冬支度
アルバ・アルフライラ 2019年11月24日
風に冬の匂いが混じり始めた頃。
屋敷の二人は、此度の越冬に向けて各々準備を始めていた。
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アルバ・アルフライラ 2019年11月24日
(薪の爆ぜる暖炉の前、安楽椅子に揺られる男の手には二本の棒と、細指に手繰り寄せられる鮮やかな彩)
ジャハル・アルムリフ 2019年11月24日
(癖のある毛に朽葉を数枚ひっかけて、薪を抱えた従者が部屋へと入ってくる)今年の薪も上手く乾いたぞ、師父。(暖炉脇の鉄枠へとそれを収めながら、ちらりと主の手元に目をやった)……あみもの、か?
アルバ・アルフライラ 2019年11月25日
む。…ああご苦労、ジジ(不意の声に手を止める)何、そろそろ新たな防寒具を用意せねばと思うてな……っておいお前、髪が凄いことになっておるぞ。
ジャハル・アルムリフ 2019年11月25日
む? 風が強かった故な。とはいえ師父の魔術のお陰で薪割りも少量で済んでいるぞ。(師の声は労いと受け取って、手探りで取った朽葉を炎へと落とした
)……。(しげしげと、それも魔術であるかの如く動く二本の棒を見詰め。解せぬとばかり眉間に皺)…紐が衣服になるとは不可思議だな。
アルバ・アルフライラ 2019年11月26日
ふふん、毎年訪れる苦労は最小限に留めるに越したことはない。…何だジジ、師に何か――?(不意に、眉間に刻まれた皺にぎょっとするも、視線の先を追えば、理由は自ずと理解出来た)糸を織れば布が出来るであろう。これも、それと何ら変わらぬよ。お前も、襟巻の一つくらいあった方が凍てつく冬を凌げよう(手繰る色は、青)
ジャハル・アルムリフ 2019年11月26日
うむ…分かるのだが…なにせ俺には成せぬ事ゆえな。(刻まれた魔術に助けられて背を温める暖炉の熱。近くにあった低い椅子を引き寄せ、腰を下ろした。視線は僅かに師を見上げる高さとなる
)………。もしや。…それは、俺のものなのか?(まるまる二呼吸ぶんも考えてから目を見開いた)
アルバ・アルフライラ 2019年12月15日
お前の不器用は壊滅的故なあ…否然し、意外と練習すれば何とかなるやも知れんぞ? 先ずは棒針と縫い針を壊さぬ所から始めねばな(くつり、喉を鳴らして)……ん?(視線は青い襟巻から遊色へ。いつもは遥か上にある双眸も、今ばかりは低く、僅か懐かしい想いが胸中を満たす)俺のものも何も、お前以外の誰に渡すものと思っておる。
ジャハル・アルムリフ 2019年12月16日
…屋敷の家事と、師父と俺の好む料理は身につけたぞ。…練習…精神修養を兼ねる…か…?(眉間に皺寄せての反論は少々力に欠けていたが。自問自答して、ひとまず予備の編み棒を手に取りながら
)………、ありがとう。俺も何か、俺にしか作れぬものを返せればよいのだがな。(喉の奥に、幼い頃から幾度も感じてきた温かな震え。すべては言葉にできぬまま、頼りなげな二本の棒に毛糸の端を絡ませる――と、するり反対側から滑り落ちた)(虚無の眼差しで再び師を見上げる)…師父は、これをいつ覚えたのだ?
