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【1:1】微睡

宵雛花・十雉 2020年6月18日


目が覚めると、視界には見慣れた天井があった。
どうやらオレは自分の事務所のベッドで横になっているらしい。
家に帰り着いた記憶は全く無いが。

しかし随分と長い間眠り込んでいたような気がする。
こんなに眠ったのはいったい何年ぶりだろう。
ぼんやりと重たい瞼を擦りながら、オレは身体を起こした。


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お相手:
花仰木・寧(f22642)

参考:
https://tw6.jp/scenario/show?scenario_id=24831




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宵雛花・十雉 2020年6月18日
(体重の移動に合わせ、ぎしり、ベッドが軋む)……(いったいどこで何をしていたんだっけ。眠る前の記憶がすっぽりと抜け落ちてしまったかのようだ)
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花仰木・寧 2020年6月18日
(眠る男を見守るうちに、軽くうとうととしていたらしい。ベッドへと寄せた椅子の上、目覚めの気配にハッと目を開けた)――十雉さん。目が、覚めましたのね。よかった。
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宵雛花・十雉 2020年6月19日
ね、寧。なんで……(側にいた彼女に面食らう。それと同時に色々と思い出してきた。寧と二人で非合法阿片の事件を追っていたこと、一緒にコロッケを食べ歩いたこと、薬師に会ったこと、そして――)ッ……(頭の中がずきりと痛んだ。思わず表情を歪めて)
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花仰木・寧 2020年6月20日
無理しないで、(慌ててベッドに片手をつき、男の額へ指先を差し伸べる。熱を測るときにも似た仕草で、髪先を掬うように) 怪我は癒えているはずだけれど、……どこか、痛む? ああ、待っていて。今、お水を持ってくるわ。(ずっと眠ったきりだったのだ。喉も渇いているだろう、と)
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宵雛花・十雉 2020年6月20日
(細い指が額に触れる。懐かしいような安心するようなむず痒いような、何とも言えない気分になって目線を落とす)か、身体は平気だよ。どこも痛くない。(確かあの鼻持ちならない薬師から一撃貰っていた筈だが、その部位にも特に違和感は無かった。もしや、彼女が治してくれたのだろうか)……(水を取りに行ってくれる間、ぼんやりと考える。あの時の自分の無様な取り乱し様を、彼女も見ていただろうか。もしそうなら、あれも聞かれて――)
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花仰木・寧 2020年6月20日
(すぐに一杯の水を汲んで戻ってきた。枕元に座り、コップを手渡す。その間も、金色の瞳は心配そうに男を見つめている)……目が覚めて、本当によかった。こんなに長い間眠っているとは思わなくて……私、(万が一にも目覚めぬ侭だったらどうしようかと、気が気ではなかったのだ。何せ、直前の彼の様子は、あまりに――)
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花仰木・寧 2020年6月20日
……十雉さん。(膝の上で、両の手を握る。一度だけ落とされた眼差しが、再びひたと男を見据えて)……意識を失う前のこと、覚えている?
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宵雛花・十雉 2020年6月21日
ありがと。(コップを受け取ると、喉を鳴らして中身を干す。血流の滞った体内がみるみる蘇っていくようだった。ぐい、と最後に手の甲で口元を拭って)心配かけちまったか……ごめん。オレが眠ってからどれくらい経った?(何しろずっと意識が無かったものだから、今が何月何日の何時なのか、自分には全く見当もつかない)
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宵雛花・十雉 2020年6月21日
……(女と目が合った。何か、覚悟のようなものを感じる目だ)……ああ、覚えてるよ。
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花仰木・寧 2020年6月23日
ほぼ丸一日といったところかしら。安心して、……事件は解決したわ。(与えられたのは救済などではないが、あの学生達の間で怪しげな薬が出回ることはもうないだろう。そう告げて、女はしばし黙り込んだ。彼が何も覚えていないのならば、聞かなかったことにしようと思っていた。けれど、覚えているのなら、)(元来、女は他人の傷に敢えて触れようとする性分ではない。だから眠る彼を前にずっと悩んで、今でも本当は迷っていて、それでも)
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花仰木・寧 2020年6月23日
……あれは、本当? お父様の、こと。(聞いてしまった叫びを、今更なかったことにするのも、違う気がした)
