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マネーロンダリング2020

狭筵・桜人　2020年1月1日

狭筵・桜人　2020年1月1日
お年玉くれないんですよ。誰も。（晴天。真昼間である。それなのに、細く入り組んだ路地に陽の光は届かない）（座って紙幣を数えている）

狭筵・桜人　2020年1月1日
だって私まだ十七ですよ？　バリバリの未成年じゃないですか。頼まなくたってお年玉くれるのが普通でしょう？　なのに大人ときたら……ねえ、聞いてます？（椅子にして座っていたモノ――異形に拘束された男に話しかける。既に意識はないらしい）

狭筵・桜人　2020年1月1日
（捕り物があったのだ。新年早々。真昼間の街中で。自警団――この世界のヒーローたち――の手からするりと逃れたその一匹。ヴィランと類される悪漢を捕まえてこそみたものの）　……チッ。これだけですか。（紙幣を抜き取った財布を捨てて、立ち上がる）

狭筵・桜人　2020年1月1日
小学生のお年玉より少ないなんて……アッ！　コイツを自警団に引き渡せばお年玉貰えるかも！（オートリールめいて男を縛り上げていた異形を体に収納する。目を覚まされる前に済ませてしまいたいが、さて）

狭筵・桜人　2020年1月1日
…………重た……。（自身より一回りも二回りも大きな男の体を一旦下ろす）

納・正純　2020年1月3日
おい、お前！　そこまでだぜ、俺はそいつに用がある。今すぐその地面に下ろした男から離れな。さもなきゃ、お前は元日っておめでたい日に自分が何をしてたのかって記憶をさっぱり忘れて、今はまだ2019年だと宣うようなおめでたい男になっちまう。もしもお前が悪党か、もしくは『おめでたい男になってもいい』ってんでなきゃ――――ゆっくりだ。ゆっくりこっちを向いて、ゆっくり顔を見せろ。お前がもしも指名手配されてるなら、ごまかせるなんて思うなよ？　俺は物覚えが良くってね、人の顔と名前は忘れないのが自慢なのさ。（構えた記憶消去銃を路地裏の暗がりにいる『青年らしき人物』に向け、大きな声で用件を伝える。目的の人物を見失った時は参ったが、これでどうやらことが上手く回りそうだ。今話しかけている『誰か』が『自分の知り合い』でもない限り、この件はこれで無事に終了のはずだ――――）

狭筵・桜人　2020年1月3日
（腕時計を見ていた。条件反射で上げた両手はそのまま固定されている）　（自分は時計をしていない。下ろした男の左腕についた悪趣味な金色が目に入ったものだから）（他人の時計の換金方法を考えながら、回りくどい“警告”を話半分に聞き終えたところで）……私が本当に悪党なら、

狭筵・桜人　2020年1月3日
あなた、喋ってる間に死んでますよ……って（振り向いた先に、見たことのある顔が。ほらあの同僚の）（名前なんだっけ……デパートの屋上、映画館、キャサリン――）　あ！　金髪美女マニアさん。（指を差した）

納・正純　2020年1月4日
御忠告をどうも。だが残念、俺は無駄話を止められない体質なのさ。これを止めちまうとタップダンスを踏み出しちまう病気持ちでね。……もう良いかい？　そろそろ、眠って貰うぜ――――（『誰か』に向けた銃口はそのままに、引き金に力を込めていく。面倒なのは御免だったし、目的の人物を確保したらすぐに引き上げる必要があったからだ。自警団――――この世界のヒーローたち――――が、もうそこまで迫ってきているはずだ。見つかる訳にはいかなかった）

納・正純　2020年1月4日
（と、その瞬間にあることに気が付いた。……ちょっと待った、その呼び方で俺を呼ぶ奴なんざ――――）　おいおい御挨拶だな、そんな人聞きの悪い呼び方で俺を呼ぶとはよォ。――――くく……おい、嘘だろ！？　どうしてお前がここにいて、俺が狙ってた男を先に寝かしつけてんだよ？！　久し振りじゃねェか、【狭筵・桜人】！　映画館……いや、デパート以来か？　（そして、ふたりはそこで初めて出会ったといえる。ようやく互いを認識した、という意味合いでだが。知識に執着を持つ生き方をしている以上、こちらは相手の名前を覚えている。そして、恐らくあちらは――――そうだろうな。こちらの名前を憶えているかどうかは微妙なところか）

狭筵・桜人　2020年1月4日
やぁお久しぶりです。さて、何故私がここにいるのでしょう？　ひょっとすると運命が引き合わせたのかも。（友好的な素振りで場を繋ぎながら必死に名前を思い出している）取りあえずその物騒なもの仕舞いましょうよ、お……おさ……おじさん？

