[ 雨降る街で ]
ガジャ・マールーシャ 2018年12月24日
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しとしとと朝から止まない雨が今も賑わう街を濡らしています。
この世界は何もかもがわたくしの知る場所と違ったけれど、
濡れたコンクリートに跳ねるネオンの光が大層美しいことを
わたくしは知っていました。
だからこうして自由に旅をできるようになってからは、
見知らぬ街の夜をときどき楽しんでいるのです。
わたくしは散策を十分に楽しんだ後で、
そろそろ宿へ帰ろうかと思っていた……その時でした。
(雨の夜 UDCアースにて)
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ガジャ・マールーシャ 2018年12月24日
(その方は喧騒から離れたところでぽつんと立っていました。わたくしは……何といえばいいのか、“人を放っておけない”性質でしたので、自分が異世界にいることも忘れて、口を開いたのです)……あの、もし? お体の具合でも、どうかいたしましたか?
四辻路・よつろ 2018年12月25日
(唐突に話しかけられて思わずキョトン、とする。新手の宗教かマルチの勧誘か、それともただの不審者なのか。擦れた女は“親切”と言う単語など知りもしない
)......あ、いや。身体はすこぶる元気よ。(口から出たのは己が想像した以上に上ずった声。異国風の出で立ちをした女を、足の先から頭のてっぺんまで眺めて警戒する)
ガジャ・マールーシャ 2018年12月25日
それならよかったですわ(まじまじと己を見るまなざしは当然のように思えました。自分でも面白いくらいに今のわたくしは不審者然としているのですから)……ええと、わたくし怪しい者ではございません。わたくし、……何と言ったらいいのかしら。あなた様が途方に暮れているように見えていましたの。迷い子でしたらお家に送らなければなりませんし、他に理由があるにしろ、このまま一人はよろしくないでしょう?(理由を説明しようとすればするほど早口になる気がします。きっと追い詰められた容疑者はこんな気分なのでしょうね)
四辻路・よつろ 2018年12月25日
(矢継ぎ早に紡がれる言葉に、段々と毒気が抜かれる。明らかに年下に見える女に、子供の如く心配されるのは変な気持ちだ)(それに、)――ああ、えっと。あなた、寒くないの?その格好。(例え、見るものを挑発しているかのような、浅黒い肌を惜しげもなく晒したこの女が、いくら寒さには強いと主張した所で、季節は冬。おまけにもう随分と前から雨が降り止まないのだ。迷子か、と尋ねてきた方が、よっぽど迷子のようではないか)いる?(そう言って、首に巻いていたストールを差し出そうとする)
ガジャ・マールーシャ 2018年12月25日
え?(まさか逆に心配されるとは――思いがけない問いについ間抜けな顔を見せてしまったかもしれません)(だってわたくしすっかり寒さなんて忘れてしまっていたのですから。けれど彼女の問いでようやく寒さを思い出したのか、無意識に身体が震えました)……ええと、たしかに寒い、ですわね? わたくし何も考えずにいました。雨に濡れた街が綺麗だったので……(先ほどまで彼女が身につけていたストールはなるほど、薄手ながら暖かそうなものです)……いえ、でも、お返しします。これがなければ、あなた様が風邪を引いてしまうでしょう?
四辻路・よつろ 2018年12月25日
寒いの?それじゃあ我慢してないで付けときなさい。私は別にこれぐらい大丈夫よ。(そう言って、問答無用で女の首にストールを巻いてやる)雨が綺麗で寒さを忘れてただなんで、あなたまるで子供みたいなこと言うのね。(こんなよくある飲屋街のどこが綺麗なのやら。少し眉を下げて女は笑う)
ガジャ・マールーシャ 2018年12月25日
我慢というわけではないのですが(ここまで言われては遠慮するのもこの人に悪いものです。時々頬を掠める指先の冷たさに少々申し訳なさを覚えながら――わたくしは彼女の親切の邪魔にならないよう、僅かに視線を伏せました) ありがとうございます。わたくし、遠いところから来ているものですから。人が多いのも星の数ほどある灯りも珍しくて、つい。あなた様は……(この世界、と言いかけて口を噤みました。この世界で異世界の存在は秘されているはずです)……この街にお住まいですの? この光景も見慣れていらっしゃるのでしょうか。
四辻路・よつろ 2018年12月25日
よつろでいいわ。(女がふと口を噤んだのを見て、思わず名を名乗る。相手の名を知らないままでは、きっと不便に違いない)住んでる、と言えば住んでるのかしら。寝泊まりしている所はもうちょっと遠くの方にあるのだけど。(――確かに、見方によってはこの安くて軽薄な明かりも綺麗に見えるかもしれない。子供の頃、ナイショだよ、と言われて夜更けにこっそりと連れ出してもらった時は随分とはしゃいだものだ)ここだけじゃないわ、どこもかしこもこんな感じ。
ガジャ・マールーシャ 2018年12月26日
よつろ様……(不思議な響きです。口ざわりを確かめるように一度声にしてみると、しかし、目の前の女性のどこかミステリアスな雰囲気によく合うように思えました)申し遅れましたわ。わたくしはガジャ。ガジャ・マールーシャと申します、よつろ様(無礼にならないよう頭を下げ、努めて笑みを浮かべました。挨拶は親しさへの基本ですものね)……なるほど、あなた様にとってはそう珍しいものではないのですね。わたくしはこの街をよく知りませんので、あなた様にとっては子どものように見えても仕方がないかもしれませんが……(それならそれで、見慣れた風景などさっさと無視をして帰ってしまえばいいのに、そうしなかったこの方にはやはり困ったことがあるのでは?とわたくしは考えつきました)よつろ様は、ここで何を見ていらしたの?
