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【噺】偶像ハ黙シテ語ラズ

神埜・常盤 2020年5月28日


大正浪漫の馨漂うビルディングの3Fには、
知る人ぞ知る密やかな店が在る。
硝子扉に金色で刻まれる其の名は――……。

≪白義人形店≫

此処には人の気配が殆ど無い。
其の代わりに、うつくしい貌をした人形達が、
未だ見ぬ未来の主を静かに待って居た。

* * * * * * *

☞夕刻のUDCアースにて。
☞初見・既知問わず、先着1名様と1:1を。
☞置きレス式。30レスを目安に〆。
☞噺が2週間途絶えたら御仕舞い。




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神埜・常盤 2020年5月28日
(カラメル色のレトロな陳列棚には、物言わぬ人形達が澄まし顏で所狭しと並んで居る。パゴタ傘を傾ける蒼いドレスのフランス人形は、今にも鈴音の笑聲を響かせそうな程に生き生きとしたお貌。艶やかな黒髪を結い上げ、白い肌に紅を引いた日本人形は、金襴緞子の煌びやかな着物を纏い淑やかに佇んで居た。)
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神埜・常盤 2020年5月29日
(窓から射し込む夕陽は、人形達の白肌を赫赫と染め上げて。物言わぬ乙女達に僅かの間、温かな血潮を通わせている。斯うして見ると、彼女達は今にも動き出しそうだ。)――……お前たちは、この時が一等うつくしいねェ。(店の奥にひそりと腰を下ろし、膝に乗せた童女人形の髪を撫ぜる男は如何にも気怠げだ。店主に留守番を任されたは良いが、客足は少なく退屈極まりない。深く零した溜息が、静寂に溶けて行く。)
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ユエ・ウニ 2020年5月29日
(その話を知ったのは偶然であった。秘めやかに伝えられたその話に興味はあれど、そこを訪れることは無く。世界を移動し久々に降り立った地、終えるべき事を早々と片付けるふと思い出したのはあの日聞いた話。場所はそう遠くない筈だ、雰囲気の慣れぬUDCアースの電車を使い訪れたビルは、己の親しむ世界の雰囲気とどこか似ていて。純喫茶を通り過ぎ昇降機を使い三階へ。扉を開けば丁寧に手入れをされ美しく佇む姿が数多に。)
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ユエ・ウニ 2020年5月29日
……へぇ。あぁ、これは立派だな。丁寧に縫い付けられていて、素材も悪くない。(入り口近くで客を出迎える仏蘭西人形を前に足を止めれば、商品に触れることはないものの右に左に様々な方向から覗き込んではその作りに感嘆の声を上げ。人気が無いと思って零していた声も、数歩進んで店奥に座す姿に気が付けば思わずそちらをじっと見つめた儘、固まって。)……あんたが店主か?(聞かれていたか。心中の焦りを反映する様に店主への言葉はぎこちない響きを持っていて)
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神埜・常盤 2020年5月30日
(耳朶がふと人の聲を捉えれば、夢の狭間を漂い掛けていた意識も現へ戻る。当然ながら人形が口を開く筈も無い。ならばと視線を巡らせた先には、浮世離れした美貌の青年が居た。)――おや、お客さんかな。(いらっしゃい、なんて。口端を上げる傍ら、首を横へと振って見せる。)残念ながら、店主はいま出掛けていてねェ。僕といえば、そう……ただの店番さ。(ぎこちなく響く君の科白に、聲を掛けるタイミングを誤ったかと思い至る。ゆえに、独り言は聞かなかった振りをして。)エエト、今日は人形をお求めに?
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ユエ・ウニ 2020年6月1日
