【然る銀河鉄道の夢】一、第六幻想星雲の停車駅
ルルエリ・エールディール 2019年7月7日
少しばかり列車が揺れたので、ジョバンニはうっすらと目を開けました。寝ぼけ眼の先で、青く天鵞絨の張られた椅子に座ったカムパネルラが、くすくすと笑っています。
確かにジョバンニはベッドで眠った筈なのですが、いつのまにか親友のカムパネルラとこの列車に乗っているのです。
最初こそ奇妙に思ったジョバンニでしたが、もう何度も同じことを繰り返してすっかり慣れっこになっていました。
「起きたね、随分とよくねむっていたようだったよ」
「ん…うん…ごめん、今日はどれ位眠ってたんだろう」
「ここだと時間が分からなくなるから、窓の外を見てはどうかな?」
時計のないこの場所ではもっともだと頷いで、ジョバンニは車窓の外を見やりました。手を伸ばせば届きそうな程近くに、青白く2連星が光っていました。
「もう星雲は抜けてしまったんだね、ぼくはあすこがとても好きだったんだ」
「そう残念がることもないよ、ほら次の駅は……」
カムパネルラは銀河ステーションで貰った黒曜石の線路図を広げたっきり、黙りこくってしまいました。カムパネルラが鼻をひくひくさせて難しい顔をするものですから、ジョバンニは線路図が気になってしょうがありません。
身体を乗り出してみた線路図の、美しい緑や橙や青で記された三角標や泉の光に交じって、そこにはこう記されていたのです。
『第六幻想星雲線 停車駅未定』
これは何だろうね、とジョバンニとカムパネルラは顔を見合わせました。鉄道なのに停車駅が決まっていないなんてアルダワ学園にもありませんでした。
「お客様方が不思議に思われるのも、しようがないことでございましょう」
いつの間にか二人の傍に立っていた、赤い帽子を目深にかぶったせいの低い車掌が呟きました。ジョバンニはそんな車掌を見るたびに、石炭袋の中身をぶちまけたようなぽっかりと空いた黒い穴を通った時よりも、逃げ出したい気分になるのでした。
何しろこの車掌ときたら、出てくるたびにジョバンニとカムパネルラの切符を検めては、あなたの切符ではここまでで、ジョバンニに次の駅で降りて下さいと急かすのです。
ぼくはカムパネルラと、二人きり、ずうっとずっと遠くまで行くのだとジョバンニは思っているのですが、結局最後まで行けたことはありませんでした。
ですが今日は少しばかり様子が違うように思いました、姿かたちは今までの車掌と一緒なのですが、帽子をいつもより深くかぶってその目元が見えることはありませんでした。ジョバンニはよくもそれで目が見えるなと思うのですが、口に出すのは失礼だと思いもっと別の事を問いました。
「この路線はなんなのですか?どこに通じているんです?」
「この第四次幻想鉄道、とは別の幻想の世界に居られますお客様方の駅です。駅があったりなかったりするものですから、停車駅を書くこともできないのです」
この鉄道は大丈夫なのかしら、とジョバンニは思いました。
「規則で申し訳ございませんが、こちらの駅からお客様が乗り込むまでは鉄道を動かせないのです、鉄道から降りて散策いただいても構いませんよ」
この鉄道は本当に大丈夫なのかしら、とジョバンニは思うのでした。
はるかはるか、はくちょう座を超えた先、宝石をちりばめた牛乳の流れるような天の川の向こうから、一つ目のお化けがやってくるのをあなたは見ていました。
かの鉄道は車輪の回る音を、星をちりばめた雲中に響き渡らせるので、遠くからでもよく分かるのです。ふわふわと浮いていた、透き通った三角標がちりりと震えます。ようやく来たのだと、あなたは、あなたの駅から腰を上げました。
何しろあなたは、ここに来た理由は少しだけあやふやですが、何をするべきかは、はっきりとわかっていたものですから。
猟兵の力を、ジョバンニに渡さなければならない、と―
「お願いします!! 皆さんの力を貸してください、親友を助けてやってください!!」
ルルエリに連れてこられた学生は、あなた方を見るなり地に頭をこすりつける勢いで頭を下げて助力を請うた。彼はアルダワ学園の学生で、コンビを組んでいる相方が数日前から目を覚まさないのだという。
「ダンジョンの中でちょっと良くない傷を受けたけど、命はとりとめた。幸い後遺症もないようだよ…でも、なぜか目を覚まさない。状況と彼の相棒を見た限り、獲物を夢に捉えて貪るような手合いにとりつかれたって分かったんだ。本当はみんなに危ない事をしてほしくない、頼むのはお門違いだと思うんだけど…」
憔悴しきった様子の彼を横目で見てルルエリは、意を決してあなた方に向きなおった。