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宵雛花・十雉 2020年6月23日
丸一日……!?(思わず目を丸くした。まさかそれ程とは)そりゃあ、随分盛大に寝坊しちまったわけだ。(自嘲気味に笑っていたが、事件が解決したと聞けば笑顔も安心したようなものに変わる)
(沈黙の中、続く言葉を静かに待った。彼女の聞きたいだろうことには大体の見当が付いている。自身の左腕に触れて息を整え)
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宵雛花・十雉 2020年6月23日
……そうだよ。オレが、親父を殺した。(ぽつりぽつりと、努めて感情を乗せずに言葉を紡ぐ)オレが十一の時。オレのせいで、親父は死んだ。
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花仰木・寧 2020年6月24日
……。(“殺した”。否定する言葉を期待したわけではないが、それでも胸をつくようで、思わず彼の表情を窺う。何故ならこれが、彼にとって深い傷であることなど確かめるまでもないことで)……なにが、あったの。(慎重に湿らせた舌で、更に問う)
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宵雛花・十雉 2020年6月24日
(目が合えば、ほんの一瞬だけ笑みを浮かべた。悲しげに眉を下げ、口の端をぎこちなく持ち上げて)……いつもより、寒い日だったよ。オレの生まれた田舎に珍しくたくさん雪が降ってさ、地面にも足首まで沈むくらい積もってた。息もすっかり白くって、身体は骨まで凍えたけど、それでも嬉しかったな。(押し込めた記憶を少しずつ辿るように、男は女に語り始める)
だからさ、遊びに行ったんだ。一人で近所の山ん中に。てっぺんから雪景色ってやつを見てみたくってさ。
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花仰木・寧 2020年6月25日
――。(彼が語るのを遮るような言葉はなにも吐かなかった。ただ、ささやかな相槌の首肯だけを返しながら、聞き逃さぬよう耳を傾ける)(まだちいさな躰の、幼い彼を思い描くように)
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宵雛花・十雉 2020年6月25日
でも、その途中でアイツに出くわした。見上げるほどデカくてまるで鬼みてぇな……今思えば、影朧だったんだと思う。ガキがそんな奴に敵うわけなくってさ。そいつを見た瞬間思ったよ。ああ、ここで死ぬんだなって。だけど……
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宵雛花・十雉 2020年6月25日
……(そこで一旦言葉を切ると、恐る恐る女へ視線を向けた)……なぁ、手を握っててくれるかい?少し、勇気が欲しいんだ。
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花仰木・寧 2020年6月25日
ええ、勿論いいわ。(寝具の上、彼の手に手を重ねる。固い男の手のひらを、しっかりと握った)
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宵雛花・十雉 2020年6月25日
(柔らかな手のひらを握り返す。臆病な自分に小さな勇気をくれる手だ)……親父が、助けに来てくれた。その後の記憶ははっきりしない。だけど、これだけはよく覚えてる。……気が付いた時には影朧は倒れてて、それで……親父も倒れてた。雪の上なのに真っ赤なんだ。オレのこと庇って……腹にでかい穴開いてて、それで……(上手く息が出来ない。苦しみすら感じる程に心臓が鳴って、手には嫌な汗が滲んだ)
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花仰木・寧 2020年6月26日
(まるで縋り付くかのような手の力。大きく揺らぎ、絞り出すかのような告白からは、彼の傷口が流す鮮血が見えるような気がした。――そうした痛みを口にすること自体が、どれほど恐れを伴うか。それがわからぬほど、女も強くはない。腰を浅く浮かせて、男の手を強く握る)――思い出さなくていいわ。これ以上、……いいのよ。あなたが辛いなら、(やめてもいいのだ、と)
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宵雛花・十雉 2020年6月26日
(女の手に縋ったまま、黙って首を横に振る)やめない……寧には、知ってて欲しい。(だから聞いていてと、絞り出すように願った)
親父が死んで、みんな泣いてた。みんな親父のこと好きだったから。……でも、誰もオレのせいだって言わなかった。心の中ではそう思ってたはずなのに。(誰より自分がそう思っていた。今なお自分は自責の念に無意識に囚われ続けている)
オレは一番お兄ちゃんだから、親父のかわりにならないとって……でも、オレには無理だったよ。もっとみんなが頼れるような、男らしい人間じゃないと駄目だった。みんなに必要で、みんなが求めてるのはそういう人間なんだ。それで、耐えられなくなって……逃げたんだよ。家出して、都会に来た。(そこから先のあらましは、今は語る必要は無いだろう。引きつるような呼吸の中で、一度深く息を吐いた)
……考えちゃ駄目って分かってる。でも、今でも考えるよ。