アルバ・アルフライラ 2019年12月29日
お前は何でもかんでも修行と考える嫌いがあるな。否、確かに集中するには良い作業ではあるが(するり――眼前で虚しく落ちた毛糸を見詰める)……うーむ、先ずはかぎ針の使い方から慣れていくのが良いやも知れんな??(暫しの沈黙の後、零れた言葉は慰めを含んでいたことだろう)む、私か? …そうさなあ。まだまだ童だった頃、と云うべきか(また一段、進めながら)
ジャハル・アルムリフ 2019年12月30日
俺は人より知らぬ事が多い故、日々此修行なのだ。…なのだが。(せめて伸びた毛糸を元に戻そうとするも、もはや手の付けられぬ形に変貌してゆく。あやす様な師の声に顔を上げるも肩を落として)カギバリ
…?……。師父にも、童の頃があったのだな。…、…俺の服にもあるが…よく使っている加護の紋様も、その時に習ったのか?(言葉を選びながら、唇は何度か開いて閉じた。それに師が気付かぬわけはなかろうが)
アルバ・アルフライラ 2020年1月2日
(元は毛玉だった、名状し難き何かが其処にはあった)…まあ、人間向き不向きがあるでな? 斯く云う私とて、お前の様に大剣は振るえんし、召喚獣を用いねば空を飛ぶことすら出来ぬ…っと、これだこれ(毛玉を載せた籠より取り出したかぎ針を持つと、最初の一段を軽々と編み終わる)後は毛糸と毛糸の間に針を刺し、糸を通せば良い。一本しか使わぬ故、比較的棒針よりも使い易かろう(それを従者へ渡そうと)お前は私を何だと思っておる。私とてそれはもう愛らしかった童だったのだぞ? …おお、察しが良いな。何、私の暮らした村では織物は勿論刺繍が名産でな。幼い頃から教え込まれて育っただけよ。
ジャハル・アルムリフ 2020年1月3日
(慰めの言葉は胸へ、鳥の巣状になった毛糸玉は籠へと落とし)…あいだに、はりをさし、いとを…。(魔法が如く動く指と針をひとしきり観察、うわごとの様に反復しつつ眉間に悲壮さを滲ませ受け取った)……。致し方なかろう、師父が幼い頃の話を、殆ど聞いた事が無かった故。…そうか、御身の育った地にはこうした品々が沢山あったのか。良い郷であったのだな。(習った通り――の心算で針を動かす。師の手掛けた輪に続き、 車侖 といった具合の間延びした目が辛うじて編まれた
)………。(奇跡でも見たような眼差しを向け)
アルバ・アルフライラ 2020年1月16日
(拙くも、弟子の手により編まれた糸を眺めては)…ほれ、上手くいったであろう。誰しも最初から思い通りの品が出来る訳ではない。後は精進するのみ…然すればお前の不器用さでも何とかなろうよ(幼さばかり残る遊色の眼差しに、相好を崩しては再び手を動かす――も、再び手を止める)……ああ、ああ。そういえば、そうだったか。確かに、良い場所であったよ。
ジャハル・アルムリフ 2020年1月19日
うう…ううむ…道のちは遠そうであるな。(車侖。車 侖。輪。動かす度とんでもなく不揃いに繋がってゆく毛糸に焦りを覚えつつ)俺も師父と同じ所で生を受けていたら、針仕事が得意になっていたやもしれぬな。……どんな土地であったのか、聞いても良いか。(迷い乍らの問いかけは、ゆるやかに回り道をした)
アルバ・アルフライラ 2020年2月9日
何事も最初から上手くいったらいったで退屈であろう? 家事や剣の修行と同じようなものよ…ほれ、ちと糸を引いてみよ。さすれば多少は輪も小さくなる(ちょいちょい、と毛糸を乗せた指を動かしてみせて)そうさなあ…お前の場合、もしかすると羊の扱いが上手くなったやも知れぬ。我が故郷では羊飼いになるか、機織りになるかの二択だった故(ふと目を細める。それはまるで過去を懐かしむような)…寒冷な地であった。然し緑豊かでな、羊達の食らう草には事欠かなかった。長閑な地で育った羊は良い糸を生むでなあ(言葉を紡ぐたびに、手の中で長くなっていく襟巻は床に達しようとしていた)
ジャハル・アルムリフ 2020年2月10日
ぬう…師父も最初は下手だったのか?(顔をしかめながらも素直に師を真似て、震える指で毛糸を引いた。歪ながらも投網もかくやの状態を脱せば安堵の吐息)羊に…機織り。…寒い地で、羊を飼って糸を紡いで…。(雪を残した緑、群れを成して草食む羊。師の言葉を小さく辿りながら、見た事のない風景の、夢想のなかへと己を置いてみた)機織り機を壊すよりは希望がありそうだ、いうことを聞いてくれれば良いが。(手近にあった籠を、繊手から伸びる襟巻の下へと滑らせて)(己は知らぬ土地、知らぬ師の時間)…いつか、訪ねてみたいものだが。