納・正純　2020年1月5日
納だ。納・正純。好きに呼んでくれて構わないぜ。

納・正純　2020年1月5日
ンで、だ。全く、非常に、遺憾ながら――――まだこの銃を仕舞うにはいかないモンでね。『そいつの身柄を俺に引き渡せ』、桜人。できるだけ早く、な。そんでお前はここを立ち去って、俺に会ったことは忘れてくれ。それだけで良い。お前と敵対関係にはなりたくないンでな。

納・正純　2020年1月5日
（正純の目的は一つであった。桜人が先に捕縛し、意識を奪ったヴィランと類される悪漢の身柄である。言葉の端々を注意深く聞けば、『そいつの身柄は自警団にも渡すつもりはない』『自分の存在を自警団に悟られたくない』というような、いわゆるサブの目的も、人によっては感じ取れるだろう。そして、正純は『ここでの面倒を避けられるのなら、幾分か金を出しても構わない』くらいの覚悟を持っているだろうことも、だ）

狭筵・桜人　2020年1月5日
性急ですねえ。せっかちな男はモテませんよ。（力には媚びる従う屈するに限る。そう、平時であればどうぞどうぞと熨斗をつけて差し出すところなのだが）（どうやらこの男を狙うのも、真っ当な理由では無いらしい）（それに、）

狭筵・桜人　2020年1月5日
（大人にアレコレ命令されると反発したくなるのは十代のサガだろう）……安心してください！　この悪党は私が責任を持って、ちゃあんと自警団に引き渡しますから、ね？　おっと、それともアレですか？　こんな新年のおめでたい日に後ろ暗い事情があるなんてー……まさかですよねえ、正純さん？

納・正純　2020年1月6日
………………。（時間にすれば僅かであったが、それでもこの沈黙は正純にとっては非常に長いものであった。一秒を何重にも分割し、その欠片をまたすり潰し、出来上がった時の砂が一粒流れ落ちる間に、脳細胞の地図の上で思考を一回りさせていく。頭の中に狙いの人物を手に入れるための幾つもの選択肢が浮かぶ）

納・正純　2020年1月6日
（1、『桜人を殺す、ないしは無力化して無理やり奪う』。思いつきはしたが、却下だ。相手が相手である。上手くやるには手間も時間もかかるし、自警団が迫っている今の状態では余裕もない。成功したとしても足が付く。さらに言えば、彼とは敵対はしたくない。故に無しだ。2、『今この場で叫んで自警団に桜人の存在を知らせ、どさくさ紛れに奪う』悪くはないが、良くもない案だ。端的に言ってその場次第の賭けになるし、桜人からの恨みを買うかもしれないという面でもスマートじゃない。3、『桜人をこちら側に付かせる』。実現できれば良い案だ。問題は、どうやってそこまで話を持っていくか、だな。確かさっき自警団の無線を傍受した感じからすれば、この裏路地にあいつらが駆けこんでくるのは、恐らく2、3分後ってとこか――――）

納・正純　2020年1月6日
……もしも、そのまさかだとしたらどうする？　桜人。お前とはフェアに話したいからよ、先に言っておこう。俺の目的は、『桜人が気絶させたそいつの身柄の確保』だ。もちろん、自警団に渡すつもりはない。俺が個人的に、そいつに聞きたいことがあるからだ。だからよ、一つ提案がある。『取引』しねえか？　お前と俺とが、今ここで、互いのためにさ。

狭筵・桜人　2020年1月6日
（一匹、“使い捨てて”防げるのが銃弾三発。そのあとは？）（……詰みだ。こんな大男を抱えて逃げ切る手段など持ち合わせていない。短気を起こされたら自分だけ逃げるつもりでいた。だというのに――）（ガキ相手に勝手に警戒して『取引』なんざ持ち出してくれるのだから――ああ、猟兵か。何て便利な肩書きだろう）

狭筵・桜人　2020年1月6日
ンー、その前にひとつだけ確認させてください。時間もなさそうだし返事はイエスかノーでいいですよ。（再び地面に寝たまま起きる様子のない男へと歩み寄り）（靴の爪先で脇腹辺りを小突いた）　あなたに渡すと、この人殺されちゃいます？

