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日常模索。

巽・しづか 2019年1月2日


とある一室で少女は考えていた。
「日常」とはなんたるかを。



15年間、生まれ育った世界では隷属や搾取が当たり前で、
ほんの些細な奇跡がなければ『他の世界』があるだなんて
想像すらしていなかった。

望んで、それが受け入れられて、今このUDCアースという
未知の世界での生活を始めることが叶った。
はじめて目にした未知の世界は、なにもかもが眩しくて、
鮮やかな光を発していた。

冬休みが終われば『がっこう』が始まるらしい。
「一通り予習しといて」と『たぶれっとたんまつ』という
平たくて、冷たくて、たまに暖かくなる板をもらったけど
よく分からなかった。

ひとり、部屋のなかで『たぶれっとたんまつ』をいじくる。
なんだか寂しくなって、とりあえず出かけることにした。




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巽・しづか 2019年1月2日
(年始の三が日。どこもかしこも人でごった返している。圧倒される人の波に、目的なく紛れられるほど彼女はまだ、この世界に慣れていない。けれど、賑やかな場所に人が足を運んでいけば、自然と切り取られたように静かな場所も、きっとできるわけで。そう思い、なんとか人混みを避けて、ひと心地つける場所を探していた。)
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巽・しづか 2019年1月2日
(しかし、歩けど、歩けど。人の波は途切れることはなく、経験したことのない圧迫感に、何故あのときでかけようと思ったのかと、青い顔で自分の愚かさを悔いていたその時。ふと、人垣にできた隙間に目がとまった。)…っ。(これはまたとないチャンスなのでは?などど、根拠のない天啓のような直感に身を任せ、その隙間に身を滑り込ませた。)
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巽・しづか 2019年1月2日
………はぅ。(結果として、人の波を脱することには成功した。無意識に呼吸が浅くなっていたらしい。溜息のようにひとつ深く息をもらせば、ようやく周りを見る余裕が生まれた。)(目の前には、建物と建物の間、人が4人並んでしまえば塞がってしまうような狭いような通路。後ろには、先ほどまでのまれていた人の波。…もう一度、この中に入っていける自信はない。改めて通路に向き直ると、どこか入れそうな場所を探して足を進めた。)
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巽・しづか 2019年1月5日
………
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巽・しづか 2019年1月5日
(ひとりで歩くには、けして広くない路。けれど、当て所なく進むにはどうにも、足下が頼りなく感じられる。自然と顔は俯き、自分の靴と味気ない石のタイルと睨めっこをしている。)
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巽・しづか 2019年1月5日
(そんな時だった。)
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巽・しづか 2019年1月5日
……ようせい?(ひらひら、ふわふわ、きらきら。そんな言葉がぴったり似合う、お伽話の住人が声をかけてくれた。) …えっと、うん。一応猟兵なの。(そういえば、さっきの人混みにも色んな人がいた。猫だったり、犬だったり、知らない生きものも。)
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伏木・楓 2019年1月7日
ふぅん。やっぱり(呆れたような声色。紅葉の髪束がひらり揺れる)あのさ、このあたり……(くるりと羽根を翻し回って、あたりを見渡す仕草)結構猟兵来るんだよなぁ。どこへ行くにも、ここ通るから。それで、お前は迷子なの?危ないぞ、立ち止まってちゃ。
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巽・しづか 2019年1月7日
あ…うん。迷子になってる、と思う。(コクコクと肯く。どう思い返しても迷子であっている。) 人混みに耐えられなくなっちゃって、横道に逸れて…とりあえず歩いてたの。ここ、そういう通路なんだね。全然知らなかった。( 通るかもしれない誰かの邪魔にならないよう、道の端に寄った。) あの…あなたは猟兵の先輩さん、なんだよね。( 色の枯れた季節にあって鮮やかな実りの色彩の持ち主は、なんだか優しい人だと。漠然と感じられた。)
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伏木・楓 2019年2月26日
先輩…先輩かぁ。(うんうん考えながら漂って、同じように道の端に寄る)ちょっとは先輩かも。(視線が合うように、高度を調整する)でもアタシ、ビビっちゃって、オブリビオンとかと戦ったり、したことないんだよなあ。あ、そうだ。お前、名前は?アタシは楓。妖精だけど、女子高生やってる。こっちで生まれたんだ。
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巽・しづか 2019年3月2日
わたし…?わたしはしづかっていうの。えっと、最近学生にもなったわ。(カーディガンのポケットから真新しい学生証を取り出し顔の前に持ち上げる)ね。ね。この世界って、すごいのね。いろんなところが人であふれてて、いろんな人が当たり前に一緒に暮らしてて。でも、妖精さんに会ったのも、話したのも、初めてよ。(興奮したように矢継ぎ早に言葉があふれる)
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