或る一日
ジャハル・アルムリフ 2019年6月9日
ありふれた日常の、いつもの一日
ひかる星屑の一欠片
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ジャハル・アルムリフ 2019年6月11日
……たまには御身の星にも陽を通さねばな。(師の声は満足げだ――唇を小さく笑みの形に歪ませて)……む、斜め前方に雷雲だ。速度を上げて回避する故、落ちぬよう。(言い終える前に急加速、旋回。声を置き去りに、雲の峰を越える)
ジャハル・アルムリフ 2019年6月11日
(―――速度を落とし、降り立った窓庭には昼過ぎの木洩れ日。翼を畳んで師を
、)……。意識はあるか?
アルバ・アルフライラ 2019年6月12日
は――(刹那、宝石の身が強く揺られ)………はっ!!(次に気付いた時には良く知る塒の前。がっしり弟子の首にしがみついていた)わたしはいったいなにを。
ジャハル・アルムリフ 2019年6月12日
(飛んだのは記憶もらしい。関節技であるかのように絡んだ腕を剥がしながら)正気に戻られよ。……市で買い物にばかり熱中してしまった故昼餉には少々遅いな。軽いものを用意する、暫し休憩されるがいいぞ。
アルバ・アルフライラ 2019年6月13日
突如強い衝撃を感じたような……(剥がされた腕を見る。首を擦る。…特に罅は入っていない。夢中になり過ぎて寝落ちた際に夢でも見たのだろうか)お、おう。では一旦着替えてくるとしよう。ジジ、(手を差し出す。視線は従者の肩に乗った荷物へ)
ジャハル・アルムリフ 2019年6月13日
ふむ……上空故、空気が薄かったのだろうな。(その方が師の為だろうと如何にも適当な煙に巻き)重いぞ。(眉間の皺を刻みながらも無碍にも出来ず。二巻きの布だけをその腕へと預けて、残りは書斎へ運ぶ事にした。その足で厨へ)
アルバ・アルフライラ 2019年6月15日
おお、……っとと(両腕で何とか持ち上げることが叶った布。恐る恐る、汚さぬよう裁縫部屋へ寝かせ、吐息ひとつ。ジジは既に厨だろうか――そっと書斎を覗いてみると、そこには購入したばかりの本の束)……(目を輝かせる。さてさてどれから読むとしよう)
ジャハル・アルムリフ 2019年6月15日
(厨で速度重視で師の好むものと材料を頭の中から算出。小麦と泡立てた卵、乳で手早く生地を作って熱の石版に落とす)(その間に朝のスープに火を入れると、先日調達した数色のジャムを瓶から出す)皿を取ってきてくれ。…落とすなよ。(不可視の蜥蜴に命じると、すぐに雪楢の戸棚が開く音がした)
ジャハル・アルムリフ 2019年6月15日
(――ややあって、一皿に纏めた軽食が湯気を上げる。師を呼びに行こうとして停止、皿を両手に乗せた。今頃は読書に没頭しているに違いない)……遅れた詫びということにするか。(暫し歩いて書斎の扉を小突き、開ける)師父。簡単なものだが腹に入れておくといい。(歪ながら膨らんだパンケーキと三色のジャム、茹でた茸を加えた朝のスープと紅茶)
アルバ・アルフライラ 2019年6月17日
(従者が足を踏み入れた先――案の定、本の虫と化した主の姿が其処に在る)む、ご苦労。テーブルに置いておいてくれ(頁より顔を上げず、文字の羅列を視線で追いながら)
ジャハル・アルムリフ 2019年6月17日
……承知。(渋々といった調子。あの状態では言った所で聞かぬと長年の経験が告げていた、が)――熱いうちに終えられぬなら、夕餉の鴨は芋に化ける。(静かに宣告し、踵を返す)
アルバ・アルフライラ 2019年6月18日
な――(反論する暇無く消えた従者にやれと溜息を吐く。…全く、集中が途切れてしまった)(湯気立つ軽食の数々を見詰め、匙を取る。艶やかな茸を掬い、口へ)………美味い。
ジャハル・アルムリフ 2019年6月22日
さて。(書斎に篭もった師は暫くは動くまい。自身の腹拵えに日課の鍛錬、やるべきことを指折り数え。陽を見れば傾くまではまだ猶予がある…が)少々雲が出てきたな。(窓から枝へと張った細縄には干していた衣類。駒の端から引いて取り込んだ)うむ、良く乾いている。
