シーン【表】のんびりとした事務所の午後
アヤネ・ラグランジェ 2019年11月29日
新宿のアヤネオフィス。
古びた窓枠が午後の陽射しを遮り床に影を落とす。
図書館のような紙の匂いといれたばかりの珈琲の香り。
すっかり馴染んだいつもの光景だ。
アヤネと冬青はソファに向かいあってそれぞれの作業をしていた。
アヤネは雑に積んだ厚い本を拾い読みしている。
そして前触れもなくUDCウロボロスを呼び出し、
書棚の上の方から一冊の本を手元まで運ばせた。
アヤネは日頃から雑事にウロボロスを使っている。
そういえば、と冬青は改めてその二重の触手を眺める。
アヤネはこのUDCについて説明した事がない。
いくつか過去の記憶が冬青の脳裏をよぎる。
今、聞いてみようか?
さり気なく、冬青は口を開いた。
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アヤネ・ラグランジェ 2019年12月7日
UDCを体内に維持するには精神力を削る必要がある。キャパシティには個人差があるわけ。このキャパシティが充分に大きい場合は、UDCを二体持つことは可能だネ。
そしてそのキャパシティが極めて高いのが、僕だ。
アヤネ・ラグランジェ 2019年12月7日
ソヨゴが察した通りだよ。僕はUDCを二体持っている。隠していたわけじゃない。一応こいつは機密事項でネ。いずれ説明しなくてはならないとは思っていたんだ。
ところで説明する前に聞きたいのだけど、これにどうして気づいた?
城島・冬青 2019年12月7日
えーと、実はそのリウォさんにすこーし、その…聞きまして…。私、アヤネさんの力のこととか、UDCについて何も知らないので少しでも知っておきたくて…。でもコソコソと探りを入れるような真似になってしまいましたね。…ごめんなさい…(へにゃりと垂れ下がった犬耳が幻覚で見える)
アヤネ・ラグランジェ 2019年12月8日
うわー! 怖がらせてごめんなさい! かわいい。いや、ちょっと僕、自分で引くほど怖かったわ。ゴメンゴメン。僕について興味を持ってくれてうれしいよ。
城島・冬青 2019年12月8日
いえいえいえ!私がアヤネさんを怖がるなんてありませんよ、ただ怒られても当然かな〜?と思っただけでー…って、ん?かわいい??
アヤネ・ラグランジェ 2019年12月9日
う? かわいいと思ったら変?
そうか。怖いとか理解できないとか意味不明だとかおぞましいとか思わない? 気持ち悪いとか?
いや、これから思われるかもしれないネ。このUDCはきっと怖がられると思って言えずにいたんだ。リウォははっきり口に出して「理解できない」と言ったよ。
城島・冬青 2019年12月9日
私の今の言動にかわいいとこ、ありましたかね…?ま、まぁいいか!
城島・冬青 2019年12月9日
えーと、その「UDCを二体持ってる」ということも、アヤネさんはスペックが高いんだなー、凄いなーと感じる気持ちの方が強いので怖いとかは感じませんね。うーん、本来はおかしいことなのかな??まぁそのUDCの姿を見てないのもあるかもしれませんが…。
アヤネ・ラグランジェ 2019年12月9日
前提として説明しておくネ。
アインシュタインの特殊相対性理論に述べられたように、質量とエネルギーは等価性のあるものだ。UDCの存在は質量とエネルギーの中間の性質を有していて、我々の世界で物理的に拘束しようとすると核融合炉並みの施設が必要になる。UDCエージェントが体内にUDCを保存した場合は精神力を削るけど、完全に無力化した状態で保存が可能になる。現実問題としてコストパフォーマンスがいいわけネ。
アヤネ・ラグランジェ 2019年12月9日
