灯あつめ
アルバ・アルフライラ 2019年1月2日
その孤島には、光を湛える湖があった。
――『灯の湖』。
射し込む陽光を溜め込んだ湖は夜の帳が降りる頃になると淡く光を発し、湖を映す。
そして――その湖へ浮かべた物体も又、同じく太陽の恩恵を賜るのだと云う。
師弟の棲う塒の光源も、その「恩恵」で得られた灯花によって維持されていた。
………の、だが。
その日、塒は闇に支配されたのだった。
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アルバ・アルフライラ 2019年1月2日
む、む…夜が明けるまではもつ筈なのだが…漬け込みが甘かったか? 否それとも陽射しが弱かったか…(非常用の鉱石燈を手にしては、寝台兼自室に吊るされたランプをひとつひとつ覗いていく。硝子内に詰められた白い花は、弱々しく光に照らされるばかり)
ジャハル・アルムリフ 2019年1月2日
(視線の先に人影を確認すると、足音を殺すのを止めて渋面を作った)……俺はまた夜盗でも忍び入ったかと思ったが。師父よ、こんな時間に何をしている? 呆けるにはまだ早いのではないか。(黒瞳に苛立ちの赤をちらつかせ、徘徊する主を見下ろした。不機嫌を表すように竜尾も打ち振って)
アルバ・アルフライラ 2019年1月2日
ん? …ああ、ジジか(従者の苛立つ様子にも気圧されず――と云うよりも、何故こうも機嫌が悪いのだろうと不思議がっているのかも知れない――光をちらつかせる瞳を一瞥する様に見上げた)うむ、どうも灯の調子が悪くて難儀していたところでな。これでは本もまともに読めん(鉱石燈で示す先、花の灯はただただ暗闇に飲まれるばかり)
ジャハル・アルムリフ 2019年1月2日
暗くなったら眠れば良かろう。何時までも若者と同じ過ごし方をしようとするな。(口調に呆れを滲ませ乍ら横目に廊下の灯を見遣る。そういえば、足元を照らすための其れすら今は闇に沈んでいる)……おい師父、よもや全部使い物にならんのか。此の季節は夜明けが遠い。朝餉の支度にも困るではないか。
アルバ・アルフライラ 2019年1月3日
さらっと年寄扱いするでないわ、阿呆弟子。時間は有効に活用せねばならぬ(僅か眉を吊り上げるも、暗く沈んだ足元にああと声を漏らす)よもや全部、だ。鉱石燈で代用出来んこともないだろうが、魔力食うわ魔力溜めこむまでに時間掛かるわで朝餉に間に合うかも分からん(お手上げと言わんばかりに肩を竦めて)こうなれば、湖から花を回収しに行くしかなかろうよ。
ジャハル・アルムリフ 2019年1月3日
師に似たのであろう故な。(しれっと切って捨て、深い溜息)…外はもう真っ暗だ。雪解け水で足元も悪い。御身は眠って待つが良い、俺が一人で行ってくる。――如何しても書を解きたいなら、燭台でも咥えておくのだな。鉱石燈より余程明るかろうよ。然ういうわけで、借りて参る。(今も微々たる灯を反射する宝石質の髪を指し、鉱石燈を取り上げると己はさっさと身支度を始めた)
アルバ・アルフライラ 2019年1月3日
お前、人をランプ代わりか何かと勘違いしていないか? それに幾ら我が身が火に強かろうと長時間炙られれば変質するわ――っておいちょっと待て、(抜く手も見せず外出の準備を始める従者。慌てて天蓋を抜けて彼の袖を引きながら)さっき言ったろう。それは念の為の、飽くまで『非常用』の灯に過ぎん。魔力を供給せねば後五分と立たんと消えてしまうぞ。とはいえ現時点ではそれしか光源として機能しない――致し方ない。その任は私が担おう。出立の準備だ、ジジ。衣を(言うや否や、さも当たり前の様に唯一羽織ったローブを肩より落とした)
ジャハル・アルムリフ 2019年1月3日
(なっていたではないか、と目でいらえ。口で上着の袖を引いていたせいだ)俺とて多少なれば扱えんわけではない、何も致し方無くないぞ。(睥睨する――が、最早聞き入れる心算のない顔だと長年の勘が告げていた。深く、深く溜息を落とす)………せめて、履物だけは替えてゆけ。(渋々片手でローブを拾い腕に掛けると、備え付けの衣装棚から外出用の衣を取り出す。もう一度溜息をつくと、恨めしさを滲ませて介助を始めた)
アルバ・アルフライラ 2019年1月4日
ああ、ジジ。手早く纏えるもので良い。どうせこの島からは出ぬ故な(従者の吐く息の意味を知ってか知らずか、薔薇の指先がふわりと踊る。着替えを済ませ、ローブを羽織ったならば)――ほら、往くぞ。肩を貸すが良い(当たり前の様に薔薇の指先で促した)鉱石燈くらいは持ってやる。まあないとは思うが…念の為に備えて得物を忘れるでないぞ?
