに?居なくならないよ。だって、十雉ちゃんを必要としなくなる日なんて来ないからね。(何故呼吸をしているのかと問われたくらい、躊躇も逡巡もなくいらえた)十雉ちゃんがぼくを必要としなくなったら、十雉ちゃんが居なくなっちゃうだろうけどさ。
宵雛花・十雉 2020年8月24日
えっ……(迷いなく返った答えに面食らう。どうして彼女は全く迷いもしないのだろう)やっぱりすごいな、ティアちゃんは。オレもティアちゃんみたいになれたら……(そこまで言って、ゆっくりとかぶりを振った)ううん、オレがティアちゃんのこと必要としなくなるなんて有り得ないよ。こう見えてすごく執着するタイプなんだ、オレ。
ティア・メル 2020年8月24日
にゃはは。十雉ちゃんは十雉ちゃんだから好きなんだよ。ぼくみたいにならないで。(自分を卑下した物言いではなく、至極当然みたいにゆるやかにあまい声を紡ぐ)んに?そうなの?十雉ちゃんは今何かに執着してる?(じんわりぬくめられてきた指先で、彼の頰をそっと撫でた)
宵雛花・十雉 2020年8月24日
うん。(してるよ、と静かに頷いて)……大好きな人たちを失いたくないっていう執着。今だけじゃなくて、ずっとかもしれないけど。
ティア・メル 2020年8月25日
んに?それは執着なの?大好きな人たちを失いたくないっていうのは、誰でも同じじゃない?(まるい眸を瞬かせる。大きく首を傾げて)大好きな人たちを大切に想う事も、失う事を恐れるのも、嫌なのも、普通だと思うよ。
宵雛花・十雉 2020年8月25日
オレは執着だと思ってる。……だってさ、こんな言い方したくないけど、その人の代わりを見つける選択肢だってあるわけじゃない?その方が幸せな場合だってあるだろうし。
……けど、オレには出来ないんだ。
ティア・メル 2020年8月25日
んにに?それは一途って言うんじゃないの?
代わりを見つけて切り替える事も、それをせずに――出来ずに想い続ける事も、どっちもその人の個性じゃない?
想い方に良いも悪いもないと思うよ。
宵雛花・十雉 2020年8月25日
よく言えばそうなのかもしれないけどね。……でも、自分が辛い思いをしてまで一途でいるのは、それはもう執着なんじゃない?例えば死んでしまった人に会いたいなんて、いくら思ってたって叶いっこないでしょ?
ティア・メル 2020年8月25日
叶わない事は抱えちゃ駄目?執着の定義がよくわからないし、十雉ちゃんの気持ちを断定なんて出来ないけどさ。辛くっても、一途に想えるのはすごいと思うよ。
それにしても、十雉ちゃんは執着を悪い事みたいに言うよね。どうして?
宵雛花・十雉 2020年8月25日
……執着が駄目なのは、悪い事なのは、やっぱり辛いからだよ。誰も幸せにならないから。
ティア・メル 2020年8月25日
ふみーん?十雉ちゃんの執着を嬉しいって喜ぶ人が居たら、十雉ちゃんにとって執着は良い事になるの?
宵雛花・十雉 2020年8月25日
え……(驚いたように、ぱちくりと目を瞬かせて)ど、どうなんだろ。そんな人いなかったから……分かんないや。
ティア・メル 2020年8月25日
ぼくは、うれしいな。十雉ちゃんに執着されたら。すっごく嬉しいよ。(言い含めるみたいにあまい声が笑う。ゆるりと首を傾げては桃色の髪が頬を伝った)ぼく以外にも居ると思うけどね。十雉ちゃんの執着を喜ぶひと。
宵雛花・十雉 2020年8月25日
ほんと?……そんなこと言ったら、益々執着しちゃいそうになるじゃない。(嬉しいのと同時に、胸のどこかがちくりと痛むようで)
でもね、受け取って貰えるだけでも嬉しいけど、やっぱり同じものを返して欲しいとも思っちゃうんだよ。……オレ、欲張りだからさ。
ティア・メル 2020年8月25日
んふふ。執着してくれるの?欲張りな十雉ちゃんもかぁいくて大好きだよん。(いいこいいこと頬をまろく撫でて、あまやかに咲む)同じもの以上を返すよ。ただ、ぼくも欲張りだからね。もっと十雉ちゃんをくれなきゃやだ。髄の髄まで、ぼくに曝け出して。そうしたら目一杯甘やかしてあげる。
宵雛花・十雉 2020年8月25日
もっと?(撫でる手に委ねながら、きょとりと首を傾げて)
髄の髄……それって、心のはなし?