「ぼくからもお願い。この子、修理中のガジェット引っ掴んで、手掛かり求めてダンジョンに突っ込むとこだったんだ、お得意様が自殺するのは止めたいよ」
「お金…はあんまり無くて、でも頑張って用意します! 何かしろっていうなら、何でもします……だから、だから…お願いします!同じ村の出で、ずっと一緒にやって来たんです、お願いします、お願いします」
「夢の中に捕らわれている相棒を助けるのはこの子の仕事。みんなにお願いしたいのは、敵の攪乱と、この子がパートナーを確保してからの離脱の支援なんだ」
縋りつく学生を窘めながら、ルルエリは言葉を続ける。
「皆なら簡単に夢から抜けられるだろうけど、狙われてるのはこの子の友達だけじゃない、この子自身もでね」
聞けば毎晩、かの親友と列車に乗る夢を見るらしい、明らかにロックオンされている。そう簡単には抜け出させてくれそうにはなかった。
「で、対策だけど、ぼくが外からみんなの意識を、彼の友達の夢に送り込むよ。相手だって馬鹿じゃあない、当然邪魔者は列車から弾きだそうとしてくる筈さ。ってわけでね、ぼくが予めちょっと小細工をして………」
ここであなたの記憶は途切れていた。それでもはっきりと分かるのだ、最後にルルエリはこう言っていた。
「みんなの猟兵の力を、鉄道に乗ってるこの子に渡してほしい。それがみんなの一番最初の、一番大事なお仕事だよ」
◆これなに?
中の人の遊び。シナリオのまねごとしてワイワイ遊びてーなと思って作りました。なんか今までにやったことが無いタイプの試作品。
このスレに銀河鉄道をどうやって攻略するかを書いてくれたら、中の人が纏めてなんかいい感じに小説形式で上げます。今回は4~5人集まってくれると嬉しいな。
時間があんまり取れないので多分、いただいたプレイングをまとめてから2週間くらいかかりそうな勢いです。近頃仕事が忙しすぎて小説書けなくなってる中の人のリハビリ兼ねてます。
アドリブ大好き、絡み大好き人間です。5割くらい入れまくります。皆様のプレイングの意図は汲んで動きますが、たまに暴走しますので注意してください。
◆もう少し詳しく
ある学生さんの親友を助けるため、あなた方の心象風景から銀河鉄道の夢に入り込みます。ですが猟兵たちはこの回では主役ではありません。
猟兵たちの役割は、プロキオン海岸で化石を掘る考古学者であり、お菓子の鳥を捕る人であり、かの悲劇の船の見届け人、つまりは銀河鉄道の不思議な乗客です。
あなた方は不思議な乗客として、銀河鉄道に乗り込んでいって、あなた方の猟兵の力を、非力な学生であるジョバンニくんに渡してあげてください。
ですが気を付けてください、この銀河鉄道はそんな力に敏感に反応して排斥の結界を張ってきます。工夫してジョバンニくんに渡しましょう。
自PCの設定を掘り下げてみたい人、ちょっとファンタジーな世界で遊んでみたい人、どうぞいらしてくださいな。
◆状況開始!
①~③のプレイングを投下してください。今回ちょっと自由記述多いので、様子を見つつ期限を07月17日(水)くらいにしましょうか。
あなたの猟兵のイメージが力になります、あなたの猟兵の思い出が駅になります。一緒に素敵な銀河鉄道の世界を作ってくださいませ。
今回は真の姿での出撃大歓迎です、使いたい人はプレイングの中に真の姿って盛り込んでくださいね。
① あなたの大切な風景を教えてください。それがあなたが銀河鉄道に乗り込む為の『第六幻想星雲線』での駅になります。
原風景、帰るところ、守りたい場所、思い出の場所、なんでも結構です。あなたにとってどんな場所かもぜひ記載をお願いします
② あなたの猟兵の力の象徴を教えてください。物でも人でも何でも構いませんが、ジョバンニくんに渡せるものですよ。
③ ②の猟兵の力の象徴をジョバンニ君に渡すことになります。
力技であなた方を阻もうとする結界をぶち破るもよし、猟兵の力を象徴を何かに偽装するもよし、中の二人の興味を引いて自分から列車の外に出てきてもらうもよしです。
なお①でつくった夢の中にある筈のものを使っていただいても構いません。
2
ルルエリ・エールディール 2019年7月7日
はい、というわけではじまりました二作目です。疑問質問はこのスレッドに投下いただければ幾らでも質問にお答えします。他のPCを尊重できる方なら大歓迎、どうぞよろしくお願いいたします。
バロン・ゴウト 2019年7月10日
今回は戦うんじゃなくて、ジョバンニ君に力を渡すのにゃ。これは色々考えるのが楽しそうなのにゃ!/【質問】②のジョバンニ君に渡す力の象徴が例えば桜だとして、本物の桜の花じゃなくて桜模様のハンカチ等の代用品を渡す、って感じでもアリなのかにゃ?