アルバ・アルフライラ 2019年6月23日
(恐らく、従者が見ていたならば行儀が悪いと眉を顰められるだろう。切り分けたふわふわのパンケーキを口に入れつつ、視線は書物へ)――(ふと、顔を上げる。向けた視線は窓の外。暗い雲)……これは、今宵は雨か。
ジャハル・アルムリフ 2019年6月23日
(雑務のあと魔力の灯る貯蔵庫から引き出した春鴨を下拵え、しながら蜥蜴に命じて雨に備え窓を閉じてゆく)…水遣りの手間は省けるな。(すこし尖った耳へと伝う未だ遠い響き。雷雲が近付いているようだ)鍛錬は中庭を拝借するか。
アルバ・アルフライラ 2019年6月25日
(軽食を平らげた後。再び静寂の中、書物の世界に浸り始めて)………ん?(文字を覆う影。現実に引き戻された感覚。顔を上げると、世界は暗くなり始めていた。――暗雲は、もう直ぐ傍に)
ジャハル・アルムリフ 2019年6月29日
(ぽっかりと広い中庭。魔法石を埋め込まれた人形達が、意志を持つかの如く不規則に襲いかかってくる――それが一体、また一体。あるいは一度に二体が打ち払われ地に墜ちた。そして最後に残る一体は酷く素早い)…師父め、難易度を上げてあるな。(瞬間、稲妻が轟いた。ほんの一瞬気を取られた隙をつき、宙を舞った人形が後頭部を強かに打ち据えた)……ッ。
ジャハル・アルムリフ 2019年6月29日
(振り返るより速く閃いた腕が人形を鷲掴み、大地へと叩き付け
)……。(頭を押さえながら、悔し紛れに尾をひと振り)……三巡。今日はここまでにするか。(定位置に帰って行く人形達を恨みがましく睨みながら、書斎の窓を見上げた)
アルバ・アルフライラ 2019年7月4日
(不意にくしゃみが一つ。急に冷えた故だろうか――否)……ジジめ、私の悪口でも零しておるな(ずず、茶を啜る。すっかり冷めたそれに、集中力が切れたらしい)…茶でも淹れて来るか。
ジャハル・アルムリフ 2019年7月5日
(水を被った頭と顔を拭きながら厨へと着いてみれば)…師父よ、じきに夕餉にする故に茶は程々に。(仕込んでおいた鴨を取り出すと期待通りの芳香。窓に雨音。もうひとつ、冷製――の予定だった鍋を火にかける)
アルバ・アルフライラ 2019年7月8日
うお、(不意の声掛けに、茶で満たした杯を傾けそうになり)わ、分かっておる。体が冷える故、もう一杯だけ貰おうと思っただけだ。
ジャハル・アルムリフ 2019年7月8日
(刺す釘はそこまで。手早く調理を進める傍らで皿を整え)……書の方は、気に入るものであったようだな。(小瓶から香草を振る。独特の香り)――師父、匙をふたつ並べておいてくれ。そちらの方が近い。
アルバ・アルフライラ 2019年7月11日
ああ、中々に興味を惹かれる内容であったぞ。暇潰しには丁度良い(宝石の身であれ、人の身であれ、不思議な物だ。先程軽食を取ったばかりというに、ふわりと香辛料を匂いを感じ取れば、腹の虫は此処ぞとばかりに空腹を訴えるのだから)やれ、働かざる者食うべからずか。…これで良かったか?(言われるがまま、シルバーレストが置かれた其処へ、銀製の匙をふたつ並べる。確か、これで問題なかったと思うが)
ジャハル・アルムリフ 2019年7月15日
うむ、問題ないぞ。…俺は字の多い本はどうも苦手だ。(克服しきれぬと零し。やがて鉄鍋を上げれば滑らかな白芋のスープから湯気が上った)(またしても矢鱈と大切りの鴨肉を皿へと並べ)…頭を使うと消耗する。数時間ともなれば尚のことだ、しっかり喰うと良い。……雨が酷くなってきたな。
アルバ・アルフライラ 2019年7月15日
お前は昔から、自ら読むよりも読み聞かせた方が頭に入った故(等と戯れに笑い、言葉を返すけれど。上がる湯気に、芳しい料理の数々には目を輝かせるばかり)――む?(厚い肉を薄く切り分ける手を止め、空を見る。どんよりとした、暗い雲だ)…湿気るのは嫌なのだがなぁ(ぽつり、零して)
ジャハル・アルムリフ 2019年7月18日
文字を追うと目が滑って良くない。(輪切りの柑橘が浮かぶ水を師の杯へと注ぎ)しかし今朝も占術通りだ。師の寝相が裏なら雨、表なら晴れ故。(当たり前のようにさらりと言ってから正面の椅子へ)
