琥珀糖と小さな救済
ユア・アラマート 2019年7月16日
昼食の時間も過ぎて、店の中は静寂に包まれている。
慣れ親しんだ閑古鳥ではあるけれど、今日はいつもと少し違って心強い暇つぶしの手段があった。
机の上には白い丸皿と、散りばめられた色とりどりの欠片たち。
常連客が手作りだといって押し付けていった琥珀糖は、まるで本物の結晶のような透明度で光に透けた体から色彩を宿した影を皿の上に写し込む。
指先でつつくところんと転げていく様子が可愛らしい。
これをつまみながら時計とにらめっこしていれば、まあそれほど暇になるということはないだろう。
もっとも、客が来てくれるにこしたことはないけれど。
さて、この期待を叶えてくれる神のような誰かは来てくれるだろうか。
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ユア・アラマート 2019年7月16日
(砂糖と寒天が主成分だという素朴な甘みのお菓子を一つ口に入れてみると、さりさりとした表面と中のとろみのある感触のギャップが中々楽しい。見てるだけでも楽しめるのだから、これを考えた人はすごい。なんてゆるい感想を頭の中に浮かばせているところだった) ん? (シャッター街で唯一開店しているこの店に、近づいてくる足音が聞こえてきた気がした。とはいえ、ただの通行人かもしれないし暇のせいで幻聴が聞こえただけかもしれないが。もう一度確かめようと耳をすませる)
アヴァロマリア・イーシュヴァリエ 2019年7月16日
(人気の限りなく少ないシャッター街は、思った以上に足音が響く。他に歩く姿の見えない広い空間は、まるで自分が独り占めしているようで)~~♪(なんとなくいい気分になりながら、目的の店の前へと少女はてくてくやってきた)
ユア・アラマート 2019年7月16日
(昼過ぎ、こんな人気のない場所を子供が一人で歩いているとなれば多少の心配もしようものだが。ここに来る子供の大半は所謂「普通」とは少し違う。そして「普通」と少し違う子供なら、大抵は店の前で立ち止まるのだ。足音が停止したのに気がつくと両の耳がピンと立つ。開店中の看板が下がるドアは、押せば難なく開くだろう。期待を込めて耳が音源に向けて更に前傾姿勢を取る)
アヴァロマリア・イーシュヴァリエ 2019年7月16日
(看板を確認し、ドアをゆっくり押し開ける。店内を伺ってみると、耳の先端を此方へ向けた店主の姿)えっと、こんにちは……
ユア・アラマート 2019年7月16日
(微かに軋んだ音を立てて扉が開く。顔を覗かせた少女を視界に入れると、ぱっと表情を明るくさせた女が見えただろう) ああ、お前だったか。 (見知った顔がいるのであれば、より雰囲気は柔らかくなるだろう) いらっしゃい。ちょうど暇をしていたんだ。……今日は何かお探しかい?
アヴァロマリア・イーシュヴァリエ 2019年7月16日
えっと……探し物ってわけじゃないんだけど、このお店、色んなのがあるから、何かお買い物してみようかなって……(特に定まった目的はないようで、返事をしつつ店内を見回して。そして店主の手元で視線が止まる)それ、なぁに?
ユア・アラマート 2019年7月16日
そうか。まあうちには買い物目当てというよりふらっと遊びに来るお客も多いし、好きに見ていっておくれ。 (話し相手ができるだけでも今日の成果としては十分だ。椅子でも一つ用意しようと腰を浮かしかけて) ん? それ……ああ、これか。 (どうやら目の前に置いてある皿の中に興味があるらしい) 綺麗だろう? 琥珀糖っていってね。甘いお菓子だよ。
アヴァロマリア・イーシュヴァリエ 2019年7月16日
琥珀糖……宝石じゃないんだ……?(興味深そうな顔で、カウンターまで歩み寄り)甘いお菓子……(見た目もだが、味にも興味津々と顔に書かれている)
ユア・アラマート 2019年7月16日
簡単な材料でできているんだよ。見た目は、確かに似ているけどね。 (いくつかある色のうち、緑色のものを摘んで片目の先に透かせてみる。透明な新緑の向こうにいる少女の顔を見て小さく笑うと、近くにある古びた椅子を視線で差した。本来は売り物だが、普段は客を座らせるのに使っている) そこの椅子を持っておいで。お茶があるから、一緒に食べよう。一人で食べきったら太るしな。
アヴァロマリア・イーシュヴァリエ 2019年7月16日
うん!(椅子を抱えてくるとちょこんと腰掛ける。宝石と見紛う色とりどりの琥珀糖を見て、少女も宝石のような瞳を輝かせていた)
ユア・アラマート 2019年7月16日
(レジにしている長机の奥側。普段根城にしているスペースの足元には小さな冷蔵庫がある。中からお茶のボトルを出して、紙コップに冷たいそれを注ぎ入れて彼女の前にちょこんと置く) ふふ、ありがとう。さ、好きなのを食べておくれ。たくさんもらったんで、遠慮はしないでいいよ。
アヴァロマリア・イーシュヴァリエ 2019年7月16日
うん、ありがとう……変なの、分けてもらうのはマリアなのに、ユアお姉さんもありがとうなんだね(くすくすとおかしげに笑いながら、紙コップを手にしお茶を一口。少し乾いていた喉を潤すと、サファイア色の琥珀糖を摘んで見る)綺麗……簡単な材料って、お砂糖と……なにかな……?