ティア・メル 2020年8月25日
もっと。ふふふー。こころの話。その覚悟が出来たら、いつでも十雉ちゃんの執着をちょうだい。(秘め事をささやくみたいに声をひそめて、撫でる手を止める)もちろん、十雉ちゃんが執着をくれなくたってぼくは十雉ちゃんが好きだし、何かを求めるなら応援するからね。
宵雛花・十雉 2020年8月26日
ずるいなぁ。ティアちゃんはオレを海の底に誘ってくるけど、それと同時に「溺れない」っていう選択も認めてくれるんだもん。……ずるいよ。もっと欲しがってくれてもいいのにさ。(彼女は子供のようであると同時に、自分よりずっと大人のようでもあった)
ティア・メル 2020年8月28日
んに?だってぼくはぼくの言う事を聞かせたい訳じゃないからね。それじゃあ、ただのお人形だよ。十雉ちゃんが十雉ちゃんじゃなくなっちゃうのは嫌だな。(迷う間もなく連ねた。波が寄せては返すみたいに、当たり前とばかり)
宵雛花・十雉 2020年8月28日
オレがオレじゃなくなる……(ぽつり、寄せられた言葉を味わうように呟いて)
オレって、何なんだろ。(考え込むように頬杖をついた)
オレにしか分かんないのかもしれないけどさ。
ティア・メル 2020年8月30日
うん。誰かの命令に、言葉に、従うだけなら十雉ちゃんじゃなくていいんだよ。機械でじゅうぶん。でもさ、十雉ちゃんには意志があるじゃない。こころってやつがさ。(呟きを拾って海に広げていくみたいに、あまい声は泡沫に溶けて)
ぼくは十雉ちゃんがいいよ。人形は、やだな。
宵雛花・十雉 2020年8月30日
そっか……ありがと。実はさ、ずっと言われてみたかったんだ。オレがいいって、オレじゃなきゃ駄目だってさ。
宵雛花・十雉 2020年8月30日
でもね、ティアちゃんの言う通りオレにはこころがある。欲張りだし疑り深いんだ。だからね……「ほんと?」って思っちゃう。(言えば、品定めをするように彼女を見て)
オレが信じるのは、その人の言葉じゃなくて行動。本当にそう思ってなくても言葉でなら何とでも言えるけど、本当にそう思ってないと行動は出来ないからね。それに実際、口の上手い人をオレは知ってる。……ティアちゃんは、どう?
ティア・メル 2020年8月30日
んふふ。欲張って、疑って、その方がずっといいよ。かぁいくて、すっごーく魅力的。(喜色を含んだ笑みで応える。向けられる感情がなければ一人遊びと変わらない)
んに。口は下手っぴだと思うけれど…行動かあ。何をすれば十雉ちゃんは安心出来るのかな。(あ、と一言告げたと同時に己のゆびを噛んだ。くれなゐが滴る人差し指を彼のくちびるへ運ぶ。紅を引くみたいに滑らせようとして)ソーダ水の偽物の血だよ。人は昔から血を交わす約束をすごく大切に扱ってたからさ、どうかなって。
ティア・メル 2020年8月30日
十雉ちゃんは十雉ちゃんでいて。人形にはならないで。そう思ってるって事、この血で証明―――出来るかな?
宵雛花・十雉 2020年8月30日
……。(指から滲む紅を見つめる。唇に引かれたそれを舌でなぞるように舐めとって、それから人差し指の傷を唇で撫でた)
宵雛花・十雉 2020年8月30日
(顔を離せば、彼女がしたのと同じように、自分の人差し指の腹を噛む。傷口からは紅く生暖かい血がじわりと滲んで)……オレのは、ほんとの血。(倣うように、辿るように、少女の唇に紅を引く)
ティア・メル 2020年8月31日
(人の器を取っているからか、微かな痛みが滲む。彼の行動を止める事なく見守った)んふふ。ぼくのもいちおー血だよ。(彼の身の内に流れる紅で彩られたくちびるを緩める。不思議な味に笑みをふかめた)んー…ぼくの血とはやっぱり違う味がするね。少し苦くて…ソーダ水みたいに弾けたりしない、人のもの。
宵雛花・十雉 2020年8月31日
美味しい? オレの血。
……オレが、まだ生きてるって証。(指の痛みが心地良い。白い肌からまた滲み始めた紅を自分で吸い取って)
ティア・メル 2020年9月3日
んに。ちょっぴし苦いね。(湖面がまたたく。未だ滴る血を認めて、彼の方へ手を伸ばした)まだ生きてるっておかしな言い回しだね。もっと頂戴。生きてる十雉ちゃんの血。生きてる証をちょうだい。
宵雛花・十雉 2020年9月3日
人間はいつかは死ぬものだよ。それが遅いか早いかってだけでさ。(求められれば微笑んで、血の滲む指を彼女の方へ差し出した)