ジャハル・アルムリフ 2019年1月4日
……………承知している。(妙に長い沈黙のあと、低い返事を絞り出すと腰に短剣を帯び)燈を持つのなら違わず前を照らすのだぞ。(鳥でも留めるように己が主君を左肩へ乗せると、もう一度溜息を落としてから歩き出す。一見継ぎ目のない樹皮の壁がうねり、分かれ、さえた外気が流れ込む。其れが閉じてゆくのを横目で見届けてから、夜闇に竜翼を広げた)
アルバ・アルフライラ 2019年1月5日
言われずとも心得ているさ。…――(夜気に溶けて往く短縮詠唱。頼りなく朧げな光はその量を増す。これで二人が暗闇に呑まれることはないだろう)…少々寒いな。大事はないか、ジジよ(翼を広げる従者へ気遣わしげに。肉の器を持つ者は寒さに弱いと聞く)
ジャハル・アルムリフ 2019年1月5日
(師を抱え直すと竜翼を一度空打ちし、。窓庭の縁を蹴れば見る間に屋敷の影が遠ざかってゆく。耳元で風が鳴くが、紛れて聞き取り難いはずの声は何故か明瞭であった)一瞬で凍りさえしなければ如何ということもない。それより師父、どのあたりまで飛べばいい。夜目は大して効かんのでな。
アルバ・アルフライラ 2019年1月6日
そうか――お前は強いな(鼓膜を劈く風切り音に紛れる様な呟きは、吐息と共に自ずと毀れ落ちた)……ん? ああ、そうさな。このまま少し飛べば開けた空間が見つかるだろう――ほら、あれだ(高みより指差す先。闇に支配された森に、僅かな光を発する空間があった)
ジャハル・アルムリフ 2019年1月6日
承知。(返答して間もなく樹々が途切れ、高度を落とす。大きく広げた竜翼で減速、靴底が下草を踏んだ。少し先では仄明るい光が夜を薄めていた)……あそこか。師父、頭上の枝に気を付けろ。
ジャハル・アルムリフ 2019年1月6日
(竜翼を畳み、師を乗せたまま不可思議な光の方へと向かい始めた――はずだった足は、ふと手前で明後日の方向へ)……これは。
アルバ・アルフライラ 2019年1月6日
お、…?(迷いなく、光の元へ向かっていた筈の翼。それが突如方向転換したとなれば困惑を隠せず)……おいジジ、何処へ往く?
ジャハル・アルムリフ 2019年1月6日
(頭上の声など聞いていない様子で、目的地から逸れた茂みの中へと進む。屈んで拾い上げたのは、細長く、先端の尖った青い物体であった)師父よ、滅多に見れん鹿の落とし角だ。灯かりを反射していたので気付けた。(声に感歎を滲ませて、当たり前のように短剣の隣に差す)ふむ……一本だけであろうか。
アルバ・アルフライラ 2019年1月6日
お、おう(まるで童の様に目を輝かせる姿に頭が痛くなるのを必死に堪えながら)…って待て、もしやまだ探す心算か? こんなことをしていたら夜が明けるぞ?(聞く耳持たぬ、瓦落多に夢中な――否、鹿の角も魔術の触媒になるが、彼が許しはしないだろう――従者の様子。ぐぬぬと眉を顰めて)お、お前が角を探すというならば私は先に行くからな。良いのか、独りで行くぞ?(目指す湖が近いからか、幸い薄霧包む森は視界を確認出来るほどには明るい。これならば、鉱石燈を従者に渡したとしても問題なく先に進めるだろう)
ジャハル・アルムリフ 2019年1月6日
(左肩の上、心なしか焦った様な師の声に足を止め見上げる。眉間に皺が刻まれた)……承諾出来ん。向かうのは湖だろう? 御身は泳ぎに向いておらん故、足でも滑らせた日には底を浚う事になる。なれば致し方無い、また後日としよう。(返す踵に、後ろ髪ならぬ竜尾ひと振り名残を惜しみ。薄い霧に拡散する仄明かりの森を湖の方へ)……斯うして共に夜中に此処へ来るなど、随分と久方振りだな。
アルバ・アルフライラ 2019年1月7日
む、むう…(正論でしかない指摘に肩を落とす)…そう気を落とすでないわ。角探しであれば、私も手を貸してやる(名残惜しげな足取りに、良心の呵責に苛まれぬ訳もなく、つい押し黙っていると)…うん? そういえば、そうだったか。一体いつ振りだろうな…お前、最近は夜になれば問答無用で寝かせようとするだろう?(足をぶらつかせながら)
ジャハル・アルムリフ 2019年1月7日