僕が体内に宿している二体目のUDCは半分は今説明した理由で選ばれた。僕以外にこいつを宿しておけるエージェントはNYにはいなかったんだネ。
こいつが危険なのは、発動させただけで周囲の人間を発狂させるほどの精神攻撃を行うこと。従って敵が人間の場合は使用不可。一般人が側にいても不可。UDCエージェントと猟兵はいてもいい事になってる。
アヤネ・ラグランジェ 2019年12月9日
こいつには十二の封印がかかっていて一から四と十二は僕が外せる。それ以外の五から十一はUDC組織(Union)が遠隔で操作して外す。相手がオブリビオンで、周囲に一般人がいない事を確認してから発動だ。だいぶ手間がかかる。
アヤネ・ラグランジェ 2019年12月9日
対オブリビオン決戦兵器 形式名称【レッドキャップ】。これが僕が飼ってる二体目のUDCだ。極めて攻撃的で破壊的なUDCだネ。使う日が来たら前もって教えるよ。なかなか無いとは思うけどネ。
城島・冬青 2019年12月10日
なんかすごいことを聞いてしまいました…。レッドキャップはイギリスの民間伝承にある危険な妖精の名前でしたね、身につけてる赤い帽子は犠牲者の血で染めたもの。
城島・冬青 2019年12月10日
普段生活していてその赤帽子くんはどうなのですか?眠ってるから無反応だと思いますが、突然脳内に声が!とか夢に出てきた!…とかはないですか?怖くはないけれど、アヤネさんが大丈夫か心配になってきました…
アヤネ・ラグランジェ 2019年12月10日
その通り。ソヨゴは詳しいネ。それでも怖くないというのはさすが。
普段は支障ないよ。でも夢は…。曖昧なので心配しなくて良いのだけど、夢を共有した様な気はする。あいつが見ている夢を僕が見たのか、僕の夢をあいつに見せたのか、どちらかハッキリしない。そしてたぶんどちらでも変わらないんだ。
アヤネ・ラグランジェ 2019年12月10日
ところで話はだいぶ変わるけど。ひとつ確認しておきたいことがあってネ…。自殺志願者の依頼あったじゃない?
城島・冬青 2019年12月11日
自殺…。あ!自殺の真似事をしなければいけなくて私とアヤネさんが心中した依頼ですね。あれがどうしました?
アヤネ・ラグランジェ 2019年12月11日
…えーと。ソヨゴがですネ。あの時、僕にこう、薬を飲ませたじゃないですか? 口移しで。あれはなんというか…ソヨゴからキスしたっていうカウントに入れていいのかしら?
城島・冬青 2019年12月11日
ぇ…?え…??(フリーズした)
城島・冬青 2019年12月11日
あばばばばばば!あのあのあの!あれはあのですね!!!あの、ええと、なんと申しましょうか、その、あの(思い出したのかめちゃくちゃキョドり謎の舞を踊っている)
アヤネ・ラグランジェ 2019年12月12日
あー、ゴメンソヨゴ。無理に言語化しようとしなくていいから!
城島・冬青 2019年12月12日
なんか了承もなしに勝手にしちゃってすみません!って言いたいところですが、私も了承なしにされてましたね。えーと、うーんと、おあいこ??
アヤネ・ラグランジェ 2019年12月12日
そうか、僕は…(何か言いかけて、口ごもる)
(潮が引くように表情が消える。黙って目をそらす)
城島・冬青 2019年12月13日
え?!なんですか?!何を言いかけました?!絶対いま言葉を飲み込みましたよね?!!
アヤネ・ラグランジェ 2019年12月14日
言っても意味がないかもしれないけど。ソヨゴが僕を恋人として見てくれる事は無い、そう思い込んでいたんだ。いや、今でも思ってる。僕には想われる価値なんて無い。むしろ害悪だ。それなのに側にいて欲しい。そう思ったのは僕のエゴだ。僕はきっと君にひどい事をしているんだ、ソヨゴ。
城島・冬青 2019年12月14日
………何言ってるんですか??