ティア・メル 2020年9月3日
んー…十雉ちゃんには長生きして欲しいな。(伸ばされた手首に軽くゆびさきを這わせ、滲んでいる生の証にくちびるを寄せた)んふふ。ぼくが吸血鬼だったら美味しく感じられたのかな。でも美味しく感じたら余す事なく飲み干してただろうし、セイレーンで良かったよ。
宵雛花・十雉 2020年9月3日
ありがと。……けどね、神様だけが知ってるんだ。いつその人のところへお迎えが来るかはさ。(寄せられた柔い膨らみに目を細めて)
もしもオレの血がティアちゃんの血に混じったら、死んだ後もずっとティアちゃんの中で生き続けられるのかな。いくらセイレーンが長生きでも、それなら置いて行かずに済むよね。
ティア・メル 2020年9月3日
ふいー。そうだね。じゃあ、神様が来たら追い払っちゃおう。十雉ちゃんを連れて行かないでってさ。(美味しくない血を口の中で味わい続ける。ソーダ水と人が内側で混ざり合うよう)
ふふふー。十雉ちゃんの血で赤くなるのもいいね。こんな風に。それに逆も言えるよ。ぼくが人の形を取らなくなって、深い水底のソーダ水に戻ったとき、十雉ちゃんの中でぼくが生き続けられるかもしんない。
宵雛花・十雉 2020年9月3日
あはは、すごい。そんなことも出来るんだ。(真っ赤に染まった姿を見れば、血の混じり合う様を視覚的に認識させられるようで、何だか気分が高揚した)
……そうか、それもいいかもね。じゃあティアちゃんが人の形でいる証、オレにももっと頂戴よ。
ティア・メル 2020年9月3日
好きなように出来るからね。ふふふ。十雉ちゃんが欲しがる分だけあげる。でもそれ以上に十雉ちゃんをちょうだい。(湖面に紫が滲んでいく。鋭利な眼差しは赤い茨で彼の体をとらえるよう)ぼくは欲張りだから、あげる以上に欲しがるよ。(あまい声は警告じみた響きをもって。くれなゐに柔く歯を立てると彼の方へ傷のあるゆびさきを伸ばした)
宵雛花・十雉 2020年9月4日
(欲張りだと聞けば、あげる以上に欲しがると聞けば、くすりと静かに笑って)うん……知ってる。(お返しとばかり、ひやりとした指先に歯を立てる。その傷口を広げてやるように)
ティア・メル 2020年9月5日
んに。…ふふふ。もっと欲しい?(淡い痛みも泡沫と変わらない。更に滴るあかが彼のくちびるを濡らしていく。苦味をくちの中で蕩してあまやかに笑った)
宵雛花・十雉 2020年9月5日
欲しいけど……飲み干したら、ティアちゃんがいなくなっちゃうでしょ? それは困るもの。(一度短くリップ音を立てて唇を離した)
ティア・メル 2020年9月5日
(自身の引いたゆびさきに口付けをひとつ。ひどく楽しそうに口角をもちあげた。傷口はすでに塞がっている)んふふー。じゃあ、ちょっとずつあげるよ。一気飲みは体に悪いもんねー。(その身の内にソーダ水の毒を混ぜていく。異物として弾かれないくらいに少しずつ、ゆっくりと)
宵雛花・十雉 2020年9月5日
(塞がった傷口に目を瞠る。これも彼女がソーダ水であるが故なのだろうか)ちょっとずつなら、いなくならない?(血に混じって流れる毒には気が付かない。免疫機構を欺いた毒は、次第に己自身になっていくのだろう)
ティア・メル 2020年9月5日
(至極当然とばかり、ふより笑って頷いた。ひとすじの甘い毒は意図的かどうか)うん。居なくならないよ。ちょっとずつだからね。好きなだけ飲んで、十雉ちゃん。(窓から差し込むひかりが橙へと移ろっていく。やわらかな陽射しに照らされた湖面が紫に転じたのは一瞬の事)わわっと。もうこんな時間かー。そろそろお暇するね。随分長居しちゃった。ごめんね。
宵雛花・十雉 2020年9月5日
(言われて漸く気が付いた。窓の外の移ろいに)え、もうこんな時間?(楽しい時間はあっという間と言うけれど)
ううん、いいんだよ。今日は遊びに来てくれて嬉しかったし、楽しかった。……また、遊ぼうね。(言って、ゆるりと小指を立てた右手を差し出すのだった)
ティア・メル 2020年9月5日
ぼくもすごく楽しかったー。ありがとう、十雉ちゃん。フレンチトーストも、十雉ちゃんも、美味しかったよ。(小指をゆるく絡めて一度上下にゆらす)
もちろん、また遊ぼうねっ!(ついと体を離すと大きく手を振った。元気いっぱいに笑って、次に会えるその日を楽しみに扉の先の夕暮れへ溶けていくだろう)(互いのゆびさきに残るかすかなくれなゐは、ひそやかな約束の形をしていた)