アルバ・アルフライラ 2019年7月25日
魔術師の弟子とは思えぬ脳筋ぶりよな――ってお前……よもや師の寝相でそんなことをしとったのか(すん、と真顔になった)(――が、肉を口に放ればぱっと瞳は輝く)
ジャハル・アルムリフ 2019年7月27日
物理攻撃も極めれば魔術にならぬものか。…真っ直ぐ伸びておれば雪か雷、団子なら曇りだ。なにせ毎日の様に寝過ごされるのだ、観察眼も身につく。(誇らしげに首肯し)しかし師父は鴨が好きだな。また仕入れて参らねば。(自分も――やや豪快に――口へ運ぶ。もう少し辛味を加えても良かったか、と呟いた)
アルバ・アルフライラ 2019年8月4日
(充分に咀嚼し、飲み下す)それは魔術ではないわ、阿呆(即答で切り捨てた)…全く、お前も魔術を会得すれば身体能力増強にも使えように(フォークを虚空に振りながら)…ええい、変な才能ばかり伸ばしおって。ならばずっと真直ぐ伸びてやろうか(ぎぎぎ。輝石の歯を鳴らし、男は再び鴨を口に含んだ)…鴨は牛の様にしつこくなく、鶏の様に淡白ではない故な。
ジャハル・アルムリフ 2019年8月6日
うむ。御身の指導のもと二十余年も励んできて御覧の通りである。(一周していっそ堂々と、無き素養を主張し)…何故であろうな、何処ぞで閊えているように上手く練られぬ。(吐息は空になった皿へと落ち、硝子杯の水を干した)……師父は確かに、拗くれ曲がって真っ直ぐだ。(其れから薄らと微笑みに似たものを浮かべ)ふむ。南の湖のあたりには上等な大鴨が多いぞ。次は師父も狩りに参るか。(食後の果実酒を師の杯へと注ぎ分けながら窓を見る。丁度、稲光が閃いたところだった)
アルバ・アルフライラ 2019年8月13日
それは褒めているのか? それとも貶しているのか? …全く、図体ばかりが成長しおってからに。お前を見下ろしていた頃が懐かしい(心なしか恨めしげな、然し何処か懐かしみと慈しみを込めた声色で)――ふむ、狩りか。そういえば、この頃は篭ってばかりでさっぱりだったな。良い魔術の鍛錬にもなる故、偶には良いかも知れん(響く雷鳴に、持った杯に注がれた水面がふるり、揺れた)
ジャハル・アルムリフ 2019年8月17日
無論、称えているぞ。(言い淀むこともなく正面から見返し)戦い方も知らぬ、痩せこけた餓鬼のままでは役には立てまい。何より、師父が大きくなれと言った故その通りにしたのだぞ。(師の心程々に知らず、空になった皿を集めながら堂々とした返答)茶と湯の準備をしてくる故、早めに入られよ。――決して読書など再開せぬよう。(朝日が昇るまで終わらぬと釘を刺して)
アルバ・アルフライラ 2019年8月21日
(マジかよという顔。然し付き合いが長い分、彼奴が真にそう思っているのだと察するに余りがある)…肉の器を持つ男は自ずとでかくなるとは聞いてはおったが、よもやこれ程とは思わなんだ。これも全て私の浅識故か――せめてもう少しくらい可愛げと主に対する『飴』があれば良かったが(確実に釘を刺していく手厳しい従者に溜息一つ。無闇に逆らえば小言が増える故、大人しく従うとしよう)
ジャハル・アルムリフ 2019年8月24日
それは師父が人一倍小柄な…(続きは戸棚を締める音で自主的に強制遮断する。その方が賢明であろう、という判断のもと。それよりも)………む、……。俺はそんなに厳しいだろうか。(再び深まった眉間の皺と、力をなくした語尾)……御身の身体を思えばこそであったが、否、うむ…そうか…。(湯の準備をすべく浴室へ、飴色の床すれすれまで下がった尾先も扉の向こうへ消えていった)
アルバ・アルフライラ 2019年9月6日
(それは、あまりにも分かり易い変化だった。鋼のようでいて、存外に脆いのがジジである)……あー、(頭を抱える。さあどうしたものか。斯様な姿を見せられ胸が痛まぬほど、己は冷淡ではいられまい)…あー全く!!(限界だと言わんばかりに後を追う。尾を引き、注意を此方へ向けようと)私の言い方が悪かった。故にそうしょげるでない!