ユア・アラマート 2019年7月16日
マリアにこれを分けることで、私は一人で過ごすはずだった時間を二人で過ごせる事になるからね。そのお礼だよ。 (自分の紙コップを覗くと、中身がほぼ無くなっていたので継ぎ足しておく。初めてのものを見つめる瞳の煌めきは、見ていても楽しい) 砂糖に寒天……ゼリーに似た弾力を出してくれるものを使っているらしい。あとは色をつける材料が入ってるみたいだ。
アヴァロマリア・イーシュヴァリエ 2019年7月16日
そっか。じゃあ、どういたしまして、かな? マリアも、1人より2人が嬉しいし(納得、と頷いて。)ゼリーみたいな感じのかな……いただきます(ぱくり、と口へ。見た目と違って柔らかい食感と素朴な甘さに目をパチクリさせる)わぁ、美味しい……♪
ユア・アラマート 2019年7月16日
こんな場所にあるからね。知り合いが遊びに来てくれることも少なくないが……まあ、暇な時間もどうしてもあるから。来てくれて助かった。 (少女一人がいることで、さっきまで少しがらんとしていた店の中が華やいだように感じる。指に摘んでいた緑の琥珀糖を、同じタイミングで口に入れて。食べる様子から感想が口に出る前に表情へ出たのを、微笑ましく見守って) 気に入ってくれたようでよかったよ。……そういえば、マリアは普段食事とかどうしてるんだ? 確かスペースシップワールド出身だったか。
アヴァロマリア・イーシュヴァリエ 2019年7月16日
うん、スペースシップワールド……でも今は違う世界でお部屋借りてるの。猟兵のお仕事するからって、船を出てきたから。ご飯は、こっちの世界の、よく食べてるよ。オムライスとかハンバーグとか、美味しくてびっくりしちゃった(噛み砕いて小さくなっていく琥珀糖を舌で転がしながら、次はどれを食べようか、と視線を迷わせる)
ユア・アラマート 2019年7月16日
そうか。しっかりしてるんだな。 (まだまだ小さいのに、逞しいものだと思う。早々に一つ食べ終えてから、次は青く透き通ったものを一つ細い指先で摘み上げる) 私も出身はダークセイヴァーだが、食事はこの世界のものがやっぱり美味しいな。種類も多いし、食生活が豊かなのはいいことだ。 (少女が言うメニューを初めて食べた時も同じように驚いた記憶がある) 甘いものもたくさんあるからな。故郷では少し貴重だったし、こんなに気軽でいいのか驚いたよ。
アヴァロマリア・イーシュヴァリエ 2019年7月16日
ダークセイヴァーから……? キマイラフューチャーじゃなかったんだ……(店主の狐耳を見つめ、少し驚いたように呟いた)うん、甘い物、あんなにたくさんあるなんて思わなかった……ダークセイヴァー程じゃないかもだけど、マリアの船もお菓子はあんまり無かったし……
ユア・アラマート 2019年7月16日
私はキマイラじゃなくて妖狐だからな。まあ正直、見た目はあんまり変わらないがね。コンコンはできない所の出身だ。 (あのシステムも蓋を開ければかなりとんでもなかったが。先日の戦争を思い出す。ついでに耳をひこひこと動かす) 飢えるほどの暮らしじゃなかったが、砂糖は貴重だったし口にする事は少なかった。マリアの所も似たようなものか。……この世界だと甘い物の食べ放題なんていうのもあるが。 (知ってるか? と首かしげ)
アヴァロマリア・イーシュヴァリエ 2019年7月16日
妖狐って、サムライの世界のだっけ……?(ひこひこ動く耳に視線を向けながら)マリアの船、他の船と接触するのが少ないからあんまり食べ物とか種類が揃わないの。もっとおっきな船だったら、果物とかも直接育てられたりして、色々お菓子も出来るんだけど……食べ放題って、いくらでも? おかわりできるの……?(ピンクダイヤを思わせる大きな瞳を更にまぁるく見開いた)
ユア・アラマート 2019年7月16日
そうだよ。私は、色々あってダークセイヴァーで生まれることになったけどね。 (その辺の事情は複雑なのでさらりと流すことにする。音を拾いやすい耳で注目を引きつけつつ、次の琥珀糖を口に入れて) 気軽に移動ができるような環境じゃない世界だからな…。ずっと宇宙を漂っているんだと思うとそれが日常じゃない側からすると不安に感じる。 (星の瞬く黒い世界を、上下も左右も曖昧なまま暮らす。想像すると少しゾッとしない) ああ、時間制限はある場合が多いけどね。その間ならいくらでも食べられるよ。……興味あるかい?