アルバ・アルフライラ 2020年2月18日
ふん。其処は察しろ(むくれてはそっぽを向きつつも――視線は無意識の内に従者の手元、へろへろの毛糸へ向けられる。少しだけ目を細めた)っは、確かに。もしかすると如何様な暴れ羊でも手懐ける、名羊飼いになった可能性も無きにしも非ず故(戯け調子な言葉を共に紡ぎながら)(――最後の言葉に僅か、ほんの僅かに指が震えた)…そうさな。その内、機会があればな。
ジャハル・アルムリフ 2020年2月20日
(察した、というよりは勝手に想像し目元を和らげる。手元で少しずつ長くなる混沌を視界に入れぬよう苦労しながら)暴れ羊か、それは面白そうだ。獣ならば一度力で勝負をつければ話が早い故な。(掌で何ぞ――羊の角――を鷲掴みにする仕草をして、慌てて鉤針を掴み直す)うむ、楽しみにしているぞ。…案内さえ頼めれば俺がひとっ飛び、御身を連れて参ろう。(手元に落とした目は白い指先を拾えずながらも。いらえには誓いの響き)
アルバ・アルフライラ 2020年2月26日
お前、そのにやけ顔を何とかせよ。それにその脳筋思考もだ(何故この従者は直ぐに腕力に訴えるのだろう。己が教育が悪かったのだろうか?)やれ、お前という奴は。私から話を聞いただけというに、相当気に入ったと見える(これは拙かったろうか。無意識の内に頭を抱えた)
ジャハル・アルムリフ 2020年2月28日
む? にやけていたか。(手――が塞がっていたため拳に頬を押し付けて)(何とかした心算のようだ)…師父や街の皆のような、やわい表情も。言葉を上手く扱うも不得意故、気がついたらこうなってしまうのだ。
ジャハル・アルムリフ 2020年2月28日
俺の知る俺の里、帰る場所は師父のいる此の屋敷だけだ。その師父の里ならば、俺にとっても特別な場所である故。(手元に注いでいた視線は双星へと)…その地が在った故に、御身が在るのだと知ればこそだ。それに、……昔の話を聞けるのは、嬉しい。
アルバ・アルフライラ 2020年3月16日
そうか? …私には、昔に比べたならば随分と表情が柔らかくなったように見えるが。もう数年もすれば大笑いの一つや二つ出来るのではないか?(まるでこの成長を見ているようだと笑みを深めるばかり)
アルバ・アルフライラ 2020年3月16日
(故郷がないさも当たり前の様に言ってのける弟子の姿に、僅かに目を伏せて)……そうか。やれまったく、矢張りお前は変わり者だよ(苦笑にも似た笑みを湛えながら――心の奥底で似た者同士だと思うと、僅かばかり苦いものが込みあがった)…はっ、そうか。お前が斯様に思うのあれば、多少なりとも話すのも、やぶさかではないか。
ジャハル・アルムリフ 2020年3月24日
(双星に浮かんだ喜色にあえかな熱が灯る。かおに映るのが心だとすれば、鈍ったそれは余りにもどかしく)…おおわらい…人のそうしているところは好ましく思うのだがな。(ねじれた毛糸を見下ろす。ひと目ひと目、同じように不格好に編むしかないのだろう)うむ。師父が構わぬのなら…俺の知らぬ師父の話を、聞きたい。(浮かんだ笑みは先程よりも上手くできた、気がした)
アルバ・アルフライラ 2020年3月30日
なあに、笑顔を作って声を出せば良いだけだ。はっはっは(編み棒を膝に置き、指で口角を釣り上げては笑ってみせて)…こういった具合でな?(そして、戯れに笑むと再び視線は長く伸びた青色へ――暫しの逡巡の末、ちょいちょいと目の前の従者へ近う寄れと手招きを)…お前。私が頼まれては否と云えぬことを知ってのことか?(やれやれ。大袈裟に、肩を竦ませた)
ジャハル・アルムリフ 2020年4月2日
………。(花咲く師のかんばせを矯めつ眇めつ、夢遊病めいた仕草で鉤針を置き)かおを、つくって…こえを…(徐に指で口の端伸ばし)ふぁは
…。………難しいではないか。(その手は力なく膝へと落ちる)
ジャハル・アルムリフ 2020年4月2日
当然知っているさ。…故にこそ、乞い難かった。師父が自ら語らぬのなら、好まぬ理由があるやもしれぬ故。(結局打ち明けてしまったそれが決まり悪く、小声になりながらも傍らへと)…何か?