ジャハル・アルムリフ 2019年9月8日
(思考の淵へと沈んだ従者は、ささやかな重量には気付かない。尾を掴む師を勢いで引きずり歩み、廊下を直角に曲がり、てきぱきと魔法仕掛けに触れて湯を張る。香薬を数滴落とし、て振り向いた)……声を掛ける前に到着されるとは、良き心掛け。…しかし何故そんな所に。(眸に疑問の朱を浮かべ、尾にしがみついた師を訝りながらも床へと降ろす)…今日はあちこちへ移動してお疲れであろう、ゆるりと寛がれよ。(籠にローブを用意し静かに退出。また次の用事を片付けに足音は遠ざかる)
アルバ・アルフライラ 2019年9月16日
(首を傾げる従者の足元には、尾を掴んだままずるずる引きずられた男の姿。床を這った髪には埃が付着している)お前…お前という奴は……(まさか作業が一頻り終った後でなければ気付かれないとは思わなんだ。ぐぎぎと歯噛みし、去り行く背中を見送り、深く溜息)…はあ、入るか(こびりつく埃を払う。疾く身を清めてしまおう)
ジャハル・アルムリフ 2019年9月22日
(耳を澄ますが、今のところ浴場からの転倒音などは聞こえてこない。歩みは厨から廊下、各階の窓へ。面倒な高い窓は小蜥蜴へと指令を出し、慣れた手付きで仕上げの家事を済ませてゆく)いつもと変わらぬが……なんとか、今日も無事に終えられそうだな。(戻ってきた小蜥蜴が頭に乗って甘えるのを、好きにしろと放置して
)………。(閃き、足を止める。貯蔵庫へと向かってから、今度は階段を上へ上へと上がっていった。――師が湯から上がる頃には戻るだろう)
アルバ・アルフライラ 2019年9月23日
(浸かった湯に身を預ける。僅かに鼻孔を擽る香は、輝石の身を清めるに最適の調合をなされたオリジナル。今日一日の疲れが一気に流れ行く気がした)……やはり、暇潰しに「たぶれっと」を用意すべきでは?(透明な袋に入れれば風呂場で使えると聞いたことがある――が、従者に大目玉を食らいそうなので直ぐにその考えは片隅に置いておくことにする
)………(のらり。くらり。浄化を待ち、湯船から離れたのは小一時間が経過した頃)
ジャハル・アルムリフ 2019年9月28日
よく温まられておいでか。…何か物言いたげにも見えるが。(居間で準備していた茶から顔を上げた。茶器からは寝付きを良くする葉の香が漂う)…そういえば、昔よく「百と十を数えるまで湯船から出てくるな」などと言われていたな。(程よい温度になったそれを陶杯へと注いで)深く眠れるものを選んだ。くれぐれも読書で日の出を迎えるなどされぬよう。明日は仕事に向かうのだろう?