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宵雛花・十雉 2020年6月26日
――あの時、オレが死ねばよかったのに。
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花仰木・寧 2020年6月27日
(目の前にいるのは、子どもだ。体ばかりが大きくなって、父親を失い苦しむ十一歳の男の子だ。そんなふうに思えて、何だか切なくなった。こんなに大きな体をしているのに、手のひらだってうんと大きいのに、彼は)――あなたのせいじゃ、ないわ。他の誰がそう言っても、あなた自身がそう思えなくても、あなたは悪くない。絶対に。(男のひとの力は強くて、捕まれた手がどうしても痛くて、けれどそんなこと気にもならなかった)……十雉さんも、お父様のことが大好きだったのね。
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宵雛花・十雉 2020年6月27日
(力無く俯き、静かに頷いた男の顔は女からは見えなかったかもしれない。甘ったれのようだが、自分にはこの手を離せそうもなかった。離した途端、涙と一緒に分厚い仮面が全て流れ落ちていってしまいそうで。そうやって晒された自分の本当の顔を見て、彼女はどう思うのだろうと、そのことを考えるとどうにも恐ろしい)……(溢れ出る何かを堪えるように、背が肩が震える。女に触れた手のひらさえも)
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花仰木・寧 2020年6月30日
十雉さん……。(都合のよい慰めの言葉など思いつかない。けれど、それが何より必要だとも思わなかった。ただ、片手で男の頭をそっと引き寄せるようにして、身を震わせる男の息づかいを聞いていた)(今この場で縋れるものがこの手しかないというのなら、いくらだって私は握り返す)
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宵雛花・十雉 2020年6月30日
(引き寄せられれば、近付く距離に温かな安心感を覚える。今目の前にいる大切な友人は確かに生きているのだと、その体温が教えてくれた。同時に、自分の周囲を覆う見えない壁も取り払われたような、そんな実感があって)寧、ごめん……オレ、寧を守りたくて……っ、寧を守れるような強い男で、いたかったのに……(濡れた呼吸の合間、途切れ途切れに言葉を吐き出す)
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花仰木・寧 2020年7月4日
ええ、わかってるわ。……ありがとう。あなたが私を守ろうとしてくれること、ちゃんとわかってるわ。(それは今回だけに限ったことではなくて、彼が彼なりに友人として大切にしてくれていることを理解しないほど、私は傲慢ではないつもりで)(ただ、少なからず、甘えていたのかもしれない) 十雉さん、私の手を取ってくれたでしょう。だから私、夢の中から戻ってこられたわ。それにほら、私、怪我一つないのよ。だから、……いいのよ。大丈夫。
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宵雛花・十雉 2020年7月5日
(鼻を啜る。大事な友達が無事でいてくれたことが、今は何より嬉しかった)そっか……なら、よかった。……でも、オレだってあの時寧の手に勇気を貰ったんだよ。寧がいてくれたから、オレは今こうやって生きてる。……それに今だってそう。寧が手を握っててくれるから、オレはオレでいられる。
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花仰木・寧 2020年7月6日
じゃあ、お互い様ね。ふふ、そんなことを言われたら、いつまでも手を離せなくなっちゃう。(形良い頭に沿わせた手が、ひどくゆっくりと、男の髪を梳く。特に意識してのことではないけれど、あたかも子どもにそうするように) 辛いことを話してくれて、ありがとう。……私はあなたに会えてよかったと思う。だから、全部が全部、間違いだったとは思わないでくれると、嬉しいわ。
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宵雛花・十雉 2020年7月8日
(髪を梳くように撫でられれば、安心感と共に懐かしさが込み上げてくるようだった。ずっと昔、母親も彼女と同じように甘やかしてくれた気がする)寧は、あったかいね。(だからこそ、自分はこの人を守りたいと思うのかもしれない)あの、ずっとじゃなくっていいから……その、今だけ。今だけもう少し、握っててくれないかな。(ぽろぽろと、こぼれ落ちた雫が落ちて染みを作る。抱えて溜め込んだ感情を溶かした涙は、一度溢れ出てしまえばもはや止められそうにない)うん……会えて、よかった……(掠れた声が、絞り出すように一生懸命紡がれて)
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花仰木・寧 2020年7月11日
……ええ、いいわ。あなたの気が済むまで、いくらでも。(汗を流したいとか、今日の仕事のことだとか、或いは空腹ではないかしらとか、そうした思考のすべてを背中へと押しやって、男を抱くようにして髪を梳る。その手を包み込み、体温を混じり合わせる。――彼の涙が、止まるまで)
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宵雛花・十雉 2020年7月12日
(男は泣いた。女の腕の中で、大きな子供のようにわんわんと声を上げて泣いた。そうして――)
