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【二階 大きな鏡の前】

リリアンヌ・アドローズ 2019年7月11日


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"彼女"が訪れる事は無い

"彼女"が知る事も無い

"彼女"が知る由も無い


"彼女"は欠けている

記憶

思考

感情



"彼女"が思い出す日も
在りはしないのだ。

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リリアンヌ・アドローズ 2019年7月11日
彼女の記憶に在るのは、「自分が生まれてから在る施設において、"痛み"を感じぬ、また之以上"成長しないカラダ"へと改造された」というもの。
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リリアンヌ・アドローズ 2019年7月11日
然し其れは唯の妄想。
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リリアンヌ・アドローズ 2019年7月11日
近い過去。4年程前、リリアンヌが齢8歳だった頃。あの頃彼女は親を持ち、兄が居て、家族と共に時を過ごす平凡な村人であった。
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リリアンヌ・アドローズ 2019年7月11日
リリアンヌは自身の兄を大層好いており、憧れに似た恋心を持っていた。口癖のように「いつかオトナになったら、リリィをマイネリーベにしてくれる?」と問いて居た。
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リリアンヌ・アドローズ 2019年7月11日
そこの地域では、恋人の事をマイネリーベと呼んでいた。故にリリアンヌは兄に甘える様に「オトナになったら恋人にして」と強請っていたのだ。
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リリアンヌ・アドローズ 2019年7月11日
けれども、幸せな時間も束の間。突如リリアンヌの前から兄の姿が消える。
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リリアンヌ・アドローズ 2019年7月11日
家族総出で仕事をせねば生きてはいけない乏しい暮らし。食糧も何時底をついて仕舞うか解らない程貧しかった家族。親は自身の限界故に、兄のカラダを。
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リリアンヌ・アドローズ 2019年7月11日
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リリアンヌ・アドローズ 2019年7月11日
彼女は兄の姿が見えなくなってから両親を問い詰めた。口先から零れた真実に絶大なるショックを受け、リリアンヌの自我は欠けて仕舞った。
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リリアンヌ・アドローズ 2019年7月11日
記憶障害、及び先天性無痛症。生き物に痛みを感じぬカラダ等あるものか。然し彼女は"本当のマイネリーベ"が消えた記憶を封じ、唯のチェーンソーに向かって毎日毎晩愛を唱えている。
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リリアンヌ・アドローズ 2019年7月11日
彼女は何時も愛に飢えている。彼女は愛していた両親を殺して仕舞ったから。彼女は兄のカラダを喰って仕舞ったから。マイネリーベのカラダに牙をたてて仕舞ったから。
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リリアンヌ・アドローズ 2019年7月11日
……カラダの成長が止まって仕舞ったのは空想の施設のせい等では無く、障害によるもの。本当の記憶等、彼女の脳裏には欠片も残って居ない。
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リリアンヌ・アドローズ 2019年7月11日
だって彼女の隣には、いつも当たり前の様にマイネリーベが居るから。
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リリアンヌ・アドローズ 2019年7月11日
…大きな鏡は姿を映しても、本当の姿等映しはしない。
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