四辻路・よつろ 2018年12月26日
見てた、というか
......。(少し言い澱み、やや間があってから続きを口にする)次はどこに行こうかなって。少し考えていただけよ。――なんとなくまだ帰りたくなかったから。
ガジャ・マールーシャ 2018年12月26日
なるほど(どこに行くかも決まっていないのにどこかへ行きたいだなんて――まさしく迷子ではありませんか)(と言うのは流石に躊躇われて、微笑むに留めました)……なら、わたくしと一緒にお散歩しませんか? わたくしはこの街を知りませんので、あなた様がお好きな場所でも教えていただければ助かります。もちろん、ご迷惑でなければ、ですけれど。
四辻路・よつろ 2018年12月27日
散歩?良いけれど。――ええと、ガジャ。(先程教えてもらった名を口にする)せっかくだし暖かい所に行くってのはどうかしら。あなた、何か好きなものはある?
ガジャ・マールーシャ 2018年12月27日
ええ、そうですわね、よつろ様(名を呼ばれ、ただ応えるだけだと言うのに何だかおかしくて、つい笑ってしまいました)好きなものというのは、食事の好みでよろしいのでしょうか。でしたら、香辛料が効いたものが好きです。それから獣肉も好きですし……(そこでわたくしはこの世界の素敵なお店を思い出しました)ああ、コンビニも大好きですわ。肉まんが、特に。
四辻路・よつろ 2018年12月28日
食事ねぇ……(本当はもうとっくに食べた後なのだが、彼女があまりにも嬉しそうにコンビニの話をするもんだから。まあ良いかと笑って答える)それじゃあ、近くのコンビニにでも寄りましょう。あそこなら何でもあるし。獣肉も――、(恐らく、彼女の言う獣肉とはもっと、鹿とか熊とかそういった類の事なのだろうけど)ジャーキーも獣肉みたいなものだしいいか。
ガジャ・マールーシャ 2018年12月29日
まあ、コンビニですの? それはもう、喜んで(本来の目的を忘れている訳ではありませんが、コンビニを思うと心が弾みます。わたくしは浮き足立っていることを自覚しながら、よつろ様の隣に並びました)ジャーキーは干し肉のことですわよね。ええ、もちろん、構いませんし――あら、そうそう、あなた様は何をお好みになられるの? オススメなどはありますか?
四辻路・よつろ 2018年12月29日
私?(問われてうーんと考える。酒、酒は好きだがコンビニで買うぐらいならどこかの店に入った方が楽しいし。こんな会って早々の初対面の人に、酒乱だと思われちゃ、なんだかちょっと恥ずかしい)――ああ、そうそう(色々頭の中で店内を様子を考えながら、女はぽん、と手を叩いた)おでん。おでんがオススメよ。(今の時期にぴったりなソレを思い出す)
ガジャ・マールーシャ 2018年12月31日
おでん? わたくし、初めて聞きました。でもきっとあなた様を見るに、とてもおいしい食べ物なのでしょうね(今入った道は通りから外れた道でしょうか。喧騒から離れた道は同じ世界だと言うのに酷く静かで、二人分の靴音と雨音が響いています)……何だか、不思議ですわね。どの世界でも雨は一緒で、気持ちが静かになっていくんですもの(それを眺めている内に誰に聞かせるわけでもなかったはずの言葉が、つい、白い息と零れました)
四辻路・よつろ 2018年12月31日
ガジャは雨が好きなのかしら?(白い息を弾ませて、語る女の姿はまるで始めて雨靴と雨合羽を貰った幼子の様だと、覇気のない紫の瞳には映る)(今の彼女はきっと爪先を冷たく濡らす水溜りでさえも心地よいものに感じてるのかもしれない)
ガジャ・マールーシャ 2018年12月31日
ええ、好ましく感じていますわ。あまり激しいと困ってしまいますけれど、雨が降っている間は時間がゆっくりと流れる気がして、飽きませんもの。……おかしいでしょうか?(好きな天気の話なんて、どなたとしたでしょうか。窺う表情は呆れられてしまっているようにも、見守られているようにも感じます)よつろ様、あなた様は雨はお好き?