ルルエリ・エールディール 2019年7月11日
質問有難うございます。大いに結構、じゃんじゃんやってしまってください。正直このシナリオに正解とか間違いなんてありません。強いていうなれば一番自分らしいな、というような物を自分らしいやり方でジョバンニに届けられればそれが正解です。 / 例えば、俺の力の象徴は 宇宙戦艦ヤ●トだ! この波動砲で銀河鉄道のジョバンニを狙い撃って、俺の力を届けるぜ! 目標第7コパーメント、照準よし、てえええっ!! とか無茶苦茶なやり方でもOKです…渡してない? え、エネルギー渡してるからいいんじゃないかな、うん…
ルルエリ・エールディール 2019年7月11日
ご、誤字ってる、コンパートメント、コンパートメントです! これでは誤射です…
バロン・ゴウト 2019年7月11日
ご回答ありがとなのにゃ。流石に波動砲までの無茶はやらないけど、参考にして色々考えてみるのにゃ。
バロン・ゴウト 2019年7月14日
然る銀河鉄道の夢、プレイングに挑戦にゃ!/①風景は映画館。流れてる映画の主人公は黒髪の優し気な女性と、ボクに良く似た姿の翼の生えた猫さんにゃ。 映画の中では女性達が恐ろしい敵と戦っていたり、他愛もない日常を過ごしていたりの映像が代わる代わる流れているのにゃ。 「この映画?これはボクが見る夢なのにゃ。そしてボクが猟兵になると決めた切っ掛け。この人達みたいに、恐ろしい存在から力なき人々を守れるようになりたいと思ったのにゃ。」
バロン・ゴウト 2019年7月14日
②力の象徴は翼。映画の中で戦ってる、ボクに良く似た猫さんの背にある翼なのにゃ。/③まずシトラスの首に『映画上映中!』と書いたプラカードを下げて、駅に止まった列車の窓を叩いてジョバンニ君達の気を惹くにゃ。 2人が列車から降りてきたらプラカードに張り付けていた映画のチケットを渡し、映画館まで案内してもらうにゃ。 映画館についたら係員に扮したボクがチケットを預かり、チケットの半券に『翼』マークのスタンプを押してジョバンニ君達に渡すのにゃ。/こんな感じかにゃ?分かりにくい所や説明不足な部分があったら教えて欲しいにゃ。
ルルエリ・エールディール 2019年7月15日
バロンくんご参加ありがとう、今回も楽しませてもらうね。修正したい所があったら期間内だったら幾らでも受け付けるからね~
ルルエリ・エールディール 2019年7月18日
けっこう期限辛そうな感じですね。読みが甘かったかもです、申し訳ございません。とりあえず21日(日)くらいまでプレイング募集をのばしますね
テン・オクトー 2019年7月18日
①空気が少し薄くだだ広い荒野。緑は少しあるけれど地を這い雪をかぶっていて、空は高く綺麗な夜だけど、とにかく乾燥して寒さが痛くて、そんな中灯りの長い長い行列。そんな場所。 / ああ、これ、ボクの記憶かな。まだ二語話せるかどうか小さいボクが見える。お祖父ちゃんのお葬式だ。お祖父ちゃんが起きない事は認識出来ても死を分かっていない頃。お祖父ちゃんは普段見た事のない装飾の服に着替えてて、それがとても綺麗だったの。このお葬式でボク専用のランタンを初めてもらったんだっけ。 / 大きくなってランタンで初めて召喚したものをみたら、あの時の衣装のケットシーだったんだ。ハッとした。…ボクもいずれ結婚して子供ができて、お爺ちゃんになって死んで、そして子孫に喚ばれるのかなって。ランタンに入るのかなって。
テン・オクトー 2019年7月18日
②灯りのついたランタン。 / ③敵の目を誤魔化して力を渡し攪拌する。夜空が綺麗、灯りの行列に加わってみませんか?等、普通に外に出てみないかお誘いする。夜ですからとランタン(ダミー、普通のもの)をカムパネルラに渡す。灯りの列に2人が加わったら、小さいボクが、ボクの力が入ったランタンをジョバンニ君に渡す。行列に紛れ込ませてうまくいくといいのだけれど。
テン・オクトー 2019年7月18日
ずさー!朝が来るまでは日付変わらn…。折角いただいた機会だから自分を掘り下げて?作って?みようと頭から湯気沸かしつつ考えてました。問題があれば教えてくださいね。
アンシェ・ローム 2019年7月18日
真の姿参加(←人間体)①無数の悲痛な泣き声が聞こえるおどろおどろしい雰囲気の空間。いろんな形にひしゃげた空の鳥籠が大小いくつも浮かんでいる風景。たくさん声は聞こえるのに、気配は一人だけ。/ 昔のわたくしは、いつでも誰かに閉じ込められていました。親や、親戚。それに婚約者さえ。特にもーあの男は……。思い出は思い出でもあまり良い思い出ではないですわね。そうそう、この空間の籠は全てわたくしが壊してきた籠。なんだか少し美化されちゃってるかしら。