アヴァロマリア・イーシュヴァリエ 2019年7月17日
そうなんだ……(耳を目で追いながら、ルビー色の琥珀糖を頬張る)マリアには、「外」で空気や重力、空とか地面があるのが不思議な気持ちだったな……今は少し慣れたけど……(上機嫌に歩いてきた今日の道のりを思い出しながら、食べ放題の話題にも食い気味で)うん、気になる。行ってみたいな……!
ユア・アラマート 2019年7月17日
世界一つ違うだけで、あれそれと常識も変わっているんだから面白いものだ。何の因果かその世界を渡れるような身になったし、どうせなら色々な人の話を聞きたいと思う。…だからこうして、来てくれた友人やお客は持て成すんだよ。 (こうやって、来る人に誘いをかけては座らせてる理由もそれだと、目を細め) じゃあ、二人で行ってみるか。そういう場所は私も、さすがに一人だと行きにくくてね。行こうと思い立っても中々行動に移せないことが多いんだ。
アヴァロマリア・イーシュヴァリエ 2019年7月17日
そう、だね。色んな世界の、色んな人のお話、楽しそう……(様々な世界の友人知人を思い浮かべ、微笑んで)うん、行こう! いっぱいあるなら、2人で色々食べ比べられるね
ユア・アラマート 2019年7月17日
お前の話も、色々聞きたいからね。と、いうのもあるが。……いつも頑張っているように見えるから。甘やかす大人が一人くらい増えても問題ないだろう? (ゆらりと尻尾を揺らして、冗談めかして囁く。実際、しっかりしている子は甘やかしたくなるのだ。妖狐の性分かもしれない) じゃあ……そうだな。近場でやってるところがあったはず……。 (スマホの画面を叩きつつ、はたとして) そういえば、店を見に来たんだったな。もしよければ、何か思いつきでもいいからリクエストしてくれれば、次に来店するまでに探しておこう。
ユア・アラマート 2019年7月17日
――ただ、この店が仕入れる商品はたまに、妙な曰く付きなことがある。それでもよければ、だが。
アヴァロマリア・イーシュヴァリエ 2019年7月17日
……えっと、ありがとう……(囁きになんだか気恥ずかしい気持ちになって、帽子を深く被り直し)リクエスト……ん、と
ユア・アラマート 2019年7月17日
(当日予約ボタンを速やかに押す。元々狙っていた店なのだが、同行者の都合がつかなかったところだ。程なく、予約完了のメールが届いた) よし。連絡はつけたよ。そうだ、琥珀糖もお土産にあげるから。こっちは家で食べると良い。 (目元を帽子で隠す姿に笑いつつ、店の看板をクローズにひっくり返そうと立ち上がり) ……そうだな。
ユア・アラマート 2019年7月17日
たまに……しゃべったり、する……とか……。
アヴァロマリア・イーシュヴァリエ 2019年7月17日
わぁ、ありがとう……お友達にもあげようかな(お土産と聞いて喜び礼を述べて)え、じゃあおしゃべりする帽子とかあるの……?(怖がると言うよりは、ワクワクした様子で聞き返した)
ユア・アラマート 2019年7月17日
そうするといい。たくさんの人に美味しいって言ってもらえたほうが、作り手も喜ぶからね。 (立ち上がったついで。残っていた琥珀糖の袋は、手作りだけあって可愛くラッピングがされていた。口をリボンで結び直して、少女に渡す) 喋る帽子は今の所ないが……喋る花瓶とかはある。此処はどうにもその手の品物を引き寄せてね。帽子もきっと転がり込んでくると思うから。その時はマリア用に保管しておくよ。
アヴァロマリア・イーシュヴァリエ 2019年7月17日
花瓶とお話も楽しそう……うん、見つかったらお願いね。(ありがとう、と受け取って、可愛らしいラッピングに笑みを浮かべる)みんなで食べると、美味しいものね
ユア・アラマート 2019年7月17日
ああ、期待していておくれ。 (喋る方をご指名なのは少し意外ではあった。性根の曲がってい無さそうな帽子を選ばないとな、と思いつつ。利き手を差し出し) そうだな。とりあえず今からは、私と食べる時間を楽しんでくれれば幸いだよ。
ユア・アラマート 2019年7月17日
ふふ、そうだな。それじゃ、行こうか。 (小さい手をやんわりと握り返して店を出ていく。クローズの看板にして鍵をかければ、来た人には人目で閉店が伝わるだろう)
ユア・アラマート 2019年7月17日
(――ついでに、看板の横には小さな付箋が一つ。緑色の紙には「これからデートのため不在」と記されていて……)