四辻路・よつろ 2019年1月2日
いいえ、ちっともおかしくないわ。あなたって、放っておいたら、一日中雨を眺めてそうね。(窓に張り付いて、垂れ落ちる雫を飽きもせず一日中眺める。容易にその姿が想像できた)――私は、雨は、嫌いじゃないわ。静かで、落ち着くし。(問われて少し、考える)でも、あまりにも静かで寂しいから。雑踏に紛れて誤魔化したくなる時もあるわ。(寂しさは痛い。だから丁度こんな雨の降る夜は、止むまでどこか騒がしい所に逃げるのだ)
ガジャ・マールーシャ 2019年1月4日
まあ……よくお分かりで。知人にもしばしば呆れられてしまいますの。子どもみたいだからお止めなさいって。でもよかったです。雨なんて何が良いんだと言われがちでしたから……よつろ様も、雨がお嫌いではないのね(沈黙の後に続く言葉はなるほど、わたくしも身に覚えがあることです。しかし目を伏せて語るこの女性がどんな寂しさを抱えているのかを思うと胸が痛みます。せめて誤魔化しの一つになりやしないかと、ほんの少しだけ身を寄せました)寂しいことに長く耐えられる人なんていませんわ。今晩はそれで、こんなところにいらっしゃっいましたの?
四辻路・よつろ 2019年1月5日
ええ、そんな感じよ。といっても、雨が降ってなくても大抵私はいつもあちらこちらをフラフラとしているけど。(そっと身体を寄せる女はやはり寒いのだろうか。コンビニまではあともう少し)
ガジャ・マールーシャ 2019年1月7日
では、わたくしと一緒ですわね(思わぬ共通点につい笑みが浮かびました。そこからほんの少し歩いていくと、前の方で高い看板が、存在を主張するように夜の闇で鮮やかに光っているのを見つけました)……あら、あそこが、あなた様の言ってらしていたコンビニでしょうか。おでんがあるといいのですけれど。
四辻路・よつろ 2019年1月9日
(軽快な音楽を鳴り響かせて自動ドアが開き、やる気のない『いらっしゃいませ』が投げかけられる)おでんならほら、あそこ。(そう言って指さしたのは店の奥の方に設けられた小さな屋台。夜遅く故に品物は勢揃い、とは言い難かったが一通り定番の物は揃っている)何が良い?(口ではそう聞きながらも、手は勝手に好き勝手取り始めていた)
ガジャ・マールーシャ 2019年1月16日
ああ、あれがおでんと言うのですね(よつろ様が指した方を見て、ようやく得心がいきました。ふんわりと漂う湯気からは、食欲を呼ぶやさしい出汁の香りがします)ええと、では……(早速品物を選んでいくよつろ様の手つきのなんと鮮やかなこと。一方でどの食材がどうなのかも分からないわたくしはしばらく立ち尽くしてしまいました)……よつろ様と同じもの、オススメを、よろしいでしょうか。
四辻路・よつろ 2019年1月19日
オススメ?(言われて少し考える)――じゃあ、これで。好きなんでしょう、獣肉。(そう言って手にしたのは牛肉が何枚もささった串。普通に食べても美味しいが、おでんに入れても美味しいやつだ)
ガジャ・マールーシャ 2019年1月25日
まあ……ええ、おいしそうです。どんな味わいか楽しみですわ(多少胡椒も利かせてあるのでしょうか。出汁の匂いに微かに混じる香ばしさについ頬が緩みました)……あとは何か、買うものはございますか? わたくし、取ってまいりますけれど。
四辻路・よつろ 2019年1月28日
肉まんは?(そう言えば、とふと思い出して聞く)好物なのでしょう、あなたの。奢るわよ。
ガジャ・マールーシャ 2019年1月30日
いえ、あの、さすがにそこまでは……(ちらりと見えた、肉まんのああなんとおいしそうなこと! きっと物欲しげな表情は隠せませんが)わたくし、これでもお金はきちんと持っていますもの。大丈夫ですよ?