そうか。……アンタ、そうしていると様になっているな。(どんな人物がこの世界で人形屋を営んでいるのか興味はあり。彼がそうだと思ったのも束の間、揺れる頭にそうで無い事を知り。とは言え、膝に乗せた人形の扱いを見れば、慣れていないという訳でも無いであろう。彼が店主でないならと知ったなら、言いたい事だけを言ってから再び飾られた日本人形へと視線を映し。艶やか着物に内心感嘆を漏らす中、向けられた言葉にピンクの双眸を向け。)いや。ここの奴らは誰も僕に買われたいと思っていないだろうからな。……冷やかし……いや、見物。(どれもが当てはまるが、どれもがそぐわない様に思えて。思案の後に先程、一人で盛り上がっていたのも聞かれているだろうと思えばやや苦虫を噛んだ様な微妙な表情を浮かべて。)……単なる人形好きだ。買わないが少し見せてくれないか。
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神埜・常盤 2020年6月3日
ふふ、其れは光栄だ。今の仕事に飽きたら、転職するのも良いかも知れないなァ。(くつくつ。肩を揺らし可笑しげに笑う男の指先は、童女人形の黒髪を撫で続けて居る。)僕の眸には君の方がよほど、此の場所に相応しいように見えるがね。君の造形と来たらまるで、人形みたいだ。(よく言われるだろう――なんて。馴れ馴れしく語り掛けながら、君の視線の後を追う。)……おや、君は彼女達の王子様では無かったか。(残念だったねェ、と。牙をちらつかせながら、淑やかに佇む着物の淑女へと流し目ひとつ。)ふふ、冷やかしだって歓迎さ。あァ――、君さえ良ければ店の中を案内しようか。勿論、ひとりで静かに眺めたいと云うなら、邪魔はしないけれど。
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ユエ・ウニ 2020年6月4日
今の仕事?(そう、思わず零したのは僅かに湧き出でる好奇心から。元は物。人の想いを経て形作られたこの身は自身も気に入っており。彼をじっと見れば、ふと口角を緩ませる。その言葉は嫌な気はしない。)……それは光栄だ。生憎、僕は人形では無いし王子様にもなれない。なれるとすれば、従者あたりだな。(壊れたモノを集めて直し続けている己にはそれが一番ぴったりであろう。目の前の日本人形の側から離れて彼の元へ。窓からさす鮮やかな黄金色は彼の髪を眩しく照らして。その唇から見える硬く人にしては鋭そうなエナメル質の白に足を止めた。何とは無く、彼は人間ではないのかもしれないと抱きつつも恐れはなく。)いや、案内してもらおう。ここは僕よりもアンタの方が詳しいだろうし、色々見れるなら見たいからな。人形屋のアンタ、名前は?
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神埜・常盤 2020年6月6日
ふふ、本職は探偵さ。6階に事務所を構えてる。(白手袋に包まれた指先が、楽し気に天井を指さした。口元には相変わらず、にやにやと胡乱な笑みが浮かんでいる。)そういう君は? 王子様でも、人形でもないみたいだけれど。従者と云うと、僕は執事とか給仕とかを連想してしまうなァ……。(纏う雰囲気から察するに、そういう類の仕事でも無さそうだ。不思議そうに首を傾けながら、夕日に染まる君の姿を見る。夕陽に照らされた銀絲の煌めきに、眩しげに眸を細めて。)――よし、任されたとも。西洋人形の棚から案内しようかなァ……。(椅子から立ち上がれば、童女人形を己の代わりに座らせて。ぐい、と背伸びをひとつ。)あァ、名前か。僕は神埜、神埜・常盤だよ。君の名前も教えてくれるかね、お客様。
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ユエ・ウニ 2020年6月7日
この世界じゃ探偵の仕事なんて少なそうな気がするが。それにしてもこのビルは変わったものが集まっているんだな。(上を向いた指先を辿る様に視線を上に。己のいる桜の国には探偵を生業にする者も少なくない印象はあるものの、法や科学等が整ったこの世界ではその存在は稀有な印象で。一階の純喫茶、三階の人形店、六階の探偵社と聞けば抱いた印象をぽつりと。問いに微かに笑みの混じる吐息を漏らし。)どれも外れだ。僕はただの修理屋。壊れた人形やぬいぐるみを直して新しい主人を探す事をしている。……従者でも無かったな。(口にすれば従者とも程遠く、肩を竦ませて。立ち上がれば思いの外、背の高かった彼を見上げながらその動きを阻まぬ位置へ数歩下がりつつ、興味の赴くままひとつ尋ね。)任せた、常盤。ちなみにアンタが一番気に入っているのはどの棚なんだ?――僕の事はユエ、そう呼べばいい。