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宵雛花・十雉 2020年7月12日
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宵雛花・十雉 2020年7月12日
……。(男の涙はようやく止まった。あれから30分ほど泣き続けただろうか。今は泣き腫らした目で、罰が悪そうに女の前で縮こまっている)……恥ずかしい。寧の前で、こんな……(男らしいだとか彼女を守るだとか、もはやそんな次元ではなかった)
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花仰木・寧 2020年7月16日
そう、気にしないで、あなたの涙は、おかしなことじゃない。(とはいえ、彼の気まずさもよくわかる。女自身何食わぬ顔で身だしなみを整えながらも、嵐が過ぎ去ったあとの行動に戸惑うところはあって――けれど、居心地が悪いのはやはり、彼の方だろう) 忘れろと言うのなら、そうするわ。私はなにも変わらないもの。今も、これからも、あなたのお友だちよ。
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宵雛花・十雉 2020年7月16日
本当?!……い、いや。本当か?(友達と聞けば思わず身を乗り出して、はたと気付くと慌てて取り繕う)有難う、寧。なんて言ったら良いか。……オレさ、寧には知ってて欲しい。だから忘れないでいてくれ、今日のこと。(言って真っ直ぐに彼女の目を見る。拙い言葉に託した想いが、ちゃんと伝わるように)
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花仰木・寧 2020年7月20日
(彼の勢いに、目を丸くして。一拍、思わず笑みを零す)ええ、勿論。あなたがそれを受け容れる限りは。(そうして、彼が真っ直ぐにこちらを――本当に真っ直ぐに見るものだから、女も応えるようにして佇まいを直した。伸ばした背で、静かに顎を引く) あなたが、そう望むのなら。そうね、……過去も含めて、今の十雉さんだものね。――わかった。忘れない。(実のところを言えば、“忘れないこと”を約するのは、彼女にとって酷く重たい誓いとなった。口にした途端、喉元から臓腑に落ちるその重みを確かに受け止めて、) ……約束するわ。
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宵雛花・十雉 2020年7月21日
おう、約束だからな。(この時、女の抱え込んだ重りを察する術など、男は未だ持ち合わせていない。ただ結ばれつつある約束に喜びを覚えるばかりで)……ん。(小指を立てた右手を、ずいと差し出すのだった)
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花仰木・寧 2020年7月23日
――ええ。(その荷を相手に押しつける気はない。ただ、自分が受け止めるべき重みではあって。だから神妙に頷き、そうっと小指を相手のそれに絡めた)……指切りなんて、いつぶりかしら。針千本は、飲みたくないわね。(かすかに笑う)
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宵雛花・十雉 2020年7月24日
飲みたくねぇなら嘘吐きになんなきゃいいよ。(簡単だろ?と口から飛び出たのはいつもの軽口。笑みを返せば、指を絡めたまま上下に揺すって)ゆーび切った!(満足げに解放したのだった)
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花仰木・寧 2020年7月25日
確かに。(簡単なことのようにあなたが言うから、女も笑って指を切る。切ったからには、約束というものは必ず守られるべきものだ)――さ。あなた、お腹が空かない? ずうっと眠っていたんですもの。お台所を借りてよければ、何か用意するわ。
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宵雛花・十雉 2020年7月25日
(約束に安心すれば、途端に空腹を思い出したかのように腹の虫が鳴いた)ああ、そういや眠りこけて何も食ってないんだった。いいよ、自分で……(出来るからと、身に染み付いた強がりが出かかったのを呑み込んで)……ん、寧の得意なやつがいい。(今日くらいはいいかと、甘えたがりな本音に従うのだった)
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花仰木・寧 2020年7月26日
(元より、目覚めた彼の世話を焼くために残っていたのだから、家主に作らせるつもりはなかったけれど、)(ふ、と口元で柔く笑って立ち上がる) ええ。では、いい子で待っていて。(得意料理。手早く作れるもの。この事務所にあるもの、ないもの。思案しながら、台所へと向かう)
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花仰木・寧 2020年7月26日
(暫くすれば、火を使う音と匂いが男のもとへと届くだろう。何を振る舞われるかは、扉が開くまでのお楽しみだ)
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花仰木・寧 2020年7月26日
〆.
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