納・正純　2020年1月7日
……ふむ、ふむ…………。（逡巡する様子は――――見えない。というか、ここで質問か。クク、上等。随分と肝が据わっていやがるな。夕立と良くつるんでいる訳だ。それはつまり、『逡巡しなかった』のか、『逡巡はしたが、こちらに見せなかったか』のどちらかだ。恐ろしいのは後者である。『ガキ相手に見えたとて』、『桜人は猟兵だ』。警戒は最大限行って悪いことは無い。片手の記憶消去銃は下ろせない。あちらの力が未知数な以上、俺よりも強いとして見なければ。こういう時は、武器の所持が認められている身分で良かったと思う。こうして猟兵相手に『取引』を持ち掛けられる立場であることにも、だ。――――ああ、猟兵か。何て便利な肩書きだろう）

納・正純　2020年1月7日
……その前に一つだけ、こちらからも。銃を下す代わりに、一服吸っても構わないかい？　ま、答えは聞いてないんだがな。

納・正純　2020年1月7日
『殺さねェ』。俺は人を殺すよりも活かす方が好みでな。……納得いく説明にはなったかな？　（銃を下し、煙草を加えたのも戦略の内だ。自分の武器が相手の視界の中にあるのは好ましくない。それも、自分よりも実力が上である相手であるのならばなおさらだ。記憶消去銃をコートの内側に隠し、片手で煙を撒き散らしながら、もう片方の手は遊ばせておく。桜人に動きがあった時は、即座にコートの中へ手が伸びるようにだ。願わくば――――このまま相手が煙に巻かれてくれるのがベストなのだが、恐らくそうはいかないだろう。これは取引だ。話の流れ次第では、あちらの要求も呑む必要が出てくるはずだ）

狭筵・桜人　2020年1月7日
フーン……（燻る煙草の煙を目で追う。路上喫煙で罰金取られてしまえとか思ったり）（さて、完全には信用していないとはいえ……ごねる必要性が無くなってしまった）　ウンウン、納得しました。それじゃあ――

狭筵・桜人　2020年1月7日
手っ取り早くこれでいいですよ。お正月セール価格です。（指を三本立てて見せる）（せっかくだしタカろう）

納・正純　2020年1月8日
馬ッ鹿野郎、ふっかけんなよ。二本で。

納・正純　2020年1月8日
（想定以上にあっさり引いた――――故に、そこが気になる。彼は人命を気にするタイプの猟兵であったかどうか、手持ちのカードには答えが記されてはいなかった。つまりカンニングペーパーはない状態で、期末試験に挑まなくてはならないという話。『コイツの目的は何だ？』　という点への興味が出てきてしまった以上、こんな状況下でも自らの飼う知的好奇心という獣に首輪を付けることはできなかった。首輪など付ける気も無かった、とも言えるが。とりあえず、分かりやすく値切ることで相手の反応を見よう。金が欲しいだけならゴネるだろうし、それ以外が目的ならば、値段に乗ってから新しい条件を出してくるだろうから）

狭筵・桜人　2020年1月8日
はあ？（そんな彼の思考など露知らず、）　割り引いて割り引いて割り引いてこの値段ですけど？　なんですか、いい大人が子供相手に値切ろうって？　いやいやいや（ノータイムでゴネ始める）

狭筵・桜人　2020年1月8日
（ゴネる『必要性』がなくたって『理由』ならいくらでもある。労せずにお金が欲しいとか、課税されない収入を得たいとか、あとはそう……お金が欲しいとかだ）（何事にも忠実なのだ。それが命令でも、欲望でも）　じゃあこうしましょう！　私が自警団の皆さんを引き留めに行く条件付きでどうです？　見つかりたくないんでしょう？（交渉中の片手を揺らした）（ちゃっかり一本増やしている）

納・正純　2020年1月9日
……。面白いな、お前。益々気になってくるねえ。良いだろ、それじゃ俺からも追加で一つ条件を出させてもらう。条件の提示はこれが最後だ。手付金で『十本やる』。だから、自警団の引き留めに加えて――――。桜人、俺と取引しねえか？

納・正純　2020年1月9日
俺は今、ちょっとした薬物絡みの事件を追ってる。で、今お前が捕まえたそいつは、俺が追ってる組織の末端かもしれねえんだ。端的に言って、お前の協力が欲しい。ヒーローズアースで上手く動ける奴が足りないもんでな。桜人が『今後も俺に付き合ってくれるなら十本』。ここで終わりってんなら、その時は……『口止め込みで五本』だ。気軽に答えてくれて良い。だが、出来るだけ早めに頼みたいね。お互い、そこまで時間の余裕はないだろ？