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神埜・常盤 2020年6月10日
ご名答、依頼と云えば猫探しや浮気調査ばかりだ。(辟易するよ、なんて。大仰に肩を竦めて見せる。其の言い方からして、君は幻朧桜が咲き誇る世界の住人なのだろうか。観察するような視線を向けながら、かくりと頷いた。)古きを愛すと云えば、聞こえは良いだろうがね。時代に取り残された店ばかりが、此処に集って居るのさ。(自分もまた其の内のひとりだと、苦笑にも似た笑みを浮かべて。)――ほう、人形の修理屋をしてるのか。彼らへの奉仕という意味では、従者と云えそうだなァ。君の所には、一体どんな子達が居るのかね?(人形やマヌカンとは、関わりが深い身だ。背丈の割に幼稚な男は、興味の侭に問いの言葉を編む。)ユエ君だね、月光を思わせる綺麗な名前だ……あァ。僕が気に入ってる棚は、ねェ。(かつかつ。踵を鳴らして、ひとつ向こうの棚へと移動する。)……そう、この子達さ。
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神埜・常盤 2020年6月10日
(その棚に並んで居たのは、雪の如き白肌のビスクドールたち。どの娘も“ひと”に近い造形で、うつくしい貌をしていた。長い睫に彩られたグラスアイなんて、今にも瞬きしそうな程にきらきらと、生命力にも似た輝きに満ち溢れている。)――何だか人間っぽくて、眺めて居ても飽きないんだよねェ。
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ユエ・ウニ 2020年6月13日
宝の持ち腐れになりそうだな。――僕もそう言うのは嫌いじゃない。下の喫茶も廃れている訳では無さそうだし、そういう需要も一定数ある気はするが。(彼であればもっと他の事も出来そうな雰囲気すら感じ取れるのに、彼の元へと舞い込む依頼に思わずそう零して。探る様に向けた赤茶色の瞳は、上着の襟元に紛れ僅かに見える桜花のひとかけを捉える事が出来るかもしれず。そんな事には気づかぬ古きを好む者はここにも一人。)遣り甲斐のある仕事だよ。……ここにいるヤツよりも、もう少し手に入り易い子供の玩具から、仏蘭西人形やそこにいるアイツみたいにここにあるような人形も。主人のいない、主人を求めるヤツらが殆どだな。(探られるのは好まずとも、それが己の手仕事に関するものであり、人形を好む者が相手となれば話は変わり。桜の世界で扱うのは、玩具から世界に一つしかない一点物まで。零し落とす様に饒舌に言葉を並べ。)
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ユエ・ウニ 2020年6月13日
(先を行く彼の後に続き人形達に見られながら辿り着く先で息を呑む。白くそれはまるで生きている様で。思わずそのかんばせをよく見たくて、伸ばし掛けた指に気付けばそっと引っ込めて。)……ビスクドール。見事だな、とても美しい。作った奴に会いたい位だ。……買わないのか?(そう、問うたのは興味から。)
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神埜・常盤 2020年6月17日
ふふ、けれども自由人にとっては天職だ。――あァ、レトロな趣を好む人は多いらしい。だから僕の事務所以外は、其れなりに繁盛しているのさ。此の店も人気みたいだし、ねェ?(君のように遠路遥々訪ねて来てくれる客もいるのだ、と。鋭い牙をちらつかせながら、人懐こく笑い掛ける。襟元に視えた桜花ひとひらを視界に捉えれば、自身の襟元を指さした。)きみ、春の名残がついているよ。あァ、……君の所では、色々な人形を取り扱っているのだなァ。主人を求めているということは、見初められた者しか買えないのかね。マネキンとかドールの類が在るなら、一度検めさせて欲しいところだが。(話を聞く限り、君の店の品ぞろえは素晴らしそうだ。ぜひ此の目で見てみたいと、好奇に双眸が紅く煌めいた。)