アルバ・アルフライラ 2019年10月6日
ぬ(図星である)…べ、別に大したことではない故気にするでない(自ずと視線が従者から逸れつつも、ふわり漂う香に目元が緩んだ)そういえば、斯様なことを言ったこともあったな。矢張り風呂はゆっくり入った方が心地好かろう?(杯を受取り一口。染み入るぬくもりにほう、と溜息が零れる。そして続く言葉に他の意味で溜息が落ちた)…ああ、そうさな。暫し不在にする故、お前の飯が食えぬと思うと気が滅入る。
ジャハル・アルムリフ 2019年10月10日
……そういう事にしておこう。……うむ、冷えは身体に宜しくない故に道理。幼い頃は、幾つ数えたか分からなくなっては上せかけていた気がするが。(ゆっくりではあるか、と一人納得し)ふむ、ならば明日は久方振りに携帯食を拵えておこう。持ち参られるがよい。一人では広すぎる屋敷のうえに張り合いも足らぬ、くれぐれも遅くならぬよう――飲み終えたなら、今宵は早めに休まれよ。(感情の乏しい視線は、何故か少々落ち着きなく)
アルバ・アルフライラ 2019年10月24日
そういえば、斯様なこともあったな。数が分からなくなったからと律儀に何度も数え直すなぞ、彼の頃は誰も思うまい(様子を窺いにいっては湯船の中、真赤に茹った黒竜を何度引き摺り出したことか――思わず遠くを見詰めた)ほう、気が利くな。これで旅の楽しみがひとつ増えた(再び、湯気立つそれを一口)私とて道草を食うような童ではない。心配せずとも……む、如何したジジ。よもや私の不在が寂しいなぞ云うのではなかろうな?(何処となくそわつく視線に目を細めて)
ジャハル・アルムリフ 2019年10月26日
……道草は食われずとも、どこに『研究の一貫』が落ちているとも知れぬ故。(やれ新種だ新発見だ、果ては閃きだと前科は数知れず)寂しいなどと、童でもあるまいに。目の届かぬ所で罅割れを拵えて来ぬかは気掛かりだが。(悟られたと気付けば眉間に深い皺を寄せ、上階へと泳いでいた視線を戻す)……俺は携帯食と朝餉の準備をしておく故。(拗ねたように背を向けると従者は再び厨へと)
アルバ・アルフライラ 2019年11月3日
し、仕方がなかろう。気になるものは調べなければ気が済まぬ性質なのだから…とは云え任務は滞りなく、確と遂行しておる。文句はあるまい(従者の小言に唇を尖らせる。実際、任務も忘れて没頭したことはない……筈だ。記憶の中では)はっはっは、そうかそうか。それは失礼した。安心せよ、そう易々と我が身に罅は入らぬ(刻まれた皺に、したり顔。幾つになろうと、幾ら表情が乏しかろうと、此奴はどこまでも分かり易い。くつくつと笑う口元をカップで隠し、些か温くなったそれを一気に呷り)…さて、私も寝るとするか。
ジャハル・アルムリフ 2019年11月4日
(したり顔に一層眉間の皺を深めながら、立ち上がるその肩へと防寒用の羽織を掛けた。洋燈を手に先導する)……足元に気をつけられよ。(螺旋描く木の階段を一段一段、身に染み付いた、主君に手が届く距離を保ち上る。最上階の丸窓からは明かりが見えた)…雨が上がっているな、月がよく見える。恐らく明日は晴れるだろう。(それから、飴色の扉の前で一礼し)――…一日、御疲れであった。…ゆるりと。
ジャハル・アルムリフ 2019年11月4日
(扉の向こうに師を見送ってから踵を返す。明日の携帯食と、己の寝支度と。ぼんやりと残る仕事を数えながら)……あれで良かったのだろうか。(師が隠し持った書など開くことなく素直に寝床に就いたなら、程なく見つけることとなるだろう)(先程から落ち着かなかった要因―――枕元の、飴玉の詰め込まれた大瓶を)
アルバ・アルフライラ 2019年11月11日
(肩に触れる柔らかくてあたたかい感触。短く礼を告げ、ずり落ちぬよう手を添えて椅子から立ち上がる。目の前、揺れる光をぼんやり見詰めながら)やれ、心配性よなあ。お前こそ暗い故、うっかり足を滑らせぬよう気を付けよ(小言には小言の応酬。ふと目に留まった月の灯り――それを映し、煌く偽角に無自覚のまま目を細めた)
アルバ・アルフライラ 2019年11月11日
何、明日に響くような失態は犯さぬさ――おやすみ。お前も早めに休むよう(軽く手を振り、自室へ足を踏み入れる。さあ昨日の読書の続きを、と思ったけれど素直に眠らなければ従者の無言の圧によって身に罅が入りかねない)…仕方がない。今日は大人しく……ん?(柔らかな感触に紛れ、手に触れた冷たいもの。首を傾げ、引き出してみる)(翳せばころんと涼しい音がしたそれは)……やれ。私を童か何かと勘違いしておらぬか、彼奴は(憎まれ口を叩けど口元は緩むばかり。ころころと飴玉の転がる様を眺めては)
アルバ・アルフライラ 2019年11月11日
…さて。奴への土産は何にするか(ぽつり、零しながら。明日の任務に想いを馳せ、男は寝台へ身を沈めるのだった)