城島・冬青 2019年12月14日
…(アヤネの頬を両手で包み込むと容赦なくむにむにもにもに揉み出す、なおかなり痛い)
アヤネ・ラグランジェ 2019年12月14日
え…えっ???(状況が把握できずに動揺してされるがままになる)
城島・冬青 2019年12月14日
あはは、今のアヤネさんすっごい変な顔。でも私凄く怒ってるんで暫くこのまま揉まれててくださいね(むにむにむぎゅむぎゅしつつ)
城島・冬青 2019年12月14日
私、わりと頼まれれば断りきれなくてホイホイ受けてしまうタイプではあるんですがね。それでも暇じゃないんで、好きでもない人にわざわざご飯作ったり一緒に依頼に行ったりなんてしないんですよ(一息)
城島・冬青 2019年12月14日
(息を吸って吐いて)確かに私はアヤネさんの恋人とは言えないのかもしれません。だって「付き合おう?」って言われてないし。言われてなければどういう反応していいかわからないし。でもアヤネさんが突然「僕、恋人ができたんだ」って言ったら多分…いえ、きっととっても悲しくなると思います。なんて言ったらいいのかわかんないんですけど!(一息)
城島・冬青 2019年12月14日
それとなんでしたっけ?「僕には想われる価値がない?」「害悪??」はー(溜息)きましたよアヤネさんのネイティヴネガティブ。いいですか?自分を卑下してるつもりで言ってるんでしょうが、それは私に対する侮辱です。いえ、アヤネさんは自分自身をディスってるつもりなんでしょうが、アヤネさんと私両方を侮辱してるんです。つまりセット侮辱です!!(一息)
城島・冬青 2019年12月14日
どうして害悪だと決めつけてるんですか?私がそれをアヤネさんに言いましたか?誰かに言われたんですか??私は、私自身の意志でアヤネさんのそばにいるんです、いたいんです!貴方が自分のことを好きになれないのは悲しいけれど仕方がないです。出来れば好きになってほしいけれど…それは今は置いときます。でも!私は全然ひどいことなんてされてない。好きなアヤネさんを「害悪」だとか「価値がない」って否定するのは絶対、絶対許せません、それが貴方自身のネガティブな感情からきた発言でも。だから私、めっちゃ怒ってるんです。すっごくキレてるんです(すごい早口)
アヤネ・ラグランジェ 2019年12月14日
付き合おう、なんて言えるわけがなかった。僕が願えば、君は選んでしまう。状況が決定されてしまうのを僕は恐れた。
アヤネ・ラグランジェ 2019年12月14日
でも今はソヨゴの気持ちに応えたい。それが僕のエゴだとしても、今まで通り、僕の側にいて欲しい。ごめんなさい。
城島・冬青 2019年12月15日
はぁ…。アヤネさんって凄く頭が良いの超ネガティヴな思考に陥っちゃったら帰ってこなくなりますよね…。いや、頭が良いからこそ色々と考えて変な思考に陥ってしまうんですかねぇ…。エゴとかそういうマイナスなこと考えなくていいんです。私はアヤネさんと一緒にいたい。そしてアヤネさんも私と一緒にいたい。だから一緒にいる、それで良いと思うんです。
城島・冬青 2019年12月15日
でも、そうですねー。出来れば自分のことを「害悪」だとか「無価値」だと言うのはやめてほしいかな。聞いていて私が悲しくなります、アヤネさんは私が悲しくなっても大丈夫です?
アヤネ・ラグランジェ 2019年12月16日
自己評価を改めるのは難しいかな。でもソヨゴが僕に価値を認めてくれるのだから、僕はそれを尊重する。もう二度と君の前で無価値なんて言わないと約束するよ。
アヤネ・ラグランジェ 2019年12月16日
ちょうど半年前。あのガラスの橋の上で、ソヨゴが僕の存在を受け入れてくれて本当にうれしかった。あの時から僕は良い方向に変化している。ソヨゴがずっと側にいてくれたおかげだ。ありがとう。
アヤネ・ラグランジェ 2019年12月16日
もう最近はあの時のようにぼうっとすることは無くなったんだ。
城島・冬青 2019年12月17日
え!本当に
…?!……よかった…本当によかった…(じわじわと涙ぐむ)
城島・冬青 2019年12月17日
アヤネさんのネイティブなネガティブが1日2日でどうにか好転するとは思ってないですよ。でも、いつか…アヤネさんが自分のことを少しでもいいから好きになってくれたら…それはとても、とても嬉しいです。そしてその時、まだ私がアヤネさんのそばにいられたら…いいなって…そう思います。
アヤネ・ラグランジェ 2019年12月17日
なっ、泣くようなことじゃないでしょ?(思わず抱きしめる)
わかった。もうわざと突き放すようなことは言わないから。危ないプランは書き替える。だから、ずっと側にいたらいいよ。
城島・冬青 2019年12月17日
え?!本当ですか?言質しっかり取りましたよ!やったぁー💕(むぎゅむぎゅと抱き返す)
アヤネ・ラグランジェ 2019年12月19日
言質取られたネ。僕は言った事は守るよ。さて、楽しい話でもしようか。クリスマスどうしようか、とか。
城島・冬青 2019年12月19日
クリスマスですか?そうですね、毎年家族で普通にホームパーティーしてたわけなんですが今年の予定はまだ決めてないですね。
アヤネ・ラグランジェ 2019年12月19日
あ、うん。じゃあクリスマスイブはソヨゴと一緒に過ごしたいよ。プランはまだ立てていないけど、いいかしら?