アルバ・アルフライラ 2020年4月12日
お前………(笑顔には程遠く、端正な顔立ちを名状し難い表情に歪める弟子を見詰めては)…前々から思っておったが、お前の表情筋の硬さは尋常ではないな、おい(きっと、己は呆れにも似た表情を浮かべていることだろう。小さな吐息を零しつつも、直ぐ傍まで来た大男の首に添えたのは、長く編んだ青色)――ふぅむ。悪くはない、が些かシンプルが過ぎるな。ワンポイント、刺繍でも加えるべきか(出来立てほやほやのそれに、真剣な眼差しを向けながら)
アルバ・アルフライラ 2020年4月12日
…まあ、私とて人の子故、話し難い話の一つや二つはある――が、そうも遠慮する必要はあるまい。問われれば、私は話したいように話すだけ…お前の知る師とは、そういう奴であろう?
ジャハル・アルムリフ 2020年4月18日
むう…どうすれば柔くなるのか分からぬ。(残念そうな師の顔を正面に見ても、それを真似ることは叶わず)(今しがた求めた以上の柔さでもって首に触れる感触に、大人しく姿勢を保った)……それならば、師父が最初に覚えた刺繍を見てみたい。…駄目だろうか。
ジャハル・アルムリフ 2020年4月18日
…然り。師父は師父の望む侭に振る舞われるが良いさ。俺は只その道を守るだけ故。(瞼を伏して首肯すると、再び鉤針を持ち上げ)して、これはどうすれば。(ねじれた短い毛糸の帯、としか形容できない物体が揺れた)
アルバ・アルフライラ 2020年5月6日
む。私が最初に覚えた刺繍?(きょとん、目を丸くする。斯様なものを要求されるとは思わず、暫し遊色の双眸をまじまじと見詰めるも)…別に構わんが、そう華やかなものではないぞ。一寸した呪いを込めた、単純な模様だ。
アルバ・アルフライラ 2020年5月6日
(さも当然と、淀みなく言葉を紡ぐ従者の姿に苦笑を零して)やれ全く、お前の場合はもちっと師匠離れすべきと思わんでもないが…まあその忠誠心に免じて小言はこの程度で終らせておいてやろう(椅子に踏ん反り返って寛ぐも、差し出されたそれを見た途端に真顔になる)………何と云うか、うむ。たわしとしては使えるのではないか?