四辻路・よつろ 2019年2月4日
別にいいわよ。高いモノじゃないし。(全く隠せていない物欲しげな表情に、小さく笑う)ここで会ったのもなにかの縁。この世界へようこそ――、って事で。ね?(お近づきの印にでも、と女は言った)
ガジャ・マールーシャ 2019年2月5日
では、お言葉に甘えさせていただいて。このご恩は、どこかで必ず……(はたします、と唇が動きかけて、そのまま、ぽかんと開いて止まってしまったのも、仕方がないことでしょう)(だって――彼女はまるで、何てことのないように"わたくしたち"の大事な秘密を口にしたのです)……。ええと、……(何のことでしょうと惚けてしまうのもよかったのですが、彼女の確信めいた声に心の中で両手を挙げました)いつからお気づきでしたか、よつろ様。あなた様も……わたくしと一緒、ですのね?
四辻路・よつろ 2019年2月7日
(何の気なしに発した単語に、酷く動揺した様子の女を見てやってしまったと心の中で舌を出す)――ええと、ごめんなさい。秘密だったのかしら?(それは悪い事をしたわ。ごめんなさい、ともう一度謝った)あなたがどこかのお店から逃げ出してきた、って訳じゃないのなら。私達はそうね、一緒よ。
ガジャ・マールーシャ 2019年2月8日
まあ、お気になさらずに。あなた様が謝ることではないのです。ただこの世界では"知られていない"のでしょう? だからわたくし、よつろ様にも隠さなくてはと思っていて……(『一緒』の言葉にこれほど安心することはあるでしょうか。この広い世界で偶然、猟兵の方と出会えるなんて思ってもいませんでした)最初からお気づきでしたのね。わたくし、少し肩の荷がおりました。どうにも不審がられないように嘘をつくのが、苦手でしたので……。
四辻路・よつろ 2019年2月10日
そうなの?その割に、最初に話しかけて来たのはあなたの方じゃない。(声をかけられなければきっと、この異国の女の姿は視界には入っても。今日という一日の記憶には、さほど残らなかったのかもしれない)――ああ、別に責めてる訳ではないのよ。そんなに思わず無理してでも心配したくなるような顔をしていたのかしらって、少しね。
ガジャ・マールーシャ 2019年2月14日
お恥ずかしながら、その時は自然と体が動いていたもので(自分の少しお節介な性質はよく理解していますが、改めて指摘されると恥ずかしいものです)いいえ……あの、言っていいものか迷いますが……(悩んだのは、目の前の女性がこの地で生きる立派な大人の方だからです。私の指摘は恐らく歓迎されないだろうと思いましたが、こうなっては嘘はつけませんでした)よつろ様が、とびきり寂しそうに見えましたの。雨の夜に寂しそうな人は放っておけませんから、それで、つい。
四辻路・よつろ 2019年2月17日
寂しそうねぇ。(千円とそれから小銭を少々。レジのカウンターに置いて、言われた事を復唱する)私ね、声を――お喋りを聴いているのが好きなの。どうしてって言われると、答えに困っちゃうのだけど
......小さい頃からそれが当たり前だったから。(差し出されたレシートを要らないと断って。白い袋を手に出口へと向かう)雨の日ってみんな足早に帰っちゃうし、雨音で一日中世界が静かに感じるでしょう?――だから、雨の日は苦手なの。
ガジャ・マールーシャ 2019年3月20日
なるほど。ですが、わたくし、安心いたしました(つつがなく会計を済ませたよつろ様の華奢な背を追うと、不意に瞼裏に先ほどの光景が浮かびます。褪せた色合いに夜を纏う彼女が雨の中で佇む様はまるでこの世の者ではないような気がしたのです)よつろ様がそのような理由で雨に憂うのでしたら、きっとよつろ様は多くの人の中で生きて、そして人が好きなのだろうと、わたくしは思います。真に孤独である人は、自身が孤独であることにも気付かないものですから。――ああ、でも(一歩を踏み出して、わたくしはよつろ様の顔を覗きました。薄紫の瞳の中に、自分がいることを確かめながら)なら、声をおかけして、本当によかった。あなた様を一晩中放っておくことがなくて、本当に。
四辻路・よつろ 2019年3月21日
――そうね。あの瞬間、声をかけてくれて良かったわ、本当に。おかげで今こうしてあなたとお喋りできて、寂しくないもの。
ガジャ・マールーシャ 2019年3月25日
――はい。(この方はこんな風に笑うのかと、その笑顔を見て嬉しく思いました。酸いも甘いも――この世界のことも、知ってきたようなこの方はまるで子どものように笑うのだと)(つられて、笑顔が浮かびました)それに……都合が良かったですわ。わたくし、夜を飽きさせないのは得意なのです。昔から、ずぅっと。
ガジャ・マールーシャ 2019年3月25日
(明るい場所から見上げた空は一層暗く、雨は降り止む様子を見せません。けれど今晩は寂しい想いはさせないように――わたくしは偶然の出会いを運命と信じて、そう、胸の中で決意したのでした)