不要。此れでも務めと道楽は区別する故、そう不憫げにするな師父。(涼しげにいらえ、断ち切る様に竜尾を一振りした)不満か? 人の姿をしているなら夜は眠るものだ。放っておけば陽が昇るまで研究だ古文書解きだと際限知らずではないか。(すぐ隣で揺れる足と、上にある顔を睨め上げる。――其の双つ星がはっきりと見える程に明るい地点)――そら、湖だ。
アルバ・アルフライラ 2019年1月7日
(こうもあっさり応えられたならば返す言葉も見つからず。返答とばかりに唇を僅か尖らせ)……ふん、人らしい生活か。そんなもの――(言葉を継ごうとして、噤む)…ふふん。定命の者は時間に限りがあるからな。限りある時間は有効に活用しなければならぬ。一段落すれば休憩はしているのだから問題なかろう(過保護な従者に肩を竦めていると、齎されたのは優しい光)――うむ(湖への到着だった。陽光を湛える水面に浮かぶ花々を見詰め)…ジジ、もそっと奥へ。此処の花は灯にするにはやや心許ない。
ジャハル・アルムリフ 2019年1月8日
問題だ。御身の守護は何も戦ごとに限った話ではない故、不要に命を削るに等しい行為は許容出来ん。(またも断固とした口調で切って捨て)此処では不足か? 待たれよ。(飛ぶには向かないが、幸い足場には事欠かなそうだった。複雑に倒れ絡んだ樹木を足場に、湖の深みを目指す)師父、中央の小島で構わんか。(指した先、堆積岩で出来た島に一本の樹が目印のように立っていた)
アルバ・アルフライラ 2019年1月8日
(それは、あまりにも迷いのない言葉だった)…お前は本当に心配性だなあ。言っておくが、それはお前にも言えることだからな? 分かっておろうな? ん?(半ば閉じた瞳で、じとと見詰める。やがて己を乗せた巨躯は器用に木々を渡り、辿り着いた先は小さな小さな島――中央に佇む木には、可憐な白い花の蕾が綻びを見せていた)問題ない。…うむ、やはり白が良いな――ほれ、足元を見てみよ(鉱石燈で指し示す先には、ふわり光を映した灯花)
ジャハル・アルムリフ 2019年1月9日
承知している、不要に捨てはせん。…此の星に誓って、な。(竜鱗とは違う輝きの、星宿した片角の方へと微か身動ぎして)――(木の根と岩が絡みあい形を成す小島。足元を幾度か踏んで確かめてから、師を降ろすべく片膝をついた。近くなった水面では白い花が真昼の灯を湛えている)……見慣れていた筈だが、美しいものだな。どれくらい持って行けばいい?(然うは聞こえないであろう淡々とした声音で花を讃え、師を仰ぐ)
アルバ・アルフライラ 2019年1月10日
(視界に映る灰色の星――愛し煌きに目を細め)――ならば、それで良い(短く告げた言葉も、心なしか柔く)(遠くなった夜空、近くなった大地。砂利鳴らして降り立つと、水際へと歩を進める。膝をつき、白き光を指先で撫でながら)…そうさな。あまりにも美しくて、泣きたくなるくらいだ(自ずと毀れた言葉に小さく吐息)…とりあえず、夜が明けるまで保てば良かろうよ(一輪。二輪。潰さぬよう、ローブで足りる程度の花を乗せて)
ジャハル・アルムリフ 2019年1月12日
(足でも踏み外さねばいいが――然う書いてある顔で、すぐ傍に控える。周囲への警戒は怠らねども、穏やかすぎる冬夜の森では無意味と思えた)……御身とて、泣きたいことがあればそうすれば良い。(独白にも聞こえた師の言葉。ひかりを摘み取る薔薇の指先へと声を返し)ああ。更に必要な分はまた改めるとしよう。(手の塞がっている師を立ち上がらせ乍ら、花を再度見渡した)(ふと。輝けるもの同士、惹かれたのだろうか――世迷い言と振り払って星を仰いだ)
アルバ・アルフライラ 2019年1月12日
(齎された意外な言葉に目を瞬かせつつも、浮かべた笑みは、我ながら自嘲に満ちていたと思う)――ふん、涙の流し方など疾うに忘れてしまったよ。それに…(白い花弁に残る水滴を見詰めて)…私が流さずとも、彼等が泣いてくれるから問題ない。誠に美しい花よな、これは。ほれ、お前にも一輪分けてやろう(肩に座りながら、ローブに乗せた中でも最も美しい一輪を、従者の頭――角の傍へ)
ジャハル・アルムリフ 2019年1月13日