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神埜・常盤 2020年6月17日
別に触っても構わないよ。だって君、不作法をしないだろう?(初めて訪れた客では有るけれど、人形には真摯であることは見て取れた故に。どうぞ、と物言わぬ彼女を揃えた指先で指し示した。)僕も逢ってみたいなァ、店長なら作者を知っているかも知れないが。あァ、……僕はもう持っているのさ。等身大のビスクドールを、ね。
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ユエ・ウニ 2020年6月28日
へぇ。それは良い話を聞いた。ここにはそういう者が少ないんじゃないかと思っていたが、違っていたならなによりだ。(この世界の事は然程詳しくはなく。それ故に必要以上に訪れる事もしなかったものの、彼の言葉に認識を改めるとマゼンタの双眸をやや緩め。示された襟元へ指を這わせ、辿り着くのは桜花の欠片。知らずについて来たそれを懐へ仕舞い。)常春の名残だよ。……興味本位でただ買ってみたいだけの客は断っている。僕の所にいるのは一度は主人に捨てられた者達ばかりだからな。大切にするとその証を見せてくれるのなら……誰でも買う事が出来るさ。アンタは買っても大切にする方だろう。来たかったら来れば良い。(生まれ変わったモノは多々あれど、新しいモノは殆ど無い店。桜の都の異世界にある場所だとは彼には告げずに、何食わぬ顔で己の店とそこに至る地図が描かれたカードを彼へと差し出して。)
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ユエ・ウニ 2020年6月28日
当たり前だ。……。(店主代わりからの赦しに瞳を丸くさせると、ふん、と愛想なく鼻を鳴らし。けれども触れようとする指先とその頬に触れた瞬間に息を呑む静かな興奮は側にいる彼なら気付くかもしれず。聞こえた来た声に興味を抱いた様に首を彼の方へと捻り。)アンタも知らないんだな。店主が帰ってきたら聞いてみるか?――等身大?詳しく聞いても?
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神埜・常盤 2020年6月30日
ふふ、憂き世は忙しないからねェ。きっと過去に置いて来てしまったものが、輝かしく見えるのだろうさ。(とりわけ大正の世は、ひとも時間も淑やかに想える。それが魅力的に感じるのだと、つらつら饒舌に告げて。)はは、そうかね。――あァ、主との別れを経験した子ばかりなのか。其れは慎重に成るのも詮無きことかね。(買われて行った此処の娘たちも、大事にされているが良いか。なんて、棚へと視線を巡らせながら。)モチロン、僕は大切にするとも! 仏蘭西の紅だって引いてやるし、天鵞絨のドレスを着せてあげる……おや、名刺を有難う。近々、尋ねさせて貰おうかなァ。(力説の最中、渡されたカードへ視線を落とし、見慣れぬ地図に頸を傾けた。)
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神埜・常盤 2020年6月30日
……君は人形が好きなんだねェ。(静謐な昂りを覗かせる君に、おっとりと笑い掛ける。うつくしい人形を前にした愛好家の反応は、いつだって此の眸に好もしく映るのだ。)あァ、ぜひ聴いてみよう。他の作品も見てみたいなァ。(此方へと向いた貌に、つぅ――と流し目を呉れて。)あァ、うちの受付嬢の噺だよ。人間と同じ容、同じ大きさのビスクドールでねェ。式神の器として、重宝させて貰っているのさ。
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神埜・常盤 2020年9月1日
(向いている方向は違えども、趣向を同じくするもの同士、積もる話も有ったようで。陽が完璧に沈む迄、人形店からは愉しげな話聲が聴こえて居たという――……。)
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神埜・常盤 2020年9月1日
(〆。お付き合い感謝を。)
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