ジャハル・アルムリフ 2020年5月22日
俺が最初に覚えた仕事は師父に教わったものだ。だから師父のそれも見てみたかった。…どの様なまじないなのだろう。(頷いて、己の膝へ頬杖をついた)従者が主から離れては役割を果たせまいに。……たわし……(服飾品には成らぬと聞けば、納得とはいえ肩を落とし)では、師父の食器は此れで磨くとしよう。(即座に立ち直った)なれば早速茶を淹れて参る故、しばし待たれよ。
アルバ・アルフライラ 2020年6月4日
何、仰々しいものではないさ。所謂魔除けの一種と思ってくれれば良い(話しながら、着々と作り上げていく柄。花を思わせる幾何学模様が形作られていく)
お前は私の従者である以前に私の弟子故な。ならば弟子は師の元を離れるなんて普通であろう?(くつり、萎れた尾に喉を鳴らして)戯け。私は勿論、お前が私の身を飾るに相応しい作品を作る迄はお預けに決まっておろう。精進せよ――って、毎度のことながら切り替えの早い(そういう処は見習わねばならぬかも知れない)
ジャハル・アルムリフ 2020年6月6日
(――ややあって。両手で盆を抱え戻ると、器用に尾で扉を閉めた)…熱いうちに。(明るい琥珀色の茶を注ぐと師の前へ)…茶を淹れながら考えたが。師父を一人野放しにしておいては、食事も禄に摂らぬわ脆い身は省みぬわで大惨事であろう。……御身に相応しいものを作り出せるころまでは、足枷として居座る所存だ。(本気と冗談半分というには些か前者の際立つそれを回答として、加護の花が咲ききるのを待った)
アルバ・アルフライラ 2020年7月5日
これ、行儀が悪いぞ?(扉が叩かれた様を眺めては、くつりと苦笑を浮かべて)――ああ、有難う。頂こう(織りかけのそれを膝に置く。華奢なカップを受け取り、揺らぐ水面を見詰めて。香を楽しんだならば、喉を潤した)
ええい、童が師を童扱いするでない。宝石の身にとって、食事は必ずしも必要な物ではないし砕けたならば糊で繋ぎ直せば良い。お前達、肉の器を持つ者達とは身体の造りが全く異なる故……まあ、足枷云々はさておき。別に好きなだけ…気が済むまで此処に居れば良かろう(そう、ぶっきらぼうに)
ジャハル・アルムリフ 2020年7月5日
俺とて早くから治癒の術だけは心得ていたというに、師父は俺の負傷を避けたがるではないか。……それに、その茶と同じだ。美味いものも傷付かぬ日々も、見えぬものが充たされよう。餓えるのは何も食事ばかりではない故に。御身が俺に、そうしてくれた様に。(昇る湯気ごし、ぼやけて尚鮮やかな双星を真直ぐに捉え)うむ、その心算だ。おそらく百年ほどは掛かるだろう。(実に満足げに深く頷いた)
アルバ・アルフライラ 2020年7月24日
当然であろう? お前が私の許しなく傷付くなぞ言語道断であるし、何よりも私が耐えられぬ(再び一口、茶を含む。鼻を抜けていく香は、己の御気に入りだ)
(不意に紡がれた言葉は、目を瞬かせるに十分で。口内にある温かな茶を飲み下すと、声を上げて笑った。手に持つカップの中身を零さぬよう、注意をしながら足を叩く)っははは! そうさな、お前には返す言葉もない。全く、斯様なところばかりは気が回る。私の教育の賜物よな(自画自賛を見せつけることも、忘れずに)――やれ。親離れ出来ぬ童か、お前は。…まあ、好きにするが良いさ。
ジャハル・アルムリフ 2020年8月9日
(師の返答が納得の、あるいは満足のゆくものであった結果として、小さく口の端を上げた)うむ、そうさせて貰うさ。……(一段落と見るや崩した毛糸玉を籠へ、読み終えたままらしき本を棚へ。動き回れど静かな足音のなかに微かな呟きが混じった)――到底、返しきれぬがな。
ジャハル・アルムリフ 2020年8月9日
(最後の一冊を収めると向き直り)師父、今宵は『カギバリ』の教示感謝する。それを飲み終えたら早々に床の支度をされるよう。俺は風呂の用意をして参る故。(言い終えた時には、一礼は早くも残像となっていた)
アルバ・アルフライラ 2020年8月23日
む、何か云ったか?(あまりにも小さな呟きは物音に掻き消された。小首を傾げながらも、続く小言にやれやれと肩を竦めて)皆迄云わずとも分かっておるわ。ある程度区切りの良い所まで済ませたら、今日は休む。細かい作業をしていると目が霞んでいかん(別に柔くもない眉間を揉む仕草を見せながら)