それなら……失くしたわけではないのなら、思い出すまで仕舞っておけば良かろう。(我乍ら情の足りぬ返答だと思えども、相応しいであろう言葉は淵より浮かばず。角――右の金属環へと触れる気配、抗う代わりに眉間へ皺を刻む)明るくはあるが、俺に花など似合うと思うてか師父よ。(首を曲げて肩の師を仰いだ拍子に、角の花から雫が落ちた)長居は流石に御身にも障ろう。戻るぞ。(湖を縁取る樹々も、飛び立つには不自由は無さそうだと竜翼を広げた。空打ちと共に数歩、その足が地から離れてゆく)
アルバ・アルフライラ 2019年1月16日
はっ、お前は相変わらずだなぁ(斯様な言葉でも安堵する己も相当だが――この想いは、胸に秘めたまま黙しておく)ああ、思うとも。私程ではないが、お前も中々の美丈夫だからな。寧ろお前は無骨過ぎる。私の従者ならば、この位の粧しはせねば(見上げる遊色ににやりと返す。ふと、零れた雫を指先で拭おうとして、軽い重力が齎された)おっと…全く、もう少し堪能していたかったところなのだが、致し方ない(飛び上がった際、ローブより落ちかけた花を掴む――はらり、ひとひらの花弁が空を舞う)……まるで星のようだな(その姿を見詰めては、ぽつりと)
ジャハル・アルムリフ 2019年1月16日
(従者の眉間の皺はいや深まり、渋面となっていた)御身に相応しい粧いとは如何程なのか。我が身には此れ一つで十二分であるが、主命というならば其の内考えよう。(ちらと流した視線は片角へ。――其の仄淡い輝きも、夜に尾を引いた。師の声に振り返れば、背後を先程の花が流れて墜ちてゆく)……俺の知る星とはあまり似ていないが。然うか、御身の見る星は随分と遠いのだな。(消えていった花弁を背に空を駆ける。やがて、すっかり灯の落ちかけた窓が見えてきた)
アルバ・アルフライラ 2019年1月17日
ふふん、そう怖い顔をするな。…花の淡い灯りは角の美しさを引き立てる。何より白が良い――これならば、角の彩が損なわれずとも済むからな(飽く迄も粧しの主役は角であると言わんばかりに、唇を笑みで歪める。けれど、やがて紡がれた言葉に虚を突かれたのか、ぱちりと目を丸くして)…ああ、ああ(暫しの間。ああ、なるほど)はっはっは、これはすまなんだ。星は元来掴めぬもの故な、こんなにも近くに在る星を見落とすとは(ころころと毀れる笑み。触れられるほど直ぐ傍には、光を映す星状の煌き)(――やがて闇を映す硝子が視界に入った)さてさて、此処にも光を灯してやらんとな。
ジャハル・アルムリフ 2019年1月19日
(朴訥な男は説明しきれぬ口惜しさを覚えながら口を噤む。花灯りに、光芒の星は持ち主より余程上機嫌だろう)……此れか? 俺が言ったのは、(星の在処に口を開きかけたが続きを発さずに閉じ。着地すべき窓庭が近付いていた。大きく竜翼を広げ、風を受ける。殆ど音もなく降り立つと、抱えていた師を降ろす)――御身はもう眠る時間故、灯には覆いをつけておけ。(張り切る声に釘を刺すことも忘れなかった)
アルバ・アルフライラ 2019年1月21日
…?(紡がれては不自然に途切れた言の葉に、不思議そうに目を瞬かせるけれど。強風で乱れる髪を手で押さえ、小さくヒールを鳴らし、降り立つ)…うむ、ご苦労であった。ジジよ。これで漸くゆっくり読書に耽け――(それ以上言おうとして、釘を刺された)(不服だと言わんばかりの視線を従者に向けて)
ジャハル・アルムリフ 2019年1月22日
(露骨に不満を訴える眼差しを真っ向から受け止めて)書ならば早く起きて解けば良かろう。……疲労が抜けねば、また大事なことを忘れてしまうぞ。(背を向けての後半は独白のように付け足された。窓際にある空の洋燈を開けると、無言で師を促す)
アルバ・アルフライラ 2019年1月26日
(従者の紡ぐ言葉はどれも正論である。ぐぬぬと不機嫌を隠すことなく眉を顰めながらも、ふと)…大事なこと? 私が何かを忘れていると?(続いた独り言めいたそれに小首を傾げ、逡巡する。はて、一体何を――)ええい、急かすでない(然しそれも従者の行動で中断される)
アルバ・アルフライラ 2019年1月26日
(不服であれど促されるがまま、花を洋燈の中へ――ぱあっと、あえかな光が周囲を包んだ)……ほれ。これで満足か?