狭筵・桜人　2020年1月9日
えっ　　十本？（欲を出すと痛い目を見る。これは古来、寓話でも多く語られる教訓である――が、十のあとに五と言われても耳に入ってこない）（なんだか警戒を越して買い被られているみたいだし、これ以上関わればボロが出るのは目に見えているし、でも十……十か……しかも手付金って言った……）

狭筵・桜人　2020年1月9日
（いや待てよ？　この男は『今後も俺に付き合ってくれるなら』と言ったのだ。『結果を出せ』とも『役に立て』とも言われていない。つまり今後も彼について歩くだけで契約は履行される――。ヨシ！　大金ゲット！）……仕方ありませんねえ、いいですよ。その……『今後も正純さんに付き合う』って条件で引き受けましょう。（やれやれみたいな表情を作る）

納・正純　2020年1月10日
（――――来た）

納・正純　2020年1月10日
良いだろう、俺の店の名刺を渡しとく。そこに連絡先も載っているから、そっちが自警団を撒いた後で一度連絡をくれ。次の仕事の話はそれからだ。――――それじゃ、これで『取引』は成立だ。よろしくな、桜人？　（全く不思議な流れではあるものの、まさかここで『目いっぱい役に立ちそうな猟兵』との縁を結べるとは思わなかった。彼なら『こちらが期待した分だけ結果を出してくれるだろう』。それに、薬物絡みの事件なんぞを金だけで受けてくれるような奴だ。きっと裏にはまだ何か目的があるのだろう。いつかそれを――――彼の素性とやらを知るのも楽しみだ。つまり、彼は実に良い取引相手だってことになる。名刺を持つ手を彼の方へ伸ばし、服の裏の銃から手を離す。今後とも仲良くしたいものだ）

狭筵・桜人　2020年1月12日
はいはい、よろしくお願いしますね正純さん。（無警戒に近寄って平然と名刺を受け取った。薬物絡みの事件ならば武力組織だけで首尾が整うはずもない。何故なら悪党には流通させるのが精々で、生産性など有りはしないからだ。“畑”の調査。ブローカーの捜索。顧客のリストアップ。肉体労働を避ける言い訳なら山程揃っている）　（結局仕事の段取りをつけていることには自分でも気付いていない）

狭筵・桜人　2020年1月12日
じゃあ行ってきます――あ。あの！（暗い路地を出た晴天下。思い出したように振り返る）……金額のこと、人には内緒にしてくださいね。共通の知り合いには特に。（タカった結果タカられた、なんてことになりかねない。釘を刺しておかなくては）

納・正純　2020年1月13日
おう、こちらこそ。それなりに強く、鼻が利いて、勘が良くて、欲張りの上に礼儀も持ち合わせてる――――十分過ぎるくらいだ。精々頼りにさせてもらうぜ？　（薬物絡みの事件は、とかく何かと『肉体労働』が付いて回る。こういう時に裏方にいて欲しい奴の条件は、第一に『いざという時に動けるかどうか』だ。実地での“畑”の潜入調査。ブローカーの捜索と、情報の裏取り。熱烈な顧客からのクレーム処理。肉体労働は予期せぬタイミングであちらからやってくるものだ。今までの言動を見る限り、桜人は相当場慣れした手練れだ。彼なら上手くやってくれるだろう）　（桜人のことを買うあまり、どこかで互いの思考に致命的な差が生じていることには自分でも気付いていない）

納・正純　2020年1月13日
もちろんだ。この件を知ってる奴は少ない方が良いからな。『嘘つき忍者』にも黙っておくよ。

納・正純　2020年1月13日
それじゃ、また。自警団の方は頼んだぜ。連絡待ってる。
（携帯灰皿に吸殻を入れ、桜人が寝かせた男を肩に担いで裏路地のさらに奥の方へ入っていく。一つ曲がって、二つ曲がって、ゴミ箱を足場に塀を越えた辺りで、正純の姿は見えなくなった。次に二人が会う時は、同意の下で『新しい仕事』が始まる時だろう。少なくとも――――今回の取引は、これで無事に済んだ）

狭筵・桜人　2020年1月15日
…………。（なんだろう。彼と自分との間に重大な行き違いがあるような）……ま、いっか。お年玉で何買おうかな～。（子供に持たせるには些か額の大き過ぎる金額ではあるが）（日頃の収支からして平凡ではないのだ。これくらいの金額を消費するのは容易い）

狭筵・桜人　2020年1月15日
フンフーン。（上機嫌に鼻唄を鳴らし。先に男から受け取った名刺に視線を落とす）……ん？　ここの住所、最近行ったことがあるような……？

狭筵・桜人　2020年1月15日
『栗きんとん御馳走様でした/結』