アンシェ・ローム 2019年7月18日
②蝶が意匠された鍵(←バールのように大きい) ③鍵を結界に向けて叩きつけますわ。いつでも、わたくしは自分の力で、自由になってやると鍵を奪い、使い、逃げたしてきたんですの。そしてまたこの鍵も。誰にもわたくしは閉じ込められませんし、押さえつけることはできません。渾身の力で破りさってやりますわ。
アンシェ・ローム 2019年7月18日
ごめんなさい…。締切を一日勘違いしておりましたわ。とはいえ期間は十分いただいてましたし、ただのわたくしの怠慢ですわね(泣)ごめんなさいルルエリさん。 / なかなか自分のことを見つめなおす機会がなかったから、レア体験ですわね。ありがとうございますわ!心情風景って難しいなあ…。パワー系になっちゃいますわ。
ルルエリ・エールディール 2019年7月19日
テンくんもアンシェさんもいらっしゃ~い! ここまでしっかりと書いて貰ってるからね、ぼくはもう今からどんな駅ができそうかわくわくしているよ。負けないように綺麗に仕立てるから、待っててね。 みんな忙しいから期限についてはしょうがないよ~、それだけいっぱい考えてくれたってことだろうし、中の人冥利につきるから気にしないでね
ルルエリ・エールディール 2019年7月22日
本日は、アルダワ銀鉄をご利用くださいまして誠に有難うございます。この列車は、アルダワ学園下宿駅発、第六幻想星雲線経由、夢の果て駅行きです。座席は全て指定となっております。なお、第六幻想星雲の到着予定時刻は08月04日(日)を予定しております。お客様にお願い致します、ユーベルコードをご使用の際は周りのお客様のご迷惑となりませんよう、デッキをご利用ください。
ルルエリ・エールディール 2019年8月5日
(PL:テンくん大変ごめんなさい、ちょっと間に合いませんでした。明日には全員分まとめたものをアップロードしますので、今しばらくお待ちください。本当に申し訳ございません)
テン・オクトー 2019年8月5日
PL(ルル兄のペースで進めていただけたら嬉しいな。無理せずにね。のんびり楽しみに待ってます。今読み始めたとこだけど、書き方?というのかな、銀河鉄道の雰囲気そのままだねv)
ルルエリ・エールディール 2019年8月6日
斯くて、銀河鉄道はおしまい。これにて廃線でございます。さて、さて、お客様方、ここで一つの謎かけをいたしましょう。『この銀河鉄道の正体は何か』。浅学ならば私からヒントを一つ、怪異の特徴の一つとして伝播するというものがあります。これは人の話から話にわたり、その特徴を変異しながら、あちらの地域とこちらの地域を行ったり来たり。故にこれがアルダワ学園に伝わったのは最近で、正体が、この地の人々には看破できなかったのでございます。
ルルエリ・エールディール 2019年8月6日
ですが世界を股にかける猟兵の皆様にならば、きっとお分かりになるのでは? 夢に捉えて人を貪る列車の怪異。一つや二つ聞き覚えがございましょう。
ルルエリ・エールディール 2019年8月6日
どうしてもお分かりになられない方は、このお話の一番上をご覧ください。『銀河鉄道の』夢は終わりなのです。これより始まりますのはもう一つの夢でござますれば。どうぞ、皆々様、ふるって耳打ち(お手紙で回答をください)くださいませ
ルルエリ・エールディール 2019年8月6日
(……カッコつけて誤字が。×浅学ならば ○浅学なれど。あああ、恥ずかしいいいっ! でも車掌RPたのすぃいい!)
ルルエリ・エールディール 2019年8月6日
(PL:あ、ちなみに、これ一幕目ですので、続きの二幕目もあります。そっちでフィナーレ、クイズの答えが合っていたら2幕目のオープニングで、答えてくれたPC達が正体看破ロールします)
バロン・ゴウト 2019年8月7日
昨日メールも送ったけど、改めてお疲れ様&ありがとうなのにゃ。銀河鉄道の夜らしい美しい儚さと、ボク達ケットシーの冒険らしい胸がすくような展開、両方が詰まっててとっても素敵だったのにゃ!
ルルエリ・エールディール 2019年8月14日
遅れちゃったけど、こっちでも! バロン君、感想有難うね! 一応次回は木曜日くらいにプレイング募集投下するよ。良かったら参加よろしくお願いするよ~