ジャハル・アルムリフ 2019年1月26日
(質問には答えずに室内を見回す。所々に布を飾った樹皮の壁が穏やかに照らされていた)俺が駄々でも捏ねたように言ってくれるな。……まあ、此れで御身が躓く可能性も恐らく無し、朝餉の支度も問題なかろうよ。御足労、感謝する。(言って、最低限のものを除いて覆いを掛けると、腰に提げていた鹿角を教鞭の如く手に、腕を組んだ)――そういった次第故、疾く寝床に入られよ。
アルバ・アルフライラ 2019年1月27日
(沈黙。どうやら教える心算は毛頭ないらしい――一層眉間に皺が寄る)ええい其処まで鈍臭くはないと言っておろうに。というか仮に転んだとしてもそこいらの人間よりもずっと頑丈だからな?(黙々と覆いを掛けていく後姿に声を上げるも、腕組む様子に、手の中で光る角に思わず動きが止まるけれど)…お前こそ、偶には早く休むのだぞ? 前から思っていたことだが、お前は些か働き過ぎだ。
ジャハル・アルムリフ 2019年1月27日
故に、だ。師父が足をぶつけたばかりに割れた水瓶は実に気の毒だったぞ。(悼むように、今はなにもない窓庭の隅へと視線を向けて)……俺の体力には問題ない。休息を多く必要としない体質なのだろうよ、じっとしているのは性に合わぬ。 以上、動けぬならお連れしよう。(麦袋でも運ぶていで師を小脇に抱え、そのまま早足で寝室へ)
ジャハル・アルムリフ 2019年1月27日
(木製の扉を開ければ多種多様な書物、呪具などが並ぶ一室。書棚と壁面に埋め込まれた、広々とした天鵞絨の寝台)……御忠告、痛み入る。(小さく礼を呟くと、その優雅な天蓋の下へと――無造作に師を投げ入れた)
アルバ・アルフライラ 2019年1月27日
う、五月蝿い。あの時は私も悪かったと思っておるわ(かつて水瓶が置かれていた場所を見詰める従者の様子に、罪悪感がふつふつと湧き上がる)それはお前が未だ若造だからだ。今無理をすると、後でしっぺ返しを喰らうからな――っておい、離せ。一人で歩ける!(宙に浮いた足をばたつかせ、必死の抵抗をするも虚しく寝室まで連行される)っわぶ、(見事なスローイングで、柔らかな寝台へと沈んだ。この従者は何かと主の扱いが荒い)
ジャハル・アルムリフ 2019年2月2日
…そこまで若くはないと思うのだが、何時になったら若造でなくなるんだ。(追い着ける筈もない所を突かれれば眉間に皺を寄せるほかなく)詰まる所、御身は正にしっぺ返しを喰らっている最中ではないのか。……光は充分だ、もう何を急ぐこともない。ゆるりと休まれよ。(最後は従者らしく頭を下げて踵を返す。長身の歩は、あっという間に部屋から消えていった)
ジャハル・アルムリフ 2019年2月2日
(廊下には足元用の仄かな灯が点々と。其れを青白く反射する鹿角を手に)……灯りとて、無いことに慣れれば忘れるものなのだろうかな。(呟き。残った仕事を片付けに、厨へと向かった)
アルバ・アルフライラ 2019年2月11日
ふん、私からすればお前なぞいつまで経っても若造だ!(腕を組む。なんと身も蓋もない発言なのだろう)ええいだから私は普通に歩けると言っているだろうに。お前がただ甘やかしているだけだろう!?(従者たるこの男は、殊更に主である己を気遣う。――扱いこそ雑であるが、決してこの宝石の身を傷つけることはしない)……何なのだ、全く。
アルバ・アルフライラ 2019年2月11日
(瞬く間に小さくなる足音に意識を集中させるも、身を埋める柔らかな寝台の感触に、徐々に意識は蕩けていく
)…………ばかもの(他者のみを想うは、何もお前だけではないというのに)
アルバ・アルフライラ 2019年2月11日
(いとも容易く途切れそうな意識の中で、それだけ呟いて)(〆)